怪異と人類が争う中でも扶桑の季節は夏から秋に、ウラルでは軍用の防寒着が支給された頃、各国は扶桑のウラル防衛線へ駐在武官を送り始めていた。
宮藤理論を元に製作された新型戦闘脚の有用性が陸の乙女達、特に智子、武子、圭子の活躍と共に各国の注目を集めていたからである。
「さぁ武、その目にしっかりと焼きつけなさい‼︎ この私が今日の為に用意した渾身の一作をっ‼︎」
「はぇー、すっごい」
武は拍手で賛辞を送る。
智子が武に見せた一品とは、彼女が自ら文字を縫ったマフラーのことである
それには“豪勇穴拭”と刺繍が施されていた。
智子はこの呼名を自称しているらしく、今日の任務で扶桑だけでなく、世界中にこの呼名を定着させるつもりらしい。
「すみませ〜ん、撮影始めますのでこちらに来ていただけないでしょうか?」
「す、すみません。すぐ向かいます!!」
後で感想聞かせてねと言って、写真機の前に立つ。
本日の任務とは、智子達の日頃の活躍を聞きつけ遥々最前線まで足を運んでくれた記者達による写真撮影会であった。
ここで撮影させれた写真は、各新聞社の一面を飾ると前々から聞いていた智子は気合が入っている。
だが、やる気満々の智子と共に写真を撮ることになっている武子と圭子は、ちょっと引いている表情であった。
「今日は武ちゃんも撮るんだっけ?」
「そうだね。え〜と、魔法を使ってるところを写真に収めたいらしいよ」
武も写真撮影することになっているのは、軍部の意向が強い。
武が魔法を行使出来ると言う事実は、既に軍部の正式な発表で国中に知れ渡っている。
故に武が些細な戦績を収める度に、水増しされた報告内容で国内に伝わっていた。
これは軍人および非戦闘員である国民の士気高揚を目的としたもので、そこそこの成果が出ていた。
故に武が写真撮影に協力することは義務であった。
「いや〜、よもや若輩者の私が榊原一飛曹殿の写真を撮れるとは……‼︎今日は一生忘れられない思い出になりそうです‼︎」
「はぁ……」
武は写真家の賛辞に対して、頬を掻きつつやる気のない声を出してしまう。
既に智子達の撮影は終わった。
残りは武の撮影なのだが、どうにも智子達とは異なる内容に武は困惑の色が隠せなかった。
(ブロマイドって何?)
困惑しつつも写真家の指示通りのポーズを決め、魔法障壁を展開する。
写真家は黙々と武が魔法を展開した瞬間、その一瞬を切り抜くようにカメラに収めていった。
そしていつのまにか……
「あの、これはちょっと……」
「イケるイケる‼︎ 男は度胸でしょ? さぁ‼︎ さぁ‼︎」
いつのまにかカメラマンとして覚醒したらしい圭子が武の服を奪い取り、陸軍の魔女が着ている巫女服を着せて写真を撮っていく。
圭子の後ろでは意外と似合っているわよと武子が声を上げ、次は海軍の魔女専用のズボンを着せようかと皆が話し合っているのを見た武涙目になっていた。
「勘弁して下さいよぉ……。男が女の服着るの間違ってますよぉ……」
「大丈夫‼︎ イケるから‼︎ すっごいイケるから‼︎」
得体の知れないナニカに取り憑かれたかのように息を荒げながら写真を撮り続ける圭子は話を聞いて貰えず、。涙目になりながらも他の皆に助けを求めるも、
「元が中性的だったからって、ここまで似合うものなの?」
「多分生まれ持った資質だと思います」
「こんなに似合っているなら、世が世なら女形で名をあげていたかもしれないわね」
「たっ、武ちゃん頑張って」
結局プロマイド撮影は夜まで続いた。
後に知ることではあるが、武のプロマイドは女装写真の方がバカ売れだったそうな。
それを知った武が自室で静かに泣いたのは言うまでもない