※ようやく濡れ場があります。
意識を取り戻してから、初めてあの人が外に出た時の顔といったらありまへんでした。
そな、目を覚ましたらまったく見も知らん場所にいたんやから、驚くのは当たり前のことやと思いますけど、あの人の驚いた顔といったら、今思い出してもついつい笑ってしまいます。
なんでも、うちの喋りに似たような話し方をする地域が、生まれた国の一部にあったらしくて、うちの喋り方を聞いて、ここを自分の生まれた国、ニッポンという国やと勘違いしとったらしいです。
……うちがあの人を助けたのはほんの気まぐれ。
今でもなぜ助けたりしたんか、我がことながら分かりまへん。
せやけど、うちが助けたあの人は、ほんまに優しくて善良な人でした。
うちはいつまでもこの家に居てもいいと言うたんですが、「迷惑をかけるわけには行かない」、「僕のような男と一緒に暮らしているのは世間体が悪い」言うて、何とか住み込みで働ける仕事でもないかと相談されたときには、ああ、ほんまにこの人は真面目な人なんやと思いました。
だから、うちはあの人に街外れの家屋を提供し、ほんで、友人のレミアはんにお願いして仕事も紹介しました。
そないなわけで、あの人がうちの家で寝泊りしとったのは一ヶ月くらいのことです。
せやけど、一人ではない生活いうんは、うちみたいなお節介好きな女にはえらい楽しいもんでした。
そのせいで、すっかりうちはあの人に情が移ってしまいました。
せやからこそ、あの人が引っ越してこの家を出て行く際に、暇があればうちの店に顔を出して欲しいとねだったりしたんやと思います。
まぁ、まさか毎日訪ねてきてくれるとは思いませんでしたけど。
あの人は控えめの性格です。
悪く言えば臆病な人なんです。
あの人は過去の辛い経験から、人と接することに酷く怯えています。
人に好意を向けてそれを相手に拒絶されることが人一倍怖いんやと思います。
けれど、そないな人が、うちに拒絶されるかもしれんのに、毎日うちに会いに来てくれる意味を、その理由が分からないほど、うちは愚鈍ではないつもりです。
うちは知っています。
引っ越して間もない頃に、連日店を訪ねることをうちが不快に思わないか心配で、店の前を行き来していたあの人を。
うちが「よければ毎日でも顔を見せに来てください」と言った時のあの人の驚いた顔、そして心底から嬉しそうに笑ってくれたあの時の笑顔を。
それらが、そしてあの人の言動全てが、うちに対してのあの人の想いを、直接的な言葉よりも雄弁に語ってました。
せやけど、うちはそれに気づかないふりをしていました。もしも、あの人がうちにその想いを伝えてきたら、うちにその想いの返事を求めてきたら、うちは拒否しなければいけないからです。
……そう、拒否しなければいけないんです。
拒否しないと、うちが壊れてしまうんが分かっていたから。
疲れ果てて、全てがどうでもよくなったはずのうちが、それでも最後に持っている薄っぺらな誇りを守るにはそうするしかないから。
だから、拒否するつもりでした。拒否をするつもりでいたんです。それで、あの人の心が今度こそ壊れてしまうとしても……。
だから、裏切ったんはうちです。最初からあの人の想いに応えるつもりはなかったのに、気のある素振りをしたんやから……。
でも、どうしてもうちはあの時、あの人をこう思ってしまったんです……。
……『裏切り者』って
第三章 裏切り
スラスラとペンを走らせながら、リナは今日の分の日記を書き上げていく。
今日はいろいろと大変なことが多い一日だったが、日記を書くネタには事欠かない。
初めて会った男の人は、自分の大好きな物語に出てくる男の人にそっくりだった。
どこか頼りなさそうな雰囲気。でも、とても優しくて……。
私とファリアさんが作った料理をとても美味しそうに食べてくれた。そして、食事をしながら楽しくお話をしてくださった。
