「……」
「……」
エレベーターの中で、無言が続く…。
沙織さんは、どうにも一人で部屋で、他のあんこうチームを待っていたようだった。
俺の部屋に行くと言って、優花里の様子を見に行く為と、部屋を出て行った…というか、俺の部屋に来たみほ。
そのみほも、帰らないと麻子が出て行き…続いて華さんも。
気が付けば、こんな時間まで一人きりで部屋にいた沙織さん。
まぁ俺のせいだけども、一人残して行ってやるなよ…。
5階の宿泊部屋…。
最後の一人になった沙織さんも、部屋のメモ用紙に書いてあった部屋番号を見て、様子を見に来た様だった。
俺はというと、カードキーを部屋に置き忘れて、自分の宿泊部屋から締め出されるという間抜けな状況。
取り敢えず、エレベーターに乗り込み…1階のフロントを目指す…はずだたが…。
『 隆史君。お話があります 』
沙織さんから、その様な事を言われてしまい…現在、誰もいないあんこうチームの宿泊部屋へと向かっていた。
3階へと動くエレベーター…。
それこそ5分も掛からない移動時間が、ひどく長く感じた…。
電子音が鳴り、こんな時間だ…誰もいない廊下を、沙織さんが先行しながら歩いている。
特に手を引っ張られているとか…服を掴まれているという訳でもないのだけど…なんだろう…この強制力は。
「ど…どうぞ…」
その宿泊部屋へ到着。
オズオズと入室を勧められた。
…。
和室…。
布団が並ぶ室内…。
状況を確認しよう。
夜中、1時過ぎ。
布団が並んだ…誰もいない部屋に二人きり。
そして、その部屋へ女の子に招き入れられた。
お邪魔します…と、他にでるセリフもないので…その言葉で入室した。
「ど…どこか、適当に座ってください…」
「…はい」
何故か敬語ですね…。
適当にというが、ほぼ部屋は布団で敷き詰められている。
開いているスペースが、殆ど無い。
「ふむ…」
布団の上にでも座るくらいしかな…。
しかし…主が現れなくとも、女の子が寝る布団だ。
はい、そうですかと座り込む訳にもいかないしな。
少し布団を折り曲げて、強引に畳のスペースを作り、そこへ座る。
はい、正座で。
沙織さんは、その様子を面白そうなモノを見る様な目で、眺めていた。
な…なんでしょうか?
何か不自然でした?
「いや…なんとなく気持ちは分かるんだけど…隆史君。変な所、律儀だよねぇ」
こんな時間なのに、特に眠そうにしている訳でも無く、ただ楽しそうにそんな事を言っていた。
「さて…と」
沙織さんも座った。
俺と同じく、正座で…畳の上に真正面で…。
「では、隆史君」
「はい、なんでしょうか?」
アルコール…しかも結構、強い物を飲んだというのに…特に呂律が回らなくなっている訳でも無し…。
変に頭がスッキリとしていた。
…エレベーター前で彼女に会った時に、驚いたからだろうか?
程よいショックが、良い方向へと……。
……
本当に良い方向だろうか?
まぁいい…今は彼女の話だ。
なにを聞かれるかは、分かりきっているけど…な。
「……」
「…………」
あ…あれ?
