※この作品はR-18です。

DQ8 エンド後の世界   作:ぽんぽんペイン

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暗黒神ラプソーンを倒し、トロデーン城に帰ってきた勇者一行。宴の翌日からのお話です。
トロデーン城は、あちこち壊れてしまっている設定です。エイトさんの語りです。
エイトさんは、ヤンガスのことをヤンと呼びます。


お礼参りの旅
トロデーン城


目覚めは、懐かしい匂いと共におとずれた。

少し埃っぽい、乾いた石の匂い。

 

ゆっくり目を開ける。

夜明けの空気が見える。

 

下になっていたほうの腕が、少し痛む。

お世辞にも快適とは言えない固い寝台。

静かに息を吐きながら起き上がった。

 

回りの兵士はまだ眠っている。

冷たい床に足を降ろす。

 

首を伸ばす。

早朝の青い明かりが、石造りの壁に窓の形を写している。

 

帰ってきた。

トロデーンに。

 

 

 

トロデーン城。僕は今、僕が最もくつろげた、兵士詰所にいる。

細長い呼吸を一つしてから、剣を背中のさやに収める。

そして同僚を起こしてしまわないよう、そっと詰所から出た。

 

 

城はまだ、イバラの残骸がはびこっていて、見るも無惨な光景だ。でももう、あのまがまがしさはない。

 

僕はゆっくりと城の回りを歩いた。巡回の当番なんか決めていないけれど、じっとしていられなかった。

 

壊れてしまった壁や木々の手入れも、順々ににやっていけばいい。生きているんだ。急ぐことはない。

 

 

暗黒神ラプソーンを倒したその後、呪いは解けた。

王も姫ももとの姿に戻り、石化した城の人間も全て戻った。

 

城の人間は主の姿を見ると、何かから解き放たれたように歓喜し、ありったけの食材ですぐに宴の準備をした。

 

宴は続いた。

朝がきて、昼がきて、また夜……。2日間ぶっ通しだったと思う。

 

トロデーン復活の話は、領地の村々にすぐ伝わり、大勢の人たちが宴に参加してくれた。

 

 

まだ、余韻が残ってる……。

人々の笑顔も、泣き顔も、みんな闇から解き放たれた喜びにあふれていて。

 

 

「……よお……。起きたのか? 早いな」

ククール!

 

振り返ると、ようやく顔を出し始めた太陽を背に、ククールが笑顔を向けていた。

 

「うん。ククールも早起きだね」

「ああ、オレか? オレは早起きなんじゃなくて寝てないからな」

「ええっ? じゃあ全然休んでないじゃないか。あれから」

「ああ、そうだな」

ラプソーンを倒した後、休む時間はなかったはず。

 

「3日も寝てないの?」

「そうなるかな」

「大丈夫?」

「ああ。別に……あんまり眠くねえし。それより、お前は寝られたか?」

ククール……。

 

「うん。宴の最中もちょっと居眠りしちゃったし。睡眠、十分だよ」

「そうか、じゃあちょっと付き合え」

ククールは、そう言うなり僕を引き寄せて神鳥のたましいを使った。

 

 

「ククール、ちょっと、どこ行くの?」

「大丈夫、朝礼には間に合うようにするから」

……朝礼なんかないんだよ。

 

 

空が明るい。

空気もきれいな気がする。

あの黒い雲はどこにもない。

 

ククールにしっかり抱きしめられながら、青空の中を飛ぶ。

風が、気持ちいい。

 

 

トロデーンのある大陸から、南へ向かう。マイエラやアスカンタ、パルミドと南下し、そのまま西へ。砂漠、サザンビーク、ベルガラック、そしてリブルアーチの方へ北上する。雪のオークニスは相変わらず真っ白だ。

再びトロデーンの上空へ戻る頃には、すっかり太陽が出ていた。

 

 

「サンキューな」

僕らはトロデーン城の外に降り立った。

 

「気持ちいいね。早朝の空は」

「ああ」

ククールは空を見上げる。

 

「オレ、マイエラに行ってくる。オディロ院長に報告に」

「待ってククール。みんなで行こうよ。王も言ってたんだ。王はしばらく城から出られないから、4人でお礼参りしてこいって。最後はゼシカをリーザスに送り届けるんだよ」

「そうか」

 

「だから、僕が出られるまで、ちょっと待ってて。来訪者用の詰所で寝ててよ。ヤンもいるし。詰所だから寝心地悪いけどさ」

ククールは、わかったと言って、僕が案内した詰所に入った。

「ゆっくり寝てよ。あとで迎えに行くから」

「おう」

 

ゼシカは、姫が是非にと言ったので、姫の部屋で休んでいる。

 

宴も終わったし、城を元通りに機能させるため、しばらく忙しくなるはず。

僕は再び兵士詰所に向かった。途中で王に会った。

 

「おお、エイト。皆を中庭に集めよ」

「はい」

王はもうすっかり朝の支度を済ませ、あちこちへ声をかけているところだった。

僕も皆に声をかけ、中庭に向かう。

 

