※この作品はR-18です。

転生者は平穏を望む ~ルートPINK~   作:白山葵

46 / 54
イチャラブって難しい…




※ルート IF※ 続 ルート・ノンナ ★

 …きつい。

 

 その一言に尽きる。

 

 だってな? 考えても見てくれ。

 俺自身、自分の体格と見た目…というか、風貌という奴は、嫌でも認識している。

 そんな熊と揶揄される程の大男が…女子高校の正門前に立っているという絵面…。

 

 いやぁ…アウトだ。

 

 不審者以外の何者でもないだろう。

 

 休みとはいえ…否、休みだろうからか。その休日の日に出かけるでろうJK達が、制服姿で俺の前を通過していく。

 奇異な視線を向けながら…。

 あ~…そういや、基本的に外出時は制服で出なきゃならないって、聞いたことがあるなぁ~。

 ちょっと懐かしい事を思い出したぞぉ。

 

「……」

 

 いやぁ…きつい。

 

 待ち合わせに指定されていたので、逃げるに逃げれない。

 隠れて待っていれば良いのかもしれないが…逆に隠れている所を見られたり、見つかったりした場合、言い訳なんぞ糞の役にもたちゃしない。

 

 …問答無用で、しょっ引かれるだろうよ。

 

 だから敢えて、堂々と…待ち合わせしてますよ~的な? 雰囲気を出すように突っ立っている。というか、それしか方法がない…。

 あぁ‥もう、何時間程こんな状態が続いているんだろう。

 …いや? まだ数分しか経過していないかもしれない。しかし、このいつ通報されるか分からない状態は、時間の感覚を狂わせる。

 

 はっはー。

 

 …生きた心地がしないとは、この事だな。

 

 ……。

 

 ………。

 

 恋人…ね。

 

 人も疎らになり、本当にどの位時間が過ぎたか分からなかった。

 ボケ~としているのも飽き、気が付けば昨夜の事を思い出してしまう。

 そして気が付けば、しっかりとその事を思い出してしまっていた。いや…考えないように誤魔化していたいただけだ…。そうだ、極力考えないようにしていた。

 

 ノンナさん。

 

 こんな関係になんて、なるなんて思いもしなかった。

 

 

「…何してんの、タカーシャ」

 

 

 糞みたいだった前世の影響で、俺の本性とやらが、どんだけ腐っているか分からない。

 分からないが…今の俺は、西住家の人達のお陰でずいぶんとマシになってくれているハズだ。

 …それでも…だから…と。そんな考えを捨て去り、改めて思う。いや、想う。

 想いと共に、グダグダと…昔からの事を考えて泥沼になりそうな思考を奥にへと、押し込める。

 今までの考えや、自分への言い訳を今更考えてしまうのは、彼女に対してあまりにも失礼だ。

 

 そう…だ。

 

 決めたんだ。

 

 そういう関係に…彼女の想いに応えると、決めたんだ。

 

「タカーシャ? タカーシャッ!!」

 

 それでも、みほの事は別だ。

 まほちゃんもそう…彼女達は、まさに恩人以外の何者でもない。今の俺を構築してくれた恩人…。

 だから全力を尽くす…。全力で彼女達の力になりたい。

 それは、ノンナさんからすれば、面白くないだろう。彼女からすれば…決まっていた事とはいえ、異性の為に転校するんだから…。

 

 それでも…彼女は……転校…。

 

 て…。

 

「……ぁ」

 

 そうだ…アレだ…。

 

「あぁ…そうか。アレが決め手…か」

 

 あの時の言葉…。

 

 あの言葉が、迷いもなく…すんなりと受け入れる事ができたんだろうな。

 

「あ、やっと喋った…というか、まだ私達に気が付いてないわね…」

「…そのようですね、カチューシャ」

「しかも…何をブツブツと…決め手?」

 

「…決め手」

 

「タカーシャ…。いい加減その癖治さないと…いつか身を滅ぼすわよ」

「……決め手…」

「聞いてないし…ん? ノンナ? …ノンナ~?」

 

 そうだな。あのお陰で、自分でも驚く程に、彼女をすんなりと受け入れる事ができたんだ。

 

「隆史さん。…因みに…それは、どんな言葉なんでしょう?」

 

「…いや、最後のですねぇ…『あの姉妹との関係、それを含めての今の貴方。その全てが、私は好きになったのですから…』って奴で、完全に参っちゃいましたね」

 

「……」

 

 返事をした後で…まぁ、状況的にはアレだったけど…。

 何よりも、現時点での俺って奴を好いてくれた言葉。すべてをひっくるめてでの言葉。

 我ながら、チョロいなぁとは思うが…だから…その後もすんなり…。

 

 

 …。

 

 

「……」

 

 

 ……。

 

 

 はっはー。

 

 

 いつの間にか、カチューシャとノンナさんが、制服姿で真横に立っていた。

 

 

 はっはー。

 

 

 状況確認。

 

 状況把握。

 

 よし。

 

 

「はい、逃げないで下さい」

 

「襟首掴まないでくださいっ!! って、何時から!? 何時からだ!?」

 

 また、口に出してたぁ!!! なんで!? 今までこんな往来じゃ…せめて会話の最中とかでならやらかした事はあったけどっ!!

 あ…なんか、カチューシャがキャパオーバーって感じで、真っ赤に茹で上がってる…。

 それはそれで、可愛らしくはあるのだけど…あの最中の事は思い出してないよな!? 口に出してないよなっ!?

 

 というかっ!! ノンナさん、力! 強っ!!

 

 俺、結構本気で、力出してるけど!? ズリズリと地面を擦る、足の音しか聞こえない!

 

「…隆史さんも、照れるのですね」

 

「当たり前です照れますよっ!! もう完全に! ノンナさんの事、女性として意識してんですから!!」

 

「…っ!?」

 

「あぁもうくっそっ! 我ながら一日で、ここまで変わるか…うっ…わっ…恥っっず!!」

 

「……」

 

 はっきり言わなかったっけか? できるだけ異性として意識しないようにしていたって。

 性別的に気を付けてはいたけど…ダージリン宜しく、近くの女性は…基本的に学生…子供。と、思い込むようにしていた。

 昨晩の事があり…それが、一気に解けてしまい…諸々の欲とかっ! 今までの反動で、凄い事になりそうなのを、どこかで感じていた…。、

 意識が切り替わっただけで、ここまで…あぁもう! 顔が熱い!! 参ったとか、言っちゃったよっ!!

 

「……」

 

 逃げるのを諦め、校門に背中を預けると、ノンナさんも漸く掴んでいた俺の襟から手を離してくれた。

 一気に顔に体温の熱が集中しているのが分かる…。俺…どんな顔してんだよ…自然と片手で顔面を抑えてしまう。

 ため息を付きながら、片手で抑えていた顔。その指の間から、ノンナさんを見てみると…。

 

 …超…無表情…。

 

 いつもと変わらない、ポーカーフェイス…。

 

「あの…ノンナさん?」

 

 あれ…? 違うな…。

 

 目も顔色も、何もかもが普段と変わらないが…口元だけが違った…。

 への字にちょっと歪んでる…。

 なんか、小刻みに肩も震えているような…。

 

「っったっ!?」

 

 突然、脛に…激痛が…。

 

 反射的にその痛みを感じた脛に視線を落とすと…はい。カチューシャがご立腹でした。

 

「朝っぱらから、イチャついてんじゃないわよ!!」

 

 両腕を腰につけ、真っ赤な顔して、俺を見上げていた。

 

「まったく…」

 

 視線を合わせると、ぷいっと顔事反らすが、まだ少し顔は赤い…。

 いや…今のを見て、なんでその結論になるのでしょうか? …イチャついてって、事情を知らなくちゃ分からないと…え。

 

「今はこのカチューシャがいるの! そういうのは、二人きりの時にして!」

 

「はぁ……は? 二人きり?」

 

 あの…その言葉が出るってことは…。

 ぷりぷりとしているカチューシャを横目に、確認をするかの様に、ノンナさんを見ると…。

 

「あ、はい。カチューシャには、全て報告しました」

 

「っっ!?」

 

 そんな事を…朝日を浴びながら…何処となく、得意げな顔をした顔のノンナさんが言い放った。

 

 えっと…。

 

 …。

 

 すべ…て…は!?

 

 

 

 〔 勿論、昨晩の事は伏せてあります 〕

 

「!?」

 

 間髪入れずに、ロシア語に切り替え…というか、俺にだけ分かる様に口にした。

 び…びっくりした…。

 

「…は…はい」

 

 無表情に喋る彼女に、少し安心して……。

 

 〔 私としては、カチューシャならば…洗い浚い暴露しても宜しいのですが… 〕

 

「やめてくださいよ!?」

 

 …できなかった。

 

 

 

 

 ▲▼▲▼

 

 

 

 

 …と、まぁ…非常に喜ばしく、何処か気恥ずかしい朝でしたね。

 

 

 私を女性として意識している…その言葉。

 あの時の言葉で、全て繋がった気がしました。

 

 聖グロリアーナ勢含め、散々私達をヤキモキさせていた貴方の態度。

 同性愛者の疑いまで出てくる程でしたのに…ね?

