(Alpha-152についての情報を聞けるって話だけど…)
古びたタイル張りの控室には、如何にも簡素と言った風に椅子と机がぽつんと置かれているだけ。
閑散とした空間に一人、長い栗色の髪を束ねた、白装束の少女がパイプ椅子に腰かけていた。
(試合に出るだけで情報が聞けるって…本当かしら)
組んだ脚の上に肘をついて、一人思案する。
そもそもかすみがここに来た理由は自らのクローンであるAlpha-152に関する情報がここで聞けると聞いたからだ。
確かな情報筋ではあるらしいが、どこか胡散臭さが拭えない。
特に、情報を受け取るには試合に出るだけで良い、というのが胡散臭かった。
大抵、こういう情報の交換も物々交換になりがちだ。
例えば、情報を教える代わりに3連勝しろ、だとかそういうケースが多い。
ところがこの興行の場合は試合に出るだけで良い、と言うのである。
しかし、彼らも裏社会に根付く格闘興行。
かすみが試合に出る事でなんらかの対価を取ろうとする事は間違いない。
その対価が一体どんなものなのかは、かすみには与り知らぬ所であったが。
(…試合前にそんな事気にしててもしょうがないか。とりあえず、やるだけやってみるしかない)
戦いに備えて、小さく深呼吸をするかすみ。
丁度その時、興行の係員が控室に入ってきて、かすみに入場の合図をする。
「入場でーす」
衝立の向こう側に人影が消えるのを見送ってから、椅子から腰を上げて、薄く目を閉じる。
「覚悟を決めたわ」
「レディーーーーース!アァンド、ジェントルメーーーーーーーーン!!!」
ガシャーンという照明が点く音と共に、暗闇にライトアップされるリングアナウンサー。
その瞬間、所狭しと集まった観衆の怒号が一挙に解放され、会場全体が歓声の坩堝と化す。
エリプソイダル・スポットライトから七色の光が光彩陸離に乱れ交い、会場は日常を離れ出た異次元へと彩られる。
黒いタキシードに身を包んだリングアナが、仰々しくメモを見ながらメインイベントの開始を告げる。
「それではぁ、本日のチャレンジャー!青コーナー!運命のくのいちッ!!かーーーーーーーーーーすーーーーーーーーーーーみーーーーーーーーーーー!!!」
ワアアアアアッと湧き上がるような歓声が溢れ出す。
青コーナー側の花道から白い蒸気が噴き上がり、チャレンジャーの入場を告げる。
スポットライトが一か所に集い、交錯し、チャレンジャーを今か今かと待ち構えていた。
しかし、いつまで経ってもチャレンジャーはやってこない。
次第に不審に思った観衆の低い声がまばらになって聞こえ出す。
リングの上ではリングアナが何やら襟元に付いた無線などを弄りながら、あたふたしている。
チャレンジャーを照らさんと集まったライトが、花道の白い床を寂しく照らしていた。
焦りと不満のどよめきに包まれる会場。
既にかすかなブーイングが鳴り響き、観衆の不満が警備員にぶつけられる。
しかし、リングの上に桜吹雪が舞い散った刹那、そのどよめきは底の抜けたような歓声へと変わる。
チャレンジャーはもう既にリングインしていたのだ。
「あっ、れっ?えーっと、何時の間に?」
花道と既に傍にいたかすみとを交互に見ているリングアナ。
確かにかすみは花道を通ってきてはいなかったはずだ。
かすみの顔や体が会場に設えられた大きなモニターに映し出される度、観衆は下卑たピンク色の歓声をリングへ送る。
澄んだような肌理細やかな美肌、鼻梁の整った目鼻立ちや艶やかな唇はオリエンタルな可愛らしさと清冽な美しさを醸し出す。
批判のしようのない美貌は完璧という言葉を体現しているようで、人為的に作られた人形のようにさえ見えてしまう。
その上、白い装束の横から覗く豊かな乳房や桃尻は淫らな印象さえも植え付ける。
くのいちという肩書がその艶やかさを余計に引き立てていた。
「若いのにエロいカラダしてるなぁ~!」
「忍者の姉ちゃん俺にも色仕掛けしてくれよぉ」
「夜の任務お願いしちゃおうかなぁ」
当然それらの声はかすみの耳にも届いていた。
男性客しかいない会場に試合に出るだけで良いと言われた理由。
それはこの興行が女性が嬲られるのを見世物にした、ミックスファイト紛いの興行なのだと、下卑た喝采を受けて初めて気付く。
が、その程度で動揺するほどくのいちはヤワではない。
内心、恥ずかしくも腹立たしい気持ちを愁いを帯びたその表情に閉じ込めて、王者の入場を待ち侘びる。
「ほほ~、あの娘が今日の対戦相手、かすみちゃんかぁ…」
控室にあったモニターから入場の様子を覗いていた助兵衛が嬉しそうな声を上げる。
年も若く、見た目が美しい少女、それもくのいちを今からリングで陵辱できると考えると、胸が高鳴ってしまう。
試合前にも係わらず、黒のブリーフからはち切れんばかりの勢いでペニスがテントを作る。
「助兵衛さんそろそろ入場でーす」
「ほーい」
入場が近いと聞いて、机の上にあった注射器を次々と腕に打ち込む。
生憎、この興行ではドーピング違反などというものは存在しない。
「テストステロンよしッッッ!エフェドリンよしッッッ!!エリスロポエチンよしッッッ!!!高まってキタぁぁぁぁっ!!!!」
控室のみならず、会場の裏方全体に轟くようなハイテンションな絶叫を上げると、体をぱしぱしと叩く。
「入場です」
「応ッッ!」
「続きましてぇ、赤コーナー!チャンピオンッッ!!反逆の変態教師!猿股――――――――助兵衛――――――ッ!!!!」
色香に湧いていた歓声が一気にブーイングへと変わるのは恒例の事。
赤コーナー側の花道からだらしなく弛んだ肥満体を揺らして、助兵衛がリングインしてくる。
(あの人が…私の相手?)
