「番外席次が抜けた、だと?」
「はい……」
スレイン法国の上層部、六人の神官長達は漆黒聖典の隊長の報告を聞き眉をしかめる。
「なんと勝手な。所詮は穢らわしき汚れた血か」
「父に似て、随分自分勝手な婆だ。それで、どこへ向かった?」
「ぷれいやーと共に聖王国へ」
「「「───!?」」」
隊長から告げられた言葉に目を見開く神官長。うち一人が、恐る恐る尋ねる。
「あの女は強者を求めていたな………そのぷれいやーを名乗る者に、何か──」
「はい、戦闘行為に……」
「なんと言うことだ!神と敵対したというのか!?」
「八欲王のような存在かもしれぬだろう……」
「場所から考えて無数の神器を使う英雄ではないのか?だとしたら、人を救う存在だ」
「いやそれより番外席次に襲われ、無事なのか!?」
ざわざわと混乱する神官長。彼等からすればこの報告は漸く現れた神が自国の最強戦力に襲われたというもの。混乱しない方が無理がある。
「無事です。番外席次や我々を遙かに凌ぐ使い魔も連れ、本人自身も番外席次を圧倒する実力者でした」
「おお!では、その神は何処に!?」
「………番外席次に求婚され了承、聖王国で式を挙げた後世界を見て回ってからくる、と」
「「「…………………は?」」」
アーグランド評議国。そこに存在する支配者の一翼、
「久かたぶりじゃな、ツアー」
現れたのは老婆だ。しかしその背筋はピンとはり、衰えを感じさせない。
「やあリグリット……ちょうど良かった頼みたいことがあったんだ」
「む?」
ツアーからの言葉にリグリットが訝しむ。この旧い知人が出し抜けにお願い事など珍しいからだ。チラリと壁の一部を見て、気づく。
「お主、鎧はどうした?」
「壊された」
「…………ぷれいやーか?」
「だと、思う……いや、恐らくそうなんだろう」
煮え切らない言葉にますます訝しむリグリット。と、ツアーが僅かに後ずさる。まるで何かに怯えるように。
「
「種族やスキルに引っ張られて形だけは強くなってるのも知っておるのお。だからこそあの魔法であろう?効かなかったか?まあ、時折世に強い憎しみを抱いている者もいるようじゃが……」
「違うよリグリット。あれは世界に対する憎しみなんて抱えていない。なのにあの怨恨の叫びに耐え抜いた……これも違うか。彼を的確に表すのは難しいね」
「ふむ?今回の揺り返しで現れたのは、世界を汚す側か?」
「だろうね………しかし本質は悪ですらない」
遠い目をするツアー。思い返すはあの笑顔。
「どんな存在も、感覚的にそれが悪いことだと知っている。だから嫌悪したり、興奮したりする………彼は自らの行いを知識として悪だと認識しているが感覚としては理解していない。ただ楽しいかどうかで行動している」
「それは悪とは違うのか?」
「違うよ。悪は、悪行を楽しみ善行を嫌悪するものだ。彼はきっとどちらも楽しめる……」
「ほう……なら、うまくすれば世界に協力させることは───」
「やめておいた方が良い。数多の魂の怨恨の叫びを、己が知らない感情だと喜んで受け止め、直ぐに飽きて出て来る異常者にして気分屋だ。生かしておけばどうなるか………」
死の恐怖を、友を喪う悲しみを、子が燃やされる絶望を、死を懇願するほどの苦痛を味わったはずなのに、平然と楽しみ飽きて出て来たウネ。
確かに最初は上手く丸め込めるかもしれない。しかし途中で………いや、おそらく世界が平和になった後はする事がないと気づいた瞬間飽きる。今度は敢えて世界に災いをばらまくかも知れない。
「…………
「ウネじゃと?ああ、確かに………となると吸血鬼にしかそやつは殺せんぞ。インベルンの嬢ちゃん……では荷が重いか?」
「リーダーの話だと、吸血鬼は逆らえないらしい。現地民の吸血鬼が吸血鬼のぷれいやーと同じ扱いなら良いんだけどね」
