「そんなに緊張しなくて良いよ、ちょっと確認したいだけだから……」
そうは言うものの、章香の顔は真剣だ。
武は思わず唾を飲み込む。
現在、訓練終了と同時に武は章香の元に呼び出された。
おそらく今頃は智子も呼び出されているであろう。
呼び出された理由は1つ。
恋人関係なのか、否か。
軍規では恋愛関係になるのはご法度、最近は2人っきりでいることも多かった。
それに他人に言えないこともやっている2人の今の関係は、側から見れば恋人ではないか?
醇子は全てを知っているわけではない。
2人が取り繕っている表向きの関係しか知らない筈だ。
だが隠しきれないものは必ず出てくる。
それが醇子が恋人の様だと言ったキッカケだったに違いない。
「それじゃあ1つ聞くけど、最近彼女に固有魔法は“どこまで”使った?」
「先生と約束した出力までです」
「本当に?」
「本当です」
武は即答した。
その約束は一度も破ってはいないからだ。
「じゃあ最近自室2人っきりでいるのは何故?」
「智子さんが疲れを取りたいと頼むので、了承しているだけです」
「ふむ……、じゃあ今後自室で女性と2人っきりになるのは禁止と言ったら……?」
「指示に従います」
これも即答だった。
智子の乱れる姿をもっと見たいし、智子と一緒に気持ちよくなりたい思いはあったが、智子と武自身の人生が第一だ。
それに武と智子は現役軍人である。
どちらかに恋愛感情があったとしても叶わない。
今の関係が崩れることを残念に思う気持ちを心の奥底に押し込め、武は章香を見つめる。
「……わかった。どうやら恋愛関係ではなかったみたいだね。でも自室で2人っきりになるのは禁止。私が初めて君の全力を受けた時みたいになったら止めようがないからね?」
こくこくと武は頷く。
よし、じゃあ話は終わりねっと章香は言って、その場を去った。
しばらくすると、離れた場所で様子を見ていた醇子が駆け寄ってくる。
「武ちゃん、ごめんなさい!!」
開幕一番に醇子から出た言葉がそれだった。
自分の所為で武が呼び出された事を気にしていたのだろう。
大丈夫だよと声をかけ、泣きそうになってる醇子に微笑む。
その顔を見て、涙目だった醇子は胸を撫で下ろした。
「しっかし仲よすぎたもんなぁ……、武と智子さん」
「うん、すごく楽しそうに話してた」
「以後誤解を招かない様に気をつけるよ」
徹子の言葉に同意する美緒。
今日は、武が海の3人娘の部屋に来ていた。
話題は昼間武が章香と話していた内容のことだ。
「武ちゃん、武ちゃんの固有魔法はそんなにすごいの?」
「どっ、どうなんだろう? 制限しないとまともに使えないからよく分かんないや」
「制限付きは厄介だな」
それよりも武は無防備な3人にドキドキしていた。
今までは4人で話していてもこんな事はなかった。
三者三様の少女の香りが、その肢体が武の股間がイキリ立たんとする要因になっていた。
いつから自分は女の子を強く求める様になってしまったのだろうか?
3人と楽しく会話しながらも自問自答する。
そして気付く。
智子さんと身体を合わせてからだと。
あぁそうだ、知らず知らずのうちに自分は彼女に教えてもらったのだ。
女性の素晴らしさを、異性と共に快楽に堕ちる気持ち良さを。
だが今は理性で抑え込まなければならない。
3人に気づかれない様に煩悩を振り払う、武の孤独な戦いが始まった。
実に不愉快だ。
智子は思う。
智子は上司である敏子から、一人で武と接触することを暫く禁止するよう告げられたのだ。
守らない場合は更に罰を与えるとも言われた。
膨れっ面でベッドに俯せに倒れこむと、バタバタと足をバタつかせて不満を行動で表す。
「そんなに不満なの? 智子」
「みたいだな」
「だねー」
3人が横で何か言っているが智子は無視する。
溜息をついて目を閉じる。
しばらくは武を独り占めに出来ない。
彼の匂い、彼の声、彼の肢体を独り占めできない事がこんなに辛いとは流石に智子も予想だにしなかった。
やはり自分はあの固有魔法を体験してから彼に身も心も囚われている。
彼は魔女にとって一種の麻薬なのかもしれない。
ふと、そんな事がよぎった。
そんな事はないと首を振って自分の考えをかき消し、そのまま布団を被って早めの眠りに付く。
だがその夜智子の見た夢は、夢中で智子を貪る武とそれに応えて歓喜の声で喘ぐ智子自身の姿だった。