※この作品はR-18です。

転生者は平穏を望む ~ルートPINK~   作:白山葵

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第39話~プラウダ戦です…そうだよね? 隆史君遊んでないよね?~

ダー様「何されましたの!!?? というか、貴女本当に何してるんですか!!」

での事。

これは本来、本編ルート。
そちらに記載する予定だった物です。
まぁPINKルートを開設しちゃいましたから、こちらで逆輸入。
結構シリアス、あんまエロく無いっす。


◆ルート正史 ◆ 西住 まほ ~夏祭り~

お囃子が聞こえる。

 

少し離れた、少し大きな神社。

 

家にいても微かに聞こえてくる。

 

服を脱ぎ…そろそろ迎えに来る、隆史に見せる為に着替えている。

 

そう…見せる為。

 

それは、みほも同じの様で、昔から着ていた物では無く、新たに新調した。

 

白地に水色の花柄。

 

紫陽花。

 

…浴衣。

 

 

どうにも隆史は、昔から私に白色の衣類を着せたがる…。

まぁ制服もそうだが、普段…黒色が強いものを好んで着ていたからだろうか?

 

ならば、期待に答えよう。

 

 

…。

 

 

私は焦っていた。

 

夏場に入り、もう何ヶ月かすれば、私は今の中学を卒業。

一人高校に入学…学園鑑へ…。

 

そうすれば、みほと隆史が二人きりの状態になってしまう。

 

…焦るだろう。

 

妹を敵視…などしたくはないが、この事に関しては別だ。

圧倒的に、二人の時間が増える。

 

私は…。

 

積もる思いもあるが、顔には出さない。

態度にも出さなかった。

 

戦車道があるから。

 

私は、西住流を継ぐのだから。

 

まぁ…みほには、明らかにバレているだろう。

 

……多分、お母様にも。

 

しかし、相変わらずお母様は、隆史にだけは甘い。

たまに嫉妬をする程に。

 

普段を律し、自分に厳しくして来たつもりだ。

西住流らしく。

西住流として。

 

…ただ、隆史に関する事になるとどうにも態度がおかしくなる様だった。

それは、みほにも指摘された。

私自身は気がつかない…。

 

帯を締める。

 

襟首を但し、着方を確認。

シュッっと布が擦れる音がする。

 

その時、偶々机の上の雑誌が目に入った。

 

クラスメイトより、借りた雑誌。

私はどうにも、世間に疎い。

こういった、年頃の娘が読む様な雑誌は全くと言っていいほど縁がなかった。

 

ピンクやら金やら、やたらとキラキラとした、装飾の雑誌。

 

…今からの事を、クラスメイトに話した時。

一度読んでおけと、無理矢理に渡された雑誌。

 

『一夏の体験 特集!』

 

…何やら如何わしい内容だったが…何故だろう、全て読んでしまった。

 

学校でも、隆史は酷く疎かった。浮いた話の一つも出てこなかった。

…あいつは、戦車道を履修していた者に、妙に人気があったのを自覚すらしていなかった。

みほから、隆史が一度、告白らしきものをされたと報告があった。

 

本人は、告白と認識もしていなかったようだが…。

 

雑誌の内容の様に、隆史は軽薄な男では無いと思う。

思うのだが、所詮隆史も男だ。

 

『西住さんが、強く迫れば一発だよ!!』

 

そう…強く、クラスメイトに言われたのを思い出した。

 

……

 

…………ん?

 

これ、バレてないか?

 

 

「…ん」

 

 

部屋の扉がノックされた。

菊代さんだろう。

 

…来たか。

 

『まほお嬢様。隆史君が、いらっしゃいましたよ?』

 

「わかりました」

 

待ち人が来た。

 

しかしよくお母様が、今回この様な時期に遊びに行くのを許してくれたものだ。

しかも夜に…。

 

地元の夏祭り。

 

去年まで夜に出かけるは、禁止されていた。

なぜだ?

 

いくら隆史が頼んだとしても…浴衣まで新調してくれて…。

 

先週から、隆史の様子がおかしくなった事と何か関係があるのだろうか?

 

…。

 

まぁいい。

 

玄関で待たせたままの彼の元に行こう。

もう一度、自身の格好を但し、鏡を確認。

映る自分の顔を見て…覚悟しよう。

 

 

 

みほには、悪いが…今日、計画を実行しよう。

 

あの絶望的に鈍い男に。

 

 

 

 

 

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「……」

 

「……」

 

「こんばんは!」

 

玄関へ出向いた先…その絶望的に鈍い男は……。

 

「…いい加減、この子…俺に懐いてくれないかなぁ…」

 

飼い犬に手を噛まれていた。

 

…あの、私達と一緒に助けられた子犬。

育ちに育ち…すでに成犬となっているのだが…。

 

「ゥゥゥゥゥウウ!!」

 

隆史の手を噛みながら、唸っている…。

この子は、来客にも懐く、人懐っこい犬。

番犬にもならない…と、お母様が珍しく笑いながら嘆いていたのを思い出す。

 

なのに…。

 

「…隆史君、痛くないの?」

 

「痛いな!!」

 

何を嬉しそうに…。

噛まれながらも頭を撫でている…。

 

何故か昔から、隆史にだけは懐かない。

しかし、隆史自身はこの子が好きなようで、毎回こうして噛まれながらも頭を撫でる。

 

