※この作品はR-18です。

へたれ提督と生きる為の鎮守府ー抜錨!チャージマン研外伝   作:六本脚のジャイアンS

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皆さんお久しぶりです

ハーメルン新作、やっと投稿出来ました
前作がいつ投稿したのかもほぼ忘れかけてます

とうしても入れたい要素を詰め込んだら書きも書いたり!ついに十万文字を突破してしまいました!オーマイガー!
という訳で例によってかな~りの長文になります、どうかあたたたかくお付き合い頂けたら幸いです、それではゆっくりしていってね♪


【特別回想録10.30】 ただの女、川内(中編)(R-18)

天龍児童園の朝は早い

 

 

子供達を健全に育てる為に園長の天龍は起床時間を0600時にしていた

 

 

【天龍】

「いいか!お前ら!健全な精神は健全な肉体にこそ宿るんだ、夜更かしが過ぎるとあんな自堕落になるから気をつけるように!」

 

【天龍児童園の子供達】

(はーい)

 

……海軍体操、始め!……オイッチニ!サンシ!

 

 

【アンドロメダ】

「‥‥ふあ~~あ‥‥何でわざわざ朝早くからディスられなくちゃならないの~?」

 

【清霜】

「ほらお姉ちゃん、ぼーっとしてると天龍ちゃんに怒られるよ?」

 

【ホーネット】

「清々しい朝ね、身体を解すのも悪くないわ♪」

 

【ガンビア・ベイ】

「夕べはちょっと夜更かししてしまったけど、子供達も元気そうで良かったですベイ♪」

 

【防空棲姫】

「ハイ♪気持チイイ朝デスベイ♪」

 

【ガンビア・ベイ】

「‥‥‥ベイ?」

 

【アンドロメダ】

「みんなは何でそんなに元気なの~~?」

 

【江風】

「よーし!みんな、体操の次は棒(新聞紙を丸めたもの)を持って、素振り50回だ!いくぜー♪」

 

【海風】

「剣術の稽古じゃないわよ!」

 

【蒼龍】

「あはは‥‥久し振りに浜名湖に戻ってきたからはしゃいでるわね」

 

 

天龍児童園では朝の体操を日課としている、子供達は朝から元気だ

朝が弱いアンドロメダは頭がぼーっとしている

 

 

10月30日の朝が明けた

 

昨夜のお祭りイベントと乱痴気騒ぎで盛り上がった六本脚鎮守府は、それでもいつも通りの朝を迎えた、ただ、今日は朝からゲスト達が登場して盛り上がっていた

 

 

【五代 雄介】

「やあ!ちびっ子たち、始めましてー♪」

 

【神通】

「皆さん、こちらは『大道芸人』の『五代 雄介』さんです」

 

【五代 雄介】

「いや、大道芸人じゃなくて‥‥‥」

 

 

朝から妙にテンションの高い一人の男が児童園の子供達に紹介される

そしてその男、『五代 雄介』は子供達の前で得意のジャグリングを披露し始めた

 

 

【五代 雄介】

「よっ!ほっ!はっ!」

 

【デウスーラ】

「わーー♪すごいのだーー♪」(パチパチ)

 

【夕立】

「ぽいーー♪」(パチパチ)

 

【隼鷹】

「あんた達‥‥素直だなぁ」

 

 

子供達を笑顔にする事が大好きな雄介は、朝から子供達にとっておきの芸を披露しようとはりきっていた、結果、少なくとも素直に喜んでくれた人が二人いた

 

しかし、普段から刺激に事欠かない天龍児童園の子供達には少々物足りなかったらしく‥‥

 

 

【ナナ】

「ねえねえ♪お兄さん、あれやってー♪」

 

【五代 雄介】

「おっ?リクエストかい?いいとも!何をして欲しい?」

 

【ナナ】

「ビール瓶か酒瓶を手刀で叩き切ってほしいの~♪」

 

【五代 雄介】

「‥‥‥へっ?」

 

【ナナ】

「那智さんがよくやってるの~♪」

 

【五代 雄介】

「‥‥いや、そんなの出来ないから‥‥」

 

【雄一少年】

「那智さんは簡単にやってたぜ?『2000の技を持ってる』んだろ?」

 

【五代 雄介】

「‥‥他のにして貰えないかな?」

 

【ナナ】

「う~ん‥‥じゃあね、2リットルの水の入ったペットボトルを空中で蹴りを入れて引き裂いて~♪」

 

【五代 雄介】

「だから!そんなの出来ないから!」

 

【雄一少年】

「なんだよ~、那智さんは簡単にやってたぜ?『2000の技を持ってる』なんて嘘じゃねーか?」

 

【五代 雄介】

「君達!?どれだけ目が肥えてるのよ!?」

 

 

 

【那智】

「‥‥‥‥‥‥」

 

 

 

【潮】

「お早うございます‥‥あっ‥あの~‥‥足柄さんが何処に居るか知りませんか?」

 

【天龍児童園の子供】

「狼ちゃんなら羽黒ちゃんと一緒にあそこにいるよ~」

 

【潮】

「えっ?どこに?」

 

 

子供達が指差す方向には、埠頭に係留されている『57号艦、秩父』があった

よく見ると‥‥艦全体が微妙に揺れているのが分かる

 

 

【ヒィッツカラルド提督】

「ヌハハハ!!さあよがれ!!狂い咲け!!このメスカブトムシども~~!!」

(バコ❤バコ❤バコ❤バコ❤バコ❤)

 

【足柄】

「あはあ~~ん♪❤おほ~~ん♪❤❤‥‥おっ❤おっ❤おっ❤‥‥」

(❤ビクン❤ビクン❤ビクン❤ビクン❤)

 

【羽黒】

「あああ~ん❤❤❤司令官さぁ~~ん❤❤❤しゅきしゅきぃ~~♪❤❤❤あっ❤あっ❤あっ❤‥‥」

(❤ビクン❤ビクン❤ビクン❤ビクン❤)

 

【漣】

「ごっ!❤‥‥ご主人様ぁぁぁ!❤❤❤‥キッ‥‥キタコレぇぇぇ♪❤❤❤ひっ!❤ひっ❤!ひっ!❤‥‥」

(❤ビクン❤ビクン❤ビクン❤ビクン❤)

 

 

 

【天龍児童園の子供達】

「夕べからずっとああなんだって」

 

【潮】

「‥‥なっ‥‥なにあれ?」

 

【天龍児童園の子供達】

「「「せっくしゅーー」」」

 

【潮】

「(//△//)」

 

 

 

【那智】

「‥‥姉さん、私が言うのもなんだが、我々『妙高型姉妹』は子供達の教育の為にも、もう少し立ち振る舞いを考えた方が良いのではないか?」

 

【妙高】

「‥‥そうね、子供達の生育に悪影響を及ぼす風紀は抑えないとね、足柄と羽黒だけでなく何だかどさくさに紛れて他の娘も交じってるし‥‥」

 

 

 

そんな話とは無関係なところで朝から紙芝居が上映中‥‥‥

 

【秋雲】

「‥‥という訳で、哀れ四姉妹は触手にからめとられて悪堕ちしてしまいましたとさ♪めでたし♪めでたし♪」

 

【天龍児童園の子供達】

「「「わ~~~~♪♪♪」」」(パチパチパチパチ)

 

【妙高】

「貴女も原因の一人よ!(怒)」(ガシッ!)

 

【秋雲】

「わーーー!!こっ!!‥ごめんなさ~い!!つい調子に乗ってしまって!‥‥」

 

【シャングリ・ラ】

「子供相手な分‥‥もしかしたら私よりやってる事が悪質じゃないの!?」

 

 

【金剛】

「Youは何で『吹雪褌(ふぶきふんどし)』なんか履いてるデスかー!!テートクとやりたい魂胆見え見えネーー!!」

 

【翔鶴】

「朝からそんな『ネグリジェ』姿で徘徊してる貴女に言われたくありません!!」

 

【金剛】

「ワータシはテートクを探してるだけデース!!」

 

【翔鶴】

「だったら服を着てください!!」

 

【那智】

「お前らもだぁぁぁーーー!!!」

 

【吹雪】

「その褌はやめてーー!!!」

 

【不知火】

「アホ共が内輪もめしている間に、この不知火が指令の赤ちゃんを!」

(ジュルリッ)

 

【飛龍】

「聞こえる?刀治郎~♪こっちはこんな感じで盛り上がってるわよ~♪」

 

【花田 刀治郎】

『良いなあ~、やっぱり今から俺も行こうかな~』

 

 

【アンドロメダ】

「‥‥もう!何で皆朝からこんなにテンション高いの!?メダ子はテンション下がる~」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「‥‥俺も朝は苦手だ」

 

【アンドロメダ】

「あっ、吸血鬼さん‥‥お早うございます、ていうか吸血鬼って普通太陽の下では活動出来ないんじゃないの?」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「俺をそんなやわな一般吸血鬼と一緒にしないでもらえるかな~、そもそも吸血鬼は昼間に外に出ちゃいけないって誰が決めたんだよ?」

 

【アンドロメダ】

「‥‥まあ本人がよければ別にいいけど‥‥でも朝が苦手な気持ちが分かる人がいてくれて良かった~」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「今朝は流石にテンションが上がらなかったから、朝飯も極圧ステーキ20枚しか食べられなかった‥‥」

 

【アンドロメダ】

「いやいや!!充分でしょ!?それだけ食べれたら!!」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「何いってる、こんなの『一口カツ』の分量にもならないぜ?」

 

【アンドロメダ】

「意味わかんないしぃ~~!!」

 

 

 

10月30日は『川内』の進水日であり、へたれ提督と川内の結婚記念日でもあった

そんな記念日の前夜祭兼那珂ちゃんミニライブから夜が明けても、六本脚鎮守府の朝は騒々しかった、元気が有り余っている者達で溢れているのだ

 

そんなお祭り騒ぎの一方で‥‥‥

 

 

 

【磯波】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

六本脚鎮守府の執務室の窓を見つめる車椅子の少女が一人‥‥

 

 

【木曾】

「‥‥よっ♪」

 

【磯波】

「‥‥あっ‥‥木曾さん」

 

【木曾】

「久しぶりだな、磯波」

 

【磯波】

「はい‥‥お早うございます」

 

 

そんな少女『磯波』に、吸血鬼の嫁艦『木曾』が声をかけた

 

二人は数年前『ある場所』で出会った事がある、知り合い同士であった

既に複数の人数を交えた上での再会は果たしているが、こうして二人きりで話すのは本当に久しぶりかもしれない‥‥‥

 

 

【木曾】

「あいつらの部屋の窓を見てたのか?」

 

【磯波】

「はい、二人はもう起きてるのかな?って‥‥」

 

【木曾】

「あの二人は夕べから執務室でしっぽり『やってる』最中だ、もうしばらくは出て来ないぜ?」

 

【磯波】

「そうですね♪‥‥フフ♪」

 

 

二人の共通の知り合いがあの執務室の中にいる‥‥‥

その話題で二人は盛り上がった

 

 

【木曾】

「‥‥なあ磯波?」

 

【磯波】

「何ですか?木曾さん」

 

【木曾】

「お前はあの二人に出会った事を‥‥どう思ってるんだ?」

 

【磯波】

「どうって?‥‥」

 

【木曾】

「もう昔の事だから今更こんな事言っても仕方ないのは分かってるが、あの二人に出会っていなかったら‥‥いや、俺達も含めて出会っていなかったら、もしかしたらお前の足はそんな事にはならなかったかも‥‥てな」

