学生寮内にある一年生用の食堂。IS学園指定の白い制服を着た一夏は、極度の緊張状態にあった。原因は、自身の股間から発せられるフェロモン。制御方法を知り得た上に、シャワーを浴びて念入りに体の匂いを洗い落としたつもりだが、果たして上手くいくのだろうか。不安で仕方がなかった。
上手くいかなければ、食堂内は筆舌しがたい光景に様変わりするだろう。女子生徒全員が柔肌を晒し、迫ってくる光景を幻視した。
しかし、そんな一夏の不安は杞憂に終わった。
「おはよう、織斑」
「あ、お、おはよう……」
「あっ、織斑君だ。おはよー」
「おはよう……」
食堂に入ると、昨日知り合ったばかりの同級生達から声を掛けられる。その様子に何ら違和感はない。同じ学年の女子生徒達が一夏を遠巻きに見てひそひそと何かを話し、黄色い歓声を上げている。悪い心地はしないが、どこか落ち着かない。今朝に起こった出来事が異常とは言え、元々一夏は昨日から一般的な男が経験しないような異常に見舞われているのだ。
ISを使用できるのは、一夏という例外を除いて女だけ。そうなれば当然生徒も職員も全て女だ。それに何故か皆、容姿の偏差値が異様に高い。一夏は女の花園に放り込まれた異物。これから卒業するまでに他の男子生徒が現われでもしない限り、一夏は一人きりだ。
それに、自身が所有するLv.100チンポとも戦わなくてはならない。旅に出たばかりでいきなり呪われた最強武器を手にしてしまった勇者の気分だった。
「はぁ……」
「一夏、あちらの席が空いているぞ?」
「あ、あぁ……」
そう言って一夏に声を掛けたのは、朝食を乗せたお盆を持って横に並び立つ箒だった。後頭部で結ってポニーテールにした黒髪を揺らし、姿勢よく歩く姿は周囲の目を惹いている。日本の大和撫子ここにあり、と思わせる美しい容姿に、同性の女子生徒達からもどこか羨望を込めた眼差しが向けられているようだった。
その箒が一夏と一緒に行動し、同じテーブルに座った。生徒達の間では動揺が走っているようだった。
「……ねぇ、あの子って、織斑君とどういう関係?」
「何か、心の距離が近いっていうか、ただの関係じゃなさそう?」
「もしかして、織斑君の彼女……!?」
ざわざわと沸き立つ周囲をできるだけ気にしないように、一夏は食事を始める。
「ぃ、いただきます……」
「いただきます」
落ち着かない一夏に対して、箒は至って冷静だ。表情は自然体で柔らかく、昨日六年振りに再会した入学初日のような硬さはなかった。研ぎ澄まされた刀のような危うい空気を放っていたのが嘘のようだ。
箒を変えたのはやはり、今日の出来事なのだろう。
そう考えると、一夏は余計に食が進まなかった。メニューは箒と同じ和食で、一夏の好物。白米や鮭、味噌汁などの定番が並んでいて美味しくないはずがないのだが、味を感じている余裕もなかった。
二人の夫婦のような気が置けない関係に、周りの生徒は悔しそうな様子だ。
「は、入れない……!」
「隣いいかな、って言いづらいよ……!」
周りを他所に、一夏と箒は二人きりの空間で朝食を進める。
「なぁ、箒……」
「ん? どうした、一夏」
「俺の匂い、本当に大丈夫なんだよな?」
「あぁ、今は落ち着いているぞ。ただ、完全に匂わないというわけではない」
「え、嘘っ」
「隣に行けばわかる。とても素晴らしい匂いだ。思わず抱き着きたくなるほどに」
箒が顔を赤くし、危ない表情を浮かべる。色気に満ちた女の顔だ。一夏の興奮が少しばかり煽られそうになるが、慌てて朝食を口に掻き込んで誤魔化した。食欲という欲求で性欲を霧散させようとした。
