※この作品はR-18です。

DQ8 エンド後の世界   作:ぽんぽんペイン

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なぜか自分はマイエラの聖堂騎士団員だと思っているククールです。細かいことを言うと、除名されてるわけじゃないから、身分は騎士団員なんでしょうけど。


聖堂騎士団員ククール

「ホントに? ククールが騎士団時代を思い出しているの?」

昼過ぎに三角谷へやって来たゼシカが、赤い髪と同じくらい頬を紅潮させた。

 

「そのようなのだ。騎士団員として声をかけてくれないか?」

「オッケー、任せて!」

 

二人でギガンテスのところへ向かう。ククールは、いつものようにギガンテスの膝で眠っていた。

 

 

「ちょっと、様子が違うわね」

「わかるか?」

ククールを一目見るなり、ゼシカはそう言った。

 

 

「ええ。今まではぼんやりした表情だったけど、今は……そうね、サボって昼寝してる感じ?」

「……………」

「今起こしたら、きっと『ヤバい、見つかっちまった』って顔をすると思うわ。……ちょっといい?」

 

ゼシカは、私に離れるように指示し、ククールに近づいた。

 

「ククールさま、マイエラ聖堂騎士団員のククールさま? 懺悔を聞いていただけますか?」

「……………」

返事はない。

 

「ククールさま、祈りの言葉をちょうだいしたいのですが……」

「……………」

やはり、返事はない。

 

ゼシカは、少し考えた後、腰に手を当てて、さっきよりはっきりした声で言った。

「……ちょっと、ククール? こんなトコで寝ないで。だいたい飲み過ぎよ。またあのコワーイ団長さんに言いつけちゃうんだから!」

「っと! ……わりぃわりぃ。起きるよ。起きるから団長どのだけは勘弁な」

ククールはぱっと立ち上がって、ゼシカを見上げる。

 

「なんだ、ゼシカじゃん。どうした?」

「えっ?」

ゼシカを認識した!

ゼシカも同じように思ったのだろう、驚いている。当の本人は、あーあ、と欠伸をしながら身体を伸ばしている。

 

「で、なんだよ、変な顔してさ」

「あの、あの、あの? ククールってば、今まで何してたの?」

「今まで? うーん。特になし」

ククールが起きてしゃべっている。私は思わず前に進み出た。

 

ククール、といいかけたその時、

「団長どの! オレ、サボってたわけじゃありません。仮眠です。何か職務でありますか?」

私を見つけるなり、姿勢を正した。

 

「ふざけているのか?」

「いえ、そのようなことはありません!」

はっきりと返事をした。

 

「ではここはどこだ」

「ここは三角谷であります」

素早い受け答えだ。

 

「お前の仕事はなんだ!」

「周辺見回りです」

「ならば行け!」

「りょーかいしました!」

 

ククールは駆け足で見回りに出かけた。

 

 

……………。

……………。

 

私とゼシカは顔を見合わせる。

 

「なにあれ……まだ変な感じじゃない?」

「ああ。だが君のことはわかったようだな」

「ええ。でも、自分を騎士団員だと思ってる。見回りなんかに出かけて……」

 

なんなのだ、この変化は。

治ったとは言えないぞ。

 

ギガンテスを含め、三人で今目の前で起こったことを検証する。しかし、何と判断したものか……。

 

 

「おーい!」

ヤンガスだ。

 

走ってくる。

 

 

「はあはあ………、ククールの野郎、やけに張り切ってやがる! 俺が声かけたら、『おー、トゲトゲ! この村は騎士団が守るから安心しろな』とか言いやがって、森のほうへ行っちまった」

 

「やはりか」

「やはり?」

 

私はヤンガスに、記憶喪失ではないが、記憶がねじれ、ククールが今騎士団員になっているらしいことを説明した。

 

「不思議なこともあるってもんだな」

「でしょう? あたしたちを知ってるのに、自分はマイエラの騎士団員なのよ」

 

「俺たち4人で暗黒神を倒したことは覚えてんのか?」

「わかんない。でも、あんまり無理に聞いても……。ね、マルチェロはどう思う?」

 

無理は禁物だ、と私も思う。だが……。

 

「いや、聞いてみてくれ」

チャンスかもしれないのだ。もしまたおかしなことになっても、その時はその時だ。またじっくり時間をかければよい。今は、少しの可能性でも賭けたかった。

ヤンガスはトロデーンに戻り、できたらエイトを連れて来ると言う。エイトも来てくれたら、もしかしたら状態が一気によくなるかもしれない……。

 

 

見回りに出たククールは、森を一回りしてくるとギガンテスの住処へ戻ってくる。私の姿を見つけると、逃げるようにまた見回りに出かける──。そんなことを4、5回繰り返していた。

 

夕方になると、ククールは少し疲れを見せていたが、今までにない明るい表情になっていた。私の姿を見つけると、今度はきちんと礼をした。

 

「見回りご苦労であった。今日は村で食事をとるように。ゼシカ嬢をエスコートするのだ。粗相のないようにな」

「りょーかいしました!」

 

ククールは嬉々として、ゼシカに手を差し伸べる。

 

「さあ、お嬢さん、参りましょう。足元がお悪いですからね。お手を……」

「ちょっと、なによ、お嬢さんなんて! それにいいわよ、手なんか」

「おいおい、今さら何を恥ずかしがってるんだよ、ハニー」

「いいわよ、手なんて……」

二人はそんな押し問答をしながら、村へ向かった。私はそんな二人の前を行く。

 

