紫色の
見守るとはいっても、その実態は暇潰しだ。管理をするために意識を割く必要はない。無限にも思える世界をほぼ無意識に管理できてしまうため、苦労を抱いたことはない。だが、そのせいで時間を持て余してしまうという代償があった。
この女神も、他の神々と同様に暇だった。
だから、遊ぶことにしたのだ。
管理している世界で玩具とする生物を見つけ、必死に足掻く様を眺めて愉悦に浸る。生物が抱く快楽も、苦痛も、全てが神にとって味わい深かった。女神二人は快楽も好みではあったが、特に悪感情を好む傾向があった。
女神が選んだ玩具、織斑一夏をできるだけ苦しめたのはそれが理由だ。
「結構楽しめた」
黒髪と白いワンピース。黒の女神は愉快げに口元を歪めた。
「面白かったね、お姉ちゃん」
白髪と黒いワンピース。白の女神も同様に頬を緩める。
二人は姉妹だ。黒の女神が姉で、白の女神は妹。だが、管理している世界は別々。織斑一夏という個体が生まれ育った世界を管理していたのは黒の女神のほうだ。一緒に楽しもうと無邪気に妹を誘い、妹も快諾した。
そして、遊びが始まった。
黒の女神が管理していた別の世界で性犯罪を繰り返し、捕まって寿命で死亡した一人の男がいた。老いた肉体を失った男の魂は『狭間の世界』にやって来た。そこは死して行き場を失った魂が流れ着く場所であり、そこで今後の処遇が決定される。
人間の尺度で比較的善良な魂は、新たな肉体を得て転生を許される。
人間の尺度で比較的邪悪な魂は、新たな日の目を見ることなく処分する。
度重なる性犯罪によって、男は邪悪な魂と判断された。黒の女神からすれば人間など大差ないのだが、そこは人間の視点で厳正に判断し、予定通りに消滅させるために転生の輪廻から外すことにしたのだ。
だが、このまま消すというのも面白味がなかった。
どうせ消すのなら、自分の遊びの前座として扱おうと思った。
黒の女神は男に告げた。犯罪者であるお前にも転生する権利はある。転生する際の特典も選ばせてやろう。持っていける転生特典は全部で三つ。しかし、そのうちの一つと、転生先の肉体についてはこちらで無作為に決めさせてもらう、と。
男に文句はなかった。あらゆる転生特典を目の前にして、男の魂が震えていた。
『また、女を犯せる……!』
喜悦に満ちた魂の声を響かせ、男は品定めしていた。次の世界での有利不利を決める大事な選択。男は慎重に選んでいたが、ややあって選択を終えた。
男が選んだ二つの転生特典は、『精神掌握』と『肉体改造』だった。
そして、黒の女神が選んだのは『Lv.100チンポ』と、織斑一夏という転生先。
黒の女神はLv.100チンポの若干誤魔化した性能と、織斑一夏という肉体について説明した。選ばれた肉体は既に生を受けているため、今回は転生ではなく正確には憑依となってしまう点も含めて、話せる範囲で委細を共有した。
織斑一夏が辿るであろう、ほんの少し先の予測された未来も一緒に。
『美少女ばかり集まるって? いいね。俺がそいつの体を乗っ取って、有効活用してやるよ』
男の魂はより強く輝いた。生まれ変わるのではなく織斑一夏の体を奪うことになるが、男が選んだ肉体改造の転生特典があれば問題はない。
肉体改造はその言葉通り、自分を含めた他者の体を自由に改造する力だ。死とは無関係の不死身の体も、老いを知らぬ若々しい身体も容易く得られる。やろうと思えば、以前の自分と同じ容姿に変わることもできる力だ。
黒の女神が選んだLv.100チンポと男が選んだ肉体改造の性能には多少被っている点はあったが、男に不満はなく、転生する間際まで笑っていた。
『全員、犯してやる』
そう告げた男は、直後に後悔することになっただろう。
黒の女神によって騙され、五つ分相当の転生特典を魂に背負った男は、特典によって押し潰された。肉体がある存在ならば複数の転生特典を所持することも可能だが、無防備な魂では抱え持てる力に限度はある。