「……優しい人ですね、ユウヤさんは……」
ユウヤの笑顔を思い出し、リナは自然と自分が笑顔になっていることに気づく。
「コリィさんが、ユウヤさんのことを話すときにとても嬉しそうに見えたのも分かる気がします」
自分を助けてくれた恩人の嬉しそうな顔を思い出し、リナは一層笑みを強める。
だがそのとき……。
「……あっ。また……」
右手におかしな感覚が走った。
痒いような、わずかに痛いような、でも、少しだけ気持ちのいいような感覚が。
「……何なのでしょうか? 何かの病気でなければいいのですが……」
自分の言葉に不安になってしまったリナは、右手の上に左手を被せて、一言二言の短い言葉を紡ぐ。
すると左手から温かい光が発生し、それが右手に移って行く。
リナが行ったのは治癒の魔法。もしも右手に異常があればこれで治るはず。
だが、特に変わった様子はない。少し待ってから、軽く右手を動かしてみたが、先程のような現象が起こることはなかった。
怪訝に思いながらも、リナは日記を書くことを再開する。いろいろと書くことが多すぎてかなりの分量になりそうだ。
結局、夜風にあたって来ると言って部屋を出ていったファリアが戻ってくるまでの間、リナはずっと日記を書き続けるのだった。
◇
母のいないファリアには、物心がつく前から母のように、姉のように慕う女性がいた。
その女性の名はセリーナ。ファリアと同じ金色の髪の持ち主で、ヴェリス神殿の中でも一、二を争うほどの美しい少女だった。
「はい、よくできましたね、ファリア。上手に書けていますよ」
「本当ですか? 嬉しいです!」
ファリアに読み書きや計算を最初に教えてくれたのもセリーナだった。
セリーナが褒めてくれるのが嬉しくて、幼いファリアは勉強も礼儀作法等も一生懸命頑張った。
それ以外の時間も普段からファリアはセリーナにいつもくっついていた。
綺麗で優しい上に頭も良いセリーナは、ファリアの憧れだった。そんなファリアの気持ちを知ってか、セリーナもファリアをとても可愛がってくれた。
食事も、睡眠も、お風呂もいつも一緒。髪型などもセリーナと一緒だった。
傍目には年の離れた仲のいい姉妹のようだった。
しかし、別れは突然やってきた。
春の暖かな日差しが感じられたあの日、セリーナはファリアに自分が神殿を出て行くことを告げたのだ。
それは、悪い話ではなく、むしろ幸せなことだった。
セリーナが『お役目』で神殿を出た際に知り合った男性が、セリーナを妻にしたいと神殿に願い出て、神殿と彼女がそれを快諾したのだから。
けれど幼いファリアはセリーナと別れるのが嫌で、その話を聞いてからというもの、毎日を泣いて過ごした。
『ごめんなさい、ファリア。でも、お願いだから分かって。ギルバード様という方が……私をお嫁さんにしたいと仰ってくださったの』
『私はギルバード様をお慕いしているの。愛しているの。お願い、分かって、ファリア』
『……ファリアにもいつか好きな男性が現れたら分かるわ……。その方のそばに居たいの。離れたくないの……』
何度も何度もセリーナはファリアを説得した。
そんな真摯な姿に、幼いファリアも仕方なくセリーナとの別れを受け入れた。もっとも、あふれ出る涙は抑えることができなかったが。
親しい人、愛しい人との別離。それは人生の中で誰もが経験する事柄。
それゆえ、そのままセリーナと分かれることができれば、ファリアにとってセリーナは、大切な、大好きなお姉ちゃんのままでいてくれた。
時間の経過とともにいい思い出になるはずだった。
だが、ファリアは見てしまった。セリーナと分かれる最後の夜に、あの光景を。
ファリアは肌寒さを感じて目を覚ました。眠りにつくときにはあんなに温かかったベッドが、今は冷たくて仕方がない。
その理由は明らかだった。
「……お姉ちゃん? あれ、お姉ちゃんがいない……」