 どの様な理由でかは存じませんが、わざと…敢えて私達を異性として見ないようにしていた…と。

 

「…あ…あの…ノンナさん…?」

 

 重度の鈍感…と思っていた我々でしたが…そうですね。アレはワザと意識をして…気が付かない様にしていたのですね。

 それは、貴方の事ですから…あの、西住姉妹に対してもそうでしょう。

 しかし…貴方にとって、初めて女性として意識してもらえていた。その言葉。

 

 …それが私。

 

 その前の…夜の事があったとしても、大きな不安を感じていました。

 ですが…その時の隆史さんの…見た事がなかった程に狼狽した態度。…照れる貴方を見て確信できました。

 

 …しっかりと、貴方の特別になれていた。

 

 それが分かった瞬間。胸の中の…非常に、もの凄く…大きな不安が、大きな優越感に変わったんですよ。

 

「ちょっ!? ノンナさん!? 貴女、そんな事、はっきり言う人じゃなかった気がするんですがっ!?」

 

 あぁ…しかし、あの時のカチューシャは、途轍もなく良かった…。

 

「いきなり何時ものノンナさんに戻った……ってぇ!!??」

 

 

 

 

 ▲▼▲▼

 

 

 

 

「そもそもっ! タカーシャはまず、デリカシーというものを学ぶべきだと思うのよ」

 

「そ…そっすね先輩」

 

「私をからかう為だけに、ロシア語勉強するとかひん曲がった性格も改めるべきよねぇ!?」

 

「お…しゃる通りですパイセン…」

 

 彼女達の行きつけのお店…とやら。

 少し遅い朝食を済ませ、今はきれいになったお皿の前で、何故かカチューシャ先輩からのお説教が始まった…。

 まさか朝っぱらから、女性に対する態度について、カチューシャからクドクド言われるとは思わなんだ…。

 いや…まぁ、それは置いておいて…彼女達に案内されてきたこのお店。

 

 まさかの大衆食堂。

 

 プラウダ高校学園館の街並みで、一際異彩を放つ、この…なんつーか…趣のあるお店でした。

 女子高生が気軽に入れないであろう、その外見からして…非常に彼女達…というか、俺達はこの店内で非常に目立った。

 俺らの他には、常連らしき2組のおっちゃん達が、楽しそうに見ている。

 まぁ…この外見のカチューシャが、俺みたいなのに対して得意気にお説教しているすがたは、そりゃ楽しかろうて。

 

 そんな俺とカチューシャを見て、ただ食後のお茶を啜るノンナさん。

 相変わらず無表情に見えるが…どこか微笑ましい顔をしていると思うのは、気のせい…ダヨネ?

 しっかし…彼女達は、本当にこの店の常連らしい…。

 連れてこられた時は、俺に合わせてくれただけかと…気を使ってくれただけかと思ったのだが、店に入るやいなや、先に入店していた、このおっちゃん連中と挨拶を交わし、人が好さそうな店主らしき老夫婦にも愛想よく挨拶をしていた。

 そして今も、この現状をノンナさんと同じく微笑ましく眺めている…。

 

「しっかし、意外だ…カチューシャ達って、こういった店に来るんだ。女の子からすると、結構勇気いらないか?」

 

「ねぇタカーシャ……話題変えて、誤魔化そうとしてない?」

 

「滅相もござんせん」

 

 …滅相もござんせん。

 

「はぁ~~……ま、そうね。誰かさんと付き合いがあるお陰で? 慣れたみたい。…躊躇なく入れたわ」

 

 大きなため息と一緒に、話題変えに付き合ってくれましたね先輩。

 一瞬目を反らして、少し呟く様に小さく漏らした。

 

「それに…なんか、似てるのよ。「魚の目」に…。妙に居心地がいいの…」

 

「あぁ…なるほど」

 

「朝食は、和食に慣れちゃったしね。遠征の時とか…タカーシャのとこに行けない時に、結構な頻度で来るようになったわ。今後は? もっっ…と、増えるでしょうけ・ど?」

 

「そ…そっすか」

 

 ジト目で、俺を見上げるカチューシャパイセン。

 

「カチューシャ…あの…ちなみに」

 

「…何よ」

 

 少し拗ねた様に、片肘を付いて食後のオレンジジュースに口を付けた。

 ストローを吸うその姿が妙に愛らしい…まぁ口に出したら100%、怒るだろうけど…。

 

 とりあえず…今朝の事を、聞いてみよう…。

 

「ノンナさんから、どこまで…聞いたんだ?」

 

「は? 言った本人に聞けば?」

 

 わー…ご機嫌斜めぇ…。

 

 主語が抜けた話題に、即答で答えが返ってきました…。

 チラッ…と、その本人を横目で見ると…うっわ…こちらも不機嫌そう…先ほどからチョコチョコ眉を傾ける。

 話題に対して気に入らない事でもあった…と思わせる程に。眉間に皺を寄せる事も度々見かけるので、ぶっちゃけ怖くて聞けない。

 かといっても、先ほどの様に妙に機嫌が良さそうな表情も見せるしで…もうどうしたらいいか分からん。

 

「……」

「……」

 

「…ま…まぁ、そうね…まず、シンプルに一言…」

 

 そんな、ノンナさんの変な雰囲気をカチューシャも感じ取っているのだろう。

 本人に聞けと言ったのに、話してくれそうだ。

 

 

「タカーシャと、お付き合いを開始した…って、聞いたわ」

 

 

 ガタッ!!!

 

 

 …。

 

 あの…店主含めて、お客の男性陣が席から一斉に立ち上がったんですけど…。

 女将さんらしき人は、目を輝かせてるけど…。

 

「え~…え~!! まぁ!? 惚気に近い、その経緯も含めてね!!」

 

「あの……なんか、男性陣からすげぇ睨まれてるんですけど…」

 

 ………アレ?

 

 あの…なんか、皆さん殺気を放ってますけど? …え?

 

「…いい? タカーシャ」

 

「な…なんでしょう?」

 

 そんな男性陣の殺気を気にもしないで…ものすごく真剣な声と顔をして俺を呼んだ。

 

「私はノンナだから納得したの…許せたの」

 

「え…」

 

 すぐにその真剣な顔を崩し、頬杖を突きながら目線をずらした。

 

「……ま、ここからは私も…遠慮はしないから。「いつでもどうぞ」…とか、言ってくれたしねぇ」

 

「はい?」

 

 何故か最後…妙に楽しそうに、目を伏せていたノンナさんを、流し目…とでも言うのだろうか? そんな横目で見ながら、小さな口端を吊り上げた。

 いやぁ…なんか…すっげぇ悪巧みしている様な顔してますね。

 

 …こんな悪そうな顔のカチューシャ、見た事ねぇ…。

 

「……」

「……」

「…と…ところで、タカーシャ」

「あ…はい」

 

 その悪そうな顔のカチューシャに釣られて、その場の全員がノンナさんを見ていた。

 

 見た瞬間…スンッ…と、立ち上がっていた男連中が、大人しく席に座った…。

 

 あ、はい。逃げやがったな。

 

「…さすがに、ノンナの様子がおかしいわ…何かした?」

「ずっと一緒にいただろ? 俺…特におかしな事してない。……よな?」

「そ…そうよね」

 

 ノンナさんが…なんか、すげぇ機嫌悪そうな顔をしていた…。

 …特に、しかめっ面をしているとかじゃなく…何時にも増して眼光鋭くなっているだけなんだけど…。

 カチューシャもビビり始めたし、一応聞いておこう…か? カチューシャじゃ無理だろうな…。

 

 よ…よし。

 

「あ…あの、ノンナさん?」

 

「なんでしょう?」

 

 あ、呼びかけには応えてくれた。

 声は特に…普段と一緒だな。

 

「どうかされまし…た?」

 

「どうか…とは?」

 

 た…淡々と…。

 

「いや…ご機嫌…よろしくございませんか?」

 

「いえ? すこぶる良いですが?」

 

 …いやぁ…良いような顔してたら聞きませんが…。

 

 

 

 ▼

 

 

 

 カチューシャは休日だというのに、午前中しか自由になる時間がないとの事で、ある程度の一服が終わり次第、その店を後にした。

 

 本日はノンナさんが路程を考えていたらしく、カチューシャを肩車した状態の俺は、ただエスコートされるがまま、彼女に黙って着いていく。

 凛とした顔のまま、特に何も喋る事もなく、ただ歩く。

 店を出た後も、何となく不機嫌なオーラを発している彼女に、もはや声を掛けるのが怖い…。

 それはカチューシャも同じだったのだろうが、すでに飽きたらしく…俺の髪の毛を掴んだり離したりで、遊びだしていた。

 あの店から見ていたプラウダ高校学園艦。…今まさにその学園艦の街を歩いているのが…何故だろう? 妙に楽しい…。

 

 

 トローリーバス? だったか…。触覚の様な物がついた電車の様なバス。それが街を走れば、それを一から説明してくれる。

 無軌条電車扱いだから、バスと銘を打ってはいるが、鉄道の分類にはいる…だったか? まぁ他にも細かい事を言ってはいたが、頭の上から流れる声が、妙に嬉しく……正直、話の半分も覚えちゃいねぇ…が、まぁ…いい。

 入った事がある飲食店が見えれば、そこのコレがおいしい…とか、それはもう楽しそうに。そういや…ピロシキって、揚げるよりもオーブンとかで、焼く方が一般的なんだな。

 これもカチューシャが教えてくれたが…まぁ…カチューシャのピロシキ熱には驚いたけどな…。人間好きな物を熱く語ってしまうもんだな。

 

 所々、カチューシャの得意気な説明を聞きながら、ゆっくりと流れる時間。

 …悪くない。

 

 そしてプラウダ高校学園艦内を観光…案内されるがまま、最後に到着したのが…ショッピングモール。

 

「ねぇ? ノンナ。さすがにいい加減にして」

 

 そこに到着した時も、やはりノンナさんの様子がおかしいままだった。

 …だからだろう。漸くカチューシャが声をかけた。

 

「はい? 何がでしょう」

 

「一応、明日船を出る時にもタカーシャとは会えるけど…残り少ない時間、そんな顔で何時までもいないで」

 

「……?」

 

 カチューシャの憤慨を、本気で何を言いたいか分からない…といった顔で返した。

 しかし、その顔も一瞬ですぐさま「あっ…」と、小さく声を溢しながらも納得したという感じの顔に変わった。

 

「…それで先程隆史さんも…成程」

 

「ノンナ?」

 

「大丈夫ですよ、カチューシャ。本当に私は、今とても気分が良いです」

 

「…そんな顔に見えないけど?」

 

「いえ、本当に……あっ。…そうですね、不満があるとすれば…隆史さんにでしょうか?」

 

「タカーシャに? 何よ。なんなら今のうちに言っておけば?」

 

 な…なんだ?