胡散臭いこの興行の事、対戦相手にはもっとおどろおどろしい相手が出てくるのかと思いきや、現れたのは太った中年オヤジ。
ぱっと見ただけで格闘などとてもできそうにないのが見て取れる。
少し拍子抜けしてしまうかすみ。
しかし、これはこれで好都合だ。
試合を早く済ませる事もできて、情報も聞ける。
「これより、メインイベントを開始します!!!まずは青コーナー!運命のくのいち!かーーーーすーーーーみーーーー!!!」
その名が呼ばれると男達の下卑た歓声で会場が覆われる。
「愛してるよぉぉぉ!」「一発ヤらして!」などといった声が聞こえてきたが気にしない。
「続きましてぇ、赤コーナー!チャンピオンッッ!!猿股ぁ、助―兵衛!!!」
四方に向かって頭を下げる禿げ頭に容赦なく浴びせかけられるブーイング。
しかし、そのブーイングはこれから助兵衛がする事への期待の裏返し、いわば羨望によるものだ。
かすみにはこのブーイングの意味が分からなかった。
「両者中央へ」
リング中央に立ったレフェリーが二人を招くような仕草を見せる。
招かれて、中央で相まみえる二人。
あまり身長の高くないかすみだが、助兵衛との身長差はほとんどない。
淡々とルール説明をするレフェリーを無視して、ずいと半歩前に出て、かすみに近寄る助兵衛。
「ぐへへっ!綺麗な顔してるねぇ~」
ニヤニヤとした気色悪い笑みを向ける。
体はまるで猛烈なアップをこなしてきたかのように、脂汗でてかてかになっていた。
「くのいちやってるんだって?まだ若い女の子なのに、大変でしょお?」
かすみは視線を逸らして、相手を見ないようにする。
声や話している内容もそうだが、近付いてみると見ているだけで不快感を催すような醜悪な見た目である事に気付く。
「やっぱりそのエッチな体で色仕掛けとかしちゃうのかな?んん?おじさんにもしてくれよ、お金だったらいくらでも払うからさ、ホラ」
「ッ!」
バシッ!と胸を触ろうとしてきた手をはたくかすみ。
助兵衛ははたかれた手をわざとらしくフーフー息を吹きかけて、不敵な笑みを浮かべる。
ちらとレフェリーの方を見ても、何事もなかったかのように、ルール説明を続けているだけだった。
「両者コーナーへ」
ルール説明が終わり、二人に散るように指示をするレフェリー。
自分のコーナーへ戻り、深呼吸をするかすみ。
一般人をいたぶるのは気が引けたが、これも情報のため。
(戦いは避けられない…!)
本気で戦わなければならない、たとえ相手が肥えた中年オヤジでも。
カンッ!ファイッ!
「「「「「「ウワアアアアアアアアアーーーーーーーッ!!!!」」」」」」
試合開始を告げるゴングでまるで号砲が打ち鳴らされたかのように、観衆から鯨波の声が溢れ出す。
地を鳴らすような歓声の分厚さに一瞬、戸惑うかすみ。
あまり大衆の前で戦うのは得意ではない。
「げひひっ!どうしちゃったのかなぁ、かすみちゃん?」
そんな戸惑いを弄ぶように、ベタ足のフットワークでにじり寄る助兵衛。
(いけない…)
すぐに気を取り留めて、試合に集中するかすみ。
きりっと柳眉を逆立てて、表情を引き締める。
「やぁぁっ!」
「ぶっ!!」
一瞬で間合いに踏み込んだ途端、掌底を打ち込み、さらにバックエルボーの形で肘打ちをかます。
電光石火のようなコンビネーションに遅れてどよめく観衆。
倒れた助兵衛の顔は鼻血が垂れていた。
(やっぱり…)
かすみの思った通り、助兵衛は弱かった。
普段かすみが相手にするような猛者であれば、この程度では倒れない。
正直、実力の釣り合わない相手を攻撃するのは気が引ける。
「お、おぉ…っ」
しかし、助兵衛はよろめきながらも立ち上がってくる。
流石にあの二発だけでは失神もしなかったか。
鼻血を拭いながら、ふらふらと千鳥足になりながらかすみを見上げる。
「へ、へへっ…やっぱり強いねぇ、かすみちゃんは」
一分としない内に、何事もなかったかのように回復する助兵衛。
「この程度じゃ倒れないよ?もっと近くに来て、打ってきなよ」
自らの頬をぴしぴしと叩いて挑発する助兵衛。
本気で殴っても死なない程度に頑丈である事は窺えた。
「とぅっ!」
「ごあ!!」
今度は腹に蹴りが入る。
爪先で吊りあげられるように、一瞬助兵衛の体が浮くと、力無くリングに崩れ落ちる。
鞭のようにしなったかすみの脚は腹の神経が最も集中している所、鳩尾を捉えた。
しかし、それでもなおも立ち上がってくる助兵衛。
口の端には相変わらず卑らしい笑みを浮かべている。
「ぐへへ、打たれてばっかりでも面白くないからねぇ、今度はこっちから行かせてもらうよぉ~」
締まりのないふざけた声を出して、じりじりとかすみへの間合いを詰める。
亀のように両腕でガードを固めながら迫ってくるので、こちらから手出しするのは得策ではないだろう。
「ほれぇ!」
掛け声と共に、両腕を伸ばしながら迫ってくる助兵衛。
打撃戦では叶わないと見たか、組み付いてグラップリングに持ち込もうという算段だった。
が、かすみの体を捕まえたと思った両腕は空を切る。
バックステップやサイドステップで逃げられた訳ではない。
かすみが視界のどこにもいないのだ。
見回す助兵衛の肩には、か細い指が掛かっていた。
「はぁっ!」
「ひょっ?うおわぁっ!?」
何の前触れもなく、後方に投げ飛ばされる助兵衛。
かすみは助兵衛が組み付こうと前進してきた時、助兵衛の肩に手を置いて、その勢いをいなすように逆立ちでかわしたのだ。
そして、足を床に付けてから、残った両腕を振り下ろすように前方へ投げ飛ばす。
霞桜と名付けられたかすみの得意技だ。
しかし、全身をリングに叩きつけられてもなお、助兵衛はすぐに立ち上がってくる。
懲りずにニタニタと笑みを浮かべるその顔を見て、かすみの表情が少し淀む。
(効いてない…?攻撃は当たっているのに!)