 

【磯波】

「木曾さん、それは関係ありません」

 

 

普段何処か控え目な磯波だが、この時ばかりはハッキリと自分の考えを言いきった

 

 

 

【磯波】

「磯波はあの時、母里司令官や川内さんにも、木曾さんにも、ヒィッツ司令官や足柄さんにも出会えた事を感謝してます、ああ勿論、木曾さんの旦那様にもですよ♪」

 

【木曾】

「///よせやい///」

 

【磯波】

「磯波の足がこんな事になったのは‥‥私が未熟だったからです」

 

【木曾】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【磯波】

「木曾さん、実は私、また海に出られるように身体を戻す事、諦めてないんですよ?」

 

【木曾】

「そうなのか?」

 

【磯波】

「はい♪仕事の合間にリハビリと訓練を続けてますから♪」

 

【木曾】

「お前は‥‥強いんだな」

 

【磯波】

「そんな事ありませんよ、磯波が生きていられたのは皆さんに助けて貰ったお陰です、それに‥‥‥」

 

【木曾】

「それに?」

 

【磯波】

「母里司令官と川内さんが、磯波に勇気を与えてくれたんです、磯波は何度でも立ち上がる事が出来るんだって‥‥あの頃あの二人が‥‥川内さんが受けた苦しみに比べたら、私の足なんて‥‥‥」

 

【木曾】

「そんな事言うな、お前だって苦しんで、頑張って来たんだろ?」

 

【磯波】

「木曾さん、磯波は川内さんと再会した事であらためて思いました

私の足は私がその気になれば直す事が出来る、でも川内さんの心の傷は癒える事はない、川内さんはその傷と今でも向き合って戦っているんだって、多分これからも‥‥」

 

【木曾】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【磯波】

「木曾さん、生意気言ってすみません、でも‥‥木曾さんにもそんな傷があるでしょ?医療に従事する端くれの一人として言わせて貰えれば、川内さんには心の傷をケアする何らかの医療的処置が必要だと私は思います」

 

【木曾】

「だがそれは、川内が受け付けないだろうな」

 

【磯波】

「そうですね‥‥‥母里司令官と引き離す事なんて私には想像も出来ません、川内さんが正気を保っていられるのは母里司令官が側にいるからです、それは母里司令官にも同じ事が言えますが‥‥」

 

【木曾】

「あいつら二人はもう離れる事なんか出来ないさ、誰にも引き離す事なんか出来ない、神でさえもな、それは俺とあの男(二等憲兵吸血鬼)も同じだ」

 

【磯波】

「‥‥‥‥‥‥」

 

 

ほんのしばらくの沈黙の後‥‥‥

 

 

【木曾】

「なあ磯波、お前のその気持ち、俺が言うのも何だが嬉しいぜ」

 

【磯波】

「‥‥木曾さん?」

 

【木曾】

「磯波、俺達を‥‥俺と川内の事をもっと信じろ、今は俺も川内もそんなやわじゃないぜ?

俺達には守るべきものがいる、川内にはへたれの旦那も、清霜も、メダ子にホーネットにユークスに‥‥鎮守府の家族と、守るべき者も支えてくれる者も沢山いるんだ、あいつ自身が積み上げてきたかけがえのない財産だ

それに俺達の心の傷は、大切なものを守るための強力な武器にもなるんだぜ?」

 

【磯波】

「‥‥木曾さん‥‥」

 

【木曾】

「お前のリハビリが成功して、自分の足で歩いて、また一緒に海の上を駆ける事が出来たら川内もへたれの旦那もきっと喜ぶだろうさ、頑張れよ♪」(ナデナデ)

 

【磯波】

「‥‥はいっ!」

 

 

自分が心配するような事ではなかったのかもしれない

 

自分がもう一度この足で立ち上がろうとしているのと同じように、彼女達も己の心の傷を明日への力に変えようとしているのだと……磯波は心が暖まる気がした

 

 

 

【UX-01】

「そこの二人?何しんみりしたお話してるの~?」

 

【木曾】

「よう、ユークスか‥‥何だお前その格好は?こんな朝から大掃除か?」

 

 

いつの間にか、二人の側にユークスが立っていた

割烹着に三角頭巾と、大きなカゴを抱えて

 

 

【UX-01】

「これからお掃除とお洗濯よ」

 

【木曾】

「皆が夕べの祭りの余韻に浸かってるのに、相変わらず働き者だなぁ~お前は」

 

【磯波】

「この人がユークスさん‥‥イレギュラー艦娘の?誰かにそっくり‥‥」

 

 

肌の色彩がガミラス人特有の青色である事を除けは『雷』そのものと言ってもおかしくないユークスを、何とも言えない感想で見つめる磯波‥‥

 

事実、ユークスは働き者だ、ユークスが掃除・選択など奮闘してくれるお陰で六本脚鎮守府は清潔そのものだ、ユークスがいなければ鎮守府の土台は機能しなくなるだろう、『内助の功』とは彼女の為にある言葉‥‥とは決して言い過ぎではないだろう

 

 

【UX-01】

「司令官と秘書艦の夜戦(意味深)もそろそろ一段落するでしょうからね、きっと今頃シーツもパンツも、執務室全体が愛液とザーメンでグチョグチョになってるから、全部ぜーんぶ♪私が綺麗にしてあげるわ♪✨」

 

【磯波】

「///‥‥はっ‥‥はわわ‥‥///」

 

【木曾】

「お前!‥‥天使かよ!?流石は『宇宙いちのお世話係』だなぁ」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

ユークスの言った通り‥‥‥

 

執務室の中は、男と女のむせ返るような淫欲の果ての光景が展開していた

 

 

((ズブッ❤‥ズブッ❤‥ズブッ❤‥))

 

【川内】

「‥あっ❤‥あっ❤‥あへっ❤‥‥‥イッ‥‥イクッ❤‥‥」

((ビクン❤ビクン❤ビクン❤))

 

【へたれ提督】

「‥‥うっ‥‥うっ‥‥くうっ‥‥」

 

((パンッ❤パンッ❤パンッ❤))

 

 

川内はへたれ提督に犯され続けながら何度も何度も達した‥‥

その間もへたれ提督は川内を犯し続ける‥‥‥

 

 

((ズブン!❤‥ズブン!❤‥ズブン!❤‥))

 

【川内】

「‥あっ❤‥あっ❤‥あぐっ❤‥‥てっ‥‥てい‥とく❤‥‥あた‥し❤‥‥いま‥‥イッてるから❤‥‥ちょっとまっ‥‥あっ!❤‥ああっ!❤‥‥まっ❤‥‥また❤‥‥またイクッ!❤‥‥」

((ビクン❤ビクン❤ビクン❤))

 

【へたれ提督】

「‥‥うぐっ‥‥ぐっ‥‥おおっ‥‥」

 

((パンッ❤パンッ❤パンッ❤))

 

【川内】

「‥あっ❤‥ああっ❤‥‥もう❤‥‥‥イッ‥‥イックゥゥゥ~~❤‥‥」

((ビクン❤ビクン❤ビクン❤))

 

 

昨夜、日付が変わった直後から現在に至るまで、二人の夜戦(意味深)はノンストップで続いていた、そのため執務室の中は無茶苦茶になっていた

 

ベッドのシーツはボロボロで愛液とザーメンまみれ、執務机やソファーや壁にも怪しい液体が飛び散っていた

文字通りむせ返るような男と女の情事の匂いが濃厚に充満した執務室、他の誰かが入ってきたらその匂いだけで卒倒してしまうだろう

 

 

【へたれ提督】

「‥‥うぐっ‥‥川内っ‥‥俺‥‥カラカラに干上がりそう‥‥」

 

((パンッ❤パンッ❤パンッ❤))

 

【川内】

「‥あっ❤‥あうっ❤‥‥てっ‥‥提督❤‥‥‥アタシも❤‥‥オマ〇コ❤‥‥こわれ‥‥こわれりゅうぅぅぅ~~❤❤」

((ビクン❤ビクン❤ビクン❤))

 

 

 

二人はようやく今回のイベントのフィニッシュを迎えようとしていた

川内はへたれ提督に突かれるたびに局部から愛液が溢れ出してきて、履き替えたばかりのずらされたパンツを濡らしていく、ベッドの周囲には、履いては脱ぎ捨てたパンツがいくつも散乱していた

 

 

【へたれ提督】

「‥‥うああっ!‥‥出ちゃう!‥‥でっ‥‥出るぅ!」

 

((パンッ❤パンッ❤パンッ❤))

 

((ズブン!❤‥ズブン!❤‥ズブン!❤‥))

 

【川内】

「‥‥提督❤‥‥だっ‥‥出して❤‥‥アタシのオマ〇コの中に❤‥‥いっぱい‥‥出してぇ!❤‥‥提督大好き❤‥‥あっイクッ!❤❤‥‥」

((ビクン❤ビクン❤ビクン❤))

 

【へたれ提督】

「‥‥川内ぃっ!!‥‥大好きだあ!!‥‥‥うぐあっ!!!」

 

((ドピュッ! ドピュッ!))

 

【川内】

「‥あっ!❤‥‥なか❤‥‥出されたぁ❤‥‥」

 

((ビュルルルルルルル~~!!))

 

【川内】

「アーーーーー!!!❤❤‥‥イックゥゥゥーーー!!!❤❤❤」

((ビクン❤ビクン❤ビクン❤ガクン❤ガクン❤ガクン❤))

 

 

大量射精!!子宮の壁に激突する精液!!

 

昨夜から何度も射精している筈なのに、その勢いと量は衰える事は無かった

肥大した男のシンボルから大量の白濁液が、小柄な軽巡艦娘の体内に注がれていく

 

 

((ドクン! ドクン! ドクドク‥‥))

 

【へたれ提督】

「‥‥うっ!‥‥うぐっ‥‥‥絞り取られる‥‥川内ぃ‥‥」

(ヒクッ‥‥ヒクッ‥‥ヒクッ‥‥)

 

【川内】

「‥‥ハアッ❤‥‥ハアッ❤‥‥奥までぇ❤️‥‥注がれてりゅゥゥゥ~~❤‥‥てっ‥‥提督ぅぅぅ❤❤❤」

((ヒクッ❤‥‥ヒクッ❤‥‥ヒクッ❤‥‥❤ガクン❤ガクン❤))

 

 

‥‥ドロォ~~‥‥

 

 

【川内】

「‥‥あーー❤‥‥溢れ‥出ちゃう❤‥‥あんなに‥‥いっぱい❤‥‥出たのに❤‥‥しゅごい❤‥‥あっ‥あったかい❤‥‥」

 

 

子宮と膣の中から溢れ出した精液が結合部から流れ出して、シーツとパンツを汚していく‥‥‥

 

ぐったりしながらもお互いの身体を重ね合わせ、合体したまま抱き合うへたれ提督と川内‥‥

二人はとっくに体力の限界を越えていたが、お互いを求め合う性欲には限界が無かった‥‥らしい、朝が来て日が昇り、他の皆が目覚めて活動を始めたここに来てようやく、長かった夜戦がフィニッシュを迎えた…筈だった

 

 

【へたれ提督】

「‥‥ううっ‥‥うぐっ‥‥‥川内ぃ‥‥愛してる‥‥」

 

 

へたれ提督は川内をベッドに押し倒してから永遠と犯し続けた、これまで数限りなく繰り返されてきた夫婦の営みではあったがこの興奮は冷める事は無い、むしろ彼女を求める性欲は強くなるばかり、何度抱こうとも何度犯そうとも何度射精しようとも全然足りないのである