 

「そう…ですね。時間も余りありませんしね」

 

 俺の名前を呼んだ瞬間…小さく口端を緩めた…。

 小さな変化だけど、俺には分かる…物凄く楽しそうに、いたずらをする子供の様な顔になった。

 口元に曲げた指を添えながら、ゆっくりとこちらを見て…。

 

 

 

 〔 昨晩の初体験の痛みで、私は歩く事ですら辛いというのに…男性はずるいな、と 〕

 

 

 

「ぶっっ!!!」

 

 

 態々ロシア語で…トンデモナイコトをおっしゃいました。

 

「えっ…何? 何?」

 

「真っ赤になって照れる隆史さん…という、レアな表情を拝見できたのは、とても嬉しかったですよ? …その対象が私というのでなおさら…」

 

「勘弁してください!」

 

「…不満じゃないじゃない」

 

 に…日本語ぉ…。

 これはカチューシャにも聞かせる為…か…?

 

 

 〔 昨晩…人の胸を散々おもちゃにした方とは、思えない反応でした 〕

 

 

「  」

 

 

 …す…すっげぇ、いい笑顔で凄い事を言い放った…。

 

「そういえば、隆史さんには話しておりませんでしたが、今日は…戦車道に関しての案内をするつもりはありません。…日常。後一年過ごす私達の街に、貴方の面影を残しておきたい…そういった趣向での案内です」

 

「え…? あ…はい、そうですか…」

 

「急に話が変わったわね…」

 

 〔 ですから…私は初めてでしたし? 昨晩貴方には、私の部屋に来て貰うように企てました 〕

 

「  」

 

 変わってなかった!! というか!! 企てたって言いました!?

 

「…と、いう訳で、カチューシャ? 私は特に機嫌が悪いという訳ではありません」

 

「…そ…そう。良く分からないけど…多分、ロシア語で何言ったかは…聞かない方が良さそうね…」

 

 俺とノンナさんの様子見て、カチューシャが珍しく、んな事をおっしゃいました…。

 

「えぇ、賢明ですカチューシャ」

 

 ノンナさん…すげぇ…顔色良いなぁ…。

 

「と…ところで、此処で何買うのよ。買い物の為に態々来たんでしょ?」

 

 カチューシャ!

 

 俺の様子を見て、即座に会話を変えてくれた!

 ノンナさんのロシア語で、あからさまに俺のHPが削られているのを察してくれた!

 

「隆史さんの洋服です」

 

「タカーシャの? …あぁ…まぁそうね。ある意味で理解するわ」

 

 〔 まぁ…捨てろ…とは、言いませんが… 〕

 

 な…なんだ?

 

「まともな服が、他の女が選んだ服だけ…とか、我慢なりません」

 

「…の…のんな?」

 

 オペ子さん…女って言われましたよ?

 

「カチューシャも手伝ってください」

 

「え…私も?」

 

「はい。隆史さんをプラウダ色に染めましょう」

「乗ったわ!!」

 

 あ…あれ? 話の方向性が変わっていってるような…。

 いつの間にかカチューシャも流れに乗ってる…よな? 即答したよな!?

 

「あの…俺の意見…は?」

 

「まともな物なら、取り入れます」

 

「ま、ないでしょうけど」

 

「……」

 

「取り合えず、筆字のプリントティーシャツは駄目ですよ? 却下です」

「後、いい加減、ジーパン以外も買いなさいよ。まるでおじさんよ?」

「いや…楽だし…」

 

「ねぇ、ノンナ? プラウダらしく…赤いれましょ」

「そうですね、隆史さんのイメージに余り沿いませんが、組合わせによっては、何とかなるかもしれませんね」

「あの…赤は流石に、派手すぎでは…」

 

「タカーシャの場合、量販品店の方が良いわね。下手に高いの買うと、逆に着なくなりそう」

「そうですね。ここならチェーン店もいくつか入ってますし」

「今後の事を考えると、その方がタカーシャも選びやすくなるわよね…」

「はい。お手本となりましょう」

 

 …。

 

 ……あかん。ガン無視された…。

 

「上も買っちゃいましょ? タカーシャの場合、迷彩柄のジャンパーとか? だっさいの選びそうでしょ?」

「そうですね。…冬場とか市場のジャンパー着てましたしね…。それに隆史さんの場合、ブルゾンの方が似合いそうでは?」

「ならついでにジャケットも一応、選んじゃいましょ。後で本人に何が好いか、一応聞いてみましょ」

「そうですね。後は…下ですが…」

「あ、時間がない! 先にお店に行きましょう、ノンナ!」

「そうですね、時間が大分掛りそうですし…」

 

 …。

 

 あの…ジャケットもジャンパーも一緒では? ブルゾン? なにそれ…。

 

 いや…マネキンになるのは構わんが、服を…自分以外の服を選ぶのを、何故こう楽しそうにできるのでしょうか?

 女性って、そういう生き物だって聞いた事はあったのですが…。

 まぁ…ピンポイントで俺をロシア語経由で、地雷を手掴みでぶつけてくる様な、ノンナさんの発言が何時の間にかなくなったので良しとしよう…。

 

「あっ…後…もう一つ。時間が余ったら…ですが」

「何よノンナ」

「対、隆史さん用に、私の物です」

「は? 対タカーシャ?」

 

 ま…まぁ、楽しいのならば良いだろうさ。水を差す事もない。

 ただ…いや、まぁ…時間がないとか言っていたけど…まだ2時間以上、午前は残っているのですが…。

 俺のプラウダで過ごす時間は、服選びに大半を取られてしまいそうだ…。だからまぁそんなに急がなくても…。

 

「 メガネです 」

 

 はい、ノンナさん。手を握りましょう

 

「…なにそれ。ノンナ、視力良かったわよ…ねぇ!?」

 

 はい、ではちょっと急ぎますね?

 

「タカーシャ!? なに、急に!!」

 

「手…」

 

「ノンナの手まで引っ張って、何を急に…って、怖い!! 早歩き怖い!!」

 

「手……」

 

「だから、タカーシャ!! 貴方、背が高いから余計に怖いの!! 聞いてる!?」

 

「手………」

 

「タカー痛っったぁ!! 釣り看板にぶつかったぁ!! せめて下ろしてっ!!」

 

「手…………」

 

 

 

 

 ▲▼▲▼

 

 

 

 

 その後の時間をすべて費やすと思っていましたのに…まさか服選びが、1時間掛からないとは、思いもしませんでした…。

 選んだ物、全ても良い…は、選ぶ側からすると、非常につまらないのですよ?

 まぁ…今の生活で、しっかりと着て頂いている様で、安心しましたが。

 

「…いや、そりゃ着ますよ…というか、何故にして今! 此処で! 態々言うのでしょうか!?」

 

 そうそう、メガネ…。伊達とはいえ、貴方に対してあそこまでの効力があるとは…正直驚きました。

 

「え?……ま…まぁ…すいません」

 

 オーバル? とかボス…トン? とか? ネガネの種類があそこまであるとは…知りませんでした。

 しかし…確かにメガネも悪くないですね…。カチューシャの可愛らしい写真を、たくさん撮る事ができましたしね。

 カチューシャと私、二人そろって、ある意味で隆史さんにおもちゃに…。

 

「言い方っ!! 勘弁してください!!」

 

 あ、しっかりと今も持っていますよ?

 

 つけましょうか?

 

「ぜひっ!! あ、いえ…すいません。…後っ! あ…後でお願いします」

 

 そうですね…。

 

「 二人きりの時の方が、都合が宜しいでしょうしね 」

 

「なんで今、態々強調して言ったんですか!!??」

 

 …都合…宜しいでしょう?

 

「なんで、二回…って、近い! 近い近い!!」

 

 …え? それは…その後の事と同じではないのですか?

 

「…はい? …は!? ま…まさか…」

 

 ホテ…むぐっ。

 

「何を口走ろうとしてるんですか!? はっ…! ワザと…ワザとですね!?」

 

 …もがもが。

 

 

 

 

 △▽△▽

 

 

 

 ファッショングラス…とでも、いうのだろう。

 伊達メガネだけでも、今のご時世かなりの種類と数があった。

 何をどう思って、今日この日に…態々メガネ…いや、嬉しいけど…ね?

 まぁ…余りはしゃぐと、ドン引かれるだけだと思い、かなりセーブしたので大丈夫だろう。

 

 むしろ、ノンナさんの方が凄かった…。

 

 ほぼ無言…。

 

 そう、無言で…カチューシャの写真を撮りまくっていた。

 

 ボストン…淵無し…オーバル。ここの3種基本の物を、次々に掛けてくれるカチューシャ。

 そして、掛ける度に…何処から出した、その一眼カメラ…と、突っ込む気力が失せる位にカシャカシャ…。もはや写真を撮る事を隠す気もなかったのだろうな…。

 店員さんの引きつった笑顔は忘れない…。

 

 

『 そういえば、タカーシャ 』カシャカシャ…ハァハァ

『 んぁ? 』

『 随分とノンナのも、あっさりと決めたわよね? 』ハァハァ…カシャカシャ!

『 そうだな、ほぼ確定していたからな。淵なし! 後、プラウダらしくレッドフレーム・オーバルッ!! 』

『 … 』カシャカシャッ!