「あれれ~、かすみちゃん、ちょっと焦ってる?」
「…!」
胸中を覗かれたような気がして、表情を強張らせるかすみ。
こちらが何か反撃をされる気配は全く無いのだが、攻撃が全く効いていないような感触に焦っている、とは認めたくなかった。
「図星かな?ぐひひっ、もっと打ってこないと効かないぞぉ?」
(言われなくても!)
軸足でしっかり踏み込んで、腰を捩り、蹴り脚を逆袈裟に振るように上段蹴りを放つ。
「えいぃっ!」
「ぶがっ!」
蹴られた顎がぶるんぶるんと肉を揺らす。
首の力で耐えようとしたのか、鈍い手応えが足に響く。
顔面に打撃を喰らう時は上体を軟らかく使って、打撃の勢いを殺すのが良いとされているが、この時ばかりはその選択が僥倖を生む。
「むおおーっ!」
「くッ!」
蹴り終わりのかすみを狙って、助兵衛が足元に突進してきたのだ。
いくら実力差があるといえども、片脚で立っている所を押されてしまえば倒れてしまうのが人間。
軸足を抱えられ、持ち上げられたかすみの体がリングに叩きつけられる。
「「「「「ウオオオオオオオオオーーーーーーーーーーッ!!!」」」」」
しばらくかすみの攻勢が続き、白けかけていた観衆が再び蘇る。
背中を付けさせられたかすみは両脚を跨がれ、マウントポジションを奪われる。
「やっと捕まえたよぉ…かすみちゃあん」
(不覚!)
上段蹴りを放った瞬間、何かいつもと蹴る感覚が違うと思ったが、まさか寝かされてしまうなんて。
寝技が不得手である事もそうだが、こんな醜悪極まりない中年オヤジに圧し掛かられている事がかすみを不安にさせた。
「まずはさっき触れなかったおっぱいを、触っちゃおうかなぁ」
どうせよからぬ事を企んでいるとは思ったが、戦いの最中に乳房を揉まれるとは思いもしなかった。
年端に似合わず豊かに発育したかすみの巨乳は、助兵衛の両手の中で縦横無尽に揉みくちゃにされて、男の私欲を満たす。
「い、いやっ!触らないで!」
手首を掴み、なんとか引き剥がそうとするかすみ。
しかし、思いのほか、力が強くてどかせられない。
「こんなエッチなおっぱいにはお仕置きが必要だねぇ~、どれ、隠してないで全部見せてもらおうか」
「いやぁぁっ!!」
両襟を掴み、ばっと開襟すると、かすみの豊満な生乳と引き締まった腰が衆目に晒される、
勢いよく脱がせたせいで、ぶるんぶるんと揺れた乳房が観衆と助兵衛の煩悩をも揺らす。
「うひょーっ!!」
「おっぱい!おっぱい!」
かすみの生乳に狂喜乱舞する観衆。
頬を赤らめて、かすみは両乳をすかさず腕で隠そうとしたが、助兵衛に両手首を掴まれてリングに磔にさせられるような格好で固定されてしまう。
自身の胸の下にある双つの巨乳を見て、思わずヨダレをこぼしてしまう助兵衛。
「はぁ、はぁ…戦ってる時からおっぱいがぷるぷる揺れててタマんなかったよぉ~」
ぷるぷると軽く掌で転がすように揉んだと思えば、軟らかくも大きい乳房に指を喰い込ませるように強く揉んで、緩急を付けて弄ぶ。
「おじさんの事、誘ってたんだよね?」
しかし、余裕を持って弄んでいられたのも束の間。
揉んでいる内にかすみの乳房の魅力に取りつかれて、いつの間にか思いのままに強く揉みしだきながら愛おしそうに乳房に頬擦りをしている。
敏感な乳首に強い髭の剃り痕が擦れるのがたまらなく嫌だった。
(ふざけた事を…言わないで!)
