※この作品はR-18です。

転生者は平穏を望む ~ルートPINK~   作:白山葵

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微:ルートif ダージリン編
この小説は、ミカの事もありますけど…それなりに有名な考察を採用しています。


…はぁ…やっとこさ、投稿できた…。


※ルート壊 【宴編】※ もう女子会とは程遠いですっ!

「あの……ダージリンさん」

 

「何かしら?」

 

「…俺に話ってなんでしょうか? さっきから30分程、お茶しか飲んでいないのですが…」

 

 相変わらずと言って良いほど、この場所にコレは余りにも不釣り合い。

 ペコが用意した豪奢な椅子やテーブルは、彼の働いている飲食店の前では少々趣が違いすぎて、大分目立ってしまいますわね。

 それにこの場所は、港町特有の開けた場所な為に、とても遮蔽物が少ない。そんな場所に吹く風は強く、髪が少々乱れてしまいます。

 その少し乱れた前髪を、軽く指で整えながら、向かい合わせに座って頂いている男性へと目を合わせる。

 

「あら、私とのお茶会はお嫌かしら?」

「いや…嫌ではないのですが…まぁ、ちょっと…」

 

 一つ年下男の子…という言葉が、どう見て考えても不釣り合いにしか感じられない男性。

 私と二人きりという状況だというのが、どこか落ち着かないのか…初対面の時と少し感じが違う様に見えますわね。

 何故かそれが、どこか嬉しく感じてしまいます。その面持ちは、すこし引きつっている様にも見え、ティーカップを先ほどから、頻繁に口元に運んでいます。

 

「それか…緊張でも、しているのかしら?」

 

 それは緊張の為…とは、違うのでしょうが、そのような様子を見ていると、敢えてその言葉をだしたくもなるというもの…。

 

 

「緊張? あ…いや…そうじゃなくて…ですね」

「あら、そう? それは、少々残念ですわね」

「いや、残念って…」

 

 一口…紅茶を口に含むと、少し甘い風味と…香り。そして苦みが口内に染みわたる。

 手元のティーカップに少し視線を落とすと、自身で入れた琥珀色の液体が小さく揺れている。そう言えば……自分で自分の為に、紅茶を入れてみる事はあっても、最近誰かにお茶を入れると言う事が少なくなった気がします。

 正直に申し上げると…お茶の入れ方に置いては、私はペコに叶いませんから。お家での教育なのか…入学早々、脅かせてましたわね。

 他校の方には信じられないかもしれませんが、それは我が校の中では、大きなアドバンテージになる。私があの子を気に入った理由の一つでもありますしね。

 同じく、私の真似をするかの様に目の前の彼も口に含む。その大柄な体系のお陰で、随分とティーカップが、小さく、可愛らしいサイズに見えてしまうのに、口元が綻んでしまいそうになります。

 

「私は殿方と二人きりという状況に、余り慣れておりませんので? 少々緊張しているというのに」

「はは…緊張してる様には見えないですけど…」

「ふふ…ペコと一緒の時と、貴方の様子が、少々違う様に感じますが?」

「あ~…そうですか?」

 

 確かに人相は非常に…えぇ、失礼ですがお世辞にも良いとは言えません。しかしペコが言う様に愛想は確かに宜しい様ですわね。

 すこし嫌味にも似た私の言葉に、こうして少し困った様に笑うこの方を誘ったお茶会。簡単に言えば、少しお話がある…と。

 えぇ…先日彼を、手紙にてお誘いした…中止になってしまったお茶会ですわね。

 本来は中止になってしまったお茶会に出る為のマナー講座…という形だったというのに、気が付いたらペコは、普通に此処でのアフタヌーンティーを楽しんでおりました。

 そのお茶会に私も混ぜて頂こうと…ここで私も参加すると、ペコに言った通り…初対面のその後、確かに何度か私も参加させてもらいましたが…今回は本来の目的の為。

 …その為に、こうして見極めようと…二人きりの状況を作る為、今回、ペコ達には遠慮をしてもいました。

 

 数回参加したお茶会で、私が感じた事…。

 彼は確かに愛想は良い。接客業をされているお陰なのでしょうか? 彼は人との距離を適度に保つ。

 その割には、聞き上手…。それこそ会話の中で、余計な事まで喋ってしまいそうになる程に。

 えぇ…愚痴…なのでしょうね? あのペコがそれらしい事を彼にだけは臆面なく吐き出す。一瞬私やアッサムが居ると言うのに、思わず口にしてしまっていた。

 普段、彼女と彼は、なにを…どの様な話をしているか、興味を持ってしまう程に…アッサリと。

 私はペコとはまだ、それほど時間を共有してはいません。それでも私を慕い、紅茶の園に誘った後輩。その後輩の、そんな変化。………少し嫉妬にも近い感情を沸かせるには、十分な理由になりました。

 

 彼に興味を持ってしまった。

 

 彼女が、ノンナさん以外を…しかも男性を…自慢するというのが、本当に信じられませんでしたから。

 同じ学校の仲間ですら、ついてこれない者は切り捨て…逆らう者には容赦せず、完全な実力主義。

 

 傲慢にして横柄。

 

 彼女の少し子供じみた体格から、彼女は彼女で苦労してきたのでしょう。その性格は自衛。…その為の武器…鎧だったのかもしれません。しかし…その彼女は変わった。

 今の彼女。子供らしさが前面に押し出され、ただ可愛らしいだけですから。…まぁ、試合での彼女とのギャップに驚かされるくらいですわね。

 

 そして…あの、まほさん同様…鉄仮面と揶揄されるノンナさんを変えてしまった。

 人には見せませんでしたが、解る人には解ったと思います。あの終始、張り詰めていた彼女が…えぇ、此方もまた、劇的に変わったのです。

 あの彼女が、カチューシャにだけ見せる温和な笑顔を、誰に対しても見せ始め…えぇ…簡単に言えば雰囲気が少し、穏やかになったと。

 

 変わった二人は、それまでの体制を全面的に見直し、改革…と、他校まで言わしめる程にプラウダは内部から変化をさせた…。

 相変わらず「小さな暴君」と言われますが…それは今の彼女を知らないから、言える事なんだと思いますわ。

 …更には先に出向かせた、後輩まで変えしまった。可愛い後輩を盗られてしまった…と、思うのは…少々傲慢な考えでしょうか?

 

 えぇ…そんな変えてしまった、その原因。

 そんな彼に、興味を持たない方が。嘘ではないかしら?

 

 …ま、いきなり二人きりでお茶会を…なんて誘い文句では、警戒されても当然でしょうけど。

 とても分かりやすく、私を警戒したかの様な顔を向けて来てますわね。

 

 …さて、どうしましょう。

 

 色々と考えて見たものの、何をどう切り出した方がよろしいのでしょうか?

 …ふむ。

 

「…私」

「はい?」

 

 …そうですわね。

 

 こう…《(切り出しましたわね》》

 

「隆史さんから、どう口説かれるか楽しみにしてましたのに…」

 

「アンタ、いきなり何言ってんだ?」

 

 …なんて…。

 

「いえ、カチューシャ。更にはあの、ノンナさんまで…。そんなお二方を篭絡し、更には私の可愛い後輩までも毒牙にかけた隆史さんですから? …次は私かと…」

「篭絡って…その言い方だと俺、ただの女誑しじゃないですか…しかも毒牙って…」

「あら、違いますの?」

 

「違いますよっ!!」

 

 …えぇ、それは心地よかった。

 

「そう…私だけは、口説いてくれない…と」

「誰も口説いた覚えなんてないのですが?」

 

 とても楽しかった…。

 

 …余りできませんでしたが、ペコとのお茶会の後、こうしてたまに時間を頂いて二人でのお茶会を開きました。

 カチューシャ、ノンナさん。…そしてペコ。

 あの方達の気持ちが、回数を重ねる度に理解できてしまった。

 初めは本当に、彼女達の変化の原因を聞きたかったのですが…どうでも良い話で切り出したからでしょうか? その後の会話はひどく脱線し、それでも他愛の無い会話を続けてしまいました。

 その内…もう、そんな事の方が…彼女達が変わった理由なんて、些細な事へと変わっていきました。

 