言い出せないのか、暫く無言が続いた…。
向かい合っているので、見つめ合っているみたいだけど…。
「あの…沙織さん?」
「はっ!!」
なんだろう…急に後ろを向いて、ブツブツと言っている…。
あ、こっちを向いた。
……。
あ、また後ろ向いちゃった…。
「ぐ…そうだよね…いくらなんでも……ね……」
顔を赤くして、何かを確認する様にしている呟きが聞こえる。
まぁ、いいや。気長に待とう。
「かるく…そう、かるく……」
「……」
そろそろ、2時頃かなぁ…。
んでもって、そろそろ何か言ってくれないかなぁ…。
「…よし!」
あ、何か覚悟を決めたようだった。
「隆史君!」
「はい?」
「そのぉ…みぽりん達、知らない!?」
やはりな。
当然と言えば当然か…まぁうん。
「…俺の宿泊部屋で寝てます」
当然の疑問に、隠し立ても不可能なので、簡潔に正直にお答えした。
その俺からの答えに、顔を真っ赤にして固まった…。
「 」
「さ…沙織さん?」
「 」
「…あの……」
「はっ!! い…意識が……」
あ~うん。飛んでいたね…数秒程。
「あ~~~でも…でも……まぁ、うん。寝てるだけだしね…うん」
「………」
「いや…華もそうだけど…みんな出て行ったきり、帰って来なかったからね…」
「あ~…ごめん」
「なんで、隆史君が謝るの?」
手をパタパタ振って、笑いながら…狼狽してる。
「ひどいなぁ…私だけ置いて、みんなで遊んでったの? それでそのまま…」
あぁ…普通だ。
そうそう…これが普通。
普通の考えだ。
遊んでいた。
男の部屋…しかし、俺一人だから…とか、周りに数人いるから…。
そんな状況で、変な事をしている訳がないと思っているのか。
優花里の話だと…みほの、俺との関係の…ぶっ飛んだ結論を沙織さんも知っているはずだ。
だからの確認…。
そうだという、返事が欲しいのだろうな。
普通なら信じられる筈がない…が、多分華さんも沙織さんへ、何かを話しているニュアンスだったな…。
……。
「……はっ」
諦めにも似た…変な笑いがでる…。
まぁ…バレているのに決まっているな。
「隆史君?」
「……沙織さん」
「な…なに?」
正座をしていた脚を崩し…胡座をかく。
「ごめんな、気を使わせて…」
「…大丈夫」
「多分、沙織さんが心配…いや、想像している事そのものだ」
「……え?」
ぶっちゃける。
先行して白状する…。
察したのか何なのか…顔が赤くなり……青くなった。
まぁ…うん。そうだよな。
「はっ…今回は、華さん意外…全員だ」
「……」
「みほの許しが、なんだってんだろうな…? 結局…最終的には全員とだ」
「……ぇ」
「ヤケになって酒まで飲んで…結局、収まりがつかない、抑えが効かない…で、そのまま…」
話した…。
それこそ淡々と…感情が湧き出なかった為に…ひどく棒読みな言葉が口からでる。
なにか頭が麻痺している感じがする。
酒のせいだとは思うが、何故か普通に今は喋れる。
そして喋っている内に…。
沙織さんの顔を見れなくなっていた。
なにか、懺悔でもしている気分だった。
畳を眺めていても仕方がないのにな…。
「今は全員、疲れきって寝ちゃってるってな、感じですね」
ふざける訳でもなく…素直に白状。
彼女の顔をもう一度見て、はっきりと言う…。
優花里からの告白から、華さん来襲まで。
流石に行為の内容までは、言わなかったけど…まぁ…分かるだろ。
それを呆然と聞いていた。
初めは、驚いた顔。
次に、泣きそうな顔。
最後には、俯き…その顔すら見せなくなっていった。
「な?」
「な? って…」
「…みほの気持ちは、何となく分かる。みんなの好意は嬉しい。ただそれを……結果的に利用している俺が最低だって事…」
まぁ…みほの気持ちは分かっても…理解は結局できなかったけどな。
ある意味で、俺の腹はもう決まっていた。
今更逃げられない…。
「……」
「……」
再度の静寂。
ただ俯く、沙織さん。
・・・。
携帯を取り出すと…そろそろ2時だ。
丑三つ時ってやつになるな
こうしていても仕方がないな…。
さて…本来の目的に戻るか。
無言で立ち上がる。
このままでは、ただの迷惑だ。
ここに長居もできない…ま、さっさと出て行くか。
「んじゃ、そういう事だから。もう、行くわ…だから沙織さん」
「…ぁ」
力がない目がこちらを見上げた。
心中がグッチャグチャになっているのだろう。
「…俺を嫌ってもらっても、構わない」
「!!」
最後に目が合って…何かに気がついた様な顔をしていた…。
俺はどんな顔をしているのだろうか?
