2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン 作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ
なぜ柚子さんだけビキニだったのかを考えてたら、こうなった。
今回は三人称でお届けします。
新学期を迎えて遂にスタートした大洗学園戦車道チーム。果たして女子生徒が集まるのかという不安が残っていたものの、ふたを開けてみればそれなりの参加者が集まった。
参加した女子生徒たちも、戦車道にいろいろと期待を募らせていたようだった。だが戦車道の授業初日、彼女たちがしたのは、自分たちが乗る戦車探し。沙織が「思ってたのと違う」とぼやいたのも致し方ないと言える。
さらに2日目となる今日の内容は、回収した戦車を綺麗にするというもの。みほたちのグループ、バレー部、歴女グループ、一年生たち、さらに生徒会メンバーが、それぞれ1輌ずつ担当して掃除を開始する。風雨にさらされ、汚れやサビにまみれた戦車を洗えというのは、これまで戦車に縁のなかった女子学生には少々酷なことかもしれない。
しかし。いざ始めてみれば、それなりに楽しんでしまうもので。
「それーっ!」
「きゃあっ」
昨日はなにかとぼやいていた沙織が、いの一番にホースを手に取り、勢いよく水をまき散らす。戦車に水をかけるのと同時に、放射線上にいた華も水浸しにしてしまった。
「沙織さん、冷たいです……」
「あはは。ごめんごめん」
全身を濡らしてしまった華は、長い髪と、着ている体操服を身体に張り着かせる。大和撫子を思わせる容姿で、抜群のスタイルを持つ彼女の、ボディラインが丸分かりになってしまった。その場に男子生徒がいれば彼女のセクシーな姿に悩殺されることだろう。
だが、大洗学園で戦車道に関わる男子生徒は俊一だけ。幸か不幸か彼はこの場にいなかった。だからこそ沙織もはしゃいでいたのかもしれない。
他の面々も、似たような状態だった。
バレー部チームは、ガッチリしてるからいいアタック打てそう、などと言いながら戦車にモップ掛けをし。
歴女チームは、高松城を水責めだなど、お得意の歴史ネタから水に関わるものを言い合いながら掃除を進める。
1年生チームは、戦車よりも人にホースを向けて水をかけまくり。恵みの雨だのブラが透けてしまうだのと大騒ぎしている。
生徒会チームも、桃が「戦車を洗車」などと真面目にボケるようなことを口にし、杏がそれに突っ込んだり、柚子がふたりに「ちょっとは手伝ってくれ」とぼやいたりしていた。
そんな中で。
「それにしてもさー」
杏が不思議そうに声を漏らす。その相手は、文句を言いながらも真面目に戦車をブラシ掛けしている柚子だ。
「小山、なんで水着姿なの?」
「え?」
杏も、桃も、果ては他の戦車道メンバー全員が体操服などの動きやすい服装をしている中で。柚子だけが水着姿だった。しかもかなり際どい白のビキニである。この場に男子生徒がいたら、目を向けずにはいられないだろう。
尋ねられた柚子の方は、何を言ってるんだと反抗するように言葉を返す。
「だって、会長が言ったんじゃないですか」
昨日、戦車道の授業を解散する前のこと。杏は「明日は戦車を水洗いするから、水着とか着といた方がいいよー」と、軽い調子で全員に告げていた。
柚子はその言葉の通り、きちんと水着を着てきたわけなのだが。実際には彼女以外全員、体操服を着ていて。水着姿なのは彼女だけだった。
そのこともあって、柚子が、杏に向ける言葉には少しばかりトゲがある。
しかし杏はまったく意に介さない。なぜなら。
「それって単に、濡れてもいいようにしてって意味だよ?」
体操服とかの下に着ておけば、濡れて下着が透けたりしないでしょ?