勿論こんな気持ちを抱けるのは川内以外に存在しない、これも謎鎮軍団が評価した『純愛』の形の一つなのかもしれない

 

川内もへたれ提督を抱きしめて離さない、へたれ提督の頭を撫でながら‥‥

 

 

【川内】

「‥‥提督❤‥‥とっても‥‥気持ち良かったよ❤‥‥ありがとう❤‥‥お疲れ様❤‥‥提督大好き❤‥‥」

 

 

と労うのも忘れない

 

川内もへたれ提督を求め続ける『一人の雌』と化していた

 

12回シャワーを浴び

13回パンツを履き替え

14回へたれ提督に中出しされ

1500回も達した

 

へたれ提督専用の完全な『セックスフィギュア』がここに降臨した

履いては脱ぎ捨てられた多数のパンツはこうしてベッドの周辺に散乱する事になった

 

 

二人はお互いの身体に貪り付き、愛撫し、腰を打ち付け合い、射精し、それを受け止めた、それをただ何度も繰り返し、そのまま朝を迎えた

今日は二人の記念日、非番である、二人はこのまま泥の様に眠りにつくのであろう

夜食に用意した『鰯団子』は結局一口食べただけでそのままだ

 

 

 

執務室の一角に置かれた写真立て‥‥

その中には、一枚だけ残った横須賀時代の写真が納められていた

 

二人が苦難の時代を過ごした『勝浦の監視所』の玄関前で撮影された集合写真

集合写真と言っても映っているのは三人だけだが

 

 

『見習い士官時代のへたれ提督』と『まだ海軍の艦娘だった頃の川内』

そしてその二人に挟まれて笑顔で映っているのは‥‥‥

 

 

『駆逐艦娘、磯波』

 

 

まだ車椅子を使わず、自分の足で立っていた頃の磯波であった

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

【磯波】

「司令官‥‥川内さん‥‥お二人共元気そうで本当に良かった♪待っていて下さいね、磯波は必ず自分の足で‥‥立ち上がって見せますから♪」

 

【木曾】

「その意気だぜ♪」

 

 

執務室の中がそんなエロの惨状になっているのを知ってか知らずか、外の二人はただ、執務室の窓を見上げるのであった‥‥‥

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

同時刻、長野県警、石ノ森鎮守府資料室‥‥‥

 

 

アンノウンとの戦いに明け暮れる警察組織は24時間体制だ、早朝だろうと夜中だろうと出撃する事も珍しくない、アンノウンが警察の都合なんか考える訳もないからだ

 

 

【大井(石ノ森)】

「悪い噂は絶えませんが‥‥どれも噂ばかりで決定的な証拠というのはありませんね‥‥」

 

【妙高(石ノ森)】

「何でも構わないわ、何か『あの男』の秘密に繋がる情報でもあれば‥‥‥」

 

【足柄(石ノ森)】

「出来れば何か‥‥確実な弱点を衝ける情報が欲しいわね」

 

 

【羽黒(石ノ森)】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

石ノ森鎮守府の資料室には、世界中のネットワークや連邦のデータベースに接続可能な端末が置かれている

その資料室に複数の所属艦娘が集まって何かの情報収集を実施していた

 

 

【長門】

「お前達、職務に影響しない程度にしておけよ、あまり深く関わり過ぎるのもどうかと思うぞ?あの男、あれで中々用心深いからな」

 

 

その艦娘達のある意味執念のようなものに、同席していた『長門』は、少々あきれ顔でやんわりと釘をさす

 

本格的な調査‥‥という訳ではないが‥‥ここ『石ノ森鎮守府』の中では所属艦娘達が、ある『謎』の『男』の情報を収集しようと躍起になっていた‥‥‥

 

 

 

【那智(石ノ森)】

「叩けば埃は幾らでも出てくる‥‥と思っていたのだが‥‥中々尻尾が掴めんな、どれもこれも殆どは当てにならない荒唐無稽な噂話ばかりだ」

 

 

尻尾が掴めないのは当然だ、そもそもそれらの噂話は所詮噂話に過ぎない、そしてその噂話の殆どが、一部の事実を誇張し、ねじ曲げ、捏造された、悪意と敵意によって作り出された虚像に過ぎないのだから

 

 

【足柄(石ノ森)】

「火の無い所に煙は立たないわ!これだけの悪い噂がたっているんだもの、何か在る筈よ!あの男の弱点に関する手がかりがね!」(ギリッ!)

 

【羽黒(石ノ森)】

「あっ‥‥あの~‥‥」

 

 

 

弱点‥‥つまり『あの男』を法的に追い詰める為の決定的証拠を何とか探り出そうとする艦娘達

 

そんな敵意むき出しの姉妹達の中でただ一人、羽黒だけは姉達や長門・大井の考えに疑問を感じた

 

そもそも、こんな事をして一体何になるのか?

 

 

【羽黒(石ノ森)】

「もう‥‥こんな事止めにしませんか?」

 

【足柄(石ノ森)】

「どうしてよ?未遂に終わったのは不幸中の幸いとはいえ、あいつはあんたに酷い事をしたのよ!?犬畜生にも劣る卑劣なやり方でね!」

 

【羽黒(石ノ森)】

「いえ!‥‥だからそれは!‥‥」

 

【那智(石ノ森)】

「羽黒よ、辛い過去に蓋をしたい気持ちはわからなくもない、だからお前は見ているだけでいい、しかしだ!大切な妹にあんな事をされかけて‥‥おまけに何の処罰もされず奴には逃げられて‥‥私達姉妹がどんな気持ちだったと思う?それで黙っているくらいなら、私は何時だって艦娘を辞めてやる!」

 

【大井】

「私だって‥‥もし北上さんにあんな事をされたら、そう考えただけでも気が狂いそうになりますよ」

 

【足柄(石ノ森)】

「羽黒!あんたの仇はきっと取ってやるわ!ついでに奴に苦しめられた艦娘達の無念も晴らしてみせる!あの男に洗脳された奴の子飼いの艦娘達が邪魔をするなら、まとめてふん縛ってやるわ!」

 

【羽黒(石ノ森)】

「止めてください!足柄姉さん!そんな事‥‥間違ってます!」

 

【足柄(石ノ森)】

「羽黒?‥‥あんた」

 

 

【長門】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

あの羽黒が、辛い出来事で何処かで心を閉ざしていた羽黒が‥‥‥ある日を境に自分の考えをハッキリと発言するようになった

 

それはそれで喜ばしい事ではあるが羽黒に一体何があったのか?

 

長門はそんな事を考えていた

 

 

 

羽黒のあの時の曖昧な記憶は、完全に戻ったのである

ろくでもない将校達に酷い目にあわされそうになった時、何処からともなく現れて羽黒を助けてくれた、当初は『謎の』人物だったあの男‥‥‥

 

本当にタイミングの悪さだけで姉妹達から悪者にされてしまったあの人‥‥‥

それでも決して何の言い訳もせず去っていったあの人‥‥‥

 

ショッピングモールで再び羽黒を助けてくれた時、その声を聴いて全てを思い出した羽黒は、自分の姉妹達や仲間がしようとしている事に堪えられなくなり、ついに声をあげたのであった

 

 

【羽黒(石ノ森)】

「羽黒は‥‥全てを思い出したんです!‥‥羽黒はあの司令官さんに助けられたんです!‥‥そんな人を姉さん達は忌み嫌って‥‥姉さん達が羽黒を心配してくれる事はとても感謝してます、でも‥‥無理矢理あの人を悪役に仕立てるなんて!‥‥そんな姉さん達!羽黒は見たくありません!」

 

【足柄(石ノ森)】

「何いってるのよ!?羽黒!あんたあの野獣を許そうって言うの!?あの男があんたを助けたなんてそんな事!‥‥あの時私達は見たのよ!?よりによって私達の庭であんたがあの野獣に襲われそうになって危機一髪だったところを!」

 

【羽黒(石ノ森)】

「ですから!!あれはたまたまタイミングが悪すぎてそう見えてしまっただけで!!‥‥」

 

【那智(石ノ森)】

「羽黒!あの男にわつまる悪い噂はお前も知ってるだろう?足柄の言う通り、火の無いところに煙りは立たないものだ!その噂が本当ならこれからも多くの艦娘が奴の毒牙にかかる可能性もある!もう我々だけの問題ではないのだ!」

 

【羽黒(石ノ森)】

「そんなの全部!ただの噂じゃないですか!?」

 

【那智(石ノ森)】

「それなら何故!奴は自分の口から否定しない!?我々の嫌疑が誤解であるなら何故!奴はそれを訂正しようとはしないのだ!誓約書一枚で全てを終わらせようとした奴の行動を見れば、何か後ろめたい事があると思われても仕方ないだろう!?」

 

【羽黒(石ノ森)】

「それは本人に聞いて見ないと分かりませんが‥‥羽黒は思います、あの人は自分を悪者にする事で羽黒の辛い記憶を癒そうとしたんです!何も言わず語らず、共通の憎まれ役に徹したまま去っていく事で‥‥私達姉妹の絆を守ろうとしてくれたんです!」

 

【大井(石ノ森)】

「あの下品な男がそんな殊勝な心掛けをもっていると本気で思ってるの?」

 

【羽黒(石ノ森)】

「羽黒はそう信じています!」

 

【大井(石ノ森)】

「貴女を襲った真犯人が他に居たなら、そいつを差し出せば済む話じゃない?何で自分から疑いをかけられる様な行動を取るのよ?」

 

【羽黒(石ノ森)】

「そこは何か事情が有るんだと思います‥‥本当の犯人から酷いことを自白されて羽黒が傷付くくらいなら、いっそ憎む対象を自分にする事で羽黒の心を守ろうとしてくれたんだと‥‥その為に何も言えないんだと‥‥」

 

【大井(石ノ森)】

「何ですか?それ?どんなお人良しでもそんな事出来ませんよ!」

 

【足柄(石ノ森)】

「ねえ羽黒、別の情報だとあの男、他人の記憶を改ざんする能力をもっているって言うじゃない?本来ならにわかには信じられない事だけどあの男ならやりかねない!変態的な能力を持っている事は間違いないんだから‥‥あんたはあの男に記憶を都合よく改ざんされて騙されているのよ!」

 

【羽黒(石ノ森)】

「ちがう!!ちがう!!ちがう!!!そんなんじゃないーー!!!」

(バアァーーーン!!!)

 

 

羽黒の思わぬ反応に一同は驚いた

 

 

【羽黒(石ノ森)】

「どうして!‥‥どうして皆さん分かってくれないんですか!?

この鎮守府の皆さんが他人を疑り深くなってしまう気持ちは羽黒にも分かります‥‥昔の石ノ森鎮守府は本当に酷くて‥‥でも羽黒は騙されてなんかいません!ヒィッツ司令官さんはそんな酷い人じゃありません!

