さて、とある地下で魔王様に探されているウネ君はというとご飯を食べていた。
「おお、これおいしいねコックちゃん」
「ありがとうございます」
絵描き歌のコックをそのまま立体化したかのようなモンスターなんだか人なんだか解らない存在に賞賛を送るクレマンティーヌ。ウネも肉料理を食らい、血抜きの際出た血に酒を混ぜたものを飲む。
「ふぅ!んぐぅ………んおぉ♡」
「ねえところでこれ何のお肉?何時ものに比べるとあんまりだねえ」
「ああ、あれもバフ効果のあるアイテムとして量産は出来るが、あの味に慣れすぎるとこの世界を純粋に楽しめねーしな。俺は三大欲求をとことん楽しみたいのだよ……」
「ふぐ、んぅ……んぉ♡」
「つーかさっきからうるせぇぞドラちゃん。タイムマシンで未来に送り返すぞ………タイムマシン、創れるとしたら
「あ、ありぇのふぇイらと……ん、おもっふぇぇ……♡」
口のギャグボールに歯が当たりガチガチ音を立てながら抗議するドラウディロン。褐色の頬がほんのり赤みを帯び、トロンと潤んだ瞳は色っぽい。
秘裂からは蜜が、ギャグボールからは唾液がトロトロ溢れ腰がビクンと震える度にくぐもった嗚咽を出し潮を噴く。
「えーっと、そろそろ一時間だな。この後は設定を『微』に変えていかせないようにしつつ先程いきまくっていた本人の声を録音したものを聞かせる。目隠しを忘れずに、と……」
「ふぅ?んむぅぅ!」
足に巻き付けられたテープで固定されたバイブやローターのリモコン、それを弄る際に指が足に触れピクピク身体を振るわせるドラウディロン。五分ほど立つと切なそうに腰を振るい、30分立つとガチャガチャ枷を鳴らす。
「ふ、ふぐ……ふぅ、ぅぅ………んぅ」
くぐもった、それでいてとろけるような甘い声を漏らすドラウディロンにクレマンティーヌの頬が赤く染まる。あれは危ない。その気が無くても、イヤでも意識させられる。唾液のつんとした臭いや蜜から溢れる雌のにおい、全身からグッショリとかいた汗が髪を身体に張り付け、しかしそれでいて幼い容姿は背徳的な色気を放つ。それを見ても玩具で遊ぶような目で見れるウネはやはり人から外れて──異なっている。
「取り敢えず私は出てくわー………その声聞いてるだけでムラムラしてくる」
「そうか?夜道には気をつけろよ」
「ういうい。ガキじゃねーから解ってますよっと……」
クレマンティーヌはクロウと名付けたカラスに化けた魔物を肩に乗せ森の中を適当にぶらつく。
吸血鬼の、それも始祖と化しウネの遊びに付き合わされたクレマンティーヌは以前よりも遙かに強い。この辺りの森のモンスターなど人間だった頃はもちろん今も余裕だ。
「全くパパの物好きにも限度ってもんがあるでしょうに……」
しかもまあ、気持ちいいのは確かにあるのだろうが、遊びとしてやるぶん容赦がない。まあ、やるぶんには、気持ちいいのだが……。
「んー、私も結構な好き者だよなぁ。うん、どんどん上手になるパパが悪い」
彼は基本的に美味いものを食って、寝て、女を抱く。で、一番楽しそうなのは友達と連絡している時だ。クライムなる犬で遊んでいるらしく、相手側の報告を聞いている。
しかし時折聞こえてくるラナーって、リ・エスティーゼ王国のお姫様じゃなかったっけ?
「───っ」
『ガァ』
不意に立ち止まるクレマンティーヌ。森の奥、方角的にカッツェ平野………法国のある方向を睨みつける。
と、暫くして複数の男女が現れる。
「っ!クレマンティーヌ?」
「漆黒聖典………っ!」
みすぼらしい槍を持った男に名を呼ばれ、相手が誰か確認し苦虫を噛み潰したような顔をするクレマンティーヌ。英雄級の人間を集めた法国最強の部隊。ビーストマンの討伐に赴くとしたら陽光聖典の仕事だろうに、何で此奴等が竜王国に……!