そんな意味で、杏は皆の前で言ったのだった。
事実、他の面々は体操服の下に水着を着こんだ上で掃除をしている。ホースの水を浴びて濡れた女子生徒も、濡れた体操服の下から水着が透けて見えていた。中には着てくるのを忘れたのか、下着を透けさせている者もいたけれど。
「……え?」
思わぬ返事を聞いて、柚子は驚きの顔を見せた。
杏は自分の着ている体操服を少しめくる。綺麗なお腹と、胸の部分を包んだ赤いビキニが姿を現す。
驚きを強くした柚子は、もうひとりの生徒会メンバー・桃に目を向ける。桃も、体操着の首の部分に指を掛けて、少しずらす。そこから黒色の水着がチラリと見えた。
「柚子ちゃん。恋人がいるといっても、せめて授業中は控えてほしい」
「あ、大瀬良くんを悩殺しようと思ってたの?」
「ちがっ、違うからっ!」
素で勘違いしていた柚子だったが、杏と桃は逆に何か考えがあったのではと思ってしまい。恋人である俊一に見せようとして水着姿で来たのではないかと邪推した。
これで困ったのは柚子である。思いもしなかった方向で誤解され、彼女は顔をまっ赤にしながらブンブンと手を振った。
「大瀬良くん、小山のこと大好きだからなー。そのビキニ姿で色っぽく迫ったら、もっとメロメロになっちゃうこと間違いなしだよ」
「柚子ちゃん……」
「そんなつもりじゃないから! 誘惑しようとか思ってないから!」
からかう気満々の杏と、珍しく少し呆れたような顔を向ける桃。そんなふたりに対して、柚子は恥ずかしがりながら力いっぱい否定する。顔のみならず、露出の大きいビキニにおさまりきらない肌のそこここまで、いささか羞恥で赤らんでいるようにも見えた。
そんな生徒会3人のやり取りは、もちろん他の戦車道メンバーにも筒抜けになっていて。ホースを振り回しながら恥ずかしがる柚子に、視線が集まる。恋人仲間のみほは苦笑しているが、それ以外の面々は興味津々だ。むしろ彼女だけ大胆な白ビキニでやってきた理由が分かって、納得してしまった者さえいる。
「ちょっと待って、違うから。誤解しないでぇ!」
後輩たちにまで注目されて、さらに取り乱す柚子。わたわたと手を振って懸命に否定するも、功を奏しているとは思えない。むしろ逆効果かもしれない。それが分かっているのか、彼女はさらにパニックになってしまう。
そこへ、タイミングがいいのか悪いのか。
「え。ぶわっ」
俊一が、まほと一緒に顔をだした。そして、柚子が振り回していたホースの水を俊一だけが全身に被り。着ている制服ごとずぶ濡れになってしまう。
「えっ」
「あ」
ホースを振るっていた柚子も、煽っていた杏も、一瞬動きを止める。
いや、この場にいた戦車道メンバーの女子全員が、作業を止めて目を向けてしまう。動きどころから時間まで止まったかのようだった。
「ぶえっ、くしゅ!」
ずぶ濡れになった俊一が盛大に、くしゃみをひとつ。
それで、呆然としていた意識を取り戻したのか。柚子が大いに慌て出す。
「ああああああああ、ごめん、俊一くんごめんなさいっ」
手にしたホースを放り出して、俊一に駆け寄った。
いきなりのことでフリーズしかけていた俊一だったが、白ビキニ姿の柚子を見て我を取り戻す。ビキニに包まれた大きなバストが、たゆんたゆんと揺れる。何度となく柚子を抱いて、そのおっぱいを揉んで吸って舐めまくって、水着の下まで知り尽くしているとしても、目を惹きつけずにいられない。
一方で、柚子は焦りまくりだった。
大好きな彼氏に粗相をしてしまったという気持ちが、彼女をよりパニックに陥らせた。
だからこそ、柚子は思いついたままの行動を取ってしまう。
「風邪ひいちゃうから、俊一くん脱いでっ」