「そうでしょうか? …ペコなんて」

「オペ子?」

「入学した頃から、緊張で体が強張って、固まる事が多かったと言うのに、最近ではその緊張も解けて誰に対しても、笑顔でいますわよ?」

「…良い事だと思いますけどね? というか、ソレが俺がオペ子を口説いたという語弊に、何故繋がるんですか…」

「あらご謙遜を。彼女は、貴方のお話を良くしますが? あのペコが。殿方の話を。良く。するのですのよ?」

「…なんで、強調するかの様に言ったんですか…」

 

 …えぇ、どうでも良い。なんでもないお話。

 

 彼とお茶会は、ほぼ私達の何でもない…そして、どうでも良いお話で占められていました。彼はそんな話に、真剣に考え、返し…そして聞いてくれました。

 ある意味で、彼は中立。中立という言葉としては、適していなかもしれませんが、そう…感じました。

 戦車道に全く関心を示さない彼…だからこそ良かったのかもしれません。少し離れた会話も、彼にはできた。…してしまった。

 

 彼は私には遠慮をしない。

 

 私のお話にも打てば響く様に、返してくれる。…それがとても嬉しかった。

 男性との会話は、これが初めてでは勿論ございませんでした。…しかし、どうしても彼との会話は、今まで見て来た男性と比べてしまう。

 と…言っても、大体はお父様絡みの男性でしたので、私に配慮してくださるそのお話は、酷く社交辞令で…そして打算すら見え隠れしている会話。

 ですから…正直に言ってしまえば、私、男性は余り好きではございませんでした。余程狭い世界にいたのでしょうね…私。ただお話をするだけの事に、こんなに喜びを感じるなんて。

 ペコが愚痴とも言える内容を、私には内緒にしても、彼に溢していたのを何となく分かってしまいました。

 

 …だから私も。ですから私も。二人きりでのお茶会の時には、徐々に…。

 

「カチューシャとノンナさん」

「…っ」

「どちらかと、お付き合いされてるのでしょう?」

「してませんよ……というか、何故そうなるんですか」

「私としては、カチューシャかと。ほら、ペコといい、隆史さん幼い見た目の女性が好きそう…」

「ダージリンさんの中での俺って、一体どうなってんですか!?」

 

 えぇ…やはり思い返せば、なんでもない会話がとても楽しかった。

 

 …毎回毎回、OG会の方から私充て頂く、ストレスと言う名の迷惑な贈り物。

 一般の方にすら分からないであろう、独特な人間・上下・確執。そんな殺伐とした関係。

 年下の…更には戦車道も…よく分からないと言っていた彼を、徐々にそのストレスからの捌け口、逃げ場として利用してしまっていた。

 …とても心苦しかった。しかし、何度も何度も利用してしまう。本当に…本当に気が楽でしたから…。何もかもが関係ない場所での、どうでも良い話が心地良かった。

 だから…一度、冗談めかして話した家の事。えぇ、勿論詳細なんて言いませんでした。少し、心が参ってしまっていた時に零れて…いえ、溢してしまった事もございまそいた。

 聖グロリアーナとしての私を……お父様の娘としても見ない、彼だからこそ…なのでしょう…そう…思えたのでしょうね。

 

 私を私として見てくれたのは、ある意味では彼だけでした。

 ですから思わずえぇ、罪悪感から逃げる為に、聞いてしまった事もありました。

 思い切って…軽蔑されてしまうかもと思えた事を…。

 

 全ての事を、今までの事を一度…えぇ、一度だけ。

 

 私は、情けなくも指は震え、声は上手く出ず…それでもゆっくりと話すと、彼は…一言…

 

「は? それがなに?」…でしたわね。

 

 …。

 

 アノ時の心底聞いた意味が解らないといった顔は、今でも忘れられませんわ。

 利用されている本人の答え。…それはただの息抜きだろ? と、普通に…何気なく…何時もの様に、紅茶を啜りながら…。

 俺を逃げ場と利用するのなら、好きなだけ付き合ってくれる…と、言って下さった。

 それが利用するって事ならば、いくらでも利用してくれ…と、言って下さいました。

 我ながら単純ですわよね? そんな一言で、彼を見る目が一気に変わってしまった。

 

 …

 

 えぇ…本当に単純。

 

 

「え~~~~。だって私は、口説いてくれませんのでしょう?」

「……え~…って。だって…って…」

「大人の女性はお嫌い?」

「…俺がロリコン前提で話すの、やめてもらえませんかね?」

「あら私、カチューシャもペコも、幼女だとは一言も言ってませんわよ? 隆史さん結構、酷い事を仰いますのね」

「あぁぁ!! もうっ!!」

 

 …そしてもう一つ。

 私は、思いの外…独占欲と言うものが強かったようですわね。

 何故か…その頃…いえ、彼が転校してから…青森を去ってから、それを強く実感しました。

 切っ掛けは、あの…プラウダで行われた最低の…えぇ、最悪なお茶会。そんな事を気づかせたお茶会は、最悪と言って過言ではないと思いますわ。

 …その事を思い出す時…どうしても指先を、唇の上に走らせてしまう…。

 

「…ダージリンさんだって、俺から言わせれば子共ですよ…というか、高校生なら皆、子供でしょう?」

「まぁ、そうですわね。高校生は子供。ですから、初対面でいきなり? 私にこの様な場所で、スカートを捲れと命令する貴方ですから? 私も隆史さんの趣味趣向に当てはまりますわよねぇ?」

「…どうあっても俺を、ロリコン認定したいんですか?」

「あ、その事ノンナさんに報告してよろしいかしら?」

「………段々、アンタの性格掴めてきた」

「あら嬉しい」

「……良い性格してるよ…はぁ…」

 

 …えぇ。みほさんとの関係を、後日知ってしまった後…その想いが…ソレこそ…身を焦がすように膨れ上がった。

 

「隆史さん。そろそろ時間が時間です。最後にお聞きしたい事がございます」

「…唐突だな…。はぁ…なんすか」

「…私は口説かれない。それは私のプライドを、少なからず傷つけました」

「なんで!?」

 

 どこか油断していたのかもしれません。

 

「ですから隆史さんは、私を一体、どのように見て感じておいでなのでしょう? それが非常に気になる所です」

「なんでそんな事……。ま…まぁ、俺の思い上がりでなければ、友達だと思って見てます…が?」

「ふむ、友人。…それはそれで光栄ですが…私、異性ですわよ?」

「えっと…え? だからなんですか?」

「……成程」

 

 彼に限って…。

 鈍い。朴念仁。散々に言われ、言わされてきた彼に限って、その様な事には…と。

 

「隆史さん」

「はい?」

 

 えぇ…私達は…いえ。

 

 

 …私が甘かった。

 

 

「こんな格言を知っていて?」

「は?」

 

 盗られてから焦りだす。

 

 …そんな醜い横恋慕。

 

「男女の間で友情は不可能。情熱、敵意、崇拝、愛はあるが……友情はない」

 

「えっと…知りませんけど…」

「ふふ…ペコの様にはいきませんわね。これはアイルランド出身の詩人、オスカー・ワイルドの格言です」

「は…はぁ…それが何か…」

「ですから私、少々楽しみなのです。殿方との友人関係は初めてですのでぇ」

「……なんちゅう、わっるい笑顔するんだ、アンタ…」

 

 欲が溢れ出す。

 

 みほさん達のお話を盗み聞きなんてはしたない事をしている内に…そのお相手が、目の前の彼だと思えば思う程…嫉妬で身を焦がしてしまいそうになる。

 夢の話? そんな事はどうでも良い。そのような夢を見ていたと言う事は…と、思うと…頭がおかしくなりそうな程の…顔が熱を帯びる。

 

「 情熱 」

 

 それと同時に…何度も何度も冷たい感覚が、耳の奥を刺してきました。

 

「 敵意 」

 

 刺されれば、刺される程に沸き上がり…零れ、溢れる。

 

「 崇拝 」

 

 制御なんてできない。

 

 したくない。

 

 

「…そして愛」

 

 醜い…。

 

「 隆史さん、これから貴方は… 」

 

 

 とても…醜い欲。

 

 

 昔の…青森での…彼との最初のお茶会。

 何故それを、今になって…何故思い出したのか…決まっていますわね。

 これは確認…そして確信。

 …あの時の私は貴方に、何とお聞きましたでしょうか?