どちらにしろ…もう行こう。
……
最後…何か呼び止められた気がしたが…まぁ気のせいだろう。
……。
そんな筈がないだろうから…。
------
----
---
1階フロントロビー。
暗いな…。
フロントにだけ明かりがついている。
売店も電気が消され、人気が全くない。
昼間賑やかロビーも、真夜中はこんなもんか。
……。
当たり前だな…。
ここへ来て思い出したが、あんな状況の部屋へ、戻るわけにもいかない。
本人確認の為に、一度スタッフと一緒に室内へ入るかもしれない……。
……。
備え付けのベンチへ座る。
もういい…ここにいるか。
その内…後、4、5時間もすれば、部屋の中の誰かが、起床して気づくかもしれないしな。
「……」
なんか…疲れた…。
決勝戦の時は、必死だったから…ある意味で余計な考えが、どこかへ飛んでいた。
それが終わり…日常へ戻ったらコレか…。
……。
痛い。
胃が痛い…。
比喩でもなんでもなく…。
「……」
やめだ。別の事を考えよう。
そう。
分かりやすく、これからの事を。
あの七三メガネの件は、多分まだ終わっちゃいない。
廃校の危険がまだ残っている事を、杏会長へ言った方が良いだろうか…。
でもそれは、肩の荷が漸く降りた…そんな安心した顔を、潰す事にならないか?
「…………」
そんな事をするくらいなら…俺一人でも…。
考えだしてどのくらい経っただろう。
別の事を考えようとしても、先程までの行為が邪魔をする。
多分…これから、彼女達に対しては、もう俺は躊躇しないだろう。
どこか、諦めにでも思える感情がある。
求められれば、応えるだろう…。
それこそ…。
「……」
「……」
「……」
「…隆史君」
「……何?」
項垂れて前屈みになっていた、俺の浴衣裾を沙織さんが引っ張っていた。
なんでいるんだろう…なんで来たんだろう…。
いつの間にか隣に座っていた沙織さんを…見もしないで…俺の視界は、地面を見ていた。
「…まだ、お話終わってない…」
「……」
「…まだ……」
「…分かった。」
「……」
なんでもいい…。
---------
-----
---
夜の海…。
はっ…夜中とはいえ、ロビー…。
いつ人が来てもおかしくない。
だからだろうか?、ホテルの裏手の海岸へと連れてこられた。
こんな夜更けに…女子高生引っ張り出して、何やってんだろうな?
いや…引っ張り出されたか。
もはや真っ暗だった。
ホテルの建物を見上げれば、いくつかまだ部屋の光が見える。
それくらい。
あとは、地平線の彼方…船だろうな。
いくつかの丸い光が見える程度。
ホテル備え付けのプール…。
鉄格子と呼ばれそうな柵に腰をつけて、体重を任せる。
今更だけど、素直に部屋へ行っていれば良かったか?
女の子の就寝部屋だけど…人気がないとはいえ、多分こんな所で話す事…ではないだろうし…。
まぁいいや。
みほの事だろうし、危うい話だと思ったら戻ろう。
「あ…あのね、隆史君」
寄りかかっている俺の向かいで、体を縮こまらせて小さくなっている。
胸の前で手を組み合わせて…なにか喋るのを躊躇している…みたいに感じる。
「……」
「……なに?」
中々喋り出さない。
やはり、躊躇をしている様だった。
ただ無言を貫いている。
時たま声には出すが、すぐにやめてしまう。
……。
気長に待とう…。
どうせやる事もない。
この話とやらが終わったら、ロビーに戻って朝を待つだけだ。
……。
彼女自身も、この状況を良しとしないと思っているのだろう。
なにか言わないといけないと思っているのか…気を使われているだけなのか…。
踏ん切りがつかない。
?
勢いよく顔を彼女は上げた。
俺と目が会った瞬間、なにか…酷く悲しそうな顔をした。
「……」
「わ…私はっ!」
それを切っ掛けにしたのか…漸く声を上げた。
「私は! 嫌わないよ!?」
「……」
…は?
「い…今はどこか、皆おかしくなってるだけ…うんっ! そう!」
…なにを言っているのだろう?
部屋を出る時に言ったことの返答か?
嫌わない? なんで?
おかしくなってる? 当たり前だろ…。
「み…みぽりんだって…男性とお付き合いするのは、初めてだろうし…よく分かってないだけだと思うの!」
その付き合っている男が、ただのクズ野郎なんですけど?