『 …ふっ…今のカチューシャとお揃いだな…。それが? 』

『 い…いえ…えっと…なに? 前から何が似合いそうかとか? …想像してたの? 』…カシャカシャカシャカシャ

『 …な…なんか、言い方に棘があるな…。そりゃ…思いつく時とかあったけど… 』

『 ふ~~…ん。ちょっとキモイわ 』カシャ! …カシャカシャカシャカシャ

『 いや、ちょっと待ってくれ。だから、思いつく時もあったという話です。特段その様な事をいつも考えていた訳ではございませんよ? 』

 

『 言い訳が長い 』カシャカシャカシャカシャ

 

『……』

『 はぁ~…まぁいいけど…。んじゃ何? ダージリンとか、あの小っこいのにも似合いそうなの…とか、あるの? 』……

 

『 無 論 』

 

『『 ……… 』』

 

『 …え、なに? 』

『 ノンナ、もういいわ。時間よ。出ましょう 』

『 そうですね。他の女はどうでもいいです。…この話は終わりです 』

『 … 』オンナッテ…

 

 …。

 

 聞かれたから答えたのに…何故か二人、揃って頬を膨らませた…。

 

 ま…まぁ、すぐにノンナさんも…

 

『 メガネ…。盲点でした…普段付けている方も多いというのに…これ一つで、カチューシャの魅力が此処まで引き出されるとは… 』

 

 とか…ホクホクした顔で、機嫌が良くなったから、大丈夫だとは思うけど…。

 

 …で、だ。

 

 カチューシャが言ったように、本当に時間だったようだ。そのカチューシャには、戦車道の関係での仕事が残っていたらしい。

 まぁ…主に昨晩の、無茶なヘリ運用の後始末があるとか何とか言っていたが…実際はどうだったんだろう?

 昼食を済ませると「そろそろ行くわ!」…と、シャッピングモール正面玄関に横付けされた、迎えの車に乗って行ってしまった。

 それは何時もの様…あの店で別れる時みたく、あっさりと…手を挙げて…。

 

 今思えば、カチューシャなりに気を使ってくれたのだろうか?

 

 …ノンナさんは、彼女に同行していかなかった。

 

 何時も大体一緒に行動している二人だ。カチューシャに仕事が残っているのならば、それに同行してもおかしくはない。

 しかし、カチューシャに同行する事もなく、俺と一緒にカチューシャを見送った。

 

 そして俺の横井はそれなりに量が多い荷物…というか、服。

 

 ノンナさんが残ってくれたとはいえ、そのまま観光という訳にも行かないので、彼女が用意していくれていると言っていたホテルに荷物を置きに行こう。

 …と、ノンナさんが提案してくれた。…それを手伝うと付いてくると言い、実際に付いてきた彼女。

 そして今は、ノンナさんとの二人きりの状態で、昼下がりにホテルにいるこの現状。

 

 一瞬、何故か…行動を誘導されている様な気がしたのは何故だろうか…。

 

 ま…まぁ、そのホテルの一室。俺の宿泊予定の部屋へ向かう最中、エレベーター内で…。

 

『 …一つお願いがあります 』

『 え…? あ、はい。なんでしょう? 』

『 そ…その。手を… 』

『 手? 』

 

 エレベーターという、ある意味で誰にも見られない個室。そこに入るやいなや、そんなお願いをされてしまった。

 ちょっと…意外だった。彼女はそう言った事は淡泊…というか、あまりベタベタするのを好まないタイプだと思っていたからだ。

 しかし聞いてみれば、俺が先ほど思わず握ってしまった手と手。それが余りにも心地良いと、そう感じたそうだ。

 プラウダ高校学園艦での彼女の知名度と、制服姿であるのもあり、此処までの道中ではこんな事を頼めなかった…そうだ。

 

 昨晩それ以上の事をしていたとしても、ソレはソレ。コレはコレ…と、うっすらと赤くした耳のまま、とんでもない言葉と共に、上目遣いでお願いされてしまいました。

 それも照れ隠しなのだろうな。言葉で了承をするよりも、手に持っていた荷物を下へと置き、行動で了承した。

 少し汗ばんだ手が触れ、そして握り合う。…握った直後、顔を背け俯いてしまったので…満足頂いているとしますか。

 

 …これが恋人…と、いう関係なのだろうな。

 まだ一日しか経っていないが、今までの関係ならば考えられない彼女の行動が、それを一層認識させてくれる。

 

 そして、そのままの状態で到着した宿泊予定の部屋。

 

 変な空気だった。いや…まぁ…悪い空気ではないが、変に緊張してしまう。

 昼間とはいえ…荷物を置きに来ただけとはいえ…今現状、彼女が置かれている状況というのは…彼女もまた理解してくれているとは思う。

 

 …。

 

 時間がない…と、ノンナさんもノンナさんで、焦っていた様だし…。

 

 …。

 

 荷物…置くだけ…済むのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 ▽

 

 

 

 

 

 

 …と、思っていました。

 

 

 

 狭い室内。

 

 そこからは、甘く…官能的な声と音が、響き渡る。

 

 バツバツと、汗を含んだ肌と肌が、何度もぶつかる音。

 

 それに合わせて、響く喘ぎ声…。

 

 それが飽きる事もなく、何度も何度もリピートしている。

 

 何度も何度も…。

 

 そして思う…。

 

 甘く溶ける様な声が聞こえる先を見つめて思う…。

 

 

 

 

 

 

 ここは…地獄だ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふむ」

 

 

 

 

 

 

 聞こえてくる先…。

 

 

 

 それは、ノンナさんのノートパソコン…。

 

 

 

 

「一つお聞きしたのですが…」

 

「は…はい」

 

「…隆史さんの所持されている動画は、何故こうも「人妻物」が多いのでしょうか?」

 

「 」

 

 はい…ベットに仲良く座っています。

 

 はい……テーブルに置かれたノートパソコンを、これまた二人仲良く眺めています。

 

 はい………先ほど購入した…淵無しのメガネをさっそく掛けながら…あからさまに勉強しましょう的な雰囲気…。

 

 似合う…確かに悶えそうになる程に、彼女にはソレが似合うが、使用目的でなんかすっごい嬉しくないっ!!!

 

 数分前…室内へ到着すると、彼女はおもむろに、手に持っていたバックよりノートパソコンを取り出した。

 …それ持って行動してたんすか…とか、心の中で突っ込んだが、んな事どうでも良くなる事が始まった…。

 

『 では隆史さん。隣に座ってください 』

『 はい? 』

 

 テキパキとノートパソコンをパカッ…と開け、準備を始めるノンナさん。

 何故だろう…何故、ここまで準備が良いのでしょう…か? 予め、こうなる事が分かっていたかの様な…。

 あ…。

 スリープ状態だったのか、その画面はすぐに立ち上がり…綺麗に整理されている、ディスクトップ画面が映った。

 

 あ…はい。壁紙が、最後に撮った写真だった。

 あの店の前、おやっさんに撮って貰ったカチューシャとノンナさん。そして俺の3人の写真。

 

 …なんて、感傷的になる暇すらなかったです…。

 

『  』

 

 動くカーソルが目に入り…進む先にあるフォルダー…。そのフォルダー名。

 

 

【 重要:隆史さん秘蔵物 矯正案件資料 】

 

 

 …死にたくなった。

 

『 …あ、あの…ノンナさん? 』

『 なんでしょう? 』

 

 

 無表情でカタカタと、キーボードをタイプしている…あ、パスワード付きなんすね…。

 先ほどまでの初々しい彼女は、何処にもいない!! またすっげぇ無表情なのが、こえぇぇ!

 いや、一瞬でそのフォルダ内容が予想がついたけど! と言いますか!? なんで…えっ!? は!?

 

『 隆史さんの秘蔵フォルダを、拝見したと既に言いませんでしたか? 』

 

 …と、俺の顔を見て…どこか嬉しそうな顔と声色に変わった…。

 

『 流石に入手してるとは思いませんよ!! というか、どうやって!?』

 

 ノンナさんの、俺の質問に対する答えが少々的外れの様な言葉だった。

 

 …だったが、全てが繋がった。簡潔な…全てが分かる一言…が…。

 

 

 

『 …隆史さんのお母様は、プラウダ高校で護身術の講師として招かれてます 』

 

『   』

 

 

 あっっっのぉぉ!! ババァァぁぁあああああーー!!!!

 

 やるっ!! あのババァは、確実に面白そうの思い付きで、息子のプライベートを平気で売る!!

 

 何をどう思ってかは知らんが、ふざけんなぁぁぁ!!

 

『 …隆史さん 』

『 はっ!! 』

 

 そのまま彼女は、下に置いていたバッグから小箱を取り出して…そのノーパソの横に置いた…って…え~…。

 

『 避妊具というのは、これで合っていますか? 』

『 …… 』

 

 …。

 

『 …念の為、先ほど購入しておきました 』

『  』

『 店員の方が女性で良かったです 』

 

 いやもう…言葉もなかった。

 何時の間に…というか、えっと…コレ見た後…? ながら?

 何この行動力…いや、そういう人だというのは、分かっちゃいたが…エー…。

 

 

 

『 はい、では検証です 』

 

 

 

 …。

 

 

 ………その一言で始まった検証会…上映会。

 

 ま…言い方なんぞ、なんでもいい…。

 

 恋人関係となった女性から、性癖全壊…基、全開の動画、画像集を真横で見させられているこの現状…。

 

 

 地獄…それ以外の言葉が見つからない…。

 

 

 死にたい…。

 

 

「ノ…ノンナさんが…人妻物とか言わないでください」

 

「……答えになっていませんけど?」

 

 

 また…淡々と喋るので…余計に辛い…。

 

「ふむ…この一覧を見る限り…今日、私は少し覚悟はしていたのですが」

 

「…いや、覚悟って」

 

 またカーソルを動かした…って!!

 

「いえ…それでもまだ、さすがに外は…」

 

 ああああぁぁぁ!! 

