「なんでそんな物を着なきゃいけないのよ!」
「いやぁ、ですからこれは…ファンサービスという事で…」
薄暗い部屋で強談する男女。
両手を腰に当て、威上高に口を尖らせる少女と、卑屈に腰を曲げ、何度も頭を下げて何やら懇願している一人の男。
差し出されたその手には青いスクール水着が握られていた。
「あやねさんがこれを着て頂ければお客様も非常に喜ばれます。ですから是非ともこちらを着て頂きたいと…」
「あたしにファンサービスする義理なんてないでしょ」
あやねと呼ばれた紫髪の少女はぺこぺこと頭を下げる男を尻目に、不機嫌そうにどかっとパイプ椅子に腰かける。
「大体なんで水着なのよ?この興行はただの格闘技の興行じゃないの?」
「いやぁ、こちらの水着でしたら試合をするにしても動き易いですし、その…肌の露出も増えた方がお客様も喜ばれるかと…」
鼻の下を伸ばして語る男に、ふんと鼻を鳴らしてきっぱりと言い放つ。
「断るわ。動き易さだったら今着てる物で十分だし、無駄に肌を露出すると傷が付くのよ」
そう語るあやねの格好は、黒を基調とした肌にぴっちりとフィットする忍装束であった。
一見するとレオタードのような作りをしており、肩や背中は大きく開いている上に股間はハイレグ仕様となっているため、むっちりとしたふとももや尻肉が露出している。
豊満な横乳が網状の肌着越しに見えているのだが、いかんせん衣装が全体的に黒色なので色気がない。
その上、試合になれば黒いマスク状の覆面を着けようと言うのだ。
毎度毎度、破廉恥な格好をした美少女達が嬲られるのを見世物にするこの興行で、全身黒の忍者服で臨むなど観衆からの批判が轟々と寄せられる事は間違いない。
なんとかあやねにスクール水着を着せようと、先程からこの男は粘っているのだ。
「出るだけじゃ満足できないって言うの?」
「いやいやとんでもない!あやねさんが出て頂けるだけで、お客様は喜ばれると思いますよ!」
「だったらそれで良いじゃない」
だが、一番まずいのはあやねに帰られる事だった。
あまり無理強いをするとこのタイプのゲストは急に帰ってしまう事がある。
あやねの機嫌を壊さないように神経質になりながら、着替えてもらうようオロオロと懇願し続けた。
「もうすぐ入場です」
結局、あやねは頑として動かないまま、入場の時を迎える。
しつこく懇願していた男も諦めたのか、少し前にスクール水着を置いてそそくさと部屋を去ってしまった。
控室に一人残されたあやねは緊張している様子も見せずに戦いの時を待ち侘びる。
(どんな奴が相手なのかしら…)
パイプ椅子の貧相な背もたれに身を任せて、思いに耽る。
ここの辺りで強い格闘家がいる、という話は聞いた事がなかったが、それでも不穏な噂を耳にする事はあった。
有名な女性格闘家がここでの興行を終えた後、行方をくらますという噂であった。
それも名前が上がるのは軒並み有名で、且つ容姿が美しいと定評のある者ばかり。
一説によればここで試合を終えた女性格闘家達は皆、人身売買にかけられ、悪趣味な変態の金持ち達の肉奴隷として一生を終える、という話があるが真偽の程はどうか。
(ま、どうでもいっか)
ぎいっと椅子が軋む音と共に体を起こし、ゆっくりと立ち上がるあやね。
そもそも彼女がここに来た理由は、試合に出るだけである情報を教えてくれるという話を受けたからであった。
その情報とは、あやねの姉でもある抜け忍、かすみの居場所であった。
つい先日、かすみがこの興行に姿を現し、試合をしたという情報が入ったのだ。
それ以降かすみを目撃したという情報は掴めていないが、ここに来れば何らかの手掛かりを掴める事は間違いない。
そう思ってここに足を運んだ結果、『彼ら』はあっさりとかすみの動向を知っていると語り、快くあやねを迎え入れたのだ。
この興行の試合に出るという条件付きでかすみの情報を差し出すと言ってきた。
試合に出るだけで目的は満たされると言えども、試合に出る以上、負ける事はあやねのプライドが許さない。
忍者にとって戦いで負ける事とはすなわち、死を意味する。
戦場にはKOや一本、フォールなどと言う言葉は存在しない。
殺された瞬間に負けが決定するのだ。
くのいちとして育てられてきたあやねにとって、いかなる戦いにおいても負ける事は許されなかった。
「入場です!」
係員があやねに入場を促す。
それを受けて、黒い覆面を口元に着けるあやね。
任務といえども忍者という立場柄、あまり身元が割れるのは望ましい事ではない。
「私も甘く見られたものね」
ため息を吐きながら紫色の髪を後ろで一つに纏める。
悠々とした雰囲気で、背中の後ろで両腕を伸ばしながら野太い歓声に包まれたコロシアムへと歩を進めた。
「レディーーーーース!アァンド、ジェントルメーーーーーーーーン!!!」
タキシードにシルクハット、サングラスといった如何にも怪しげな衣装のリングアナが絶叫する。
白いリングが暗闇の中にぼうっと照らし出され、一杯になった観客席を七色のライトが妖しげに照らして回る。
叫んだ常套句に反して、相も変わらず『ジェントルメン』しかいない観客席が、獣のような野太い歓声で湧き上がった。
「それではぁ、本日のチャレンジャー!青コーナー!殺意のくのいちッ!!あーーーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーねーーーーーーーーーーー!!!」
プシャアアアアッ!とけたたましい音を立てて、青コーナー側の花道から水蒸気が噴き上がる。
『殺意』という物々しいキャッチフレーズに反して、白い飛沫の中から姿を現したのはまだ年端もいかない華奢な少女だった。
黒っぽく色気のない服装から少女がくのいちである事は容易に想像できる。
だが、黒い覆面をしているせいでどういう容貌をしているのか、よく分からない。
「おい脱げよ!!!」
「地味な格好してんじゃねーよ!!」
花道を歩くあやねに浴びせられるブーイングと野次。
それは彼女が露出度の低い、いわば男受けのしない衣装で入場してきたからだ。
今までの挑戦者は必ず露出度の高い衣装を着た美少女だというのがお決まりであった。
見るも破廉恥な格好をした美少女達が嬲られるのを愉しみに来たのに、体はおろか顔すら隠されているのでは話にならない。
怒りを募らせた観客達が口角泡を飛ばして、容赦の無い批判を轟々と浴びせる。
しかし、そんな銃弾の如く苛烈な批判の飛び交う会場で、あやねは何事も無いかのように悠然とリングへと歩み寄る。
反らせた胸は歩く度にぷるぷると揺れるも、衣装が黒いせいであまり目立たない。
時折、不機嫌そうに周りを見回すその目は真っ赤に煌めいて、鮮血を思わせた。
リングに上がったあやねの顔が会場に設置された巨大なモニターにアップで映し出される。
マスク状の覆面で隠れているとはいえ、その覆面の上から浮き上がる整った輪郭線や筋の通った鼻梁などを見ると、やはり相当な美少女なのだと推察できる。
