2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン 作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ
アンチョビさんと、ベンチに並んで座りながらいろいろと話をする。可愛い笑顔を向けられながら、アンツィオにおける彼女の立ち位置だとかをいろいろと聞いた。
彼女が個人的に引っ掛かっていることはなんなのか。
オレが思うにそれは、アンツィオにいる限り求められ続けるだろう『アンチョビ』像からは逃れられない、ということなんじゃあるまいか。
「難儀な話だよなぁ」
アンツィオの戦車道チームを引っ張る者として、常に『アンチョビ』として在らなければいけない、と、アンチョビさんは言った。聞いているだけだと、立場を強いられているような感じがして大変だなと思いはする。
でもアンチョビさん自身、それはやりがいがあって楽しいことだ、と嬉しそうに言うのだから。きっとマイナスな感情はないんだろう。アンツィオのみんなのことが大好きだと言っていたし。
ただ、『アンチョビ』で在り続けるのも肩が凝る。肩の力を抜きたい時もある。
彼女が言っているのは、そういうこというなんだと思う。
それならオレは、アンチョビさんが素の『千代美』を気兼ねなく出せるような接し方をしよう。甘えられるのは、迷惑どころか嬉しいくらいだ。オレの前でくらいは、戦車道の「せ」の字もないようなやり取りがあってもいいんじゃないかな。
彼女が『千代美』を出したいと言うなら、その手助けをしよう。
望むことに応えてあげよう。
思うままに甘やかしてあげよう。
オレと一緒にいることが、普段のアンチョビさんの息抜きや救いになるように。
喜ぶようなことをいっぱいしよう。
「まずは、『ローマの休日』ごっこだね」
前回のアンツィオ行きで、まほとやっていたおふざけみたいなこと。今度はアンチョビさんが主役で、同じようなことをやろう。思う存分、お姫様扱いしてあげよう。
……いや、この場合はお姫様扱いっていうのは間違いなのかな。
「どう思う? アンチョビさん」
「お姫様扱いはすごく惹かれるものがあるんだが……。お姫様だと分かっていながらも自然に接してくれる、みたいなシチュエーションもいいなと思ってしまう」
「まぁ、難しく考えなくてもいいか。アンチョビさんを大事にしたいって気持ちは変わらないし」
「うぉぉぉ……。こっぱずかしいぞぉ……」
「こっぱずかしいって」
頭に手をやりながら、何やら悶え始めるアンチョビさん。可愛いなぁ。
恥ずかしがるアンチョビさんを愛でつつ、当面の目的地を頭に思い描くオレ。
『ローマの休日』ごっこというのは、映画のストーリーをたどりながら、要所要所でイチャイチャしようというのが趣旨になる。ベースとしては、まほと回ったルートが鉄板だとは思う。でもアンチョビさんが何か一緒にやってみたいこととか、行ってみたいところがあるなら、どんどん追加していこう。
「というわけなんだけど。アンチョビさんは何かある?」
「……昨日まで、いろいろと考えていたはずなんだが。いざとなると、そういうのがすっかり頭から飛んでいってしまった」
「アンチョビさんは可愛いなぁ」
片手で顔を覆いつつ、恥ずかしそうにそっぽを向くアンチョビさん。可愛い。
それはつまり、デート当日になるまであれやこれやと、オレと何をしようかと考えていてくれていたってことになる。嬉しい。
つないだままの片手をにぎにぎと握りしめつつ、とりあえず大まかな流れを提案してみる。
トレヴィの泉で、恋愛成就のコイン投げ。
スパーニャ広場で、ジェラートを食べる。
真実の口で、愛の再確認。
その他にも、あれこれと。その場その場での思いつき次第ということで。
「アンチョビさん、どう?」
「なんというか、見事に恋愛系のものばっかりだな」
「何を他人事みたいに。アンチョビさんは当事者だから。オレとラブラブするための……」
「言うな! 分かってるんだ! 分かっていても恥ずかしいんだ!」
「でも嬉しいんでしょ?」
「……嬉しい」
「いやもう本当に、アンチョビさんは可愛いなぁ」
なんというか、彼女の反応がいちいち可愛らしくて。アンチョビさんに抱きついてしまう。