あの人は確かに何も言わずに去ってしまいました、でも!‥‥羽黒も含めてこの鎮守府の誰もが!‥‥あの人の話を一度だってまともに聞こうとしなかったじゃないですか!!」

 

 

確かに羽黒の言う通り、相手がヒィッツカラルドというだけで話をまともに聞く耳を持たなかったのは石ノ森の側であった、しかしそれにも理由はあった

 

一条提督が着任する前のここは完全なブラック鎮守府であった、その結果彼女達の多くは一時期、人間不振となってしまった

だから一度でも悪い噂が立つと、その対象にどうしても評価が厳しくなってしまう

着任直後の一条提督や『五代 雄介』もその例外ではなかった

 

一条提督が司令官となり、警察機構の一員となった現在でもその影響は彼女達の中に残っている、ましてや羽黒は素直な分一番辛いおもいを強いられた筈だ

そんな筈の羽黒からヒィッツカラルドを擁護(ようご)するような発言が飛び出すとは?‥‥

 

 

【長門】

「羽黒‥‥やっぱり変わったな」

 

 

足柄の指摘は半分は当たっていたが、もう半分は偏見からくる推測でしかない

羽黒は机を叩いてそれに抗議した、もはやそこには怯えてビクビクしていたかつての羽黒は存在しなかった

 

羽黒は自分の信念を持って話している‥‥長門はそれだけは評価したかった

ヒィッツカラルドに対する考え方の相違は別として

 

その時、それまで黙ってやり取りを見ていた長女が口を開いた

 

 

【妙高(石ノ森)】

「羽黒、貴女の気持ちは分かったわ、でもね羽黒、百歩譲って貴女の思ってる事が事実だとしても、あの男‥‥ヒィッツカラルドは危険な男よ?あらゆる意味でね」

 

【羽黒(石ノ森)】

「妙高姉さん‥‥‥」

 

【妙高(石ノ森)】

「勘違いしないで欲しいの、私達はね、何もあの男を落としめようなんて考えてる訳では決して無いのよ?ただ真実が知りたいのよ、私達の大切な妹があんなおもいをしたのに誓約書一枚で全ては闇に葬られてしまった‥‥私達には二度と直接関わらないと言って何も語らずただ黙って去っていくだけ‥‥こんな事で私達が納得出来ると思う?」

 

【羽黒(石ノ森)】

「そっ‥‥それは‥‥」

 

【妙高(石ノ森)】

「羽黒、貴女はあの男に関わっては駄目よ、危険過ぎる、私達も決して軽率な行動はしない、少なくとも悪意を持って適当な噂話をばらまく様な醜態は絶対にしないから、それだけは安心して?」

 

【羽黒(石ノ森)】

「‥‥はい、分かりました」

 

【妙高(石ノ森)】

「羽黒‥‥貴女は相変わらず優しい娘ね、それに強くなった」

 

【羽黒(石ノ森)】

「‥‥姉さん‥‥」

 

【妙高(石ノ森)】

「私もあの男を信用してる訳ではないけど、羽黒がこんなに強くなった事だけはヒィッツカラルドに感謝してもいいのかもね♪」

 

【足柄(石ノ森)】

「妙高姉さん!?何言ってるのよ!?」

 

 

【長門】

「お前達、そこまでだ!」(パンパン)

 

 

 

これでこの話はもうおしまいだと、長門は手を叩いた

 

 

【長門】

「お前達、羽黒の気持ちも汲んでやれ、あのヒィッツを疑うなとは言わん、私も奴に対する判断は今のところ何とも言えんからな、しかし妙高も言った通り軽率な行動だけはしてくれるなよ?」

 

 

妙高以外の一同は完全に納得はいかないものの素直に頷いた‥‥‥

その時、検索を担当していた大井が声をあげた、これで話の流れが大きく変わった

 

 

 

【大井(石ノ森)】

「‥‥ちょっと待って!‥‥何?この添付画像?」

 

【長門】

「どうした?大井?」

 

 

『海特警』のホームページや『海特警』の検索結果を細かく調べていた大井は、つい先ほどアップされたばかりの動画映像を見つけた

別の文書に添付されていたので目立たなかったが、今朝になって再生回数が伸びている

 

 

【大井(石ノ森)】

「昨夜‥‥10月30日に日付が変わった直後に投稿された映像です、海特警の関係者に関する情報を検索してたら偶然見つけて‥‥」

 

【長門】

「何だ?ヒィッツか海特警の関係者が画像を掲載したのか?何か気になる事でも?」

 

【大井(石ノ森)】

「‥‥‥いえ、これはおそらく外部からの投稿動画です、ホームページでは無くて検索一覧に直接投稿されてます、それよりもこの映像‥‥何だか変なんです」

 

【長門】

「変とは?‥‥うん、この風景‥‥横須賀か?少し前の‥‥」

 

【足柄(石ノ森)】

「どうしたの?何が映ってるの?」

 

 

 

何者かによって外部から投稿された動画‥‥‥

 

投稿された動画には土砂降りの大雨が降る広場が映し出される

 

背後に見えるのは横須賀鎮守府帯‥‥暗く風景も霞んでいるが間違いなく数年前の横須賀鎮守府帯が背景に映っている

『海上メガフロート都市、ヨコスカ』が就航してから横須賀鎮守府帯の風景は大きく変わったからその違いがよくわかる

 

だがその動画の問題(異常性)はそこではなかった

 

 

【羽黒(石ノ森)】

「‥‥‥なに‥これ‥‥」

 

 

その異常性に羽黒も言葉を失う‥‥‥

 

 

映し出された映像の中では、一人の男が大雨の中を走り回っている、しかも全裸で

 

御丁寧にコミカルなBGMと効果音とナレーションが付いていた、まるで子供向け番組か無声のコメディー映画に音入れをしたような‥‥‥

それが返ってこの動画の異常性を増幅させていた、狂気と呼んでもいい

 

 

画面に映っていた男の背中には『焼けただれたような大きな傷痕』があった

それを見て長門が気付く

 

 

【長門】

「‥‥この男はヒィッツでは無いな‥‥しかし、何処かで見覚えがある‥‥」

 

 

長門は以前、確かにこの男に会った確信がある、しかし誰であったか‥‥

だがそれ以上に問題だったのはその編集であった、そこには悪意が満ちていた

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

(ホンワカホンワカ~♪ドス、ドス、ドス)

【ナレーション】

うひょひょ~~い♪僕ちゃん臭くて汚くて醜い『ゴミ虫』ちゃんで~す♪

とっても偉くて立派な人に逆らって悪いことをしたから罰を受けてま~す♪

 

僕ちゃんなんて生きてる資格もない害虫なのに~、おまけに悪いことまでしちゃいました~♪だからこうやって反省してるんだよ~?皆も僕みたいに悪いことをしたら罰を受けようね~♪ああ偉い人間様~、ゴメンちゃいゴメンちゃい♪

 

 

(バッシャーーン!プ~~ン♪ワハハハ~~♪WWW)

 

わ~~ん(泣)ウ〇コをかけられちゃったよ~(泣)でも今の僕にはお似合いだよ~♪だって僕はウ〇コよりも臭くて汚い役立たずだから~、ああくちゃいくちゃい♪

おまけに食べちゃったよ~♪僕ってオオバカ~(泣)

(♪ワハハハ~~♪WWW)

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

【那智(石ノ森)】

「うっ!‥‥なんだ!‥この不快な動画は!?」

 

【大井(石ノ森)】

「気持ち‥‥悪い‥‥」

 

 

それは悪意と何かしらの憎悪しか感じられない酷い映像であった、こんな物を投稿した者の神経がここにいる艦娘達には理解出来なかった

誰がこんな動画を作ったのかは知らないが、何故昔の横須賀鎮守府帯が舞台になっているのか?

制作者はこの人物に何か恨みでもあるのか?

 

 

その時、画面の中で複数の水柱と泥柱が上がった、銃撃だ!

何発かが男の傷だらけの背中に命中する

 

 

【羽黒(石ノ森】

「ああ!?撃たれた!!」

 

 

男は明らかに銃撃され、弾丸が背中に何発か命中した

しかし動画の中のナレーションは男に容赦がない

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

【ナレーション】

ぴえ~~ん(泣)痛いよお~~、僕ちゃん弱虫のゴミ虫だから泣いちゃう~

だけどしょうがないよね~~?僕は偉いえらい人間様に逆らった悪者なんだから

 

人間様あ~~♪どうかこんな汚くて醜い僕ちゃんをもっとお仕置きしてください~~♪もっとクソまみれにしてください~~♪もっと穴だらけにしてください~~♪それが僕ちゃんの本当の姿なんです~~♪とってもえらい人間様にお仕置きされて僕ちゃんは‥‥‥

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

【那智(石ノ森)】

「‥‥‥止めろ!!」

 

 

【大井(石ノ森)】

「‥‥はっ?」

 

【那智(石ノ森)】

「この糞忌々しい糞動画を今すぐ止めろ!!!不愉快だ!!!」

 

【大井(石ノ森)】

「はっ!‥‥はい!!」(カチッ)

 

 

 

那智に大声でどやしつけられ大井は我に返った、すかさず動画再生を止める

 

動画‥‥と呼ぶには余りにもおぞましい光景にそこに居た全員は心底気分が悪くなった

 

 

【足柄(石ノ森)】

「何なのよこれ!?ヒィッツの奴!!悪趣味にも程があるわ!?」

 

【羽黒(石ノ森)】

「足柄姉さん!!まだそんな事言うんですか!?」

 

【大井(石ノ森)】

「足柄さん‥‥さっきも言いましたけど、これは外部から投稿された‥‥」

 

【足柄(石ノ森)】

「だからなに!?それで奴が無関係って証明になるとでも言うの!?投稿するだけなら携帯でもネカフェでも何処からでも出来るでしょ!?」

 

【羽黒(石ノ森)】

「ヒィッツ司令官さんが関係してるって根拠も無いじゃ無いですか!!」

 

 

お互い相手にくってかかる足柄と羽黒

そこに長門が割って入る

 

 

【長門】

「お前達!混乱する気持ちは分かるが先ずは落ち着け!」

 

 

すかさず妙高がフォローを入れる

 

 

【妙高(石ノ森)】

「ねえ足柄?今回ばかりは羽黒の言う通り、ヒィッツカラルドの仕業と決め付けるのは乱暴に過ぎると思うわ、何の証拠も無い訳だし」

 

【足柄(石ノ森)】

「それは‥‥そうかも知れないけど!」

 

【妙高(石ノ森)】

「ヒィッツカラルドの仕業の可能性を考えてもこれは悪質過ぎるわ、私としては海特警そのものか、あるいは海特警の関係者に恨みを持つ何者かの仕業と考えた方がしっくり来るわね」

 

 

【長門】

「海特警に対する恨みか‥‥ではこの動画の中の人物も‥‥」

 

 

 

【一条 薫】

「皆さん、何を見ているんですか?」

 

【長門】

「おっ!?提督!」

 

 

 

騒然とする資料室に一条提督が突然現れた

というより長門達の会話と羽黒の絶叫を聞き付けてやって来たのである

 

 

【一条 薫】

「羽黒君、大丈夫か?何か物凄く興奮していた様子だったが?」

 

【羽黒(石ノ森)】

「‥‥へっ?‥‥///ひゃあ~~Σ┗(○д○lll)┛!?///」

 

 

自分の大声が一条に筒抜けだったと理解した羽黒は、我に返って赤面した

同時に一条は彼女達がここで何をしていたのかおおよそ見当がついた

 

 

【一条 薫】

「海特警のヒィッツカラルド提督の事を調べていたのですか?」

 

【足柄(石ノ森)】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

足柄をはじめ、そこに居た全員が押し黙る、一条提督には見透かされていたのだ

 

 

【一条 薫】

「正直、あまり感心できませんね、今は皆さんに何を言っても無駄かも知れませんが、ヒィッツカラルド提督は皆さんが考えているような人物ではない‥‥私はそう考えています」

