帝国軍は能力主義だ。
老若男女問わず、才能を持ち結果を出す者を重宝する。
だからこそターニャのような幼女でも適切にその力を評価されている。
良くも悪くも、“幼い女だから”という区別が無いのだ。
そう、良くも悪くも。
(クソ、これは児童虐待の一種ではないのか?!)
総重量十キログラムを超える装備を抱えての行軍訓練。
どう考えても幼子に背負わせる重さではないが、帝国は男女平等である。
倍近い年齢の男が息を荒げる訓練に、ターニャは必死で耐えていた。
行軍訓練で一人遅れるなど、評価がどれだけ下がるか分かったものではない。
尚、幼女の身で軍の訓練を完遂する様がどれだけ異常なのかについては、ターニャは把握してはいなかった。
こうしてまた、ターニャ・デグレチャフに畏怖を抱く帝国軍人が増えていく。
「ふぅ……」
汗と泥に塗れた軍服を脱ぎ捨て、ターニャは一息ついた。
男女を同じ場所で眠らせるという問題を解消するため、ターニャは他の士官とは違い民間の宿泊施設を利用することが許されている。
男性士官が塹壕の中で身を震わせている中、清潔なベッドとパジャマで眠れるというのは数少ないターニャが優遇されている部分だ。
「……ん?」
窓の外から視線を感じ、視線だけをそちらに寄せる。
そこには数名の男性士官が虫のように張り付いていた。
(疲れている身で何を……いや、これも男の性か)
つい十数年前までは己も男だったことを棚に上げ、ため息を一つ。
注意するのも馬鹿馬鹿しいと、ターニャは気づかない振りをして着替えを続行した。
濡れタオルのように汗が染み込んだ下着を脱ぎ、全裸になる。
濡らしたタオルで汗と泥を拭き取り、気休めとはいえ清潔な体を取り戻す。
用意されていた新しい下着とパジャマを身に纏い、後は眠るだけだ。
と、そこでターニャは思考した。
私だけこのような厚遇を受けている状況を、外で眠る士官たちはどう感じているのか。
無駄な恨みや妬みを買いたくはない、と。
「白湯をどうぞ、体が温まりますよ」
翌日。
ターニャは営業スマイルを体に受かべると、塹壕の中で起床した士官たちへ白湯を配っていく。
本人にしてみれば恩を売る以外の意図はない。
そもそも誰も恨みや妬みを抱いてなどいないのだが、残念ながらターニャは読心術を身に着けてはいなかった。
行軍訓練中もさり気なく他者を気遣う発言を行い、点数稼ぎに邁進する。
ここにいるのは将来ターニャの上司になるかもしれないエリートたち。
今のうちに恩を売っておいて損はない。
だから、着替えを覗いていた士官たちにも笑顔で微笑む。
「私も男を知らぬ生娘ではないつもりです。娯楽も癒しもない訓練中であれば仕方ないかと」
そんな口調で、ターニャは裸のまま男たちに向き合う。
「こんな貧相な体であれば、ご自由にご覧ください」
男たちは己の股間を弄り、自慰を開始した。
ターニャが元居た世界で、見抜きと表現されるものだ。
(うっ……)
内心で抱いた嫌悪感を隠すため、ターニャは両手で顔を隠す。
他者からは、初心な乙女が恥ずかしがる様子に見えたのだろう。
下ろされたズボンから飛び出た男根は一つ残らずそそり立っていた。
男性士官たちは、ターニャの裸体を凝視しながら己の一物を扱き続ける。
ターニャは両手で顔を隠している以上、その胸も秘部も、すべてが丸見えだ。
傍から見れば、ターニャは気恥ずかしそうに微笑む少女だ。
いくら心中で幼女の全裸に興奮する変態へ毒を吐いていたとしても、誰に伝わるわけでもない。
すみません。
ごめんなさい。
ありがとうございます。
謝罪や感謝の言葉を述べながら、男たちは射精した。
本能を発散した彼らは、気恥ずかしそうに去っていく。
(少しやり過ぎたか……? いや、未来のためにこの位は我慢しなければ!)
ズレた価値観と基準の狂ったハードルを指摘できる者は誰もいない。
性欲処理まで買って出る女神のようだと、ターニャはまた一つ伝説を増やしていたのだった。