※この作品はR-18です。

Irregular ~存在を許されざるもの~   作:トド

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第二章ー④

 眼前には、どこまでも大きな青い海が広がっている。

 

 耳に響くのは穏やかな潮騒の音。頬を撫でるのは海の香を含んだ潮風。

 

「……海は、本当に大きいんですね……」

 

 生まれて初めてみる海はあまりにも広大で、リナは言葉を失い、しばらくの間、魅入られるように見つめ続けていた。だが、

「……ですが、ここはいったいどこなのでしょうか?」

 がっくりと肩を落とし、リナは自分の不甲斐なさに泣きたくなった。

 

 道は何度も確認していた。帰路の目印になるものを決めて、それらをしっかりと覚えていた。しかし、夕食時近くのこの街の雑踏は、リナの想像をはるかに超えていたのだ。

 

 あと少しで宿屋に戻れるところまで来ていたにもかかわらず、人波に道を阻まれ、仕方なく迂回したのが失敗だった。

 

 その後も人波に行く手を遮られ続け、その度に迂回した結果、リナは完全に方向を見失ってしまい、気がつくと海の近くに来てしまったのである。

 

「うううっ。ファリアさんに、夕方は人通りが多くなるからと注意をされていたのに……」

 ついつい、見たこともないほど大きな本屋と、その品揃えに感激してしまい、あれもこれもと物色を続けたのがいけなかった。

 

 リナがふと気がつくと、空は赤く染まり始めようとしていた。それから慌てて宿に戻ろうとして、この体たらく……。

 

 落ち込んでいても事態は好転しないと思い、リナはとりあえずここまで来た道を戻ろうとした。だが、

「あの、すみません……」

「はっ、はい!」

 突然背中から声をかけられ、リナは慌てて返事を返し、声のした方に振り向く。

 するとそこには、リナと同年代くらいの少女が立っていた。

 

「あの、旅のシスターさんですよね? こっちに行っても、小さな舟が何台かあるだけで、他には何もありませんよ」

 ブラウンの髪を耳の辺りで短く切りそろえた少女は、リナにそう教えてくれた。きっと、人気のないところに向かって歩いていく、特徴的な白いローブ姿の女の子を心配して、声をかけてくれたのだろう。

 

「あっ、あの、仰るとおり、私は旅のシスターで、リナと申します。その、お恥ずかしい話なのですが、道に迷ってしまいまして……」

 相手が同年代くらいに見えたことと、一見したところ悪い人には思えなかったことから、リナは目の前の少女に自分が迷子であることを明かした。

 

「……なるほど。そうですか。この辺りは入り組んでいるから、分かりにくいんですよね。

 あっ、あたしはコリィです。この街で配達業をしています。ですから、この街の地図は全部頭に入っていますんで、力になれると思いますよ」

 

 自信ありげなコリィの言葉に、リナは少し安堵した。

 

 今回はきちんと宿屋の名前も覚えている。コリィさんに道を教えてもらえれば、約束の時間までに宿に戻れるかもしれない。

 

「その、『オリムの宿』に行きたいのですが、ご存知でしょうか?」

「『オリムの宿』? ええ、知っていますよ」

 コリィの答えに、リナは安堵の笑みを浮かべ、

「それで、どこの『オリムの宿』ですか?」

 その笑顔が凍りついた。

 

「……おっ、『オリムの宿』というのは、一箇所ではないのですか?」

「ええ。『オリム』という名前は宿泊会社の名称で、支店がこの街や近郊の町や村にもいくつもあるんです。その、ここから近い宿だけでも三箇所ほどあって……」

 

 コリィが丁寧に説明してくれたが、リナにとっては後の祭り以外の何物でもない。

 

 ただ確実なのは、『オリムの宿』という名前だけでは宿を特定できないということだけだった。

 

