※この作品はR-18です。

2コマ堕ち的ハーレムエロす in ガルパン   作:槇村 a.k.a. ゆきむらちひろ

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74:ローマの休日 真実の口にて/アンチョビ

 ゴールデンウィークということもあって、生徒どころか観光客もたくさんいて賑わう、アンツィオ校のスペイン階段。

 そのど真ん中で、男女でアイスを「あーん」し合う。

 目立つだろう。

 アンツィオは女子校だから、なおさら目を引きそうだ。

 しかもその女子の方が、この学園艦の有名人で人気者のアンチョビさんだ。当人が一向に気づかないまま、アイスを食べさせあったり、お喋りに花を咲かせたり、笑ったり恥ずかしがったり、果ては訳の分からないふざけ合いをしたりしているのだ。

 うん、注目されるのも仕方がない。

 

「うぉぉぉぉ、恥ずかし過ぎるぅぅぅ……」

 

 無自覚で素なイチャつきぶりをたくさんの人に見られていたということに、アンチョビさんが気付いて。今日一番というくらいにムチャクチャ悶えていた。食べ終わったアイスのカップを足元に置いて、両手で頭を抱えている。

 なんかこう、今日だけでこういう無防備な姿を何回も見てるような気がする。

 可愛いなぁ、もう。

 羞恥にまみれるアンチョビさんの頭を、ついつい撫でてしまう。

 なだめるつもりはあるんだけど、彼女が恥ずかしがっている原因がオレでもあるから。マッチポンプなんじゃないかって気もするけど、そこは無視してしまおう。

 

「よし。じゃあ、アンチョビさん。この場から一緒に逃げ出そう」

「え? おいこら、大瀬良っ」

 

 空になったアイスのカップをふたり分重ねて、立ち上がる。

 アンチョビさんに手を差し出すと、無意識なのか彼女は手を取ってくれた。

 ゆっくりと立ち上がらせる。そして何かを考えさせるより前に、アンチョビさんの手を引いて歩き出した。

 

「オレはもっと、アンチョビさんとイチャイチャしたいな。ひと目が気になるなら、場所を変えて、さりげなくイチャつこうぜ」

「お前、そのストレートすぎるのは本当にどうなんだ? いや、別にイヤなわけじゃないんだが」

「だって、遠距離恋愛なんだから。なかなか顔を合わせられないじゃない。それならここぞとばかりにイチャついて、千代美成分を存分に摂り込むべきだと思うんだよね」

「なんだその成分は。あー、うん、いや、分かるぞ。分かるんだけどな」

「アンチョビさんは、オレ成分、いらない?」

「いるに決まってるだろう」

「もうほら、可愛いことを言って。アンチョビさん大好き」

「でも恥ずかしいんだ! 嬉しいけど、恥ずかしいんだよ!」

 

 歩きながら、なんだかバカっぽいやり取りをしてる。

 ぶんぶんと手を振り回しながら抗議をしてくるアンチョビさん。でも片方の手は、オレと手をつないだままで、離そうとはしない。なんのかんの言いながら心を許してくれて、好いてくれているというのが感じられて嬉しい。

 

「アンチョビさんは、オレとイチャイチャするのがイヤなわけじゃないんでしょ?」

「それは、まぁ、イヤじゃないぞ。面と向かって聞かれると恥ずかしいが」

 

 アンチョビさんの手を引いて歩き出したけど、どこかへ向かっているという訳じゃない。ただイチャついてるのを見られた場所から離れようとしているだけ。スペイン階段からちょっと距離が取れて、彼女も落ち着いてきたみたいだ。

 息をついて、なんとなくアンチョビさんに目を向ける。

 ちょうど彼女の方も、オレを見つめてきて。

 目が合うなり、訳もなく面白くなってしまい。

 どちらからともなくつい、笑ってしまった。

 

 

 ―・―・―・―・―・―・―・―

 

 

 スペイン階段にはたくさんの人がいた。でも離れていくにつれ、少しずつ人の声や姿が薄くなっていく。まるで人の目を避けて、何かから逃げるような感じ。

 

「なんだか、ちょっと『ローマの休日』っぽくない?」

「ははっ。追われてるわけじゃないが、手を繋いで逃げるというのは、それっぽいな」

「普段から"アンチョビ"として見られてる視線から連れ出す、って意味ではまさに、さらって逃げるって感じじゃない?」

「……好きな男に連れ去られるとか、乙女心にちょっと響くものがあるんだが」

 