「いやいや、二人共。随分と可愛い格好だね」

 

「…え…エヘヘ」

 

みほは、玄関に先に到着していた。

いつもとは違う、少し濃い色模様の浴衣。

 

向日葵の浴衣。

 

白地なのだろうが、向日葵の柄大きく、少し派手…。

しかしみほには良く似合った。

 

というか…。

 

「隆史は、臆面もなく…良くそういった事を言えるな…」

 

「そうか?」

 

「あまり度が過ぎると、軽薄な男に感じるぞ?」

 

「…気をつけます」

 

「そうだな。注意しろ」

 

…。

 

「お姉ちゃん」

 

「なんだ?」

 

「…顔赤い」

 

「……」

 

「お姉ちゃん、可愛いって言われる事、少ないしね」

 

「……」

 

「中学生なのに、綺麗とか凛々しいとか…そういった事ばっかりだしね…そこの所、どうなの? 隆史君からすると」

 

みほ!?

 

「んぁ? まほちゃんは、可愛いだろ」

 

「」

 

……。

 

な…なにを…。

 

 

「隆史君…早々に家の娘を、口説かないで下さい」

 

「お母さん」

 

奥からお母様が顔を出した。

何故か、目が少し優しかった。

 

「く…口説く事になるのか…これ」

 

「自覚無しですか…」

 

 

「…隆史君、なんですか? ジッと見て」

 

「いや…しほさんは、浴衣じゃ無いんだなぁって…」

 

「そうですね…ってどういう…」

 

「いえ…普通に見たかったとぉぉいったぁ!!!!?」

 

すでに下駄を履き、出かける準備が終わったみほに、横から抓られていた。

…私? 私は掴んでいるだけだから、痛くは無いだろう。うむ。

 

「…隆史君」

 

「……隆史、早々にお母様を口説きにかかるな」

 

「ちっ! 違っ!」

 

なにをお母様も年甲斐もなく、満更でも無い顔をしてるのですか。

 

…そのお母様は、仕事で出かけると、私達に言いに来た様だ。

あと、あまり遅くならない様にと注意を。

普段なら、菊代さんを通して言ってくるのだが…何故か今日は直接。

 

「…隆史君」

 

「はい?」

 

「……来年…」

 

「……」

 

「ま…まぁいいです。…隆史君もあまり遅くならない様に」

 

 

珍しく、言い渋ったお母様…。

やはり何か有るのだろうか?

 

「あと、ちゃんと虫避けになって下さいね?」

 

「…あぁ。はい」

 

虫?

 

「貴方が、その虫にならない様に」

 

「……信用が……無い……」

 

 

なんの話だろうか?

 

 

 

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夜道。

 

夏祭りの会場近く。

あの日もその準備が行われた日。

 

…私達が襲われた場所…その近くを通りがかる。

 

色々と感慨深い。

 

暗い夜道を歩いて来たが、そこに近づくと段々と明かりが見えてきた。

 

…考えてみれば、みほと一緒にこう出かけるのも久しぶりだった。

戦車道で忙しく、中々自由な時間が取れなかったのもある。

 

…。

 

感慨深いが…もう大丈夫。

 

その場所の前を通っても、なにも思わない。

ある意味…隆史と出会った場所だ。

違う意味で…感慨深さを感じた。

 

それはみほも同じだろう。

そこはもう大丈夫なのだろう。

 

…みほは、別の意味での傷を負っているから。

 

もう別の話なのだ。

 

 

あの事件以降、私達は腫れものに触れる…様な扱いだった。

なまじ有名な家柄の為、それはしばらく続いた。

それは大人達しか知らない話。

同世代の人達からは、西住流としての扱いは感じたが、それはそれ。

ある意味で普通だったから良かった。

 

「おっ! 隆ちゃん! 両手に花だね!!」

 

「…おばちゃん…やめて……ここ同級生達も多分いるから…大きな声で言わないで…胃が! 死ぬ…」

 

通りがかる地元人。

出店や何やらで、やたらと声をかけられる。

…隆史は、有名人だった。

 

普段から、同級生達より大人の人達と接する事が多かったらしく、顔見知りが多かった。

本人曰く、大人の人達と話す方が楽との事。

そんな事だから、同級生の友人が少ないのでは無いのか?

 

 

隆史も珍しく浴衣を着ていた。

紺一色の浴衣。

 

普段ならこういったイベントもあまり参加しないのに…珍しく、そんな格好までして。

というか…隆史は、ガタイが良いから、そういった服装は…ガラが悪いな。うん。

 

…虫除け…ね。

 

「隆史君!」

 

みほもみほで、珍しく燥いでいる。

出店の間を、隆史の浴衣の裾を引き急かしている。

 

…ここの所、みほの性格も落ち着いたと思ったのにな。

根本的なモノは変えられないのだろう。

 

隆史は、みほの性格が、中学生位から落ち着いてきて良かったと言っていたが…まだまだだな。

実際は、小学生高学年位から。

段々と内気な性格に変わっていった。

昔の様な…無茶はもうすまい。

 

…多分、その原因は隆史にあるのだが…言ってやらない。

 

「……」

 

「ん? どうした隆史」

 

「隆史君?」

 

「い…いや…何でもない」

 

「?」

 

少し表情が曇った隆史。

みほと一緒になって、久しぶりに3人でいるというのに…。

 

「…こりゃ…学校で何か言われるなぁ…」

 

小さく呟いていた。

 

あぁ…なる程。

同級生でも見かけたか。

 

……。

 

ふむ。なる程。

 

見られているのか。

 

…ふむ。

雑誌では…確か。

 

隆史の腕を取る。

 

「…何してんの、まほちゃん」

 

いや、違う。

これでは関節を決めにいく時だ。

 

こうだったか?