「そっ、そうです。私の泊まる宿屋は、馬車乗り場の近くの宿で……」

「う~ん、どの宿屋も馬車乗り場の近くにあるのが普通で……。乗り場の名前は……覚えていないみたいですね……」

 リナの重い表情から察したのか、コリィは苦笑を浮かべる。

 

「あっ、そうです。少し離れたところに大きな本屋さんがあって……」

 なんとか宿を特定してもらおうと、リナはコリィに分かる限りの情報を伝える。

 

「本屋……。お店の名前は分かりませんか?」

 リナは知らなかったが、カリスの街には本屋が大小あわせると十店以上もある。そのため、「少し離れたところに本屋がある」というだけでは情報として弱い。

 

「……すみません。お店の名前は覚えていません……」

 

 本当に申し訳なさそうに答えるリナに、コリィはどうしたものかと考え込んでいたが、不意に、「あっ、そうだ」と呟き、

「シスター。その本屋で本を買いませんでしたか?」

 そう続けた。

 

「あっ、はい。本を二冊ほど買い……」

「包装の紙袋はありますよね? よければその紙袋を見せてください」

 言葉を遮り、コリィはリナに本屋で買った本が入った紙袋を出すよう促す。

 

 リナは何の疑いもなく、カバンから先ほど購入した本を袋ごと取り出し、コリィに手渡した。だが、リナが一見したところ、紙袋には店の名前などは書かれてはいない。

 

「……なるほど、『風見の鳥』ね。と言うことは……。わかった! シスター、私の後を付いてきてください。シスターの泊まる宿屋に案内しますから」

 本をリナに返し、コリィは満面の笑みを浮かべる。

 

「えっ? どうして、急に……」

 リナには、コリィが何を根拠に自分の宿泊する宿を割り出したのかまるで分からない。

 

「それは、歩きながら教えますから。急いでいるんですよね? 結構距離があるので、すぐに向かわないと」

 

「あっ、待ってください!」

 踵を返して歩き出したコリィを見失わないように、リナは慌ててその後を追った。

 

 

 

「……でね、ただの紙袋だけど、各店でそれぞれ特徴があるの。たとえば、リナの買った本屋、『風見の鳥』は、少し灰色っぽいのが特徴なんだよ。

 他にも『幸せのブーケ』って店は、紙袋からほんのりラベンダーの香りがするんだよ。でも、匂いをつけた当初は加減が分からなくて、本にまで匂いが移るって不評でね」

 

「……そんな違いがあるんですか。コリィさんは物知りなんですね」

 コリィの説明に、リナは笑顔で相槌を打つ。

 

「もう、コリィでいいよ。あたしも呼び捨てにしているんだし。……まぁ、呼びやすい呼び方で呼んでね」

「あっ、はい」

 嬉しそうにそう答えて微笑むリナ。コリィも釣られて笑みを浮かる。

 

「やっぱり、コリィさんはいい人です」

 少し話をしてみて、リナのコリィに対する評価はそれだった。

 

 簡単にお互い自己紹介をし、リナはコリィが自分と同い年であることを知った。そして、リナが「敬語はいりませんので、普通に話してください」とお願いすると、快く応じてくれ、今は宿屋までの道のりを談笑しながら二人で歩いている。

 

「まぁ、私も結構本を買うから自然に覚えちゃったんだけどね。欲しい本が売り切れていたら、別の本屋まで足を伸ばしているうちに自然と……」

 

「コリィさんも本が好きなんですか?」

 同好の士を見つけたとばかりにさも嬉しそうなリナに、コリィは苦笑し、

「まぁね。でも、友達には似合わないなんていわれるんだけどね。あたし、走るのが好きで、仕事以外でも気晴らしにも良く走っているんだ。だから、どうもあたしが静かに本を読んでいるのが意外みたいでさ」

 そう答える。

 

「そういえば、リナはどうしてこの街に来たの? ……って、仕事だよね。シスターが観光旅行をするとは思えないし……」

「はい。おっしゃるとおり、お仕事です。実は……」

 リナは話せる範囲で簡単に「お役目」の内容をコリィに説明する。

 

