※この作品はR-18です。

DQ8 エンド後の世界   作:ぽんぽんペイン

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竜の試練に挑んだエイトさんたちです。戦いの描写はありません。ずっと戦っていたので竜神の里8日目になりました。竜神の里5日で下界の1日になる設定です。この章はククールの語りです。


竜の試練

「もうへとへと……」

「腹減った……」

「もう魔力尽きたぜ……」

 

竜神王の足元で、オレとゼシカとヤンガスは身を横たえていた。

 

竜神の里へ来て8日目のことだ。

 

「よく耐えたな。我が試練、この短期間で乗り越えた者は今までおらなんだ」

「でも僕たち4人ですし……歴代のかたたちは皆さんお一人だったって聞いています」

「なんのなんの。4人分の力を発揮させてもらった。全く、お前たちには驚かせてもらった。真に強い。……また来るがよい。我も更に精進しようではないか……」

 

エイトと竜神王がなんだか楽しそうに話している。みんなはへとへとで地面に横たわっているというのに、エイトだけはしゃっきりと立って歓談しているのだ。竜神王め、力を小出しにしやがって、だんだんと強い竜に変身し、襲い掛かってきた。オレたちは全滅しかけたりと何度もピンチをくぐり抜け、どうにかこうにか竜の試練を勝ち進むことができた。それなのに竜神王、精進するだと? いいよもう、精進しないでくれ。オレたちもしないから……。

 

ご褒美ももういりません。メシ食って寝ます。もう勘弁してください……って、何度エイトに言ったことか! 何日も何日も! 連続攻撃のこんな強い竜は反則だろ!

 

「一回か、せいぜい三回までだと思ったのよ……」

ゼシカが横になったまま言った。

 

「俺もだ。オノにひびが入った気がしたのに、一戦終わったら、ごていねいに直してくれるなんて」

ヤンガスもまだ起き上がれない。

 

竜神王は、次々と姿を変え、オレたちに襲い掛かってきたのだが、一体倒すごとに竜神の里に帰され、一休み。グルーノじいさんに「早く次の試練へ!」と急かされ、メシを食わされ寝かされ、起こされ追い出され……。竜神王は、オレたちの武器や防具が壊れると、なんとその不思議な力で元通り直してくれるのだ。オレたちはボロボロなのに、所持品だけが無傷で再び使われるのを待っていた。

 

「……あたし、痩せたかも。ヤンガスは?」

「俺も多分。体重が半分になってると思う」

おいおい、そりゃ大げさだろ。

 

「起きられねえ……」

オレがそう言うと、竜神王がまた不思議な力で無理矢理オレを立ち上がらせる。もう死にそう。棺おけのなかでちょっと寝たいくらいだぜ。ゼシカもヤンガスも無理やり立たせられる。

 

「またバシルーラで帰されるのね」

「どっか、三角谷とか行きてえよ……」

「ああ、もうりゅーじんおう様の顔はしばらく見たくねえ。ドラゴン系の魔物のいないところに飛ばしてくれ」

 

オレたちのそんな泣き言を、エイトと竜神王は笑って聞いている。なんなんだ、こいつらは。バケモノだな、種族差別的発言じゃねえ、強すぎる。バケモノだ!

 

一戦ごとにもらえるご褒美。結局まんじゅうでも酒でもなく、竜神の防具セットだった。もちろん、竜神族の血を引くエイトの装備品。

 

「ねえ、エイト、せっかく揃ったんだから装備してみてよ」

ゼシカの提案に、エイトも「それじゃあ」なんてまんざらでもない様子だ。竜神王も見守る中、竜神王がくれた竜神王のかぶと、よろい、つるぎを装備するエイト。

 

「兄貴、よくお似合いでげす!」

「ホントね、まるでエイトのためにあつらえたみたいだわ」

 

鈍い赤を基調にした竜神の装備品は、エイトによく似合った。

竜神王もなぜか嬉しそうだ。跡取りを見つけた親父のよう。

 

オレたちは、「また来い」という竜神王にあいまいに返事をし、またバシルーラで竜神族の里へ飛ばされた。

 

 

 

「もう、帰るのか……寂しいのう……」

8日目の夜、竜の試練をなんとか勝ち抜いたオレたちは、じいさん宅で宴会をしていた。

 

「明後日に帰ろうと思ったんですが、ギリギリになっても困りますので、明日中においとまします」

「疲れたろう、竜の試練をたった5日で果たしてくるとは……」

 

「みんな強いですからね」

エイトはオレたちを見る。

 