 

腕を絡め、肘を曲げる。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「腕を組んでみたのだが?」

 

注目が一気に集まる。

 

それはそうだろう。

 

私達、姉妹は有名人だ。

…特に私は。

 

地元では知らぬ者は、少ない程だろう。

 

少し赤くなっている隆史が…何故だろう。

…そんな彼を見て、嬉しく感じる自分がいた。

 

年下の…背の高い彼の顔を見上げ…聞いてみる。

 

「…どうだ? 隆史?」

 

 

 

 

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そろそろ、21時。

 

久しぶりに燥いだと、みほに少し疲れが見える。

まぁ…少しの休憩。

 

出店を周り…行く先々、囃し立てられる隆史。

 

みほもいるので、早々に二人になど慣れないと思っていたのだが…流石に地元の祭り。

隆史とみほ。そして私の同級生。

合計してしまえば結構な人数。

思いの他多くの人と遭遇してしまい…何もできなかった…。

 

夏祭りも終わり間近の最後の活気で、盛り上がっている。

少し離れた境内。

 

「コワイコワイコワイ…ファンクラブ…コワイ」

 

たまに隆史が何かを呟いているな。なんだ?

腕を組んだ辺りからか? たまに呟いている。

 

「さ…さて、そろそろ帰るか?」

 

最後までいると、帰りの帰宅ラッシュに捕まると…風情も何もあったものじゃない事を隆史が言い出した。

こういった時は、最後までいるものだと思うのだが…。

 

と…いうか。

 

……計画…まったく何もできなかった。

私達が一緒にいられるのは、これが最後かも知れないというのに。

 

「う…うん」

 

みほは、もう少し愚図ると思ったのだが…隆史の提案に素直に……ん?

 

「…みほ。大丈夫か?」

 

「お姉ちゃん…だ…大丈夫」

 

普段、履き慣れない物を履いた為だろうか。

下駄の鼻緒の根元に少し、血がついていた。

 

親指の関節部分が、少し擦れて充血している。

 

「…歩けるか?」

 

「大丈夫…」

 

そう言って立ち上がり…ゆっくりと歩き出した。

 

 

……。

 

ダメだろう。

 

 

帰り道。

 

暗い為シルエットが浮き彫りになり、余計に目立つ。

歩き方が、少しおかしい。

歩行を隆史と二人、一緒にみほに合わせて歩いていたが、やはり少し心配になる。

 

「ふむ…まぁ…いいかなぁ…」

 

「…隆史?」

 

「みほ」

 

「な…なに?」

 

先程から何か少し考えていた隆史が、やっと答えを出したとばかりに声を掛けていた。

なんだ?

 

「……怒るなよ?」

 

「え?」

 

…抱き上げた。

両腕を使い、足の関節部分を刈り取り…というか…。

 

「ひゃぁ!?」

 

なんだ、その慣れた動きは。

 

「に…睨まないで…」

 

「随分と、慣れていたな」

 

「…こんな事するの初めて…ですけど?」

 

「アワワワ…」

 

あれだ…俗に言う、お姫様抱っこ…というやつだろう。

雑誌に載ってた。

載ってた!

 

「いや…おんぶしても良かったんだけど…そっちの方が恥ずかしと思って…」

 

「…その格好の方が恥ずかしいと思うが?」

 

「いや…だって…浴衣だから…足とか結構出るぞ?」

 

「……」

 

「シワにもなるし…」

 

「……」

 

「…何故、まほちゃんが怒ってるんだろう…」

 

…なんだみほ。

その顔は。

何故、勝ち誇っている。

幼少の頃の表情と一緒だな。

 

しかし顔が赤い分、変に強がっているな。

 

暗いが、しっかりと分かるぞ?

 

「あー…みほ」

 

「なっ! なに!?」

 

「…できれば首辺りに、腕を回してくれるか?」

 

「「 なっ!? 」」

 

「その方が持ち運びに、ら……く……な……まほちゃん!! なんで更に睨むの!?」

 

「原理は分かる。分かるが…なんだ? みほは、重いか?」

 

「!?」

 

「…いや、重くは無いけど…目が怖いんですけど…」

 

「ならば頑張れ。男だろう」

 

「……」

 

 

まったく。

 

 

結局何もできなかった。

これを思うのは何度目だ?

 

無言で、みほを抱き抱え、歩く隆史。

結局、最後には赤くなり、無言で縮こまっているみほ。

 

無言で、その横を歩く私。

 

…まぁいい。

 

今のこの時が、心地いい。

態々、壊すこともあるまい。

 

 

あまり時間は無いが…まだ卒業までにはある。

 

そのうちに……。

 

…離れる前に。

 

 

 

思いを伝える事も…できるだろう。

 

 

自然に笑う。

今は、この時間を楽しもう。

 

 

 

「…なぁ、まほちゃん。みほ」

 

 

無言に耐えかねたのか、隆史が口を開いた。

なんだ?