「へぇ~。ユウヤさんのあのベッドにそんなことをするんだ……」

 そんな呟きに、リナが怪訝な表情を浮かべると、コリィは悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 

「ふふふっ。あたしがベッドのこと知っているのが不思議? だって、何回もそこで寝てたら分かるに決まっているじゃない」

「……えっ? そっ、その、コリィさん。あのベッドは今、ユウヤさんのお宅ではなく、コリィさんのお宅にあるんですか?」

 もしもそうなら、明日からの「お役目」のために訪問する家が変わってしまう。

 

「ううん。ユウヤさんの家にあるよ。私がたまに使わせてもらっているだけ」

「……えっ? ベッドを使わせてもらって……」

 コリィの言葉を頭の中で数度反芻し、リナの顔がたちまち真っ赤に染まった。

 

 それと同時に、リナの頭の中には、ファリアに隠れて読んでいる件の性教育の本の内容が駆け巡り、首まで真っ赤に染まってしまう。

 

「あれっ、どうしてそんなに真っ赤になっているのかな、リナは?」

 意地の悪い笑みを浮かべて、さもリナの赤面している理由が分からないかのように尋ねるコリィ。

 

 リナは「なんでもありません」と顔を背けるしかなかった。

 

「ぬふふふふっ。リナってば、シスターなのにエッチなんだね」

「なっ、えっ、ちっ、違います! 私は何も……」

 

 リナがそう否定の言葉を口にしても、熟したトマトのような真っ赤な顔では説得力は皆無だった。

 

 何とか否定の言葉を続けようとしても、上手く言葉が出てこなくなり、最後には顔を俯けて黙り込むしかなかった。

 

「あはははっ。ごめん、ごめん。少しからかい過ぎちゃった」

 コリィは笑みを浮かべながらもリナに謝罪し、

「今の話、全部冗談だから。あたしがベッドのことを知っているのは、ただ単にユウヤさんの代わりに組み立てたからで……」

 どうしてベッドのことを知っているのか、本当のことを話してくれた。

 

「……そうだったんですか」

 コリィの話を聞き、リナはほっと胸を撫で下ろす。

 

「少し、安心しました。……ユウヤさんはいい人なんですね」

「えっ? どうしてそう思ったの?」

 さしてユウヤのことを話したわけでもないのに、何故リナがユウヤの性格をそう結論づけたか理解できないのか、コリィが不思議そうに尋ねてきた。

 

「あっ、すみません、突然変なことを言ってしまいまして。その、私、不安だったんです。男の人にお会いしたことがなかったので、ユウヤさんがどんな方か想像できなくて。

 ですが、コリィさんがユウヤさんのことを話している時は、すごく嬉しそうに笑っていたので、なんとなく、いい人なのかなと……」

 リナの言葉に、今度はコリィの顔が赤く染まる。

 

「……ねぇ、リナ。そんなにあたしは嬉しそうにユウヤさんのことを話してた?」

「はい。とても嬉しそうでした」

 リナがそう断言すると、コリィは気恥ずかしそうに「あははっ」と呟いて頬を掻く。

 

 これが先ほどからかわれた趣旨返しならば文句の一つも言えるのだが、リナはそんな意図はなく、素直に思ったことを口にしただけなので、それも叶わないためだ。

 

「……ねぇ、リナ。『魔法使いの家事手伝い』って話を読んだことある?」

 何を思ったのか、コリィは不意に話題を変えた。

 

「すごい魔法を使えるのに、その力をまったく使おうとしない男性の魔法使いと、おしゃまな女の子のお話ですね」

 

 魔法使いになることを夢見る幼い少女――アミィは、町外れの小屋に引っ越してきた男性、アゼルが魔法使いであることを知り、無理やりその弟子になって彼の家に住み込むことになる。

 