「分かる、分からないの問題じゃないだろ? ガキでも分かるモラルの問題だ。自分で何言ってるのか、分かってるのか?」
少し強めの言い方になってしまった。
変に苛立ちを感じる…。
「そ…そうだけど! でも! みぽりんも話せば分かるはずだよ!」
「分からねぇはず、ないだろ。分かっていての…コレだろうが」
「…そ…そうかもしれないけど」
「
感情的になり始めている。
完全に苛立ってるな…。
沙織さんにこんな言い方…今までした事はなかった。
それに驚いたのか…なんなのか。
すぐに意気消沈してしまった。
「みほは、肉体関係は良し。キスだけは浮気だと言っているんだぞ? 沙織さんも、直接みほの口から、聞いたんだろ?」
「…うん」
「華さん始め、その流れに乗っかって複数と肉体関係持っちまったんだぞ? 俺は」
「…で…でも」
「でも? でも、なんだよ」
「ちゃ…ちゃんとすれば…意識して直そうとすれば…また…」
「……」
「前みたいな…関係に戻れるよ…」
「……」
…はっ……。
その関係を壊した本人へ、それを言うか?
戻れる? 戻れると思っているのか?
本気で思ってるのか?
そもそも、同じくして壊れた…俺にそれを言うか?
……。
「…沙織さん」
「う…うん」
突き放す様に、言い放つ。
「無理だ」
戻る訳がない。
やらなくなったとしても、やってしまったという過去は残る。
結果…どこかで絶対に無理がくる。
「修復なんてできやしない。そんな風にしたのが俺だ」
「…」
状況が状況…。
本来なら、俺がさっさとどこかへ消えれば良いだけの話だけど…。
大洗学園の廃校が、完全に消えた訳ではないと確信している以上、俺だけどこかへ転校なんてできやしない。
何より…今、そんな事をすれば…みほが、更におかしくなりそうだ。
逃げられない。
自分で自分の首を絞めている状況。
「…そんな男に…そんな俺のどこに、好感が持てる?」
「…!」
だから嫌ってくれ。
軽蔑してくれ。
―それで構わない。
…?
なんだ?
一瞬目を見開いたかと思ったら…睨みつけるような目になった。
睨んだ…。
あぁ…うん。それでいい。
「も…持てるよ!!」
「……」
手を拳に変えて、今度は何かを訴える様な顔をした。
「…はっ。優しいな、沙織さんは。でもな…それは……」
「だ…だって、私!!」
「私、隆史君の事が好きだったもん!!」
「……」
は?
今までの流れをぶった切て、真反対の事を言ってきた。
一瞬、言ってしまった…といった焦った顔をしたが、勢いがついたのか…。
それはもう、マシンガンの様に喋りだした。
本日2回目の告白…。
呆然とした俺に向かい…ただ、一方的に。
生徒会室から始まって…納涼祭…。
まぁあの事件の事だろう。
それが切っ掛けだったと…。
ただ、覚えているのはソコまでだった。
違う…理解できたのが、そこまで…。
否定してくれた。
気遣ってくれた。
嫌いになればいいと言った俺を、またそこが俺の優しい所だと…そんな事を言っていた。
…申し訳がない。
本当に何も理解ができなかった。
みほに気を使い、俺に何も言えなかった事。
昨日、華さんが皆の前で宣言した事…。
記憶としは、断片的にしか覚えていない。
そんな俺の、好きな所を言ってくれる。
俺が自分に否定的な所を、否定してくれる。
―が。
何を言われても、それを否定をし、遠ざける。
彼女は想いの丈をぶつけてきてくれた。
普通ならば、焦っていたかもしれない。
年甲斐もなく、照れて硬直していたかもしれない。
―が。
分からない。
痛い。
初めてだ。
痛い痛い。
本当に分からない。
痛い痛い痛い。
なぜ人の好意を…こんなに痛く感じるのだろう。
痛みしか感じなかった。
「…だ…だから! 隆史君!」
「……」
「た…隆史君?」
「…分かった」
「……え?」
考えてみれば、今のこの状況。
…俺を好きだと言ってくれた彼女を…完全に孤立させてしまうのではないか?
