※この作品はR-18です。

DQ8 エンド後の世界   作:ぽんぽんペイン

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本当に終わりです。ククールが語ります。そこで終わりですが、まとめとしてゼシカの話を書いてしまいました。ゼシカの話は蛇足にすぎないものです。投稿しておいてなんですが、いろいろご想像におまかせしたく、ククールの語りのところで読了お願いいたします。ゼシカの部分は、作者の想像の一つにすぎません。ご納得いただけるかたのみ、お時間いただきたいと思います。


おわりに・・・2

毒にやられたエイトを連れ、オレは竜神王の元を訪れた。

なんで竜神王なのか、オレにもわからない。なんとなくひらめいたんだ。

一度、不思議な遺跡に寄った。なんか祈りたい気分だったから。

そんで、ルーラで竜神王のところへ。グルーノのじいさんには後で事情を説明しよう。

 

 

竜神王は、つまらなさそうにたたずんでいた。オレたちがぜんぜん遊びに行ってやらないから、すねているようだった。オレはちょっとだけあやまり、事情を説明した。だが、話がなかなか通じない。

 

「……我にどうしろというのか」

「だーかーらー、エイトを助けてちょうだい」

 

「どのようにだ?」

「生き返らせて」

 

「生きているではないか」

「元通りに、元気なエイトくんにしてちょうだい」

 

「……起きないのか」

「だーかーらー、そう言ってるでしょ。なんかの毒に犯されたって」

 

「ドクロマークがついていないぞ」

「だーかーらー、特別な毒なの! フツーじゃないの。チョー強いの!」

 

竜神王は、オレの説明が悪いとか、早口すぎて聞き取れないとか、若者言葉はわからんとか言ってとぼけている。結局めんどくせえだけなんじゃねえのか?

だが、オレのこの一言が効いた。

 

「竜神王さま? エイトが元気にならないと、竜の試練できないよ!」

 

竜神王は、「それは困る! 我も毒が溜まるではないか!」と言いだし、妙な光を手から出してエイトの身体を調べた。エイトの身体はだんだん透明になり(モチロン、裸だ!)、白い竜に姿を変えた。

 

「エイトの竜の時の姿ってこれなの?」

「いや、これは我が若い時の姿だ。この竜の姿を貸してやろう。エイトは純然たる竜神族ではないので、竜の姿をとることは難しい。しばらくこの白竜でいれば毒が抜けるだろう」

 

そんなこんなで、白竜になったエイトは、竜神王の住まいでグースカ寝ている。オレはエイトの好きな木の実とかチキンソテーとかの買い出しに下界と行き来していた。

 

「……これは美味だ!」

「おいおい、そんなに食べたら太るぜ?」

 

竜神王はオレの調達してきた食材をバクバク食っている。エイトの鼻先に食い物を置くと、エイトはフンフンと匂いをかぎ、たまに涎をたらす。

 

「我が食することで、我の姿のエイトにも栄養が行き渡るようになっている」

「へー。便利なことで」

 

エイトに栄養が行ってるのかマユツバものだが、仕方がない。オレは食料を運んだ。竜神王は何でもよく食った。おまけに酒も飲みやがる。酔うと紫色の竜に変身してケンカ売ってくるから始末が悪い。グルーノのじいさんたち長老の連中にそんな話をしたら、なんだかみんな大喜びで、あれもこれもと食いもんやら酒を持っていかせる。

 

「ったく、重たいのに。オレひとりで運ばせてさ……」

そんなことをブツブツいっていると、白竜エイトが笑った気がした。

 

竜神王は、オレたちに留守番をさせ(誰も来やしないのに)、竜になってちょくちょく下界へ飛んで行く。時々飛ばないと身体がなまるそうだ。だが、竜神王が下界を飛ぶと、あちこちで竜巻やら嵐やらが起きてとても迷惑だ。

 

「安心せよ。被害は最小限にしている」

あー、そーですか。

 

エイトは時々目を開けるようになり。べろんと長い舌をだしてオレの顔をなめる。身体も少しずつ動かせるようになってきて、長い尻尾をよく動かすようになった。

 