少し声が真剣だった。

無言で歩く、この時が少し名残惜しい。

 

 

「…母さんのさ。契約が今年いっぱいで、切れるんだってさ」

 

「おばさんの?」

 

 

 

足が止まった。

 

 

 

「お姉ちゃん?」

 

…分かった。

 

私には、すぐに分かった。

 

契約。

 

隆史のお母様は、西住流師範代。

全国規模で飛び回る、ある意味珍しい師範だと聞いていた。

もう、何年も熊本にいるので、ここに腰を落ち着けたと…そう思っていた…。

 

呆然と下を向く私を見て…苦笑しているかの様な…そんな声で話し出す。

 

「まだ、正確にいつになるか、わっかんないけどさ…」

 

その…契約が切れた?

 

「間違いなく、まほちゃんの卒業前には…」

 

なんだ…。

 

何故、今言う。

 

何故この帰り道。

 

今この時に言うのだ。

 

 

「俺は転校する」

 

 

随分と甘い待遇だったそうだ。

 

隆史が小学生の為、教育の為にある程度成長するまでは…と、随分と契約期間を伸ばしていてもらっていたそうだ。

そこには、お母様も絡んでいた。

…まぁ当然だろう。

 

あの破天荒な、隆史のお母様。

 

戦車道の講師…護身術の講師としての二足の草鞋。

昔から引く手数多だったようだ。

 

もう限界だった。

 

最長期間が過ぎ…これ以上の引き伸ばしはできない。

 

これは決定事項なのだと…淡々と語る隆史。

 

みほは、動かない。

 

隆史の腕の中で硬直している。

目を見開き、少し…震えている。

 

なる程。

 

それで、今日の事をお母様はお許しになったのか…。

 

3人での…最後の……

 

 

 

そのまま無言で、暗い夜道を歩く。

 

無言。

 

先程までの雰囲気では無い。

 

とても憂鬱な…。

 

とても……。

 

みほは何も言わない。

 

たまに様子を見ると…隆史の浴衣を握り締めている。

 

表情が…わからない。

 

 

 

我が家の光が見える。

 

 

 

玄関先、菊代さんが出迎えてくれた。

私達の表情を見て…何も言わないで、隆史の顔を見ていた。

あぁ…菊代さんも知っていたのか。

 

「ま…まぁ、まだしばらくはいれるからさ…」

 

そんな隆史の言葉を無視し、みほは無言で、自室に早足で消えていった。

足もまだ痛いだろうに。

 

……

 

…………

 

 

全身の毛が逆立つ…鳥肌が立つ…。

そんな感覚が先程から、体を駆け巡る。

 

…焦った。

 

ここまでの感覚は…人生初だ。

 

なかった。

 

全然、時間が無い。

 

いつだ? いつ隆史は…いなくなる?

 

 

「あぁ…大丈夫ですよ、菊代さん。明日にでもみほと、ちゃんと話してみますから」

 

「…そうですか?」

 

「えぇ」

 

菊代さんと話している。

そろそろ帰ってしまう様な雰囲気だった。

相変わらず年上には、気持ち悪い位の丁寧な喋り方…。

 

 

 

 

…ダメだ。

 

今日ここで帰しては。

 

 

「では…俺はこれで…」

 

「ダメだ」

 

「まほちゃん?」

 

「…もう夜も遅い。未成年が夜道を一人で歩くな」

 

「…! あ、それもそうですね!!」

 

菊代さんが何かを察してくれた。

明るい口調で、私に合わせてくれる。

 

「菊代さん!?」

 

「…連絡はしておく。だから隆史…」

 

「…待て、待て待て! それは小学生の時だったからであって!! 今は、まずいだ…」

 

 

「泊まっていけ」

 

有無を言わさず押し切った。

 

 

 

 

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取り敢えず、話があるからと自室に招いた。

…そういえば、隆史を自室に入れるのは…小学生の時以来…無かったな。

それは、みほも同じだろう。

 

……ふっ。

 

違う。

 

そうじゃない。

 

勝ち誇ってどうする。

 

 

「……」

 

 

居心地が悪いのだろうか?

 

部屋の中心で正座している。

 

なんだ?

 

頭を抱えている。

 

「…年頃の娘が…夜に男を自室に招くなよ……」

 

相変わらず、お父様みたいな事を言っているな。

 

「…素直に流されて入る、俺も俺だけど…」

 

…嘆きが長いな。

 

「私は…そうだな。飲み物を用意するから少し待っていろ…?」

 

「…何故疑問形…」

 

「少し退室するが…あまり物が無い部屋だがな、あまりジロジロ見ないでくれ」

 

「…見ないよ」

 

「……衣類箪笥とか漁るなよ?」

 

「漁らないよ!!」

 

「ちなみに…下の段から2つ目が、下着…」

 

「どうしろと!? その情報を俺に教えて、何かメリットあるの!? まほちゃんに!!」

 

「……」

 

「…なぜ黙る」

 

「…本当に漁らないのか?」

 

「なんで、残念そうなんだよ…」

 

ぬ…私に興味が無いのだろうか…?