それに、ぴっちりと体にフィットした忍装束の上からくっきりと分かるプロポーションに、先程まで口さがないブーイングをしていたはずの男達の目が奪われていた。
まだ幼さを残している小さな骨格に反して、乳房はとても重たげに映り、ハイレグ仕様の衣装が尻に喰い込んでいるせいでむっちりとした尻が余計豊かに見える。
色気のない黒の忍装束から覗く豊かな乳房は一つの矛盾であった。
かつてのアマゾネスにとってそうであったように、大きな乳房など人を殺す際には何の役にも立たない。
強いて言えば男をたぶらかすために使えるだろうか。
いや、あやねの赤い閃光のような視線や尊大な態度は男に媚びる事などつゆほども知らないように見える。
強さと無骨さを纏ったくのいちに如何にも不似合いなたわわな乳房。
男達はそれを見て、その”矛盾”を解いてやりたいと思う。
組み敷いて、乳房をいやと言うほど揉んで、所詮あやねなど男に快感を提供するだけの肉奴隷に過ぎないのだと、その体に叩き込んでやりたいと思う。
男の目を串刺しにして離さない魅惑的な肉体。
しかしそんじょそこらの男など相手にしないと宣言しているかのような傲岸な態度。
その矛盾を己の自慢の肉槍で突き崩してやりたい。
矛も盾も全て男を悦ばせるためだけのものなのだと教えてやりたい。
そんな思いで男達は自らの肉槍に熱を滾らせ、矛盾を突き崩すその瞬間に備えてシコシコと磨き始めた。
「続きましてぇ、赤コーナー!チャンピオンッッ!!反逆の変態教師!猿股――――――――助兵衛――――――ッ!!!!」
いつもであれば、観客達を差し置いてこれから美少女とあんな事やこんな事をする助兵衛に対して浴びせられるはずのブーイングが、何故か彼を後押しする歓声へと変わっていた。
「助兵衛―――!勝てよおおおおおお!!」
「そのクソアマ犯してやれ!」
「犯れーーーーーっ!!!」
どうやらあやねの傲岸な態度が、観客達のヘイトに火を付けてしまったようだ。
いつもは助兵衛に対して羨望を募らせる余り、彼に対してブーイングを送るのが、今回は生意気なあやねを躾けてやって欲しいという一心で、応援へと変わっている。
珍しいシチュエーションにも助兵衛はいつもと変わらず、ニタニタといやらしい笑みを
浮かべながら淡々とした足取りで入場してくる。
「これより、メインイベントを開始します!!!まずは青コーナー!殺意のくのいち!あーーやーーねーー!!!」
名前がコールされても、それに応える姿勢を全く見せずにツンとした態度を崩さないあやね。
横柄な態度に会場はまたもブーイングに包まれる。
しかし、モニターにあやねの艶めかしい胸や下半身がアップで映し出されると、ブーイングはひっそりと静まっていった。
「続きましてぇ、赤コーナー!チャンピオンッッ!!猿股ぁ、助―兵衛!!!」
四方に向かって下げる禿げ頭には珍しく歓声が向けられる。
おそらく観客はリングに立っているこの太った中年男に思いを託しているのであろう。
俺達の代わりにあやねを躾けてやってくれ、と。
「両者中央へ」
レフェリーがリングの下から出てきて、二人を中央へ呼ぶ。
向かい合って立つと、あまり背の高くないあやねと助兵衛で身長差がない事が分かる。
(ふぅん、コイツがあたしの相手?話にならないわね)
修羅場をくぐりぬけてきた者には、肌を合わせるまでもなく一目見ただけでその強さが分かるものだ。
瞼に埋もれかけた目を見ても殺気や狂気といったものは感じられない。
自分の実力に自信があるようにも見えず、ただの弛んだ中年オヤジにしか見えなかった。
「ん?どうしたの、僕の目なんか見て」
醜悪な自分と目を合わせる挑戦者が珍しかったせいか、思わず問い掛ける助兵衛。
あやねは品定めでもするかのように、しばらく助兵衛の目をじっと見ていたかと思うと、小さく「フン」と鼻で笑って目を逸らす。
「グフフッ!もしかして僕に一目惚れしちゃったのかな?いやあ~嬉しいなぁ~、僕の顔を見たがる相手なんて今までいなかったから」
(何言ってんのコイツ)
美少女に顔を見られた事で心から嬉しそうな声を出す助兵衛。
あやねには助兵衛が何を言っているのか、さっぱり理解不能だった。
くのいちとしても一人の女性としても優秀なあやねが、助兵衛の如き不細工な男など好きになるはずなどなかったから。
「遠くで見てたから分からなかったけど、あやねちゃんって結構オッパイおっきいよねぇ~」
首を突き出して、今度はあやねの大きな胸をまじまじと見つめる助兵衛。
本来であればその禿げ頭を叩いているところであったが、相手の挑発行為に乗ってはいけない。
ここは相手のホーム、いわば自分にとっては全くのアウェーなのだ。
ここで感情を露わにしては相手の策に乗ってしまう。
あやねは何も感じていないかのように、傲岸とした態度を崩さず胸を反らせる。
しかし、あやねもまだ18歳のうら若き少女。
内心では、豚のような中年男に胸をじっくりと見つめられるなど、気持ち悪くてしょうがなかった。
心の中を毛虫が這っているような不快感をぐっとこらえて、表情一つ淀ませない。
「両者コーナーへ」
レフェリーの声に内心ほっと胸をなでおろしながら、早足でコーナーへと戻るあやね。
ルール説明など全く耳に入らなかった。
助兵衛が名残惜しそうな表情をあやねに向けながら、中央に立ち続けているのが気持ち悪かったが、もうそんな思いをするのもこれで最後だ。
なぜならゴングが鳴った瞬間に勝負がつくのだから。
カンッ!ファイッ!
「「「「「「ウワアアアアアアアアアーーーーーーーッ!!!!」」」」」」
ゴングが鳴った瞬間に観客達の怒号が会場全体を揺らす。
あの憎たらしいほど高慢な立ち振る舞いをするあやねがこれから醜い中年男に犯されるというのだから、観客のボルテージはいつも以上に高くなっている。
おかげで助兵衛がリングに倒れる音が聞こえなかった。
「「「「え???」」」」
打ち上げられた鯨のように重たげに倒れる姿が会場の熱を一瞬で冷ます。
残像さえ見せずに助兵衛を蹴り倒したあやねは、殺意を身に纏いながらも静かに立ち尽くす。
しかし、ゴングが鳴ってから1秒も経ってないのに、まだ成人もしていない少女が男を一瞬でKOするなどとても信じられなかった。
「勝負あったわね」
マスクの中で小さく囁くと、倒れた助兵衛に背を向けてリングを下りようとする。
しばしの沈黙を跨いで湧き起こるブーイング。
もうこんな気味の悪い場所にいたくない。
早く目的の情報を聞き出して、ここを去りたかった。
あやねがリングロープに手をかけた瞬間、そばにいた副審にリングに戻れと指図される。
どうせ勝ち名乗りか何かをしなければならないのだろう。
気だるそうな表情で振り返った光景は、全く予想外なものであった。
助兵衛がふらつきながらも立ち上がっていたのだ。
完全に蹴りを顔面に入れたと思っていたのに、耐えられた。
ダメージはまだまだ残っているようであったが、それでもあの脳裏にへばり付くような気色悪い笑みを浮かべてファイティングポーズを取り続けている。
あやねはため息を吐きながらも、内心驚いてもう一度構え直す。
(次は絶対に仕留める…!)