「犬みてえだろ? 尻尾振ってさ。嬉しいんだぜ、きっと」

オレは白竜エイトの顎をなでる。そのうちひっくりかえって腹出すな。そしたら「よーしよしよし」って、ワッシワッシなでてやろう。

 

竜神王は相変わらずメシを食いまくり、酒をぐびぐび飲んでいる。まあ、これで同調しているエイトが元気になりゃいいか。オレはまた下界へ買い物に行く。

 

 

「髪を切ったのか?」

「うん」

ある日のこと。オレは自慢の髪を切ってきた。バッサリ切った髪の束で、白竜エイトの鼻の穴をくすぐる。

 

「ぶ……へーーーっくしょん!!!」

エイトは豪快にくしゃみをした。オレは2メートルほど後ろに吹っ飛ぶ。エイトはもう一度、今度はくしゅんと竜にしては小さめのくしゃみをし、オレの顔をべろべろなめた。

 

「なあエイト、オレ、長髪の方がいいか? 兄貴がさ……願掛けだって言うんだ。お前が早く良くなるようにって。兄貴はさ、……あれだろ? 『私には願掛けできる髪がない! だからお前が切れ!』って。な、意味わかんねえよな、あいつ。なんで兄貴の願掛けにオレの髪を切るわけ?」

「お前の兄はなかなか見どころがあるな。今度連れてくるがよい」

 

「えー、ヤダよ。めんどくせーよ。だって、絶対ルーラ使わせてくれないもん。自分ができないからってさ! 『竜神王に会うのならば、礼を尽くし、魔物と戦いながら訪れるべきだ』って言うに決まってる!」

「なんと! そのような人物は珍しい。是非! 今すぐにでもっ!」

 

ひえーっ! ちょっと予感してはいたんだが、竜神王と兄貴って、同じ種類のヘンタイだな。見た目からして完全にSなのに、本質はMっていう。

 

「ククール、早く行かないか!」

「わーっ!」

 

オレは竜神王に蹴り飛ばされた。

 

「ぎゃーッ!」

ぐんぐん下界へ落ちて行く。

 

「ひーッ!」

不思議な遺跡が見えてきた。

 

「衝突するー!」

オレはルーラを唱えようとした。その時。

 

ぼんっ。

 

へっ?

 

オレは飛んでいた。

 

なにこれ。死んだの? 転落死? でも痛くない。

 

オレは飛んでいる。

 

ふと下をみる。

 

オレは竜に乗っている。白い、竜。

 

「エイト?」

白い竜はくるくると回り、楽しそうに(多分ね)飛び回る。

 

「助けてくれたのか?」

白竜エイトがうなずいたように感じた。

 

すると白竜エイトの頭のてっぺん辺りから声が聞こえてきた。

 

『……我の力を貸している……だが、エイトのもう十分に回復している。身体の毒が全て抜けるのも間もなくだろう。ただ、人間の姿にいつ戻れるのかはわからぬ……』

竜神王だ。自分の竜の姿を貸しておいて、人間の姿に戻れるのはいつなのかわからないなんて。無責任なヤツだ。まあいい。エイトが元気になるのなら。

 

「なんかへんな感じだな。お前といるのに、竜神王もくっ付いてきてる。グルーノのじいさんみてえだな!」

あはは、と声を上げて笑うと、エイトも笑った気がした。

 

「あ、あそこ、マイエラ修道院だ。兄貴と誰かが寝そべってる! またサボってんな!」

そう。最近兄貴はおサボりだ。オレと長く暮らしてたから、サボり癖が移ったとか言ってたけど。

 

『あの者か、お前の兄は。よし、連れてこい!』

えー、やだよ!

