「りぃちゃんが好きな人を、俺が嫌いになれるわけがない。誤解させないように言っとくけど、例外もあるよ。そうだね。
「なんで? カッコいいじゃん。演技も巧いし。この間のドラマの犯人役とか、すごく怖かったし。あんだけ顔がいいとやっぱモテてんだろうなー」
「そうやってりぃちゃんが肩入れするから。俺は嫌い」
「肩入れって……、なに言ってんだ。普通の感想だろ?」
理紅の言葉にため息を吐き、肩越しに振り返れば、理紅は真っ直ぐな目を向けてきた。
「俺は一度だってりぃちゃんに褒められたことがないのに、芸能人だからって褒められるのは気に入らない」
「意味解んねーよ! 芸能人も一般人も関係ねーし。カッコいいからカッコいいって言ってるだけだろ」
「俺は?」
「理紅? 理紅もカッコいいけど」
「そう」とだけ溢した理紅は肩に顔を埋めてしまう。「重いんだけど」と視線を遣れば、赤い耳が映った。耳だけではなく、もしかしたら首まで赤いのかもしれない。
「な……、なんで……っ! ――ひっ!」
赤くなる理紅に戸惑っていれば、首筋に吐息がかかる。
「理紅っ」
「りぃちゃんが悪い。俺を褒めるから」
「だって褒めろって!」
「嬉しいな」
なぜか両手首を捕らえられ、身動きを封じられた。にこりと笑む理紅は、蕩けているかのように甘い顔をしている。
「そんな顔するなっつの! お、お前はオレに褒められなくても、みんなに褒められてるだろうが」
「みんなに褒められても意味がないよ。母さんにも父さんにも褒められたって、なんの感情も湧かないし。俺はりぃちゃんに褒められたい。りぃちゃんが褒めることだけに意味がある」
「バカなこと言ってんなよ! オレがどんな思いをしたかなんて解らないくせに……っ!」
「どんなに頑張ったって評価がないから悔しかった? 俺が憎かった? 俺はりぃちゃんが蔑ろにされるから、全部やめたよ」
眉を寄せる里緒に変わらず笑む理紅は、わけが解らないことを言った。里緒はポカンと口を開けながら、困惑したように理紅を見上げる。
「ぜ、んぶ……やめた……? なに言ってんだよ……? 意味不明なんだけど」
「俺が褒められる度に、りぃちゃんは眉を寄せてた。ふざけんなって顔に書いてあった。だからやめた。努力も根性も捨てたよ。いまは全て手を抜いてる。それでも、ある程度はできちゃうから申し訳ないんだけどさ。他はなにを望んでる? ねぇ、りぃちゃん。俺にしてほしくないこと、他にない?」
「っ……ざけんなっ」
「俺はりぃちゃんが傍にいるならそれでいいから」
首筋に寄せられた唇は肌を吸い、痕を付けていく。
「ん……、くぅ……」
「ああ、でもね、セックスはやめないよ。嫌だって暴れても、殴られても、泣いて許しを乞われてもやめてあげない。絶対に――ね」
「っ……!」
顎に手をかけられ、微笑む理紅の唇が近付けられた。
「俺から離れるのは許さない。俺を見ないのは気に入らない。りぃちゃんの全部は俺のものなんだから」
「あ……――ん、んっ」
端整な顔に似つかわしくない淀んだ黒い目に射抜かれて動けない間に、荒く唇を塞がれる。逃げようにも顎にかかる手は離れず、両手首を掴む手も縫い付けられたようにがっしりとそこにあった。力を込めても微動だにしない。
「ぁ……、理紅ぅ……ふ、ざけんな……! ふざけんなよお前っ」
火事場のバカ力か、掴む手を振り払い、理紅を突っぱねて胸倉を掴んだ。里緒の目尻からは大粒の涙がボロボロと溢れ落ちていく。
「手を抜いてるだと!? ふざけてんじゃねーぞ! オレがどんな思いでお前に追いつこうとしているのかも知らないのかよ! 理紅みたいになりたいって、何度も何度も何度も何度も思ったのにっ……」
手を抜いているという事実が悔しい。追い付きたかった弟は、なにかを真剣にやろうとはしていなかったのだ。いくら頑張っても、手を抜く弟にさえ勝てないのは、惨めすぎるだろう。
胸倉を掴む手は滑り落ち、里緒は徐に立ち上がる。
「どこに行くの?」
「いまは、お前といたくない」
涙を拭いながらすんと鼻を鳴らす里緒は、ふらふらとした足取りでドアへと向かう。が、途中で肩を掴まれて引き寄せられた。
「なんだよ!」
「言ったよ、俺は。――俺から離れるのは許さないって」
振り返りながら怒声を上げる里緒に怯むことはなく、そのまま床に押し倒した。即座に着ているものを脱いで、呆気に取られているであろう里緒を後ろ手に縛り上げる。
「和己たちからはあんまりイジメるなって言われてたんだけどさ、里緒が俺から離れるのがいけないんだよ?」
「や……だ、嫌だ……嫌い……、嫌い嫌い嫌い嫌いぃ」
「何度も言わなくても知ってるよ。兄弟でもセックスするから、嫌い? それとも、俺だけ褒められるから嫌い? まぁ、なんでもいいよ。りぃちゃんの中に俺がいるなら幸せだな。いまから離れられないようにしてあげるから」
「あうぅ……!」
背中側から滑り込まされた手に肌が粟立つ。胸を這うそれはすぐに先端を弄り始めた。
「や、ぁ……り、く……」
「なに?」
「嫌、だ……」
「少し弄っただけなのに、ここ、固いよ? 嫌じゃないよね?」
「ん、んっ!」
先端をきゅっと摘ままれ、里緒の躯は跳ねる。
「や、ぅう……嫌だぁ……やぁっ」
「嫌は聞き飽きたって言った。いっぱい愛撫してあげるから、大丈夫。気持ちよくなろうね」
「っ、んぅ……」
行為に対して優しく髪を避けられ、うなじに舌が滑る。間近で聞こえる粘膜が擦れる音に、里緒の躯は固くなっていく。反して弄られる胸は、確かな熱を持っていた。
「あ、したっ……、明日、は、体育あるっ、からっ」
「だから? むしろ、やめてあげない理由だよ、それ」
「な、でぇ……、あ、う……や、りっくぅん……」