 アン王女とは違って、"アンチョビ"としての自分に嫌気がさしてるわけじゃないだろうけど。たまには羽を伸ばしたくなることだってあるだろう。

 オレとのプライベートな時くらいは、素の部分を強めに出してくれると嬉しい。なんだったら『ローマの休日』のジョーみたいに、アンチョビさんをあちこち振り回して気晴らしをさせてあげたりして。そんなことをすれば気も晴れるだろうか。

 

「さて、アンチョビさん。この後はどこに行く?」

「いやいやちょっと待て。私が案内するならともかく、大瀬良が先導してどうする気だ」

「んー、特に何も考えてない」

「おい、それはそれでどうなんだ」

「アンチョビさんと手を繋ぎながら、一緒に歩いてるだけで嬉しいし。気の向くままに歩いていけばいいかなって。アンチョビさんがいるわけだから、迷うことはないでしょ」

「おお……」

 

 アンチョビさん、なぜだか分からないけれど感無量のご様子。また彼女の乙女心のどこかにヒットしてしまったらしい。

 そんな彼女の手を取って、引き続き歩き出す。アンチョビさんはなにかに悶えつつも、オレに手を引かれるままついてきてくれる。

 もうなんというか、可愛いくて仕方がない。

 アンチョビさんが喜びそうなことはなんだろう、なんて考えながら、足のおもむくまま気の向くまま、歩を進めるオレだった。

 

「そう言えばアンツィオ校って、全区域を観光客に開放してるの?」

 

 手を繋いで歩きながら、その場で思いついたことをつらつらと話したりする。

 そんな中のひとつ。学園艦でありながら観光地でもあるアンツィオ校は、学生以外の人もそれなりに多い。女子校でありながら、男の姿もけっこう見られる。単純に、今がゴールデンウィークだからなのかもしれないけど。

 

「基本的には、特に制限はないな。とはいっても、学園艦上に住んでいる人たちの住居区とかは、わざわざ足を運ぶ観光客はいないぞ。校舎や学生寮がある区画もそうだ」

「言われてみれば確かに。いくらローマを模してるとはいっても、全部が全部、観光地化してるわけじゃないよね。普通に暮らしてる人がいるわけだし」

 

 あれこれと会話を交わしながら、手を繋いだままゆったりと歩く。

 いわゆる観光地エリアをまだ歩いているため、街並みや景色はいかにも異国情緒を感じられるものだ。そんなアンツィオの風景を眺めつつ、気になるところがあればアンチョビさんに尋ねてみて。彼女もいろいろとエピソードを交えながら、オレの問い掛けに答えてくれる。

 嬉しそうに話すアンチョビさんにナビゲートされながら、あちこちを歩き回る。

 本当に、これといって目的地を決めずに歩いているだけ。

 すごく、楽しかった。

 そうこうしているうちに。気がつくと、ひと際大きな建物、建物? とにかくでっかい建築物の前にたどり着く。

 

「おぉ、間近で見るとひと際でっかく感じるなぁー」

 

 遠目からでも目立つそれは、 古代ローマ時代の巨大な円形闘技場・コロッセオ。

 トレヴィの泉を再現してたのもすごいけど、これにもまた驚かされた。

 超リアル。

 でっけぇ。

 というか、デカすぎだろ。学園艦の上だぞ?

 実際にイタリアにあるコロッセオは、周囲が500メートル以上、高さは50メートルにも及ぶという。でもアンツィオ校にあるコロッセオは、さすがにスケールダウンされているようだ。それにしたってデカいけど。

 

「アン王女よろしく、アンチョビさんの家はここになるの?」

「いくら寝ぼけていてもそんなこと言えないぞ、私は」

 

 アンチョビさんと一緒にコロッセオの中へ入っていく。

 実際に中に入ってみると、これまたデカさを感じられる。

 本当にただの観光場所として建てられたのか。それとも何か意図があるのか。ひょっとしたら夜な夜な、アンツィオの剣闘士たちがしのぎを削って闘いを繰り広げているのかもしれない

 

「彼女たちはいったい何を目指して闘うのか!」

「想像力豊かだな、お前は……」

 