「うおっ!?」
柔軟な下肢を活かして、圧し掛かった助兵衛の体の下に脚を潜り込ませるかすみ。
そのまま脚に力を込めて、蹴り上げるような形で助兵衛を押しどける。
助兵衛がもんどり打って倒れている隙にすぐさま立ち上がり、乱れた衣服を着直す。
生乳が見られなくなった事にブーイングを送る観衆一同。
モニターに映るその顔には焦燥感と不快感がありありと滲み出ていた。
(なんだか、体がおかしい…)
上段蹴りにカウンターのタックルを合わせられた時も思ったが、どうも体の調子がおかしい。
神経が鈍っているような、どことなく熱にほだされているような感覚にかすみは焦りを覚える。
(このまま戦いが長引けば…)
温まっているはずの体の芯から不安と言う名の冷気が立ちこめる。
決着を付けないまま試合が長引けば、また先程のように卑猥な事をされるだろう。
曲がりなりにもリングに立って戦う以上、一人のくのいちとして負ける訳にはいかない。
こめかみに冷や汗が流れてくるのを感じながら、かすみは虎視眈々と好機を狙い続ける。
じりじりと間合いを計りながら、隙を窺う二人。
お互いの手が出ず、膠着状態となった戦況に会場は鳴り止まぬブーイングに包まれる。
「早く抱き付けよ!!!」
「おっぱい揺らしてる場合じゃねぇんだよ!!」
「犯れーーーーー!!!」
怒気を帯びたブーイングの最中で、かすみは神経を研ぎ澄ます。
不格好にステップを刻む助兵衛の一挙一動に目を見張り、寸分足りとも集中を途切らせない。
間合いに入れば何時でも、居合抜きの如く助兵衛を打つ構えであった。
しかし、何時まで経っても助兵衛は間合いに入ってこない。
安全地帯で素人丸出しのステップを刻み、ぼよんぼよんと太鼓腹を揺らしながら、あの卑らしい笑みをかすみに向け続けているだけだ。
当然この程度の間合いの駆け引きで焦れるかすみではない。
ただ、一人のくのいちとしてではなく、一人の女性としては別だった。
その目を見る度に、かすみに向けられた数多の欲望を覗いてしまうような気がするのだ。
おっぱいを揉みたい、おっぱいを吸いたい、おっぱいに埋もれたい、おっぱいを…そういった卑猥な欲望の片鱗がぎらつくように閃き、かすみの心に細波をかき立てていく。
目を合わせたくない、でも目を合わせたらやられる。
戦いにおいて一人のくのいちとしてではなく、一人の女性として捉えられる。
こんな戦いは初めてだった。
「ふぅ…しょうがないなぁ」
先に痺れを切らしたのは助兵衛か。
ため息を吐いたと思えば、ステップを止めて、構えを解く。
(今跳び込めば…!いや…)
これは挑発だ。
ボクサーがノーガードで顎を差し出すのによく似ている。
きっと、跳び込んだ瞬間に組み付かれる、かすみはそういう挑発なのだと考えた。
しかし、助兵衛は挑発などという事は毛頭考えていない。
最初からまともに戦うつもりがないのだ。
挑発と考えたかすみの想像は見解の相違、助兵衛は戦いの本質から最も遠く、タブーとされる行為をしてみせた。
「よいしょっ、と」
腰に手を当てていた助兵衛はそのまま手を下にずり下ろし、黒のブリーフごと下ろしたのだ。
ファールカップすら付けていなかったペニスが籠を脱した鳥のように、元気に跳ね上がる。
予想だにしなかった助兵衛の露出行為に呆然とした表情で驚愕を示すも、そのいきり立ったペニスを凝視してしまうかすみ。
しばらく経ってから少女の可愛らしい悲鳴が会場をつんざいた。
「きゃああああああっ!!」
顔を真っ赤に染めたかすみは両手で顔を覆い、体を背けてしまう。
その隙を見逃さなかった助兵衛。
ブリーフを完全に脱ぎ捨てると、怯んだかすみに全裸で跳び付く。
(しまった!)
無防備になったかすみは為す術もなくリングへ倒される。
「ぐへへっ!かすみちゃんダメだよぉ~試合中に顔を背けるなんて」
鯖折りのように腰を抱かれ、相撲で言う下手投げのような形で投げられたかすみはリングの中央で助兵衛にマウントポジションを取られる。
「男の人のおち○ちん見るのは初めてだったのかな?もっと近くで見せてあげるよ、ほぉら」
「やっ、やめて!そんなもの、見せないでっ!」
腹に馬乗りになった助兵衛が勃起したペニスを顔に近付けてくる。
目を硬くつむって、嫌々と首を振るかすみ。
「「「「「ウオオオオオオーーーーーーッ!!!」」」」」
再び叫び出す観衆。
可愛らしいかすみの顔に雄々しく猛ったペニスが無理やり近付けられる様は嗜虐心を煽られる。
いつか自分もあんな風にかすみの顔面にペニスを近付けてみたい、そう思って股間を膨らませるのであった。
「ほんっと、けしからんおっぱいだなぁ…おじさん嬉しくなっちゃうよぉ~」
また服を脱がせて、生乳を揉みしだく。
今度はまた着れなくするように帯を解いて完全に服を脱がす。
「もう二度と離さないからね、かすみちゃん」
暴れるかすみを組み敷いて、巨乳をこねくり回すように揉む。
次第に揉むだけでは物足りなくなってきたのか、搾るように乳たぶを掴むと桜色の乳首に吸い付く。
「んっ!ふっ、いや!吸わないで!」
赤ん坊のように乳首を吸う助兵衛の顔を両手で押しのけようと試みるも、ぬるりと脂汗で滑って力が入らない。
助兵衛はちゅうううとわざとらしく淫らな吸引音を立てると、口の中で含んだ乳首を舌で転がすように刺激する。
舌のざらざらとした表面が敏感な乳首を擦り、かすみの背筋には悪寒が走る。
「はぁ、ちゅっ!ちゅばっ…かすみちゃんの、ちゅっ、ぢゅっ、ちゅるるるっ、おっぱいは…はぁ、はぁ、おいちいねぇ…ちゅぷっ、ぢゅるるる」
かすみの乳房を唾液まみれにして、乳首を無我夢中で吸い続ける助兵衛。
40過ぎた大の大人がまだ成人もしていない若い少女の乳房を吸っているのが滑稽で、如何にも価値の高い場面であるように映る。