 

「しませんよっ!!」

 

「てっきりショッピングモールで、カチューシャの目を盗んで、暗がりにでも連れ込まれるかとばかり…この…トイレとか…」

 

「話しながら動画再生するのやめて下さい!! ノンナさんの中の俺って、どうなってんですか!?」

 

「え…でも、結構な数…」

 

「ぐっ…がっ!!」

 

「…後、高確率でメガネ…。え…あっ? これ…何処に入って…え…おし…」

 

「聞いてください! 勘弁してください! もういっそ、ひと思いに殺してください!!」

 

 

 しぬ…しんでしまう。

 

 何がってまず、心が死んでしまいます…。

 

 真顔で、マジマジと見てないでください…。

 

「ええと…では、隆史さん」

「ナンザンショ?」

 

「あの…これは、まさかお尻に…」

「タブンソウデショウ」

 

「この方は、何故…え…えっ!? 3人っ!?」

「ソウイウノガスキナカタモ、ヨノナカニハ、イルノデハナイデショウカ?」

 

「この方は…え…何処で…えっ!? 学校!?」

「イエ、ソコハウチュウデス」

 

 なに? ほんっとに、何なのこの状況は…。

 

 そこからしばらくは、動画の内容に対する質問を淡々としてくる彼女に対して…多分、俺の目からハイライトさんは逃げ出しただろう…。

 しかし、止めるに止めれないし…逃げるに逃げれない…。

 

 しばらくこの拷問のような…否、拷問の時間が続いた…。

 

「 」

 

 意識を完全に飛ばしていたので気が付かなかったが、すでに一つの動画が終わり、再生画面が真っ黒になっていた。

 …どのくらい時間が経ったのだろう…か。

 まぁ…動画も飛ばし飛ばしで見ていた様で、パソコンの画面の時計で確認すると余り時間は経過していないようだ。

 

「…隆史さん」

 

「ナンデショウ?」

 

 表情が変わらないノンナさんが、そのノートパソコンを静かに閉じた。そのまま俺をジッ…と見ながら声を掛けてきた…。

 ノートパソコンが閉じられた事で、この拷問が終わったかと少し安堵したが…考えてみれば、声を掛けてきたと言うことは…これから尋問でしょうか?

 

「此処までは、隆史さんの趣味趣向の確認でした」

 

「…ハイ」

 

 ソウデショウネ…質問される度に死にたくなりましたから…。

 

「それを踏まえて…ですね? 隆史さん」

 

「…ハイ」

 

「…私に何か、して欲しい事はありますか?」

 

「…ハイ…は!?」

 

 思わず聞き返してしまった。

 うっすら頬を赤く染めたまま…真剣な眼差しで、俺の目を見ている彼女と目が合った…。

 

 え…してほしい事?

 

「私も女です。…この様な動画を見るのに抵抗があるに決まっています。…ですが、貴方の趣向を多少なりとも理解したく…努力は、怠りたくありません」

 

「…あのノンナさん。真面目なのは良いですけど…どっか間違った方向に行ってませんか?」

 

 はい。素直な感想を口にしました…。

 そうだよなぁ…さすがに経験も知識も少ない女性が見る類の動画じゃなかったよな…。

 しかも俺と一緒に見るとか…恥ずかしいに決まっている。根が真面目な彼女が出した間違った行動…というか、答えがアレですかい。

 

「まっ…まだ、外とかは無理ですが…ど…努力は…」

 

「……あの…無理しないで下さい…自分で言うのはアレですが…かなり特殊な部類ですから…」

 

「…そうですか…隆史さんは特殊…」

 

「違いますよ!? …そ…その…あぁ言った類の動画って、基本的にフィクションですからね!? 実録! …とか書いてあっても、大体やらせですから真に受けないで下さいね!?」

 

「……」

 

「そもそも、複数のだって…こう言っちゃなんですが、アレも男用に…要はアレ用にあるだけで、特段したいとかそういった事ではなくっ!!」

 

「…詳しい」

 

「」

 

 あぁ…もう、どうすれば…。

 

「…それでは、特に隆史さんからの希望は無いと…」

 

「……」

 

 …。

 

 ちょっと待てよ。

 

 アレら見ても、こう言ってくれる…と言う事は…特に嫌われたりとかはされていない…と。まぁ…確実に呆れられてはいると思うが…。

 ある意味で、性癖がしょっぱなからバレていると言うのは、今後やりやすくなっていないだろうか?

 …こう言ってくれる彼女に対して、無茶はしたくない…したくはないが…希望…リクエスト…ォォ…。

 

「ひ…」

 

「ひ?」

 

「一つ…だけ…」

 

「…なんでしょう?」

 

 はっ…。まぁ…彼女からすれば、抵抗があるかもしれない…コンプレックスだったらしいし…。

 それでもっ!! せめてこの初回に言っておけば! 後々の会話の選択肢が見えてくるだろう!!

 

 …まぁ…絶対に怒られるか…嫌がるだろうなぁ…。

 

「そ…その…挟んで欲しく…」

 

「…挟む?」

 

 怪訝な顔をされましたね…。

 

 よしっ!! ここは男らしく玉砕しようかぁ!!

 

「…む…胸で…」

 

「………」

 

 あ…。

 

 やっぱり…すげぇ目が鋭くなった…。

 

「……はぁー…」

 

 大きくため息を吐いて、その場に立ち上がってしまった…。

 こちらを向き…見下ろす様に目線を送って来ましたね…。

 

「…男性と言うのは…全く」

 

 あぁ…やっぱり呆れらた…って…え!?

 

 そのまま、ポチポチと…制服の前…真っ赤なちょっと変わったワイシャツのボタンを外し始めた…。

 

「あの…ノンナさん…? あの…」

 

「知人に聞きまして…あぁ言った動画を見せた方が、男性はその気になりやすいと…」

 

「はぁ!?」

 

「確かにそうでした…まったく。確かに検証をも兼ねてはいたのですが…奥手な隆史さんが、こうもアッサリとその気になったのは…少々以外でした」

 

「はい!?」

 

「……また私に気を使って、手を出そうとはしないと思いましたから」

 

 制服のボタンを全て外し終え…淡々と俺を見下ろしながら…遠回しに言っている…。

 この状況で動画を見せたのも…そういう事…か…。

 

「あの…何となく分かりました…けど、これじゃムードも何も、あったもんじゃ…」

 

「目的の為に、そこには目を瞑ります」

 

「……目的って」

 

 真っ赤なワイシャツ姿。首から下…バックリと割れ、胸の谷間が強烈にその存在感を見せつけてくる…。

 青いレースのブラジャーがぁ…。

 

「では…」

 

 プチッ…と、音を出し…その下着が左右に割れた。フロントホックが解放され…連動して胸も一緒に解放された。

 音でも出しそうな程…その圧倒的な重量感を持つ胸が、重力に引かれて…揺れ跳ねた…。

 

「な…何故でしょう…。肌を晒すより…下着姿を見られる方が恥ずかしい…。サイズが大きと…碌なデザインが無いからでしょうか?」

 

 …コ…コメントに困る…。

 しかし真っ白い肌と対照的な、濃い赤と青…。思わず見入ってしまう…。

 本来なら下着姿を褒めたりとかしてあげた方が良いのだろうが…。

 

「では…隆史さんも下を脱いでください…」

 

「えっ…は?」

 

 えっと…マジでこのまま…? いや、ここで逃げたり余計な事を言ってしまったら、現状に至るまでの計画をしたノンナさんに恥を欠かせて…というか、本気で計画してたんだな…この人。

 真面目な性格とかが、変な方向に暴走してる気がする…。

 

「は…初めてですので、至らぬ点もあるでしょうが…」

 

 正直…断りたくない…。確かにあの動画のお陰で…まぁ…はい。

 そうだ…な。俺も腹を括ろう…彼女にちゃんと…って、アレ? 挟むってだけで…ここまで…って事は…。

 

「いや…あの、意味分かったんですか?」

 

「………胸の大きな女性が多かったですからね。加えて、ほぼ高確率で収録されてましたから」

 

 …声が…急に冷たくなった。

 

 ストン…と、喋りながらもスカートを落としたノンナさん。

 上の下着とセットな青いレースの下着が見える…。

 

 わ…ワイシャツ一枚…前を全開……更には、メガネのノンナさん…。

 

 り…理性が持ちそうもない…。

 

 言われた通り、ズボンを脱いでもいい…がぁぁ…。

 

 が…我慢…。

 

 だから…その勘違いを正し…正解を…。

 

「ち…違います、ノンナさん」

 

「…はい?」

 

「それを挟んで欲しいとは当然思いますが、今回は違います」

 

「…違う? …では、何を…?」

 

 

 

 

 

「 顔 を ! ! 」

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

 …間髪入れずに即答した…。

 あ…久しぶりにゴミを見る目をされてしまったぁぁ…。

 

 ぶっちゃけた話、パイズリして欲しい!! してほしいっ…がぁぁ…。

 多分…この機会を逃したら…ノンナさんは、二度としてくれないだろう…。

 

「…やはり隆史さんは、特殊ではないですか」

 

「ちっ…違いますっ! 男ならみな憧れる恒例行事の様なモノ!!」

 

「…はぁぁぁ~~~~…」

 

 あ…大きくため息をまた吐かれた…。

 

「…男性というのは…まったく…何がそんなに良いのでしょうかね…まったく!」

 

 愚痴にも似た言葉を吐きながら…。

 

「…一度だけですよ?」

 

「ノ…ノンナさん?」

 

 俺の視界を真っ黒に染めたくれた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 初め…何を言い出すかと思ったら、こんな事でした…。

 

 本当に、こんな事をされて、何が良いのか…理解に苦しみます。

 

 しかし…私は違いました…。

 

「 」

 

 胸の中心を彼の顔に着け、抱きしめるように胸で堤んでみました。

 無駄に大きくなってしまった為に、うまくいかなかったので、両腕で彼の頭を胸と一緒に抱きしめました。

 

 そして思います。

 

 

 

 …こ…これは良い…。

 

 これは良いですね!