 

『いいから、すぐに連れてこい! もちろん遺跡からちゃんと戦って訪れるのだぞ! ……そうだ、念のため竜のウロコ……じゃなく、竜の逆鱗を貸してやろう。これをかざせば世界樹の葉と同じ効果がある。更に、使い捨てではない。一枚しかないのだから無くさないように。そして、必ず返すように。それから……』

「あー、もうわかったよ。行ってくりゃいいんだろ? めんどくせえな」

白竜エイトは修道院近くの川沿いにオレをおろした。優しく下ろしてくれたんだが、あたりに竜巻が起こる。

 

「じゃ、行ってくる」

白竜エイトの鼻を撫でる。エイトもうっとりしていた。

 

すうっと空へ登る白い竜。

『待ってるから……』

 

!!!

 

竜神王じゃない、エイトの声だ。エイトが「待ってる」って言った。

 

「待ってろよ! すぐに行くからな!」

オレは大きく手を振った。

 

(終わり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***以下は、蛇足とも言うべき、作者の想像の一つです***

***ご納得いただけるかたのみ、お時間ちょうだいいたします***

 

 

 

 

 

「……で、結局どうなったんだい?」

あたしは、いつものようにゲルダさんのおうちで一緒にお料理をしていた。

オーブンから慎重にパイを取り出しながら、ゲルダさんは言う。

 

「どれのことですか?」

「ああ、だからさ、よ……っと」

ゲルダさんはパイをテーブルに乗せる。うん、いい香り。あたしたちはピックを刺してパイの焼き具合を確かめる。うん、いい感じ。

 

「ほら、あんたの仲間のチャラ男とおチビさんだよ。最近ちっとも顔出さないじゃないか。来るのはいつも……このゴクツブシだけ!」

ゲルダさんは、ソファーで爆睡しているヤンガスをキッと睨んだ。

 

「ふふっ。それにしてもよく寝てるわね」

「ああ、なんだか新しい仕事を見つけたとかで……夜中働いてて、朝っぱらからここへ来ちゃああんな風に寝てばっかりさ!」

 

まあ、あたしもヤンガスの新しい仕事に関してはちょっとばかり手を貸してはいるのよね。てゆーか、今日は実はゲルダさんをお誘いに……。

 

「だからさ、あいつらは一体……」

「ねえ、ゲルダさん? そのことでちょっとお願いがあるんですけど……」

「え?」

焼きたてのチーズパイをカットしながら、ゲルダさんはあたしを見た。

 

* * * * *

 

「なんだよ! これは!」

「竜骨の迷宮、女子ツアーの出発です!」

「こいつら何なんだ?」

あたしはゲルダさんと竜骨の迷宮の入り口にいる。あたしたちを待っていたのは10名ほどの若い女の子。

 

「ゼシカッ! なんだって……」

「ゲルダさん、しーっ! いいからいいから……」

あたしはとりあえずゲルダさんに黙っててもらい、集まったお客さんに話しはじめる。

 

「皆さん、お待たせしました!! ……今日は、初めての女の子だけのツアーです。怖い所もちょっとありますけど大丈夫。このかたがいれば安心安全、まーったく問題ありません。ご紹介します! さあ、みなさん!!! どうぞご注目くださーい!!! 月にむらくも花に風ッ! 南の大陸にとどろきわたる数々の悪名をほしいままにしてきた無敵の女! 見よっ、このイカしたパイナップルヘアー! いよっ、あんたはオンナだっ!! ……泣く子も黙る女盗賊、紅蓮のゲルダ姐さんとはまさしくこの人! ……さあ、姐さん、挨拶を……」

あたしは無理やりゲルダさんを前に押し出す。

 

「ゼシカッ、なんだよその変な口上は……! いや、その……えっと、まあいいや、ついてきな!」

「キャー! 素敵ぃぃーーー」

「麗しいわあ!」

「あたし、どこまでもついていきます!」

キャーキャーと黄色い声。ゲルダさんはさっそく女子たちに囲まれている。

 

……ふふ。うまくいったわ。

 