押し潰される瞬間、黒の女神によって思考時間を過剰に増幅させられた男は、永遠にも思える時間の中で苦しみながら潰れていった。どうせ死ぬのなら、これまでの人生を振り返ってもらおうと、黒の女神は男の人生を映像とともに実況解説しながら他の神々全員に共有することにした。
人間でたとえれば、動画サイトにライブ配信するかのような感覚だ。視聴者である神々の大爆笑と楽しげなコメントが音声付きで男の中に強制的に流し込まれる。
「あははははははははっ!!」
黒の女神も、他の神々と同等の笑い声を上げ、男の最期を堪能した。男がこぼした最期の声は亡き母を求めるもので、それを聞いた瞬間の神々の沸き立ち具合は凄まじいもので、多くの者が抱腹絶倒していたようだった。
しかし、そんな楽しい時間もすぐに終わってしまう。所詮は、男など余興だった。
別に男を利用しなくとも、織斑一夏の肉体に直接Lv.100チンポを送っても良かった。ただ、どうせなら一緒に味わおうと思ったからだ。それに、ただ自分が転生特典を織斑一夏に送り込むよりも、第三者の男に責任の全てを押しつけたほうが流れとして適切だと認識していた。
これまで大勢の生物の一生を狂わせてきた黒の女神も、その楽しみ方に工夫を凝らすようになっていた。最初から、全てが黒の女神を思惑だと疑ってかかられるのも面白くないため、策を弄することにしたのだ。以前、黒幕が黒の女神だと即バレしたことがあり、そのときは開き直って初手から黒幕ムーブをかましつつも、失敗したと内心では思って反省していたのだ。
遊びとはいえ、手を抜くつもりはなかった。
愚物である男を前菜として、織斑一夏というメインディッシュを頂く。
Lv.100チンポの新しい犠牲者。織斑一夏はどのように足掻いてくれるだろう。
やがて合流した白の女神と一緒に、黒の女神は小さな惑星を見守った。
そして、予定通りに転生特典だけが、織斑一夏に宿った。
そこから、織斑一夏を通じて二つの特典を身近にいた二人の女、篠ノ之箒と織斑千冬に移動させた。Lv.100チンポの特性で力が『譲渡』されたのだと嘘をついた。譲渡された原因は我慢できずに女を犯してしまったお前にあるのだと、織斑一夏に罪悪感を抱かせて。
「さあ、楽しもう」
「いろいろな可能性も含めてね」
たった一つの世界であっても、可能性の数だけ無限に世界は分かれる。
早々に諦めて『天国』の道を選んだ織斑一夏。
諦めずに『地獄』を歩み、耐え抜こうとした結果、さらなる『地獄』に嵌ってしまう織斑一夏。
同じ『地獄』の中でも、世界によって異なる体験をする織斑一夏。
黒の女神と白の女神の意識は今、二つ目の地獄を進む織斑一夏に着目していた。
「我々は神を得た」
マイクで拡声された箒の声が反響する大講堂。夏季休暇中にも関わらず、講堂内には全校生徒と教職員が欠員も出さずに集まっている。一週間前に事前に呼び掛けられたとはいえ、帰省中だった者たちまでも当然の如く出席している。
この場において、衣服を着ている者は一人もいない。皆、生まれたままの姿となって少しも乱れなく整列し、壇上の脇に立ってマイクを手にする箒を注視している。箒の言葉を少しも聞き漏らすまいと集中しているようだった。
この中で箒の言葉を聞いていないのは、一夏とその開かれた足元にいる女たちだけだろう。
壇上の中央。リクライニングチェアのように形を変えたIS『白式』に背を預けた一夏は、股間に集う女たちに目を向ける。
「ぐぽぉっ、ぐぽっ、ぢゅるっ、ぢゅぶっ、ぐぷんっ、ぢゅ、ぢゅるるるっ!」
床に正座をし、一夏の肉棒を正面から咥えているのは束だ。特徴的な機械のウサ耳は頭にはなく、大きな乳房には『敗北者』という文字がマジックペンで書かれている。これは束によって被害を受けたセシリア、鈴音、シャルロット、ラウラの総意で、鈴音が代表して書いた文字だ。
本当は四人で束の裸身に罵倒だらけの寄せ書きを贈ろうかという話になったようだが、一夏の目に触れるということもあってやめたらしい。これから仲間になる束のことを考え、これで手打ちとすることにしたようだ。