駆け寄るなり彼女は、俊一の濡れたシャツを脱がそうとする。シャツのボタンを外していく手つきが、慌てながらも慣れていることに、自分では気付いていない。
ボタンを外し、襟元に手を入れて、肌を撫でるようにしながら彼の腕を抜く。手早く脱がしてしまい、びしょ濡れのシャツは腕に掛ける。
さらに、やっぱりびしょ濡れのTシャツにも手を掛ける柚子。ズボンから裾を抜いて、そのまま上へとまくり上げた。俊一に少しかがんでもらい、頭と、ばんざいをした腕をTシャツから抜く。甲斐甲斐しい手つきを見せる柚子だったが。
「あ、そうだ身体を拭かないと……」
そこで、目の前の恋人の姿を改めて見つめた。
半裸姿の俊一がいる。屋外で、戦車道の女子生徒たちの見ている前で、強引に服を脱がしてしまった。ここでようやく、柚子は自分が何をしたのかを自覚する。
今日一番の羞恥と混乱に見舞われた彼女は。
「ごめんなさいっ」
手にした恋人のシャツで、真っ赤になった顔を隠しながら。
勢いよく、その場から逃げ出した。
「……いったい何事?」
俊一は呆然となった。
いきなり全身を濡れねずみにされて。
慌てた柚子によって上半身を裸にされ。
さらに恥ずかしさで取り乱した彼女に上着を持ったまま逃げられ。
何が起きたか分からないまま放置された。
あまりといえばあんまりな仕打ちに、俊一はその場で立ち尽くす。
「何が起きた?」
一方、彼の後ろにいたまほは、幸い濡れずに済んだ。だがいきなりの展開についていけず呆気に取られた。目の前で恋人が水浸しにされたかと思ったら、いきなり上半身を裸に剥かれていくのを見て面食らっている。
そんな硬直した場の雰囲気を壊したのは。
「ぷっ。はははははは!」
杏の、爆笑する声だった。
遠慮のない笑い声。それこそ腹を抱えての大爆笑だ。
追い剥ぎに遭ったかのような恋人の姿と、混乱のあまり彼を身ぐるみ剥いていった柚子の奇行。その両方に笑いのツボを刺激されながら、杏は彼のところに近付いてくる。
「ひひひ、災難だったね大瀬良くん」
杏はこみ上げてくる笑いを隠そうともせず、俊一の丸出しになった腕をパシパシ叩く。遠慮も何もなく、心底から楽しそうに。
俊一は複雑な顔をしながらも、彼女に対して気を悪くしたような素振りは見せない。むしろ遠慮がないのはお互い様だとばかりに、お腹を抱えて笑う杏の頭を荒っぽく撫で回す。
「ふふ。水も滴るいい男というやつだな」
「まほちゃん、それはさすがに欲目が過ぎるんじゃないかな」
彼のすぐ後ろにいたまほも、からかうように声を掛けた。彼女が手を伸ばすと、俊一はそれだけで意を汲んだのか、持っていたおやつ入りのバッグを手渡す。空いた両手でびしょ濡れの頭を撫で上げるようにして、水気をぬぐい取ろうとする。
「うあー。マジでびしょびしょになっちまった」
戦車道の授業に少し遅れてやってきたら、とんだ災難に遭った。俊一は思わずぼやいてしまう。
それを聞いた杏はまたおかしくなってきたのか、笑いながら彼の腹筋に軽くパンチを入れ始め。まほも柔らかい笑みを浮かべつつ、俊一の背中をペシペシと叩く。
「せっかく作ってきたおやつは濡れてないようだ。不幸中の幸いだな」
「あ、平気そう? 良かった」
俊一は今日も、戦車道の女の子たちに振る舞うためのおやつを用意していた。戦車道の授業前に一度自分の部屋に戻って、仕込んでおいたものを使っておやつを作り、改めて顔を出したというわけだ。
まほも彼に同行して、おやつ作りの手伝いをしていた。恋人の横で台所に立ち、作り方をレクチャーしてもらうという初めての経験に胸をときめかせていたのだが。
「これはこれで……」