依然として太鼓腹をぶるぶる揺らしながら素人丸出しのステップを踏む助兵衛を前に、一発で仕留められなかった自分の未熟さを心の中で悔いるあやね。
強く拳を握り、いつでも跳び込めるように膝を少し曲げる。
眉根を引き絞り、眦の鋭くなった双眸は助兵衛の針の穴ほどの隙をも見逃さない。
(そこっ!)
助兵衛が瞬きをした一瞬で間合いを詰める。
「おぉ!?」
いつの間にか目の前に現れているあやね。
驚いている暇も無く、右脇腹に重たい衝撃がずしんと響く。
「おごっ…!!」
レバーに中断蹴りを入れられた助兵衛は、一瞬呼吸ができなくなって体を硬直させたままリングに崩れ落ちる。
「全く…どこ見て戦ってるのかしら」
腹でも重たい打撃がクリーンヒットすれば相手を失神させる事ができる。
ましてや、見えない、意識の外から喰らった攻撃ならなおさらの事。
リングに這いつくばった助兵衛が何か助けでも求めているかのように、両手で空を掻く。
「ふんっ」
「あぎゃあっ!!」
バカン!と小気味の良い音を鳴らして、蹴り飛ばされる後頭部。
呼吸困難に陥っている助兵衛に対して、あやねが容赦なく追い討ちをかける。
後頭部へのサッカーボールキックなど危険過ぎて、まともな格闘技興行であれば一発反則負けにされるに違いない。
「あんたの敗け」
「うぅ…」
後頭部を両手で抱えながらコーナーにうずくまる助兵衛。
相手に背中を向けて寝転がるその姿はとても戦う男の姿には見えない。
あやねが無様に敗北する様を見たい観客からは大ブーイングが浴びせられる。
負ける事などつゆほども思っていない女が無惨にも敗れ、泣き叫ぶ姿を見たいのだ。
やがて、ブーイングを送る観衆達の思いが届いたのか、むっくりと立ち上がる助兵衛。
流石にまだ効いているのか、目の焦点が定まっていないが、立ち上がるとみるみる内に回復していく。
(打たれ強さだけは大したものね…)
半ば呆れながら、そのタフネスは認めるあやね。
(でももう終わり)
心のどこかで本気になりきれなかった自分がいたのかもしれない。
助兵衛を見くびっているが故に全力で攻撃するに値しないなどと思っていたのかもしれない。
しかし、くのいちにとって戦いにおいて手加減などあってはならない事。
霧幻天神流の名にかけて、これ以上試合を長引かせる事はあやねにとっては許されざる事であった。
(隙だらけ…)
「えっ」
まるで空気のように音も立てず、助兵衛の懐に入ったかと思うと、鳩尾を一思いに打ち抜く。
「おぶぅっ!!」
どすっと鈍い音をたてて、腹に喰い込む拳。
あまりの威力に吹っ飛ばされて、助兵衛の体がリングの外へ跳び出てしまう。
「ふんっ、笑わせるわね」
わざとらしくのろのろと、リング外に跳び出た助兵衛を支え起こす副審。
少しでも時間を稼いで助兵衛を回復させようという寸法なのだろう。
だが、拳に残る確かな感触。
体の芯を捕えた完璧な一撃。
あれを受けて倒れない人間はいないはず。
もう助兵衛がファイティングポーズを取り続ける事ができない事をあやねは確信していた。
しかし残念ながら、その祈りにも似た確信は的中しなかった。
リングロープの間からのっそりと現れた助兵衛は、あやねと目を合わせるとニタリと笑って、再びファイティングポーズを取る。
(まだ倒れないの?)
あまりのしぶとさに眉根をしかめるあやね。
今まで戦ってきた猛者達でもこれほどに打たれ強い者は稀有だ。
(しぶといわね…)
ゾンビのように何度でも立ち上がってくる助兵衛にあやねは内心焦っていた。
自分の攻撃が全く効いていないように見えるのだ。
確かに肉を弾く感触、相手の脳が揺れる感触、拳や足にしっかりと残っている。
しかし、相手は10秒後にはけろっとした表情で立ち上がってくる。
助兵衛には痛覚が無いのであろうか。
打撃を加えては何度も何度も立ち上がられて、まるであやねは感情を持たない骨を叩いているような気分にさせられていた。
それに、アウェーの洗礼と言うべきか。
何故かいつもより体が重く、疲れるのが早いのだ。
普段はくのいちとして裏社会で戦い続けているあやねであったが、却って今立っているようなスポットライトを当てられて、何万人もの観衆の視線を受けながら戦う機会というのはほとんどなかった。
慣れない客の歓声にたじろいでいつもの調子が出せないのであろうか。
(あたし、緊張してるの…?)
熱くなった頭で自問自答するあやね。
しかし、不調の正体が緊張でも何でもなく、控室で麻痺薬を吸わされた事によるものだとあやねは気付く事ができなかった。
「あれぇ~、あやねちゃんぼーっとしてるけど、大丈夫?」
「っ…」
心の内を見透かされたような事を言われ、少しうろたえるあやね。
そう言えば目の前が少しぼやついてきた。
いつの間にか体もふわふわ浮いているような、思うように力の入らない感覚に陥っている。
(次で決める…!)
長期戦に持ち込まれれば相手の思うつぼ。
ならば、その前に強い一撃を叩き込んで試合を終わらせる他はない。
限界まで引き絞られた弓弦の如く、あやねの体がきりきりと空気を震わせる。
「はぁっ!!」
溜め込んだ息を吐いて、緊張に軋ませた体を一気に解放する。
突き出された拳からは雷撃のような一撃が繰り出される…はずであった。
握り締められた拳は空を裂く。
そこにあるはずの顔面が目の前から消えていた。
腕が完全に伸び切ってからひやりと感じる寒気。
(ヤバッ!)