 でも、アゼルは魔法以外に得意なことはないのに、四苦八苦しながら町で働いてお金を得、慎ましやかな生活を続けていて、アミィに魔法を教えてはくれない。

 

 はじめは魔法を教えてくれないことに憤っていたアミィは、けれどもだんだんその男性に心を引かれていって、そのうちお嫁さん気取りで家事手伝いを行うようになるお話だ。

 

 いつもは少し頼りないのに、要所で大人としての顔を見せるアゼルと、普段はませた女の子なのに、時々子どもらしい顔を覗かせるアミィのキャラクターが魅力的で、リナもお気に入りの話だ。

 

「そうそう。いい話だよね。あたしが一番好きな物語なんだ。……それでね、それに出てくる魔法使いのアゼルにそっくりな人なんだよね、ユウヤさんて。

 頭は良いのにどこか抜けていて、少し頼りなくて。でも、すごく優しくて……」

 

 コリィはどこか憂いを含んだ笑みを浮かべたが、ブンブンと頭を振ってすぐに明るい表情に戻る。

 

「まぁ、ユウヤさんは本当に優しくていい人だから、別に不安になることはないよ。それよりもさ、あたしが好きな話を教えたんだから、リナが好きな話も教えてくれない?」

 

 そう促され、リナは少し考える。いろいろ好きなお話があって、どれが一番とは決め難い。だが、その中であえて一番好きな物語と言えば、と悩みに悩み、結論を出した。

 

「いろいろ好きなお話があって難しいですが、やはり『キレリシスの迷宮』ですね」

 

 古代遺跡に迷い込んだ少年と少女が、二人で協力してそこからの脱出するために奮闘するお話で、次から次へと現れる魔物や、さまざまな罠を掻い潜り、二人で協力し、時には喧嘩をしながら進んでいくのはハラハラドキドキして、リナが初めてその話を読んだときには、続きが気になって寝る間も惜しんで読み耽ってしまったほどだ。

 

「ああ、分かる、分かる。面白いよね、あのお話も。ミリアは少しわがままだけど可愛いし、テックはいざというときにとても格好いいし……」

 そこまで言うと、コリィはふとあることに気づき、唇の端を上げた。

 

「でもさ、リナはどうしてあの話が一番好きなの?」

「……ええと、ミリアさんとテックさんもとてもいいキャラクターですし、やはり未知の迷宮を手探りで進んでいく緊張感がいいですね。とてもハラハラするんですけど、続きが気になってしようがなくて……」

 

 リナがそう答えると、コリィはにんまりと笑みを浮かべ、

「でもさぁ、リナが好きなのはそこだけじゃないんじゃないかな? たとえば、『遺跡に落下したとき』とか、『喧嘩した後の小部屋での焚き火の場面』、『巨大な魔物を前に決死の特攻をするとき』、『罠にかかって、ミリアが怪我をして、テックに看病されているとき』、『最後に遺跡を抜けたとき』」とかが好きなんじゃないの?」

 そうリナの耳元で囁いた。

 

「えっ? ……あっ……」

 一瞬、何を言われたのか理解できなかったリナだったが、コリィの言った「キレリシスの迷宮」の各場面を思い出し、再び顔を真っ赤にそめた。

 

「あははっ、やっぱり。リナってば本当にエッチだぁ~」

「ちっ、違います! 私は、その、あの……」

 

 コリィが例示したのは、全てミリアとテックのキスの描写がある場面だ。

 

 実は、『キレリシスの迷宮』にはキスシーンが数多い。最初は偶然、アクシデントのような口付けから始まり、喧嘩しながらもお互いしか頼るものがない状況下での結束を誓う口付け、二人が互いを信頼して生き残ることを誓う約束の口づけ……といった具合だ。それゆえ思春期の少女達にとってはとても興味を引かれる話となっていて、この物語の人気の一つでもある。

  

 リナも例外ではなく、それらのキスの描写に心引かれ、そういった場面を読むたびにキスというものに憧れを募らせていた。

 