 

【長門】

「提督!済まんが今はそれよりも‥‥この画像を見てくれ!」

 

【一条 薫】

「どうしました長門さん?、画像とは?‥‥‥」

 

 

一条は長門に促されて、一次停止状態の動画を確認する

 

 

【一条 薫】

「‥‥!?これは!‥‥」

 

 

停止状態の動画にもかかわらず、一条はその動画が何なのか瞬時に理解した、その中に映り込んでいる全裸の人物も‥‥‥

 

 

【一条 薫】

「これは!‥‥母里さん!!」

 

【長門】

「母里?‥‥そうか『母里 正』だ!何処かで見たことがあると思ったら、提督も言っていたあの人物ですね、私も個人的に会った事があります

ヒィッツカラルドから言伝で初めて名前を知りましたが‥‥提督はやはりこの男とお知り合いなのですか?」

 

 

そう、そこに映っていた、大雨の中を全裸で糞尿まみれで銃撃までされたこの男は紛れも無い、横須賀時代の『へたれ提督』その人であったのだ

 

 

一条提督がこの画像を見て直ぐに判断出来たのには理由がある、何を隠そう一条はこの動画を以前に見たことがあったのだ

 

あれは数年前、『へたれ提督』と『川内』の無実を証明する為の裁判や調査会で何度か映像を流されたのをこの目で見た、それは正直気分の悪いものであったが、二人に向けられた悪意がいかにたちの悪いものであったか何よりの証明であった

 

あの裁判では一条も何度が証人台に立って発言したからよく覚えている、それをこんなタイミングでまた見せられるとは‥‥‥

 

だが問題の本質はそこには無いと一条提督は直ぐに気付いた

 

 

【一条 薫】

「‥‥大井さん‥‥この動画はいつ投稿されたものですか?」

 

【大井(石ノ森)】

「昨夜‥‥日付が変わって直後に投稿されました」

 

【一条 薫】

「日付が変わった直後に投稿された‥‥‥今日は10月30日‥‥」

 

 

一条提督は警察官の思考で考えを一巡させた、そして理解した

 

 

【一条 薫】

「そういう事か‥‥あのチンピラめ!!!」

((ガッシャーーン!!!))

 

 

【羽黒(石ノ森)】

「ひゃい!!?」(ビクッ)

 

【長門】

「提督!?どうしたのですか!?」

 

 

いつもどんな時も冷静で穏やかな一条 薫が珍しく激高した

一同はその様子に驚いた、一条提督がここまで感情を剥き出しにする事など殆ど見たことが無かったからだ

 

 

【一条 薫】

「大井さん!この投稿主が誰なのか、追跡出来ますか!?」

 

【大井(石ノ森)】

「追跡ですが?‥‥(カチャカチャ‥‥)‥‥ここの装備では難しいですね、これ海外のサーバーを経由してますから、でも鴨上ファウンデーションから譲渡された有機系コンピュータを使えば‥‥」

 

【一条 薫】

「ならば直ぐにかかって下さい!警視庁鎮守府と羽田税関には私から許可を取ります!」

 

【大井(石ノ森)】

「わっ!‥‥分かりました!」

 

【一条 薫】

「妙高さん!」

 

【妙高(石ノ森)】

「何でしょうか!?提督!」

 

 

一条の指示に大井は素早く動き出した、妙高も一条提督の様子からただ事ではないと悟り、瞬時に気持ちを切り替える

 

 

【一条 薫】

「この動画は、昔起こったある軍内部の違法行為に関わる重大な証拠映像なんです!つまりこれは外部に漏らしてはならない映像なんです!それが流出したと言う事は重大な機密漏洩に加えて物証を無断で持ち出した窃盗行為にも当たる!」

 

【妙高(石ノ森)】

「分かりました!直ちに関係各所に連絡して捜査体制に入ります!一般流出した動画の削除も必要ですね?」

 

【一条 薫】

「はい!お願いします!」

 

【妙高(石ノ森)】

「お任せください!こちらも各機関に協力要請して、拡散された可能性のある動画も削除させます!何処まで出来るか分かりませんが」

 

【一条 薫】

「分かっています!出来る限りお願いします!」

 

 

これが別の誰かに拡散されたらそれを全て削除する事は難しい、それは一条にも分かる、しかし今は可能な限り動かなければ!

 

一条の指示を受けた妙高は素早く資料室から駆け出していく

 

 

【足柄(石ノ森)】

「提督!貴方は事情を知ってるみたいだけど、とりあえず説明は後で良いわ!それよりも私達は何をすれば良いの!?」

 

【一条 薫】

「助かります!足柄さん、それと那智さんに羽黒君!皆さんは何時でも出撃出来るように万全の準備をお願いします!この投稿主は放ってはおけない!絶対に検挙しなければいけまけん!しかし相手が何者か分からない以上万全の体制を整えておかなければならないでしょう!」

 

【那智(石ノ森)】

「任せておけ提督!こんな不愉快なものを朝から見せられたのだ!犯人を野放しにしてたまるか!!」

 

【羽黒(石ノ森)】

「羽黒も!‥‥頑張ります!」

 

【足柄(石ノ森)】

「みんな!行くわよ!」

 

 

三人は勢いよく資料室を飛び出した

 

石ノ森鎮守府は警察機構、24時間体制だ

こうしている間も『揚陸深艦』や『アンノウン』の脅威には常に備えなければならない、そんな鎮守府にとって妙高型姉妹は貴重な戦力だ、勿論大井も

 

しかし一条提督はあえて、妙高型姉妹の四人と大井に動いて貰う事にした

有機系コンピュータの扱いに慣れた大井なら犯人を素早く特定してくれるだろう

(第29話『ゲザン!東京さ行くだ!』参照)

 

妙高型姉妹については、あんな悪質な動画を見せられたのだ、自分達が動き、自分達が犯人を捕まえなければ気が済まないだろう

 

 

【一条 薫】

「さて、長門さん‥‥」

 

【長門】

「提督、分かっている、海特警への通報とヒィッツとの情報交換であろう?そちらは任せてくれ」

 

【一条 薫】

「ありがとうございます、助かります、ですが良いんですか?」

 

【長門】

「構わんさ、提督にはこの鎮守府の機能を維持させる責務があるし、この鎮守府で奴とそれなりに話が出来るのは私くらいのものだろう?」

 

【一条 薫】

「ありがとう、長門さんならそう言ってくれると思っていましたよ」

 

【長門】

「別におだてなくてもいいぞ?なあ提督‥‥‥」

 

 

長門は一条が珍しく激高した事、あの画像に対する一条の反応が気になった

 

 

【長門】

「詳しい事情は私も知りたいところだが、まあそれは後で良いとして‥‥法を犯した輩にはそれ相応の対処をするとしても、それ以上に提督が個人的に躍起になっているのはこの『母里 正』の名誉を守る為か?知り合いであるならまあそれは当然だが‥‥」

 

【一条 薫】

「確かにそれもあります、ですが母里さんはおそらくこれを見ても少々溜息をつくだけで笑って済ませるでしょう、根は心の広い人ですから、ですが、彼の秘書艦はそうは行きません」

 

【長門】

「秘書艦とな?確かあの時聞いた‥‥‥」

 

 

ヒィッツカラルドと謎鎮軍団の参加でハチャメチャになった防犯訓練の後、ヒィッツカラルドからの言付けで聞いた『母里 正』とその秘書艦の名前‥‥‥

長門はその事を思い出した

 

 

【一条 薫】

「母里さんも提督なんですよ、彼にも当然彼を慕う秘書艦がいる、これを見たら彼女はとても傷付くでしょう‥‥言い難い事ですが、この動画を投稿した黒幕はそれが目的なんだと思います」

 

【長門】

「たった一人の艦娘を苦しめる為にこんな事を!?提督は犯人に心当たりがあると言うのか!?」

 

【一条 薫】

「黒幕には心当たりがあります、いえ、こんな事をするのは奴以外に考えられない!ただし実行犯はおそらく奴に雇われた外部の者でしょう、奴はろくでなしだが自分の手を汚さない手法はよく心得ている悪党です」

 

【長門】

「提督が先程言った『チンピラ』とはその黒幕の事か‥‥我々が今出来る事はその黒幕に雇われた実行犯を探してとっちめる事だけか‥‥」

 

【一条 薫】

「ええ、ですが実行犯も同罪です!奴にはそれ相応の報いを受けて貰わなければならない!それにこれ以上、彼女の心を傷付ける事は‥‥」

 

【長門】

「提督の本心は、その秘書艦の心を救う事か‥‥分かった!そういう事なら喜んで協力しよう!‥‥おっと、これは私の仕事だったな」

 

 

たとえ一人の艦娘の為でも、その為に全力で何とかしようという一条提督の心意気に長門は感じ入った

 

長門も自分の役目を果たす為に資料室を後にした

 

 

 

【一条 薫】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

一人残った一条提督は、再生が止まった動画映像を消した、そして大井の犯人特定…後に複数の犯人がいた事が判明する…が完了した時点で投稿動画も添付た文章も、検索項目も削減する事になる

 

 

【一条 薫】

「『三木之 ジャギ』!!私は貴様を人間とは思わん!!貴様はアンノウンにも劣る輩だ!!この対価は必ず払ってもらうぞ!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

六本木鎮守府、執務室‥‥‥

 

 

【へたれ提督】

「‥‥川内‥‥俺だけの‥‥川内‥‥好きだ‥‥ずっと‥‥俺の側に‥‥」

 

【川内】

「‥‥提督‥‥ああ‥‥‥」

 

 

へたれ提督は川内を抱きしめたまま意識が朦朧としているらしい、譫言のように川内への愛の想いを発し続ける‥‥‥

 

 

【川内】

「‥‥提督‥‥アタシは‥‥ここに居るよ‥‥絶対に‥‥離れないから‥‥離さないからね❤‥‥」

(‥‥‥ギュッ❤)

 

 

川内はへたれ提督の背中と頭を優しく抱きしめる‥‥‥

 

 

 

提督‥‥ゴメンね‥‥

 

アタシはあの日の事‥‥忘れた事はない

 

その後で起きた事も‥‥‥

 

あの日‥‥提督を独りで横須賀になんか

 

行かせなかったら‥‥‥

 

アタシが海軍につまらない期待や未練なんか

 

残してなかったら‥‥‥

 

提督はあんな目にあう事は無かった‥‥‥

 

提督が‥‥横須賀中の晒し者になる事なんか

 

無かった!!

 

提督をあんな目に合わせた奴らをアタシは

 

絶対に許せない!!

 

提督のあの姿を見て‥‥鼻で嘲笑っていた

 

海軍の奴をアタシは許せない!!

 

自分自身の不甲斐なさがどうしても

 

許せない!!

 

 

 

【川内】

「‥‥提督❤‥‥大好きだよ❤‥‥」

 

 

 

‥‥もうあんな失敗はしない!

 

提督‥‥貴方はアタシが護ってみせる!

 

アタシの居場所は提督の側だけ‥‥‥

 

この居場所は‥‥誰にも渡さない!

 

 

提督の命は‥‥‥誰にも渡さない!!