あんこうチームで、残ったのは彼女だけ…。
上手く思考が纏まらなくなってきた。
先程までの感情とは、別の感情が湧いたのが分かる。
その場に勢いに流され、後に後悔する。
みんな壊れていく…。
「え…あの?」
「華さんも…麻子も……優花里も……」
「…隆史…君?」
鉄格子から体を離し…一歩彼女に近づく。
もう一歩近づくと、彼女が一歩離れた。
少し怯えている。
「彼女達も、俺を好きだと言ってくれた…」
「……ぁ」
「だけど…俺には、それが理解できない」
「そっ! それは!!」
何かを言いかけていた。
また…俺を庇ってくれるつもりだったのか…。
「それは! 華達もっお!?」
一歩でた彼女の腕を掴み…。
力任せに抱き寄せた。
「たっ!? 隆史君!?」
こんな状況だというのに、赤面でもしているのだろうか。
抱きしめた彼女が、普段よりも体が小さく感じる。
「みほの許しがあったから」
今度は俺が喋る番だった。
たくさん言ってくれた、彼女の言葉は理解ができなかったが…。
俺の事を思って言ってくれた事は、単純に嬉しかった……と、思う。
「あったからこそ、せめて…そんな彼女達に応えようとして…この状況……」
抱きしめられて、小さくなっている沙織さん。
変な呻き声が、腕の中から聞こえてきた。
そのまま彼女を抱き上げ…ホテルの建物の間…。
空調が置かれたスペースへと、連れて行く。
「ぇ!? え!?」
建物同士の狭いスペース。
そこへ彼女を連れ込んだらすぐ抱き上げていた彼女を下ろす。
ただでさえ、夜で暗いというのに、こんな建物の隅…更に暗い。
「沙織さん」
「……っ!? え!? 何!? なに!?」
男慣れしていないのが、丸分かりになるほどの狼狽ぶり。
直接のふれあい。
抱き上げるとかは、一度していたが…今回のは意味が違う。
それに会話の流れからしての、俺が取る行動に混乱している。
そんな彼女を見て…別の笑みが溢れた。
「…俺は君の想いには、みほがいるから…応えられない。」
「……」
はっきりと言った。
頭の中がグッチャグチャで上手く考えられないのもあるが、これだけは初めに言っておこうと思った。
俺自身、驚く程はっきりと言葉にした答えに、驚いたのか顔を上げた。
その顔は「分かっている」…そんな諦めた笑顔をしていた。
「今のこの状況…全部分かっていて…それでも好きだと言ってくれた……」
独り言の様に呟く。
ブツブツと…言い訳がましく。
自分に言い聞かせる様に…。
「隆史君?」
「そんな君だから、本気で応えようと思う…」
「え?」
変に間の抜けた声で返事を返された。
応えられないから、応えようと思う…。
よく分からない言葉。
告白された時に、少し思った。
思ってしまった。
なぜだろうか、それに素直に従う気になったのは…。
ブレーキが効かない。
先程までは、グジグジと後悔しかしていなかったのに。
不思議とスッキリとした…。
開き直ったのか、なんなのか分からないが。
なんで思ったんだろうか。
彼女の告白を受けて、頭の片隅に…浮かんだ事に気がついたから。
彼女も抱けるだろう…と。
ソウダナ。
みんな一緒にしてしまえば、元の関係に戻るだろう。
あの5人で一緒にいれるだろう。
大分歪んだ形で、戻ってしまうが…。
ソレハ ソレ ダ
沙織さんも、俺を好きだと言ってくれたのなら…
オナジヨウニ コワシテ シテシマオウ
「……」
見つめる。
俺の腕の中で、混乱している彼女の顔に顔を向けた。
見つめ合う…暗い建物の間で。
「みほからすれば…キスは浮気らしい」
「え……むぐっ!?」
体を落とし…そのまま唇を重ねた。
ただ…。
彼女に対しては、流されるのではなく、俺から…。
納涼祭の事もある…。
乱暴はしない。
だから…誠意を持って…。
コ ワ ソ ウ
◇
震えている。
肩に力が入っているのが分かる。
薄目を開けて見て見ると…。
目を見開いていた。
「……」
すぐに顔を離した。
「っ!? !?」
暗くても分かるくらいに、顔が上気していた。
触れば多分、とてつもなく熱くなっているだろうな。
「ぇ!? な…なっ!?」
彼女の両手が、俺の体に触れていないので、多分…あ。