セリーナと過ごす最後の夜に、ファリアはセリーナと一緒に床についた。
これが最後だけれど、ファリアはいつものようにセリーナに抱き締められてそのまま眠りに付き、朝を迎えるはずだった。
「……あっ、おトイレにいかないと……」
身体が冷えたためか、ファリアは尿意をもよおし、小さな手で小型のランプを持って少し離れたトイレに向かった。
きっとセリーナもそこにいるのだと思いながら。
しかし、セリーナはトイレには居なかった。しかたなくファリアは一人で用を足し、再び部屋に戻ることにした。
「……綺麗なお月様……」
帰りがけに、神殿の中庭の空に浮かぶ丸い大きな月が見えた。
少しの間その月をぼんやりと眺め、部屋に戻るために視線を元に戻した際に、ファリアは中庭を挟んだ反対方向の通路を動く明かりと人物に気づく。
それは、探していたセリーナだった。
セリーナはランプを片手に足早に通路を進み、寝室とは正反対の別棟に向かっているようだった。
何故そんなところを歩いているのかは分からない。
「待って、待って、お姉ちゃん!」
だが、幼いファリアにはそんなことはどうでもよかった。大好きなお姉ちゃんが今日のうちに遠くに行ってしまう気がして、慌ててその後を追う。
そうしてファリアがたどり着いたのは、離れの部屋の前だった。
そこは、普段は誰も利用しない部屋。お客様が寝泊りするためだけの客間。だが、今日はこの部屋が無人でないことはファリアも知っていた。
本来、ヴェリス神殿は男子禁制であるが、自ら花嫁を迎えに来たギルバードに敬意を表し、神官長が特例として神殿の離れの一室を開放し、彼の宿泊を認めたのだ。そしてその部屋から、セリーナの声が聞こえてきた。
僅かに開かれた扉の隙間から、ファリアはその中を覗き込んだ。
「……ああっ、ギルバード様。再びこうしてお会いできる日をずっとお待ちしておりました……」
「……困ったものだね、君も。最後の夜なのだから、ファリアとかいう子の元にいてあげるようにと言っておいたの……」
男の人の腕に抱きしめられながら、セリ―ナは潤んだ瞳でギルバードを見つめ、その声に耳を傾けていたが、堪えきれないと言わんばかりに、息のかかる距離にあったその男の唇に自分の唇を重ね合わせた。
「……おっ、お姉ちゃん……」
ファリアは予想もしなかったセリーナの行動に目を疑った。
神殿にいる誰よりも可憐で美しく、それでいて慎ましやかなセリーナが、浅ましく男の唇を貪っている事が信じられなかった。
「んっ、あっ、んっ……」
「ぐっ、くっ……。っ、こらっ、いい加減にしないか……」
ギルバードはセリーナの美しい顔をつかみ、力ずくで彼女を引き離す。
「あっ、やっ……」
セリーナは舌を前に突き出しながら、涙を浮かべながら、幼子が不満を漏らすように、嫌々と首を横に振りながら、再び唇を合わせようとする。
しかし、男の力には適わず、舌を懸命に伸ばしてギルバードの唇を舐め続ける。
「まったく、卑しいなぁ、君は」
ギルバードの言葉に、セリーナは、はっ、と我に返りそのまま崩れ落ちるように平伏した。
「……もっ、申し訳ありません。ギルバード様。ですが、その、一ヶ月以上もお会いできなかったものですから、私……」
セリーナは平服したまま声と体を震わせながら弁明する。
「…………」
セリーナの無様な姿を見て、ファリアは言葉を失った。だが、それはことの始まりでしかなかった。
「君は僕の言いつけを破ったんだ。僕の言うことを守れないんだね、君は……」
ギルバードはそう低い声で言うと、静かに部屋にあった椅子を運んできて、そこに腰かけた。
「そっ、そんなことはありません。今回だけです。どうしても我慢ができなくて。他の言いつけはすべて守っています」
「それじゃあ、ほら、セリーナ」
ギルバードはひれ伏したままのセリーナの頭を軽く足で踏みつけた。
「ひっ、ひどい……」