ククールが始めた竜骨の迷宮ツアー。マルチェロと二人で暮らすためにククールが考えたのよね。で、ベルガラックのフォーグがスポンサーだから、口コミでどんどんお客さんが増えて。最近、ガイドが足りないから手伝ってくれって……ククールが。それであたしもヤンガスもちょこちょこ手伝ってたんだけど、まあ、疲れるったらないわよ。あたしの苦手なメタキンは出るし……。ヤンガスもパルミドの裏稼業してるから、こっちばっかりできるわけもなく。

 

それで、あたしが手伝うようになったら女性客も来るようになっちゃって。女の子がガイドできるんならってね。でもいちおうあたしも勇者の一人だし、魔法使えるし、グリンガムのムチ使いだし、いわゆるフツーの女の子じゃないんだけど、ほら、あたしって可愛いから……。それでフツーの人が勘違いしちゃったのよね。でも、ガイドがククールだと、ククールが色目使ったり、女の子がククールを独占しようとしたりしちゃってうまくいかなくて。ただでさえ危険がいっぱいのツアーなのに、そんなじゃツアーにならねえってククールが怒っちゃって。だから、女の子も安心のツアーとして、ホントに入り口付近の危険の少ない所だけを歩く「初心者コース」ってのを作ったの。そしたら若いカップルとかおじいちゃんおばあちゃんも参加してくれて。

 

あたしがガイドしてもいいんだけど、なんか頼りなくみられるし、ナンパ、セクハラはもちろん、なんでそんな魔法使えるんだとか、教えろとかインチキだとか突っかかってくる人もいて……。いちいちそんなのにかまってられないもの。敵はあちこちからくるんだし。で、小うるさい客を黙らせるのに、ククールじゃ駄目だし(女性客口説いて前に進まなくなっちゃう)、ヤンガスじゃお客さん減っちゃうし(見た目怖いし、口下手だし)、エイトも本調子じゃないみたいだし(なによりククールが許さなくて)、たまに様子を見に来るマルチェロじゃめんどくさいし(ほら、あの人いろいろ……)。で、初心者ツアーなら、みんなに聖水を持たせて自衛してもらえば敵は寄ってこないから、ちょっと戦える人がいればなあって考えてたの。そしたらね、候補はすぐ上がるでしょ? それがゲルダさんよ。ゲルダさんならカリスマ性はあるし、戦えるし。怒りの鉄球の代わりにヤンガスからはかいの鉄球を取り上げて使ってもらえばって。

 

それで、チョー強くてかっこいいお姐さんがガイドしますよって宣伝したらこれよ。『強いお姉さま』好きな女子が集まってね。初の女子ツアーを催行することに。

 

「予想通りね!」

「ユッケ?」

いつの間にかユッケが来ている。ユッケも笑顔を見せ、女子ツアーの様子を見守っている。

 

この初心者コースは、まずこの迷宮がどれだけ大きいか、外を一周する。そのあと初心者用入り口から内部へ入る。今日は初めてだから、案内役のスタッフも同行している。説明が終わり、いよいよ出発。

 

「記念すべき女子限定初心者ツアーの初日じゃない。様子くらい見に来るわよ。あたしだってこの計画にはアイデア出したんだし」

「まあね……って、ユッケがあたしをガイドにしろってククールに言ったんじゃない?」

「あはは、まあまあ……」

そう。「人手不足なら、ゼシカはどうだ」って言いだしたのはこのユッケなのよ。スポンサーの意見は重視しなきゃいけないからってククールが。

 

 

「よう、来てたのか」

「ククール!」

ククールが来た。髪を切ったのよね。まだあんまり見慣れないわ。

 

「エイトは?」

「ああ、今日はお休みだ」

「調子悪いの?」

「いんや、あっちの……な」

「そっか」

 

 

正式には病気療養中ってことになっているエイト。本当は暴漢に襲われたってことにしてリーク。どっちつかずの曖昧な情報でごまかしている。本当のことを知っているのはごく一部。もちろん、あたしはククールから話は聞いている。エイトは、ちょっと時間はかかったけど、竜神王の力で回復して、ククールの住んでる砂漠の家と竜神王のところを行ったり来たりしている。

 