「どのみち神の座を奪わせねば真の意味で殺すことは出来ぬのだろう?で、あるなら神の座を渡せるのはインベルンの嬢ちゃん以外いないと思うがの」
「もしとどめではなく単独撃破が条件なら、もう諦めるしかなさそうかな。彼は此方の魔法にも手を出した。もはや魂の破壊すら不可能だろう」
「単独でなかったとして、お主と儂、その他強者達をそろえれば勝てると思うか?」
「無理だろうね……あの異形な烏のことも考えると、個人的には、法国も亜人も関係なく全ての種族が手を組み、かつあの今この世界に来ているぷれいやーの協力があったとしても争いたくはないよ。彼の性格的にも、戦闘力的にもね………」
「くしゅん!」
「嚔も可愛いのね旦那様」
竜王国謁見の間にて嚔をするウネ。そんなウネを見て番外席次がクスクス笑う。
「お主等、仮にも一国の王と対面しているというのに」
「昨日あれだけ喘いでおいて威厳もへったくれもないでしょ?」
「んな!?」
「まあ俺は十分楽しめたぞ。ほいお礼」
と、無数のピンクローターやバイブを渡すウネ。赤くなったドラウディロンだが押し返さない辺り彼女も欲しいらしい。ストレスのたまる職場だ、自慰に耽りたい夜もあるのだろう。
「後戦力としてこれやるよ。護国獣とでも名付けるか」
と、ウネの影から金色のドラゴンが飛び出してくる。
腕輪や首輪、イヤリングなど装飾品が多く、しかし決して派手や悪趣味ならぬように付けられたドラゴンはドラウディロンの座る玉座の横で丸くなる。
「強さとしてはクロウの三倍くらいかな。多分この世界を滅ぼせる」
「は?え?い、良いのかそんなものを貰って!もし私が世界を侵略しようとしたら───!」
「別に良いよー。他の国にも似た強さのやる予定だし王国にいる友達にあげたのはそのドラゴンと同じぐらい強い虎……猫だし」
「世界に、これだけの力を?お主、何をする気だ?」
「俺がするんじゃない。力を手に入れた人間達が、勝手にやるんだ。俺はそれを観戦するだけ……まあそのうち参戦するかな。とりあえず今後の目的は聖王国で結婚式挙げて、あそこにはそうだな……神獣としてあげよう。後は王国帝国法国と配って───あ、そうそう王国のガゼフ・ストロノーフをカンストさせようと思ってんだよね。楽しそうだし。後ペロロン兄ちゃんの言ってた「魔法少女育成計画」だろ、最強村娘作成に茶釜お姉ちゃんの言ってたぅゎょぅι゙ょっょぃなロリを作るか……それまで周りが逸らないように釘とかもささなきゃな」
「………世界をそこまで混乱させて、お主は何をする気じゃ。何を得る」
「何も?強いて言うなら、退屈しない時間が得られる。で、どうするのドラちゃん。受け取らず他の国に滅ぼされる?それとも、どうにかして俺を止めてみる?」
ケタケタと笑うウネにドラウディロンは長いため息を吐く。
「敵対する気はない。世界を敵にした方がまだマシだ。要するに、そのゲームに勝てばいいのだろう?やってやるとも」
「OK。本ゲームではラナーちゃんも観戦側にたって貰うから安心しな」
「それで、だな………」
「……………」
「その、世界の支配権をかけたゲームに勝てたら………えっと───」
「ああご褒美ね。良いよ」
「う、うむ!そうか!あ、いや別に何かを頼もうなどとは思ってないが……思ってないが、な!」
「馬車で行くの?走っていった方が速いと思うのだけど」
「クーちゃんがついてこれねーから」
「良いじゃない。夫婦水入らずで、ね?」
と、クレマンティーヌからの殺気を無視してしなだれかかる番外席次。見た目にそぐわぬ妙な色香は万人を惑わすことだろう。
「あはは。まあ何時かな。今は結婚式だ。その後結婚初夜な……」
「楽しみだな。一発で孕めればいいんだけど」
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