 

 今まで羞恥心が邪魔をして、表に出せなかった欲が、今はとても自然に吐き出せる。

 単純な嫉妬から始まり…今は、私だけを見て欲しいという欲。私にだけ…えぇ、この一時だけでも構いませんから…触れて欲しいという欲。

 

 今、まさにその欲が全て叶っている。

 

 この狭く暗い場所で、彼は私だけを見てクレテイル。

 

 此処を出ても、小さな部屋だけ。邪魔はハイラナイ。

 

 ならばと…次だ、次だと、別の欲が沸き上がる。それもまた、単純な欲。

 何かを思いつく度に、体の芯から刺すような冷たい感覚が、私を後押ししてくれる。

 初めての感覚。それが何か知る術もございませんが…今はソレがとても心強い。

 冷たい感覚が、襲う度に…逆の溶けてしまいそうな程の熱が一気に襲ってくる。

 顔は熱く、手も熱く、お腹の奥まで…もう、身体中に伸びていく熱がとても心地よい。

 

 欲…欲?

 

 欲…。

 

 …彼に触れたい。

 

 彼に触れてほしい。

 

 彼に…。

 

 彼に…彼に?

 

 いえ、彼が…。

 

 

 

 …ホシイ。

 

 

 

 

「 隆史さんは…どの感情を、この私に与えてくれるのでしょうか? 」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 …。

 

 ……。

 

 薄暗い室内から聞こえる段々と大きくなっていく雨音。全員が我先に…と、急ぎ出ていった用務員室。

 そんな少し緊張した短い時間。

 押し入れの襖、その数センチ開けた隙間から狭い室内を見ていると、出ていった彼女達が帰ってくる気配も様子もない…部屋にも彼女達の私物…忘れ物らしき物もないな…。

 忘れ物でもして、一度すぐに戻って来やしないかと、注意して少し様子を見ていた。鉢合わせでもしたら隠れた意味も何もないだろうしな…んなお約束は勘弁です。

 俺達が入って来た時と同じような室内へと戻っていた。押し入れの壁…そこに背を預け、仰向けに寝そべる様に脚を投げ出している俺の上に、覆いかぶさるように体を密着させてしまっている、この現状。

 狭いから仕方がないと、この状況を甘んじて継続させてはいたのだけど…そのせいだろうか? ダージリンが、みほの話が始まった付近から…妙に大人しい…。

 真夏の用務員室。…エアコンが先ほどまで元気に稼働していたので、今もそれなりに室内は涼しいのだろうが…この押し入れの中は世界が違った。

 

 くっそ暑い。

 

 じっ…と、動かないでいても、額に汗が自然と滲む。それはダージリンも同じだろうし、更には密着状態……地獄の暑さだ。 

 先程からずっ…と、彼女と目が合っていた。俺の胸で口元を隠し、目だけで見上げてくるダージリン。俺の顔を見上げる彼女のその頬には、細い髪が汗で引っ付いているのが見えた。

 睨むように細めたその目に映る怪しい光が、妙に俺を刺激する…。そして何よりも気になるのが…そう…。その目の奥の…その歪んだ光が、また一層強くなっている。

 

 …彼女…ダージリンがスキル催淫に掛かった時と同じ様な目をしてた。

 

「ダージリン。もう…その…皆出ていったから…もう大丈夫かと…」

 

「…はぁ…はっ…ぁぁ…」

 

 酷く大人しいと感じてはいたが、それは少々語弊がある。彼女は一言も喋りはしなかったが、言い方を変えれば喋らないだけ。

 見事に先程からの提案。この場所から出ようと言う事に対して、とにかく無視をされる。

 その返事の代わりと言わんばかりに、俺の胸の上を湿らせるほどに、何度も熱い吐息を繰り返しているのが現状だった。

 俺の顔をジッ…と見降ろし…そして、見つめ…うっすらと口元を綻ばせ、何かを確認でもしたのか、短時間だけ見つめると、また俺の胸の上に頬を落とす。

 その繰り返し…。

 

「いつ…頃まで…でしたでしょうか?」

 

 少し呆けたような顔のまま、確認するかのような言葉で、俺に話しかけてきた。

 いやまぁ…俺からは見えないのだけど、胸から離す度にその顔が段々と締まりのない顔に変わっていっている気がしてならない。

 身体をまさぐり、摩り…密着させる。ただでさえ狭いという理由と…その行為に対して、突き放すとか…そういった気にはならなかった。

 顔を時偶、襖の狭い隙間にへと投げるだけで…今の状態を甘んじで受けている。

 

「隆史さんが、私に敬語でしたの…は? …あぁ…3回目のお茶会で、私からやめて欲しいと言い出した時でしたね」

 

 …呟く。

 

「隆史さんは、男女間での友情は在り得ないと…そう…えぇ…あの時、本当は理解していませんでしたか?」

 

 …俺に確認するかのような…一人事。

 あの時…その質問ならばアレか…。青森で一番最初に彼女とのお茶会とやらをした時の事だろう。

 男女間での友情は在り得ない。…と、まぁ…ある程度の境を超えなければ、という条件があれば、成立するとは思うが…基本的には在り得ないと思っている。

 華さんの実家へと赴いた時、そんな考えを思わず口に出してしまったのを覚えている。

 境…そう、距離だ。無駄に他人行儀に話す様にしていたのも、その距離を保つ為。まぁ…肉体年齢的に年上というのもあったしな。

 華さんに未だ敬語なのは…あの人…グイグイその距離を縮めて来るのだもの…。

 

「ならばなぜ…ふふっ…嘘つき。アレはただ、どこかで私…いえ、私達と距離を置く為の言葉でしたのね」

 

 クスクスと笑い出しながら、距離を置く為…と、どこか棘のある言い方。

 責める様に…それでも何故か楽しそうに…。

 

「武部 沙織さん…彼女が、冷泉 麻子さん…の、お話の最中…貴方のお名前を思わず溢されました」

 

「っ!?」

 

「あら、素敵なお顔。…相変わらず、この手のお話だと、すぐに顔にでますわね」

 

 …麻子の話の時か…。確かに一瞬心臓が跳ね上がったのだけど…ダージリンが、かなりてんぱっていたから、聞いていなかったと安心していたのに…。

 麻子の話でバグッたダージリンを見ていたし……しかし、しっかり聞いてた…聞かれてた…。

 それは…つまり…頭の良い彼女の事だ…すぐに理解したのだろう。

 だから…

 

 

「お盛ん…ですわね」

 

 

 …一言で全てを理解している事を俺に提示してきた…。

 

 …何故だろう…。見下したり、軽蔑したり…敵意を露わにする訳でもなく…その言葉は…酷く普通だった。

 沙織さんが漏らした俺の名前で、みほの話もあり…そしてあの場の異常なほどに和やかな報告会。それである程度…いや、確信して気が付いたんだろう。

 しかも、その場にまほちゃんも居た…。この狂った関係に気が付いた…と、言い切っていいだろう。

 

 なのに…だというのに…。

 

「流さる事がお得意な隆史さんですものねぇ…。過程がすぐに想像できるのが…えぇ…とても腹立たしい」

 

 それはもう…怖い程に何時ものダージリンの口調…。

 ただ笑い、お茶会で何気なく話すような…そんな…普段の喋り方。

 

「なら…私も…構いませんわよね?」

 

「……は?」

 

 そんな口調で言い切った。

 

 何故そんな結論に至ったか分からないが、呼吸が徐々に荒く乱れていく。

 頬を引き釣らせ、満面の笑みを作り上げた。顎を上げ…徐々に起こした体をまた…此方へと倒して来る。

 近い…段々と近づくその顔…。

 

 だが…止めない。

 

 普段の俺ならば、その時点ですぐに焦り…戸惑う。しかし怖い程に頭は冷静だった。

 麻子の話を…みほの話を聞いてしまった為なのだろうか? それともあの訳の分からないスキルのせいなのだろうか…。

 

「あら…私を止めませんのね。了承と受け取りますわよ?」

 

 余裕がある様に話す彼女もまた、何かを誤魔化しているのだろう。

 両手を俺の顔に手を添えて来た時に分かった…。少し震えている様にも感じる。

 この状態で、今までのあの話…流れ的には最悪の部類に入るのだろうが、もうそんな事なんぞお構いなし。

 その言葉に黙っていると…近づいた顔は、俺の顔を通り過ぎて首元にへと顔を埋めた。

 

 それが始まりとばかりに…それ以上、余計な事を口にする事は無かった。

 

 その代わりに…彼女は確認をするかの様に、言い訳をするかの様に…首元から別の言葉を呟き始めた。

 