「はぁはぁ…おっぱいだけじゃなくてもっと他も場所も吸ってあげなきゃね、例えば…そのぷるぷるの唇とか」
「!?」
乳首から口を離した助兵衛のターゲットはかすみのぷっくりとした瑞々しい唇へと向かう。
淡く、光るような桜色は男を知らない証だった。
「なっ!?何をする気!?」
想像したくなかったが、助兵衛のやりたい事は容易に想像できてしまう。
唇がめくり上がるくらい突き出され、禿げ上がった頭と相俟ってタコのような顔をした助兵衛がかすみの唇へと迫る。
「う~…かすみちゃんとチューしちゃおうかなぁ」
「ひ…いやぁ!」
こんな中年オヤジなんかにキスをされるなどたまったものではない。
助兵衛の両手がかすみの頬を押さえ、目を見開いた助兵衛が視界をどんどん塗り潰していく。
(まだ、キスも初めてなのにっ…こんなの…)
今までくのいちとして、色恋にうつつを抜かす暇さえなかったかすみはキスさえした事がなかったのだ。
かすみは一人のくのいちである以前に一人の少女。
ファーストキスがこんな素性の知れない醜い中年男に奪われるなど地獄だ。
まるで一生消える事のない烙印を押されようとしているかのように、顔を歪めてもがく。
しかし、そんな抵抗もむなしく、無垢でいられた時間との決別は刻々と迫ってくる。
なりふり構わず抵抗するかすみの手が助兵衛の顔をつねったりするが、顔が脂ぎっているせいでぬるぬると滑る。
やがて、お互いの鼻と鼻が触れ合うほどに接近し、生臭い吐息がかすみの鼻腔に直接吐きかけられる。
(く…臭い…っ)
腸の底から漂ってくるような、黄ばんだ歯が覗く口元からは魚が腐ったような強烈な吐息が漏れている。
その臭いを嗅ぐだけでも既に気を失ってしまいそうなのに、もしキスなどされようものならどうなってしまうだろう。
それにファーストキスの味が腐った物の味では、一生忘れられないトラウマになってしまう。
なんとか、なんとかして逃げ出さなければならない。
かすみは両腕を助兵衛の首の下に入れて押し上げようと試みるも、腕に上手く力が入らず、助兵衛の侵攻を押さえられない。
そして、かすみの筋の通った鼻と助兵衛の潰れたような鼻がぶつかった瞬間、二人の唇は重なり合う。
助兵衛の味わう唇は、ふわふわでどこまで追っても果てしないような、そんな重厚さと軟らかさを兼ね備えたような美少女の唇。
かすみの味わう唇は、べとべとした唾液の滑り気に覆われた、いやに肉厚な中年オヤジの唇。
(嫌…まさか、こんなのが私の、初キスなの…?)
未だに目の前で起こっている現実を認められないかすみ。
しかし、虚ろな思いはヘドロのようなぶにょぶにょとした感触と唇を吸い上げる汚らしい音で現実へと引き戻される。
(こんなの…こんなのってぇ…!)
閉じられた瞳からは一筋の涙が零れる。
ぶちゅっ!ちゅばっ、ちゅむぅ…ぢゅるるっ、ちゅくっ!ちゅくっ!ちゅっ
かすみの頭を両手で抱え、自分の唇へ引き付けるようにしてその唇を貪る助兵衛。
年若い美少女が風采の上がらない中年男に唇を奪われるのを見て、観衆はいっそうヒートアップし出す。
助兵衛は顔の角度を忙しなく変えて、スライドキスを愉しむ。
モニターには潰れたように押し広がった助兵衛の唇とその唇に純潔を吸い出されたかすみの苦悶の表情が横から映し出された。
「ぶぢゅっ、はぁ!はぁ!かすみちゃんの唇、最高だったよ…はぁ、はぁ」
「ぅ…ぁ、くっ…」
助兵衛のキスが一旦終わると、嗚咽を漏らして、顔を泣き濡らすかすみ。
掌でいくら涙を拭っても、溢れ出した涙は止まらない。
しかし、序盤あれだけの強さを見せつけたかすみの泣き顔は、かえって助兵衛と観衆の嗜虐心をくすぐってしまう。
あれだけ強いくのいちも、所詮は一人の少女に過ぎないのだ。
舞うような華麗な動きを見せていたかすみが太った中年男に組み敷かれて何もできない様は、美しい羽をはためかせる蝶が蜘蛛の巣にかかってもがく様によく似ていた。
「かすみちゃんダメだよぉ、試合中に泣くなんて…ほぉら、おじさんが慰めてあげるからねぇ~ちゅぅううう…」
「もう、やめ…むぐっ、んんぅ!」
泣いているかすみにさらに愛のキスを押し付ける助兵衛。
容赦なく押し付けられた唇は生き血を啜る蛭のように吸い付く。
吸われて傷ついた乙女心からは純情たる想いが流れ出て、紅潮した頬を伝う涙は真っ赤な血のように見えた。
「はぁっ…はぁっ…」
唇から解放されたかすみは仰向けになったまま腕で目の辺りを覆う。
助兵衛もかすみとのキスでかなり興奮したのか、かすみの腹の上に跨ったまま、三段腹を伸び縮みさせながら呼吸を整える。
しかし、両者の表情は愉悦と悲嘆に満ちた、全く逆の感情を湛えていた。
「はぁ、はぁ、ふひひっ!かすみちゃん息が苦しそうだねぇ~、おじさんが手伝ってあげよっか?」
「はぁ…はぁ…ひっ!?いや、もうっだめ…」
再び迫る助兵衛の唇に、力無く抵抗するかすみ。
「げひひっ!冗談だよぉ、流石にかすみちゃんが可哀想だからね、ちょっと休憩させてあげるね」
名残惜しそうに乳房を一揉みしてから、かすみの胴から立ち上がる助兵衛。
体の自由を得たかすみはリングの隅で体をくの字に曲げて息を整える。
勿論、キスをされずに済んだ事は幸いだった。
しかし、助兵衛のような碌に鍛錬すらしていないような中年男に情けをかけられたのがたまらなく屈辱的だったのだ。
かすみも霧幻天神流を極めた一人のくのいち。
負ける事はすなわち死だと幼い頃から教わってきた。
敵に情けをかけられるなどもっての他。
かすみは霧幻天神流の名をかけて、一人のくのいちとして、勝負を投げる事は許されなかった。
(まだ…負ける訳には、いかない!)