だが、箒の追撃は入った。
「まぁ、あまり気にしすぎるな。溜まったら、私を使うといい」
箒は小さな声で続けていった。
「お前の金玉ザーメンは、私の精液袋でいつでも受け止めてやろう。それとも、口がいいか? お前のチンポを根元まで咥えて股間に顔を埋めて、ごくごくっと濃厚精液を飲みほしてやろう」
箒は赤い舌を少しだけ出して、笑った。それを見て、また一夏の心臓が鼓動する。
「箒、やめて、くれ……」
抑えていたフェロモンが、興奮の煽りを受けて滲み出そうになるのを一夏は感じた。
「ふふっ……。すまない。だが、私は一向に構わないからな」
箒は味噌汁を呑む。今言った卑猥な言葉が嘘のように晴れやかな様子だった。
一夏は食事の手を止め、周囲にバレないように股間を手で抑えた。
駄目だ、鎮まれ、今は駄目だって! 一夏は湧き上がろうとするフェロモンを必死に抑えながら朝食一つに苦戦していた。そのときに見た箒の表情が、何かを悪だくみする悪戯っ子のような笑みを浮かべていたような気がしたが、真意を確かめる余裕もなかった。
だが、真意はすぐに明らかになった。
「ぐぷぅっ、ぢゅぶぶっ、ぢゅるるるっ、ぐぢゅっ、じゅぶじゅぶっ」
「ほ、箒……」
IS学園の校舎内。寮での食事を終えて、他の生徒よりも一足早く校舎に向かった一夏は、箒に連れられて校舎内に数少ない男子トイレに連れ込まれていた。一夏以外に男子トイレを使用する可能性がある者は用務員の初老の男くらいなものだが、念のためにと個室トイレに入っていた。
箒によって一夏は蓋を閉めた便器に座らされ、あれよあれよという間にズボンを下ろされた。そしてぱくりと肉棒を咥えられてしまい、肉棒への箒の唾液清掃が始まった。
「んーっ、ぢゅぶっ、ぐびゅっ、ぢゅぶぶっ、ぬちゅっ、ぐちゅっ、ぢゅぢゅっ」
「あっ、うっ……!」
一夏は何もすることができなかった。性欲が溜まったのを箒に見抜かれて、性欲を発散させなければ教室でまずいことになると言われ、箒に翻弄されている。箒の切れ長の美しい眼差しで見上げられ、ただただ肉棒を可愛がられている。
「くっ……!」
本当は、箒にこんなことをさせたくない。一夏はそう思っても、箒を頼らざるを得なかった。朝の被害者のうち、生徒である箒は教師である千冬以上に一夏と身近にいておかしくはない関係。他の生徒を被害者にしないためにも、自分を受け止めてくれる箒に性欲処理を手伝ってもらうのが効率的だった。
自慰で満足できればいいのに……!
一夏のLv.100チンポは我が儘で、一夏の自慰では満足してくれない。魅力的な女を求め続けている。今も箒の口内に包まれて、嬉しそうにビクビクと震え、先走り液という涎をだらだらと垂れ流している。
「ぢゅぶぶぶぶっ、ぢゅーっ、ぢゅーっ、ぢゅるーっ」
「うわぁっ!?」
一夏の反応を見て楽しそうにニヤニヤと笑う箒。あの綺麗な箒が、古風な和風美人の箒がすっかりと淫らに変貌し、一夏を快楽の奈落へと引きずり込もうとしてくる。
まずい。一夏がそう悟ると、箒の口が肉棒から離れた。
「ぷはっ、ぬちゅぅっ、れろっ、くちゅっ、くちゅっ」
肉棒の棹をシコシコと扱き、丸い亀頭に沿って円を描くように舌を動かし、撫でまわす。今しがた体験した激しいフェラとは打って変わって優しくねっとりと嬲るその動きに一夏は限界を覚えた。
「うぐっ……!」
びゅるるるっ、びゅーっ、どびゅっ、びゅっ、びゅるるっ、ぶびっ、びゅくっ。
「あっ、あー……」
