竜王国。
ビーストマンに侵攻され、脅威にさらされている王国。ただ蹂躙されるだけの国。国民の命を、領地を奪われ続け、徐々に徐々に疲弊していくだけの国。この世界における、人間の真の姿。食いつぶされていくだけの弱者の姿。
が、唐突にそれが終わりを告げた。ビーストマンの領土、かつて人の領土であった場所を人が取り戻し始めた。始まりは数日前。ある村がビーストマンに襲われ、すぐさま兵が飛んでいけば数多の死体。次の日からビーストマンが攻めてこなくなった。
不審に思った竜王国は冒険者や国の斥候を放ちビーストマンの様子を見に行くと、そこにはやはり死屍累々の屍の山。
数多の
「………どう思う宰相」
「届け出が無いので大儲けですね。もうウッハウハですよ」
「まあ、偽物の届け出は出ているがな」
そう、貫かれたまま死体が放置されているのだ。武器と共に。国宝級が、だ。扱いに困っているとそれは私のだから返せと言ってくる奴等が出るわ出るわ。もういい加減にしてほしい。こんなことが出来るならとっととやってろという話である。
「今日も武器の所有者を名乗る者から手紙です。一応、目を通してくださいね」
「はぁ……本物の所有者は何を思ってあんな大量の国宝級武装を残したのや───」
「どうしました陛下?」
「宰相、お主これ読んだか?」
「いえ、どうせ何時もの偽物だと思ったので」
なら読ませんなこの野郎、と思ったが何とか飲み込み羊皮紙を渡す。そこにはこう書かれていた。
『せっかく武器やったのに何チンタラしてんださっさと使って自分達でも戦えよウスノロ』
「………………」
「どう思う?」
「本物ですね。ええ、では遠慮なく使わせてもらいましょう。何せ本人から許可が出たのですから」
この際この手紙が本人なのかはどうでも良い。埃を被せるより使った方がよほど有意義なのだから、これを理由に使いまくる。
結果として、侵攻を食い止めることに成功した。勝利とはいえない。深追いしすぎるには兵が少ないし、何より取り返した土地の復旧作業がある。だが、悪夢が現れた。
通常のビーストマンより二周りは巨大な個体。圧倒的な力を振るうビーストマンは神器で武装した兵達をなぎ払う。
蹂躙させる兵士達、その報告を聞いた上層部も絶望する。やはり自分たちに希望はないのだと……。
「諦めんのがはやいなー。まあ確かに急ぎすぎたかもな………ある程度準備する時間は必要だった。俺のミスだねぇ、強さを俺基準に考えるのはよくにゃい。だから助けよう」
誰かがそんな言葉を聞いた気がする。同時に巨大な剣がビーストマンを真っ二つに切り裂き、通常のビーストマン達も無数の武器が豪雨のように降り注ぎ消し飛ばしていく。
剣が着弾した瞬間、高位の魔法でもお目にかかれない爆発を起こす。
氷が、炎が、雷が、水が飛び散りビーストマン達を消し去る。後に残されたのはビーストマンの死体とクレーターだらけになった大地。
その場の全員が上を見上げると、一人の少年。
「どう思うこの報告」
「おそらく神器の所有者ではないかと……手紙の者かどうかは不明ですが」
「………もし手紙が偽物だった場合、怒っていると思うか?」
「助けてくれたんですし、優しい方かも。陛下のロリっぷりを見せて懐柔しましょう」
国民がビーストマンに食われず自分がセルブライトに性的に食われず、漸く安心しきったとたんこれか。いや、手紙の差出人が本人なら良いんだ。本人じゃなかったら、ビーストマンの大群と強化種を一瞬で滅ぼせる力が此方に向くかもしれないだけで………。
本人であることを祈ろう。と、衛兵が件の英雄を連れてきたと報告する。
「おおきたか!うわさのえいゆうどの、わらわもはやくあいたいぞ!」
ほっこり顔の衛兵が扉の奥に消え、入れ替わるように15程の少年が入ってくる。顔の上半分を黒い眼帯で隠した少年に思わず面食らうも天真爛漫な無邪気な幼子を演じる。
「よくぞまいった!こたびはわがくにをすくっていただきありがとう!」
「んーんー、気にするな気にするな。俺もすこーし反省している。いくら
「………………えっと」
チラリと宰相に助けを求める。宰相も困惑していた。早口だったし知らない単語あったし情報だけ聞くとこの世に降臨した神なんじゃないかと思える存在なのに軽いし……。
「まあ使用した武器は全部やるよ。俺からすればイベントの景品にもならないもんだし。やっぱイベントには
「く、くれるのか!?本当の、本当に!?」
「もちろん報酬は望むがね」
「う、うむ……だよなぁ……」
流石に世の中そんなに甘くない。とはいえ、うちにはあまり金なんてない。向こうもその辺りは解っていそうだが、何を要求するつもりだろうか?
「ドラちゃんちょーだい」
「………は?」
「解りました。それで国が救われるならやすいものです」
「ちょ!?」
「わーい!いっただきまーす!さ、行こっか。大丈夫大丈夫、少し痛いけど直ぐ気持ちよくなるさ」
「まっ!!」
「陛下の純潔一つで国が救われるのなら安いものです」
「ん、純血?この子に混じってる血って8分の1じゃねーの?」
宰相の言葉にウネは首を傾げる。
「「え?」」
「え?」
「「は?」」
「は?」
「「ん?」」
「ん?ああ、何、もしかしてそっちの意味でも貰って良かったの?少し血を貰うだけで良かったんだけど許可も出たし貰ってくわ」
「ぬああ!待て待て!少し待て!そういう事じゃないから!血だな!?血だけで良いんだな!?」
おもっきり素を出して叫ぶドラウディロン。いくら暴れようと手は全く緩まない。と、その時……
「その方の純潔を貰うのはこの───」
「邪魔」
アダマンタイト級冒険者が軽く腕をはらっただけで壁の染みに変わる。何かアイテムを投げつけると肉塊から人の形戻った。
(………逆らわないようにしよう)
ドラウディロンは、目の前の存在を苛立たせないと心の底から誓った。