「ん?」
「いや、なんでもない」
さらに「不意のアクシデントで弱っている俊一」を見ることができて、まほは内心でご満悦だった。
もちろん俊一は、彼女が何を考えているかなど知る由もない。
さて。
いきなり発生した「俊一びしょ濡れ事件」と、半裸になった彼にごく自然に接している杏やまほを見て。他の女子生徒たちはいろいろな反応を見せている。
沙織、華、優花里は、顔を突き合わせて言葉を交わしていた。
「えっ。大瀬良くんってすっごくたくましくない?」
「確かに、さりげなく筋肉質って感じです」
「あわわ、初めて男の人の裸を見てしまいました」
「ちょっと待って、裸とか言ったら意識しちゃうじゃない!」
「確かに秋山さんのおっしゃる通り、たくましくて素敵ですけど」
「はうっ。いえいえ、決してハレンチな意味で言ったわけではっ」
「ハレンチとか言わない! もー、ドキドキしちゃうじゃない」
俊一の方をチラチラ見ながら、こそこそする3人。
そんな友人たちに、みほは何気ない言葉を落とす。
「俊一くんって、服の上からだとあんまりそう見えないんだけど、触るとすごくがっしりしてるから。体力もあるし」
何気ないけれど、かなり破壊力高めの言葉。
もちろん、みほには特に含むものはない。
「みぽりん、そんな大胆なことをさらっと」
「なんだか、違ったふうに聞こえてしまいます……」
「五十鈴殿、その言い方はかなりハレンチなのでは」
ちなみに、みほは少ししてから自分の言ったことに気付き。顔を真っ赤にしながら頭を抱えてしまうのだった。
バレー部チームは、親しい男子生徒である俊一の半裸姿に揃って赤面。けれどそれ以上にスポーツ少女として、彼の身体の引き締まり方に興味を引かれていた。
「なるほど、バレーとサッカーで鍛えられてるんだな」
「制服姿だと分からなかったけど、しっかり筋肉がついててすごい」
「大瀬良先輩、細マッチョ……」
「素敵……」
典子は、数少ないバレー仲間の動ける身体を目の当たりにして大いに納得。
妙子は、思った以上にたくましい俊一の上半身に見惚れ。
あけびと忍は、細くて筋肉質な先輩の半裸姿にときめいていた。
「いつだったか肩車された時も、簡単に持ち上げられてたなー。そう言えば」
「えっ、キャプテンそれってどういうことですか」
「キャプテンは小柄だけど、それでも女の子ひとり持ち上げるって」
「……私でも、持ち上げられるのかな」
典子の聞き捨てならない言葉に反応する妙子とあけび。さらに、忍がボソッと漏らしたつぶやきも、ふたりは聞き逃さなかった。
自分に置き換えて想像してしまったのか、妙子とあけびは火照ってしまった顔を抑えつける。忍も同じように、さらに顔を赤くさせた。
そして、なぜか態度が変わらない典子に1年生3人が食ってかかり。肩車云々の話や、彼女でもないのに妙に距離感が近い理由を聞き出そうとする。典子は後輩たちのその勢いに戸惑うばかり。
加えて、同年代の男子に肩車されるというのが、年頃の女の子にとって普通はどれだけあり得ないことなのかを説かれ。典子は珍しく羞恥を覚えるのだった。
普段から仲間内で歴史トークに花を咲かせることが多い、おりょうをはじめとした歴女チーム。彼女たちは教室でも強いて男子生徒と接することはなく。色恋どうこうに対する興味は薄い方だった。
実際、俊一が制服を脱がされていく騒動を目の当たりにしても、あまり色っぽい連想にはならなかったようで。
「あれだけ鍛えているなら、寺田屋で襲撃を受けても咄嗟に動けるぜよ」
「なるほど。戦に備える武士のように、普段から気を配っているからこその、たくましさなのか」