 思いついたことをそのまま口にしていたら、アンチョビさんに呆れられてしまった。

 それはともかくとして。

 このコロッセオ、観光場所であると同時に、多目的ホール的な扱いなんだとか。

 さらになんと、戦車道の練習場所としても活用してるらしい。

 このコロッセオの中で、戦車たちが入り乱れて走り回るのか。胸アツだな。

 

「ウチのメインになるCV33は、戦車としては小型だからな。コロッセオの中でもガンガン動き回れる。むしろ限られた空間だからこそ、小回りを活かした操縦方法なんかも身につけられるっていうのはあるぞ」

「はー、なるほど。環境がテクニックを生み出した、って感じなのかな」

「そうだな。実際に、私たちがナポリターンと呼んでいる動かし方も……」

「アンチョビさん、ストップ」

 

 ノリノリで解説するアンチョビさんを制止する。

 一応、オレは他校の生徒で、少なからず戦車道に関わっているわけだから。そういうのを聞いてしまうのはあまりよろしくない。いくらオレが戦車道について無知だとしても、いやだからこそかな、何かのきっかけで気がつかないまま口外してしまうこともありえる。

 アンチョビさんに迷惑を掛けてしまうかもしれないので、あまり内情に関わることを聞くのは避けたい。

 そう言うと、アンチョビさんはえらく感心してみせた。

 

「すごいな、大瀬良。そんな気遣いをされるとは思っていなかった」

「調べたりすれば、思いついたり行き着いたりする情報かもしれないけど。少なくとも、オレの口からそういうのが漏れちゃうのは避けたいなぁ」

 

 他校に恋人がいるっていうのは、そういうことも考えなきゃいけないな。

 もちろん、戦車道を頑張るアンチョビさんは応援したい。でも、実際の試合でアンツィオと大洗が対決、みたいなことになったら、どちらを応援するのか。

 大変申し訳ないが、その時はやっぱり、大洗を応援することになるだろう。

 

「待てよ? チームの勝利を応援するのはそれでいいとして。アンチョビさんが大活躍するところを素直に喜ぶのは、大洗サイドにいても問題ないのでは」

「いやその、あのな? そう言ってくれるのは嬉しいんだが……」

 

 そんな風にあれこれとおしゃべりをしつつ、コロッセオを歩いて回る。

 肩ひじを張らないゆるいやり取りが心地いい。

 アンチョビさんも、笑ったり慌てたりドヤ顔をしたり笑ったりと、いろんな表情を見せてくれる。それが、すごく嬉しかった。

 

 

 ―・―・―・―・―・―・―・―

 

 

 コロッセオを出て、再びぶらぶらと歩き回り。

 次にやってきたのは、真実の口。

 

「ここが、オレとアンチョビさんの恋の始発駅だ」

「大瀬良、お前もしかしてイタリア人じゃないだろうな」

 

 歯の浮くような言葉を、照れも躊躇もなく口にするオレ。

 対してアンチョビさんは呆れた声を漏らしている。顔は真っ赤になってるけど。

 

「ここはやっぱり、アンチョビさんへの愛を再確認すべきだろう」

 

 右手を掲げながら、オレはそう豪語してみせる。

 前回は、まほたちへの愛を叫びながら手を突っ込んて、真実の愛を証明してみせた。

 今度はアンチョビさんへの愛を証明するために、改めて手を突っ込まなければ。

 例え周りからハーレム野郎だと思われても、彼女たちへの想いは本物なのだ。

 

「見ててねアンチョビさん。オレの真摯な想いをイタリアの神様にも見せ付けてやる」

「もしかして大瀬良、アンツィオと相性いいのか? 勢い任せっぽいのに案外本気なところとか」

「勢いじゃなくて、冷静に『アンチョビさん大好き』って言った方がいい?」

「恥ずかしいから止めろ。いや、止めて欲しくない気持ちも確かにあるが」

「じゃあそっちの方はまた後でってことで」

「なんだまた後でって」

 

 絶妙なボケとツッコミと言うべきか、バカップルのノロケの応酬と言うべきか。

 とにかく、アンチョビさんとのやり取りを楽しみながら。オレは真実の口、でっかい石の円盤の中央にある顔の穴に、手を突っ込んだ。

 

「アンチョビさん、大好きだぞー!」

 

 照れも何もなく、アンチョビさんへの想いを口にする。

 そして言葉を噛みしめるように、ゆっくりと手を引き抜いていく。

 

「どうだ!」

 