隆史も年頃の男だというのに。

 

それは、私の焦りを加速させた。

 

……。

 

何故だろう…何か間違っている気がするのだが…。

 

 

 

ま…まぁいい。

 

 

さて。

 

自室を退室し、菊代さんが空けていた台所まで一直線に来た。

飲み物を用意する。

 

何の飲み物かとは言っていない。

 

あの雑誌に書いてあったな。

 

男の本音を聞きだすには…。

 

一夏のアバンチュールの初期動作…とか、なんとか、かんとか…。

 

蝶野さんの話によると…随分な事になるそうだしな…隆史の場合は特に。

まぁ…蝶野さんは、蝶野さんで何故その事を知っていると、随分とお母様に追求されていたが…。

 

探せばあるだろう。

 

お母様の物が。

 

私達の前では飲まないから、バレていないつもりなのだろうか?

 

…あの酒好きが。

 

 

コップにつぎ、氷を入れる。

 

…くさい。

 

あまり好きな匂いではない。

バレないだろうか?

 

まぁ…大丈夫だろう。

なんせ隆史だ。

 

聞きたい。

 

本音が聞きたい。

 

今日の計画とは大分違ってしまったが、あまり躊躇している時間が無いのが分かった。

特に私は…。

隆史と会ったり、話したりする機会がみほと比べると極端に少ない。

 

もう一度言う。

 

私は焦っていた…。

 

思いを告げる…その前に……隆史の気持ちを知って起きたかった。

 

普段ならこんな卑怯な事はしない。

 

でもなぜだろう…。

 

お母様の一升瓶の中身をコップに移す時、私は…無意識に笑っていた。

 

 

 

 

 

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「隆史?」

 

「…はい」

 

「一心不乱に、何を数えているんだ…」

 

「…素数」

 

「は?」

 

お盆に載せた「飲み物」を持って、部屋に戻ると、必死になって素数を数えていた隆史がいた。

 

素数?

 

「まぁいい」

 

正面に同じように正座で座り、お盆のまま差し出す。

お盆の上にはコップが二つ…。

当然、私の方を向いているコップの中身は…隆史とは違う。

少し琥珀がかった「飲み物」

 

「…あ…ありがと」

 

「―で?」

 

「…で? って?」

 

「漁ったか?」

 

「漁らねぇよ!!」

 

―チッ

 

「なぜ舌打ち…」

 

「……」

 

「な…なに?」

 

「飲まないのか?」

 

「…の、飲むけど…」

 

「……」

 

「……」

 

「なに!?」

 

「いいから、早く飲むんだ」

 

「……」

 

「……」

 

「まほちゃん」

 

「なんだ?」

 

「なにか、企んでる?」

 

「……」

 

「……」

 

なぜ、こういう時だけ鋭いのだ、こいつは。

では、まず誤魔化すか。

 

「…隆史、お前は本当に転校してしまうの…か?」

 

「……」

 

私がその話題に言い淀んでいると思ったのか、少し真面目な顔になった。

 

まぁ…それもあるのだがな。

 

「んー…しほさんが、何とか俺だけは残れる様にできないかって、考えてくれてはいたみたいだけどさ」

 

「お母様が?」

 

意外だ…それは意外。

隆史に甘いのは昔からだが…そこまで。

 

「そ、まぁ教育上やら何やらで、無理だったみたいだけどね」

 

「……」

 

ここで「飲み物」に、口をつけてくれた隆史。

 

良し!

 

「まぁ…正直…」

 

「なんだ?」

 

「俺が転校するのは…みほの為にも、良い機会かなって思ってな」

 

「…みほの?」

 

隆史も少しは、緊張してくれているのだろう。

「飲み物」を一気に飲み干した。

一瞬、眉を潜めたが、話の腰を折りたくないのか、そのまま続ける。

 

「まほちゃん。ハッキリ言う」

 

「…なんだ?」

 

「みほは、俺に依存してる」

 

「……」

 

「コレは、みほの為にならない」

 

「……」

 

「ガキの俺が言うのもなんだが…ね」

 

「……」

 

「……」

 

隆史の言いたい事も分かる。

昔からみほは、隆史と一緒にいる。

 

小学生から、中学生にかけて。

特に異性と共にいるみほの評判は、正直あまり宜しくなかった。

まぁ中学に入り、私と同じく戦車道を履修してからは、時間があまり取れなくなり、その時間は減っていったが…。

 

「あの事件の事もあるけど…どうにも俺をヒーロー像として見ているのかねぇ…。まぁ俺自身の事もあるし…だから」

 

「…だから?」

 

「…転校する事を素直に受け入れた?」

 

「……」

 

「だから…まほちゃんも…『待て』」

 

ダメだ、それは言うな。

私も…みほと一緒だ。

 

お前に異存しているつもりは無いが…無いのだけど……。

みほの気持ちは理解できる…できてしまう。

 

何か言おうとしたが、視線を落とした先、先程隆史が飲み干した、空になったコップが目に入る。

また、話の腰を折ってしまう事になるが…。

 

「…空になったな…もう一度入れてくる」

 

誤魔化した。

言わせない為に。

 

言い返してしまいそうだった。

 

ヒーロー像?

 

なにを言っているのだろう?

