※この作品はR-18です。

DQ8 エンド後の世界   作:ぽんぽんペイン

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お礼参りの旅2日目はマイエラ修道院とアスカンタ城に行きます。エイトさんの語りです。


マイエラ修道院、アスカンタ城

暗黒神討伐のお礼参り二日目、ポルトリンクに泊まった僕たち。ちょっとした誤解があったけど、すぐに解決した。僕とゼシカの間には何もなかった。うん。これからもきっと何もない。

 

これから僕たちは南の大陸へ渡る。古代船を使ってもいいけれど、王から、移動はなるべく定期船でするように言われている。

 

「定期船、すぐに出るわよ」

ゼシカの粋な計らい? ……ヤンは脅しだって言うけど……とにかく、南の大陸へ渡る定期船をすぐに出してもらえることになった。

 

定期船の乗組員は、みんなゼシカの手下(?)だ。ポルクとマルクの一件もあったし、みんな僕たちによくしてくれる。乗組員の人が、他の乗客に僕たちのことを話すから、ちょっと照れくさかった。

 

一通り話したあと、僕たちは4人で固まって景色を眺める。雲の多い朝だ。南の方は暗い雲に覆われている……。

 

 

初めてこの定期船に乗ったことを覚えている。ドルマゲスを必死に追っていて、どうしてもこの定期船に乗らなきゃならなかった。でも、魔物のせいで舟航していなかった。

 

「オセアーノンと戦ったんでがすよね……」

「そうね。懐かしいわ」

ヤンもゼシカも同じことを考えていたみたい。

オセアーノン。定期船の航路を邪魔していた大イカだ。あれ? タコだっけ?

 

「オセアーノンを退治して、やっと嬢ちゃんに認めてもらったんだっけなあ」

「ちょっ……! 止めてよヤンガスってば」

「なになに? どうした?」

オセアーノン退治の話や、ゼシカがパーティーに加わってからの話を、ヤンが誇張してしゃべり始める。

 

ククールはお腹を抱えて笑い、ゼシカは真っ赤になって怒っている。

 

そうだよね。あの時、僕たちまだ弱くて……。ゼシカに戦いに慣れてもらおうって、またトラペッタに戻ってみたり。

 

ククール、君に会うまで、僕は何を考えて毎日を過ごしていたんだろうか。

 

「……なのか? リーダー?」

「えっ?」

急に話をふられる。

ごめん、聞いてなかった。

 

「そうよ……船酔い……」

「ああ、大丈夫だよ、ゼシカ。心配ないよ。この距離なら、こうして空を見ていれば大丈夫なんだ」

「そう? ならいいけど。気分悪くなったら言ってね」

 

僕の船酔いは酷くて、いつもみんなに迷惑をかけた。ククールに酔い止め薬を作ってもらったり。でもこの旅で、ずいぶん慣れたよ。海上巡回にも出られそうだ。

 

カモメがきいきい言っている。

南の大陸が近いんだね。

 

君のふるさと、マイエラはもうすぐ。

 

 

「相変わらず、感じ悪りいな。騎士団の奴らは」

「知ってる奴じゃねえのか?」

「ああ、新入りだろう。見たことねえな」

船着き場が見えてきた。警備はマイエラの騎士団員だ。定刻外の船の到着に、少し苛立ちを見せている。

 

「ポルトリンクから渡ってくる悪党は、フツーの人間のような顔をしてやってくるからな。挙動不審なヤツを捕まえようと目つきも鋭くなっちまう。抑止力にはなってるんだろうが、だからってあんなに不愛想にすることもねえのにな。まっ、オレたちは大丈夫さ」

騎士団員の黙視に耐えながら、僕たちは船を降りた。

 

ゼシカの威光も、ここ南の船着き場では効力はない。定期船の乗組員だけが、大げさにゼシカに挨拶を入れる。騎士団員は、それも無視だけどね。

 

「天気悪いな」

ククールが空を見上げた。

 

夕べまで、穏やかに晴れていたのに、今朝のポルトリンクは曇っていた。南の大陸の方が天気が悪いみたい。霧が低く立ち込め、小雨が降っていた。

 

オディロ院長のお葬式も、雨だったね。

 

みんな、なんとなくそのことを思い出しているんだろう、黙ってマイエラへ歩を進める。

 

