※この作品はR-18です。

【BL】in the room   作:白千ロク(玄川ロク)

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「遅れたのはごめん。けどオレは、別に楽しんでない」

「謝れば許してもらえるなんて、思わない方がいいよ」

「あ……――っっ!」

 

 里緒自身が放った言葉を言われて固まる間、後ろ髪に添わされた理紅の手がそれを鷲掴み、無理矢理上向かせられキスをしてきた。

 

「ねぇ、りぃちゃん。俺がいない間に、誰かと楽しんでいるのは気に入らない。俺が知っている人でもね」

「っ、ん……り、く……」

「まぁ、この話しはこれで終わりにしてあげるよ。それで、りぃちゃんは俺にどうしてほしい? 練習試合に出てほしいの?」

 

 「ねぇ」と放ちつつ、ちろりと舐めて唇を離した理紅は、髪を掴んだまま囁いた。

 

「っ……、うん……。出て、ほしい」

「――いいよ。りぃちゃんがそこまで言うなら、出てあげる。条件付きで、だけど。朝練もあるから、そうじゃないと割りに合わないしね」

「条件……?」

「キスして、ここで」

「こ、ここでっ!?」

「ああ、そうだ。言っとくけど、条件はこれだけじゃないから」

 

 驚く里緒の腰に片手を添えた理紅は、また口端を上げる。優位に立っていると解るその笑みに、里緒はふたたび躯が強張った。逃げる隙がないことに気が付いて。

 

「キス、できるよね?」

「で、でも……、こ、こは……」

「できるよね?」

 

 いまいる場所は廊下だ。ふたり以外の人はいないが、誰か来る可能性はあった。しかし理紅は、それでもしろと言っているのだ。有無を言わせずに。しないのなら、それは練習試合に出ることをやめるということなのだから。

 

 里緒は躊躇するかのように視線をさ迷わせたあと、きゅっと唇を噛んだ。理紅は里緒の腰と髪を弄りながらそれを待つ。

 

「いまからする! 下手だったら、ごめん」

 

 意を決したのか、頬を染めながら顔を近づけ、理紅の唇に自身のそれを重ねる。里緒はすぐに離れようとしたが、後頭部に添えられた手が阻み、唇を割り入る舌に躯が跳ねた。

 

「ん……!」

 

 舌先が触れ、絡まるそれを押し戻そうとするが、理紅の手に力が込められてしまい巧くいかなかった。響き始めた水音に、里緒はぎゅっと目を閉じる。誰かが来たらと、怖くて。

 

 何度もされる口付けは、深く深くを攻めてくる。暗闇の中でもキスの角度を変えたと解るくらいには、慣れさせられていた。重なる唇を離し、口端から滴るそれを舐め取る舌の熱さも、もう一度重なるその唇の柔らかさも、漏れる吐息も、そして――肌を焦がすような理紅の熱い視線も、全てが里緒を捕らえていく。

 

 離すまいと絡まる舌に翻弄され、膝が震えだした時、ようやく唇が離された。乱れた吐息が頬に触れ、目元を拭われる。

 

「誰もいないから、目……開けて」

「り、くの……条件、全部、全部飲むから……バスケ部、を、助けてあげて」

 

 理紅の言葉に徐に目を開け、顔を赤くさせながら息が乱れる里緒は震えており、それでも理紅の腕の中で涙ながらに訴えていた。「お願い」と。

 

 本当は、条件なんてあってないようなものだ。ただ、里緒からキスをしてほしかっただけなのだから。こうでもしないとしてくれないと解っているので、託つけて強行手段にでたのだった。

 

「りぃちゃん、泣かないで」

「な、いてない……! 息苦しかった、からであって……、別にっ」

 

 「泣きたくて泣いているわけじゃない」と里緒は切れ切れに放ちながら浮かぶ涙を拭う。

 

「りぃちゃんが応援にきてくれるなら、それでいいんだ。他の条件なんてないよ、本当はね」

「な、に言ってんだよ。応援に行くに決まってるだろ」

「本当に?」

「おう」

 

 髪を撫でる理紅を眺めながら、里緒は頷く。「行くっていったら行く」と付け加えながら。

 

「りぃちゃん、ありがとう」

「ん……」

 

 小さく頷く里緒の額に唇を落とし、理紅は手を差し出した。

 

「帰ろう」

 

 すぐに手を握り返した里緒は、そのまま「仕返しだ」と理紅をぐいぐいと引っ張った。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 帰路に着けば、玄関先で背後から抱きしめられ、反射的に里緒は躯を捩った。

 

「な、なんだよ?」

 

 頬を撫でる手が口元に滑り、里緒の唇を薄く開く。

 

「りぃちゃんのこの口で、俺を気持ちよくさせて?」

「今日はそんな気分じゃないの。だ、大体! お前は学校でなにしてんだよ! 何度も襲ってきやがって」

「何度も襲いたくなるのは、りぃちゃんが可愛いからだよ」

「ふざけんなっ」

 

 噛み付く里緒に笑みを浮かべる理紅は、里緒の下唇を指の腹で撫でる。里緒が肘で押しても、理紅は離れようとはしない。

 

「離れろっての」

「そもそも、りぃちゃんのキスが原因なんだからできるよね?」

「ア、アレは……しろって、言ったから……っ」

「しろって言ってできるなら、口でして」

「っ! 理紅の、バカ」

 

 朱色に染まる顔で理紅を突っぱね、里緒は慌ててリビングに避難した。

 

「りぃちゃん」

 

 里緒の後を追いかけ、入り口に躯を預ける理紅は、リビングを見渡す。里緒はスポーツバッグを床に置き、冷蔵庫からお茶を取り出してふたつのカップに注いでいた。近付けば「うるさい」とそのひとつを渡される。

 

「理紅はいつも盛りすぎなんだよ」

 

 冷蔵庫にお茶を戻す最中(さなか)、里緒は唇を尖らせてゴニョゴニョと放っていた。「オレの躯がもたない」と。

 

 理紅は理紅で里緒のスポーツバッグの隣にそれを放り、お茶を飲みながら目を細めた。

 

「りぃちゃんが傍にいるなら、手を出したくなるのは当たり前じゃない?」

「だからそれが間違ってんの! 大前提として、オレたちは兄弟だろうが。血の繋がりはあるし同性だし、その……これはさ、世間でいうところの、きっ、近親……」

 

 カップを握る里緒の手は微かに震えていたが、お茶を無理矢理喉へと流し込んでいく。

 

「うん。近親相姦だね。それで?」

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