「もう…細かい事は…どうでもよろしいですわ。他の女性なんて今は関係ございません…わ…。んっ…」

 

 細かい事…何を指しているかは…まぁ…みほ達の事だろう。

 

 彼女の甘い匂いが更に強くなる。

 首元に軽く唇が触れると、俺の体をまさぐる様に、顔に添えられていた手が体へと伸びてきた。

 汗で少し滑つく胸板に、ヌルッ…とした感触と共に柔らかい掌の感触が…。摩る様に動くその手が、服を脱がせる様に…ワイシャツを間をこじ開ける。

 

「っ…んっ…」

 

 首筋を舐める様に…小さく当たる舌の感触…。

 身体に押しかかる重さ…脚の間にも彼女の脚が滑り込んでくる。身体全体を使い、身体全体で…匂いを擦り付けるみたく彼女は動き始める。

 

「常に…いかなる時も…んっ…優雅…ふふっ…ちゅっ…ぷっ…」

 

 首筋から付け根へ…動く彼女の口は、首元へと伸びる。腹を胸を…体全体を掌が伝う。

 普段の彼女ならは、こんな事でも不可能…だろうな…。余裕を保っているように見えるが…ダージリンの場合、オペ子よりも耐性がないのだろうとは思う。

 正真正銘の…お嬢様…箱入り娘。

 

「…何が優雅…。この様に男性の体を弄り…触れ…んっ」

 

 何度も何度も首へと口付けをしながらも、少し自傷気味に笑う。

 唇を滑らせながら…ゆっくりと顔を上げ…体を上げた。

 少し髪は乱れ…口元から伸びる細い唾液の糸…口の端に舌先を走らせ…怪しい瞳で俺を見下ろす…。

 

 …強烈な…色香。

 

 あの奥手な彼女が、ここまで…。

 

「…しかも…横恋慕…。この私が浮気相手…に…なるなんて…屈辱ですわよ…ねぇ? ふっ…ふふっ…」

 

 そして、どこか…何かから解放されたかのように…無邪気に…笑う。

 

「楽です…本当に気持ちが楽…。何もかも考えないで…ただ思うままにするのが…こんなにも…」

 

 彼女の細い指が、俺の唇にへと添えられた。

 爪を立て、軽く引っ掻く様に動く。小さな痛みが走るも…彼女の顔が近づいてくる為、動く事ができない。

 あぁ…その顔を…目を真正面からもう一度確認すると、やはり…。

 

「これが本能…というモノなのでしょうか? …最低です…わね…」

 

 本能…。

 ダージリンは色欲…という事を言いたいのだろうが?

 

 さらに近づく顔。

 浮気…ね。

 

「この狭い…空間の中…私達だけ…二人だけ…。今までの私は…ここには…イナイ」

 

 今更過ぎる気もするが、彼女は彼女で何をどう思ったか分からんけど…もう本気なのだろう。

 自分を浮気相手とハッキリと口にし、その行為を今…俺に迫る。

 やはり…その行動を俺は止める事ができない…いや、止めない。

 

「は…ぁ…ねぇ…隆史さん」

 

 鼻と鼻が触れる程の距離にまで顔を近づけると…彼女の少し荒くなった呼吸が大きく聞こえる。

 

「素直に私との浮気行為を受け入れるなんて…どう…お考え…なのでしょう? ノンナさんや…ペコから迫られても同じなのでしょうか?」

 

 …微笑を浮かべながら至近距離からの問い掛け。

 そんな事を聞いた所で…いや。彼女からすれば、大事な事なのだろう…な。

 なまじ青森の事からを知っているからこそ…なのだろう。だから正直に言っておこう。

 

「浮気行為…ね。確かに言い逃れできないな」

 

 今までとは、明かに違う距離での会話。

 物理的にも…何もかも…。

 

「開き直るつもりはないけど、ダージリンと浮気をしたとしても…」

 

「え?」

 

「え?」

 

 …。

 

 あれ?

 

 浮気をしたとしても、何がどうなろうかその責任は取るつもりだ…と、続けようとしたら…いきなりあの、強烈な色香が消えた…。

 スッと体を離して、目をまん丸く見開いている。…が、すぐに俺の視線に我を取り戻したのか…さっきまでと同じ様な表情に戻った。

 

「い…いやですわね。すでに行為を済ませているというのに下手な言い訳を…」

 

「え?」

 

「え?」

 

 ……。

 

 先程までの雰囲気は何処へやら…お互いに変な声を上げてしまう。

 えっと…。

 

「あ…あぁ…そう…だな。こんな状態でも完全に浮気だよな。立場が反対なら、俺でも…」

 

「え?」

 

「え?」

 

 …。

 

 な…なに、このやり取り…。

 

「隆史さん…此処まで体を重ねる行為…十分に…後、残されてるのは、キ…キス…」

 

「……」

 

 今更羞恥心が襲って来たのか…真っ赤になってキスというフレーズを出した…。

 わ…分かった。

 

 はい、解りました。

 

「まっ! まったく!しゅっ…淑女たる私になんて事を言わせるのでしょう!」

 

 …。

 

「いくら、そ…その! 浮気行為だとしても! こういう事は殿方から…」

 

 …う…うん。

 彼女の中で、達成感がすであったのだろう。

 …俺が言い訳でもしているとでも思ったのか、いつもの彼女にすぐに戻り…変な照れ隠しでマゴマゴし始めた。

 

「……」

 

 あ…はい。

 

 では…スキル…【 鑑定 】

 

 …はい、しっかり催淫掛かってますね。【 欲望 】と【 壊 】も、しっかり元気に活動中です。

 みほと麻子の話を聞いて、まぁ…対抗意欲なりなんなり湧いた…のか…。それがスキル【 欲望 】の引き金なってこんな行為に及んだみたいだね。

 

「いくら女性を辱める趣味がお有りだとしても、ここまでの…隆史さん?」

 

「………」

 

 ス…スキルの影響あって…コレかぁ…。

 真っ赤になってマゴマゴし始めたね…俺の上で。体を動かす度に、ちょっと痛いんですが…。

 

 いやもう…ね。ぶっちゃけた話、麻子とみほの内面から言葉にしての報告話に、当事者だった俺も色々と思い出して…その…息子がMAX状態なんです。

 更には…ダージリンは、息子のちょっと上部に座っているから、ちょいちょ動く度に擦れてしまい、刺激になってしまうんですよ。

 

「OK、ダー」

 

「…なんですしょう? それより…いきなり呼び方が、ぞんざいになっておりません?」

 

 はぁ…。もう直球で聞いてみよう…。

 

「あのな? 麻子…と、みほの話…の内容。理解してたか?」

 

「……もっ!! もちろんですわ…」

 

 …なら何故、目を逸らす。

 

「…沙織さんから、参考書…というか、あの雑誌見せて貰ったんだろ? だからだろ? 麻子の話の時、結構な状態になってたの」

 

「………」

 

 おい、顔が完全に真横向いたぞ。こりゃ雑誌の内容の意味ですら、よく解からなかったと見える…。

 一度見せて貰ったけど、結構なイラストでかなり直球に………あ、そうか…。

 意味が分からなきゃ、素ッ裸のカップルが抱き合ってる様にしか見えないのか…?

 男のエロ本とかじゃないしな…。この様子じゃ、沙織さん…一応…ソフトな物を選んでみせたのだろうな…。

 

 …。

 

 …ま…まぁ…エグい内容のもあったけど…あんなの、いきなり他校の人に見せたら100%引かれるしな…。

 

「……」

 

「……」

 

 …おい、目を見ろ。

 

「はぁ…。あのな? みほの話って…俺の口から言うのもなんだが…結構、直接的な事を言ってたよな?」

 

「みほさんの話は、完全に聞いていませんでしたわ」

 

「…何故ドヤ顔でそれを言う」

 

 …。

 

 そうだ…みほが話始めたら、ダージリン…俺が複数出てくるって下り以外、思いっきり両耳塞いでたな…。

 

「く…っ! 悔しいじゃありませんか…そ…その…貴方との…」

 

 ……あ、はい。

 余計な事聞いた気がする…。少し緩んだ空気の中、指同士を遊ばせながら…モジモジを白状した。

 

「そ…そもそも! アソコまで! ま…まぐわったのですから…十分に…」

 

「まぐわうとか言うなよ…」

 

 ま…まぁ、言わんとしてる事も分かる…。ダージリンが脚と脚を絡めてくるとかしてきたしな。現に今も……で、でもな? その言葉は外で使うなよ?