「ちょうど良かった。クレマンティーヌ、竜王国に現れたという神器を扱う英雄について何か知りませんか?それと、そろそろ戻ってきなさい」
どこかクレマンティーヌに似た容姿の男の言葉にクレマンティーヌがチッ、と舌打ちする。
「ごちゃごちゃ喚くなクソ野郎が!目玉えぐり出して焼いて食わせんぞ!」
「全く、口が悪い。兄として残念です……」
「どうします、隊長」
「……装備が変わっている。明らかに神器に匹敵する………知っていることを、全て話してもらいましょう」
その言葉と同時に漆黒聖典が構える。勝つのは、無理だろう。英雄級は今ならタイマンでなら勝てるだろうがクソ野郎や隊長は別だ。自分では勝てない。自分では………
「ぶち殺せ!クロウ!」
『ガアァァァァァッ!!』
後ろに飛び退きながらクロウに命じる。肩に乗っていたクロウは漆黒聖典の、クレマンティーヌが一番嫌っているであろう男に迫る。男はとっさにギカント・バジリスクというこの世界ではかなりの脅威である魔物を召還する。別にカラスから身を守ろうとしたわけではない、クレマンティーヌを一度石化して持ち帰るためだ。が、ギガント・バジリスクが吹き飛ぶ。
「な───!?」
『ガアアアアアアアッ!!』
───その女に従え。
それがクロウに与えられた命令。
大いなる創造主。理外の精神性を持ち他人となれ合えても解り合う事など出来ぬ主が自分なりのやり方で楽しむために生み出した巨獣達は、しかし主の心を満たす役目を全うすることは出来なかった。必要な敵が居なかったから。
そんな己の無力を恥じる中、漸く与えられた命令。故にこの女に従う。命を懸けて──
「何だ、此奴は!?」
本性に戻り骨が剥き出しの嘴をガチガチ鳴らし虚ろな穴に青い炎を灯す。バサリと夜闇よりなお黒い漆黒の翼を広げ、前脚と肩辺りにさらに生えた両腕で二本の剣を掲げる。
「ッ!クレマンティーヌ、貴方いったい何を使役しているのですか!」
「さあ?いべんとように創ったれいどぼす?だってさ。ま、精々頑張りなよ」
クロウが巨大な剣を振るう。木々をへし折り突き進む巨大な剣の前に、サドランが立つ。一瞬で切り裂かれる。
他の漆黒聖典達はその剣を足場に駆け抜け全ての生物の弱点である首に向かい、第三席次も支援の魔法を放つ。が──
『グアアァ!』
眼孔の奥に揺らめく炎と同じく青白い炎を吐き出し迎撃する。すぐさま防御系の魔法や武技を発動するが隊長以外は焼け死に、その隊長も瀕死レベルのダメージを追い地面に落下する。
最早剣を扱うに値しないと判断したのか、クロウは身体を支える前足の片方を振り上げる。
「────ッ!!」
迫り来る死を前に、隊長は槍を握る手に力を込める。が、その覚悟は杞憂に終わる。
「へぇ、第九席次、面白いのを連れてるね?」
ガギィィン!と爪が弾かれる。動揺したように眼孔の奥の炎が揺らめくクロウ。手加減していたとはいえ、自分の爪を弾く程の力の持ち主を睨みつける。
隊長もまた、己を死から救った者を見つめる。
月光を反射する髪は左半分は漆黒、右半分は白銀。瞳の色はその逆。十代前半にしか見えない彼女が持つのは巨大な戦鎌。
「ば、番外席次!?何で、何でてめぇが此処に!」
「今回現れたかもしれない神は、複数の神器を用いるんでしょ?神器一つで国が傾くらしいのに、それだもの。スレイン法国最強の私がかり出されるのは当然じゃない………私としては、武装が強いだけの男に興味はないのだけど……あ、そうそう。それ、雄?人間との繁殖は可能なのかしら?」
法国最強はそう言ってニタリと笑った。