部屋の中を除き見ているファリアが堪えきれずに文句を言おうとしたそのときだった。
「はい、ありがとうございます。ギルバート様……」
セリーナが感謝の言葉とともに顔を上げて、ギルバードの足を愛おしそうに抱きしめ、そのむき出しの足の指にしゃぶり付いたのは。
セリーナは心底うれしそうに頬を赤らめながらギルバードの足を舐め、その指一本一本を口に含んではしゃぶり続ける。
「ふふふっ、その様子だと、ずっと自分を慰めることもしていなかったようだね」
「んっ、ちゅっ……。はっ、はい。私の身も心もギルバート様のものです。きちんと言いつけは守っております。ですから、どうか私を使って下さい。もう、我慢ができないのです……」
媚びるように男の足に自分の胸を当て、男の膝の部分に舌を這わせながら、上目遣いにセリーナは懇願する。
「……まったく、僕の女の中でも、君は一番淫らで堪え性がないよね。本当に、出会った頃の貞淑な君はどこに行ったのかな?」
「そんな……。私がこんな風になったのは……」
「ふふっ、なんだい? 僕のせいだとでも言うのかい? 確かに君を押し倒して女にしたのは僕だけど、その時からずっと君は貪欲に僕を求めてきたじゃないか。自分の意志でね」
ギルバードはそう言うと、懸命に足に奉仕をするセリーナをその脚で軽く蹴り飛ばした。
「ああっ……」
床に倒れこむセリーナ。しかし、彼女はすぐに顔をギルバードに向けると、許しを請うように媚び諂うような視線を向ける。
「ほらっ、どうしたんだい? 君は僕の足を舐めれば満足なのかい? 違うよね? 僕はきちんと躾したはずだよ。そうだろう、セリーナ?」
「……はい、ギルバード様……」
セリーナはうっとりとしたような顔で微笑むと、静かに自分の服に手をかけてそれを脱ぎだした。
そして一枚脱ぐ度に丁寧に脱いだ衣服をたたんで自分の横に置いていく。
豊かな乳房を男の前に露わにし、そして最後に残った股間を覆う純白の布を脱いで衣類の一番上に置いて一糸まとわぬ姿になると、セリーナは再び跪き頭を下げて平伏した。
「……ご主人様。私、セリーナは身も心も全てご主人様のものです。そして、私はいつもご主人様のことを考え、そのお情けをいただくことばかりを考えている淫らな牝です。どうかこの卑しい私を使ってください。誠心誠意、ご奉仕をさせて頂きますので……」
「ふふっ、鏡があったら見せたいくらいだよ。君がどれだけ情欲にまみれた顔をしているのか。……仕方ないな。許してあげるよ。君のしたいようにしていいよ」
下卑た笑みを浮かべ、居丈高に言うギルバード。しかし、セリーナはその男の態度に、さも嬉しそうに感謝の表情を浮かべる。
「あっ、ありがとうございます。ギルバート様」
言うが早いか、セリーナはギルバードのもとによつんばいになって駆け寄ると、ズボン越しに彼の股間に顔を擦り付けるように近づけ、口を使ってその部分のチャックを開く。そして彼の股間を覆う下着を器用に口だけを使ってずり下す。
「……あっ、あれは……」
室内を覗き見ているファリアには、ギルバードの股間部分から突然異質な何かの生き物が出てきたようにしか思えなかった。
そそり立った存在感のある棒のようなグロテスクな生き物が。
「あっ、ああ……。素敵。素敵です、ギルバート様!」
そんなファリアとは対象に、セリーナは息を乱しながら恍惚とした表情で呟くと、我慢ができないといった様子で、そのグロテスクなものを口に含み始めた。
「おっ、お姉ちゃん……」
下品に音を立てて、悦に浸った顔でグロテスクなものを舐めるセリーナ。
「ははっ、分かっているのかい、セリーナ。君のはしたない穴が汚い液を垂らし続けていることに。そんなに僕が欲しいのかい? これが欲しいのかい?」
セリーナの股間から、粘性のある液体がこぼれ落ちているのが、ファリアにも見えた。
おしっこではないようだが、それが何なのかは幼いファリアには分からない。