 

 

 

【へたれ提督】

「川内ぃぃ‥‥‥もっ‥‥もういっかい‥‥」

 

【川内】

「うん♪❤‥‥いいよ❤‥‥もういっかい❤‥‥しよ♪❤✨」(ニコッ❤)

 

 

 

艦娘の心の傷は、大切なものを守る為の武器にもなる

それは時には諸刃の剣となって自身を傷付ける凶器ともなる

 

 

かつて横須賀の地にて、川内の心の武器(傷)が凶器になりかけた事件があった

その事件とは‥‥‥‥‥

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

【あきつ丸】

「どうでもいいでありますが、プロローグだけで一万九千文字を越えてしまったであります、作者は大丈夫でありますか?」

 

 

分かりません‥‥‥

 

 

 

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【特別回想録10.30】

 

   《ただの女、川内(中編)》

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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NUC.0106年‥‥‥

 

 

見習い少尉(後のへたれ提督)が横須賀のブロック海軍基地に単独で出頭する前日の事‥‥‥

 

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「おいっ!足柄!朗報だ!」

 

【足柄】

「どうしたのよ?提督、朝からやけにテンションが高いわね?」

 

 

横浜の大衆食堂で朝食を取っていたヒィッツカラルド大佐と秘書艦の足柄

心底ムカついた三人の士官の肛門に鉄パイプを突っ込んで、海浜公園に放置してから直ぐの朝食を楽しんでいる時間‥‥‥

 

ここでヒィッツの携帯に連絡が入ってきた、その内容とは‥‥‥

 

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「あの『クロード・スラスト』が大阪に居るらしい!」

 

【足柄】

「クロード‥‥ああ、確かあんたが会いたがってたリンガの提督よね?それが大阪に居たの?」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「実家が大阪にあるらしい、こちらの密偵の情報では実家に立ち寄っているとの事、ともかくこれは絶好のチャンスだ!」

 

【足柄】

「それで?このチャンスとやらでどうする気なのよ?」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「勿論!今から会いに行く!早くしないとリンガに戻ってしまうかも知れないからな!」

 

【足柄】

「慌ただしいわね、まあ良いけど、でもここで朝ごはんは食べて行くわよ?」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「ええっ‥‥‥‥」(思わずビックリ)

 

【足柄】

「腹が減ったら勝利は掴めないわよ?♪」

 

 

【足柄】

(大阪から戻って来る間、少し間が開くけど二、三日なら大丈夫でしょ)

 

 

朝食後、ヒィッツカラルドと足柄は大阪に向かった、しかし新大阪駅である人物に出会ってしまったお陰でクロード・金剛ペアとは入れ違いになってしまい、初対面はならなかった

 

そしてこの二、三日の間にとんでもない(一部の人にとって)事件が起こるのである

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

補給部の室内は荒れていた

 

 

 

【三木之 苗夫】

「くそったれぇぇぇ!!!どいつもコイツも役立たずがあああ!!!」

(ガッシャーーン!!)

 

 

【大東 裕之】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【玉林 宏】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【五階 務】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

今朝、海軍病院から戻ってきたばかりの三人は憲兵の聴取を一通り終えた後、この部屋の主に呼び付けられて、更にボロクソにどやされていた

 

 

【三木之 苗夫】

「大の男が三人もいてよ!!何でクソ艦娘の一人もブチ犯してこれなかったんだよ!!!」

 

【大東 裕之】

「それが‥‥途中で邪魔が入りまして‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「それがどうしたぁぁぁ!!!」

 

【玉林 宏】

「『ヒィッツカラルド』とか言う見たこともない大佐が割り込んで来たんですよ、いきなり天井から降ってきて‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「訳のわからねえ事言ってんじゃねえぇぇぇ!!!テメェら俺をナメてんのか!!?」

 

【五階 務】

「本当なんすよ~、おまけに『足柄』とか言うえらい狂暴な艦娘まで現れて‥‥あいつに殴られた時マジで死ぬかと思ったんすよ~、あいつらメチャ強くて‥‥俺達裸にされてボコられた挙げ句に鉄パイプをケツに突っ込まれて海浜公園に放置されたんすよ?」

 

【玉林 宏】

「相手は帝国海軍の大佐って言うから、我々も逆らう事は出来ないし、おまけにあの大佐‥‥自分達に全く容赦無かったんですよ?俺なんか全部差し歯にされて‥‥自分達も生きてるのが不思議なくらいで‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「テメェら俺の名前を使ってたんだろうが!!!横須賀で俺の名前を聞いたら相手がビビらねえ訳がねえ!!それで失敗したのはテメェらが無能だったからじゃねえかぁぁぁ!!!」

 

【五階 務】

「いやそれが、相手はぜんっぜんピビらなかったんすよね~」

 

【三木之 苗夫】

「なにいぃぃぃ!!!んな訳あるかぁぁぁ!!!」

 

【大東 裕之】

「‥‥あんたのネームバリューなんて所詮この程度だったんじゃ?(ボソッ)‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「おいテメェ!!!今何か言ったか!!?」

 

【玉林 宏】

「おっ‥‥お言葉ですが三木之様‥あの『ヒィッツカラルド』という大佐は正体不明の男なんですよ!自分でも調べましたが何とも『謎』が多くて‥‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「言い訳するんじゃねよ!!!テメェらの存在価値なんざ俺の役に立つかどうかってだけだろうが!!!

俺の名前と金を使って好き放題してきたテメェらのたったひとつの存在価値だろうが!!!俺の役に立たねえならテメェらの悪事をばらまいて地獄に堕としてやるぞ!!!」

 

 

この三人をそそのかして悪事を働かせた張本人が、誰よりも悪事を働いてきた張本人が何をか言わんや!である

 

 

【玉林 宏】

「奴は三木之様が思ってるよりもはるかに恐ろしい奴ですよ!決して油断する事は出来ないかと‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「‥‥俺に口答えするな!!死にてえか!?この書類野郎!!テメェの価値なんざ本部で書類を弾く事しかねえ事を忘れるんじゃねえよ!!」

 

【玉林 宏】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

【大東 裕之】

「それよりも三木之様!!俺達の仇をとってくださいよ!!」

 

【三木之 苗夫】

「ああ~~?何の話だあ~~?」

 

【大東 裕之】

「俺達!三木之様の為に死にそうなおもいをしたんですよ!士官としての本来の任務ならまだしも‥‥三木之様の個人的な命令で!」

 

【三木之 苗夫】

「テメェ‥‥何が言いたい?」

 

【大東 裕之】

「あなた個人の恨みを晴らす為に、命懸けで事に当たった俺達の仇をとって欲しいって言ってるんですよ!俺なんか鼻の骨まで折られたんだ!おまけに鉄パイプが肛門に刺さった状態で野外に放置されたんですよ!俺達の醜態は横須賀中に広がるでしょう!俺達、中佐の為にこれ程の屈辱を受けて‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「うーーるせえぇぇぇ!!!」

(ガッシャーーン!!)

 

 

珍しく下僕に反論されて三木之はキレた、三木之の感覚では相手が自分に反論する事自体ありえない事なのだ

自分の下した命令で酷い目にあった部下を労う思考は三木之には全く存在しない

全ての他人は自分の役に立って当たり前、それ以外は存在価値の無いクズなのである

 

 

【三木之】

「テメェらが生きていられるのは俺のお陰だって事忘れるな!!!テメェらは黙って俺だけの命令に従っていれば良いんだ!!!テメェらの仇だぁ!?知るかそんな事!!!なんでこの俺がテメェら下僕共の敵討ちなんかしなくちゃならねえんだよ!!!テメェの恨みくらいテメェで何とかしろや!!!」

 

 

【大東 裕之】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【五階 務】

「‥‥はあ~~、結局はこうなるのね」

 

【玉林 宏】

「(あんたは個人的な恨みを晴らす為に、俺達を散々こき使っているじゃねーか!)」

 

 

三木之が下僕の仇なんて取ってくれる訳がない、重要なのは自分の感情を満足させる事だけだ

自分の復讐を他人に肩代わりさせてる三木之に期待しても無駄だった、三人は落胆した、落胆はしたが自分達はこの男の金と権力で虎の威を借りて来たのも事実だ、自分達がこの男から逃れられないのも‥‥‥

 

 

【三木之 苗夫】

「おい!!書類野郎!!必要な物は用意出来たのか!?」

 

【玉林 宏】

「‥‥はい、一通りは、民間から徴用した衛生車も午後には準備出来ます」

 

【三木之 苗夫】

「まだ全部来てねえのか!?ケッ!!本当使えねえなあ!!この紙屑野郎!!」

 

【玉林 宏】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

玉林 宏‥‥‥ブロック海軍中尉であるこの男

 

ブロック海軍軍令部付きの一応キャリア組で、海軍で必要な資料や書類(新宇宙世紀になっても書類とは)の作成・管理に携わっている

この役職を利用して、後に三木之の命令で偽の命令書を偽造して発行させた

 

この時発行された偽の命令書がへたれ提督と川内の運命を大きく変える事になる

 

後の裁判で手の平を返し、命令書偽造を含む三木之の悪事を証言しまくる事になるのだが、その芽はこの時から芽生えていたのかもしれない

 

 

 

【三木之 苗夫】

「いいか!!明日までに準備は完璧にしとけよ!!あのクソ擲弾兵を艦製本部に言い付けて呼び出させた!テメェらその隙にあのクソ艦娘を徹底的に犯しまくって来い!!録画も忘れるんじゃねーぞ!!」

 

【五階 務】

「お言葉ですがね~、三木之様、明日は俺達もあの擲弾兵をいたぶる手伝いするんでしょう?それでどうやって勝浦まで行けって言うんです?俺達の身体だって一つなんですぜ~?」

 

【三木之 苗夫】

「テメェら脳みそ無えのかぁぁぁ!!?テメェらで出来ねえなら他の奴にやらせれば良いじゃねえか!!!」

 

【大東 裕之】

「無茶ですよ!!本来なら憲兵沙汰の違法行為ですよ!?それを外部の物に頼むなんて!そんな危ない橋を渡る奴らなんて今すぐに調達とは‥‥昨日の事だって一歩間違えば憲兵に目を付けられる事に‥‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「テメェらがどうなろうと知った事かぁぁぁ!!!憲兵なんざ俺が踏み潰してやるよ!!!いいからさっさと掛かりやがれ!!!このウスノロがぁぁぁ!!!」

 

 

三人は部屋から追い出された

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

【大東 裕之】

「あいつ!!‥‥俺達を何だと思ってるんだ!!俺達は海軍のエリート将校だぞ!!」

 

【五階 務】

「今更そんな事言ってもしょうがね~だろ~?まあ外部の人間にやらせるのはそう悪い考えでもねえな~」

 

【玉林 宏】

「イテテ‥‥まだケツが痛む‥‥で、悪くないってどうするんだよ?そんなヤバい役回り、こんな短時間で頼める宛てなんかあるのか?」

 

【五階 務】

「任せとけ、俺は陸戦隊だぜ?陸の上ではけっこう色々な方面に顔が利くのよ、大きな声では言えないが‥‥俺の知り合いにも危ない奴らは居てな、そいつらに艦娘一匹犯して来いなんて言ったら‥‥喜び勇んで飛んで行くぜ、勿論金次第だがな」

 

【玉林 宏】

「‥‥‥‥‥‥‥」(顔面蒼白)

 

 

 

生兵法は身を滅ぼす素‥‥得意顔で醜悪な計画を語る陸戦隊の三段腹中尉

これが本当に身を滅ぼす原因になるとも知らずに

 

 

この男の不幸は三木之の我が儘に自ら喜んで便乗し、暴利を貪って来た事

 

そして『あの怪物』が直ぐ側に来ている事を知らなかった事だ

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ほぼ同時刻、国防軍・天憲隊

横須賀基地の執務室

 

