※この作品はR-18です。

DQ8 エンド後の世界   作:ぽんぽんペイン

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トロデーン城に招かれているゼシカ。ミーティア姫と女子会をしています。そこへエイトさんとトロデ王がやってきました。ゼシカの語りです。


トロデ王の喜び

──トントン

 

「まあ、もしやエイトかしら」

 

食事が済んで、食後のお茶をいただいていた時だった。

 

「はい、どうぞ」

姫さまがお返事をする。

 

「ミーティアや!」

「まあ、お父様? それにエイト!」

 

やって来たのはトロデ王と、それからエイト。

 

「入るぞ、ミーティア。おお、ゼシカもおるな」

トロデ王はちょっと慌てた様子。エイトはいつもの様子。

 

「どうなさったのですか?」

姫さまはきょとんとされて、2人を見る。

 

「よく聞くのじゃ。ゼシカもじゃ」

「ええ、お父様」

「は、はい」

 

王さまは、あたしとミーティア姫さまのテーブルの近くへ来て、こほんと咳払いをする。

 

「姫、チャゴスと結婚しなくてよろしい」

「?」

 

……それって……。

あたしは、エイトを見ないようにした。

 

「ど、どういうことでございますか、お父様」

「よく聞くのじゃ」

「はい、聞いておりますわ」

 

「ほれ、エイト」

「はい」

トロデ王に促され、エイトが前へ進み出る。

 

ねえ、それって……。

 

「僕は、……僕の出自がわかりました」

「まあ、エイト、本当ですか?」

姫さまは目を丸くなさる。

一応、あたしもエイトを見る。

 

「すぐにお伝えせず、申し訳ありませんでした」

「ええ……?」

 

エイトはあたしのほうを見ず、姫さまをまっすぐ見ている。

 

「……僕は、僕の両親がわかりました。母は竜神族……伝説の竜神族の里は、本当にあったのです。母の名はウィニア。父はサザンビークの王子でした。名はエルトリオ。二人ともすでに亡くなっています」

「まあ……」

 

「のう、ミーティア、エイトはサザンビーク王室の血を引いておるのじゃ」

「……」

姫さまは黙ったまま。

 

「姫や、わかるか、お前はチャゴスの所に行かずともよい」

「でも、古き約束が……」

「だから、エイトがサザンビーク王室の血を引いておるのじゃ。今のクラビウス王には若くして亡くなった兄がおったんじゃ。それがエルトリオという。エイトはその子どもなのじゃ! ……話せば長くなるが、なにしろ、エイトはサザンビーク王室の出身じゃ!」

「ええ……?」

姫さまはエメラルドグリーンの瞳を大きく見開き、エイトをじっと見つめる。

 

「……僕でよろしいでしょうか……姫」

 

エイトは姫さまの前にひざまづいた。

そして優しい笑顔で姫さまを見上げる。

 

「エイト……エイトはわたくしを……」

「そうじゃ、姫。姫は、エイトが嫌いか?」

「そんな! あっ、お父様、その……」

「よいよい、ミーティア。姫の気持ちはわかっておる。あのチャゴスのアホンダラなんぞより、エイトの方が一億万倍よい人間じゃ」

 

「エイト、わたくし……」

「はい。僕と結婚してくださいますか」

「エイト……、はい。はい、もちろんですわ」

 

エイトが恭しく差し出した右手に、姫さまは左手をのせた。姫さまの大きな瞳からは、大粒の涙がキラキラと零れ落ちる。

 

エイト、エイトが、姫さまと結婚。それって……。

 

「のう、ゼシカ」

「は、はい?」

「ちょうど良かった。このままこの城にしばらくいてくれんか。サザンビークに、姫はやらんと言いに行くぞ。そうじゃ、ククールとヤンガスも呼ばねばならん。皆で行くぞ。ククールとヤンガスを探すのじゃ!」

 

「はい、早速手配します」

エイトは姫さまの手をそっとはずし、立ち上がった。

 