泣きじゃっくていた時とは一転して、すっと威勢よく立ち上がるかすみ。
立ち上がった瞬間、豊かな乳房が重たげにぶるんぶるんと揺れて、観衆の野次を誘う。
服が脱げていたせいで褌と白いニーソックスのみの恰好だったが、気にしない。
「へぇ…かすみちゃん褌だったんだねぇ…」
かすみが褌を履いていた事に好奇の目を向ける助兵衛。
息を整えている最中もなお、屹立したペニスが痛いほどに膨れ上がって、弛んだ腹を持ち上げているほどだった。
「あなたに私は倒せない!」
まだ目が腫れて、泣き濡れた跡も鮮やかなほどに、かすみは鋭い剣幕でそう言ってみせる。
「へぇ、随分な口上を切ってくれるねぇ」
かすみの挑発にニタニタと不敵な笑みを浮かべる助兵衛。
「かすみちゃんがその気なら、おじさんも付き合ってあげようかなぁ」
お互いの息も整った所で、構え直して対峙する助兵衛。
少し背中を丸めて、両拳を胸の辺りに構えるグラップラー特有の何時でも組み付ける構えだ。
(あんな大言壮語をしてしまったけど、正直体が…)
粘着するように組み敷かれ、何度もキスをされた事もあるが、かすみの体は憔悴しきって重たくなっていた。
いつものかすみであれば、この程度で憔悴する事はないのだが、今日はどこか体の調子がおかしい。
誰もいなかった控室は体を痺れさせるガスを吸わせるためのものだったと、かすみは思いもしないだろう。
しかし、たとえ体が憔悴していても、わずかな力が出るのであれば人間を戦闘不能に追い込む事が出来るのをかすみの体は知っていた。
ブルース・リーのワンインチパンチではないが、力が入らずとも相手を倒す事はできる。
特に急所を打てば、その確率はより高まってくる。
(金的…)
あえてもう見ないようにしていたが、露わになった助兵衛の局部を蹴ってしまうのが一番早いのだろう。
助兵衛が不能になってしまうかもしれないが、戦いに情けは無用。
平均的な男性の睾丸は大体50kgの圧力がかかると潰れてしまうが、勿論かすみはそんな事は知らない。
ただ、憔悴した体でも一瞬の蹴る力を用いれば、潰す事ができるのは確かだ。
(やるしかない…)
あれだけ頭部や胴体に攻撃を加えても効かなかったのだ。
かすみとしても男の人の大事な所を蹴り上げるなど考えたくもなかったが、この際なりふり構っていられない。
相手に悟られないように、股間の方を見ないようにして、目も合わせずに間合いを測り続ける。
「あ!そうだ、かすみちゃん喉乾いたでしょ?」
「え?」
突拍子のない助兵衛の言葉に、かすみも思わず反応をしてしまう。
助兵衛が手招きをした瞬間、何か噴霧器のような物がリングに向かって投げられる。
それを助兵衛が手に取った瞬間、燃え上がったように叫び出す観衆。
(…武器?)
何でもありのこの興行にも武器の使用は禁じられていたはずだ。
ただそれが武器であるかどうか別として、何か嫌な予感がした。
助兵衛の手に握られた噴霧器はホース状の太い管でつながれ、それが観客席の方へ伸びている。
指をトリガーのような物に掛けている所を見ると、何か発射できるような物なのだろう。
「かすみちゃんはこの先っぽからナニが出るか分かるかな?」
「ッ!」
銃のようにその先端を突き付けられ、思わず身構えるかすみ。
今間合いを詰めて急所を蹴りに行った所で、何か得体の知れない反撃を受けてしまうかもしれない。
そんな未知への恐怖がかすみを及び腰にさせていた。
「正解はぁ…」
「…ちょっ!何これ!?」
トリガーを軽く引くと、びゅっびゅっと白く濁った液体がかすみに向かって飛んでくる。
顔を覆った腕に付着したソレからは何か、魚介系のヘンな臭いがした。
(これ…何?え、もしかして…)
かすみももう19歳、ソレの存在くらいは知っている。
しかし、ソレがあの噴霧器のような物から発射されたなど、到底信じられない。
じゃあ、この腕に付いた液体は誰のモノ?