 

 胸、顔を挟む…と言いますか、頭を挟むという行為…。

 私からすれば、彼の頭を抱きしめる形…。

 

 ただ抱きしめるのとは違った感情が生まれます…。胸の中の…私の腕の中に彼がいる…。

 子供の様な隆史さん…。すべてが私の腕の中…。

 

 無意識に腕の力が強くなってしまいますね…これは。ギュッ…と抱きしめるだけだと言うのに、こうも違う…。

 むっ…少し隆史さんが動きますね…もう少し、大人しくしていてください。

 

「ッッ!!」

 

 あぁ…良い。…本当にこれは良い…。

 

 母性…とでも言うのでしょうか? カチューシャを抱きしめたいという思いとはまた違う…。

 胸の中で甘えるような彼が、非常に愛おしく感じてしまう…。

 

「グッ…ゥゥ…」

 

 …。

 

 ……。

 

 ………。

 

 

 …ぁぁ…。

 

「っっはぁぁぁ!!」

 

 む…胸の中で、強引に上を向いた彼が、その胸の中から顔を出しました。

 

「し…死ぬかと思った……」

 

「…どうしました?」

 

「い…息ができなかった…」

 

 息?

 

「ノンナさんの肌が隙間なく埋めるから…こう…マジで死ぬかと…」

 

「…そうですか。ですがもう少し、こうしていて良いですか?」

 

「…あの…俺の話、聞いてました?」

 

「…そうですか。ですがもう少し、こうしていて良いですか?」

 

「…聞いてください」

 

 …。

 

 まだ…後少し…と、隆史さんの顔を抱きしめていたかったのですが…。

 もぞもぞと少し息苦しそうに…それでもいつもの様に、いつもの少し困った笑顔で、私を胸の中から見つめてきた彼と目が合った瞬間…。

 

 母性が、愛情に変わり…気が付けば彼の唇に、また自ら唇を合わせていました…。

 

 …。

 

 ここまでの経緯を考えると、確かに雰囲気など…ムードと呼ばれる物は微塵もなく…。

 

 それでも…。

 

 えぇ…それでもです。

 

 唇を合わせた後に、彼から私を積極的に求めてくれたのは…嬉しかった…。

 

 

 

 

 

 △▽△▽

 

 

 

 正直に言いますと、いきなり胸で顔を挟んでくれと言われた時…何を考えているのだろう…この人は…とも思いましたけどね?

 

「」

 

 えぇ…アレは…本当にとても良かった…。

 

「 」

 

 今日もアレ…しても良いでしょうか?

 

「  」

 

 流石に、ここでは無理ですが…と、隆史さん?

 

「   」

 

 どうしたのでしょうか? 汗がすごいですよ?

 

「…あの…ノンナさん…ワザと…。やっぱりワザと言ってますよね!?」

 

 

 え? そうですよ?

 

 

「  」

 

 

 

 

 △▽△▽

 

 

 

 

 う…うん。

 

 本当に、彼女がノートパソコンを取り出してから…生きた心地がしなかった…。

 

 思い切って言ったリクエストも、何故か最終的には彼女は気に入ったのも謎だ。

 

 しかし…一度、唇を合わせた瞬間…彼女の態度が豹変した。

 

 態度…というと、少し語弊があるのかもしれないが…何というのか…感情的になった? いや、違う。

 

 今まで我慢していた事が溢れだした…といった感じだろうか?

 

 そう…普段のクールな彼女からは想像が付き難い程、ノンナさんの本質は…情熱的。

 

 唇を合わせると、舐める様に吸い付き…覚えたての様な、ぎこちない動きをするけど…それでも俺を求める様に舌が動き回る。

 唾液が混ざる音が、静かな室内に響く。

 荒い息が、何度も繰り返し、目の前から吐かれる。

 

 何度も歯がぶつかる。少し痛い程に唇を吸われ…時に優しく触れる。

 

 時間がない。その焦りも見えるが、そこからは殆ど話をする為には、口を開かなかった。

 

 ただ求められ…それに応える様に求める。

 

 どのくらいの時間を、ただその行為を繰り返したか…分からない。

 

 小さく、呻く様な甘い息遣い。

 

 彼女の髪が、汗と唾液で頬にへばりつく…。

 まだ明るいというのに、変に室内が暗く感じた。

 

「はっ…ぁっ…んっ…つっ…ちゅ…」

 

 彼女の声が、言葉を作ったのが…次の行動に移った時だ。

 抱きしめられながらも、唇を合わせる行為に、俺から…行動で終わりを告げた。

 

 顔を突然離し、体を離す為に、彼女の肩に手を置いた。

 ボー…としたノンナさんの表情は、妙に艶っぽく、今までに見た事がないほどに…綺麗だった。

 

 手首をつかみ、ベットへと押し倒す。

 その行動に彼女もすぐに理解してくれた様で、特に抵抗もなく誘導されるがままに横たわった。

 重力に引かれる乳房が、内側からワイシャツを外側へと開く。

 

 小さく膝を折り曲げ…俺をジッ…と見つめてくる彼女を見下ろす。

 真っ白な肌…その肢体を強調するかの様な、真っ赤なワイシャツ。

 

 彼女の体のラインを確認するかの様に、掌で撫でる。シュッ…とした肌が擦れる音を何度も立てると、小さく…それでも何度も声を上げた。

 

 …。

 

 ……。

 

 で…思った。

 

 両脚を一気に持ち上げ、頭を彼女の…まぁ、股間へと潜り込ませると…。

 

 

 すごい力で髪を引っ張られた…。

 

 つか、痛い。

 

「っっ!? たっかっ!!??」

 

 …彼女は…どうにも秘部を見られ…触れられる事を非常に恥ずかしがる。

 そりゃ確かに恥ずかしいとは思うけど…ここまで来ても、更に恥ずかしがるから、それが普段の彼女とのギャップを感じ、余計にそそる。

 メガネも掛けているから、また余計にすっごい…。

 

「でっ…ですから、それは必要ある行為なんっ…ひゃっ!!」

 

 ノンナさんが…可愛い悲鳴を上げるが、俺はその問いに答えない。

 

 真っ青な下着をずらし、その恥部にへと舌を這わせる。

 

 見なくとも分かる程に、ベットのシーツを強く握りしめているのが分かる。それは何かに我慢している様だった。

 恥部…。先ほどまでの行為で、下着に染みを作る程に熟していた。…表現がちょっとおっさん臭いけど…まぁいいや。

 

 …膣口の周りを丁寧に…それこそ先ほどの様に、彼女の形をなぞる様に舌先を這わせる。

 2回目だし…まぁ…まだ少し痛みを感じるかもしれない。

 ならば…と、それこそ念入りに愛撫を繰り返す。

 

「汚い…んっ…でぇ…あっ!」

 

 何かを言おうとするが、それは喘ぎ声に殺される。

 音を聞かせる様に、グチュグチュと…指で優しく撫でまわす…。

 

 ビクン!! …と、お腹を突き上げ、体を捩じらす…。しかし逃げれないように、彼女の体を引き寄せる。

 

「あっ…はっ!! あっ!!」

 

 それを何度も。

 

「恥ずかしっ!! 声っ…んっ!! あっ!!」

 

 それを何度も。

 

「ひゃっ!! 中にっ!!?? ああぁ!!」

 

 唾液で肌がふやける程に繰り返す。

 

 彼女が俺に対して…特にキスを求めてくる程に…時間を掛けて…何度も。

 

 

 …。

 

 ……。

 

 

 気が付けば、股間が…痛い位に膨張している。

 

 ある意味で、非日常感が物凄かった…。久しぶりの行為もそうだが、彼女との関係が…まぁ…改めて実感しているのもあるのだろう。

 見知った顔…それこそ、ほぼ毎日顔を合わせていたノンナさん。

 そういや、最初…ドロップキックから始まったな…。

 すげぇ出会い方だったわ、本当に…。

 

「はっ…はっ…た…隆史さんは…」

 

 鋭い目つきで睨まれて…初めは、本気で嫌われていたんだろうな…。

 

「…意地が…悪い…です…」

 

 彼女の脚を、もう一度少し…上げる。

 その行為に彼女は力なく、ただ…なされるがまま。それでも、どこか…満足げな顔をしている。

 

「あ…あの様な…声…。私も出すのですね…」

 

 はっ…。今は手で口元を隠し、少々恨みがましい目を向けてくれてる。

 

「…昔からの反動…でしょうか?」

 

「はい?」

 

 ノートパソコンを置いていたテーブルを、手探りでその横に先ほど置かれていた箱を探していると、そんな事を口にした。

 

 …反動?

 

「小さな頃から、体の成長が他の同級生よりも早かったお陰で…年相応に見られませんでした…」

 

 今度は、露わになった胸の頭を手で隠しながら、恥ずかしそうに…そして少し寂しそうに呟いた。

 

「…まぁ…何となく気持ちは分かりますよ? …俺もそうでしたから」

 

「ふふっ。そうでしょうね…想像が容易いです」

 

 これがノンナさんの素…なのだろうか? …所々子供の様な仕草を覗かせる様になったな。

 

「ですから…えぇ。やはりその反動でしょうね…貴方には変に甘えてしまいます。…何と言って良いか…少し難しいですけど…ね?」

 

「…それも何となく分かります」

 

 はっきりとその部分は口にしないが、恥ずかしがったりする仕草。少し拗ねたり…強く嫉妬したり。

 年相応に…いや、年齢よりもずっと年上に見られたりすると、周りの扱いも自然と見た目年齢に引き上げられる。

 だから彼女は、他人に甘えるよりも甘えられる。頼る事よりも頼られる…。そんな人生だったのだろう。

 

 同じ自分の欲求を…我慢していたそんな思いを、俺に漏らしてくれている…のだろうか?