どすっ、と下半身に重たい衝撃が伝わると、そのままロープに向かって押し出されていく。
幸い助兵衛の瞬発力があまりなかったせいで即座に倒される事はなかったが、それでも下半身を完全にコントロールされて、時折爪先が宙に浮いてしまう。
「くっふぅっ!」
両脚を抱えられた状態でなんとか倒されまいと持ちこたえるあやね。
元々組技は得意な方ではないが、下半身の柔かさを活かして、クラッチされた助兵衛の両腕の中で暴れ回る。
「へぇ、意外と足腰強いね、あやねちゃん」
タックルでロープ際まで押し込んだ助兵衛があやねの身体能力に舌を巻く。
鰻のように柔かく動くあやねの下半身に、助兵衛の腕の力が分散されてしまったのだ。
タックルを諦めて胸を合わせると、脇を差してコーナーに追い詰める。
「とりあえずこのマスク取っちゃおっか?」
「!?」
おもむろにあやねの顔に手をかけると、力任せにマスクを引きちぎる。
あやねが口を抑えようとした時にはもう遅かった。
露わになった全貌が会場の大画面モニターに映し出された。
「「「うおおおおおおおーーーッ!!!」」」
その可愛らしさ、美しさに湧き上がる歓声。
マスクの上からでも形が浮かび上がっていた鼻は鼻梁が高く、気品を漂わせ、きりっと締まった頬のラインはあやねの凛々しさや美しさを際立たせる。
桜色の唇は薄く艶めいていて、思わずむしゃぶりつきたくなるような、果実のような瑞々しさを湛えていた。
「ごぽっ!」
隙を見て、密着する助兵衛の鳩尾に膝を入れると、すぐさま抜け出すあやね。
大きく離れて、反対側のコーナーまで下がる。
組み付かれた気色悪さに鳥肌が立っていた。
手で覆うように、何度も露わになった口の周りを撫でる。
渾身の一撃をかわされたのは予想外だった。
なんとかテイクダウンされる事は防げたが、組み付かれてマスクを奪われてしまった。
物理的なダメージは全くないものの、組み付かれた時の不快感やマスクを取られた屈辱など精神的なダメージは大きい。
奪い取ったマスクを一人でに見つめる助兵衛。
今まで隠されていた口元が露わになるとどこか恥ずかしい気持ちになってしまう。
「さっきまであやねちゃんが付けてたマスク…ここにあやねちゃんの唾液とか付いてるんだよねぇ?」
とてつもなく嫌な予感がした。
「つまりぃ…これにキスしたらあやねちゃんと間接キスできるって事だよね」
ニヤリと悪戯っぽくに顔を歪ませる助兵衛。
「好きだよ…あやねちゃん」
掴んだマスクに向かって喋りかけたかと思うと、一思いにマスクの内側に唇を擦り付ける。
「なっ…」
あまりの気持ち悪さに息を呑むあやね。
実際にキスをしている訳ではないのに、マスクにキスをされているだけで自分の唇が犯されているような錯覚に陥る。
自分に好意を抱いている男子にリコーダーを盗まれ、勝手に舐められる気分とでも言おうか。
助兵衛はマスクの底を啄ばむように、ついさっきまであやねの付けていたマスクとキスを交わす。
奪いたてのマスクはまだ温かく、湿っていた。
(ダメよ…こういう時こそ落ち着かなきゃ…)
そう、これは相手の挑発なのだ。
今跳び込んだら間違いなくカウンターを取られる。
しかし、早く仕留めなければますます動きが鈍ってくるのも事実。
攻めたい気持ちと待ちたい気持ちがあやねの心で葛藤する。
助兵衛からすれば、なかなか自分の思い通りにあやねが仕掛けて来ない。
しかし、いくらくのいちと言えども、まだ年端もいかないただの少女。
乙女心に応えるような挑発をしてやればすぐに突っ込んでくるはず。
助兵衛は躊躇せずに、さらに行為をエスカレートさせていく。
「間接キスの次は間接フェラでもしちゃおっか?」
今度はマスクを自身の履いているブリーフの中に突っ込んだのだ。
既に勃起していたペニスに今さっきまであやねの付けていたマスクを擦り付けて、リングの真ん中で疑似フェラチオを愉しむ。
「あぁ~良いよぉ…あやねちゃんのフェラ。あったかくってやわらかくって…」
(もう無理!)
気色悪さに耐えかねて、思うがままに跳び込んでしまうあやね。
調子の良い時のあやねなら挑発に乗ったとしても相手を仕留められただろうが、今は違った。
「あっ!?」
踏み込んだ前脚を掬い上げられ、呆気なくリングへ倒れるあやね。
すかさず助兵衛が圧し掛かり、あやねを抑え込むと、観衆からは割れんばかりの歓喜の怒号がぶつけられた。
「いいぞぉ助兵衛―!!!」
「チ●ポぶち込めや!!!」
「ヤっちまえー!!」
待ち侘びていた光景。
あの強気で傲岸な美少女が見るも醜い豚のような中年男に組み敷かれている。
モニターには嫌がるあやねと興奮に笑みを隠せない助兵衛の対象的な表情が映し出されている。
格闘の強さでも見た目の美しさでも釣り合いそうにない男女が肌を密着させる非現実的なシチュエーションに観衆の男心は燃え上がった。
「ぶひひ!やっと捕まえたぞぉあやねちゃぁん…」
「くそっ!離せ!」
圧しかかる助兵衛の体を押しのけようと腕を伸ばすあやね。
しかし、寝技に慣れていなかったのが裏目に出たか、伸ばした腕を捕えられて身動きをとれなくなってしまう。
「うぅ…臭っ!」
顔を近付けられると助兵衛の口臭が漂ってくる。
ただでさえ100kgを超える男に圧し掛かられて息苦しいのに、口臭で鼻を塞がれるとなれば酸欠にすらなり得る。
脚をばたつかせてもがくも、ぶくぶくに肥えた助兵衛の体はびくともしない。
「あやねちゃんおじさんに臭いとか言っちゃダメなんだぞぉ」
ふざけた説教口調であやねに言い寄る助兵衛。
その表情は、臭いと言われる事に憤りなど欠片も感じずにむしろ喜びを感じているように見える。
「生意気なお口には栓をしてあげなきゃね…」
そして、顔を近付けてきたかと思うと、唇をタコのように突き出して迫ってきた。
「ちょっ、何考えてんの!?この変態!」
徐々に視界が助兵衛の唇で埋め尽くされてゆく。
若干、うろたえているような口調で叫ぶあやね。
こんな臭くて汚い中年オヤジとキスをするなど、あって良いはずがない。
それも大観衆の前でファーストキスを奪われるなど、想像にも及ばなかった。
「「「うおおおーーー!!!いいぞぉーーーー!!!」」」
キスを嫌がるあやねの表情にそそられたのか、観衆が異様な盛り上がりを見せる。
あの強気に振る舞っていた美少女が組み敷かれ、さらに無理やりキスをされるなど誰も心に描けなかった。
それに、必死に抵抗する様が初々しさを物語っていて、なお良い。
あの尖った氷のように見えたあやねに少女らしい可愛らしい一面を覗けて、しかもその可愛らしい一面が今にも中年オヤジに汚されようとする場面に、観衆は今日一番の異様な昂りを見せた。