ククールのいう「あっちの」って言うのは、トロデーンのこと。結局、エイトは王配っていう立場だけど、実質的な王室の運営には関わらない。エイトは、王室に入るより世界を旅する「冒険者」として生きることになった。だから、トロデーン王室もエイトの所在をいちいち聞かない。今は、竜神族と人間の友好関係を築くために働いている。

 

「んじゃな、行って来るわ」

「ククール、気をつけてね」

「おう!」

ククールは、ツアー客を引き連れて出発した。ギャリングさんの作ったお部屋の方まで行くコース。怖いわよね、あたしもう二度と行きたくないわ。メタキンは出るし、ドラゴンはゴツイし。

 

「そういえばゼシカって最近海賊なんだって?」

「えっ? 何よそれ」

ユッケがそんなことを言いだす。そしてニヤニヤしている。

 

「なーんか、若い男の子を侍らせてポルトリンクあたりでブイブイ言わせてるらしいじゃん」

「ブイブイって……」

いつの言葉よ。

 

「いいわねー、若い男の子。海上デートの目撃者だっているのよ。『オジョー様のしもべ』じゃないかってねー」

「ちょっと、ユッケ! 違うわよ。あれは……」

「あーあー、いいっていいって。言い訳しなくても。まあ、海賊になってもいいけれど、西の方までバイキングに来ないでよ」

「しないわよ、そんなの!」

 

ったく。若い男なんて言って……ただのポルクとマルクじゃないの。……でもまあ、あの子たちもぐんぐん背が伸びて、もうすぐ追い越されそうだわ。

 

「ああ、そうだ、若い男の子のガイドが必要なら言ってよ。当てがあるわ」

そうそう、あの子たちもここで修行したらいいわ。どうも船乗りには向かないみたいだから。

 

「あら、ゼシカいいの? あたしが誘惑しちゃうわよ」

「な、何よ、別にいいわよ。好きにすれば……」

「またまたー。早くオトナになるといいわね、彼」

「ちょっと! からかわないで!」

あの子たちまだ13歳よ。

 

ったく。まあ、あたしもユッケもなんだか彼氏できなそう。まあいいか。

 

「おい! 嬢ちゃん、ゲルダどこだ?」

「あら、ヤンガス、おはよう?」

「おはようじゃねえよ、昼過ぎだろ。……ゲルダは?」

「ゲルダさんならもう出発したわよ」

「初心者コースだな?」

「ええそう」

ヤンガスはあわてて迷宮に入っていく。

ゲルダさんのことが心配なのね。

 

「あはは、まだ外回りだよ! ヤンガスー、影武者みたいについてってよ!」

「そうね、やみの衣装備して!」

あたしとユッケはそんなことを言ってゲラゲラ笑った。

 

「あー、おかしい! そうだわ、ねえ、久しぶりにベルガラックにいらっしゃいよ。記念すべきゲルダさんの初仕事なんだから。お兄ちゃんに言ってごちそうするわ」

ユッケは笑いながらそう言う。

 

「えっ! ごちそう??」

えっ?

 

「エイト!」

「ゼシカ、ユッケも……久しぶりだね」

「エイト今日はこっちの仕事ないよね。後でベルガラックに来てよ。ホント、ご馳走するから……」

「ありがとう、ユッケ。是非お邪魔するよ。僕、今日はもう用事すんだからさ、ちょっと寄ってみたんだ。ゼシカ、やっと会えたね」

 

エイト!

 

「ゼシカ、ホントひさし……」

「エイト!」

「ああ、もう泣かないでよ……。僕は大丈夫なんだから」

 

「そっか、ゼシカは会ってなかったのね?」

「そうなんだ。なんかすれ違っちゃってて。……ごめんね、ゼシカ。いっぱい心配かけたね」

エイトはあたしの肩を抱いてくれる。

 

「エイトも来てよかった。久しぶりに全員集合じゃないの。今日は絶対ベルガラックに来てよ。深夜ツアーはないんだから、ククールの最奥ツアーが終わったら、すぐにベルガラックへ来てね。あたし、お兄ちゃんに伝えてくる!」