 

【加賀】

「ミクロネシアで発見された艦娘の正体は分かったの?」

 

【ジョニーnrsenc一等憲兵】

「帝国海軍からも大本営からも音沙汰無しだ、統合海軍からも質問が来ているが調査中の一点張りらしい」

 

【加賀】

「本当に艦娘なのかしら?何かを隠し通そうとしているとしか思えないのだけれど」

 

【ジョニーnrsenc一等憲兵】

「確かに俺としても気になるところだが‥‥‥正直今は動くのは難しいな」

 

 

 

今年の初め、現状で稼働可能な海軍戦力をかき集めて、中部太平洋で対深海棲艦牽制作戦が実施された

 

『チェンバロ2号作戦』の大敗北から充分な戦力が回復しない中での、久しぶりのまとまった対深海作戦であった、『牽制』と名が着く通りこれは純粋に深海棲艦側を牽制する為の威力誇示行動であった

『今ケンカを仕掛けて来てもこちらには戦う準備も意思もある!』と深海側に見せ付ける為に‥‥‥

 

国防軍・天憲隊も含めて全ての海軍勢力が戦力の立て直しを必要としていた

その時間を稼ぐ為に深海側の動きを牽制する為の苦肉の策であった

 

そんな中、ミクロネシア近海で、正体不明の艦娘が発見(ドロップ)されたのである、何処か不気味な姿をした彼女はその正体が不明のまま『呪いの使者、貞子』として海軍内を始め軍部内の政争に巻き込まれてしまうのであるが、それはもう少し後の話(彼女が後のサラトガ)

 

 

 

【ジョニーnrsenc一等憲兵】

「もう少し情報が欲しいな、今俺達が対応しなければならない事象は余りにも多過ぎる、対応するにもそれなりの準備と人員が必要だ、限られたリソースを最大限に活かすには事前の情報が不可欠だ」

 

 

とにかく天憲隊はやるべき事が多過ぎた、海上戦力の回復だけでなく地球全体や宇宙にも同時に目を光らせて置かなければならない

当然、ブラック鎮守府問題など艦娘に関わる諸問題にも監視が必要だ、政治的に重大な法令違反に対しても‥‥‥ミクロネシアの正体不明の艦娘にかかり切りという訳にはいかないのだ

 

 

【加賀】

「仕方がないわジョニー、私達も神ではないのだから、今は優先順位をつけて出来る事から片付けていきましょう?」

 

【ジョニーnrsenc一等憲兵】

「そうだな‥‥‥ところで、吸血鬼の奴が戻って来てるらしいな」

 

【加賀】

「ええ、何処かで一仕事終えて来たみたい、今は秘書艦とお楽しみよ」

 

【ジョニーnrsenc一等憲兵】

「まさかあいつが秘書艦を持って、おまけに嫁艦にしてしまうとはな~」

 

【加賀】

「良いのではなくて?前は野獣のような男だったけど、今はすっかり人間らしくなって来たのだから」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

国防軍・天憲隊、建物の一角

 

東京湾が臨める大きな窓のある部屋で、野獣と女の濃密な欲情が展開していた‥‥‥

 

 

((‥‥ギシッ‥‥ギシッ‥‥ギシッ‥‥))

 

【木曾】

「‥‥ハアッ❤‥‥ハアッ❤‥‥‥ハアッ❤‥‥」

 

 

軋むベッドの音、漏れる女の吐息‥‥‥

 

 

((‥‥ズブッ‥‥ズブッ‥‥ズブブッ))

 

【木曾】

「‥‥うっ❤‥‥うぐっ❤‥‥‥あっ!❤‥‥」

 

((‥‥ズブンッ❤‥‥ズブンッ❤‥‥ズブンッ❤‥‥))

 

【木曾】

「‥‥あっ❤‥‥あうっ❤‥‥おっ‥‥おくっ❤‥‥あたる❤‥‥気持ち‥‥いい❤‥‥」

((ビクッ‥‥ビクッ‥‥ビクッ‥‥))

 

 

深く、強いピストン運動、その度に女の身体は細かく痙攣する

 

 

グルルル~~!!!

 

 

野獣のような大男が女をベッドに押さえ付けて犯していた

牙だらけの男の口から言葉にならない呻き声が響く

 

それに対して女は快楽の海に溺れていた

 

 

【木曾】

「‥‥エヘヘ♪❤‥‥そんなにガッつくなよ♪❤‥‥俺は‥‥何処にも行きゃしないって❤‥‥うっ!❤‥‥あっ❤‥‥」

 

((ガツン!ガツン!ガツン!ガツン!))

 

【木曾】

「‥‥あっ❤‥‥あーー❤あっ❤あっ❤あっ❤‥‥」

((ビクンッ‥ビクンッ‥ビクンッ‥ビクンッ‥))

 

 

女の声が耳に入っているのかいないのか‥‥‥

大男のピストン運動が激しくなる、何度も突き刺さる巨木のような男根

女が艦娘でなければとても身体が持たないだろう

 

 

グゴアァァァ!!

 

 

大男の呻き声の変化を聞いて女は悟った、フィニッシュは近い

 

 

【木曾】

「‥‥フフっ♪❤‥‥イキそうか?❤‥‥‥おっ‥‥俺も‥‥イッ❤‥‥イクッ❤‥‥だから❤‥‥一緒に❤‥‥」

 

((ズバンッ!ズバンッ!ズバンッ!ズバンッ!))

 

【木曾】

「‥‥うあっ!❤‥‥あーーー!❤‥‥おくまでぇ!❤‥‥こっ!‥‥こわれりゅうぅぅぅ~~❤❤❤」

((ビクン!ビクン!ビクン!ビクン!))

 

 

まるで大口径機関砲の射撃のように腰を叩きつける大男

身体をのけ反らせて快楽に身を任せる女

 

((ガシッ!!))

 

【木曾】

「‥‥ううっ!❤‥‥」

 

 

大男は女の髪の毛を掴んで、首筋を大きく開く

女の首筋には牙で噛まれたような傷痕が‥‥‥

 

 

【木曾】

「‥‥きてっ!❤‥‥噛み付いてっ!❤‥‥いっぱい流してぇぇぇっ!❤‥‥」

 

ガアアアーーー!!!

 

ガブッ!!!

 

【木曾】

「‥‥あぐうっ!!❤❤‥‥」

((ビックーーーン!!!❤❤❤))

 

 

大男は女の首筋に噛み付いた!

 

二人がニューギニアのジャングルで再開を果たした時に、最初に噛み付いた傷痕、

その傷痕に寸分のズレも無く同じ場所に噛み付いた吸血鬼のような大男

 

そしてその直後

 

 

ドクッ!‥ドクンッ!‥‥

 

ドビュルルルルルル~~!!‥‥

 

【木曾】

「あーーーーーーーーー❤❤❤」

 

 

噛み付いた牙から体内に!

合体した巨根から子宮内に!

 

それぞれ大量のエキスが女の身体の中に流し混まれていく

 

ボロボロだった女の身体を治癒し、活性化させた成分不明のエキス‥‥

 

 

【木曾】

「‥‥‥あっ❤‥‥あーーー❤‥‥イックぅぅぅ~~❤❤❤‥‥‥」

((ビクン!ビクン!ビクン!ビクン!))

 

 

全身を襲ってくる快感に、女は完全に身を任せて敗北した

そして快楽の海とベッドに沈んでいく、目のハイライトは消えていた‥‥

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

むせ返るような部屋の中、大男と女はベッドの上にいた

 

 

【二等憲兵吸血鬼】

「う~~ん‥‥我ながらハッスルし過ぎたか?‥‥」

 

(ツンッ‥‥ツンッ‥‥)

 

【二等憲兵吸血鬼】

「‥‥うんっ?」

 

誰かが吸血鬼の鼻をつつく

 

 

【木曾】

「‥‥起きたか?‥‥」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「木曾ちゃんか?」

 

【木曾】

「俺以外に、誰がお前の鼻をつつくんだ?」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「そりゃあそうだ♪」

 

 

目の前には誰よりも愛する女の顔が‥‥‥

 

 

【木曾】

「‥‥ウフフ♪❤❤‥‥俺をこんな『淫乱女』に仕立て上げやがって❤‥‥一生責任取れよな♪❤」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「俺以外に、誰が木曾ちゃんの旦那になれるって言うんだ?」

 

【木曾】

「‥‥ウフフ♪❤❤‥‥」

(‥‥ギュッ❤)

 

 

女‥‥『木曾』は大男‥‥『二等憲兵吸血鬼』の胸板に抱き着いた

 

 

しかし、戦う二人の平穏な時間はそう長くはない

 

 

【木曾】

「‥‥‥‥?」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【木曾】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

吸血鬼の様子が変わった事を木曾は見逃さない、二人は夫婦なのだから

 

 

【木曾】

「‥‥仕事の時間か?」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「‥‥ああ、臭くて不快な悪臭が漂ってきた、それも最悪のな」

 

【木曾】

「‥‥そうか‥‥」

 

 

狩りの時間、捕食の時間だ

また何処かで『艦娘』が危機をむかえている

 

 

木曾はベッドから立ち上がった(スルッ)

脱ぎ捨てたパンツを履いて腰におさめると一言

 

 

【木曾】

「それじゃあ行こうか相棒?大丈夫だ、俺に任せろ♪」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

当日を迎えた‥‥‥

 

 

今日は天候が悪くなるとは聞いていたが、予想より早く雨が降り出した

 

日中は大雨、夜も雨は続くらしい

 

 

【川内】

「少尉に傘を持たせて正解だったな、でもこれじゃ洗濯物も干せないや」

 

 

見習い少尉を横須賀に送り出した川内は少し恨めしそうに空を見上げる

 

自分で決断して見習い少尉を独りで送り出した川内ではあったが、心の中で何処かスッキリしないところがあった

 

 

【川内】

「自分で決めておいて今更だけど‥‥本当に‥‥これで良かったのかな‥‥」

 

 

自分が居なくなっても大丈夫な様に少尉を独り立ちさせようと思う一方で、川内の頭の中では先日、足柄に言われた言葉がずっと反復していた 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

【足柄】

「あんたが我が身を投げ出しても三木之を消せるかどうかは分からない、そして確実なのは、あの少尉はあんたを失って独りぼっちになる‥‥という事よ」

 

【川内】

「‥‥‥えっ‥‥」

 

【足柄】

「それがあの少尉にとって何を意味するか‥‥‥それは私じゃなくてあんたが自分で考えなさい」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

自分は少尉を独り立ちさせる事が最善の方法だと信じていた

しかしその方法論は間違っていたのか?

 

少尉が独り立ちする事と自分が居なくなる事は決してイコールでは無いのか?

自分はただそう盲信していただけなのか?

 

自分はこれからもずっと‥‥少尉の役に立てるのだろうか?

少尉の側に居ても良いのだろうか?

 

自分も少尉の側にずっといたい、それを願う事は決して間違いではないのか?