アンチョビさんはいきなりのことに、あわあわし始めた。でも抵抗したりせず受け入れてくれる。嬉しい。
「何も今すぐ決めなくったっていいよ。歩いてる途中で何か思いついたら、そのつど実行していけばいいでしょ」
アンチョビさんに抱きついて、頭に頬ずりをしながら、オレはそんな風に言う。
彼女は顔を真っ赤にしたまま、ちょっとだけふてくされたような顔をする。あれかな、オレに振り回されてるみたいな気持ちになっているのかな。
それでも、オレの腕を振りほどこうとするでもなく。抱きしめられるままでいる。
可愛い。
愛でたいという気持ちのまま、アンチョビさんの頭にぐりぐりと頬ずりをする。ちょっと大袈裟なくらいに。
「おいこら、あんまり調子に乗るな」
「だって、アンチョビさんが可愛いんだもの」
「お前、そう言えば私が喜ぶと思ってるだろ」
「えー。嫌だったなら、これからは言うのを控えるけど?」
「よせ、嫌じゃない。いやそうじゃなく、嫌じゃないんだがもっとこう」
アンチョビさんがわたわたしながら、オレのスキンシップに苦情を入れてくる。でも「止めるな」と言ってくるあたり、やっぱり可愛らしくて仕方がない。
「まぁいいじゃない。アンチョビさんは可愛いなぁ、と思ってるのを素直に口にして、スキンシップで現してるだけなんだから」
だからオレの前では難しいことを考えずに、素の「千代美」を出してくれると嬉しいな。
そんなことを言うと、アンチョビさんはとたんに顔を真っ赤にさせて。オレの腕に顔を押しつけて、表情を隠そうとする。どれだけ恥ずかしかったのか、ぎゅーっと、思い切り押しつけてくる。
赤面顔は見れなくても、その反応だけで照れているのが丸分かりだ。可愛い。
「とりあえず、せっかくのデートなんだからさ。ローマの休日ごっこでもなんでも、アンチョビさんがやりたいと思ったことをおねだりしてみればいいよ」
やりたいと思ったことを、片っ端から一緒にやっていこうぜ。
彼女の頭に頬ずりをしながら、悪戯っぽく言ってあげる。
「……」
アンチョビさんの、顔を押しつけてくる力が弱くなった。
あれ、どうしたんだ?
いぶかしんでいると、アンチョビさんが、恐る恐るという感じで顔を上げる。オレの方に目を向ける彼女は、ちょっと困ったような表情をしていた。
あれ? 何か困らせるようなこと言っちゃったか?
「あのな、大瀬良」
「うん。なに?」
「気持ちはすごく嬉しい。こう、なんだか、甘えさせてくれるというのも心地良くて。すごくいいんだが」
「うん。ばんばん甘えてほしいな」
「えーっと、だな」
言おうか言うまいか、みたいに、むにゃむにゃと口を濁すアンチョビさん。視線を外して、ものすごく言いづらそうな感じ。
いったい何事か、と思っていたら。
「さっきも言ったが、私も、今日のことが楽しみで。どんなことをしようかとか、昨夜はいろいろ考えたりしていたんだ」
「おぉ」
つまりアンチョビさんも、オレとデートをするのを楽しみにしてたってことだよね。
それは嬉しい。また彼女の頭に頬ずりをしてしまう。
「おい、茶化すんじゃない」
「いやー。アンチョビさんもウキウキしながら今日を待ち望んでいたのかと思うと、嬉しくなっちゃて」
「だからそういう……。まぁ、間違いじゃないんだが」
さっきとはまた違った感じで、ごにょごにょとつぶやくアンチョビさん。
声が小さくなっていたけど、ばっちり聞こえてたからね。
「可愛いなぁ、アンチョビさん」
「くっ。こう、何度も何度も……」
なんだか「ぐぬぬ」みたいな反応をしてる。
でもオレの腕の中から抜け出す素振りは見せない。
それをいいことに、もっと抱きしめて。頬ずりと一緒に頭まで撫でてしまう。
そんな状態で話の続きを聞くと。
「いざ自分がそんな立場になって、好きなことをあれこれやろうと思ってもな。その、何をすればいいのか分からなくなった」
つまり、デートで何をすればいいのか分からない、と。
ものすごく恥ずかしそうにアンチョビさんが言う。
いざ本番になって準備していたものが吹っ飛んでしまう、というのはオレも分かる。
それがオレとのデートが楽しみ過ぎて、というのだから。
胸がキュンキュンして仕方がない。
ならばオレの方がリードしてあげる、というのが男の甲斐性ではなかろうか。
