ターニャにとっては幸いなことに、偶像利用のプロパガンダ戦略は程なくして凍結された。
帝国は幼い少年兵……もとい、幼女兵が世間からどういった目で見られるのかということにようやく思い至ったらしい。
いつも上は失態に気付くのが遅いのだと、コーヒーを啜りながらターニャは一人吐き捨てた。
心を癒すはずのカフェインも、これだけ心労が続いては効果が薄い。
ターニャはストレスの解消を必要としていた。
少々気の毒ではあるが、生贄が必要だ。
残ったコーヒーを一息に飲み干すと、ターニャは席を立つ。
軍人は、とにかく娯楽に飢える。
戦時中であれば尚更だ。
士官学生であってもそれは変わらない。
自由時間には定期的に賭け事の集まりが作られることをターニャは知っていた。
これまでもターニャは度々参加しては、配給のチョコレートを同期から巻き上げている。
負ければ服でも脱いでやると言えば、男共は目の色を変えて熱中する。
冷静さを失った相手など、ターニャの敵ではなかった。
の、だが。
(ふざけるなよ、私は呪われているのか?!)
ギャンブルの内容はポーカーだ。
配られたカードを利用し、虚実を巧みに使い分ける。
推察と押し引きはターニャの得意分野だ。
だが、この日のターニャは凄まじく運が悪かった。
配られるカードはイカサマを疑うほどに弱い。
今日はツイていると、同期の笑い声が輪唱のように部屋へ響く。
これだけ差があれば戦略など無意味。
一度も勝つことなく、ターニャは手持ちのチップを吐き出した。
「……仕方あるまい。約束だ」
まずは一枚。
ターニャは着ていた上着を脱ぎ捨てた。
飾り気が皆無の白いブラジャーが露になり、同期たちの歓声が上がる。
配給券の代わりに脱いだだけ、ターニャは損をしていない。
そう自分に言い聞かせるターニャだが。
数十分後、そこには全裸に剥かれたターニャの姿があった。
「ば、馬鹿な……」
上着、ズボン、ブラジャー、パンツ。
都合四回、ターニャは大敗北を喫した。
呪われたかのような運の悪さは一切変わることが無かった。
同期たちは、これは神の恵みだと歓声を上げてターニャを凝視している。
鼻息は荒く、股間の膨らみは服越しからでも丸分かりだった。
上官たち中年親父の下卑た笑みよりはまだマシだが、それでも抵抗感は強い。
ターニャは右手で両胸、左手で股間部分を隠しながら顔を赤く染めている。
「このままでは終わらんぞ……早く次のカードを配れ!」
完全にターニャは冷静さを失っている。
脳内は羞恥と屈辱で埋め尽くされていた。
「次に負けたら、一位の奴の願いを叶えてやろうとも!」
だから、ターニャはそんな約束を勢いでしてしまい。
お約束のように負けたのだった。
幸いだったのは、一位を取った男が奥手な人間だったことだろう。
これで本番行為でも強要されていれば、どうなっていたことか。
「一度だけ、一度だけだぞ……!」
ターニャは男のズボンを下ろすと、露出された男根へと手を伸ばす。
手淫奉仕。それが勝者の願いだった。
男の身であった頃は見慣れたものだが、自分の物でないというだけで抵抗感は段違いだ。
男だろうが女だろうが、他人の性器など好き好んで触れたいと思うようなものではない。
「うっ……」
柔らかく固い感触が、ターニャの手に広がる。
指が動くたびに生き物のように脈動する様に、ターニャは顔をしかめた。
さっさと終わらせよう。
そう決意し、ターニャは右手で男の男根を扱いていく。
まったく、なにが気持ちいいのやら。
これでは自慰のほうがマシではないのか。
そんなターニャの心中とは裏腹に、男は天国へ上っているかのような幸福を感じていた。
しかめっ面の幼女が全裸で己の男根を扱いているという状況を、男は堪能している。
(まったく、世の中には奇特な性的趣向を持つ者がいるものだな……)
男が射精に達するまで、そう時間はかからなかった。
「――ッ!」
勢いよく飛び出した白濁液はターニャの手と胸を汚す。
その熱さに驚き、ターニャは反射的にのけ反った。
「熱い、臭い、気色が悪い……最悪の気分だ……」
差し出されたタオルをふんだくるように取り、肌に付着した白濁液を拭き取っていく。
また一歩、上りたくもない階段を上った気がしてターニャはため息をついた。