 男女で体を絡み合わせる事が、そういう行為だとでも思っているのか…。今時…小学生でも知ってる奴は知ってるぞ?

 ダージリン…超お嬢様だから、そういった知識の…あぁ、でも概念的には理解しているみたいだから、多分…具体的な行為については、完全にシャットアウトされてたのかね…。

 何時の時代の教育を受けて来たんだろう…。

 

「………」

 

 よし…察してやろう…。

 照れ隠しなのか何なのか…今度は横髪をいじり初め、汗をぬぐう様に頬っぺたに引っ付いている髪の毛を、小指で整えた。

 そんな少し子供じみた仕草をする…このある意味で、完全無欠のお嬢様。

 

 …そして思う。

 

 みほには、まぁ…良く分からん許可は貰っているし…俺も変に覚悟が決まっていた状態。

 しかし相手のダージリンは、すでに事を済ませたかと思っている。

 

 …。

 

 ……責任…。

 

【     】

 

 思っているだけとは言え、彼女は彼女なりに決め手の行動だったのだろう。

 飽きれ…とも違うが、色々と意識の落差に考え込み、黙ってしまった俺に対して口を尖らせた…。

 何故かダージリンは、俺と二人だけになると、こういった子供じみた仕草を匂わせる。…彼女にとっては俺に対して油断をしている…というか心を許してくれているという事なのだろうか?

 それにあの…青森での混合のお茶会。…良った俺に対して、腕を首に伸ばしてきた時を思い出すと…まぁ…そういう事なんだろうとは、分かっていた。

 大胆なのか、奥手なのか…良く分からんお嬢様。

 

 俺に何を望むか…まだ分からん。分からんが…望むのなら…なら…。

 

「あの…隆史さん? どういった意図がありますか理解しかねますが…黙り込むと言うのは、少々…っっ!?」

 

 いじける態度の彼女の首の後ろへと腕を伸ばす。此方から動きを見せるとは思ってもいなかったのか…一瞬体を強張らせた。

 そのまま力ずくで、抱きしめる様に彼女をそのまま引き寄せる。

 

「たかっ!? たたっ!?」

 

 お…おかえり、いつものダージリン…。

 

 また顔が近づいた時点で、またあの怪しい光が目に帯び始めてはいたが、完全に羞恥の方が勝ったのだろうね…。

 冷静沈着…普段、落ち着いている彼女も、すでにいない。

 下手に言葉を交わし、下手に浮気行為の間違いの指摘をするよりも、行動で示した方が…タブン正解なんだろう。

 

「……あの…あ…」

 

 唇が触れる程に近づくと…言葉数も少なくなっていく。

 至近距離でお互いの目を見つめ合う形になってしまっている。…そんな状況。

 

 彼女の後頭部に手を添えて…顔を更に引き寄せる。

 

 彼女にとっては、二度目の…。

 

【    】

 

 ダージリンは抵抗もなく、素直にその俺の動きに合わせてくれた。

 すぐに唇へと、柔らかく…暖かい体温が伝わり…。

 

「んっ…っ…っ? …んんっっ!?」

 

 そしてすぐに口内で動く、艶めかしい舌の感触。

 手の力を少し強め、ダージリンの口内へと舌をねじ込むと、少し驚いたかのように動く彼女の舌が、生暖かい感触が伝わる。

 円を描く様に舌を回しながら動かすと、ダージリンの舌の根本…先、横…に擦り合わす様に流れる。

 

「んっ…はっ…ぁ…」

 

 …明かに前回とは違ったディープキス。

 

 ただ舌同士が触れ合うだけではない、明らかに口淫。下唇を吸いながら、舌を絡ませる。

 初めは驚いただけのダージリンは、戸惑う処かすぐに順応し…絡ませる舌に、更に結ぶ様に絡ませて来た。

 少し開いた口からは、小さく…甘い息がすぐにでも漏れ始めた。

 

「んぁ…はっ…んっ…はっ…」

 

 たった、それだけの事。

 口を合わせ、舌を絡ませる。お互いの口を吸い、抱きしめ合う。

 

 あの、ダージリンと。

 

 額や、頬にくすぐる様に当たる髪。

 

 なにか、大きな境界線を越えた…そんな感覚がした。

 冷たく脳内に走る感覚が、妙に俺を高揚させ…気が付いた時には、抱きしめ合う体を回し…ダージリンとの居場所が交代していた。

 彼女に覆いかぶさり、彼女もまた一線を越えたと思ってでもいるのか、今は俺を逃がさない様に、腕に力を入れ…顔を離させない。

 脳に一番近い場所での舌同士での交じり合い。ふっふっ…と、鼻から何度も小さくも荒い呼吸が、何度も聞こえる。

 ダージリンの頭の横、手を付き腕に力を入れ…腕立ての様に上半身だけ上げると…首に抱き着いているダージリンは顔をやはり離さない。

 今は俺の口を、自ら耳に残る様な音を響かせながら吸い続けている。

 

 狭い押し入れ内にこもる熱気。

 ぬるっ…と、汗で滑らせながら、顔をゆっくりと…体ごと離した。

 

「…んっ…はっ…あぁ…ぁ…はぁ…」

 

 久しぶりに見れたその顔は、目は涙で蕩け…熱で顔を上気させ…休憩? それとも終わり? とも…取れる、ちょっと抗議するかの様な目線で責める様に見上げている。

 唾液に塗れ、小さく開いた襖の間から入る光で、テラテラと反射させている口元。なんかもう…これだけで満足してしまいそうな感覚。

 口端に伝う…唾液の糸を、小さく出した舌で拭う仕草を見せる。…一瞬ゾクッ…と、背筋に何か走った。

 こんな彼女の姿なんて、誰にも見た事なんてないだろう。ある意味で、普段とのギャップが…落差が此処まで違うのは、誰よりも彼女が一番だろう。

 

「もぅ…よいのでしょうか? ふふっ…もう…そうそうこんな機会…ないですわ…よ?」

 

 俺からの行為ということもあり、少し心に余裕でもできたのだろう。少し挑発するかの様なセリフ。

 しかしその顔は、まだ足りない。もっと、もっと…と、ねだっているかの様に見える。彼女は基本的に、有利な立場での立ち位置がお好きなようだ。

 それはこういった事でもそうなんだろう。…中村と林田が言っていたな。彼女には責められたい…とか。ちょっと気持ちは理解できる。

 

 …理解はできる…が、むしろ俺は、こんな彼女を見てしまっては…逆にネダラセタクナル。

 

 スッ…と無言で彼女の服…大洗の制服。お腹へと手を滑らせた。…汗で少し滑りやすくなっているとはいえ、触るだけで心地よい肌の感触が、心地よい。

 そのままゆっくりと…服を捲る様に腕をその上へと滑らせる。

 

「んっ! そ…そうですわよね…本来なら…裸…同士…で…」

 

 眉が少し傾き、何か覚悟を決めたかのようなセリフ…。

 一瞬肩が跳ね、何か…うん。またちょっと違った反応で返された…。

 

 うん…。

 

 もう片方の手で…彼女のスカートを捲る様に、太股へと手を滑らせる。

 腕で片脚を上げさせ…彼女の下着を…とも思ったが…いかんせん狭い。体を完全に上げると2段の押し入れの天井へと頭をぶつけてしまうので…うん。

 

 見れない!

 

 すげぇ悔しく感じるのは何でだろう!!