よしオレに任せろと、アンチョビさんに豪語して見せる。
「何をしようかとか、どこに行こうかとか、思いつかないなら一緒に考えればいいよ。なんなら一度決めたことだって、なんか違うなと思ったら止めちゃって、また新しい何かを一緒に考えればいいしね」
というわけで。とりあえずは「ローマの休日」ごっこでいくことにした。変に奇をてらうことなく、まほと前回巡ったルートをそのままたどることにしよう。
「じゃあ、さっそく行こうか」
オレが手を差し出すと、アンチョビさんは素直に手を取ってくれた。
照れくさそうにしているのが可愛らしい。
手を握ると、彼女も「きゅっ」と握り返してくれる。
普段から戦車に触れているからなんだろう。アンチョビさんの手はちょっとがさついているというか、たくましい感じ。
でも女の子らしい小ぶりな手で、柔らかな感触が伝わってくる。
なんだか嬉しくなってしまって、つないだ手を何度も握ってしまう。
アンチョビさんもそのたびに、手に力を入れて握り返してくる。
しばらくそんなことをしてから、なんとなく目が合って。
「ぷっ」
「くく、何をやってるんだろうな」
あはは、と、ふたりして笑いながら。
手をつないだまま一緒に歩き出した。
―・―・―・―・―・―・―・―
トレヴィの泉。「後ろを向いた状態で泉にコインを投げると願いが叶う」という名所で、その願いの内容は投げる枚数によって変わる。
アンツィオにあるのは、言うなれば本場イタリアのものを模しただけ。でも願いが叶う云々も一緒に輸入されてきたようで。願掛けスポットとして内外で人気を集めているという。
「というわけで、やってきましたトレヴィの泉!」
「私が言うのもなんだが、テンション高いな大瀬良」
盛り上がっているオレに、ツッコミを入れてくるアンチョビさん。そう言いながら、彼女もウキウキしているのは丸分かりだ。
恋人と一緒に来たからには、願うのは恋愛成就系のもの。コインを2枚投げると大切な人と永遠に一緒にいられる、と言われている。
前回来た時は、まほとイチャついてばかりだったので。今回は改めて、アンチョビさんのためにコインを投げるのだ。
ツッコまれてしまった通り、オレはテンションを上げてノリノリ。
でもアンチョビさんは、高揚しているのと同時に、ちょっと緊張している様子。
「まさか私が、恋愛関連の当事者としてここに来るとは想像もしていなかったからな」
「まったく? 少しも考えなかった?」
「……ちょっとだけ、した、な」
「じゃあ今からオレと、その想像を現実のものにしよう」
「そういうのを声に出すな! 恥ずかしいだろ! 嬉しいけど!」
アンチョビさんが、ぷいっ、と、そっぽを向いてしまった。
拗ねちゃったのか、それとも恥ずかしくなったのか。
どちらにせよ、甘えてくれているように思えて悪い気はしない。
オレは張り切って、あらかじめポケットに入れていたコインを2枚取り出す。
もちろん、500円玉だ。
合計1000円の硬貨を手の中で弄ぶオレを見て、アンチョビさんは何度目か分からない呆れた声を漏らす。
「前も思ったが、500円玉2枚とか豪気過ぎるだろう」
「変にケチると、好きって感情も出し惜しみしてるような気がして」
もちろん、100円玉だから想いが小さいとか言うつもりはこれっぽっちもない。あくまでオレの気持ちの問題だ。滅多に来れない場所でのイベントなら奮発しちゃおうぜ、みたいな感じかもしれない。
「じゃあ、さっそく行くよー」
泉に背を向けて、硬貨を投げるべく身構える。ちょっとわざとらしいくらいに。
そして、「アンチョビさん大好きだ―」と口にしながら、背中を向けた泉に向かって勢いよく投げる。
「アンチョビさん、泉に入った?」
「おぉ、しっかり入ったぞ」
無事着水を確認して、ガッツポーズをするオレ。
さらに勢いでアンチョビさんとハイタッチをしてみせた。
「じゃあ次は、アンチョビさんの番ね」
はいどうぞ、と、500円玉を2枚手渡す。
その途端、アンチョビさんが身をこわばらせた。
触っている手からも伝わってくるくらい、ガチガチだ。
「アンチョビさん?」
「お、おおおおお、うん、平気だぞ平気よし行くぞ」