やはり指がつるんじゃないかと、思うくらいに思いっきり開いている。
もう一度…。
ただ、唇を重ねるだけ…。
近づく俺の顔に、沙織さんは…逃げない。
ただ…そのまま受け入れた。
…痛い。
何かが痛い。
唇で、唇を挟むように…少し動かす。
下唇を噛むように挟み…そのまままた離す…。
それを至近距離で、何度か繰り返した。
性行為とは、また違う…ちゃんとした…。
「ん…」
何度か繰り返す内に、沙織さんは目を閉じていた。
…完全に俺を、受け入れていた…。
小休止とばかりに、少し体を離すと、そこで我に返ったのか…急に慌てだした。
「たっ! たか!?」
「…嫌だったでしょうか?」
いつもの様に、少しふざけた言い方。
「いっ! …ぃゃ…じゃ……ないけど………私……その……初めて……」
横を向いて、消えそうな声で答えましたね。
「けっ…けど! これ完全に浮気!!」
「そうだな。…みほにとっても浮気だな」
「う…」
みほにとっても、浮気ね…そうだな。
他の女性と関係を持っていて、今更何が…。
「後…なんで急に、いつもみたいに戻ったの?」
「いつも?」
「…その…隆史君の雰囲気…さっきまでは、ちょっと…怖かったのに…」
「あぁ…なるほど。ある意味で、吹っ切れたからかな?」
「吹っ切れた…?」
ある意味で、迷いがなくなったから。
「俺はね、沙織さん」
「え?」
「…沙織さんが、欲しくなった」
「!?」
おー…驚く程、赤くなったな。
沙織さんの行動原理というか、性格からして、人間関係とやらに刺激を求める。
事、恋愛に置いては特に。
ここの所、みほに対して負い目を感じるのか何なのか…。
自分が当事者になって、大分大人しくなっていたからなぁ。
前は、兎に角恋愛関係に結びつけてたし。
もう一度、強めで抱きしめると、硬直する体を無視して、もう一度唇を重ねた。
今度は…。
「ぅん!?」
舌を入れた。
ただ入れただけではなく、彼女の舌を弄る。
根元から全体的に絡ませ、刺激する。
「ぁ…はっ……」
ヌルッとした感触を感じる…いや、感じさせる。
段々と水っぽい音も混じり出してきた。
「…は……ぁ……」
舌を抜き出すと…彼女の顔が変わっていた。
女の顔。
子供…いや、高校生なら中間か。
ならこんなキスの意味はわかるだろう。
性的なキス。
抱きしめていた腕を離し、腰に手を回す。
逃げる気なら逃げれる体勢。
腰を抱き寄せ、今度は彼女の舌を吸う。
自身の口へ招き入れると、伸ばされた彼女の舌を、全体的に絡み舐める。
ニチャニチャとした音を、わざと出しながら…。
もう一度抱きしめると、彼女の首元に頭をいれ、首元へ口を這わせる。
手は彼女の脚の付け根へ…お尻との中間を掴む。
ここへ来て、初めて抵抗の意思を見せた。
俺の手を押しやる様に、腕の付け根を押さえた。
「だ…だめ……」
力がない声と、押さえる手。
ソウダナ。
「み…みぽりんに……悪いし…裏切り……」
「…もう浮気、しちゃったんですけど?」
「!!」
キスだけはダメだと、彼女も知っていただろうに。
これは、沙織さんの好意に漬け込んだような、卑怯な手。
ま…もう、今更だけどな。
順序が逆。
すでにタブーを侵している。
ま、普通の人ならキスの時点で浮気確定なんだけどな。
やはりどこか、沙織さんも麻痺していた。
…今の取り巻く関係が、常軌を逸しているからな。
「沙織さん…キスした時点で、逃げなかったんだから、もう遅い」
流された自覚があるのか、少し体が硬直した。
罪悪感からなのか、目を見開いた。
「それに、ここまで…浮気までしたいと思ったのは…」
「!?」
そう、なんだかんだ…キスまでしたのは、沙織さんだけ。
その事実を、首元から耳元に顔を移動させ…囁く。
そのまま後ろに周り、後ろから抱きしめる。
さて。
彼女の顎を、指で添えて引き上げる。
意味が分かったのか、目が俺の顔を見上げた。
そのまま…もう一度唇を奪うと…逃げない…。
すぐに顔を離すと…目がまたあった。
「しょ…正直に言っていい?」
「なに?」
目を逸らして…なにか懺悔するかの様に…呟きだした。
先程の俺の様に…自分に言い訳をする様に…。
「私…みぽりんが、羨ましかった…」
「……うん?」
羨ましい…?