「いやいや、隠さなくてもいいって、いいって。シスターってストレス溜まりそうだしね。そりゃあ、エッチなことにも興味持つよねぇ~」

「ううっ……」

 

 年頃の少女が、異性やその間でのスキンシップに興味を示すのは至極当然なことだ。

 

 リナも少し考えれば、コリィも詳細に『キレリシスの迷宮』のそのような場面を覚えているのだから、自分と同じであることに気づいただろう。

 だが、この時のリナは恥ずかしさで頭が回らず、再び顔を俯けて黙り込むしかなかった。

 

「ああっ、ごめん、ごめん。なんかリナって可愛いから、ついついからかいたくなっちゃうんだよね」

「……ううっ、コリィさん、ひどいです……」

 リナは、いつもみんなにからかわれる自分の不甲斐なさに涙が出そうになった。

 

「ああっ、だから、ごめん。ごめんなさい。いくらでも謝るから、泣かないで」

 必死に手をあわせて謝るコリィに、リナはそれ以上何も言えず、普段の明るい笑顔に戻る。

 

 コリィはその笑顔に安堵の息をつき、同じように笑顔を浮かべた。

 

「うん、あそこの角を曲がれば、すぐに左手方向に宿屋が見えるはずだよ。この辺り、通った記憶ない?」

 

 コリィに言われて辺りを確認すると、宿屋を出た際に目印にした看板が見えた。間違いなく、ここは自分が宿泊する宿屋の近くのようだ。

 

「コリィさん、ありがとうございます! 間違いありません。そこの角を曲がれば、私が泊まる宿屋が……。よかった。帰って、帰ってこられました……」

 リナはコリィの手を両手で握り、涙ながらに感謝の言葉を述べる。

 

「いや、リナ、せっかく泣き止んだのに、何もまた泣かなくても……」

「すっ、すみません。でも、でも、安心したら何だか涙が止まらなくて……。ありがとうございます、コリィさん」

 再び迷子になってしまった自分が情けなくて、宿に帰ることが出来るか不安で仕方なかったリナは、帰ってこられた安堵とともに、抑えていた感情があふれて泣き出してしまった。

 

「……ああっ、もう。本当に可愛いなぁ、リナは」

 道行く人たちの視線が気にならなかったといえば嘘になるが、泣き出してしまったリナがとても可愛く思えて、コリィは道の真ん中に関わらず、彼女を安心させようとリナの頭を抱きしめた。

 

 しばらくして、リナが落ち着いて泣き止むと、コリィは手を離して微笑んだ。

 

「ふふっ。よーし、あとは大丈夫よね? それじゃあ、名残惜しいけどここでお別れね」

「あっ、待って下さい! 何かお礼を……」

 

 ここまで親切にしてもらって、お礼の一つもしないのは気が引けるリナは、そうコリィに申し出たが、

「そんなこと気にしない、気にしない。シスターにお礼なんてせがんだら罰が当たっちゃうよ。リナと話ができて楽しかったから、それで充分」

 コリィはそう言って笑った。

 

「ですが……」

 食い下がるリナに、コリィは首を横に振る。

 

「いいの、いいの。それと、先輩のシスターに道に迷ったことを隠しとくには、あたしが居ないほうがいいでしょう? それじゃあ、元気でね。機会があったらまた会おうね。じゃあね!」

 

「あっ、コリィさん!」

 言うが早いか、コリィは風のような速度で人波を潜り抜けて行ってしまった。

 

「……あっ、あっという間に見えなくなってしまいました……」

 

 あまりの速さに、リナはしばらく呆然としていたが、

「コリィさん、本当にありがとうございました」

 もう一度礼の言葉を口にして、再度同じ方向に頭を下げる。

 

「コリィさんは気を使って下さいましたけど、道に迷ってしまったことはファリアさんにきちんと報告して、叱っていただかないと」

 

 それがコリィの親切に報いることだと思い、リナは意を決し、宿屋に足を進めるのだった。

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