「こ、このぉ…くっ…!」
眉根をしかめて、必死に拒もうともがくあやね。
エビのように体を何度も跳ね上げ、密着した助兵衛の体をなんとか剥がそうと試みる。
しかし、両腕をがっちりと抑え込まれ、身動きさえままならない状態ではとても抵抗などできっこない。
刻一刻と助兵衛の唇が迫ってくる。
あやねは見たくもない悪夢のような想像を絶する仕打ちに、抗う事さえできずに遭ってしまうのであろうか。
大人びた雰囲気に体つき。
周囲から見れば『遊び盛りの女子高生』といった風にも見られる事もある。
しかし、任務や鍛錬に身をやつすあやねにとって、恋愛などにうつつを抜かす時間はなかったのだ。
身内以外の異性と話す事などほとんどなかった。
それもキスなど夢のまた夢。
「ぐふふっ!さっきはマスク越しにしかチュウできなかったからねぇ~。今度はあやねちゃんの生唇にチュウしちゃうぞぉ!」
あやねの唇を眼前にして感極まった助兵衛が、『激臭』とさえ表現できるような口臭を吐きかけて意気込む。
「どんな味がするのかなぁ~?」
逃げ惑う虜囚に銃口を突き付けた時のような快感。
吐息と吐息がぶつかり合うような距離で突き出した唇を近付けると、あやねが首を振って必死にもがくのがたまらない。
もし、唇を重ね合わせたら、一体どんな表情を見せてくれるだろうか。
あれだけ高慢に、生意気に振る舞っていた少女が忌むべき中年男に口付けされる。
涙を流して悲痛な表情を見せてくれるだろうか、それとも口付けされてもなお気丈な表情を見せてくれるだろうか。
尽きぬ妄想の果てはもう目の前にあった。
狙いを定めて、春の桜を思わせるような可憐な唇を啄ばみにかかる。
ぶちゅっ!!むちゅうううううっ
「んむっ!!?」
唇と唇が重なり合った瞬間、目を見開いたあやねの表情がモニター一杯に映し出される。
目の前の現実を受け止められずに驚愕するその様は生娘そのものであった。
「「「「「「ウオオオオオオオオオォオオオオオオオオーーーーーーッ」」」」」」
崩壊した堰堤から大量の水が漏れ出るように、歓声が轟く。
あの他人を寄せ付けないような、澄ました雰囲気を漂わせた美少女が、豚のように肥えた見るも絶えない醜い中年男に口付けされている。
あの怜悧な表情をした美少女が強引にキスされて、苦悶と屈辱に顔を歪ませている。
妄想でさえ描く事のできなかったその光景に会場のボルテージは今日一番の盛り上がりを見せて、音の坩堝と化す。
(こんな…っ、奴に…)
ねっとりと唾液でぬめついた唇に犯されるあやねの柔かな唇。
あやねの後頭部をがっしりと両手で抱えて、これでもかというほど自らの唇に押し付ける。
潰されるように押し拡げられたあやねの唇が、まるでスクイーザーに搾られたレモンのように無様にひしゃげていた。
助兵衛の分厚い唇があやねの唇を吸い込むように蹂躙して、愛撫する。
「ぶふっ…!んむっ、んちゅっ…ちゅくっ、ちゅむぅっ!ちゅばっ!」
それまで男を知らなかったあやねの唇を甘噛みしたり舌でなぞったりして堪能する助兵衛。
しきりに顔の角度を変えて、唇をスライドさせる事でキスを愉しむ。
唇と唇の間から苦しげにあやねの小さな吐息が漏れるのがたまらなかった。
「ちゅぷっ…はぁ、はぁ…どうだった?あやねちゃん、おじさんとの熱いチュウは?」
唇を離すとお互いの唇がねっとりと唾液のアーチを紡ぐ。
ファーストキスを奪われたあやねの表情はなおも芯の強さを保っていた。
「はぁ、はぁ、最悪…はむっ!?」
呪詛のような罵言を吐こうとしたその口をすかさず唇で塞がれる。
ぬめぬめとした唾液をあやねに飲まさんと溜め込んだ唾液の玉を送り込む助兵衛。
歯茎を舌でなぞって、あやねの口腔をべっとりと唾液で汚す。
その後、恋人同士のように何度も唇を重ね合わせた二人。
「ぷはぁっ…」
長く濃密な接吻を終えて、助兵衛は悦に蕩けたような表情で胸の下のあやねに問いかける。
「ぶひっ!どうだった?あやねちゃん。おじさんとの愛の接吻は」
若干、赤い瞳が潤んでいるようにも見えた。
しかし、その燦然とした瞳の輝きはすぐさま助兵衛の視線を射抜き、心に浮かんだ刃を映し出す。
「臭くて最悪…早くどいてくれない?」
醜い中年男にキスされるという責め苦を受けながらも、めげずに反駁するあやね。
気丈な態度を見せつつも、やはり少女としての青い心の内面は酷く傷ついていた。
それも自分よりも弱いとみなしている男に組み敷かれて、強引にファーストキスを奪われたというのが屈辱だった。
「あやねちゃん酷いなぁ…そんな生意気ガールにはおっぱいモミモミの刑にしちゃうぞぉ!!」
「んっ!…くっ」
ふざけた口調で奇声を発すと、あやねの歳の割にはあまりにも豊かな乳房を揉み始める。
伸縮自在の忍装束の上から揉む乳房はダイレクトに触感が伝わってきて、格別だ。
「あやねちゃんが悪いんだぞぉ…こんなエッチなカラダしてる癖に可愛い顔してるから…」
「このっ…変態!」
解放された両腕で助兵衛の顔を叩くあやね。
しかし、組み敷かれた状態では流石のあやねも強い打撃を打てない。
助兵衛はあやねのささやかな抵抗を意にも介さず、豊満な乳房に夢中になる。
大きいだけではなく、弾力もあって、手に吸い付いてくるように軟らかい。
手に余るほど大きな乳房をたぷたぷと掌で弄びながら、堪能する助兵衛。
揉むと跡が残りそうなほどの質量を感じさせるのに、揺らすと機敏に震えるほど弾力がある。
もみくちゃに形を歪められる乳房がモニターに映ると、観衆もたまらず股間をしごき出す。
「は、離せ…っ」
なんとか逃れようともがくも、100kgを超える助兵衛に圧し掛かられて呼吸する事さえままならない。
助兵衛に圧し掛かられたあやねのか細い腰は今にも潰れてしまいそうだ。
それに痺れ薬が効いてきたせいで、もうまともな抵抗ができなくなっていた。
乳房を揉みながら、顔を乳房に押し当てる助兵衛。
若干汗ばんだ匂いと共に、女性特有のふんわりとした優しい匂いも薫ってくる。
まだ青臭い少女とはいえ、女は女。
頬を擦り寄せれば、母性を湛えた豊満な乳房が戦いの最中に安らぎを教えてくれる。
「あやねちゃんのぉ、乳首は…この辺かなぁ~?」
両腕をリングに抑え付けて、忍装束の上から乳首を吸いにかかる助兵衛。
直接吸われていないとはいえ、敏感な乳首を吸引される感触や助兵衛の口内の温かさが忍装束越しに伝わってきて、気色悪い。
背筋を凍らせるような不快感にあやねも死力を振り絞って抵抗を試みるも、体が鉛のように重くて動かない。
(どうして…!?どうして体が言う事を聞かないの!?)
