今日もターニャ・デグレチャフは上官に呼び出され、その肉体と精神を凌辱される。
怒りと屈辱に震えながら頭を下げ、ようやく終わったと深く息を吐いた。
さっさと帰ろうと、ターニャは脱ぎ捨てた自分の服を探して視線を動かす。
部屋の脇に置いていたはずの軍服が、いつの間にか消え失せていた。
「――は?」
上官はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべ、ターニャの軍服は本人の部屋に戻しておいたと言い放つ。
“落とし物”を届けておいたと、嘲笑を隠しもせずに上官は笑っていた。
服も下着も上官の命で脱ぎ捨てたターニャは、現状一糸纏わぬ姿だ。
胸の中に広がる怒りが殺意に変化するのを感じながら、せめて皮肉たっぷりに感謝の言葉を述べてターニャは退出した。
「まずい、まずい、まずい……!」
ほのかに顔を赤く染めながら、誰もいない深夜の廊下をターニャは全裸で歩く。
両手で身を隠し、足音を立てないようにゆっくりと。
時刻は深夜、廊下には当然誰もいない。
だが、誰かが気まぐれに扉を開けて廊下にでてきただけで、ターニャの全ては終わる。
「うぅっ……」
今この瞬間にも、左右の扉が音を立てて開くかもしれないという恐怖。
ターニャの両足は竦み、亀の歩みのような速度しか出せずにいた。
筋肉や骨の軋む微細な音すら、今のターニャには爆音のように聞こえる。
些細なはずの呼吸音が、何倍にも増幅されているかのようにターニャの耳を刺激していた。
「はぁッ、はぁッ……」
滝のような冷や汗が、ターニャの全身を濡らす。
顔は羞恥で赤く染まり、熱に浮かされたように熱い吐息が漏れる。
「――ッ!」
ガチャリと音を立て、一つの扉が開かれる。
一人の男性士官が瞼を擦りながら姿を現し、そのまま廊下の奥へと消えていく。
どうやらトイレにでも向かったようだ。
「あ、ひゃっ……」
気の抜けたような悲鳴を上げ、ターニャは蹲る。
幸い男性士官はこちらを向かなかったが、もしもこちらへ目線が向けられていたら。
そう想像してしまい、ターニャの足は震えて立ち上がれない。
「く、うぅっ……!」
なんとか、部屋に戻らなくては。
ターニャは使い物にならなくなった両足を見限り、這うように先へと進む。
犬のように廊下を這う姿は滑稽で、無様であった。
「ふぅっ、くっ……」
体を引きずるように前へと動かすターニャ。
歩みは非常に遅く、残り数メートルで自分の部屋に付くというのに一向に終わりが見えない。
「――ひ、いッ」
自室の隣の部屋から、足音が聞こえる。
ターニャは目尻に涙を浮かばせながら、最後の力を振り絞り己の肉体を動かす。
脳内で懇願を繰り返し、そのまま自室の扉へと駆け込んだ。
「ぜっ、はぁっ、ひぃっ……!」
間一髪。
ターニャは無事に、誰にも見つかることなく帰還を果たした。
息は上がり、心臓は拘束で鼓動を刻んでいる。
右手を心臓へと添えると、ドクドクと振動が全身に伝わってくる。
「……ん?」
左胸に添えた手に、違和感を覚えるターニャ。
固い感触。
ターニャの左胸の乳首が立っていた。
恐る恐る、左手を下腹部へと伸ばす。
股の間からは、糸を引く透明な液体が指先へと付着した。
「嘘、だろう……?」
いつの間に私は露出狂の変態になったんだ!
絶望と怒りと混乱、そして確かに感じる快感に思考をかき回され、ターニャは全裸のまま悶え苦しんだ。