ゼシカは真っ赤になり、ヤンガスはポリポリとトゲトゲメットを掻く。オレは、じっとエイトを見つめてやった。

 

エイトはふっと瞳の力を弱め、またじいさんの方を見る。

 

強いのはお前だ、エイト。

自信に満ちあふれ、向かうところ敵無しだ。

 

「竜神王は何と?」

「またいつでも来なさいと。強くなって待ってるって言ってました」

じいさんはそれを聞くと、大喜びして酒を飲み干した。

 

じいさんはそれからも、竜の試練が行われることがどんなに一大事かを話し、オレたちの戦いの内容を聞きたがった。

 

エイトは面倒がらずに、丁寧に話してやっていた。

 

そのうちヤンガスはおおいびきをかきはじめ、ゼシカも壁にもたれてうとうと。じいさんのろれつが回らなくなってきたところで、お開きになった。

 

じいさんを寝かしつけ、ゼシカをベッドに運ぶ。ヤンガスはその場に転がしておき、オレとエイトで後片付けをした。

 

「明日の朝はゆっくり寝ていられそうだね」

グルーノじいさんの様子を見てきたエイトが言った。

 

「そうだな。明日は、なにがなんでも起きねえからな。起こすなよ」

「わかってるよ。僕だって起きられないよ。なんかあちこち痛いし……」

 

オレたちはなんとなく外へ出た。

 

 

月が明るい。下界より大きく見える。

 

「同じ月だよね」

エイトが月を見上げ、呟く。

 

「異世界って言ったって、あの遺跡と繋がってんなら、同じ月だろ」

「そうだよね」

ゆっくりと歩く。

 

村人の気配も、他の生き物の気配もない。風の音だけが、オレたちを包む。

 

「いろいろ、わかってよかった」

「?」

 

「わからなければわからなくてもよかったけど」

「生まれのことか?」

エイトは月に目をやったまま、静かにうなずいた。

 

「……両親が誰だかわからなくてもよかったんだ。でも、いい人たちでよかった。一生懸命生きた人たちだったから。僕、嬉しかった。それに……僕、親に捨てられたんじゃなかった」

「そうだな」

 

愛されてたんだぜ、ずっと。

 

「それから、ウィニア……母のお墓は、父エルトリオの墓と同じところに移されたでしょ? あれも、嬉しかった」

「そうだな」

 

墓は、グルーノじいさんたち長老会議が移動したらしい。

 

「また、来るよ。もういつでも来られる」

「ああ。良かったな、生まれ故郷が見つかって」

 

冷たい風が、エイトの髪を揺らす。

冷たい風が、エイトの頬を冷やす。

冷たい風が……。

 

暗黒神を倒し、パーティーを解散してからのオレたちは、互いの生活に関わることはなかった。

 

何より、トロデーンの復興が急がれた。エイトは休む暇もない。サザンビーク大臣の行方不明事件がなければ、この休みはなかったんだ。

 

「お前、休めてるか?」

「うん。大丈夫だよ」

オレの言葉に答えるエイトの穏やかな笑顔は、長い旅の間に見せていたものと同じだった。

 

「なんか、とてつもなく疲れる休暇になっちまったな」

「あはは、そうかもね……でもさ」

ん?

 

「みんなに会えて、楽しかったよ……」

エイト……。

ふと黒い瞳とぶつかる。

 

オレは、乱暴にエイトを抱きしめ、奪うように唇を重ねた。

 

とっさのことにエイトは身を固くしたが、オレは構わず深く口づけた。

 

「……月が……見てる」

オレから離れたエイトは、力なくそう言って、グルーノじいさんの家に歩いて行ってしまった。

 

 

オレは……。

 

エイトを束縛してはいけない。

あいつ……あいつは……。

 

決定的な証拠を突きつけられ、あとはどんな風に物語が進むか、そんなこと明白じゃねえか。

 

オレは、月を睨んだ。

何もかも、お見通しだと言わんばかりの、青みがかった白い月。

 

バカ野郎。

きれいさっぱり別れて、それぞれに生きるつもりだったじゃねえか。

 

お礼参りの最終日、二人だけで迎えた朝、エイトは何も言わなかった。オレだって何も言わなかった。

いちいち言わなきゃわからねえオレたちじゃねえよ。

 

もう、終わりにしなきゃならなかったんだ。エイトは、オレより覚悟ができている。

未練たらたらなのはオレだけだ……。

 

 

オレは夜明け近くまで月を睨み続け、早起きな村人が起き出す頃にじいさんの家に戻って横になった。

 




エイトさんの気持ちは、推し量ることしかできません。ちょっと辛くなってるククールでした。次は下界に降ります。
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