※この作品はR-18です。

DQ8 エンド後の世界   作:ぽんぽんペイン

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ククールを迎えにトロデーンへ行くマルチェロです。やっとククールの本心に気づいたようです。


ククールを迎えに

「皆さんがいらっしゃいましたよ」

ある朝のことだった。散歩をしていたら、ラジュが私を探しに来た。

 

「三人ともですか?」

「いえ、ゼシカさんとヤンガスさんのお二人です」

 

村のバーで、二人が待っていた。

せっかくなので三人で朝食をとる。

 

「ククールを迎えに来てくれって。エイトが」

「そうか」

「ああ。姫さんはまだ反対していたんだが」

「…………」

 

「トロデ王も、マルチェロとあまり離しておくのはよくないって」

「監視のためか」

「たぶんね」

 

「……ククールの様子は、やはり変化はないのだろうか」

この二人が何も言わないのだから、変化はないだろう。だが、念のため尋ねてみた。

 

「そうね。お城では主に姫さまがお話し相手になっていたわ。あたしもできるだけ顔を出すようにはしていたけど」

「城の庭を散歩したりしてたな。俺はエイトの兄貴の用事が多くて、あんまり関われなかったが、晩メシなんかはよく一緒に食ったぜ。……ククールの状態は三角谷を出た時と同じ感じだ。俺たちのことは分かるし、暗黒神と戦ったことはよく覚えている。会った奴等なんかのこともちゃんと覚えてる。だがな、自分はマイエラの騎士団員なんだとよ」

やはり、変化なしか。

 

「騎士団員として、トロデーン城を表敬訪問してるんだって言ってたわ。復興の様子を団長に知らせるのが役目だ、とか言って……」

「そんな指示はしていない」

「ええ。知ってるわ」

「そういや、なんか、態度が気に入らねえんだよな……」

気に入らない?

 

「いや、態度が悪いとかじゃねえ、態度が良すぎる」

「そうね、トロデーンではとっても紳士な騎士団員さんよ」

「きみたちに対し他人行儀だとでも?」

 

私のいないところで行儀を良くするとは、よっぽど……いや、ククールは姫君に畏怖など感じてはいないだろう。

 

「そうね。三角谷を出る前、ここでおしゃべりしていたときは、けっこう砕けた感じだったじゃない?」

「そうだな。きみを口説いていた」

「ええ、ハニーとか言っちゃって。ああ、あたしをハニーって呼ぶけれど、あれは、旅の時もそうだったから、……ええと、あたしとククールの間には何もないわよ。この前マルチェロが言ってた『添い遂げたい女性』なんかじゃないから」

ゼシカはあわてて否定する。

 

私も、もしやゼシカ嬢とククールの間に恋愛感情があるのではと思ったこともあった。だが、二人を見ていても、そういう様子は全く見られなかった。この二人が恋愛関係にあればよいのにとも思った。ゼシカ嬢は若いが芯の通った女性だ。自分の人生を自分の手で切り開いて生きていける女性だ。このようなしっかりした女性とならば……と。だが現在、当の二人がそういう感情をもっていないのだから、部外者の私が望んだりしても意味はない。

 

「あの状態のククールの世話は大変か?」

ヤンガスが尋ねる。

 

「いや。騎士団員のつもりだから、そういう扱いで接してやれば特に問題はない。もし、何かのきっかけで暗黒神のことや旅の途中の状態などになれば、またそのように接すればよいのではと思っている」

「そうよね。ククールの状態に合わせていくしかないわね」

「でも、あのままじゃ、下界へは下ろせねえよな。……この三角谷だからやっていけてる……」

ヤンガスの言う通りだ。

 

ゆっくりした時の流れ、安全な環境、ラジュやマスターを始め、ここの住人は穏やかに接してくれる。そして、ギガンテス。彼の存在はとても大きい。

 

砂漠の家に戻り、あそこで一人で暮らすのは無理だろう。もし、私とまた同居するにしても、一人で過ごす時間も発生する。今は、別れて暮らすのは無理か……。

 

「いっそのこと二人でこの三角谷の住人となるか……」

思わずつぶやく。

 

「ゴールドが底をつくだろう?」

ヤンガスがすかさずダメ出しをする。

 

「そうだな。バーテンの仕事を覚えて、マスターに雇ってもらうか、宿屋の掃除か……」

「三角谷は間に合ってると思うわよ」

そうだな。客など数人しかいない。隔絶されたこの世界へはそう滅多に観光客も訪れない。

 

「またガイドの仕事をするか」

ククールを食わせて行くには、私が働かねばならない。もし教会に所属することができたとしても、家族を養う俸給をもらう職にはなかなか就けまい。

 

