※この作品はR-18です。

Lv.100チンポ   作:早見 彼方

3 / 61
抑制

 妖しい紫色が広がる空間に、一夏は立っていた。格好は裸だ。相変わらず股間の一物は怪物だ。見ただけで相手を威圧する太い肉の棒。丸々と膨らんだ睾丸。精液に濡れていない今の姿が珍しいと感じられてしまうほどに、強い精力を感じられた。一夏の手に掛かれば妊娠しにくい女だろうと容易く一夏の子を孕むだろう。

 しかし、今の一夏は不思議と性欲を感じなかった。

「どこだ、ここ……」

 一夏は足を踏み出し、近くを探る。だが、その空間は延々と広がっているだけだった。

 いったい何が起きたんだ。これは夢か? いったい、どこまでが夢だ?

 一夏が困惑し始めたのと、背後から声を掛けられたのは同時だった。

「いらっしゃい」

「うわっ」

 突然の声に驚き、一夏は振り向きながらその場から距離を取った。

 数メートル先には少女が立っていた。十二、三歳の年頃。黒々とした髪。それが背中まで覆う体はとても華奢で、白いワンピースに覆われていた。まるで人ならざる存在が作り上げたかのように顔は整っていて、柔らかい微笑みがとても愛らしい。

 笑みを解いた彼女の眼は、意識が引きずり込まれそうになる魅力に満ちた紫色だった。

「よく来たね。織斑一夏」

「どちら、様ですか?」

 一夏には目の前の少女のような知り合いはいない。人目でも見ていれば覚えているはずだ。それなのに、相手は自分の名前を知っている。テレビで知ったのだろうか。『インフィニット・ストラトス』、通称『IS』を動かせる唯一の男として、一夏は世界的にも有名だ。マスコミだけでなく、知らない人から声を掛けられることも多かった。

「私? 私は神様」

「か、神?」

「うん。そう」

「へぇ、そっか……」

 少女の言葉に、一夏は体に感じていた強張りを解いた。俗に言う中二病という奴なのだろうか。一夏にはあまりそう言った思春期特有の経験はなく、中学時代に同級生がその病に罹ったときも生暖かい眼差しを向けていた。老人が、幼い子供を見てほっこりとしている感覚と同じだ。

 この少女も同じ。と、思えたのは、その瞬間だけだった。

 少女は何の挙動も見せず、瞬きの間に一夏の眼前に移動した。

「うわぁっ!?」

 反射的に後方へと飛び退ってしまいそうな一夏だったが、少女の行動がそれを制した。

 少女が一夏のボール大の睾丸を掴んだからだ。

「逃げると潰す。騒いでも潰す」

「ひ……」

 一夏は寸でのところで声を押し殺し、その場に止まることに成功した。危なかった。少女の手から感じた力と少女の声色は本物で、危うく一夏ちゃんになってしまうところだった。変貌したとはいえ、今まで一緒に生きてきた相棒をこれほど情けなく失うつもりはなかった。

 身を強張らせ、立ち止まる一夏。

 それに対して、少女は手に持った睾丸を弄ぶように弄り、観察していた。

「よく使われているね。製作者冥利に尽きるよ」

「製作者?」

「そう。これは私が作った『Lv.100チンポ』。全ての女を従える代物」

 少女が言ったLv.100チンポという言葉に、一夏は心当たりがあった。

 一人の大きな欲望を抱えた男がいた。その男は世界中の美女や美少女を手に入れるという夢を抱いていたが、志半ばで朽ち果てた。男はその欲望とともにそのまま無に帰すかと思われたが、死後に紫色の部屋で目覚め、神様と名乗ると出会った。

 その神様の姿が眼前の少女だったことを、今思い出したのだ。

 しかし、それらは夢の出来事だったはずだ。

「私がとある男に与えた、三つの転生特典のうちの一つ」

 だが、どうにもこの出来事は夢のように思えない。妙に現実的だった。睾丸を撫でる少女の手の柔らかい感触が心地よく、ムクムクと肉棒が勃起していく。世の男が五体投地で完全敗北を認める立派な生殖器官の逞しい主張だった。

 まずい、と思う一夏だったが、今までと何か違うことに気がついた。

 一夏の肉棒から見えない何かが溢れ出ていた。人によっては、気だの念だのと思える何かは湯気のように一夏の肉棒ならびに全身から立ち昇り、周囲に拡散していた。

「な、なんだ……」

 恐怖を覚えて冷静さを欠く一夏。そこへ、少女の声が掛けられる。

「それは、Lv.100チンポの特性『フェロモン』。嗅いだ女を虜にする匂いを放つだけでなく、本人の欲望すらも増幅させる。これに完全に抗うことは不可能。どれだけの強者や聖人であって、いつかは堕ちる」

「どうしてそんなものを作ったんだっ!」

 一夏はここに来てようやく、製作者への文句の言葉を口にすることができた。

 この肉棒のせいで、一人の幼馴染と姉が犠牲になった。もう元の関係に戻ることはできないだろう。これからも一夏を求め続け、一夏の子供を産んでも変わることはなさそうだった。