「霧が深くなってきたわ……」

「足元気をつけようぜ」

船着き場から少し歩けば、すぐにマイエラ修道院が見えるのに、霧のせいで、その姿が見えない。森の方なんて真っ白だ。

 

黙って歩くのはきつい。今までは、たとえ無言でも、馬車の音があった。姫がずっと引いていた馬車の音が。悪い道では、荷車の中で錬金釜がカタカタ音を立てていた……。

今は、立ち込める霧がわずかな雨音もを吸収してしまい、僕は無音の白い空間に放り出された気持ちになった。

 

目標を見失わないように、マイエラ修道院の方向をしっかり意識しながら歩く。

ゆっくりと踏みしめる。足を伝って全身を駆けめぐる冷たい痛み。僕らの旅の一歩一歩を心に刻めと言ってるんだろうか。

 

やがて修道院のシルエットがうっすらと見えてきた。

ふと見回せば、修道院の地下牢から続いていた馬小屋がぼんやり見える。地下牢から秘密の抜け道を通って、あの馬小屋に出たんだよね。あの時、ククールの背中を見つめながら、ククールとマルチェロさんのことを考えていた。修道院という閉鎖された社会。僕たち兵士とも似ていると思った……。

 

修道院前の橋を渡る。こんな日でも、入り口には修道士が立っている。彼は、無我の中にいるような、穏やかな笑みを浮かべていた。

 

ククールは正面から入らず、建物横の川べりからお墓に向かった。僕たちは黙ってククールの後ろを歩く。

 

 

 

「オディロ院長……」

ククールが膝を折る。

 

騎士団宿舎を抜けたこの場所は、お墓があり、院長の館へ続く。橋は、まだきちんと直されていなかった。

 

白い花がいくつも、お墓の回りに咲いていた。

 

ゼシカが花輪をオディロ院長のお墓に供えた。花輪から少し花を抜き、他のお墓にも供える。

 

ククールに続き、僕たちもお参りをした。

 

……院長さま、終わりました。何もかも、終わりました。みんなを苦しめたあの杖は、もうありません。暗黒神も消えました。たくさんの人が犠牲になりました。これからみんなで幸せをつくっていきます。平和で、優しい世界をつくっていきます……。

 

ククールはまだ膝をついている。僕ら3人は、静かにククールの報告が終わるのを待っていた。その間も騎士団の人がうろうろと出入りしているが、僕たちのことなど目に入らないようだった。

 

「変われば変わるもんでがすね。情けねえ。これで騎士団」

ヤンが、ため息とともにそんな言葉を口にした。

 

「本当よね。昔の厳しさ、見る影もないわ。あら……ククールいいの? 寄らなくて」

「ああ。……オレが用があるのは院長の墓だけだ。騎士団の奴に用事はねえよ」

お祈りを終えて立ち上がっていたククールは、ゼシカにそう言うと、建物にくるりと背を向けた。

 

騎士団の奴に用事はねえよ……か。ククールのよく知ってる人たちは、ほとんどがゴルドに落ちている。今、残っている人たちは、酔っぱらいばかりだもんね。

 

「ククール、ドニはいいの?」

ドルマゲス戦の前、別行動したとき、君はドニにいたでしょう? 酒場のおかみさんに挨拶はいいの?

 

「ドニはいい。さ、アスカンタいこうぜ。まずキラちゃんちだな」

ククールがにっと笑顔を作る。

ゼシカもヤンも笑って。

 

「うん、そうだ、イシュマウリさんはいいよね……?」

なんて、僕も冗談を言ってみる。

 

「ああ、あの月のへちまうりでがすか。トロデーンで行ったきり、扉すら見てませんしね」

そう。あれからあの月の精には会えなくなっていた。

 

 

マイエラからアスカンタへ向かう。アスカンタ方面は霧はなく、穏やかな空気。少し雲のかかった青空が目に優しい。僕たちは、少し明るい気持ちに戻っておしゃべりしながら歩いた。

 

ククールがなかまになって最初に行ったのがアスカンタだったね。

僕もヤンも、そしてゼシカも、君が急になかまになることになって、びっくりした。それより、マルチェロさんに無理やりそうされた君は、ひどくショックを受けたみたいだった。ポーカーフェイスの君は、マルチェロさんにはとても感情的になるんだよね。それがどうしてか、あのときは分からなかったけど。