少なくとも…。

 

私達、姉妹にすれば…お前はソレ、そのモノだ。

 

助けてくれた。

それどころが、何年も一緒にいてくれた。

 

支えてくれた。

 

私だって女だ。

 

心が折れそうになる事もあった。

 

だけど、隆史。

 

お前は、あの病室でした約束の通り。

 

ずっと…私達を見てくれてたじゃないか。

 

 

「……」

 

 

逃げるように出てしまった自室。

少し早足で、台所に向かう。

台所にて…また「飲み物」をコップに移す。

 

今度は、笑いなどしなかった。

 

……ただ、少し…視界が揺らいだ。

 

 

「飲み物」を入れ直し、もど…いや、もうこのビンさら持っていこう。

部屋の外にでも出して、視界に入れなければいい。

 

自室の扉の前、逃げ出すように出てしまった為に、入るのに躊躇してしまう。

だが、こうしている訳にもいかない。

 

…。

 

「…何してる隆史」

 

ドアノブを捻り、ドアを開けた先…隆史が私の机の前に立っていた。

な…なんだ。

様子が少しおかしい。

 

「あ…ゴメン。まほちゃんも…こういった雑誌を読むのかと」

 

「!!」

 

「こ…これは! クラスメイトに借り…もとい! 押し付けられたのだ」

 

「そう…なの?」

 

「そうだ」

 

急いで近づき、机にお盆を置き、ひったくる様に隆史の手から、雑誌を奪う。

ぬ…。

 

「見たのか?」

 

「中身?」

 

「他になにがある」

 

「ザッと…全部見た」

 

「……」

 

少し耳が熱い。

少々内容が如何わしい為、後ろめたい…。

 

「ま…いいんじゃないか? まほちゃんも…年頃だし…まぁ…程々にね」

 

「」

 

くそ! 下手に言い訳をすると墓穴を掘りそうだ。

 

「の…飲め」

 

ん?

 

コップを出すと、何も言わないで素直に飲み始めた…。

そうだ、やはり隆史の様子がおかしい。

口調も…少しゆっくりになり、所々…言葉が飛んでいた。

 

……これは。

 

2杯目をすぐに飲み終わらせた…。

なんだ? …目が少し座っている。

 

これは!!

 

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

フ…

 

フフ……

 

フフフフ…

 

なる程。

 

こうなるか。

 

酔った隆史はこうなるのか。

色々と試してみたが、なる程なる程。

蝶野さんの言っていた通りだな。

 

非常に…怖いくらいにバカ正直に言うことを聞いてくれる。

普段なら教えてくれない事も、今ならなんでも聞けば答えるてくれる。

照れているのか何なのか分からないが、普段なら絶対にしてくれない事も今では思いのままだ。

 

フフ…これは…いい。

 

「…まほちゃん」

 

「なんだ?」

 

「…何かこの行為に意味は…あるのか?」

 

「…無いな!」

 

「そうか…」

 

ふっ。

これはいい! 

 

隆史の頭は今、私の膝の上だ。

…一度やってみたかった。

 

膝枕というものを。

 

たまに見せる疑問は口にするが、答えれば特に何もしない。

 

試しに言ってみるものだな。

素直に従った…横になった隆史の頭を…軽く撫でている…。

いいな! これはいい!!

 

「隆史」

 

「なに?」

 

「みほに、この…膝枕とか…して貰った事はあるか?」

 

「無いね」

 

よし!!

 

 

…。

 

 

「…なぁ、隆史」

 

「はい」

 

 

……。

 

 

呼びかけながら、頭を撫でる。

手で硬い髪の感触を楽しむ…。

 

何故だろう…。

 

こんな…酒まで飲ませて…卑怯な真似までして、聞き出そうとした隆史の気持ち。

少し、みほの事を口にしてしまったら、凄まじい罪悪感が襲ってきた。

それに…こんな事で…。

 

この膝枕で、私の心が満足してしまった。

 

…。

 

もういい…。

 

転校の事は…明日また、ちゃんと話そう。

 

みほも交えて。

 

正直言ってしまえば、隆史の本気の本音を聞くのも…少し怖かった。

 

…だから、もういい。

 

もう少し、あと少しこうしていさせてくれれば…今日の所はこれで満足だ。

 

 

「…そういえば」

 

「なんだ、隆史」

 

「さっきの雑誌にも…似たような……事が書いてあったような…」

 

「……」

 

「…彼氏を膝枕に誘導………………痛いんだけど…まほちゃん」

 

「忘れろ」

 

少し頭に爪を立てた。

どの記事の事かは、すぐに思い出したが、あんなモノと一緒にされるのは心外だ。

あれはもう、如何わしい類の事だ。

 

それに…だ。

 

 

「…隆史。少なくとお前は、あんな事出来ないだろう?」

 

「…あんな事?」

 

私をちゃんと、異性として見てくれているかも心配する程の朴念仁だというのに…。

 

「雑誌の内容? なに? ヤレバイイノ?」

 

「……はっ。できるものならな」

 

軽く笑い流し、いつもの様に軽口で、軽くからか……「分かった」

 

……。

 

ん? 

 

今、何といった?

 

 

「!?」

 

 

撫でる事に一生懸命だった、自身の手と腕を、両手のまま宙に浮かべた。

 

……。

 

隆史の手が、太股を触ってゆっくりと撫でていた。

その…浴衣の裾の間から滑り込ませて…。

 

太ももの内側に指が入って来る…。

 

「なっ!? 隆史!?」

 

いつの間にか、体を起こしていた隆史。

そのまま私の前に、真正面から向かってきた。

座っていた私の肩を、顎で軽く押しながら…覆い被さろうと…。

 

両手を後ろでに支え、なんとか倒されないように体を支える。

 

違う、いつもの隆史じゃない。

 

最近では、私の体…というか、手にすら触れるのを躊躇していた隆史なのに…。

 

 

「まっ…待てたっ…んん!!」

 

抱きしめられる様に、背中に手を回され、首元に…隆史の唇の感触……。

押されてしまっていた為に、脚を崩した所を、更に隆史の足が、私の足の間に入ってきた、

 

後ろに逃げようとしたのだけど、こちらは浴衣。

裾を膝で踏まれてしまっていた為に、動きが取れない。

 

…背中から、布が擦れた音がした。

 

少し、乱暴にだけど、帯が緩められたのか?