「暇潰し」

 一夏の怒りはなんのその、直球すぎる着飾らない返答に一夏は次の言葉が出てこなかった。

「他の二つの転生特典と違って、Lv.100チンポには複数の能力が詰まっている。単独で転生特典三つに相当する。しかし、転生特典の上限は最大で三つ。超過した分は不必要と判断された物から削る必要があった」

 少女の語った経緯は、とある男の末路だった。

「そして、削られたのは男という人間そのものだった。一番不要な物と認識された。その結果、転生特典だけが残り、行き場を失ったそれらは一人の少年に宿った。本来、男が略奪を望んでいた肉体の所有者だった」

「それって……」

「そう。織斑一夏」

 事の経緯を聞いて、一夏はいつの間にか冷や汗を掻いていた。

 知らない場所で知らない男が人智を超えた代物を得て、一夏の肉体を奪おうとしていたのだ。その男の目的は世界中の美女や美少女を手に入れるということらしいから、一夏の肉体を奪った暁には幼馴染の箒と姉の千冬にも当然その魔の手は伸びたことだろう。

 他の男に奪われるくらいならば、自分で奪ってよかった。

 一夏は否定したが、心のどこかでそう思ってしまった。もう二人は一夏から離れられない。一夏の女だ。あの美貌も胸も尻も、膣も子宮も一夏が好きに汚せる。一夏は二人を好きにできるのだ。

 駄目だ。また、俺は……。暗い感情が沸々と湧き上がり、一夏は抑えようとする。それと同時に肉棒を中心として全身から滲み出る何かの勢いは強くなり、周囲の空間を満たした。一夏の興奮具合で匂いの強さは変わるらしい。範囲も途轍もなかった。先の少女の言葉が本当ならば、この範囲にいる女が匂いを嗅ぐとたちまち一夏の虜になってしまうだろう。

 このフェロモンを抑える術はあるのだろうか。

「ある」

 一夏は口に出していなかったはずだが、少女が睾丸を揉みながら答えた。

「もう何度かLv.100チンポを使用したことで、少しは慣れたはず。フェロモンを自覚できたのは成長した証。人の身に余る代物でも、一時的に制御することは可能。完全な制御は成長したところで不可能だから諦めて」

 そう言った後、少女は睾丸から手を離して一夏から距離を取った。また瞬間移動のような距離の操り方だ。驚きの事実が積み重なっていて、もはやこの程度では驚かなくなっていた一夏だった。

「フェロモンの範囲や濃度は操ることができる。試してみて」

「試すって」

「意識を集中して想像するだけでいい。体から生じるフェロモンが変化していく様を」

 助言を受けた一夏は言われるがまま意識を集中させた。そして、目を瞑って想像する。一夏が前に読んだ漫画で似たような訓練があった。体から生じるエネルギーを消したり体の一部へ極端に移動させたりと、参考になる描写があった。

 漫画を読んでいた経験が活きたのか、一夏はフェロモンの操作に成功した。

「や、やった……」

 まだ若干残ってはいるが、フェロモンの濃度や範囲は一夏の体表近くに留まっていた。これで女の様子にどう変化が起こるかはわからないが、垂れ流し状態よりかは余程マシだろう。

「おめでとう」

「あぁ……」

 賛辞の言葉を投げかけられ、一夏は目を開けた。

「あ、あれ?」

 周囲を見回す。だが、いたはずの少女はいつの間にか消え去っていた。

 どこにいったのだろうか。キョロキョロと辺りを見回す一夏。

『フェロモンの操作はある程度可能。だけど、完全に操ることはできない。定期的に暴走する。暴走した時は手近な女で発散すればいい。沢山出せば、また少しの間は自由に暮らせる』

 そこへ少女の声が空間中に響いた。その声は一夏の意識に深く浸透し、頭を中からかき乱すような嫌悪感を与えた。一夏は頭を押さえ、ふらつく体をどうにもできずに地に尻餅をついた。

 少女の楽しそうな声が、続いた。

『あの愚物以上に、君には期待している。だから、簡単に壊れては駄目。もう少し足掻いてみせてほしい』

 そして、押し殺したような小さな笑い声。神と呼ぶには、あまりにも邪悪すぎた。

 それを聞きながら、一夏の意識は暗い闇の底へと引きずり込まれていった。

「一夏」

 誰かの声が聞こえた。馴染みのある、落ち着いた声だ。その声の主に手を引っ張られるように、一夏の意識もどこかへと浮上していく。鈍っていた感覚は元に戻り、一夏を残酷な現実へと引き戻した。

「そろそろ起きろ、一夏」

 胸を揺らし、弟の上で腰を振る千冬の姿だった。気絶した様子から再起して、一夏を再び襲ったようだ。一夏の両手を恋人繋ぎで握って、極太の肉棒を膣壁でガシガシと扱き続けている。もう何度出したのだろうか。千冬の子宮は一夏専用の精液タンクになっているはずだ。それでも行為をやめないのは、一夏のフェロモンのせいだろう。