「ありがとう、ユッケ。必ず行くよ」

 

ユッケは護衛とともにキメラのつばさで飛んで行った。

 

 

「エイト……良かった……ホントに……」

もう、涙が止まらないわ。大丈夫だって聞いてたけど、元気な姿を見るまでは……。

 

「うん、もう大丈夫なんだ。すっかり元気なのに、ククールが……」

知ってる。無理するなって、すごく心配してるの。

 

「……ごめんなさい、あたしったら、いろんな……。いろんなこと思い出して……」

「ゼシカ、君はホントに優しいね。ずっと詳しく言えなくてごめん」

 

「いいの。エイトが姫さまと結婚して……それからずっと……」

「うん。ごめんね。トロデーンの監視が付いたり、いろいろ迷惑かけたね。それから、姫のこともありがとう。ゼシカが近くにいてくれたから、姫も落ち着けていたんだと思う」

 

「結局、全てうまくいくようにしちゃったじゃない、エイト」

「そんなことないよ……」

エイトは悲しそうに微笑んだ。

 

「トロデーンに対して……王と姫に対しては、ものすごい裏切り行為だったと思う。僕は中途半端な道を残しちゃったんだ。王室も捨ててない……。でも、きれいさっぱり王室から離れることはできないんだ。僕はまだ生きているからね。王は、僕の生き方を認めてくれたけど、多分、すっきり納得なんてしてないよ。僕たちはマルチェロさんを逃がし、あの人の罪と僕たちの命を天秤にかけた。あの人の罪イコール黒神の存在であると置き換えることに同意してくれたんだよ……最終的に王がサヴェッラと他の王室にそう言ってくれたんだ。それには僕が姫と結婚することが必要だった。姫をチャゴスのところになんて嫁がせたくなかったから……」

「王さま、エイトのことも大切だったのよね。姫さまだけでなく」

「うん。そうだと思う。本当に申し訳なかった。だから、僕は王室のいろんなことに意見はしない。関わらない。そのために……」

「エイト……」

「もう、泣かないで……。姫も納得した事なんだ。僕はひどい父親になるってこと。姫は僕を許してくれたんだ。『有事の際は駆けつけて下さい。でも、貴方は自由です』って言ってくれた。こんなひどい僕に」

 

「世の中は、エイトは勇者だし、冒険家だから王にならない、っていうのもアリだって言ってる。けっこういい評価されてるわ」

「うん。王の人柄のおかげだよ。姫もね」

「エイトは竜神族の謎の解明をしているって話になってるわ。伝説の竜神王の子孫だって噂もあるわよ」

「あはは。竜神族の血を引いてるのは事実だからね。遠く祖先をたどれば竜神王の子孫かもしれないよ」

「ええ。トロデーンの王室に入らないのは、いずれ竜神王になるからじゃないかって……」

「そうなの? まあ、竜神王は神様だからね。あの人不死身だから、僕が竜神王にはならないけど。本当に、全てのことに感謝してるよ」

 

ああ、エイト。どうしてこんな人が存在するんだろう。あたしも、姫さまも、王さまも、ヤンガスも、みんなエイトが好きよ。ゲルダさんもフォーグもユッケも、モリーさんだって。グラッドさんもラジュさんもパルミドの荒くれたちも、パフパフ屋さんも、エイトが大好き。きっとイシュマウリさんもパヴァン王もモグラもキラちゃんもユリマちゃんも……。竜神王もラジュさんも……。ええと……ホント全ての人が……エイトを大好き……。

 

「泣かないで、ゼシカ。……たくさんの人に許されて、僕はここで生きてる。……ククールに言ったんだ……」

「何を?」

「僕は将来、子どもに名乗らない方がいいのかなって」

「……」

「だって、嫌でしょ? 自分を捨てたんだよ。父親が。自分が好きなように生きたいからって。親の責任を放棄したんだ。だから、名乗る資格なんてないんだ。だけど、子どもに恨まれるためには名乗ったほうがいいのかなって……。親に捨てられて、悲しい思いをさせてさ……」