「ふむ。近代の兵であっても、身体が資本なのは変わりないからな」
「さすがに古代ローマと比べれば、まだ細いか?」
おりょう、左衛門佐、エルヴィン、カエサルと、それぞれが自分の得意分野に合わせていくあたり、ぶれていないと言える。
とはいえ。さすがに同級生男子の半裸姿を見てしまって、何も感じないというわけではないようだ。
「寺田屋襲撃に備えているということは、その後の危機をおりょうが救うということか。はてさて、いったい龍馬は誰なんだろうな」
「なっ。左衛門佐、おんし何を言うちょるか!」
「いやー、深い意味はないんじゃないか? 左衛門佐は歴史的事実を言っただけだろうしな」
「エルヴィンの言う通りだ。それとも、おりょうは何か思うところでもあるのか?」
「ぐぬぬ」
4人の中で唯一、俊一と親しかったおりょうが、他の3人にイジられる。歴史ネタに絡めているとはいえ、色恋にまつわる話を自分たちからするというのは珍しい。けれど残念ながら、彼女たち自身はそのことに気付いていなかった。
1年生チームにとって、俊一は「世話焼きの優しいお兄さん」という位置付けになっているようだ。もしかすると、昨日振る舞った手作りおやつや、優しく接してくれた物腰がそういった印象を与えたのかもしれない。
慌てる柚子に俊一が半裸姿にされる一部始終を見て、年頃の女の子らしく顔を赤らめる。だがそれ以上に、「すごいものを見ちゃった」というテンションの方が高くなったのか、大騒ぎしていた。
あゆみ、桂利奈、優季、あやは、ミーハー的に声を上げ。
梓は彼女たちを落ち着かせようしつつ、ちらちらと俊一に目を向ける。
紗希だけは、顔を少し赤らめたまま、じっと凝視し続けていた。
「あわわわ」
一番意識してしまっているのは梓かもしれない。
真っ赤になって俊一を見つめ、そんな自分に気付いて手で顔を覆う。けれど、また指の間からしっかり半裸の俊一を見てしまう。
「……」
逆に、紗希などは顔を隠しもせずに、じっ、と視線を向けていて。
「すごーい。強そう」
「ムキムキって訳じゃないのに、なんか強そうだよねー」
「たくましくて優しくて頼りになるって、せんぱいすごーい」
「やーん、すてきー」
他の4人、あゆみ、桂利奈、優季、あやは、キャーキャーと声を上げている。
そして、ことさら取り乱している梓をからかい始めた。
「梓がそんなに赤くなってるのって、初めて見たかも」
「でもでも、胸キュンして止まらないんじゃ仕方ないでしょ」
「だったらー、大瀬良せんぱいって恋人がたくさんいるから」
「そっか。梓がひとり加わるくらいなんてことない!」
「……がんばって」
「えぇー!」
はやし立てる4人。さらになぜか紗希まで加わって、静かに梓を煽る。
もちろん冗談交じりではあるのだが。名指しされた梓は羞恥とパニックで目をグルグルさせていた。
その反応に周囲は「まんざらでもなさそう」と思い、にやついていた。
生徒会メンバーのうち、柚子が暴走し、杏がからかう方に走ったせいで、桃だけが置いてけぼりをくらった。そのおかげで彼女は、俊一の濡れた半裸姿をじっくりと見ることになってしまう。
「弟と大差ないと思っていたのに、脱いだらずいぶん違うじゃないか……」
姉弟のいる桃にとって、男の裸など弟で見慣れたものだったはず。しかし1歳年下の後輩の半裸姿は、思いのほか引き締まったもので。意外とたくましいその姿に、桃はなぜか恥ずかしくなってしまった。
「なになに、大瀬良君のことを意識しちゃった?」
「おわっ」
いきなり声を掛けてきたナカジマに、桃は思わず声を上げてしまった。自分の声の大きさに狼狽し、赤らめた顔をもっと色濃くさせる。