口を大きく開いて舌を伸ばし、一夏の射精を受け止める箒。勢いが強かったために口だけに留まらず、箒の嬉しそうに微笑む顔も白濁に汚す。幼馴染の顔を汚い欲望に染める行為に一夏はにやけてしまいそうな背徳感を一瞬だけ覚えたが、はっと我に返って表情を引き締めた。
一夏製作の精液パックをつける箒。開いた口から伸びた舌の器には精液の塊。ぷるぷると震えるそれはゼリーのよう。箒が口を閉じて喉を鳴らし、再び舌をぺろりと見せつけると、精液はなくなっていた。
「私は、一夏専用の性欲処理道具だ」
うっとりとしながら箒の言葉に、一夏は慌てて否定した。
「違うっ……!」
「きっと私の体はな、一夏の金玉で大切に育てられた精液を受け止め、子を孕むために作られたんだ。一夏、知っているか? 女の体にある卵子の数には限りがあって、男の精子と違って増やせないんだ。私は限りある卵子をお前に全て捧げるぞ? 一夏の精子でぷちゅっと卵子を犯されて、私の胎で子を育む。そして、私の栄養を分け与えて育てて、産み落とすんだ。何度も、何度もな。想像するだけで凄く幸せだ……」
箒は精液に濡れた顔のまま、一夏の尿道口に残った精液を舌先で穿る。
変わってしまった箒。変えてしまった一夏。一夏は罪悪感に胸を痛めながらも箒の顔から目を離せなかった。ここまで言って自分を慕ってくれる女性。美しい幼馴染。男である一夏が喜ばないわけもなく、承認欲求が満たされる。
そして、征服欲も勝手に満たされていく。
一夏は箒の言葉に否定の声を上げることができず、箒のお掃除フェラを受けながら心の中で謝った。ごめん、箒。俺がもっと強ければこんなことにはならなかったのに。思っても口に出せない今の自分が嫌で、一夏は余計に深く落ち込んだ。
「あはぁっ、ふふっ、ちゅぷっ、ちゅっ、ちゅぅぅっ、れろっ、ぐちゅっ」
箒による求愛のキスが、一夏の尿道口に何度も放たれた。
さすがにこれ以上性欲処理に費やしている時間はない。授業も間もなく始まろうとしている。一夏は深呼吸してどうにか冷静さを取り戻そうと努め、箒を求めて勃起する肉棒を無理矢理下着とズボンの中に押し込めた。
「あぁっ……。残念だな」
言葉とは裏腹に、愉快げな箒。立ち上がって顔の精液を指で拭い、指先を舌で舐めている。箒を見ていたら危ないと理解した一夏は、箒を気にせずに身支度を整える。
「箒、ごめん。ありがとう。もう、大丈夫だ……」
「そうか。また溜まったら、沢山搾りとってやるからな」
箒は舌なめずりをして一夏の股間から立ち上がった。その色気ある仕草から顔を赤らめて目を背け、一夏も便器から腰を上げて立つと、慌てて個室トイレから出た。
精液まみれの顔を洗おうとしない箒になんとか顔を洗わせてから、二人は男子トイレの扉を開いた。扉から顔を覗かせて外を警戒し、誰もいないことを確認してから一夏と箒は廊下へと出た。まだ時間的な余裕はあるが一夏は速足だ。ゆっくりと箒と肩を並べて歩いていると、また邪な考えが浮かんでしまうかもしれないと思ったからだ。
なるべく、箒の言動には気をつけないと。
一夏は自分のせいで変わってしまった箒を、自分で警戒することになるとは思わなかった。本当に最低だ。そう思っても何もできない弱い自分が憎かった。これからも箒の誘惑を受けて肉棒を差し出してしまうだろう。それはもう抗える気がしなかった。だが、だからと言って暴走にまで至るつもりはない。
箒は大切な女性。千冬もそうだ。乱暴に、一方的に欲望をぶつけることはしたくはない。大切だから、それ相応の優しさと愛情を注ぎたい。それが箒と千冬に対してのせめてもの罪滅ぼしだと、自分に言い聞かせて納得させた。