おのずとかすみの視線は観客席へと続くホースへ泳いでいた。
「まさか…そんな」
「ぐへへっ!勘の良いかすみちゃん、もう分かっちゃったみたいだね。そうこれはね、お客様が出したエッチな液体を集めて、発射するための物なんだ!」
親戚に買ってもらった玩具を自慢する子供のように屈託の無い笑みを浮かべて、紹介してみせる助兵衛。
青ざめた表情でその場に佇立して、かすみは腕を必死に振って精液を落とす。
一万人を超える男達の精液をかけられるなど、嘘だと思いたかった。
「あっ落としちゃダメだよかすみちゃん。皆かすみちゃんのエッチな姿を見て、シコシコと必死に出してくれたんだからさぁ…こりゃ追加が必要だね」
「えっ」
どんなに反射神経が良くても、降りかかる液体をかわせる人間など存在しない。
ましてや神経を鈍らされた女性ならなおさらの事だ。
目一杯トリガーが引き絞られて、大量の精液が宙を舞う。
「「「「「「「「おっしゃああああああああああああああああああっ!!!!!」」」」」」」」
「――――ッ!!」
顔と胸を覆うとした時には既に遅し、大量に吹きかけられた精液がかすみの豊かな乳房や美貌を汚していく。
その瞬間、歓喜の怒声を上げる観衆。
かすみに付着した精液は全て、自分のものなのだと勝手に妄想していた。
すっかりと戦う姿勢を崩されてしまったかすみ。
構えを解いている内に助兵衛に間合いを詰められ、組み付かれてしまう。
近付いてくれば膝で急所を蹴ってやろうと企んだかすみであったが、すぐさまふとももに股間を押し付けられ、蹴る事さえできなくなってしまう。
「喉乾いてるよね?遠慮しなくて良いんだよ、ほら男の人の精子飲みたいって…」
(ふざけた事を…!)
噴霧器の先端をかすみの口に近付けて、口に入れようとする助兵衛。
しかし、かすみは頑なに口を閉じて、それを許さない。
助兵衛の思うがままにされ、喋る事さえ叶わない状況にさせられている事が悔しくてしょうがなかった。
「んんー飲んでくれないのかなぁ、とりあえず寝かせちゃお」
束ねられた両脚を助兵衛の脚で刈られ、また倒されてしまうかすみ。
マウントポジションを取ると、かすみの鼻を摘まむ。
「へへっ、こうしてれば何時かは口開くよね?」
鼻からの呼吸を許さずにいれば、何時かは口を開いて息をするだろうという算段だ。
くのいちであるかすみの事、呼吸をせずとも耐えられるような鍛錬もしてきたが一人の人間である事を辞す事はできない。
息が長く続くとはいえ、限度がある。
「かすみちゃん、ちゅ~…」
さらに最悪だったのがかすみが口を開くまでの間、暇つぶしと言わんばかりに、閉じた口の上から助兵衛がキスをしてきたのだ。
不快感に煽られて動悸が激しくなると、当然呼吸も乱れる。
(嫌だ!嫌なのに…呼吸が…)
もうかすみの呼吸は限界に近付いていた。
辺りが白っぽく霞み始め、手足の感触も薄れる。
唯一はっきりとしているのは唇に吸い付くぶよぶよとした最悪の感触だけだ。
もうこの際息ができなくなって、失神してしまった方が良いのかもしれない。
薄れゆく意識の中で、一瞬かすみはそんな諦念に身を委ねかける。
このまま恥を晒して、男達の精子を飲ませられるくらいなら失神して全ての思考をシャットアウトした方が良いのかもしれないと。
しかし、失神した後はどうなるだろうか。
知らない内にリングの上でもっと恥ずかしい目に遭わされるかもしれない。
ただの負け、失神じゃ許さないのがここの連中のやる事だろう。
かすみはどうしても、口を閉じ続ける事ができなかった。
「…ぷはっ、むぐぅっ!!ぶぐ…」
口を開けた途端、噴霧器の先端を口腔に挿入されるかすみ。
後頭部を抱えられ、喉奥まで押し込まれる。
「さーあ行くよぉぉぉっ」
トリガーが限界まで引き絞られた瞬間、まだ熱を帯びた精液が喉奥へと流し込まれる。
観衆の「かすみに精液を飲ませたい」という想いが、ホースを通じて今、かすみの喉へとつながったのだ。
自分達の精子を飲むかすみに、感極まってスタンディングオベーションで応じる観衆。
立ちながらも股間をしごいて、かすみが自分のモノをしゃぶってくれているのだという妄想による疑似フェラチオを堪能する。
喉を伝う濁流は治まる事を知らない。
「んっっぐっ!んくっ…んふぅっ!んごっ…こひゅっ…」
飲みたくなくても飲んでしまうかすみ。
いわゆる嚥下反応で喉に流れた物を飲み込んでしまうのだ。
独特の苦味が口一杯に広がり、吐き気を催す。
しかし、口に大きな噴霧器を突っ込まれているので、吐く事すら叶わない。
死んだ魚のように無様に口をあんぐりと広げたまま、万人の男達の精子を飲まされる美しきくのいち、日常では絶対にお目にかかれない最高の恥辱ショーだ。
しばらく飲ませているとかすみが失神しそうになったため、助兵衛は噴霧器を引き抜いてやる。
解放されたかすみは口を閉じる事もせずに、リングの上でくの字に体を横たえて、濁った瞳で虚空を見つめる。
「う゛っ…う゛っ…う゛おえええぇええええええっ!!」
ビクビクと小さく痙攣したかと思うと、体を強張らせて飲まされた白濁を吐き出してしまった。
口をだらしなく開いて、そこから若干黄ばんだ吐瀉物を吐き垂らす姿は到底19歳の少女には似つかわしくない。
あの強かったくのいちがそんな状況にまで追い詰められている事に嗜虐心をそそられる。
会場のモニターもそれを煽るように、かすみが助兵衛を圧倒していた序盤の映像をリプレイで何度も流す。
「もうっ、殺して…殺してええええええええええええっ!!!」
両手をリングに付いて、琥珀色の瞳に涙を一杯に溜めながら、泣き叫ぶかすみ。