 

「っ…たっ…隆史さんっ!?」

 

 彼女の腹に滑らせた手をどけ…もう片方の脚へと、腕を滑り込ませる。

 要は…両腕で彼女の脚を曲げ…大きく開かせた。彼女の顔の近くに俺の顔が在る為、下着は見られないと分かってはいるのだろうが、その格好に彼女の顔が更に赤く染めあがる。

 後…もう、面倒くさいというのと、この押し入れ内が狭すぎて、動き辛いというのもあり…スキル【 転移 】で、俺のズボンを取っ払った。

 俺のズボンは押し入れの外だ。…彼女の服も取っ払って……も、良いのだけど、半裸の方が俺は好きですからね。取り合えず下の下着だけ、俺のズボンと一緒に外に飛ばしておいた。

 後…こんなスキル、一体何時発生した…? まぁ…もう…今更過ぎるけど。

 

「 」

 

 あ…うん。

 

 彼女からは見えるのだろう。彼女はいつの間にか下半身が裸になっている俺…正確には、一点に顔を下に向け…凝視して固まっていた。

 熱に浮かされ、転校前…の関係の境界線を超え…この状況での妙な感じ。その状況に完全にMAX状態の俺の息子に対して熱烈な視線を送ってくれていた。

 

「  」

 

 あら…痛くないのかな? と、心配してしまう程に目を見開き…口を小さくつぼみ…ってVの字になっちゃってるし…。

 完全に固まっちゃってますね…。

 

「ふっ…!?」

 

 M字に開いた両脚を押しつぶすかの様に、彼女にまた覆いかぶさる。

 少し押し出された息が、口から洩れたけど苦しくはないだろう。

 下手に説明したりするよりか、彼女の場合…まぁ…行動で示した方が良い…と、結論つけた。

 

「…俺は、ダージリンを抱いても…良いんだよな?」

 

 彼女は俺を求めた。浮気をさせた、した…と思い込んでいる。SEXをしたと…。

 ならば問題ないだろう。…とも思ったが、一応聞いてみると…。

 

「い…今更…? …相変わらずの唐変木ですわね。この私が此処までしているというのに…いい加減にしないと、さすがに怒りますわよ?」

 

 

 すげぇ睨みながら…怒られた。

 抱く…という意味は、すでに完遂されている…と、思われているからこそ、更に怒りを買ったんだろうなぁ…。

 結構、本気で睨まれてしまった…。

 

「んぅっっ!? たっ…隆史さんっ!? どっ…何処を触っ! んぁっ!?」

 

 

 ですので、誤魔化しました。

 愛撫…してあげたいが、この狭さではキツイ…。準備の為に口でもして欲しいが…この狭さでは無理。多分…沙織さんの雑誌の内容から、その手の事は記載されていると思うけど…。

 肩で脚を更に上げ止め…両手で彼女のお尻を掴む様に秘部を大きく開かせると…指先に少し触れたその入り口から、汗ではない体液がその指先を滑らせた。

 

「はっ…そんな所…汚っ!…んっあ!!! はぅっ!! …っ…んぐっっ」

 

 秘部に触れた指先を揉むみ…軽く動かしてみると、甘い声が漏れた。一瞬、自分からそんな声が発せられたのに驚いたのか…片手で口を塞いでしまった。

 ほぼ無意識にだろう。人生で初めての声…だったのだろうかね。あの偏った知識じゃ、自慰行為すらしそうにないしな…ダージリン。

 

「ダージ…あぁいや…違うな」

 

「っ?」

 

「…今から中に入るな?」

 

「…え?」

 

 名前を呼ばれたと思ったのか…混乱した顔で、不思議そうに視線だけ俺に向けた。

 

 そして、中途半端に言葉を止めた。

 

 そして、一言…。

 

「凛」

 

「っっ!?」

 

 …と、本当の彼女の名前を口にすると…少し顔を上げ、また驚いた顔をした。

 

 …まぁ…うん。本人から教えて貰った訳ではない。何故か、オペ子もアッサムさんも…本名はひた隠しにしていたしな。

 だけどまぁ…ダージリンの場合、かなりのお嬢様だ。少し彼女の家との関係を持って調べてしまえば、嫌でも耳に入ってくる。

 例の北海道合宿での事で、判明したんだけどな…まぁ今はそれはいいや。

 こういう事をするんだ。せめて本名で呼んでやりたい。亀頭先を、感覚だけで彼女の入り口へと添える。その先からまた…熱い感覚。

 

 そして名前を呼んだ瞬間…一気に彼女の中に押し入った。

 

「ひぅっっっあっっ!!??」

 

 ブツンとした感触と、小さな音が何度も鳴りながら、大きく広がっていく感覚。

 ゾリゾリとした感触が、陰茎全体に伝わり、痛いくらいに異物を押し出そうと膣内が蠢く。その中をお構いなしに全てを一度で差し入れていていく。

 押さえていた手を離し、見えた小さな口は大きく開き…腹を大きく跳ね上げ、背中を逸らせながら…。

 

「っっかっ…あっぐっ…? ぉ…あ…??」

 

 ガクガクと押上げられた脚を、激しく痙攣させた。

 男を知らない身体…に、俺のモノをいきなり根本までねじ入れた。

 

 …ただ、ダージリンは痛みは感じていない。

 

 林田の家族を待っていた時の会話が役に立った。

 痛く…無い方が良いよな? …だからアノ時の話を参考にして脳内に探りを入れ…見つけた。作製したと考える方が正確かもしれない。

 

 スキル【 感覚変化 】

 

 痛覚を快感へ。痛みを感じない様に変換しておいた。

 

 体内に異物を入れた感覚に戸惑い…そこは少々苦しいかもしれないけど、痛みは無い。

 ただ、本来感じるであろう破瓜の痛みが、快感として彼女の中で蠢いているハズだ。

 そしてスキル【 リフレッシュ 】…【 キュア 】。破瓜の血を拭い…その傷痕を治す。

 

 …さてと…人外な事は此処までだな。

 

「ぁ…ぁぅ! …ぁ…ぇ…ぁ…」

 

 痛み=快感は、多少緩和されたとは思うが、まだ慣れていないのだから、本来なら多少は痛みを感じるだろう。

 痛み…だけでは、それはそれで可哀想だともオモウ。

 

「ダージリン? 大丈夫か?」

 

 虫の息…とも違うな。これもまた人生で初めての快感なのだろうな。

 先程から、彼女は驚いて目を見開いてばかりだよなぁ…。涙で少し潤んだその瞳から、あの怪しい光が強く光る。

 

「ひゃ…ひゃぇ…? なっ…ん…ぁ…?」

 

 だからここからは、多少…乱暴にするくらいが…チョウドイインダロウ。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 オカシクナリソウ。

 

 何と言って表現してよいのか、全く分かりません。

 

 喉が熱く…人生で初めてだと思う程の声を上げた気がします。

 

 よく覚えて…よく見えな…な…え?

 

 あ…そうです…ね。

 

 武部 沙織さんから頂いた雑誌。…良く意味が分かりませんでした。

 男性と女性の性器…付近から、まったく理解が及びませんでしたから。

 しかし…隆史さんとの行為で、それが…疑問が全て解消された気がします。

 

 これがある意味での、本当に一つになると…言うものなんですね。繋がる…繋がっている。

 

 彼には…教えていなかった…本当の名前で呼ばれた。

 驚きはしましたが、何故知っているのか…まぁ…察しは付きますわね。

 

 付きますが…それ以上に…嬉しかった。

 

 嬉しかった…。

 

 

 えぇ…嬉しかったのですが…その細かい感傷は、一気に塗りつぶされました。

 正確には、塗りつぶされた。…のとは、少々違いますでしょうか? 別の嬉しさに上塗りされた…とでも言い換えればよろしいのでしょうか?

 彼が私へと…その…まぁ…一つになれたという事実が、今まで掛けていたピースを埋め…納得させ、理解させてくれた。

 

 …同時に来る…恐ろしいと思えるまでの…キモチヨサ。

 

 形容し難い快感。

 

 何もかもが単純な思考に塗り替えられる。

 

 オカシクナリソウ。

 

 この空間、この狭い室内、彼と私だけという事実。

 

 それに加えて…彼は今…本当に私だけ…ワタクシダケヲミテクレテイル。

 

 あぁ…この行為が、SEXという行為…確かに私と隆史さん…ダケ…。

 

 愛シテクレテイル。

 

 ワタクシダケヲ、見てくれている。

 

 彼の汗が私に落ちる…。

 

 肌が触れ合えうと…私の汗と交じる。

 

 今、私は…どういった格好で、どういった声で、どういった顔で…いるのでしょうか?