「無理もない。アクシデントとはいえ、男の裸を見てしまってはな」
「しかもけっこう鍛えられてるし。セクシーってやつ?」
「見とれちゃうのも仕方ないよねー」
「そんなことはない! 見とれてなんかいないぞ!」
さらにホシノ、スズキ、ツチヤの、ツッコミかつ具体的な煽りを受けて。桃は自分が思った以上のうろたえぶりを見せる。
「いやいや私は会長や柚子ちゃんみたいにアイツを気にしたりしてないぞ。気の迷い、そう、いきなりのことだったから驚いただけだ。女だらけの戦車道チームでためらいなく脱ぐようなやつがいたら風紀が乱れるだろうだから心配しただけだうんそうだそうに違いない。アイツは敵、女の敵だ」
頭を抱え、顔を赤くしながら、なにやらブツブツとつぶやき始める桃。それはまるで自分に言い含めようとしているようだった。
一方で、彼女をからかった自動車部の4人も、少し顔を赤くしていた。
「でも本当に、がっしりした身体してるなー」
「確かに。細マッチョというやつだな」
「けっこうスポーツマンだって、西住さんたちも言ってたしね」
プールなどならともかく、女子生徒の方が多い学園生活の中で男の半裸を見る機会などないに等しい。実際、彼女たちも、同年代の男性の裸を見たのは初めてのことだった。自動車や機械いじりに夢中なナカジマたちも、年頃ということもあって、俊一の半裸姿につい目が行ってしまう。
そんな中で、ツチヤが言葉を漏らす。
「あの胸板に、顔を埋めちゃったんだ……」
本当に、小さなつぶやき。けれど、ナカジマ、ホシノ、スズキは耳ざとくそれを拾い、さらに顔を赤くして。
「思い出しちゃっただろツチヤ!」
3人は思わず、声を合わせて叫んでしまう。
俊一に抱きしめられたり、冗談交じりで「抱きしめろ」などと自分から言ったりした。そんなことを思い出し、頭の中で反芻してしまう。本人たちが思った以上の破壊力に、ナカジマ、ホシノ、スズキ、ツチヤは揃って悶えることになった。
なんやかやと騒ぎが起きた後のこと。俊一は「女の子たちの前でいつまでも半裸のままではいられない」と、この場から離れ、濡れたシャツを奪っていった柚子を追いかける。
しばらくして、俊一と柚子が揃って戻ってきた。並んで歩きながら、濡れたままのTシャツを再び着込んだ俊一が、顔を赤くしながらうつむいた柚子の頭を優しく撫でている。その様子はとても仲良さげに見えたとか。
この日は結局、俊一はひと足先に戦車道の授業から引き上げることになった。持ってきた手作りおやつはまほに託し、キリのいいところで振る舞ってくれと伝えて、帰宅する。
ちなみに濡れたシャツは、柚子が「私が洗って返すから!」と頑なに主張したので。俊一は濡れたTシャツ姿で帰ることになった。
「まぁいいんだけどさ。何か、違うような気がする……」
さらに後日。柚子が洗濯をした俊一のシャツを自分で着て、「恋人に包まれている」と悦に浸っていたことが恋人仲間にバレてしまい。よく分からない騒動が起こったとかどうとか。
もちろんその騒ぎ自体は、俊一のまったくあずかり知らないところで起きて。何も知らぬうちに収束した。唯一関わったことと言えば、なぜか恋人たちにシャツをねだられ、奪われたことくらいだろう。俊一は首をひねり、不思議がるばかりだった。
―続く―
どうにか年内に更新できた。
槇村です。御機嫌如何。
お久しぶりです。
書きたいことはいっぱいあるんだけど、
手と頭と時間繰りがうまいことできずにいます。
ちなみに年末年始も仕事漬けです。
今後も、正直なところ月イチ更新できたら上出来かなって感じです。
次は1月中に投稿できたらいいなぁ。