※この作品はR-18です。

【BL】in the room   作:白千ロク(玄川ロク)

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「うまかったー。メロンありがとうな、紗智。あと、理紅も」

「なら、キスしていい?」

「はぁ!? それとこれとは話が違うからな」

「俺はりぃちゃんの為にパシられたんだよ? 紗智が自分でやればいいのに」

 

 苦々しげに紗智を見遣る理紅は、フルーツフォークに刺したメロンを口へと運んでいく。あとひとくち分残るそこには里緒の視線があった。

 

「嫌よ。手が汚れるじゃない。私はパス」

「――ほらね。りぃちゃん」

「嫌だ」

 

 呆れたようにため息を吐いたあと、紗智から視線を外した理紅は、隣の里緒に笑みを浮かべる。反して里緒は緩く頭を振り、フルーツフォークの柄に指を添えた。空いた手は理紅に柔く握られ、ぴくりと躯を跳ねさせる。

 

「紗智、たちがいるじゃん……」

「解った」

 

 絞り出された小さな声は理紅の鼓膜を震わせ、脳天を駆け抜けていった。首を赤くさせる里緒の姿に情欲が煽られ、いますぐ貪りたい衝動が走る。だがそれを抑え込み、理紅はしかたがないと息を吐いた。言い換えれば、紗智や和己がいないならしてもいいと受け取れるから。それに、煽るように可愛く言われたら折れるしかないだろう。

 

「え……?」

「なに?」

 

 里緒ではなく紗智が目を丸める。「アンタどうしたの?」と。理紅は訝しげに紗智を一瞥し、「あのね」とため息を吐いた。

 

「なにを言いたいのかは大体解るけど、俺にもりぃちゃんを労る気持ちはあるよ」

「マジで!? 学校でもことあるごとに里緒を呼び出してんのに?」

「うるさいよ、和己。手の甲に傷を付けられたくないなら、ちょっと黙ってて」

「フォーク向けんなバカ」

 

 「危ねぇ!」と手の甲を引っ込める和己に、理紅はにやりと口角を上げる。

 

「あと少しだったのに残念だな。和己はほっといて、りぃちゃん、ほら。最後のひとくち、りぃちゃんにあげる」

「えっ」

「ほしいんでしょ? 顔を見たら解るよ。だから口、開けて?」

 

 里緒は驚いたように目を丸め、理紅に視線を張り付けている。上目遣いのその顔は、理紅をさらに昂らせていく。

 

 ふつふつと湧き上がる欲をぐっと抑えて、最後のメロンを口に近付ければ、大人しく口を開く。その姿に笑みを浮かべながら、理紅は里緒の唇に触れるフォークを抜いた。

 

「はい、ごちそうさま。片付けるから、お皿持ってきてね」

 

 カランと皿にフォークを乗せれば、ふたり分の皿を手に流しへと向かう。欲を掻き出すように長く吐いた息は、流す水とシンクに溶けていくようだ。

 

「里緒は幸せそうね」

「メロンだからね」

「俺達が帰ったあと、あんまりイジメてやるなよ?」

「解ってるよ。――あ、そうだ、和己。明日、バスケ部見学に行くから」

 

 ふたりの皿を受け取った理紅は素早く洗い始め、役目を終えたスポンジを絞った。水切りカゴに置いた皿たちは、水滴の跡が着かないようにと数秒ののちに理紅に拭かれてしまう。布巾(ふきん)のチェック柄が、白い皿と長い指に映えていた。

 

「え……、練習試合出てくれるのか?」

「りぃちゃんが頼んできたからね。もう本当に可愛かった」

「じゃあ、里緒にお礼しないとなー」

 

 うっとりとした顔で放つ理紅に対して、和己は顎に手を添えた。「なにがいいかね」と放つ和己に、紗智は「食べ物なら喜ぶんじゃない?」とアドバイスをする。

 

「お礼はメロンじゃないの?」

「これは、昨日じいちゃん家から送られてきたやつだし」

「なら、わざわざしなくていいよ。その代わり、俺がドロドロに甘やかすから大丈夫」

 

 拭いた皿とフォークを元に戻して穏やかに笑む理紅は、和己に視線を遣る。和己は和己で「いやいや」と顔の前に翳した右手を横に振った。

 

「大丈夫なように見えねーんだけど! つか、お前はいつも里緒を甘やかしてるし、あんま意味ねーな」

「そんなことないよ。りぃちゃんが拒むから、甘やかしきれてない部分もあるし」

「理紅ー、ドラマ始まるぞ?」

「ああ、うん。解った、いま行くよ」

 

 キッチンに顔を出した里緒はそれだけ言うとまた戻ってしまった。カウンターの端から垣間見る里緒は、ソファーの上で体育座りをしながらリモコンを弄っている。

 

「可愛い」

「理紅、目がヤバいから」

「りぃちゃんだからね」

 

 「いますぐにでも食べたい」と唇を舐めれば、ふたりに引かれてしまった。「食べすぎだから」と。理紅は「それでも足りない」と返して、里緒に歩み寄る。当然のように笑顔を浮かべながら。

 

「お待たせ」

「じゃあ私たち帰るから。ごちそうさま」

「また明日な」

「おう。また明日」

「送ってくるね」

「ああ、解った」

 

 後ろ手に緩く手を振る里緒の頭を撫でて、理紅は廊下に立つ紗智と和己に近付いていく。里緒に触れた掌は熱く、知らず知らずのうちにまた情欲が湧き上がってきていた。

 

 ふたりを見送り、リビングに戻った理紅は、肩越しに振り返った里緒の「お帰り」と放つ笑みにふたたび頭を撫でた。里緒は手を払い落として唇を尖らせる。

 

「だから撫でんなって。いいから隣に座れ」

「はいはい」

 

 ぽんぽんと隣を軽く叩くそこに、理紅は大人しく座る。

 

「りぃちゃん」

「なんだよ?」

「さっきの続き、しようか?」

「抱きしめるだけだからな」

「解ってるって。おいで」

 

 「おいで」と優しく放つが、実のところ腕を引く力は強い。もちろん、足の間に腰を下ろした里緒のお腹に回した手の力も。

 

「この女優の演技、棒だね」

「若手でゲストだからな。慣れてないんだろ」

「言われればそうかもね」

「そういえば、理紅から好きな女優の話とか聞いたことがないな……。誰が好き?」

「俺が好きなのはりぃちゃんだよ」

「そういう意味じゃないんで」

「んー……、基本的にりぃちゃんが好きな俳優は嫌いじゃないよ」

 

 「なんだそれ」と呆れる里緒の髪を掬い、口付ける。囁く理紅の声は、里緒の躯を熱くさせていった。

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