明らかに不自然な態度。というか、言葉だけじゃなく挙動までおかしい。錆びたロボットみたいなぎこちなさを見せたと思ったら、500円玉2枚を握りしめて超スピードで背中を向けてしまった。
さらに、少し背中を丸めて何やらブツブツつぶやいている。
「……私だけ失敗なんてできないぞ」
小さな声で聞こえたセリフ。どうやら、オレが成功させたのに、自分がうまくできなかったらどうしようとか思っているみたい。それはそれで、彼女の好意が伝わってきて嬉しくなってしまう。
内心ニヤついているオレをよそに、アンチョビさんは。
「よし、行くぞ!」
何か覚悟を決めたかのように、むっちゃ気合を入れたポーズで500円玉を投げようとする。
大袈裟に見えるけど、それがまた絵になるのがなんとも。
「とりゃあ!」
「あ」
でも、勢いのよさが空回りしてしまったのか。
背後の泉へ向けて投げたつもりの500円玉が、アンチョビさんの頭上高くへと飛んでいった。
アンチョビさん、投げた手を真上に上げたまま硬直していた。しかも目をつぶってる。
これはいかん、と駆け寄って。
「アンチョビさん、ちょっとごめんね」
「ひゃわっ!」
彼女を片手で抱き寄せる。いきなり抱きしめたせいか、アンチョビさんが変な声を出した。
ひとまず彼女のことは置いておいて。抱き留めたのとは逆の手を伸ばす。
そこに、アンチョビさんが投げた500円玉が落ちてくる。2枚ともしっかりキャッチ。
よしよし。
「アンチョビさん、アンチョビさん」
投げ終わって腕を上げた状態のまま、腕の中で硬直しているアンチョビさんに声を掛ける。
なんだか目を白黒させているけれど、彼女は手にした500円玉を見せると驚いた顔をした。
くるくる表情を変えるのが本当に可愛らしい。
と思ったら、今度は泣きそうな顔になった。
え、どうしたのアンチョビさん。
「コイン投げ、失敗してしまった……」
「あぁ、なるほど」
恋愛成就を願ったコインが泉に入らなかった、だから自分の恋は成就しない、どうしよう。
みたいなことを考えてるのかもしれない。
乙女心をくすぐるものにアンチョビさんは滅法弱い。だから、トレヴィの泉でコインを投げて恋愛成就、みたいなことはツボに刺さりまくりだと想像できる。
だからこそ、いざ自分がやるとなると緊張して、ガチガチのまま投げてしまい、「しくじった!」と大ショック。失敗したら、もしかするとオレとの仲がどうこうしてしまうかも、なんてことまで連想してしまったのかな。
そんなわけないのに。
「もう本当に、可愛いなぁ」
腕にちょっとだけ力を入れて、涙目のアンチョビさんを抱きしめた。落ち着かせるように頭を撫でてあげる。
戦車道ではイケイケな感じっぽいアンチョビさんだけど、「千代美」の方では案外そうでもないのかも。どっちでも自信を持っていいと思うんだけどな。
「平気だよ、アンチョビさん。コインが落ちる前にオレが取ったから、セーフセーフ」
失敗じゃないよ、問題ないぞと彼女にアピールする。
むしろちゃんと泉に着水するまで何度もやっちゃえばいいじゃん。
というか、一緒に投げ直せばノーカンになるんじゃない?
「そうなのか? 本当にセーフなのか?」
「そうそう。セーフセーフ。オレが許します」
「いいのかそれって」
「恋愛成就の相方であるオレがそれでいいって言ってるんだから。イタリアの恋の神様だろうとオードリーだろうと、文句は言わせないよ」
「なんだそれは」
アンチョビさんが、オレに抱きしめられたまま笑う。
うん。いろいろ百面相が見れるのも嬉しいけど、やっぱり笑顔が一番だよね。
というか、おまじないが気になるのなら、成功するまで何度だってコイン投げをすればいい。
恋でもなんでも、加点式で行こうぜ。
空中でキャッチした500円玉をポケットに仕舞い、逆のポケットから新たに500円玉を2枚取り出す。投げるコインを交換して心機一転、再チャレンジだ。
そんなオレにアンチョビさんは、何度目かの呆れた顔を向けてくる。
「大瀬良、お前はどれだけ用意してたんだ」
「とりあえず4回分くらい」
胸を張って言うオレ。腕の中で、呆れの色を深くするアンチョビさん。
なんだか気に病むのも馬鹿らしくなってくるな、と、アンチョビさんが小さな声で漏らし。力を抜いて、もたれ掛かってくる。可愛い。