「ヤンはすぐ連絡つくと思います。パルミドかゲルダさんの家ですから。ククールはちょっと……ゼシカ、最近ククールに会った?」

「ううん。ヤンガスはゲルダさんのところで時々会ったけれど、ククールはずいぶん前に一度きり。ドニにいるのかしら?」

ククールには、最後に会ってから本当に一度しか会ってない。

 

「あたし、ククール探しましょうか?」

「いや、ゼシカはここで姫の話し相手になってくれ」

「あ、はい」

 

王さまは「じゃっ」と言って退出した。

 

「あ、あの、あたし……」

なんだか急にお邪魔ムシな気分……。

 

「ゼシカ、急にごめんね。竜神族の里のことも、ごめんね」

「ゼシカさんも竜神族の里へは行かれたのですか?」

「はい、あの……」

やだ、あたしがずっと黙ってたって姫さまにわかっちゃったわ。

 

「あ、あの、ゼシカも、ヤンガスもククールも行ったんだ。でもまだ、僕の出生に確信がなかったから、黙っててもらったんです。王にも言いましたけど、話す時が来たら、僕が話すって。だから、ごめんね、ゼシカ。ありがとう」

「ええ、あの、うん……」

やだ、なんて言ったらいいのよ。

 

「ゼシカさん、さすがですわ。本当に、お約束を守る方なのですね、嬉しいですわ」

姫さま……ごめんなさい。そんなふうに言ってくださったのに、あたしったらお祝いを……。

 

「あ、あの姫さま、エイト、おめでとうございます」

あたしは立ち上がってそう言った。

 

「ありがとうございます、ゼシカさん」

「ありがとう、ゼシカ」

あたしたち三人は笑顔だった。

そう、笑顔でお祝いした。

 

ねえ、これが王室なの?

これが世界のためだから?

 

ねえ!

 

涙ぐむ姫さまに、エイトが優しく声をかける。姫さまは、本当に心からお喜びに……。

 

なんだかあたしも涙が出る。なんなのかしら、この涙は。

 

「ごめんなさい、わたくし、胸がいっぱいで……。お母様が生きていらしたら……」

 

そうおっしゃる姫さまの背に、エイトはそっと手を当てる。

 

「僕も、亡き王妃様にお会いしたかったです。そしてご報告申し上げたかった」

「エイト……」

 

あたしはなんとなく居心地悪くて、そっと部屋を出た。あたしのゲストルームは姫さまのお部屋と同じ階にある。今日はもうこれで女子会も終わりね。姫さまをそっとしておいて差し上げたい……。

 

あたしのことも、そっとしておいてほしい。

竜神族の里でわかったエイトの出生の秘密……。ククールはこうなることを予測していた。もちろんエイトだって。

 

ああ、もしかして、マルチェロが竜神族の里で見つかってしまったら、エイトは姫さまに結婚を申し出るつもりだったのかしら。初めからそのつもりでマルチェロを竜神族の里に?

 

あたしは、ゲストルームへは行かず、階段を下りた。なんだか、いたたまれない。

これがエイトの思う「全てが上手く行く」こと? これでいいの?

マルチェロは捕らえられている。ククールは、今どこで何をしているのかしら……。

 

 

考え事をしながらお城の中を歩いていた。

「あら……?」

 

そう。迷子です。

やだ、おトイレに行きたくなっちゃった。ワインの飲み過ぎかしら。いえ、喉が渇いたからってお茶を飲み過ぎたせいね。

 

なるべく広い通路を探す。確か、厨房の近くにおトイレがあった気がする……。

あたしったら、方向音痴じゃないはずなんだけれど。

 

「造りが変わってる?」

あたしの頭の中のお城の記憶は、イバラの呪いにかかっていたときのもの。今回の復興工事で、ちょっと内部の作りが変わったのね。昼間姫さまに案内していただいたところは、お城のメイン部分だったんだわ。こんな場所には来ていない。

 

ちょっとちょっと……。

もう厨房がどこだかわからない。メイドの姿もないし、見回りの兵士にも会わない。

それよりなにより、おトイレが……。

 

あたしはちょっと早足になった。もうこうなったら表へ出て……。

 

「ゼシカ!」

えっ?