ぞろぞろとみんなが中庭に集まってくる。ざわざわと喋る声も懐かしい。みんな笑顔だ。少しして、王がテラスから姿を現した。王は一同を見渡し、満足そうに何度もうなずく。

 

この風景も久し振りだ。何かの節目ごとに、こうやってみんなを中庭に集め、王が直接言葉を下すんだ。上官もヒラ兵士も、大臣もコックも、みんなだ。

 

「……皆、大義であった。どういったわけか、わがトロデーンから宝物が持ち出され、呪われてしまった。しかし、悪夢は終わったのだ! 誰一人失うことなく、再びこの城で暮らせることをわしは嬉しく思う。……ミーティア」

王の挨拶の後、姫も姿を見せた。

 

「皆さん、城は荒れ果ててしまいました。ですが、必ず元通りにいたしましょう。このミーティアも、微力ながら、お父さまのお力に、皆さんのお力になれるよう、尽くして参ります。どうぞよろしくお願いしますわ」

姫がドレスの裾をあげてお辞儀をすると、大歓声が沸き起こった。

 

「では、皆に申し渡す。……オッホン……それぞれの持ち場をしっかり修復するのじゃ。それだけじゃ。大臣も下働きない、トロデーンのため、トラペッタ、リーザスのためにわが王家がまた働けるよう、力を尽くしてくれ。今日からしばらくは、作業の進捗に関わらず、朝、夕にはこの中庭に集まること。わしから話をいたすからな。では大臣、士官以下、長のつく者は各方面に指示を出した後、すぐに広間に来るように」

 

王の言った通り、皆持ち場につく。管理職以外の兵士は、上官の指示を聞くために詰所へ向かう。僕たち兵士は、周辺各地の見回りと場内修復作業の2つに大きく分けられ、それぞれ隊が組まれ、リーダーが任命された。でも僕の名は呼ばれない。

 

「あの、兵士長、僕はどの隊に入りますか?」

それぞれの隊長を集めて大広間へ向かうところだった兵士長を捕まえて聞いた。

 

「エイト、お前は俺と一緒に来い」

「はい」

 

僕は訳がわからないまま、兵士長の後、各隊長の前に入れられ、並んで大広間に入った。

 

王と大臣、士官、合わせて約50人以上の重役が集まっている大広間。これだけの人数が一度にいることはない。まさに一大事だということがわかる。

隣の兵士長もいつもより背筋がピンとしている。

 

「揃ったか」

王がにこやかに言うと、重役らも一様にこちらを向く。

僕ら兵士隊のあとから、事務方も集まっていた。しんと静まり返る大広間。みんな王の言葉を待っている。長い間一緒に旅をしてきた王は、御者台にいたのがまるでウソみたいに王の振る舞いをしている。僕は姿勢を正した。

 

「面倒なことは抜きじゃ。お前たちはトロデーン復興のためのリーダーとなる。……まあ、前と変わりはないが。一応、職務の確認じゃ。ほれ!」

王の言葉の後、財務大臣が立ち上がる。

 

「えー、修復にあたっての予算は特にない。みな、修繕に力を入れよ。まず応急処置でよい。大規模修復は、すべての処置が終了した時点で予算を組む。まずは、人員が今まで通り動けることが第一だ。周辺各地の国民が作業を手伝いにきたら、同じように食事をとらせ、存分に働いてもらえるように配慮すること。しばらくは厨房が最も忙しくなるはずだから、厨房を優先的に修繕するように。事務方は、書類の有無を調べ、なければないでかまわない。今日からしばらくの文書は、仮発行とし、大して重要でない『無駄な重要書類』は発行しないこと。対外的なものは全て王室発行とする」

徹底的に無駄を省くってことだね。王らしいや。

 

「では、続いて兵士諸君。もう隊が組まれたと思うが、細かい指示はその都度行うように。また、新体制にあたり、役職が多少変わるので、只今より任命を行う」

トロデーン軍大将が立ち上がった。軍の総大将は王だけど、実際に軍を動かすこの人が、実質的に軍のトップだ。

 

海上、陸上の長が呼ばれ、それぞれ担当が言い渡される。

 

「……陸軍兵士長は陸軍将に昇格。陸軍の兵士長にはエイトを任命する」

えっ? 僕?

 

「……だだし、エイトはこの暗黒神討伐の報告に諸国に挨拶に回るため、当面、陸軍将が兼任する」

 

僕は兵士長……陸軍将の後に続き、王の前で任命を受けた。

 

 

「城のことはよい。すぐに4人で行って参れ。期間は一週間じゃ。……リーザスのアルバート家を招待する件を伝えておいてくれ。いつになるかわからんが、近いうちにご招待申し上げたい、とな。……ほれ、もう行くのじゃ!」

「承知致しました」

任命式の途中だったけど、王にそう促され、僕はヤン、ゼシカ、ククールを迎えに広間を出た。

 




暗黒神を倒し、元通りになったトロデーン城に戻ってきたエイトさんたちです。盛大な宴の後、トロデ王の命令でお礼参りの旅に出ることになりました。次は4人旅の始まりです。
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