 

ククールが森の見回りをしている間に、ラジュとマスターには事情を説明してある。二人も見守ってくれている。

私はバーカウンターに入り、マスターと食事の支度をした。

 

黙って見ていると、昔のククールであった。女性をスマートにエスコートし、上品な振る舞いで場を盛り上げる。そして、口説く。

 

「……もう。ククールったら。口説き上手よね。団長さんに言いつけるわよ」

「これは失礼。ゼシカがこんなに魅力的だと思わなかったからつい……な。団長どのだけは勘弁してくれよ」

最後の一言を小声でささやくように言い、私をちらりと確認するククール。

 

どうやら、私の前では「いい子」を演じるつもりだな。

 

私はゼシカに合図し、わざとらしくカウンターの裏に入った。そしてククールから見えない位置でひそかに観察をする。

 

 

「ね、そういえば覚えてる? ユリマちゃんのこと。ククール、けっこう好きだったでしょ?」

「ユリマちゃん……。可愛いよなあ。健気でさ。ルイネロさんがうらやましいぜ」

途端に口調がくだけ、ワインをボトルで注文する。

 

「あはは! あとさ、キラちゃん。金髪でチョー可愛かったじゃない? アスカンタのパヴァン王も可愛がってたわよね」

「ああ、全くだ。あんなヘタレによく仕えてられるよな。会いてーな、キラちゃん」

女性の話が続くと、ニタニタとしまりのない顔つきになり、カウンターにひじをつく。私が姿を消したことで、リラックスしたのだろう。

 

「ククールって浮気っぽいわね。ね、じゃあゲルダさんなんてどう?」

「ああ、あの色っぽい姐さんか。いいねえ、小股の切れ上がったいい女! でもゲルダ姐さんにはトゲトゲがいるだろ? あそこのカップルもよくわかんねえよな。トゲトゲのどこがいいんだか」

 

「なに言ってんのよ。あの二人こそベストカップル賞じゃないの」

「なんだよ、ベストカップル賞って」

 

「いいじゃない。あと……」

「あ、ベルガラックのユッケか? あいつはブラコンだからダメだ。ゼシカとおんなじだ」

 

「なによう! ブラコン上等! サーベルト兄さんは世界一、いえ、宇宙一なんだから!」

「おーおー、こりゃ婚期遅れるわな。そういや、リーザスのチビどもは元気か?」

 

「ええ。もちろんよ。勇者になるって張り切ってるわ」

「勇者ねえ」

 

「……エイトに憧れてるんだって。ククールじゃなくて残念ね」

「エイトか。あいつ、すげーヤツだったな。強かった。あんなヤツと一緒に戦ってたんだよな、オレたち」

「そうよ」

「……………」

 

 

覚えている。しっかりと。あの1年にわたる戦いの日々を、ククールは覚えている。

 

だがなぜ、自分だけ騎士団員に戻っているのか。

 

ゼシカはそんな私の心中を察したのか、質問を続けてくれた。

 

 

「ね、マイエラはどう?」

「どうって……。団長が怖くてさ」

 

「なんで三角谷にいるの?」

「わかんねえんだよ。ただ、団長どのが三角谷にいろって言うから。ずっと見回りしてんだよ」

 

「団長……マルチェロって、三角谷に来るの?」

「ああ、気づくと来てる。あの人、昔からそうでさ。サボるとどっかからわいてきてお仕置きすんだよ」

 

「……きょうだいなんでしょ?」

「ああ。……でも、団長どのは認知してねえんだ。だから、オレは静かにしてんだよ」

 

「そう………。それでいいの?」

「いいも何も、しょうがねえさ……。しょうがねえ、って言ったけどな、いや……レディに言うことじゃねえか」

「何よ、あたし平気よ?」

 

「修羅場くぐってきたもんな。グロい話も平気だな?」

「あ、あたしが切り裂かれるのは嫌よ」

 

「大丈夫だよ。オレが切り裂いたのは団長どのだ」

「え?」

 

!!!!!

 

「オレ、夢の中で、毎日団長どのを殺そうとしてんだよ。手切ったり、足切ったり、いろんなトコをさ……ごめん、気持ち悪いな」

「いいえ……。それで、すっきりするの?」

「いや、すっきりっつーか、なんか違うんだよ」

ククールは言葉を切って、飲み物を口にする。

 

「……違うって?」

「ああ。団長どのを殺せば、オレは負けちまう。だから、死なない程度に切るんだけど、団長どのはオレに命乞いしないんだ。ただ黙って切られてんの。痛いとかも言わないでさ。そんで、殺さないからオレの勝ちなんだけど、勝った気がしない」

 

「へんな勝ち負けね」

「そうなんだよ。殺せば負けって、誰が決めたんだ全く」

 

「じゃ、やんなきゃいいじゃない」

「ダメなんだよ。やらないと、世界が滅びる」

 

「なにそれ~」

「なんかバカみてえだろ?」

二人は声をあげて笑った。

 

私は複雑な思いにとらわれていた。

 

私を殺せばククールの負け。では、勝つのは誰だ。死ぬ私なのか?

夢物語なのだから、気にすることもないのだろうが、トルソーの記憶があまりに鮮明で、少し混乱した。

 

二人の会話は、再び旅の思い出話となる。

 

今得た情報をどう考えるべきかと思いあぐねていると、ヤンガスが戻ってきた。

 




このまま回復していくんでしょうか。マルチェロもちょっと困惑気味です。次は、あの人が登場します。
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