思ったように体に力を入れられないもどかしい状況に、あやねは苛立ちを募らせていく。
乳房を揉みしだき、口に含み、ありとあらゆる手段であやねの乳房を弄ぶ。
しかし、あえて助兵衛はあやねの忍装束を脱がせようとしない。
あやねがくのいちである事を観衆、そして自分に忘れて欲しくないからであった。
序盤はあれだけ強く、怜悧な態度をとっていたくのいちが今や見るも無残に蹂躙されている。
そのギャップを男達は堪能していた。
序盤の数分間で作られた『クールで強いくのいち』というイメージを、鎚を振り下ろすが如くぶち壊すのが愉しくてしょうがない。
助兵衛が今その悦びをありありと噛み締めているように、観衆も味わっているはずだ。
手でこね回すように巨乳を揉みしだいて、急に手を離してみせる。
すると、弾力性を持った乳房がぶるんぶるんと重たげに揺れながら、すぐに揺れを収めて静止する。
少しでも歳をとった女の乳房であればこうはいかないはずだ。
残像を描くような素早い揺れと音をたてるような重厚感のある揺れを同時に可能にするのは、若さの割に規格外の乳房を誇るあやねならではの現象。
その極上の質感はあやねの姉にあたる、かすみの乳房ですら凌駕した。
両脚を絡めて、樽のような腹の下にあやねの体を閉じ込める。
もはや、これで逃げる事は不可能だろう。
あやねは助兵衛の体臭と口臭をかがされながら、屈辱という名の地獄に突き落されるのだ。
しかし、そんな絶望的な状況下に置かれても諦めないのがあやね。
麻痺した体に鞭打って、助兵衛の腹の下でもがき続けている。
時折モニターに映る表情からは、怒りの灯は少しも衰えていないようだ。
その折れない心が助兵衛のモチベーションを高めているとは知らずに。
「ぶひぃ…っ、あやねちゃん…ンチュ」
「んっくっ!ぅぷっ…むふぅっ…んんっ!」
巨乳を揉みしだきながら、あやねとの接吻を愉しむ助兵衛。
ねちっこく、じっくりと、煮溶かすようにあやねの唇をねぶっていく。
甘美な快感が助兵衛の神経を酔わせた。
「ちゅぽぉ…ちゅっ、むぢゅっ…ぐわっ!!」
突然、キスを愉しんでいたはずの助兵衛が悲鳴を挙げて跳び上がる。
いきなりの事に、何があったのかと目を見張る観衆。
モニターからは何があったのかよく見えていなかった。
そして、ゆっくりと立ち上がるあやね。
濡れた唇を袖で拭い、助兵衛の汗がついた肌を手で払う。
その顔は怒りで満ち、灼熱の中で精錬された刀のように冴えわたっている。
遅れて、目を抑えながらむっくりと立ち上がる助兵衛。
「卑怯だよぉ、あやねちゃん…目を突くなんて」
どうやらあやねは助兵衛の目を突いていたようだ。
巨体を跳ね返す力が無いのなら、わずかな力でも急所を突けば良い。
忍として暗黒社会に生きてきたあやねにとっては常識とも言うべき、戦いのメソッドである。
「はぁッ!」
「ごわっ!」
そして、助兵衛の視力が回復しない内に、攻撃を繰り出すあやね。
体が上手く動かないなら、すぐに試合を終わらせてしまう他あるまい。
麻痺した体で立て続けに攻撃を打ち込みにかかる。
しかし、思ったように動かない体では無理があった。
「っ!?」
蹴り脚を掬われ、片脚立ちにさせられてしまう。
「へへっ、あやねちゃん、頂きぃ!」
片脚を小脇に抱えたまま、軸足に襲い掛かるように両脚タックルで突っ込むと、勢い良くずしんと尻からあやねが倒れる。
レスリングであれば一発フォールが取れていただろう。
脚を抱えて、押し潰すようにあやねの体に体重を掛ける。
「おじさんの目突っつくような娘にはお仕置きしないとねっ」
「!?」
助兵衛が黒いブリーフを下ろすと、待ってましたと言わんばかりに、いきり立った肉槍が姿を現す。
「「「「「「「ウオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーッ」」」」」」」
ついにあの瞬間が訪れるのかと、興奮して観衆達も怒涛の歓声を上げる。
欲望が抑え付けられていた事を表現するように、むくむくとペニスが成長する。
「なっ、何出してんのよ!」
顔を背けながら、狼狽したような声を出すあやね。
異性経験の少ないあやねはペニスを間近で見た事がなかった。
見せつけられた赤黒い肉塊に、恐怖さえ感じてしまう。
助兵衛としても早く挿入しなければならないという気持ちが働いたのだろう。
本来ならばもっとねっとりと犯してやりたかったのだが、キスをしている最中に目を突かれるのではたまったものではない。
早い所挿入して出すべき物を出してしまおう。
もっとも、あやねと肌を合わせるのが気持ち良過ぎて、我慢できなかったのもあるが。
「さーて、あやねちゃんと合体しちゃおうかなぁ~」
「いやっ!」
脚をカエルのように広げさせて、挿入の姿勢に入る助兵衛。
衣装のハイレグ仕様になっている部分を少しずらして、先端を突き付ける。
(こんなキモいおっさんとなんて…絶対に嫌!)
勿論、あやねも必死に暴れて抵抗する。
しかし、麻痺した体では助兵衛の100kgを超える肥満体を押し返す事は到底叶わない。
両手を握手させられるように握られて、腰が迫ってくるのを黙って見つめるしかないのだ。
「はぁぁ…いくよぉ、あやねちゃん」
天を仰いで深呼吸したかと思うと、一気に腰を押し出した。
「あっ…!?」
自身の膣内が何か温かい物で満たされる感触に、目を見開くあやね。
しかし、それを助兵衛のペニスだと認めたくはなかった。
と言うよりも認められなかった。
くのいちとして優秀な自分が目の前にいる醜い中年男に処女を奪われた、だなんて。
「い、いやぁあああああああああああああああああああああああっ!!!!」
下半身を見て、ようやく現状に気付かされるあやね。
誰にも触れさせる事のなかった自分の大事な所を、熱を持ったおぞましき肉槍が穿っている。
認知した後でやってくる痛みと異物感。
血も涙もないくのいちにだって、初めては相思相愛の人としたいと思う純情くらいはある。
それを無惨に打ち砕かれた事を、あやねは悪夢なのだと思いたかった。
「「「「「「「「「「オワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」」」」」」
そのあやねの悲鳴をかき消すように、野蛮な叫び声を上げ出す観衆。
モニターには豚のように肥えた中年オヤジに抱かれる美少女の姿がありありと映し出される。
二人の結合部分のアップから正常位でセックスする二人の全体図、そして吐息と吐息が触れ合うほどに接近した二人の顔。
その表情は全く以て対象的なものであった。
責め苦に悶えて瞳を硬くつむるあやねと、蕩けるように表情筋を緩ませて悦に入っている助兵衛。
つい数十分前まで、あやねが一方的に助兵衛をボコボコにしていた画からは全く想像できない光景だ。
「あぁっ!あやねちゃんのオマ●コ気持ち良いよぉ!きゅうきゅうにっ、締め付けてきて…」
「あっ!あんっ…うぅっ、うっ、あっ、嫌あぁ!」
リズミカルに腰を振って繰り返されるピストン運動に、あやねはひたすら打ちひしがれるだけ。
両手を握られて、先程のように目を突く事さえ叶わない。
だが、何もかもができないという絶望の淵に追い落とされてもなお、あやねの心は折れなかった。
「くぅぅっ…絶対、許さない…!」
歯噛みしながら、口では反抗してみせるあやね。
「殺して、やる…っ」
瞳を涙で潤ませながら、剣呑な態度をとる。
くのいちとして、過去に人を闇に葬った経験もあるであろうあやねが言うのだから凄みがあった。
しかし、殺す理由が『任務として依頼されたから』などではなく、陵辱され処女を奪われたから、というのがあやねが一人の少女である事を如実に表しているようで、どうにも可愛らしく思えてしまうのだ。
勿論、強姦は犯罪である。
可愛らしいなどという言葉で語られるべきものでない事は助兵衛や観衆だって分かっているが、それでも陵辱されて「殺す」と本気になるあやねに男達は股間を熱くせずにはいられない。
平然と殺人を行うようなくのいちでも、所詮一人の少女だという事か。
あやねにとってそれだけ価値のあるものを奪ってやったという嗜虐心が観衆や助兵衛の股間を熱くするのだ。
皮肉にも、くのいちとして鍛え上げられた肉体が助兵衛を悦ばせる事になってしまう。