「わかってるの…私の方が全部、後からだし…」
「後?」
「隆史君と付き合いだして…応援していたから、私も嬉しかった…けど、やっぱり複雑で……」
……あ…あぁ…俺の事か…。
「……」
あ、はい。
すいません。鈍感でしたね。
現実に戻されるような、ジト目はやめて下さい。
「……はぁ…ま。隆史君そんなんだし…気付いたら、周り凄い事になってるし…」
「……」
「今日、部屋でみぽりんと華から…話聞いて…」
あぁ…なんか個別で、二人に呼ばれたって言っていたな。
「みぽりんには、バレてた…それでも良いって言われた…。正直、関係を持つ事に…その……言い切る、みぽりんが…怖かった」
「……」
「華には…すっごい直球で、誘われた……」
「さ…そ……」
「何かの冗談かと思った…。絶句しちゃったよ…」
そうだ…、華さんもおかしい。
完全にノンブレーキだ。
…壊れ方が尋常じゃない。
さっきもそうだ。
抱かなかったら、ズルいとか言われたし…。
「でもどこかで、その…考えちゃった私もいたの…」
「……」
「みぽりんと華…二人の話を聞いてるうちに……その……」
……。
…伝染していた。
みほ本人の話だけじゃない。
華さんもいたという事で、沙織さんも毒されていた。
ただ…思うだけで留まるのが普通だ。
良心で留めていたのだろう。
ある意味で、唯一の常識人だしな…沙織さん。
が、今ここで、俺がその最後の良心を壊している。
その告白を遮り、また唇を塞ぐ。
舌を少し入れると、今度は彼女自身から舌を出してきた。
先程まで、今の関係をどうにかしようと、俺を…みほ達を説得しようとしていた手前、何も言えないのか…。
ただ無言で、舌を合わせている。
空気に流されているな。
まぁ…流させたのは俺だけどな…。
さて。
浴衣の隙間に手を添える。
指を入れ、前に押し出すとシュッとした音と共に、少し浴衣の前が緩んだ。
「ふむっ!?」
焦ったような声が、目の前からした。
ま…そうだね。
外だしね、ここ。
「ちょっ!? たかっ!! んんぅ!!」
余計な事を言わせまいと、片方の手で顎を軽く掴み、また口を口塞ぐ。
少し緩んだ浴衣。
そこの手を入れると…うん……なんだ…。
デカイ。
あぁ、もう谷間なんだと気づかされる様な感触。
「んん!?」
そのまま、躊躇なく手を差し入れ…弄る様に下へ…。
連動して開かれていく浴衣…。
グッと、腕を下に引くと…完全に片方だけ開かれ、片方の胸が飛び出した。
手の感触でわかったのだけど…ノーブラでしたね。
寝る前だったからかね。
華さん達も、そうだったなぁ…。
……うん。
ここまですると…もう変な痛みは感じなくなっていた。
「ちょっ! ちょっと待って!! 隆史君! 流石にッ!!!」
小声で叫ぶ…器用な真似するなぁ…。
前屈みになり、腕を胸を隠すようにクロスさせて、しゃがんでしまった。
顔だけ上げて、こちらを向いた。
「大丈夫。ここ、暗いし…こんな時間だし……」
「で…でも…外っ! それに……私、初めて……」
……。
もうすでに、承諾した様な事を言っている。
まあ、胸を軽くだけど、弄る時も抵抗はなかった。
…やはり毒されてたな。
彼女もまた、ある意味でおかしくなりかかっていたのか?
ま…これで分かるかな。
「今すぐ、沙織さんが欲しくて、仕方ないんだけど…」
「ふっ!?」
散々、自分を責めて…後悔を吐露してい俺が。
今は、それを進んでしている。
この変わり様に、疑問も持たなくなっているな。
俺も…沙織さんも…。
「流石に…初めてを…外って……」
しゃがんでいる彼女の目の前に…自分の浴衣を左右に開く。
言葉を遮って…すでに大きくなっていたアレを取り出した。
ボロンッて!!
「ぅふ!?」
変な声を上げて、少し上…それこそ目の前に出てきたそれを…。
凝視してますね…。
あ、そうか。
彼女の所持されている雑誌で、皆さん変な知識を中途半端にお持ちでしたね。
こんな外…先行してソレを取り出したのだ。
なら…まぁ分かるだろ。
「…お願いします」
根元を持って、彼女の口先まで陰茎を誘導する。
また変な声を彼女が上げたけど…目は完全にソレに釘付けになっていた。
どうするか分かるだろうけど…踏ん切りがつかないのか…口を開けたり、閉じたり…。
鯉みたいに、顔を赤くしてパクパクし始めた。
まぁ、し始めてしまえば…後の流れは想像が付く為だろうな。
コの字になっている、今のこの建物同士の間…。
その一番奥にいるし、この暗さだ。
本当に通りからは見えない。
それは、彼女も分かっているだろうし…ソロソロかな?