「……はい、欲しいです。私のこの淫らな、節操のない汚らしい穴に、アルバート様が欲しいのです……」
グロテスクなものから口を離すと、唾液が口から垂れるのも気にすることなく、セリーナは液体で濡れた股間とおしっこをするための場所を手で広げて、男に見せつける。
「止めて、止めて、お姉ちゃん……」
ファリアは何度も心のうちで叫んだが、そんな彼女の願いは届かない。
「仕方がないな。いいよ。でも、そんなに欲しいのなら、自分で入れるんだ、セリーナ」
「はい! はい! ありがとうございます!」
男の許可が出たことに、セリーナは感謝の言葉を述べながら、男の股間から伸びているグロテスクな棒を掴むと、それを自分の股間に何の躊躇もなく差し込んだ。
「くっ、ぎぃぃぃぃぃ! すっ、すごく逞しくて大きくて……。ずっと、ずっとこれが欲しかったんですぅぅぅ!」
獣のような声を上げて、セリーナは気が狂ったかのように叫ぶ。
見たこともない下品な笑みを浮かべ、涎を垂らしながら、嬉しそうに男の股間の上で腰を動かすセリーナ。
誰よりもファリアが憧れていた、美しくて気品のある姉のイメージがそのとき完全に壊れた。
「……っ!」
ファリアは見ていられなくて、その場から逃げ出す。
信じられない。悪い夢なら良いのにと思いながら、ファリアは全力で廊下を駆けて部屋に戻った。そして幼い彼女は、冷たい寝床で布団を被って大声で泣いた。
……幼心にはっきりと分かってしまった。自分のことを大切に思っていてくれたお姉ちゃんは、もういないのだと。
別れの日の朝、神殿を去っていくセリーナが自分に何か言葉をかけてくれたのは覚えている。けれど、その内容はまるで覚えていない。
そんなことはファリアにとってはどうでもいいことだった。
何故なら、そんな言葉は嘘だから。お姉ちゃんは私のことなんてどうでもいいんだ。あの男の人が、私のお姉ちゃんを変えてしまった。私からお姉ちゃんを奪ったのだ。
ファリアの異性に対する、そして男女間での性行為に対する嫌悪はこの時から始まった。そして、憧れの存在だった姉は侮蔑の対象になり、彼女のようにはなるまいと幼心に決心した。
それからファリアは自分を厳しく律し、セリーナよりも立派なシスターになろうと努力を続けた。
その結果、彼女は同年代の仲間たちとはあらゆる面で一線を画す立派なシスターに成長して行く。
彼女は決してそのことを鼻にかけることなく、先輩を敬い、後輩に手を差し伸べ、同輩とも良い関係を築いた。月に数回ある近くの町での炊き出しにも積極的に参加し、町の人からも認められていた。だが、それも長くは続かなかった。
ファリアが成長するにつれて、周囲の彼女に対する評価は少しずつ変わっていく。
それは、彼女が途中で努力することを止めたからではない。彼女は変わらず努力を続けていた。それは、いくら彼女が努力しようとしてもそれが及ばないもののためだった。
その一つが彼女の美貌だった。幼い頃から愛らしい顔立ちだったが、成長するにつれてそれに美しさが加わり、彼女は誰よりも美しい存在になってしまった。
そしてもう一つがその美貌にふさわしい、女性らしい身体への成長である。
胸がだんだん大きくなり、引き締まる腰とは対象に、おしりには適度な肉がついて丸くなっていく。そしてファリアの体は自身でも抑えが効かないほどに淫らなものになってしまう。
学問や魔法の他にもありとあらゆる面に秀でるだけでなく、圧倒的な美貌と女性らしい美しい身体さえも持ち合わせるその存在は、周りの羨望を受けることとなり、結果として他者に対して居た堪れなさを与える事となってしまった。
ファリア自身はそんな成長を全く望んでいなかったにも関わらず。
ファリアはそんな自分を嫌悪し、しかし屈折することなく懸命に努力を続けた。
だが、皮肉なことに彼女が努力をすればするほど、他の人間との溝は深まっていくばかりだった。