 

 真っ白に光る。

 

 何も上手く、考えられない。

 

 細かい事なんて…どうでもいい。

 

 知らない。

 

 キモチイイ。

 

 知らない。

 

 キモチイイ。

 

 知らない。

 

 キモチイイ。

 

 知らない。

 

 …オカシクナリソウ。

 

 …わたくしは、かれのまえでなら…たかしさんになら…こどもように…こどものときの…ときの…。

 

 彼が動く度に、体中の力が抜け…一気にキモチヨサが押し寄せる。

 獣みたく声を上げ…はしたない。

 だらしなく舌を突き出し…いやらしい。

 ただ彼が欲しく、欲しく…浅ましく求める私は…淑女とは程遠い存在なんでしょう。

 

 でも…どうでもよろしいですわ。

 

 彼は…いえ、彼も私を求めてくれている。

 

 …。

 

 

 ………。

 

 

 えぇ…今は…それだけで…十分…。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 ガタガタと激しく揺れ音を出す襖。

 

 狭い押し入れで、二人溶けあう様に貪り合う。

 

 細かい感想なんて…無理だ。

 

 ダージリンの綺麗にまとめられていた髪は、もうとっくに乱れ…汗に濡れ舞っている。

 制服は捲れ…胸を露出してる事にすら気づいていない。

 スカートの生地もすでに意味はなく、腰の周りでクシャクシャに丸まって…裸と変わらない。

 動く俺の振動に対し、甘い…とは、もう程遠い声を上げている。

 

 遠慮無く、本気で彼女の中へと打ち込む。

 

 肌がぶつかり合う音は、汗を飛び散らせ、子宮すら押しつぶす様に打ち込めば、狂ったかと思える程の…声。

 

「んぶっ♡!! んぐっぅぅぅ♡♡!!!」

 

 ダージリンの代名詞とも言えるであろう優雅…気品…そんなモノ、もうどこにもない。

 

 すでにもう、なんど果てたか数えてない。

 口を…唇を合わせながら、杭を打ち込む様に力の限り打ち入れる。

 膣内から体液が飛び、グチグチと粘着質な音が響き渡る。

 

 綺麗な胸が下品に揺れる。

 身体を離し、少しだけ遠目で見れば服は汗で透け、下着の線がハッキリと見える。

 身体を近づければ、彼女は即座に口を吸ってくる。

 キス…いや、ディープキスが癖にでもなってしまったのか…兎に角、ダージリンは好きそうだった。

 下着を外す事すらも忘れ、文字通り夢中になり腰を打ち付ける。

 バツン、バツンと彼女の奥に当たる感触…。

 

「あぐっ!? あぁ!!」

 

 どれだけ…もう、どれだけ繋がり続けたかもわからん。

 体位を変える事もなく、正面から向かい合い、ただ動き続ける。

 

「あ‶ーー♡!! ア‶ーーーーーーー♡♡!!!!」

 

 脚を上げ、体を抱きしめ…体を拘束するかの様に打ち付ける。

 すでに喘ぎ声と言うよりかは、叫び声に変わっていた。

 射精が近づき、小刻みに激しく動く。その動きにダージリンは、かなり気持ちが良い様だった。

 彼女は彼女で、すでに何度も絶頂を繰りかえしすぎ、何も考えられていない様だ。初めてでの体験では、普通ならば不可能な程の快楽。

 みほですら、あまり痛みは無いようだったが、ここまで乱れる事はなかった。

 

 一度も陰茎を抜き出す事もなく、彼女の中に吐き出しては動く、それの繰り返しを延々と続ける。

 ダージリンは結局、終始言葉を発すること無く、夢中になって初めての快楽に…身体を捩じらせ、口をだらしなく開き…何より…完全に堕ちていた。

 

 …。

 

 ……。

 

 

 

「あっ…はっ…あっ…ぁ…」

 

 いつ終わったのか…そんな事も曖昧になっていている。

 押し入れの襖は開かれ、中に畳んであった布団は外にへと、形を崩してはみ出している。

 その上で…ダージリンの肢体は、体液に塗れ…彼女は仰向けに痙攣し、だらしなく両脚を投げ出し、全身が脱力し…呼吸と連動し胸が上下運動を繰り返しているだけ。

 秘部からは、下品な音をさせながら精液が溢れ出し…喘ぎ声にも似た吐息を吐いてはいるが…まともにその喘ぎ声を聴けなかったな…とか、今さらになって思える程には俺は回復していた。

 激しく動き合っていた為だろうか、結ってあった髪は綺麗に解けてしまい、乱れてしまっているが、ロングヘアーのダージリンを始めて見ていた。

 

 …そんな…短文を繰り返すような、状況判断。流石に俺も息が切れていた。ダージリンの横に…と、押し入れの入り口の横、その柱に背を預け…息を整えていると息も絶え絶えに名前を呼ばれた。

 

「はぁ…はぁ…た…たかし…さ…ん?」

 

「ダージリン?」

 

 此処までの会話は、殆どなかった。彼女の想いも何もかも、聞いていない。

 ただ名前を呼ばれ、呼ぶ…それしか…。

 

 裸のまま…億劫そうに体を起こすダージリン。乱れた布団の上…というのもあり、うまく起き上がれないようだった。

 現状を理解し…数時間前までの知識が偏っていた彼女は、もういないのだろう。

 だが、彼女の性癖はまだ分からない。スキル【 鑑定 】を使ったとしても、分からなかった。

 

「ふふ…もう…名前で…呼んでくれません…のね」

 

「…無理するなよ。希望するなら…まぁ…呼ぶけど…ちょっと照れ臭いんだぞ?」

 

 先程まで、みほにすらしなかった、激しい行為なんて想像できない程の会話…。

 しかし、俺の言葉がどうやら気に入ったようで、嬉しそうな顔で、まだ少し痙攣が続く体を隠す事もなく少し起こした。

 

「こ…こんな…格言を…知っていて?」

 

「知らん」

 

「…むっ。合いも変わ……意地悪…ですわ…ね」

 

「虫の息だぞ…本当に無理するなよ…」

 

 口を尖らせながら、また首に腕を回して来た。

 しかし、体にやはり力が入らないのか…体をそのまま任せ……

 

 

「愛してますわ」

 

 

 …。

 

 ……。

 

 まっすぐ目を見て…言い捨てる様に言われた…。

 俺の手を取り…自身の胸に引き寄せ…睨む様に…試す様に…そして、ねだる様に言葉を続けた。

 

「理解が及びませんか? 私も及びません。何故私が、このような浮気者相手に…まったく…」

 

「き…急に舌が回りだしたな…」

 

「どなたかに似たのでしょうね」

 

「…ぬ」

 

 ある意味でコレも彼女の強さ…なのだろう。

 急に何時もの…彼女に戻った気がした。

 

「これから…もっと私に教えて頂けるのでしょう? 武部 沙織さんではなく…あのような雑誌ではなく…隆史さんが」

 

 教えて頂ける…ね。関係を続けるとハッキリと宣言したようなものだな。本当に人間関係を無視した…いや、もう気にしていないとばかりに、これからの関係を確定させる為の発言とも取れる。

 しかし…別の意味での…底が知れぬ不安感を…俺に思い出したかの様に…今更与えてくれた。

 不安感…いや、違う…これは安心感とも言えるのではないのか? 俺は間違っていなかったと…確定付ける証拠が見えた。

 

「私に、貴方は何を…望みますか?」

 

「ダ…ダージリン…?」

 

「私は、ナンデモ…ナンデモナンデモ…ドンナモノデモ…叶えますわ」

 

 

 何故なら…その目には、禍々しい光が灯っていたから…だ。

 彼女の想いに応えた結果…その光は、彼女の瞳に焼き付いたかの様に…ハッキリと刻まれていた。

 

 

「ですから貴方は…次に、どの感情を…えぇ…どんなキモチを…私に与えてくれるのでしょう…か?」

 

 …なら、これからも…それに応えよう。

 

 …。

 

 ……。

 

 でもな…何故だろう…スキルの弊害? いや、その効果の証拠とも言える瞳の中の光。

 それが灯る事を見て、何故そう…思えるのか…。

 

 

 …。

 

 

 …えっと…あ~…あぁ…そうだ。

 

 …そう…言われたと…教えて貰ったからだ。

 

 …。

 

 それは誰……だっただろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

『 …………… 』

『 …………… 』

 

『 ダ…ダージリンさんの恋心を…完全に欲望に変換させた… 』

『 いえ…最後、愛してると…おしゃっていたので…比それ以上かと… 』

 

『 …………… 』

『 …………… 』

 

『 お…女の子の初体験を…完全に快楽に改変して…塗りつぶして… 』

『 絶妙なタイミングで、本名で呼んだりとか……更には隆史さん自身に、全ての感情を…渇望を…欲を…擦り込ませた… 』

 