簡単に解ける訳も無いのだけど…。

 

…待て。

 

……帯に触れた? 緩めた?

 

帯の根元付近の着物の襟を指で掴み、引き抜く様に、上にずらした。

シュッと音を立てて、少し動いた。

 

菊代さんが着付けを手伝ってくれたのだから、ほぼ完璧な着こなし。

…帯は簡単には解けない。

 

要は…それを知っていて……尚且つ…。

 

上半身の浴衣が、大分気崩れていると分かる。

…これを…隆史が随分と…慣れた手つきで…行った?

 

驚き、固まってしまった私の首元に隆史の顔がある。

 

…気が付けば、完全に押し倒されてしまっていた。

 

足もとの裾は完全にめくれ、その…下着の部分まで手と足で開かれてしまっていた。

上半身は、帯で腹周りは締められていた為、首元から肩にかけて…胸元を露出しながらはだけさせられた。

 

……。

 

…………。

 

一瞬。

 

放けてしまった間に…一気にここまでされた。

 

「んっ!?」

 

後頭部に、隆史は左腕を入れてきた。

半身になって、私の横に並ぶように寝そべる。

 

「んんっ!」

 

空いた右腕で、太股の付け根部分、関節を筋をなぞる様に指を這わせた。

そのまま親指を下着の間にいれたのだろう。異物感を感じた。

 

…隆史だよな?

 

あの、隆史だよな!?

 

親指を曲げ、下着の端を掴まれた。

そのまま下に…。

 

「まっ!! まtt!! んん!!」

 

唇に熱い体温。

「待て」の一言を言わせて貰えない。

 

 

 

……唇を奪われた。

 

 

 

 

----------

------

---

 

 

 

「んぅ…チュ………ぅん」

 

下唇を舌と唇で弄ばれている。

 

下着はすでに、太股まで脱がされていた。

無意識に腰を浮かせ、自分からそれを受け入れていた。

 

口の中に、舌が入ってきた。

ニチャニチャと音が、頭に響く。

 

すでに私自身、もう身動きを取る気なんて無く、素直にそれを受け入れた。

 

「は……ハッ……んっ……チュ……」

 

隆史の顔に手を添え、口内から出た舌を絡ませる。

たまに私の舌を吸われ、なんとも言えない感覚が、脳髄を走る。

 

隆史が女として私を見てくれていた。

 

こんな状態だけど…その事実が…思考を支配した。

 

嬉しかった。

 

口から離れた隆史の唇が、時に首へ…胸元へ…私を味わうかの様に…動き回る。

 

「んっ…はぁ!」

 

遊んでいた、隆史の右手が、私の恥丘へと届く。

ニチャっとした感覚がする…とか。

指先が熱い…とか。

 

囁くように、私の耳元で隆史が呟く。

 

太股を撫で回す指と手。

それが毛を逆立てるかの様に、ゾクゾクとした感覚を誘導する。

 

「あ…ぁ……んっ!」

 

声を出すのが恥ずかしい。

必死で我慢するが、どうにもうまくいかない。

 

指が秘部を刺激する。

ニチャニチャと…クチュクチュと…隆史は、音をワザと出すように。

 

…ただ…快楽とは別に…恐怖感も生まれてきた。

 

隆史が、隆史では無いみたいだった。

 

怖かった。

 

流されだした自分も怖かったのだけど…隆史が別の誰かに思えて怖かった。

 

「はぁ……はぁ……んん! あっ!! あぁ!!」

 

秘部の表面を撫でながら…時に…良くわからないが…一部を摩られると、脳が痺れる感覚に襲われる部分を…必要に弄ばれた。

 

「はっ! はっ! はっ! んぁ!?」

 

入口部分…というのだろうか?

 

散々に焦らされていると感じたら、不意打ちで快楽の一撃が襲ってくる。

 

その繰り返し…。

 

何度も。

 

何度も。

 

他人に触れられる…予想外の感触。

 

隆史…。

 

「んっ!! はっ!! はっ!! んんっ!? んんぁぁ!?」

 

 

来る…。

 

なにか…大きな……。

 

 

グチュ

 

指が入った。

 

 

「っっっっ!!! んっっんんんんん!!!」

 

 

視界が……頭が……真っ白になった。

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

「……」

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 

「……」

 

 

隆史は何も喋らない……。

 

 

 

「んん!?」

 

ボーっとしてしまっている…思考がまだハッキリとしない目線で、隆史を見る。

 

いない…。

 

隆史が横にいない。

 

いや…真上にいた。

 

 

これは…。

 

 

荒い息遣い。

 

明らかに目がおかしい。

 

充血して…光が無く。

 

そして…。

 

 

ある意味で、私を見ていない。

 

 

両手で腰を持たれ、浮かされた。

 

うまく…考える事ができない。

 

……

 

…………

 

 

秘部に熱い。

 

本当に、何か熱いモノが当たった。

 

 

「あ……」

 

 