 ババ-ン、と効果音が出てきそうなどや顔で、無事に引き抜かれた手を掲げる。

 これがアンチョビさんへの愛の証である、とばかりに。

 彼女の方を見れば、すごく恥ずかしそうな顔をしていた。赤くなった顔を両手で包んで、ふにゃふにゃと身悶えている。実に可愛らしい。

 

「イタリアの神様も、オレとアンチョビさんの恋路を祝福してくれてるぞ」

「お前、実は酔っ払ってるんじゃないだろうな。嬉しいけど。嬉しいけど!」

 

 何度目か分からない、ノリとツッコミのようなやり取り。

 オレがなんの照れもなく好き好きと言って見せれば、アンチョビさんが顔を赤くしながら言葉をかぶせてくる。

 すごく楽しい。

 

「じゃあ次は、アンチョビさんの番だね」

「は?」

「だって、前回は手が引っ掛かってたでしょ。考えてみればそれのおかげで恋仲になれたっていうのはあるけど、リベンジというかさ。すんなり手を引き抜けた経験をしておいた方が、スッキリすると思わない?」

「むぅ……」

 

 前回アンチョビさんは、真実の口に手を突っ込んだけど引っ掛かって、パニックになっていた。杏さんに騙されて、みたいなところはあったけど、オレに対して好意なんて別に、みたいな態度を取ったら手が抜けなくなった。つまりはオレに対して好意があるということが間接的に分かってしまったわけだ。正直、嬉しくて顔がにやけてたねその時は。

 アンチョビさんが何を考えているかまでは分からないけど、渋々ながら真実の口の前に歩を進める。中央に顔を模した彫刻のあるでっかい円盤の前で、手を差し入れる穴を見つめている。

 ひょっとすると、また抜けなくなったらどうしようとか考えてるのかもしれない。

 

「あんまり気負わなくてもいいよ、アンチョビさん」

 

 彼女の肩に手を置いて、フランクに声を掛ける。

 緊張をほぐすように、アンチョビさんの肩を軽く揉んであげながら。

 耳元に口を近づけて、ゆっくりと囁く。

 

「オレは、アンチョビさんのことが大好きだよ」

「っ……」

「アンチョビさんは、オレのこと、どう思ってるの?」

 

 言い聞かせるように、ストレートに好意を伝える。

 リラックスさせるつもりが、もっと硬直させてしまったかもしれない。

 あぁもう。顔を真っ赤にさせて恥ずかしがってるアンチョビさん、すっごく可愛い。

 踏ん切りをつけたのか、アンチョビさんが真実の口に手を突っ込んだ。

 そして、彼女の口から、想いが紡がれる。

 

「……私も、大瀬良のことが好きだぞ」

 

 耳元まで顔を近付けているのに、それでもギリギリで聞き取れるような小さな声。

 でもはっきり、オレへの好意を口にしてくれるアンチョビさん。

 とはいえ恥ずかしさが勝るのか、オレの方に顔を向けてくれない。

 それはそれで、ツインテールの髪が上げられたうなじを間近に見ることになって。

 綺麗な白い肌をした首筋が、赤面した顔に負けないくらい赤くなっていた。

 

「アンチョビさん、可愛いなぁ」

「ひやっ」

 

 想いがあふれ出てしまって、ついつい彼女を抱きしめてしまう。

 アンチョビさんの背後から抱きついて、思ったよりも細い肩をゆったりと包み込む。

 いきなりのハグに硬直するアンチョビさん。

 片手は、真実の口に差し入れたまま。

 オレは彼女の手をそっとつかんで、ゆっくりと引き抜いていく。

 アンチョビさんの手は、何かに引っ掛かることなく、真実の口から抜けてくれた。

 

「ありがとうアンチョビさん。嬉しいな」

 

 背中に抱きついたまま、彼女の手を持ち上げて。

 綺麗で小さな手に、軽く口づけた。

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と。

 手の甲や手首、石で擦れたかもしれないところを癒すように。

 

「お前は本当に、恥ずかしげもなくそういうことを……」

 

 まぁ、自分でもキザったらしいなとは思うけど。アンチョビさんが喜ぶかなと思って。

 案の定、ものすごく恥ずかしそうに、赤面しながら、もう片方の手で自分の顔を覆っている。でもその向こう側の表情は、悶えながらもニヤけているという、すごく複雑なものになっていた。