『 …………… 』

『 …………… 』

 

『 あの性獣……相手の女の子に対して、スキルで潜在欲望満たしてしまうから、タチが悪すぎるわ… 』

『 女性側からすれば、それらを解消してくれるのが…思い人……。ほぼ、逃げる事ができない状況を無意識に作り出していますよね… 』

 

『 …………… 』

『 …………… 』

 

『 …………… 』

『 …………… 』

 

『 うんっ!! じゃぁ早速呼び出すわねっ!! 』

『 エ‶っ!! 』

 

『 来たれ 地獄を抜け出しし者! 十字路を支配するものよぉぉ! 汝 夜を旅する者 昼の敵 闇の朋友にして同伴…… 』

『 ちょっと待ってくださいっ!? 先輩ソレ、ガチの悪魔召喚の黒魔術じゃないですか!! 女神が、なんて呪文唱えようとしているんですかっ!! 』

『 ぷぅ~くすくす! 女神がガチとか言い出したわっ! んっっとぉぉに、あんた隆史の影響受けすぎねっ! 』

『 うっ…受けてません! 勝手な事言わないで下さいよ!それにっ! 隆史さんは悪魔ですか!? 』

 

『 私、それで間違いではないと思うの 』

『 ……… 』

 

『 こっちはこっちの隆史に…正直、私にも責任の一端はあると思っているのよ? 』

『 一端…では、確実にないと思うのですけど… 』

『 何言ってるの。エリス、貴女が勝手にアレ呼び出して、アソコまでの性獣に仕立て上げたんだから、これは貴女の責任よ 』

『 責任を挿げ替えないでくださいよっ!! そもそも、先輩があのスキルを彼に押し付けたのが、事の元凶じゃないですかっ! 』

『 あ~はいはい。んじゃもう、それでいいわよ。私がぜ~~んぶ、悪いのよねぇそうよねぇ 』

 

『 ……幸運の女神エリスの名においてオーダー。本編の尾形 隆史さんに『 神殺しの剣 』の使用許可を… 』

 

『 だっ!! だから!! 責任持って一応私も同席して? 呼び出した直後…あの女っタカシが悪さしない様にしてあげるって言ってるじゃないぃぃ 』

『 まったく…。はぁ…一応って…危なくなったら逃げる気満々ですよね? 』

『 …… 』

『 先輩? 』

 

『 はっ…どうやら私じゃ、勃たないみたいだしぃ? 逃げる必要ないんじゃないの~? 』

『 …結構、気にしてるんですね 』

『 あの糞野郎…絶対にゴットブローお見舞いしてやる… 』

『 …先輩 』

 

『 はぁ…はいはい、冗談はもういいでしょ? さっさ呼んで……さっさと神威を奪い返すわよ 』

『 ぐっ… 』

『 マジな話……早くしないと、取返し…つかなくなるわよ 』

『 うっ…うぅぅ…わかりました… 』

 

『 ……んじゃ、いくわよ? 』

『 …はい 』

 

『 エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、我は求め訴え… 』

 

『 …やはり悪魔扱いで、呼ぶんですね…後、先輩…今まで呪文何て唱えた事ないでしょうに… 』

『 うっさいわねっ! こういった事はノリが大事なのっ! この方がすぐに呼び出せるのよ!! ほらっ…もう反応が来たでしょ!? そんな事も…って……あ… 』

『 …はぁ…今度は、なんですか? 』

 

『 ……… 』

『 先輩? 』

 

『 ………まずっ。冗談で言ってたのに…コレ…マジかも… 』

『 なっ…なんですかっ!? なんですかっ!? 』

『 エリス…あんた… 』

『 え…なんで指さすんですか…どこを…顔? え…ま…まさか… 』

 

 

『 目に……淫紋が… 』

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 …。

 

 夢…と、処理をしている関係もあるとはいえ、前回もそうだが…女性って、そういった体験談とかを話の題材とかにするのかよ…と、思わずにはいられなかった。

 まぁそれも人によりけりだと言ってしまえば、それまでなのだろうが…結構明け透けに言うもんだな。

 みほに対してハッチャケてしまった時の…アレ結構…いや、かなり濃い内容だと思うのだけど、そんな体験や言葉をみほの口から吐かれるとは思いもしなかった。

 みほの場合、彼女の性格や雰囲気もあり、アッチ系の話を言うというのは、アンバランス感や意外性が…なんか…すっごい。

 しかも人に対して話すとか…ぶっちゃけた話、色々と来るモノがありました。

 淫語とか…もっと言わせてみたくもなる。

 

 そして違和感。

 

 …みほ達…この関係を、案外楽しんでいる様に思えた。

 みほだけでなく、最初に俺に対して忠告…いや、警告をしてくれた麻子ですら、今回アノ調子だった。

 麻子の場合、みほの現状を理解しているからこそ、余計にそう思わせる。

 狂った関係だというのに、それに対して普通に……。

 

 

 …。

 

 ……ん?

 

 違和感? …なにを持って、そう思えたのだろう。

 

 多少の誤差はあるだろうが、彼女達には彼女達が、ある程度望む事を具体的に示して来ただけだ。

 夢と判断しているとはいえ、欲求が発散されている現状を楽しんでいる事に対して、何に違和感を持つんだ?

 スキルを利用しての事に関してもそう。

 

 …。

 

 …現実離れしている現状だからこそ、現実離れした事に対しての抗体が出来てないか?

 現状は夢だと判断している事が、現実に起こった事だとしても、彼女達は…ひょっとして…ウケイレルノデハ、ナイダロウカ?

 実際問題、前回のみほとの事で、みほのお姉ちゃん欲求というものを知ったし、ある程度の事だったら…更に彼女達からの欲求を素直に叶えてあげる事が出来るのではないのだろうか?

 一度…聞いてみるのも良いかもしれない。俺の頭が狂ったとでも思われたらソレはソレだ。冗談と笑い誤魔化せば良いだろう。

 …。

 

 ただ、そうなった場合…特に華さん……欲求が凄そうだな…。

 彼女の場合、特にアッチ方面への好奇心が物凄い…。先程彼女本人の口から、少し話していたが、公開SEXっぽい事をしてみた所…乱れ方が半端じゃなかった…。

 ギャラリーっぽいのも、全て俺にした所、どこかで安心したのか…それとも夢だと解っていての事だったのか分からんが、凄まじかったのが記憶に残っている。

 最近、みほにもその傾向が表れていると思うのだけど…どうにも少し、乱暴な呼び方とか、口調とかを彼女達から求められる…。なんでだろう…。

 スキルなんて存在を知られせてしまったら、なんかこう…新しいスキルがバンバン発生しそうな気がして、仕方がないのですが。

 現在、羞恥心を刺激して、背徳感を生ませて…だまし討ちみたいな事をしてしまっているのだけど、それはそれ…だな。

 快楽に流されて、学校のトイレの時の様にただひたすらに求める様にするのではなくて、複数で攻める時の趣向を少し変えてみたとしよう。

 それは先ほどのみほの話と同じく…最初から俺だと認識させてからの場合…どうなるのだろうか? あの恥ずかしがり屋のみほですら、ガキの頃の俺とはいえ、複数の俺という男に対して…卑猥な言葉連発して求めて来たというのだから…。

 

 ……。

 

 受け身だったみほが…積極的に自らの快楽を求める傾向になっていた。

 

【  】

 

 そう…なのだろうか? そういうコトなんだろうか? やはりスキル提示をした方が、彼女達もモット積極的に分かりやすく…

 

【  】

 

 冗談と笑い誤魔化せば良いと思ったが…違うだろう。そこは、スキルで…その感じた違和感を消してやれば良いんだ。

 コレも違う。…それは洗脳に近い…そうだ。違うな。ダメならダメで、記憶を操作すれば良いんだ…。一度告白してみて、ダメだったらそれまで。スキルの告白したという事実を消して、また…普段通りにガンバレば良い。

 もし…彼女達がスキルという、人外の事を受け入れたらば…ある意味で俺としても、本気を出せる…。

 

 ソウダナ、良し…ソウシヨウ。

 

 ナニヲ、ドウ、モトメラレヨウガ、ソレを叶えてやる事が、もう…ここまで関係を拗らせた俺の…義務だ。

 




はい、閲覧ありがとうございました。

挿絵をその内、この話のを描くつもりです。

次回はアンケ話
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