奪われるか…。

 

 

 

…それもいい。

 

 

むしろ…隆史意外とは…考えられなかったしな…。

 

……。

 

………………。

 

 

ズッ…と、押される感覚が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「待て! やはりまだダメだ!!」

 

 

押し返すより、横に受け流す。

 

その方がいいと瞬時に判断、体を動かしてしまった。

 

手を隆史の顔を殴るように、当ててしまった。

 

 

嫌だ。

 

 

 

嫌だった。

 

 

 

こんな隆史は嫌だ。

 

 

 

 

普通の…いつもの隆史では無くては嫌だ。

 

 

 

 

……。

 

 

 

 

反射的にとは言え……。

 

殴る様に拒絶した手は、思いの他、本気の力だったようで…。

 

横から凄い音がした……。

 

 

 

 

 

ゴツンとか…ガツンとか…そんな音では無くて…。

 

ゴッ

 

っと…鈍い……音。

 

 

勢い余って、机に隆史の頭を打ち付けてしまった。

 

 

本気のチカラで。

 

「……」

 

「……」

 

た…隆史が動かない…。

 

完全に脱力した体は重く…私の上に覆い被さっている…。

 

 

……。

 

 

「た…隆史!?」

 

体を起こし、肩に手を添える。

 

……。

 

血の毛が引く…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「  オ  ネ  エ  チ  ャ  ン  ?  」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

ノックもなく…扉が開いていた…。

 

私達の部屋には鍵が無い…だから…いや……。

 

みほが…開かれたドアの外に立っていた。

 

すでに着替えたのか、部屋着のままで……。

 

浴衣が乱れ…ほぼ半裸の私に覆い被さっている隆史…。

 

 

……。

 

 

みほがいない。

 

 

私が知っている…みほが……いない。

 

 

無言で、眼球が動き回らせている、みほ…。

 

 

目だよな…。

 

 

あれは、目と判断していいのだろう!?

 

 

「ま……待て!! みほ!! ご…誤解……だ!!」

 

 

「  広辞苑  」

 

「…え?」

 

 

「  オ ネ エ チ ャ ン   抜けがけって意味…引いてきて……」

 

 

「」

 

 

命乞いに似た、言い訳とやらを…私は人生で……初めてした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酷かった。

 

 

 

 

廊下に置きっぱなしにした酒瓶で、みほには言い訳がたった。

 

 

 

 

酒。

 

 

 

 

全ての現況。

 

 

雑誌の記事を鵜呑みにするものでは無いな…。

 

改めてそう思う。

 

 

気絶した隆史は、結局朝まで目を覚ます事は無く、私はお母様に幼少の時以来、久しぶりに本気で怒られた。

 

まぁ……大半は、あの酒だろうなぁ…。

 

どうにも、秘蔵の酒だったらしい…。

 

正直、お母様より…菊代さんの方が怖かったが……。

 

 

ただ……。

 

 

何より最悪なのは……。

 

 

 

 

隆史の記憶が飛んでいた。

 

どうにも、酒を飲ませた後の事…膝枕くらいまでは覚えていた様なのだけど…その後の…。

 

それが良かったのか…残念なのか……。

 

あそこまで……シタノニ…。

 

翌日、正常に戻った隆史に土下座されたが…本当の事を言っていい物なのだろうか?

 

すっごい、大まかに、みほに説明した内容を復唱させられ…土下座されたからなぁ…。

 

まぁ、私をちゃんと、女性として見てくれていたと分かっただけでも良しとしよう…。

 

今回、記憶が飛んだのが、酒のせいだと思い込んでしまったので、後日またひどい目に遭うのだな…。

 

アレの第二段階があるとは思わなんだな…。

 

 

 

 

 

 

教訓。

 

 

人間は、失敗を糧とする生き物…。

 

一つ…隆史に酒を飲ますべからず

 

二つ……あの状態の隆史に、面白半分に口を開くべからず

 

 

 

 

 

三つ…………みほを…怒らさずべからず……

 

 

 

 

 

 

 

 

●

 

 

 

 

 

 

「何されましたの!!?? というか、貴女本当に何してるんですか!!」

 

やかましいな、ダージリン。

 

そんな事、事細かに詳細に…言う訳が無いだろう。

 

これは私と隆史の…まぁ記憶は飛んでしまったが…。

 

私達の秘め事という奴だ。

 

これは隆史以外には、言わない。

 

ある意味…切り札だ。

 

それはみほに対しても一緒…。

 

 

「エリカ…お前は、どうする?」

 

 

さて…アレの暴走を止めなくてはな。

 

「…黒森峰…西住…まほさん」

 

「…なんだ?」

 

聖グロリアーナ…オレンジペコと言ったか。

 

ふむ…この娘が隆史のお気に入り。

 

なるほど。

 

 

「…何か…ありましたよね?」

 

「…何か……とは?」

 

勘がいいな。

 

「オレンジペコ…と言ったな?」

 

「…はい」

 

「君は、何もかも他人に…大事な思い出…と言う奴を話すのか?」

 

「え…」

 

 

 

唇の前に人差し指を立てる。

 

シー…と口から音を出す。

 

 

 

 

「…内緒だ」

 

 

 




閲覧ありがとうございました

はい。エロくなかったですね。

はい。健全です。

ありがとうございました。


@リク結構な……いや……なにこの数ってのありがとうございました。
…対応がきつい……
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