つい数秒前まで処女だったという事もあるが、発達した骨盤底筋がぐぐっと助兵衛のペニスを締め付けて、離さない。
「思った通りキツキツのきゅうきゅうで…タマらないよお、あやねちゃん」
あやねの膣が気持ち良過ぎたせいか、最初は威勢が良かった助兵衛も声を上ずらせながらゆっくりと腰をグラインドさせる。
「そんなに締め付けられたらすぐに出ちゃうよ…っ、おじさんの、あったかいのが…」
「あんっ!」
時折激しく腰を振ったかと思うと、体をぶるりと震わせながら、腰を止めて深呼吸をする。
そうでもしなければすぐにイってしまうのだろう。
観衆達はそんな助兵衛を見て、あやねの膣の気持ち良さを窺い知る。
イボ状に凹凸の付いた膣襞が軽く握るようにペニスを締め付ける。
腰を上下動する度にイボ状の膣襞がペニスに絡み付いて、膣ごと引き摺るような感触が気持ち良くてタマらない。
豆のような肉の突起がペニスを搾り上げる。
それに、引き抜こうとする度に絡み付いてくる膣は、まるで別れようとしては追いかけてくる恋人のようであった。
助兵衛の方から快楽を求めに、腰を突き出している内はそこまで力を込めてこない癖に、離れようとするとそれを惜しむかのように軟らかな膣襞がきゅうううと締め付けてくる。
それがあやねと一つになっている証のように感じられて、なんだか心地良かった。
あまり突き過ぎるとすぐに射精してしまうと分かっていても、思わず何度も激しく腰を振りたくなってしまう。
それも、相手はまだ10代の美少女ときている。
「好きだよ…あやねちゃん」
「…んぶっ!」
そっと顔を近付けると、軽く開いた唇に自らの唇を押し付ける。
こうして、唇でも股間でも一つになっていると、身も心もあやねと一つになれた気分になれる。
ゆるりと腰を揺り動かしながらの貪るようなキスで甘美な快感に浸った。
パンッパンッ!と爆ぜるような肉音を発して、腰を打ちつける。
そろそろ我慢の限界だった。
軟らかくて温かい肉壺に包まれて、射精せずにはいられない。
肥えた体を密着させて、子宮口に亀頭を突き付ける。
「おぉ…そろそろ出しちゃうよお、あやねちゃん」
「出すって…!何を…」
助兵衛の言葉を聞いて、あやねの顔から血の気が引いていく。
何を出すのかはあやねにだって分かっているはずだ。
しかし、あえてそれを分かりたくはなかった。
自分が陵辱されて中出しされるなんて信じられないから。
「ウオオオーーーーッ!!!助兵衛―――――!!出せーーーーーーーーーッ!!!」
「孕ませろーーーーーーっ!!!!」
「ハァハァ…ついに、あやねちゃんが…ハァッ、キモいおっさんに中出しされ…うっ」
助兵衛の言葉が会場内に響くと、観衆達も自らの肉棒を掴みながら雄叫びを上げる。
自分達の思いが、今リングの上で成就されようとしている。
本来であれば自らリングに乗り込んで、あやねを犯してやりたいところだが、この試合は動画に撮られてインターネット上にアップロードされる。
観衆もやはり自分達の身が一番大事なのか、カメラの前で少女をレイプしようと名乗り出る者はいない。
それに、自分達が持つ劣情の権化と言うべき容姿をした助兵衛が犯すのであれば、彼らとしても本懐なのだろう。
「うあぁっ!出るっっ!!おじさんのあったかいの、たくさん出ちゃうぅぅっ!!!」
「!!??」
限界まで大きくなっていたはずのペニスが、一瞬さらに大きくなったかと思えばびくびくと脈動する。
助兵衛のペニスが収縮と膨張を繰り返して、精子を吐き出す。
ドビュッ!!!ドビュッ!!!ドビュッ!!!ドピューッ!!
「あぁっ!?あぁ、んあぁあああああああああああああああっ!!!!」
熱い液体があやねの子宮にぶつかって、染み込んでいく。
数億ものの助兵衛の遺伝子を記録した精子が、あやねの遺伝子を記録した卵子にぶつかっていく。
狭い子宮口に入れずにごった返した濁流がどんどん二人の結合部分から漏れていった。
ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!ドピュ!
精巣にあった全ての精子を出す勢いで、律動しながら射精する。
子宮を焼かれるような刺激に、あやねは脳髄まで溶かされるようなリビドーに包まれる。
もしこれが、愛し合った異性とのセックスならば気持ち良いに違いない。
しかし、目の前にいるのは見るも醜い中年男。
下劣で下等な精子を注がれている感覚に、あやねは生理的な不快感しか覚えない。
黄ばんだ精液がぼたぼたと床に落ちる。
2分程経って、ようやく射精を終えた助兵衛が、ずるりとペニスを引き抜きながらあやねに問いかける。
「ぶひひぃ!どうだった?おじさんとの熱いセックスは?」
「許さない…絶対に、絶対にい…!」
涙で顔をぐしゃぐしゃに泣き濡らしながらも反抗心を露わにするあやね。
大観衆の前で陵辱されてもその心は折れないという事か。
その折れない心が、さらなる地獄へ招くとは知らずに。
「はぁっ!はぁっ!…きゃっ!?」
大量の精液を注がれて息も絶え絶えになっていたあやねを、力任せにひっくり返す助兵衛。
四つん這いになったあやねを背後から抱きすくめて、頬を擦り寄せる。
「まだ試合は終わってないからね」
耳元で囁きかけたかと思えば、蛇のように腕を滑り込ませて一気にあやねの首を絞める。
「んん゛っ!ぐぅっ」
油断した。
まだ戦いは終わっていなかったのだ。
忍者にとって戦いの最中に気を抜くなど自殺行為に等しい。
胸を揉まれようがペニスを挿入されようが、戦いはまだ終わっていない。
針の穴ほどの刹那も見逃さずに、殺す隙を窺っていなければいけなかったはずだ。
そんな基本的な事さえ分かっていなかった自分が腹立たしい。
しかし、時既に遅し。
背後から圧し掛かられた状態から両脚を絡められ、チョークスリーパーを極められればほぼ逃れる事は不可能だ。
汗で滑ったりしない限り逃れられない。
太い腕があやねの頸動脈を捕えて、絞め上げる。
「う、ぐぅぅ…っ」
元々紅潮していた肌が、首を絞められて余計赤く染まっていく。
あやねも両手で助兵衛の絞める腕を剥がそうと掴むも、全く歯が立たない。
完全にチョークスリーパーが極まってしまえばどんな人間もものの数秒で失神してしまう。
しかし、助兵衛はあえて失神させようとしない。
あやねが失神しそうになるタイミングで、絞める力を緩める。
「ふぅっ!ふぅっ!ふぅ、ぅうっ!!う゛う゛っ!」
モニターにはあやねの顔面がアップで映し出され、赤黒く染まっては白く戻っていく様が鮮明に映し出される。
序盤はあれだけ華麗な動きで助兵衛を圧倒し、高飛車な態度を見せていたあやねが、今や圧倒していたはずの助兵衛に首を絞められ、完全にコントロールされている。
実に無様であった。
絞められたあやねの口の端から泡が噴き出て、美しい顔には不似合いな青筋が赤ら顔にピクピクと浮き出ている。
何度も絞められては緩められて…を繰り返されているせいか、目が虚ろになって可愛らしい顔は台無しだ。
「ほおら、あやねちゃん早く逃げないと落ちちゃうぞぉ?」
「ん゛ぐっ…そんなの…言われなくたっ、ふぐぅっ!!」
もはや自由に喋る事さえままならない。
耳朶に生温かくて臭い息を吹きかけられながら、玩具のように弄ばれる。
ぼんやりとおぼろげになった視界に、自分の絞められている顔が見えた。
会場の巨大モニターにアップで映された自分の顔であった。
観衆達は自分の絞められる醜態を見て、狂喜乱舞している。
情けない。
くのいちとして幼い頃から英才教育を受けてきた自分が、そこらじゅうにいるようなただの中年オヤジに絞められて、為されるがままにされている。
恥ずかしい。
こんな辱めを受けるくらいなら、降参して敗北した方が良いのではないか。
今すぐリングを軽く2回叩けば、降参の意として試合はすぐに終わるはずだ。
その場合、あやねは敗れてしまうが、試合に負けても勝負に負けた事にはならない。
試合が終わった後で助兵衛は殺してやる。
今日このリング上であった事は何かの間違いだったのだ。
だから、降参したふりでもして、とりあえず今この最悪の状況を脱してしまえば良い…
そんな甘い考えが一瞬、頭をよぎった瞬間にあやねの意識は途切れた。
「ストーーーーップ!!!」
カンカンカン!!!