抱きしめたまま、彼女の頭に頬ずりをする。
アンチョビさんもくすぐったそうにするけれど、拒否感はないようだ。
しばらくアンチョビさんをハグする感触を堪能して。
話を元に戻す。
「ともあれ、コイントスのリベンジ。不安ならオレと一緒にやろうよ」
改めて、恋愛成就のコイン投げに挑戦だ。
抱きしめていたアンチョビさんの肩に手を置いて、そのまま彼女の身体を回れ右させる。
そのままアンチョビさんと一緒に、泉を背中に向けた状態でスタンバイ。
500円玉2枚を彼女に握らせて、その手をさらにオレの手で包む。
「さっきのはノーカン。やり直しは、オレもサポートするよ」
恋人同士の共同作業ってやつだね。うん。
なんてことを耳元で言ってみたら、アンチョビさんがまた硬直した。
「恋人との、共同作業……」
と思ったら、今度は急に脱力して、片手で顔を覆いながら身悶え始めた。
どうやらまた、アンチョビさんの乙女心に何かヒットしたらしい。
「うおおお、恥ずかしい。でもイヤじゃない」
なんというか、何度言っても足りないくらい可愛いんだけど。
アンチョビさんの背中から覆いかぶさるような体勢だったので。そのまま手を彼女の顔に持っていって、ほっぺたをむにむにしてみた。おぉ、柔らかい。素晴らしい。
「ひゃにをする、ひゃめろおおひぇら」
「いやもう、アンチョビさんが可愛くて、何をしてもメロメロだよオレ」
よし。ここはひとつ、しっかりコイン投げも成功させて、アンチョビさんとの仲をさらに強固なものにしようじゃないか。
だから頑張ろう、と。アンチョビさんに後ろから抱きついて、彼女の手にオレの手を添える。
500円玉を握った手を軽く腕ごと上下させて、コイントスの動作をするように動かす。
「こんな風に、てっぺんに行ったところで手を放せば、後ろの方に飛んでいくよ」
「少し落ち着いていれば、なんてことのない簡単なことなんだがな。なんでさっきの私はしくじったのか……」
「それだけ真剣に、オレとの仲のことを考えてくれてたってことでしょ?」
「大瀬良やめろ。いじめるな」
「ごめんごめん」
「うー……」
ごまかすように、アンチョビさんの頭に頬ずりをする。ちょっと乱暴にぐりぐりと。バックハグをした状態なので、身体の前面がアンチョビさんの背中に密着する。彼女は何やら恥ずかしそうに唸るばかりだ。
「イチャついてばかりだとキリがないから、そろそろ本題に入ろうか」
「いやその、こういうやり取りがイヤなわけじゃなくてだな」
「じゃあコイン投げを成功させてから、もっとイチャつこう」
「堂々と言うな恥ずかし過ぎる!」
スキンシップが過ぎたのか、アンチョビさんが半ギレ気味に吼えた。
でもむしろ、緊張しないという意味ではいい状態なのかもしれない。いい具合に硬さがなくなっているので、今のうちに2回目のコイン投げを始めてしまおう。
「アンチョビさん、さっき言ったとおりに。1、2、3で、腕をてっぺんに上げて投げる。じゃあいくよー」
「え。いやいや大瀬良ちょっと待て」
「待たなーい。はい、いーち、にー」
「あーもう! とりゃあーっ!」
強引なリードでやけっぱちになったのか。アンチョビさんは吼えながら腕を上へと振るう。
オレと一緒に投げた500円玉たちは弧を描いて、いい感じに後方へと飛んでいく。
ちゃぽん
今度は見事に、泉へと着水した。
「お……、おぉ! 大瀬良大瀬良、成功、成功したぞ!」
「さすがアンチョビさん。やったぜ」
アンチョビさんは大歓喜。オレの手を取って、ぶんぶんと振り回しながら喜びを伝えてくる。
喜色満面、まぶしいくらいの笑顔。
オレだけに向けられてるその表情を至近距離で堪能しながら。
トレヴィの泉の前で一緒にくるくると回りながら、お互いに喜び合うのだった。
―続く―
まごうことなき、バカップル。
槇村です。御機嫌如何。
ご無沙汰しております。
どうしてこんなに時間が開いたのか、自分でも分からない。
せめて月イチ更新くらいにはしたい。(何度目だろうこのセリフ)
自分のことはさておき。
もっと展開が早くなるかなと思っていたんですが、
気がついたらトレヴィの泉だけで8000字に。
おかしいな。
アンチョビさんとのイチャイチャはまだ続く。
次回はジェラートを「あーん」します。