エイト……。

 

「ククールはなんて?」

「うん。……ククールのお父さんは確かにマルチェロさんを捨てた。孤児院にも捨てられた子はたくさんいる。子どもを捨てていいわけはない、だけど、自分を恨んでほしいって思うなんて、親の勝手だって。そんなこと思うくらいなら捨てるなって。恨まれれば、捨てたことを許してもらえると思ったら大間違いだって。恨んでくれなんて思っちゃいけないって。恨まれて当たり前なんだから、それも引き受けろって言われたんだ」

そんなことを……。

 

「子どもが成長して、真実を知るときが来る。その時、知らん顔して、オヤジづら下げて名乗り出るなって。姫が納得してるんだから、姫に任せろって。彼女は母なんだからって。オヤジのそういうのは女性をバカにしてるって。男と女じゃ、親である意識は全然違う。母は生物学的に親である。父は権威的に親である。って。僕はその権威を捨てた。生物学的な親もできないし」

「ふうん……。まあ、一理あるけど、ククールもまだまだ男尊女卑ね。女だって権威的なところあるわよ。うちのお母さんとか。ま、それぞれ家族のかたちは違うわね……」

 

「でも……『捨てられた自分』には耐えられても、『子供を捨てた親の子』って考えると……嫌だろうな……」

エイトは少しうつむく。

 

そうよね、自由になる代わりに、子どもをって。世継ぎってことよね。まさか、世継ぎさえできればなんて考えじゃないでしょうけど。傍目には上手く行った結末だけれど、みんなの心に傷がついている……。

 

「傷つかずには生きられないわ。人間だもの……」

「そうだけど……」

あたしたちは遠く地平線に目をやる。だいぶ日も傾いてきて、風が出てくる。エイトは小さくくしゃみをした。

 

すると背後から声が。

 

「バーカ、オレのオヤジなんて人として最低だぜ? そんな親の子だが、オレはちっとも悲しくねえし、オレはオレが気に入ってう。……お前は、オヤジが最低だからってオレをさげすむのか?」

ククール、いつの間に?

 

「ククール! ごめん……」

エイトがしゅんとなる。

 

「恨まれろ! それでも生きろ。オレがお前を一生守る!」

ビシッと天に向かって拳を突き上げるククール。

 

「ちょっ……、ちょっとククールったら、こんなとこで愛を叫ばないでよ。みんな聞いてるわよ? バカじゃないの? いいえ、バカだわ!」

 

「構わねえ! オレはだな……」

言いかけてばったり倒れるククール。

 

「ククール? ねえ、どうしたの?」

やだもう。うちのパーティーメンタル弱くない?

 

「大丈夫だ、ククールはメダパニだ」

「めだまぱにっくですね?」

「そこからきてるのか?」

「違うよ、メンタルダメージパラノイア忍法だ」

「おい、何の話だ? メダパニかける奴なんていなかったぜ?」

ツアー客たちがそんな会話をしている。

 

「……どーでもいい」

あたしはククールにマヒャドを放った。

 

まあ、無事に今日の全てのツアーが終了した。

 

そのあと、凍ったククールを、ヤンガスがかぶとわりしようとするのをゲルダさんが手裏剣を投げて止め、その間にエイトが優しく介抱して溶かした。そんなこんなで、みんなでベルガラックへ行き、さんざん飲んで、食べて、泊まって。

ああ、もちろん、エイトとククールはどこかへ消えて行ったわよ。どこへだって? 知らないわ。

 

 

ククールと今度こそ仲直りしたマルチェロはなんだかんだでマイエラにいて、ククールの話だと、竜神王と仲良くなって一人で竜の試練に挑んでいるとか。ククールとエイトのことを一番喜んでいるのはこの人かもね。マルチェロのせいで、あたしたちの冒険の話もだいぶ持ってかれちゃったわ。主人公は誰だったのかしらね。……いえ、自分の人生、いつだって自分が主人公よね。じゃ、あたしももう寝るわ。おやすみなさい。

 




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