「ガイド?」

「何のガイドだ?」

ああ、説明していなかったか。

 

「……砂漠地方に竜骨の迷宮というのがあるのは知っているだろう? 最奥にギャリングの作った秘密の部屋がある。そこを探検するツアーのガイドだ」

「ああ、そういや行ったな。ベルガラックカジノの再開のために」

「迷宮の中をガイドするの?」

 

「そうだ。ちょっとした探検だ。魔物が出るから、客を守りつつ魔物を退治しながら探検をしていく。コースもいくつかある」

「へえ、おもしろい企画じゃない」

 

「ああ。これはククールが考え、ベルガラックのフォーグに主催者をしてもらっている。ベルガラックに泊まりに来た一部の客に声をかけ、始まったツアーだったが、いつの間にか人気が出て今では予約が一杯だ」

「へえ、すごいのね。そうだ、一番奥の怖い魔物たちは? まだいるの?」

「ああ、赤と青のゴツイのがいたなあ。結構めんどくさかったやつだな……」

しばし昔話に花が咲く。

 

「そうすると……ククールをここへ置いて、マルチェロがガイドの仕事に行くってことよね」

「そうだ。状態がよくなれば、一緒にガイドに連れて行ってもいいだろう。ゆっくり時間をかけていくしかない。もしほかに方法がないのだとしたら、このまま一生涯、私が歳で働けなくなるまで。その頃にはそれなりの貯えもできているだろう、その後は、二人でどこかの教会に身を寄せるか……」

一生添い遂げるのは私ということになる。ククールの状態がこのままなら……。

 

「また、時を経れば様子も変わってくるだろう。そうしたら、そのときそのときで身の振り方を考えて行こうと思う。君たちには、ずっと世話になるだろう。よろしく頼む……」

「ええ、できる限りサポートするわ」

「俺もだ。きっとエイトの兄貴も。……まあ、元に戻るのが一番いいんだけどな」

「……そうね」

 

ゼシカ嬢が少しうつむく。彼女はやはり、何か気になっていることがあるのではないだろうか。何か……ククールの記憶の一部を強引に封印している秘密の小箱。ククールがずっと変わらなければ、私はその小箱を開けてやることができない。いや、あの箱が開かない限り、このままなのか。あの箱の鍵はどこにあるのだろうか……。いや、開いたとして、ククールは幸せになれるのだろうか。もしかしたら、あれはトラップボックスで、開けてはいけないものなのか……。ククールの状態を考えると、そんなことまで考えてしまう。……考えすぎか……。

 

 

食事が済み、私は二人に連れられてトロデーンに飛んだ。

 

* * * * *

 

「図書室から入るのよ。正面はちょっと……」

「ああ、わかった。君たちに着いて行こう」

私はレイピアをヤンガスに預け、ゼシカの後を歩いて行った。

 

私たちの到着を待っていたトロデーンの兵士も、数人後ろに着いてくる。

 

初めて入るトロデーン城。私はおそらく一生入ることのない、正面の立派な扉を記憶にとどめ、図書室の扉をくぐる。図書室は雑然としていて、隅には壊れた書棚などが積み重なっている。図書室を抜ける。廊下や壁、天井など修繕工事が進んでいるようだった。

数回角を曲がり、階段を上がる。また数回角を曲がり、ある部屋の前で止まった。

 

「失礼します」

後ろの兵士がさっと前に立ち、入室の許可をとる。すぐに許可され、兵士は扉を開ける。

 

「お入りください」

兵士に促され、入室した。兵士は入室しない。だが、扉は閉めず、部屋に背を向けて警護に立った。

 

 

「団長どの!」

ククールは中にいた。ソファでくつろいでいる。顔色もいい。少し嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。

エイトと姫君も一緒にいた。

 

私は深く礼をした。

 

「すみません……トロデーンにいても、元通りにはなりませんでした」

さっそくエイトから声がかかる。気のせいか、こちらは顔色が悪い。

 

「焦らずともここで静養なさったらよろしいのに」

姫君は感情のない笑顔でそう言った。

 

すぐにククールを連れて帰るつもりなので、私は立ったままだ。もちろん、椅子は勧められない。

ゼシカとヤンガスも座らない。一緒に三角谷へ来てくれるのだろう。

 

「巡礼の旅に出られるそうですわね」

「えっ……、それは……」

姫君の言葉に、エイトが青くなる。サヴェッラからの書簡はもう三国に届いたのだろう。

できれば私から伝えたかったが。

ククールは少し驚いた顔をしている。

 