 

「うぉぉぉ……。やっぱり恥ずかし過ぎるぅ……」

「照れてるアンチョビさんも可愛い。好き」

 

 背中からあすなろ抱きされたまま悶絶するアンチョビさん。それでもオレの腕をほどいたりしないところが、恥ずかしいけど嫌なわけじゃないっていう感じがして。すっごく嬉しくなる。抱きしめながら頬ずりをしてしまうくらい。

 明るく頼もしく、堂々とした態度の頼れる年上お姉さんが、オレの腕の中で身を委ねてくれているのが堪らない。愛おしさがどんどん募っていく。ベッタベタに甘やかすようなつもりで、抱きしめながら耳元で好き好き、可愛い可愛いと囁き続けた。

 そんなことを続けていると、羞恥心に限界がきたのか。

 

「ぬあーっ! いい加減にしろーっ!」

「おっと」

 

 アンチョビさん、両腕を振り上げながらいきなり絶叫。

 抱きついているオレの腕を振りほどいて、身体を反転させて正面を向いてくる。

 真っ赤になった顔で見上げてきて、睨みつけたかと思ったら。

 がばっ、と大胆に抱きついて。思い切り顔を押しつけてきた。

 なんというか、衝動的になると大胆になってくるのかな。

 可愛い。ほんわかする。

 抱きつかれるに任せて、オレはアンチョビさんの頭を撫でた。

 それがまた羞恥心を煽ったのか、彼女はさらに顔をぐりぐりと押しつけてくる。

 空気を読んだのかは分からないけれど、幸いにも真実の口にいるのはオレたちだけ。それをいいことに、アンチョビさんはしばらくの間、オレに抱きついたままだった。

 最初は恥ずかしそうだったけれど、だんだん慣れてきたのか。抱きついている彼女の表情がゆるんでいく。

 可愛い。

 周囲に誰もいないのは、アンチョビさん的には幸いだったろう。

 ひと目がないなら、オレも遠慮する必要はない。

 彼女を抱きしめ返しながら、さらに頭を撫でて、頬ずりをする。

 アンチョビさんも力を入れてきて、より強く抱きついてきた。

 腕の中に収まっている感触が心地いい。

 もっと言うと、胸とかいろいろ、女の子の柔らかさも伝わってくるけど。

 興奮よりも、愛おしさみたいな感覚の方が強くこみ上げてくる。

 

「ん-。アンチョビさーん」

 

 しばらくされるがままになっていたら、抱きついていたアンチョビさんの力がゆるんだ。

 オレ成分みたいなものは充電できただろうか。

 目を合わせようとすると、アンチョビさんは照れくさそうに顔をそむける。真っ赤っかになりながら。可愛い。

 恥じらうアンチョビさんの頭を撫でながら、これからどうしようかと考える。時間はまだ夕方には早い頃。デートはまだまだ終わらない。

 

「この後は、どうする? アンとジョーみたいに、パンテオンの前でお茶する?」

 

 映画と同じように、パンテオン前にカフェがあるかどうかは知らないけど。

 でもありそうな気がするな。

 一緒に歩き回るのもいいけど、腰を据えておしゃべりをするのもいいんじゃないかな。

 ということで、提案をしてみたんだけど。

 

「……えっと、だな」

 

 何か言いたそうに、言葉を濁すアンチョビさん。もじもじしつつも、オレの腕の中から離れようとしないのが嬉しくて、胸がキュンキュンしてしまう。

 

「どうかしたの? アンチョビさん」

 

 優しく先を促してみれば、彼女は「あー」とか「うー」とか口ごもりながら言うか言うまいか躊躇うようなそぶりを見せて。

 意を決したように、赤くなった顔をオレに向けてきた。

 そして。

 

「その……。これから、私の部屋に来ないか?」

 

 想像していなかった言葉が飛び出てきた。

 ちょっとびっくり。

 アンチョビさんの方から、誘われてしまった。

 

 

 

 ―続く―




意味深なアンチョビの言葉に、俊一の胸が高鳴る。
槇村です。御機嫌如何。


約1ヶ月ぶり。
前回は2ヶ月空いてたから、半分の時間で更新できたぞ。
もう少しアンツィオ編は続きます。
あれもこれもと、いろいろ入れ込みたくて。

なおネタバレしますが、次回はエロくなりません。
甘々にはするつもりです。


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