鼻水と涙と吐瀉物を口の辺りから垂らして「殺して」とせがむ姿はこれ以上ないほどに無様だ。
もうかすみ自身も心から敗北を認めているのだろう。
もはやそこには「運命のくのいち」の面影は欠片もなかった。
「ダメだよかすみちゃん。かすみちゃんみたいな可愛い女の子が死んだら、皆悲しむよ?」
泣き崩れるかすみを無理やり抱き起こす助兵衛。
「ほら立って。もうこれで最後だから」
立たせながらも褌を脱がせて、白のニーソックスのみにひん剥く。
形の良い桃尻と他の侵入を許していない女陰が露わになる。
「じゃあ最後に、かすみちゃんの大事なもの、奪っちゃおっかなぁ!」
それが何を意味しているのか、かすみにもよく分かった。
しかし、もう抵抗する声さえも出せなかった。
勿論、こんな変態オヤジに処女を奪われるなど、あっていいはずがない。
抵抗したい、今すぐこの中年男の顔を蹴りつけてやりたい。
それでも、その理不尽なほどに燃え滾った性欲を撥ねつける力が、体には残っていなかった。
「よいしょっと」
力無く立ち上がったかすみの白いニーソックスに包まれた両脚を持ち上げて、対面座位のまま抱え上げるような姿勢になる。
膝の裏に両腕を差し込まれているせいで足を地に付ける事ができない。
無意味に脚をばたつかせる様が観衆と助兵衛の興を誘う。
「挿れるからねぇ…大丈夫だよぉ、おじさんに身も心も委ねて、イイからねぇっ!!」
抱き上げた所から落とすように、かすみの体を股間へ引き付ける。
その瞬間、朧げにくすんだかすみの目は見開かれ、男達の低い歓声をかき分けるような澄んだ悲鳴が響き渡る。
「んぁあああっああああああーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
かすみの苦悶と屈辱に満ちた表情がモニター一面に映し出され、観衆は今日一番の盛り上がりを見せる。
「ずっとガマンしてたんだからねぇ…こんなエッチな体を前に、ガマンは、いけないよねぇ!」
「あっ!あっ!あっ!あぁっ!」
夢中で腰を振りたくる助兵衛に、我を失ったようにパクパクと口を開いて悲鳴を上げるかすみ。
揺さぶられる度、汗ばんだ乳房がたぷたぷと揺れて、汗水の飛沫を散らす。
「くぅぅぅっ…!かすみちゃんの中、温かくて、きゅうきゅうで…凄いよぉタマらないよぉ…」
「はぁぁっ!あぁ!あんっ!ああ!んあ゛あぁっ!」
巨大なペニスで子宮をずんずんと突き上げ、激しくかすみを攻め立てる。
引き締まった、ほどよく筋肉の付いた肢体による締め付けは絶品だった。
幾層ものの膣肉が助兵衛のペニスにねっとりと絡み付き、かすみの意思に反して、助兵衛の射精を誘ってしまう。
皮肉な事に日頃敵を倒すために鍛えてきたこの肉体が、今は敵を悦ばせる事に利用されてしまっていた。
手足が短く土色の肌をした肥えた中年男が、光に透き通るような白い肌を持ち完璧な美貌を持った美少女をレイプする。
そんな事はとても日常ではありえない、考えられない事だ。
しかし、それがこのリングの上ではいとも容易く起こってしまう。
観衆は美少女が醜い中年男に犯されるという日常離れしたシチュエーションに、別世界に連れて来られたような感覚を覚える。
罪悪感など感じない、皆ここで起こっている事は夢だと思っているのだから。
「はぁ!はぁ!あぁっ、年甲斐もなく、もう一発目が出ちゃいそうだ…」
挿入してからわずか2分ほど。
かすみの膣があまりにも気持ち良過ぎたせいで、もう助兵衛の性感は絶頂へと達しかけていた。
「かすみちゃんっ…しっかり、受け止めてね?おじさんの精子」
我慢する事なく、一発目を出す事を告げる助兵衛。
その言葉を聞いたかすみは当然、底知れない恐怖に襲われる。
こんな卑らしい中年男の精子で妊娠してしまったら、かすみは死ぬより苦しい思いをするだろう。
なんとか抵抗して、助兵衛の腕の中から逃げようともがくかすみ。
しかし、体が動かない。
意志に反して体が動かない悔恨が、大粒の涙となって溢れ出す。
「ふおおおおおおおぉーーーーーーっ!!」
(兄、さん…助け、て…)
ドビューッ!!!ドビューッ!!!ドビュッ!!!ドビュッ!!!
感電して腰が跳ね上がるかのように一瞬躍動したかと思うと、子宮口に突き付けられたペニスがびくびくと脈動し出す。
子宮に直接注ぎ込まれた精子は、かすみを妊娠させようと子宮を溺れさせる。
収まりきらない大量の精子が、二人の結合部分から漏れてしまう。
ドビュッ!!!ドビュッ!!ドビュッ!!ドビュッ!!
(もう、私…)
もはやAlpha-152だとかドノヴァンだとか、そんな事は頭の中から消え去っていた。
自らがくのいちである事さえも忘れてしまうほどの衝撃。
もうこの場から、その名の通り霞となって消え去ってしまいたい。
今のかすみは一人のくのいちでも一人の少女ですらもない、ただの肉人形と化していた。
ドビュッ!!ドビュッ!!ドピュッ!ドピュ!ドピュピュ!
「こんなんじゃかすみちゃんのクローンが見つかる前におじさんとかすみちゃんの子供ができちゃうよぉ!」
馬鹿げた事を言って助兵衛が観衆の笑いを誘う。
本当だったら「ふざけないで」の一言でも言った方が良いのかもしれない。
人としての矜持を保つためには、一発引っ叩いてやった方が良いのかもしれない。
だが、もうそんな事、かすみにとってはどうでも良かった。
クローンがどうとか言っているが、本当は自分がクローンなのかもしれない。
もう既に、命は尽きずとも、かすみという意思を働かせる精神は死んでいるのだから。