 さっきのは、夢じゃない。一夏はそう実感できた。

 一夏は妖しげな空間で学んだことを実践してみた。

 フェロモンの制御。部屋中に広がっていたそれを体表に押し止めるまで狭くし、濃度も薄くしていく。その効果は覿面で、一夏が感じていた欲望の色が少し薄まった。一夏の上で淫乱ダンスを繰り広げていた千冬の動きが遅くなり、やがて止まった。

「……一夏。今、いったい何をした?」

 千冬は多少の冷静さを取り戻し、戸惑った様子で一夏に問う。

 しかし、一夏は答えない。体の上の千冬を持ち上げて、膣内から肉棒を引き抜く。

「あっ……」

 という艶のある千冬の声。直後、肉棒という栓が抜けた膣内から精液が大量に溢れ出た。それらはシーツをさらに白く汚し、濃厚な臭いを放っている。

「ごめん、千冬姉」

 一夏はすぐに、ベッドの端で土下座をした。初めての全裸土下座だ。

「謝って済むことではないけど、ごめん。本当に、ごめんなさい」

 謝罪をする一夏。

 それを見せられた千冬は少し困った様子でため息を吐いた。

「別にお前が悪いわけじゃない。襲ったのは私の方だ。頭を上げろ」

「で、でも……」

「いいからさっさとしろ」

 千冬に催促され、一夏は頭を上げる。そこには、胸と陰部を両手で隠して割座をする千冬がいた。全身は精液や淫語で汚れ、一夏の欲望がまたカマ首をもたげそうになる。それを必死に抑え込んだ。今の状態ではどうにか理性も働くようだ。

「一夏。私とお前が繋がったのは事実だ」

「うん……」

「もしかしたら、お前の子を孕むかもしれない」

「……うん。責任は取る。千冬姉と箒の二人を、大切にする」

「学生の身で簡単に言うな」

 千冬は一夏が懸命に紡いだ言葉を聞いてまたため息を吐いた。

 体を起こしてベッドから降りるとシャワー室へと向かった。

「千冬姉?」

 一夏は、そんな千冬の綺麗な後姿へと声を掛けた。

「……しばらくの間、お前達の面倒は私が見る」

 千冬はそう言って脱衣所へ続く扉の取っ手に手を掛けた。

「お前が私達を養えるようになったとき、また返事を聞かせろ。今はもう寮に戻れ。シーツも洗わなくていい。私がしっかりと処理しておくから、むしろ下手に触ってくれるなよ?」

 それだけ言うと、千冬は扉を開き、脱衣所へと姿を消した。

 残された一夏は、ティッシュで体の汚れを簡単に拭いた後、服を着て部屋を後にした。

「……失礼しました」

 相談事が終わった帰りを装って、教職員寮を後にする。道中ですれ違った教師が足を止めて不思議そうに一夏の背中を見守っていたが、襲われることはなかった。フェロモンの制御は上手く行えているらしかった。ただ、神の言う通りならばこれは一時的な状態なのだろう。

 暴走は必ずやって来る。そのときどう対処すべきかも考えなくてはならない。

 学生寮に着くと、一夏は駆け足で自分の部屋へと向かい、部屋へと足を踏み入れた。

「箒、ごめんっ! 絶対に責任は取るからっ!」

 着いて早々、一夏は部屋の床で土下座をした。突然の来訪とその行動に、部屋にいた箒はぎょっとした様子で一夏を見た。だが、すぐにその表情は和らぐと、頭を下げる一夏の前に着替えたばかりのIS学園指定の白い制服姿で歩み寄った。どうやらシャワーを浴びて、汚れた衣服やシーツの清掃なども行っていたようだった。

「一夏、謝らないでくれ」

 箒は一夏の前でしゃがみ、一夏の頭を撫でる。

「箒?」

 一夏はその感触に頭を上げ、箒の顔を見た。

「お前は嫌かもしれないが、私はもうお前の物だ。だから、謝るな」

「いや、それは……」

「責任を取ってくれるのだろう?」

「も、勿論……! 絶対に、幸せにしてみせるっ!」

 強く言い放つ一夏に向かって、箒は嬉しそうに微笑んだ。

「それなら、それでいい。私達の間に、気遣いは無用だ」

「あっ……」

 箒は一夏の頭を抱き寄せ、制服を押し上げる豊かな胸に一夏を抱いた。その柔らかい膨らみに一夏はドキリと胸を高鳴らせ、母性的な包容力に目を細める。母がいれば、こんな感じだったのだろうかと一夏に思わせるほどだった。

「……一夏のチンポは、この世界を支配するためのものだ。それには私一人では母胎が足りない。一夏の素晴らしさを他の女達にも知ってもらい、一夏の優秀な遺伝子で孕んでもらう。そのためには、もっと一夏には自分に正直になってもらわないとな」

「えっ。箒、何か言ったか?」

 小さな声で箒が何かを口にしたが、一夏には聞こえていなかった。

「いや、何も言っていないぞ」

「そうか?」

 一夏は再び目を閉じて、箒の胸に顔を預ける。ひと時の静寂を、二人は過ごした。

「……ふふっ。楽しみだな、一夏」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。