ここで、陰茎の先を彼女につければ、多分舐め始めてくれるだろうが…それじゃダメだ。
彼女からさせないと…この後の事ができない。
さて…後どのくらい……。
「…っ」
舌先が当たった。
まだ躊躇をしているみたいだけど…。
次にキスをする様に、唇を合わせてきた…。
唇で噛むように…先を愛撫し始めてくれた。
…不意の感覚に声が出そうになる…。
暫く眺めていると…ゆっくりと亀頭が、彼女の体温に包まれた。
…舌の上を移動しているという、感覚が分かる。
ヌルッと…。
ここまで来れば、後はいいだろう。
彼女の頭に手を置き、軽く前後させる。
またヌルッとした感覚が走る。
ま、始めてだろうし…まだ躊躇が見られるからか…ぎこちない。
「っ…ぷっ…っ…ぷっ」
舐める音が聞こえる。
段々と集中し始めたのか、前後する速さが上がってきた。
「ちゅっ…ぷっ…ちゅっ…ぷっ……ちゅっ…ぷっ」
何ていうのだろうか…。
性技としての気持ちよさは、正直あまりない。
…が。
この状況が、俺の興奮を加速させていった。
まぁ…いい。
多分…彼女は、知識はあるのだろう。
経験はこれから、積んでもらえばいい。
……。
はっ…経験ね…。
簡単にその言葉が出たってことは…。
「っっ!?」
あ…危ない…本気で声を出してしまいそうなった…。
すごい感覚が…。
彼女は尿道口に舌先を入れていた。
そこまたグリグリと、ほじる様に…。
って!!
「さ…沙織さん?」
「…れァ?」
上目でこちらを見てくれ……た…。
すごい絵になっている…。
すごい絵になっている!!
舌を伸ばして、亀頭の先を突き…上目遣い…。
エッッッロ!!
おかげで、こちらも本気でエンジンが掛かってきた!!
「んっ!! んっ! んっ!!」
音をたてる…事はしないが、唇でしごく様に…強く動き始めた。
動く際に、彼女の口から声が漏れる…。
「んっんっんっ!!」
亀頭からカリに掛けて…その区間を今度は素早く動き始めた。
いれる度に、舌を突き出し…全体を使って亀頭を包み込むように…亀頭に小気味良く舌の感触と…って!!!
「ちょっ!! ちょっと待って!」
腰を引き…少し離れた…。
なんだ…急に…。
「…その……あんまり気持ちよくなかった?」
不安気な顔…いや、そうじゃなくて…。
吹っ切れるの早くない!?
「いや…気持ちよかったですけど……なんでしょうか? 今の技は…」
そう、技だ。
最後の絶対に、テクニックと言われる様なものだ!
「あ……」
目を逸らして真っ赤になった。
取り敢えず、中腰じゃ辛かろうと…手を引いて立ち上がらせました…。
「そ…その……雑誌に書いてあって……」
だからその雑誌なんなの!?
女性誌って、怖いよ!?
そしてその雑誌を、結局あんこうチーム全員が読んでるって!!
「み…未来の旦那様にって……その……」
まさか…
「お…おもちゃで、何度か練習した事……が……」
沙織さん!!
多分!! いきなりあのテクニックは、未来の旦那様が引く!!
というか、おもちゃ持ってるの告白してる!!
「…その雑誌を、みほ達も読んでいたのか…」
「え…みぽりん達? 読んでないよ?」
……
え?
「みぽりん達には…その……刺激が強すぎだと思って…」
「……」
え…?
そういえば、外でするのも、恥ずかしがってただけで……
流石に初めては…って……
その行為自体には否定的ではなくって…
「え? あぁ…うん。世の中にはそういう男の人も、沢山いるって書いてあったから大丈夫」
声に出てたぁぁ!! って!? 大丈夫!?
え!?
……。
待て。
みほ達には?
って事は、他の更に刺激が強いと言われる、雑誌を読んでいるって事?
……。
か…考えるのは後にしよう…。
「……ん?」
閲覧ありがとうございました
さぁ。
本当に壊れているのは誰だろう