 

「エイト!」

「どうしたの、こんなところで」

「ああ、良かった。迷子になっちゃって」

神様ありがとう、メイドでも兵士でもない、エイトさまだわ。

 

「部屋まで案内するよ」

「いえ」

「え?」

ついて行かないあたしを振り返り、エイトは不思議そうな顔をする。

 

「あの、緊急事態なの……その」

「ああ、もしかしてトイレ?」

あたしはぶんぶんと首を縦に振った。

 

「じゃ、こっちだ。一番近い所、ちょっと古くて暗いけど、緊急事態なんだよね?」

「ええ、お願いします」

 

早足でエイトの後に続く。

いくつか角を曲がると、本当だ、古い小部屋が。

 

「ここで待ってるから」

「ありがとう」

 

ふう。助かった。

 

「兵士長!」

おトイレの外で声がする。

 

「どうしてこのような場所に?」

「ああ、姫のゲストのゼシカが迷子になっていたから。それで、こちらに御用があって」

やだ、「御用」なんて……。

 

「わかりました。……本日の見回りについてご連絡があります」

「うん」

えー、業務連絡? なんか出にくいじゃない。

 

「……え? 僕が今夜の見回り?」

「はい、急ですが、このあとすぐ城の北側の見回りに行ってください」

「すぐか……。ちょっと図書室に急ぎの用があるんだけど、そのくらいかまわないかな」

「図書室ですか?」

「うん。大事なメモを挟んだまま本を戻しちゃって。そうだ、ついでに、ゼシカの忘れ物も図書室にあるから一緒にとりに行こう」

 

忘れ物? そんなのあったっけ?

 

「承知しました。ではご同行いたします」

「うん」

 

あたしはちょっと間をおいて、おトイレから出た。

「ごめんなさい、待たせちゃった」

「いいんだよ。僕、ちょっと図書室に寄るから、ゼシカも来てくれる? ゼシカの忘れ物だと思うんだけと見て欲しいものがあるんだ」

「忘れ物? 何かしら」

「ゼシカの装備品だった守りのルビーだよ。細い場所に挟まってるから、手伝ってくれる?」

「もちろんよ」

 

おトイレと図書室はびっくりするくらい近かった。

 

「兵士長、探し物の手伝いならば自分が」

図書室の前で、一緒に着いてきた兵士がそう申し出た。

 

「うん。本当は君の方が力があるからお願いしたいんだけど、すぐに見回りに出たいから、詰所から僕の鎧一式をここへ持ってきてほしいんだ。僕はそのまま見回りに出るから、君はゼシカをゲストルームへ案内してくれないかな。3分もかからないでしょ? 君が戻ってきても書棚の移動ができてなかったら、手伝ってくれる?」

「承知しました」

 

兵士は小走りで行ってしまった。

 

「さ、ちょっと暗いけど……」

エイトは、持っていたランプをつけ、図書室に入る。

 

エイトの表情が変わる。

守りのルビーなんて嘘ね。

 

「こっち……暗いから気をつけて」

「ええ」

 

机にランプを置くと、エイトは唇に人差し指を当てる。「喋るな」ってことね。あたしは無言でうなずく。

エイトはランプから離れた場所にあたしを誘導し、しゃがんだ。あたしもそれにならう。

 

!

 

窓が。

月の光を受けて、壁に窓が映っている。

図書室の窓じゃない。屈んで入れるくらいの小さい窓。

 

エイトが指差したほうを見ると、積み重ねられた本と椅子の足が窓の影を作ってることが分かった。

 

あたしたちはうなずき合って、壁にできた窓の扉を開けた。

 




次はあの人のおうちです。
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