「団長どの、旅に出られるのですか? いつです?」

「いや、まだはっきりとは……」

 

「と、とりあえず、ククール、出ましょう」

ゼシカがあわててククールを促す。

 

「……あ、ああ、そうだな。じゃあ……」

ククールはトロデーンの二人に「お世話になりました」とにこにこ挨拶している。

 

そして私の方へ。

私はククールにもう一度二人の方を向くように立たせ、その横で私はトロデーン王室の二人に深く頭を下げた。

 

「弟が世話になりました」

 

「!!!!!」

 

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

 

 

「だ、団長どの?」

「どうした?」

そう言う私の隣で、ククールが目を丸くしている。

 

周りの人間も皆、何故か硬直していた。

何かおかしなことを言っただろうか。

 

「団長どの……今、弟って……」

「ん? 違うのか? お前は私の弟だろう?」

 

「認めて……認めてくれるのか?」

「認めるもなにも、お前は私の弟と決まっている」

 

「さ、行きましょう、じゃあね、エイト。姫さまも」

ゼシカがエイトたちに背を向ける。

 

「またいつでもいらしてくださいね、ククールさん」

「あ、はい」

 

「ククール! 良かったね……君のお兄さんに会えて」

「リーダー……?」

エイトが思わず発した言葉に、ククールの表情が変わった。ククールはじっとエイトを見つめる。

エイトは小さな笑顔を見せた。その横で、姫君は張りつけたような無表情な笑みを浮かべる。

 

私は、答えを見つけた──。

 

「早く……」

ゼシカがククールの手を引っ張る。ヤンガスも私も後を追った。

 

 

ゼシカに急かされながら、私たちは再び図書室を抜けて城外へ出た。

 

「嬢ちゃん、何をそんなにあわてて……」

「いいからっ! ほらククール、三角谷にルーラして!」

「いいぜ。……三角谷!」

 

城を出たと同時に移動呪文が発動され、次の瞬間には、私たちは三角谷にいた。

 

 

「じゃあ、俺は三角谷に行ったことを報告しに行く。今度はククールが一緒だな。……また様子見に来るから」

ヤンガスは私の動向を見極めると、トロデーンにとんぼ返りした。

 

私、ククール、ゼシカの三人が三角谷に残った。

 

「兄……団長どの、旅に出るって、マジですか?」

「ああ。だが、すぐにという訳ではない」

表情が元に戻ったような気がしていたが、まだ私を団長と呼ぶのか。

 

「オレを……オレを捨てるのか?」

「そうではない。ただ、巡礼は一人でするものだ」

 

「……死なないよな?」

「自ら死ぬつもりはない。何もなかったことにして、死に逃げてはいけないと言ったのはお前だ」

 

「オレ……オレは……兄貴……」

ククールは再び意識を失った。

 

「ククール!」

ゼシカが叫ぶ。

 

私は弟を抱き抱え、森へ向かった。

 

「ねえ、マルチェロ、どうなってるの? ククールは元に戻ったの?」

 

ギガンテスのいる場所ではなく、別の場所へククールを連れて行った。

 

「ねえ! また気を失ったわ。どうして? ねえ、どうして?」

ゼシカは声を上げて泣く。

 

「……ゼシカ嬢、貴女はわかっているのだろう……。前に、ククールに伴侶がいないか確かめたのを貴女は怒った」

「……………」

 

「私のために、弟は何かを捨てた」

「……………」

 

「再会してからの私たちは、貴女の想像通り、普通のきょうだいではなかった。弟は、とりつかれたように私を求めた。だがそれは、何かから逃げるためだ」

 

私はククールの身体をしっかり抱いたまま、話した。

 

「弟を苦しめているのは私だ。死にたいと思った。しかし、誰も死を許してはくれなかった。私は弟のために生きると決めたのだ。弟を、愛しているのだ。大切に思っている。弟が、選ぶことのできない道があるなら、私は命をかけて弟を支えていく。だが、その道を選ぶことができるならば、私は弟をやはり命をかけて送り出してやらなければならない」

「……………」

 

「明日から巡礼に出る。ククールは三角谷において行く。悪いが、サヴェッラかトロデーンにそう伝えてくれぬか。そして、もしククールが目覚めたら、マイエラ修道院へ行けと言ってくれ。頼む……」

 

「わ、わかった……わかったわ。マルチェロ、お願いよ。ククールを救ってあげて……」

「ククールを救うことは、私をも救う。迷っている暇はない。教会を巡ってくる。あとは頼む……頼みます」

 




またククールがメンタル弱くてすみません。次はマルチェロがマイエラへ行きます。巡礼の様子はありません。あと3話+αです。
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