※この作品はR-18です。

DQ8 エンド後の世界   作:ぽんぽんペイン

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第一章最終話です。エイトさんの語りです。


パーティの解散

お礼参り六日目。オークニスですべて終え、僕たちは神鳥のたましいをつかって世界中を飛んだ。

 

「ありがとう、みんな……。あたし今日で、家に帰るわ」

ちょうどリーザスの真上にさしかかったとき、ゼシカが言った。

 

僕は精神を集中させ、ゆっくりと下界を目指した。

 

リーザスの入り口前にふわりと着地する。

 

「ありがとう、本当に。……ね、約束よ、またうちに来てね。あたし……トロデーンにも行くわ。ゲルダさんちにも。ユッケのところだって、ハワードさんのところだって……ラジュさんのところだっ……」

最後は言葉にならなかった。

 

四人で握手を交わし、ゼシカは笑顔で手を振った。

 

僕たちは迎えに出てきたマダムに会釈をし、南へ向かった。

 

なんとなく、三人で歩いて。もう言葉もなかった。

 

ポルトリンクに着くなり、ヤンが土下座をした。

 

「兄貴……あっしもこれでおいとまいたしやす。あと1日、と思いやしたが、明日になれば別れが辛くなりやす。まだまだお側でお仕え申し上げてえところでごぜえますが、あっしのオツトメ、これにて一旦の完了とさせていただきやす」

 

「ヤン……。ありがとう、本当にありがとう。旅の初めから今まで、僕をずっと支えてくれて。ありがとうって言葉じゃ言い尽くせないよ」

「兄貴っ!」

ヤンは、泣いた。「男泣き」という言葉がぴったりだった。

 

いつも口喧嘩ばかりしているククールも、このときばかりはヤンの肩に手を置いて、労をねぎらった。

 

「じゃあ、兄貴、お世話になりやした。ご用とあらば、いつでも参上いたしやすっ!」

ヤンは空高く、つばさを放り投げた。

 

「行っちまったな」

「うん。……ヤンてさ、ゲルダさんちに行ったんだよね?」

 

「他に行くところねえべ」

「だよね。キメラのつばさ、もっとあげておくんだったな」

僕たちは、ヤンの消えていった青空をしばらく眺め、なんとなく海岸へ降りて行った。

 

 

 

海はいつになく穏やかで、打ち寄せる波音も優しい。

 

お礼参りの初日も、みんなで海岸へ出たね。ユリマちゃんちでごちそうになって、お腹一杯でさ……。僕、この海岸で眠っちゃって。

 

 

 

……最後に一緒に過ごしたい……。

僕はその一言を口に出せずにいた。

 

明日から、僕は城勤め。君は自由だ。

 

君も明日はドニかマイエラ修道院に帰るでしょ。それとも、もう……?

 

ねえ、まだ日は高いよ。稽古をしようか、散歩をしようか、ゴールド稼ぎをしようか……。

 

いつも側にいてくれた、強くて優しい人……こんな僕を、愛してくれた人……。

 

風になびく長い銀の髪。

 

愛しさで胸がつぶれそうだ。

 

君は、自由だ。

 

この風のように……。

 

 

 

 

潮風に吹かれながら、水平線の彼方を見つめるククール。

 

君と一緒に広い世界を回れたこと、それは僕の人生の宝物。

 

まだ、もう少し一緒にいられるでしょ。

 

彼の隣に立ち、そっと顔を見る。

 

ククールのサファイアの瞳が、涙で濡れていた。

 

「ばっ、見るなよ……」

「ククール……」

 

僕たちは再び水平線に目をやる。そしてどちらからともなく、指を繋いだ。

 

 

 

僕たちは再び飛んだ。

 

行き先は不思議な遺跡。

 

ゆっくりと唇を重ねる。

 

言葉はない。

 

僕たちは、優しく愛し合った。

今までで一番優しく。

 

互いのすべてを確認し、自分の身体にきざみこむ。

 

君の唇…君の指先…甘い吐息…すべて、大切な宝物…。僕だけの…。

 

 

 

 

 

「ね……連絡したいときはどうしたらいい? ドニ? 修道院?」

抱き合いながら尋ねる。

 

「ドニだな。酒場のおばちゃんね。姉ちゃんじゃダメだ」

「わかった。姫の婚礼の時に手伝ってもらうと思う。手があいてたら来てね」

 

「了解だ」

 

僕たちは、再びゆっくり愛し合いながら、夜明けを迎えた。

 

 

 

 

 

「元気でな……」

「ククールも……」

 

涙なんて出なかった。

胸が苦しくて、苦しくて。

 

このお礼参りの一週間、本当につらかった。

 

君との思い出があまりに多すぎて。一人のほうがどんなにか楽だったろう。

 

でも君の声を聞き、君の瞳を見、ぬくもりを感じるたびに、どうしようもない熱が僕に生まれて、幸せに満ち足りる。あと何日、あと何日ってカウントダウンしながら、君との思い出をなぞっていた。

 

「じゃあな……」

ククールは、ポルトリンクから船に乗った。

 

船はまっすぐに南へ向かう。

 

船が作った軌跡は、僕へのメッセージだろうか。

 

何て言ってるの?

 

「サヨナラ」それとも、「またね」。

 

 

僕は悲しいよ……。

 

淋しいよ……。

 

深く深く、えぐられる。

 

僕の弱い心。

 

もう……僕は死んでいる。暗黒神を倒したときに、僕は終わったんだよ。

 

もう……この世に存在した、僕はいなくなった。

 

これからの僕は、僕であって僕じゃない。君が愛してくれた、僕じゃない。

 

さよなら、ククール。

愛する君。

 

君は僕の魂が求める全てだった。

 

君がどこへ行こうと、誰を愛そうと、……僕の欲しいたった一つの存在だ。

 

どうか君は、君が君であるために、君の思う生き方をして。

 

君の望む道を、僕は祝福しよう。

 

そして、……命ある限り、僕は君を愛する。

 

ただそれだけだ。

 

他には何もない。

 

君が望む結末を、僕も望もう。

 

君と共になくとも……。

 

僕は、軌跡の消えた海面を見ていた。

 

朝陽を受け、小さく波立つ海を、ただじっと見つめた。

 

……僕は、君を追わない。

 

僕は、死んだ。

 

僕の魂は、凍りつき、閉ざされた。

 

二度と自由に駆け回ることはない。永遠の冬の底で眠り続けるだろう。

 

ククール!

 

愛しているよ……。君だけを……。

 

 

 

僕は目を閉じ、ククールの残像を消し去った。

 




第一章終わりです。
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