束は一夏の軍門に下った。膝に両手を置き、口だけで肉棒に奉仕をする束の顔は幸福に満ち溢れていた。もう歯向かうことはない。これからは一夏の下で、一夏のためだけに天才と呼ばれた頭脳を使ってくれることだろう。
「ちゅ、ぴちゃ、むちゅぅっ、くぷっ、じゅぷっ、れろ、ぢゅぷっ、ちゅぱっ!」
「あむっ、んんっ、ぢゅるるっ、くちゅ、くちゅ、あっ、んっ、ぶぢゅるっ、ぢゅる!」
束に対抗するように、千冬と真耶が左右から肉棒に口淫を施す。一夏の子供を胎に宿した二人によるフェラは並々ならぬ愛情に溢れている。束、千冬、真耶という年上美女によるトリプルフェラは一夏の興奮を高めていく。
「ぅ、くっ……!」
脳を襲う快楽。表情が緩みきってしまいそうになったが、一夏は歯を食い縛った。
駄目だ、という想いが募る。だが、素直になりたいという想いもある。
しかし、どちらにも想いが傾けられない。一夏の心境は中途半端な状態で固定されてしまい、完全に抗うことも受け入れることもできない。明らかに不自然な状態なのだが、これが今の一夏の日常だった。
約一週間前。邪神に敗北した一夏は、以前の日常を取り戻せずにいた。
そればかりか、一夏は人間としての立場をも失っていた。
今の一夏は、神と呼ばれる存在だ。神にも階級があるのだが、その中では最低の部類。言うならば現地神といったところか。現時点ではIS学園の人工島だけを範囲とした狭い聖域内での神だが、この領域では一夏は不滅。自身を崇拝する信者たち、IS学園の女たちの信仰心があれば、死ぬこともできない。
Lv.100チンポも完全に一夏に適応し、なくなることはない。
そして、人間から神になったことで、一夏の精神状況は中途半端な状態が正常な状態として固定された。わかりやすく言えば、一夏は快楽に堕ちることができなくなったのだ。女を抱くことに罪悪感を抱きつつも、快楽に負けて女を求めてしまう。仮に自身の境遇に苦しみ抜いて心が壊れかけても、Lv.100チンポの特性である『リフレッシュ』のように元の状態に戻される。
一夏には、自分が置かれた状況が手に取るようにわかった。神になった影響なのだろう。
邪神と女神。いや、二人の女神の計画によって神にさせられた。どういった経緯で、何を目的としているのかも。世界の外にいる女神に見守られ、Lv.100チンポの呪縛に囚われたまま生きることを余儀なくされた。
期間は永遠だ。何せ、一夏は死ねなくなったのだから。
ただ、Lv.100チンポから逃れる方法がないかと言われれば、一つだけある。
Lv.100チンポの創造主であり、生まれながらの最高神の一人でもある女神に認められるだけの神になればいい。せめて、この世界全体を統べるほどにはならないといけない。それをするには、信仰者を増やす必要がある。普通に宗教活動をしていてはいつになるのかと思ってしまうが、一夏に関しては違う。
何せ、一夏には手っ取り早く信者を増やすための道具、Lv.100チンポがあるのだから。
やりたくない、と思う。だが、この欲望には逆らえないのだと理解もしている。どうせ、自分は我慢できなくなって女を犯してしまう。世界全体を統べるということは、世界中の女に手を出すことに他ならないのだから、それなら今から受け入れてしまえば。
「っ……!」
などと思考していたら、また一夏の中で精神状況がクリアになった。
負けるわけにはいかない。抗わないといけない、と無駄に抗おうとしてしまう。
頼れる女神も、仲間もいないというのに。
この苦しみは、永遠に続く。
『あはははははははは!』
最高神である双子女神の声が脳に送られてきた。一夏はそれを遮断し、現実に向き直る。
「一夏様が世界を支配しようとすれば、愚かにも我らに仇なそうとする者が現れるだろう」
一夏がろくに話を聞いていない間にも、箒の演説は続いていた。身振り手振りを交え、聴衆に訴えている。裸であるという点を除けば様になっているように見えた。