 

 …なんだろう。

 

 変に…それがうれしく感じる。

 

 言葉にしなくとも、それがなんとなく伝わってくる。

 

 気が付けば、彼女はまた俺の首へと腕を回し、また唇を合わせてくる。

 

 その腕に力を入れ、俺を引き寄せる様に体重を掛けた。

 だからそれに応える…これは…まぁ…そういう事なんだろう…。

 

 体をずらし…脚を動かす。

 

 手に握っていた避妊具の封を切り、彼女からは見えないように、片手で装着していく。

 そのまま何も言わないで…唇を、舌を絡ませながら…ゆっくりと彼女の入り口へと…。

 愛液で滑りやすくなっているのと、丁寧に、更には丹念にした愛撫のお陰で、先端を押し付けると…ヌルッと滑り込む様に入った。

 一瞬、体が小さく跳ね、重ねている口から小さな吐息。

 少し入った先端が、グッ…締め上げ、侵入を拒んでいる様に感じる…が、それがまた気持ちが良い。

 

「んっ…! ふっ…!!」

 

 そのままゆっくりと…腰を押し込み…彼女へと入っていった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 初めは…まだ少し痛みがありました。

 

 愛撫…というのでしたよね? あの…下をこう…口で舐められるというのは…。

 アレは…正直、どうにかなりそうになる程に恥ずかしいですね…。隆史さんが何故か、嬉しそうにするのが非常に憎らしく思いますが。

 そのお陰…なのでしょう。その痛みもすぐに気にならなくなりました。

 お腹の中が内側から広がって行く感じ…が、ものすごく…違和感が…。

 

「大丈夫ですか?」

 

 …と、彼は心配して声を掛けてくれる。

 しかし、私は答えられなかった。

 

 もう…頭の中が真っ白で…。

 

 ゆっくりと彼が入って…来ているのですよね? 痛みとは別の感覚が強く湧き上がってくるので、混乱するばかりでした。

 喉から熱い息が何度も無意識に吐いてしまい…変な声が溢れて…あぁ…もう。

 一瞬頭を過ったのが、あのいやらしい動画。

 画面の中の女性の様な…その…呆けたような顔を、私もしてしまっているのでしょうか?

 

 返事が出来ないのを、彼がどう思ったのか…少し苦笑して、顔に手を添えてくれた。

 

 自然と彼を抱きしめる腕に力が入り、体を寄せてしまう。

 

 ゆっくりと動き出した彼は、体の内側を…こう…お腹の下を撫でるように動く。

 

 なんと言って良いか分からない感覚が、何度も押し寄せてくる…。

 

 …と、短時間ですが私が意識できたのは、こんな事だけ。

 

 彼の動きが徐々に早くなるにつれ…真っ白な頭の中が、さらに白一色に。

 

 思考を塗りつぶされてしまっていく…。

 

 何度か、途中…意識ができたというのが分かった時は、大体が体が硬直した時…光るように真っ白になった次の瞬間だけ。

 

 全てが心地よく…気持ちが楽になり…ずっとこうしていたいとリピートして繰り返す感想。

 

 

 全身を覆う気持ちよさを、ただ…感じていたい。

 

 

 私は、どの様な顔をしているのでしょうか?

 

 私は、どんな声を発しているのでしょうか?

 

 顔が熱く…喉も熱い。

 

 それでも…恥ずかしくとも、しばらくこの感覚を堪能したい。

 

 

 

 …。

 

 

 ………。

 

 

 

 …あっ。

 

 

 それはそうとして、アレら動画は、後で彼のパソコンより全て、削除してもらいましょう。

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 どの位の時間、彼女を抱いていただろうか。

 

 俺のサイズじゃ特にそうだろう。初めはまだ少し顔をしかめていた。

 全体が入った時…まだ二回目というのもあるだろう。締め付けが凄かった…。

 ゆっくりと何度か浅く動き、彼女が慣れるのを待とうとしたが…正直、避妊具をしているとはいえ、そのおかげで少し動かすだけでも気持ちよく…。すぐにいってしまいそうになる程に隙間なく締め付ける。

 

 何度か小さく動いているうちに、彼女の声質が変わった。

 少し苦しそうな声色が、段々甘い声色に。

 出来るだけと…念入りに愛撫したのが、ここでも幸いした。少しずつ快感を得られるようになっている。

 

 …。

 

 ……と、ここでも変に分析し始めた自分が、少々嫌になった。

 

 変な癖…の様なモノだろうが、さすがに酷いのではないのだろうか? …と。

 

 難しい…。

 

 彼女の体を心配すると、変に彼女を観察し、変化を考えてしまう。

 ただ、俺が好き勝手するのもまた、違うと思う…。

 

 そこでまた考え込んでしまう。

 考えながらも、ゆっくりと腰を動かしながらも彼女の顔を見下ろすと、彼女は涙目になりながらも俺の顔を…目を見続けてくれていた。

 

 …顔を腕で引き寄せ、口をまた重ねる。

 

 何度もそれの繰り返し。

 

 繰り返し、繰り返し…気が付けば、彼女の声は完全に甘い声に変っていた。

 

 その声が耳を刺激し、徐々に動きも早くなる。

 

 …俺の考えは杞憂だったのだろうか?

 

 理性とは何なのだろう?

 

 何が正解で、不正解か分からん。

 

 ノンナさんの行動に応える様に…いつの間にか…ただ彼女を貪欲に彼女を求めていた。

 

 

 …。

 

 

 事が終わり…少し冷静になると思いました。

 

 え…なに、ノンナさん。めっちゃエロい…とか、ただ単純に思ってしまったので、多分俺は最低だ…。

 

 彼女はどうにも、対面するのを好んだ。

 

 初め正常位…顔が見えるのが宜しいそうです。

 

 見下ろす彼女の白い肌が、何度も弾み、零れ落ちそうな胸が何度も揺れる。

 奥に当たる感触を何度か繰り返すと…多分…ノンナさんが果てた。

 体を捩じらせ、目を開き、少し混乱したかの様な顔をしていた。

 

 激しい息遣いと、俺を見上げる潤んだ瞳。

 

 …。

 

 それが切っ掛け。

 

 ぶっちゃけた話…理性が此処でぶっ飛んだのだろう。

 

 なんかもう…ここからが凄かった。

 

 昼過ぎ…当たりにホテルへと入ったと思う。

 

 何時間経ったか分からない程、それこそ夕食を取る事すら忘れ、お互い求め合う切っ掛けとなった。

 

 ロシア語と日本語…共に交じ合わせながら、彼女はただ求めてきた。

 

 もっと…もっと…と。

 

 ベットのシーツはくしゃくしゃに乱れていたが、それを気にする事もない。

 

 …。

 

 後背位。

 

 …これ…ノンナさんは、すっごい恥ずかしがった。

 俺が少し体を起こすと、繋がっている所が見えるからだそうだ。

 顔が見れないんで、何処を俺が見ているか分からないというのが、彼女のご不満でした。しかし! あのノンナさんが、恥ずかしがる仕草を堪能できるので俺は好きだ!

 彼女の汗を滲ませたお尻が、腰をぶつける度に揺れる。手を思いきり開き、揉みしだいていると、ある事に気が付いた。

 

 …ノンナさんの胸が見えない…。

 

 これ絶対に激しく揺れている! そう思わせる程の質量!

 それと目に映るのは、彼女の後頭部。…ノンナさんの蕩けた様な、顔が見えない…。

 しかし、それはそれで彼女の体の動きや声が、その状態が逆に官能的で…これはこれで捗った…なぁ…。

 

 騎乗位。

 

 …これは彼女は思いの外、お気に召した様だった。

 やはり顔を見れるというのは、安心するのだろうか? …下見上げる胸が凄かった。

 自ら動ける…主導権を取れるという意味も、彼女からすれば良いようだ。…下から見上げる胸は踊っていた。

 

 俺から良いようにされるがままというのは、悔しいと仰り…自ら腰を動かし始めるとかね…動画で動きは見たので、何となく分かったそうです。

 

 

 …。

 

 うん…。

 

 もう…ホテルの室内、全ての場所を使った。

 

 壁に手を付かせ、脚を持ちながら…彼女を抱き上げ…まぁ駅弁とかいう奴ですね。

 

 窓…テーブル。ソファー…。

 

 一瞬冷静になって、流石に休憩…とか思い一度浴室へと向かえば、彼女も一緒に入る。

 

 シャワーを浴びながらも、またそこで。

 

 キスをし、体をまさぐりあい…そしてまた始まる。

 

 彼女からのキスで、何度も再開する。

 

 

 

 …。

 

 俺も大概だと思うが…物凄く驚いた事が一つ…。

 

 

 そんな俺に、ノンナさんは全て応えきった…。

 

 

 この体…自分でも分かるくらいに絶倫体質だと思うのだけど、それにすべて耐えきった。

 

 いや? むしろまだ足りないと思わせる程だ。

 

 

 

 …そして気が付けば、そのまま寝てしまった。

 

 ベットで抱き合い、繋がりあったまま。

 

 一度、夜中に目が覚めので、それで気が付いた。

 

 横に…目の前に、彼女の寝顔があったから。

 

 小さく寝息を繰り返し、俺の腕を枕にしながら…俺の額に額を当てて。

 

 

 こうして…プラウダ高校学園艦での最後の日が、何時の間にか終わっていた。

 

 

 

 

 

 

 ▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 …と、後でカチューシャに報告された時は驚きました

 

「 」

 

 本当は私も、お見送りに行きたかったのですが…まぁ、彼女! として…いえ、恋人! として…電話もメールもいくらでもできますしね。事実その後、すぐにしましたのよね?

 

「   」

 

 はい。ですから本日…本当に本当にお久しぶりにお会いできて…まぁ、色々と我慢が出来ないかもしれませんが…嬉しくて仕方がありません

 あ、後…あのエッチな動画は、しっかりと消去してくれましたか?

 

「      」

 

 あら隆史さん…どうされましたか?