レフェリーがぐったりしたあやねの顔を覗き込むと、すぐに両手を振る。
あやねの一本負けだ。
助兵衛が絞めを解くと、意思を持たない泥のようにあやねの体がずるりと、だらしなくリングに沈む。
モニターには白目をむいて、口を半開きにしたあやねの表情が映し出される。
見るも情けない顔だ。
だらしなく開いた口から唾液を垂らし、不規則に体をピクピクと痙攣させる姿は、序盤のあの冷然としたあやねからは想像さえもできない。
あの時のあやねはどこに行ってしまったのか。
観衆のそんな気持ちに応えるべく、その美貌が朽ちていく過程を振り返るハイライトがモニターで流される。
『勝負あったわね』
あやねが一撃で助兵衛をダウンさせて、勝ち誇る姿。
「ぶわっはっはっはっはっはっはっは!!!」
「ざまーみろ!!」
その打撃の速さはスローモーションで追っても、目にとまらぬほどだ。
『ふんっ、笑わせるわね』
今度は一撃で助兵衛をリングの外を吹っ飛ばしたシーン。
「だっせえぇぇぇ」
「笑わせてんのはどっちだよ!!」
華麗に立ち振る舞うあやねの姿と、今の白目をむいてヨダレを垂らしながらリングの真ん中に突っ伏す姿とが交互に映し出される。
腹がよじれるほど笑い狂い、リングの上で失神したままのあやねを嘲る観衆。
だが、今の惨状を超える惨劇がこの後に待ち構えていようとは、誰も分かっていなかった。
ブブッ、ブビビッ!
くぐもった音声が突如会場に轟く。
乾いた音でありながらも水気を含んだその音は、観衆にとっても聞き覚えがあった。
「「「「「ウオオオオオアアアアアアアアアアアアア!!!???」」」」」
やがて、観客席の一部から驚嘆と興奮が入り混じった絶叫が聞こえる。
何があったのかと首を傾げる他の観衆。
その答えはすぐにモニターに映し出された。
倒れたあやねを真上から捉えるアングル。
真上から、つまりあやねの背中からの視点もなかなかに無様なものだ。
リングのど真ん中で絞め落とされているというのが無様さに拍車をかける。
よく見ると尻の辺りに黒っぽい影のようなものが見えていた。
しかし、徐々にその影は広がっていて、影ではない事が分かる。
まさか。
先程絶叫した連中が「漏らしてる!漏らしてる!」と何やら興奮混じりに叫んでいる。
本当に漏らしているのだろうか。
絞め落とされた者は体が弛緩してしまうため、失禁してしまう事があるという話は有名だ。
だが、あの強く美しいあやねがこの大観衆が見つめるリング上で絞め落とされて、さらに脱糞してしまうなど、本当にあって良い事なのだろうか。
カメラが段々尻の方へ近付くと、それにつれて観衆の叫びも大きくなる。
黒っぽい影のように見えていたものが鮮明に見えるようになっていく。
茶色く、粘り気のあるソレは誰だって見た事があるだろう。
集音マイクが近付けると「ブビィッ、ブッブッ…」といった汚らしい放屁音が鳴っているのが聞こえる。
軟らかめの糞があやねの肛門から漏れていたのだ。
カメラに映し出されている今にもブリブリと糞を漏らす。
衣装のハイレグ仕様になった部分と尻の隙間から糞が垂れ流れている。
リングの白い床に、垂れた茶色い糞がよく映えた。
幸か不幸か、あやねはまだ自分が脱糞している事に気付いていない。
意識を失ったまま体をビクビクと痙攣させて、糞をひり出している。
このまま控室に運ばれればあやねは脱糞した事は知らずにここから去れるだろう。
だが、そうはさせじと悪魔の手が忍び寄る。
「あれえ?あやねちゃん、お漏らししちゃったの?」
ニヤニヤと意地の悪そうな声を出して、寝そべるあやねを見下す助兵衛。
「かわいそうだから起こしてあげなきゃね」
腰を両手でどすんと突き押して、喝を入れる助兵衛。
びくりと一際大きく震えて、あやねが目を開けてしまった。
「ん、ん…」
「おはよう、あやねちゃん」
「!?」
瞼を重たげに、目を開けるとすぐに身構えて立ち上がるあやね。
ニヤニヤと薄笑いを浮かべながら、あやねを見守る観衆と助兵衛。
あやね一人だけが『その事』に気付いていない様は、見ていて滑稽だった。
あやねはすぐにある違和感に気付く。
(何?この感触…)
尻の辺りに何やら違和感を感じたあやね。
無造作に尻をさすると、指に温かい物が付着していた。
「…え?」
おかしいと思い、もう一度自分の尻を触る。
ねちょ…と手に粘つく感触は、意外とあまり馴染みの無いものだ。
だが、それが汚らしいものである事は本能的に察せる。
尻に粘つく温かい物と言えば、すぐに分かるだろう。
「えっ?…え…?そんな、の…う、うう嘘、でしょ…?」
動揺を隠せずパクパクと口を震わせながら、独りでに呟くあやね。
そんなあやねの疑問に答えるように、モニターにあやねが脱糞している姿が映し出される。
『ブッ!ブブゥゥゥッ…』
間抜けな放屁音と共に、倒れたあやねの尻から茶色い何かがムリムリ漏れてくる。
死んだ魚のように白目をむいて、口を半開きにしながらリングに寝そべるその姿はとても自分とは思えない。
(ううううう嘘よ!こ、こんなの…嘘に決まってるじゃない!)
きっと大会を開催した連中が面白半分で作った映像なのだろう。
自分が人前でこんな醜態を晒す訳がないだろう。
そう思いたかった。
しかし、儚くも、その想いは自分のすぐ後ろにあった排泄物によって打ち砕かれる。
ついさっきまで寝ていた場所に広がる茶色い海。
尻に粘つく温かい物。
鼻をつく毒性を感じさせる悪臭。
そして、先程から何度もモニターに映し出される、自分の醜態。
「「「「「「「「「「おー漏らし!おー漏らし!」」」」」」」」」」
観衆が連呼するお漏らしコール。
どこから持ってきたのか、悪ふざけでオムツをリングへ投げ込む者までいた。
「い…いやぁあああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
少女の悲痛な叫びが響き渡る。
人前でレイプされても折れなかった心がついに折れた。
あやねは力を失ったようにがっくりとリングに倒れると、自分の存在を外界から閉ざすように体を縮めてうずくまってしまった。
観客席から光る無数のフラッシュ。
この直後、インターネット上にあやねと助兵衛の試合が流出し、数多の男性諸君のオカズとして後世まで語り継がれた事は言うまでも無い。
そして、この後、あやねの姿を見た者は誰一人としていなかったという。