 

少し混乱したまま、アスカンタへ向かったね。君の腕前がどんなかわからなくて余計な魔物と戦ったりしてみた。君の強さは、ヤンの強さや僕とは違った。君は僕たちを助けてくれる役割だった。それまでは、力が弱いことばかりに目が向いていた僕だった。あの頃の僕の回復術はまだまだだったから、回復はほとんど薬草に頼っていた。それが君が入ってくれてから、戦い方が変わった。パーティーの方向性が変わって行って、随分ぶつかったよね。ヤンは、3人でようやくまとまったものが変わることに慣れなくて、イライラした時期もけっこう続いた。

 

並び順がどうのって、いつももめたね。僕はすらりと背の高い君の後ろ姿に惹かれていた。こちらを向けば、深い青い瞳が僕の心の中にまで差し込んでくるようで、まともに見ることができなかった。いろんな女の人と遊んでいて、カードでイカサマをするお坊さんなんて今まで会ったことがなかった。

 

今思えば、君の……ゼシカを見る目に嫉妬していたのかもしれない。ゼシカじゃない、僕を見てって。恥ずかしくてまともに目を合わせられないほどだったのに。君とゼシカを争うことで、君に近づきたかったのかもしれない。

 

僕の近くを歩くククール。ククールはちゃんとゼシカを守って歩く。僕が自由に歩けるように、僕が安心して戦えるように、みんなを守ってくれている。

いつも、君は優しい……。

 

 

キラちゃんのお婆さんの家が見えてくる。ヤンとククールは、キラちゃんがいるかいないかで賭けをするが、ゼシカに叱られている。

 

結局、キラちゃんはお城にいることがわかり、僕らはすぐにお城へ向かった。

 

 

「アスカンタはうまく行ってるのかしら?」

「辛気くさかったもんな、あのヘタレ。でももう大丈夫だろう」

ゼシカの言葉に、ヤンが呆れたように答えた。ヤンはいつだって、ああいうタイプの人には厳しい。そこが漢(おとこ)たる所以なんだろうな。でも、喪が明けた後のパヴァン王に対してはもうそういうことは言わなかった。ちゃんと人を見てる。僕がヤンを信頼できると思ったのは、人情に厚いこと、それからちゃんと人を見てるってことだった。

 

パヴァン王に関しては、ククールのほうが関わりが深いから、いろいろと言いたいこともあるみたいだね。

 

「そうだな。やっぱり王さまってのは大きく構えてなきゃならねえ。ったく、あのヘタレのせいで、ずいぶん騎士団も使われたよ。あっちの軍が動かねえからさ」

「マイエラはアスカンタ領なの?」

「いや。領ってわけじゃねえ。王家と教会は対等だからな。軍事的には教会は自治だから、あのドルマゲスの事件みたいなのがあっても、アスカンタはホイホイ助けには来ない。だが、疫病が流行ったときのように、市民を巻き込むような場合には、協力し合うんだ。パヴァン王が指揮しないとアスカンタ軍は出せないから、ヘタレってた時にアスカンタの市民が困っている場合、オレたちが出ていく。……まあ、魔物退治か、賊の征伐くらいだったからよかったけどな」

「へえ。でも、お城の軍にはかなわないでしょ?」

「そらそうだ。人数が違う。オレたちは出来る限りのことしかしない。それに、教会に危機迫ったら、教会を守りに帰らなきゃならないんだ」

 

そう。王家と教会は対等だ。ただし、法皇は最高位の中立的立場をとる。僕たち城の人間は、王には仕えるけれど、法皇には仕えない。ククールたち教会の人は、法皇は絶対だ。

 

一見、王家は法皇の下に見えるけど、そうじゃない。法皇は、絶対的正義として、もめ事が起きたときの羅針盤になるんだ。

 

だから、ニノさんがどんな人かなんて関係ない。常に女神の名のもとに、正義を振りかざしていればいいんだ。職権乱用して私腹肥やしても、僕たちには関係ない。ただ、特定の城の軍人とか、王家の誰かと癒着したら駄目だけどね。

 

なんて、今考えなくてもいいようなことをあれこれ頭に浮かべていたら、アスカンタ城に到着した。

 




思い出にふけるエイトさんでした。次はアスカンタ城訪問の後、西の大陸へ向かいます。
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