 

「いい加減にして下さいっ!! 隆史さんっ!! 何を何時までも呆けているのですかっ!!」

 

「はっ!!」

 

 …あら、お邪魔虫

 

「…どちらが…ですか。私が用があるのは隆史さんだけです」

 

 そうですか。私も彼に…そう「彼」に用があるだけです。

 

「そのワザとらしい話し方も、そろそろ止めて下さい。不愉快です」

 

「あの…華さん…?」

 

「…何ですか不埒者」

 

「 」

 

「人(・)の(・)恋(・)人(・)を、人気のない場所へ誘い込もうとしている方に、人(・)の(・)恋(・)人(・)を不埒者呼ばわりされる謂れはありませんね」

 

「……………」

 

「はっ…華さん!? 顔っ!! 顔怖い!!」

 

「…結構。恋人…ですか。それはそれで、事実でしょうから? 私から何も申し上げませんが隆史さん」

 

「流れる様に呼びましたね…なんですか…」

 

「ワザとらしく、私に聞かせる様に、態々先程から口を開いてるこの方と、お付き合いされているのは理解しました」

 

「…テント前で言った方が宜しかったでしょうか?」

「ノンナさんっ! ちょっと…いや、ちょっと黙ってて…」

「…分かりました」

 

「……どうするのですか」

 

「…えっと…はい?」

 

「みほさん然り、今の…何角関係にまでなってる、この泥沼状態をどうするおつもりですか…」

「…そんな事、貴女には関係ないと思いますが? 部外者でしょう?」

「貴女には聞いておりません」

 

「 」エット…エー

 

「そもそも、無線機でも隆史さんは私の事を言っていたのに、何を今さら…」

「……」

「………ハッ」

「……」イラッ!

「正直に申し上げますと、西住姉妹とはその内に相見えなければならないとは、考えてはいましたが…貴女は何なのでしょう? 横恋慕ですか? …見っともない」

「…はい? 横恋慕? 私は皆さんの気持ちを尊重しているだけです。私は彼に対して異性と感じておりません」

 

「…は…華さんが此処まで感情的になるなんて…」

 

「…白々しい」

「しっ…失礼な方ですね! 良いですか!?」

「何でしょう?」

「たっ…確かに、殿方としての嫌悪感はございませんが」

「…が?」

 

「…い、一応止めとくか…はっ…華さん!」

 

「転校初日でナンパしたり」

「………隆史さん」

「 」

 

「みほさんのお母様に締まりのない顔を披露したり」

「……タカシサン?」

「 」

 

「そのナンパした沙織さん助けたり……あ、これは別に…あ、でも誰彼構わず…」

「タカシサン、チョットオハナシガ」

「ノンナさんっ!? 近いっ!! 近い!!」

 

「………」

「ドウイウコトデショウカ? ナンパ? ヒトヅマ? アァ、ソレデアノドウガ」

「聞いてっ! お願いだから聞いてください!!」

 

 

「……異性として…異性と…」

 

「…まってっ!! 本気で待ってください!!」

 

「はい、待ちます。マチマスカラ、コッチニキナサイ」

 

「………」

 

「…あの…華さん? どうしました? あの…なんで近づて」

 

「……」

 

「……チッ」

 

「華さん…!? 華さん!!?? ノ…ノンナさんも!? なんっ…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 小さな連絡船。

 

 小さな…といっても学園艦から見れば小さく感じるだけ。…貨物なども載せる為に実際にはそれなりの大きさ。

 その甲板で、俺に肩車されたカチューシャが、俺の頭の上から口を開いた。

 

 …出航時間が間もなく訪れる。

 

 この船には乗らない、彼女は船から降りる時間でもある。

 

「んっとに、いいのかしらノンナ」

 

「…まぁ」

 

 朝。

 

 起きたら彼女はいなかった。

 

 代わりにメールが一通。置手紙…とかじゃないのは、時代かね…とか思ってしまった。

 …朝、寮にいない場合、色々と問題が出る為に、早朝目が覚めた時に帰ったの事。

 

 そして簡単な別れの挨拶。まぁ、別れ…とは少々違うかもしれませんがと、頭に一言入っていた。

 昨晩はカチューシャの気遣いで譲ってもらったので、本日はカチューシャの番だと言う。

 随分とあっさりしてると感じるかもしれませんが、顔を合わせると…また…でしょう? との事。

 

 …また…なんだろう。

 

 一瞬、寒気を感じたのは何でだろう…。

 普通ならうれしい事だと思うのですけど…。

 

「夏休みには青森に帰ってくるんでしょ?」

 

「ん? あぁその予定だ」

 

「まっ! そうよね! とーーーぜんよね!!」

 

「そっすね」

 

 肩車していて見えないが、言葉で何となく分かる。…胸を張ってるな。

 っと…いい加減、時間か。

 そのまま歩きながら、何となく可笑しいと笑ってしまいそうになる。…送られるはずの俺が、降船場へとカチューシャを送るか…。

 

「タカーシャ」

 

「んぁ?」

 

「タカーシャには、悪いけど…今年も私達が。…プラウダが優勝を頂くわよ」

 

「はっ。なんで俺に悪いんだよ」

 

 まほちゃん。…黒森峰との事を言っているんだろう。

 それに関しては、俺から言う事はない。

 

「どっちも応援してんだから、気にすんな」

 

「気にしちゃいないわよ。というか…どっちもっていい加減にやめなさいよ。ノンナが怒るわよ?」

 

「はっはー。大丈夫大丈夫」

 

「八方美人は己の立場を崩すわよ?」

 

「大丈夫だって、ノンナさんもそこら辺は理解してくれるって、言って………っっ!!??」

 

 な…なんだっ!? なんなんだ、今の怖気はっ!!??

 

 戦車道…での事じゃないよな…。

 

「タカーシャ? どうしたのよ」

 

「…い、いや…大丈夫」

 

「ん? …まぁいいけど。聖グロ連中に対し見たく…誰にでも良い顔しないでよ? タカーシャって、気が付いたら女に囲まれてる気がするからね」

 

「はい? それこそ大丈夫だろ…俺が、んな事にな…る…はず……」

 

 なんだ…この妙な悪寒は…。

 

「……ノンナ…怒るわよぉ? …本当に…どうなるか私にも分からないわよ?」コワイ

 

「……ぜ…善処します」コワイナ

 

 何故か、楽観的な事が言えなかった…。

 

 連絡船の出入り口。

 すぐその下が海の為だろう。潮の匂いが鼻に着く。

 学園艦と繋ぐ橋を前にすると、カチューシャが体を少し起こした。頭の上腹を乗せて、上から俺の顔を覗き込んできた。じっ…と俺の目を見る為に。

 

「つ…ついたぞ?」

 

 頭の上のカチューシャ声を掛けるが、彼女は動かない。

 

「タカーシャ」

 

「な…なに?」

 

 真剣な眼差しに変わると、睨みつけるような目が鋭い。

 

「…今回は、ノンナに譲ったわ。えぇ、しょうがないわ」

 

「はい?」

 

「だから私も、奪う程の気概は、見せないとダメだと思うの」

 

「…うん?」

 

「…ま、一言で言うと、負けっぱなしは私の性に合わないの。知ってるでしょ?」

 

「あ…あぁ、カチューシャ、負けず嫌いだしな…って、よく話が見えないんだけど…」

 

「…つまりこういう事よ」

 

 …。

 

 ……。

 

 あの…えっと。

 

 …は?

 

「…っと」

 

 呆然としてしまい…完全に固まってしまった俺から、彼女自らストンと降りた。

 

「…案外、覚悟を決めると…思ったより、恥ずかしくないわね。すんなりできたわ」

 

「………」

 

「ふ~。タカーシャ、良い? 私は「小さな暴君」…なんて、不愉快な二つ名なんて付けられるぐらいよ?」

 

「………ぉ」

 

「私はね、奪うのが大好きなの」

 

 …。

 

 せーの。

 

「ぉ…お前、何やってんの!??」

 

「何って…ノンナと同じことよ」

 

 はっ! …と、どこか誇らしげに言ってるけどな!?

 

 ま…前かがみのまま…逆さのまま…カチューシャが顔を合わせてきた。

 

 一瞬…一瞬だけ…だけ…どぉ…。

 

 指をこちらに指し…また胸を張って叫んだ。

 

 

「光栄に思いなさい! 私の初めてよ!!!」

 

 

 触れただけ…だけど!!

 

 逆さまのまま…口に…。

 

「つまりは、そーいう事よっ!!」

 

 そのまま音を立てながら、橋を渡り…って、耳真っ赤ですが?

 カチューシャは、学園艦への出入り口に立った。

 一瞬、こちらを振り向いて…。

 

「だから…次に会えるの…楽しみにしてあげぇぇ…ぇ…」

 

 …。

 

 今更になって恥ずかしくなったのか…その場にしゃがみこんだね…。

 

 顔を手で覆ってますね…。

 

「っっさいわねっ!!!」

 

 …。

 

 何も言ってませんがな…。

 

 うぅ…と、うめき声を上げながら一気に立ち上がり…。

 

「じゃっ…じゃーーねっ!! ピロシキッッッ!!!」

 

 …と、捨て台詞の様に叫び…カチューシャは、学園艦の中へと消えていった…。

 

 …。

 

 ………。

 

 ど…どうしたら…。

 

 湿っぽい別れよりかはマシだと…えっと…。

 

 

 えーーーー……。

 

 

 ノンナさんには…こりゃ…言えんな…。

 

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございました。
喘ぎセリフ無しで書こうと思ってやってみましたが、ないと…濡れ場…難しい。
イチャラブって、苦手だ…うまく書けない…。がっつりエロの方が慣れてしまった…。

ノンナさんの世界線ですので、続く人間関係…的な感じで終わらせてみました。
後…本編含め、各ヒロインには天敵が設定してあります。現時点で書いてあるのが。
みほ=エリカ 華さん=ノンナさん アッサムさん=カルパッチョさん ダー様=西さん

…といった具合です。

★追記更新★

そして、PCぶっ壊れていた関係で、消えていたと思っていた…続・ノンナの挿絵が…中途半端な途中保存状態で残っていたので…しかも、本文すら全書き直した為に、無いシーンの…更に今回の挿絵と被る構図だったので…どうしたものかと思ったのですが、まぁ…はい、せっかくですので宴編挿絵に加工で…って事で、今回の話とは合いませんが、一応供養おまけ絵。ハメ撮り風…。

【挿絵表示】



被害者追加アンケート

  • 澤さん
  • エリカ
  • 妙子さん
  • 柚子ちゃん
  • ダー様
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。