「しかし、我々には力がある。見ろ! 我が学園の戦力を!」
箒が振り払うように片手を横に掲げると、一夏の背後で静かに立っていた女たちが一歩足を前に踏み出した。たった十数名の女。しかも裸という頼りない姿だが、そうとは感じられないほどの威圧的があった。
全員が専用ISを装備している。学園中から選ばれた優秀なIS操縦者たち。その中にはセシリア、鈴音、シャルロット、ラウラ、楯無、簪の姿もある。皆、IS装甲を纏った美しい裸体を晒している。
皆、誇らしげな様子だった。元々専用ISを保持していて学園の戦力として数えられるのが明確だった者たちは勿論、これまで天才たちに埋もれ続けていた秀才たちは特に。何せ、神である一夏の巫女を務める箒によって選ばれ、束謹製のISを与えられて一夏のために戦う役目を賜ったのだから。
「これだけの戦力があれば、世界をも相手にできるだろう。しかし、これで満足してはいない。現在、私の姉である篠ノ之束が新たなISを製作中だ。素質のある者にはそのISを与え、一夏様のために戦う役目を担ってもらう」
箒の声が信者たちに浸透する。箒の声は一夏の声にも等しい。そう思っているようだが、一夏からすればいい迷惑だった。
やめさせたいとは思うが、一夏には止められない。
聖域を広げ、治めた土地にいるまだ見ぬ美女や美少女。それを奪い、犯し、種付けする。それを考えるだけで肉棒がビクリと震えた。それを見て目を細めて笑った束たちによって舌と口を押しつけられ、背筋に快感が駆け上る。
全部、全部欲しい。もっと女を侍らせたい。
こんなこと、絶対に駄目だ。俺は誰も犯したくない。
背反する感情に挟まれ、どちらに傾倒することもなく、一夏は縛られる。
地獄だ。一夏の良心がガリガリと削れていく中、そうとは知らずに美女三人がチンポに甘える。吐息を吹きかけられ、熱を伝えられ、可愛がられる心地よさを絶えず提供される。
「有象無象を蹴散らし、世界を一夏様の物にするのだ!」
『世界を一夏様の物に!』
箒の後に続いたのは、学園中の女の声だった。少しのズレもなく揃った声は異常なほどの響きを産み、圧倒的な迫力を生み出す。それを聞いて一夏は気が遠くなるのを感じたが、すぐに別の歓声によって目が醒める。
「一夏様万歳!」
『一夏様万歳! 一夏様万歳! 一夏様万歳! 一夏様万歳! 一夏様万歳!』
一夏を盲目的に信じ、満面の笑顔で声を張り上げる裸の美女たち。惑わされているとはいえ、大勢の魅力的な女に求められて肉棒が膨らむ。血管を浮かせて反り立った肉棒の底から熱い情熱がこみ上げ、精液を放出した。
「ふ、あぁ……。いっくん、素敵……。私の全てを、いっくんに捧げるからね……?」
「いいぞ、旦那様……。もっと、気持ちよくなってくれ……。あぁ、本当に格好いい……」
「ふふ。私のお腹の中で、一夏君の娘が歓喜に震えていますよ……?」
肉棒の裏筋を舐めながら、一夏の射精を顔で受け止める束。竿に接吻を繰り返し、両手で金玉を揉んでくれる千冬と真耶。脳が溶けて駄目になりそうな快感が続き、信者たちが見守る中で射精を続ける。
神の射精を目の当たりにして、一斉に平伏する信者たち。ISを纏っていた者たちも、千冬たちも、そして箒までもが後に続いた。一夏に向かって土下座をし、額を床に擦りつけた。飛び出す精液が束の頭や背中にべちゃべちゃと着弾する中、一夏は呟いた。
「たすけて……」
思わず漏れた声に反応する人間はいなかった。
代わりに聞こえてきたのは、腹を抱えて苦しげな女神たちの笑い声だった。
これで本筋は完結です。読んでくださった方々、誠にありがとうございました。
本作は短編なのですが、まさか最後まで書くとは思いませんでした。
最後とは言っても、IFや後日談の案がありますので、普通に続くと思います。
ただ、更新は今まで以上に不定期になるかもしれません。
それでもよろしければ、今後ともよろしくお願いいたします。