 

 

【川内】

「わからない‥‥‥アタシはどうすれば‥‥‥」

 

 

監視所の片付けをしながら川内は思い悩み続ける‥‥‥

 

 

【川内】

「‥‥‥?‥‥お客様?」

 

 

ふと気付くと、玄関に来客の気配がした

こんな雨の日に、人里離れた海軍の監視所に来客とは‥‥‥

 

川内は玄関に来客者を出迎えに‥‥そこに居た人物は‥‥

 

 

【川内】

「いらっしゃい、どちら様で‥‥‥‥あっ!」

 

 

玄関で出迎えた川内の目の前に立っていたのは‥‥‥

 

 

【木曾】

「よっ♪久しぶり、元気だったか?」

 

【川内】

「‥‥木曾‥‥木曾なの!?‥あの時の!?」

 

【木曾】

「そうだ、正真正銘、あの時の木曾だよ」

 

 

 

『ビンソン計画』という悪夢で苦難を共にした元ルームメイト

紛れも無い、あの時の『木曾』本人がそこにいた!

 

 

【川内】

「木曾!‥‥わざわざこんな所まで‥‥会いに来てくれたの!?」

 

【木曾】

「お前がここで任務に勤しんでいるって情報を聞いたんだ、そうしたらお前の顔を見たくなってね、仕事で横須賀に来てたからついでに立ち寄ってみようと思ったって訳さ」

 

【川内】

「こんな雨の中を‥‥アタシに会いに‥‥ありがとう、アタシも木曾の事は忘れた事なんかないよ、さああがって♪」

 

【木曾】

「お邪魔する」

 

 

しばらく見ない間に、木曾はどこか風格が漂っていた

歴戦の猛者の貫禄と女性らしい艶やかさが共存していた

 

応接室(と言っても執務室と同室の椅子とテーブルだが)でお茶を飲みながら

 

 

【木曾】

「あれからどうだった?身体は大丈夫か?」

 

【川内】

「休養充分だよ、逆に身体が鈍っちゃうくらい、アタシはタフな事だけは取り柄だからね♪木曾は?」

 

【木曾】

「俺は絶好調だよ、お前が思ってたより元気そうで良かったよ」

 

 

【川内】

「『改二』に‥‥なったんだね♪」

 

【木曾】

「ああ‥‥この格好、似合ってるかな?」

 

【川内】

「うん♪とっても似合ってるよ♪木曾は神通と同じで優秀だったもんね、改二になるのは当然だよね、それに‥‥」

 

【木曾】

「それに?」

 

【川内】

「何だか‥‥綺麗になったみたい、女の人として」

 

【木曾】

「///そうか♪///」

 

 

照れながらも嬉しそうに笑う木曾、あの『8研』研究所での地獄を共に生き抜いた二人には建前上の賞賛など不要であった、お互いへのリスペクトはそのまま本心であり、木曾も素直に川内の言葉を受け入れられるのである

 

 

【木曾】

「川内、そういうお前は『女の顔』そのものだぜ♪」

 

【川内】

「///ふええっ!?///」

 

 

その言葉は木曾の素直な感想であり、それが分かる川内は顔を赤くした

 

雨の降り続ける勝浦の監視所、林の中の一軒家には今この瞬間この二人しか居ない、川内も木曾も、何の気兼ねもなく話が弾む

 

 

【川内】

「木曾は今どうしてるの?」

 

【木曾】

「俺か?新しい所属先で任務の日々だよ」

 

【川内】

「ケッコン‥‥したんだね?その指輪‥‥」

 

 

木曾の左手薬指に指輪が光る

 

 

【木曾】

「これか?実はカッコカリじゃないんだ、正真正銘の結婚指輪なんだよ」

 

【川内】

「ええっ!?そうなの!?」

 

【木曾】

「まあカッコカリの効果も兼ねてるんだけどな、俺と今の相棒の絆の印さ」

 

【川内】

「へえ~~、何だか素敵だな~、旦那様はやっぱり『提督の人』なの?」

 

【木曾】

「う~ん、あれが人かどうかは少し判断に迷うが、『提督』兼『憲兵』だよ」

 

【川内】

「憲兵?」

 

【木曾】

「俺は今、この相棒と一緒に仕事をしている、憲兵のまね事みたいなものさ、海の上だけじゃなく陸上でも任務をこなしてる」

 

【川内】

「凄いじゃん!艦娘の憲兵なんて!やっぱり木曾は優秀なだけの事はあるよね、アタシと違って」

 

【木曾】

「川内、余り自分を卑下するなよ、お前は十二分優秀だよ、俺が認めたんだからな」

 

【川内】

「ウフフ♪木曾も少尉と同じこと言うのね♪」

 

【木曾】

「少尉?今のお前の指揮官か?だったら見る目があるじゃねーか♪何たって俺と同じ意見何だからな」

 

【川内】

「良かった♪木曾はとっても幸せそうだね♪」

 

【木曾】

「なあ川内?‥‥‥」

 

【川内】

「なあに?」

 

【木曾】

「お前は‥‥‥どうなんだ?」

 

【川内】

「どうって?‥‥」

 

【木曾】

「何処かお前‥‥思い詰めた様な顔してる‥‥疲れてもいるんじゃないか?‥‥俺の勘違いだったらいいんだが‥‥」

 

【川内】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

ほんの少しの沈黙の後‥‥‥

 

 

【川内】

「‥‥‥ねえ、木曾?」

 

【木曾】

「うん?」

 

【川内】

「本当は何の用事があって来たの?‥‥木曾が憲兵の仕事もしてるなら、アタシの‥‥アタシ達の現状も知ってるんでしょ?少尉が留守の間にこうして尋ねて来て‥‥これだって偶然じゃないんでしょ?」

 

【木曾】

「‥‥‥参ったな‥‥俺とした事が、上辺を取り繕い過ぎたぜ‥‥‥」

 

【川内】

「木曾?」

 

【木曾】

「川内、確かに俺はお前達の置かれた現状を事前にある程度把握してはいる、だが直接見た訳じゃない、俺は俺自身で確かめた事しか信用しない、だからこの目で確かめたかったのさ、そう考えたら俺はお前の顔が無性に見たくなった、だからここに来たんだ、これは俺の本心だ、そしてそれが理由の半分だ」

 

【川内】

「心配してくれたんだね‥‥ありがとう♪‥‥残りの半分は?」

 

【木曾】

「お前と二人きりの時に‥‥聞いて欲しい事があったんだ」

 

【川内】

「アタシと木曾の二人きりの時に?」

 

【木曾】

「お前に俺の‥‥‥『懺悔(ざんげ)』を聞いて欲しかったんだ」

 

【川内】

「懺悔って!?‥‥木曾がアタシに!?‥‥アタシは木曾に何かされた覚えなんか‥‥」

 

 

木曾の思っても見なかった告白に慌てる川内‥‥‥

 

 

【木曾】

「俺達があの研究所で好き勝手に改造されてた頃‥‥俺と神通は何とか自分の貞操を守りきった、だけどお前は‥‥‥」

 

【川内】

「‥‥‥それってつまり‥‥」

 

【木曾】

「嫌な事を思い出させてしまって済まん!だが俺にはどうしてもお前に懺悔しないといけない事があるんだ!‥‥俺はそう思って今日まで過ごして来たんだ」

 

【川内】

「木曾‥‥‥」

 

【木曾】

「こんな事を言ったら『何様のつもりだ』と思われるかもしれんが‥‥俺は自分の貞操を守るのが精一杯で、お前が‥‥あの『あきつ丸』もそうだが‥‥酷い目に合わされているのに何も出来なかった‥‥お前達を助けてやる事が出来なかった‥‥俺はあの時奴らに手も足も出せなかったんだ!」

 

【川内】

「ねえ木曾!アタシが研究所の奴らに性処理の道具にされた事を自分の責任だと思ってるなら、それは大きな誤解だよ!?」

 

【木曾】

「しかしだな!!‥‥」

 

【川内】

「あの時‥‥苦しかったのは皆同じだよ?上の連中に命令されて‥‥どうにもならなかったんだよ!木曾も神通も自分を守れたのは二人が優秀だったから、アタシが自分を守れなかったのはアタシの実力が無かったからだよ!木曾が気にする様な事じゃないよ!」

 

【木曾】

「お前はそれで良いのかよ!?好きでもない名前も知らない奴らにあんな事されて‥‥」

 

【川内】

「木曾‥‥‥」

 

【木曾】

「俺は‥‥悔しいんだよ!憲兵の相棒の仕事を手伝っているのも、あんな想いを二度としたくない、もうお前やあきつ丸のような犠牲者を出したくない‥‥そんな想いもあったから‥‥‥」

 

 

木曾には過去にも守りたかった仲間がいた、それを守り切る事が出来なかった記憶が『憲兵の相棒として生きる決意と覚悟』を木曾に持たせた要因の一つとも言えた

 

 

【木曾】

「俺は今、一人の男を愛している」

 

【川内】

「‥‥‥うん‥‥」

 

【木曾】

「夕べも、あの男に抱かれた、俺はそれがとても嬉しくて幸せだった」

 

【川内】

「///‥‥うっ?‥‥うん‥‥そう‥‥///」

 

 

木曾の真面目な話を聞いて、少しだけ恥ずかしそうな川内‥‥

 

 

【木曾】

「あいつに身も心も捧げた俺は‥‥あいつの欲情のなすがままに犯された‥‥あいつのデカいチイモツが俺の身体に突き刺さって、その度に俺は何度も快感に襲われてよがり狂った‥‥そして身体の中に熱いものを何度も注ぎ込まれた‥‥」

 

【川内】

「///へっ‥‥へえ~‥‥そっ‥そうなんだ‥‥///」

(モジモジ‥‥)

 

 

【木曾】

「俺はあいつからの野獣の咆哮のような愛情に完全にトロけてしまった‥‥‥ただの『淫乱女』になっちまったんだ、だけど後悔はしてない

月並みな表現かもしれないが、愛する者からこんなに身体を求められる喜びを俺は知ってしまったんだ、何もかもさらけ出して世界でたった一人の愛する存在から凌辱されている俺は今、最高に幸せなんだ!だからこそ‥‥‥」

 

【川内】

「///‥‥もう‥‥勘弁して‥‥///」(ドキドキドキ‥‥)

 

 

木曾の懺悔は、一瞬あらぬ方向に脱線しかけた

川内はもう恥ずかしくて聞いているのが限界だった

 

 

【木曾】

「自分が納得した相手に身を任せるならともかく、名も知らない奴から理不尽な形で無理矢理強制される‥‥これがどれだけ屈辱的な事か、それが余計に分かるんだ、俺がお前の立場だったらとても耐えられないだろう‥‥」

 

【川内】

「木曾‥‥」

 

【木曾】

「それを考えると、俺だけが難を逃れてヌクヌクと生きてる現実がどうにも苦しくてな‥‥」

 

【川内】

「‥‥ねえ、木曾?」

 

 

『ビンソン計画』の被害者で何の苦しみも持たない者なんか居ない、無事だと思っていた木曾にも心の傷と後悔の念があったのだ

 

 

【川内】

「木曾は‥‥優しいんだね、昔からそこは変わってない♪」

 

【木曾】

「よせやい、俺はそんな上等なものじゃねーよ」

 

【川内】

「木曾?‥‥アタシの少尉の話‥‥聞いてくれる?」

 

【木曾】

「‥‥ああ」

 

【川内】

「あの研究所でアタシがどんな目にあったか、少尉には覚えている限りの事を全部話したわ」

 

【木曾】

「何だって!?全部言っちまったのか!?」

 

【川内】

「そうだよ、少尉に同情して欲しかった訳じゃない、汚れたアタシの部分も全部、少尉に知って貰いたかったんだ、少尉には出来るだけ隠し事なんかしたくない、アタシは綺麗なんかじゃない、心のどす黒い汚れた艦娘なんだって事を‥‥‥」

 

【木曾】

「お前‥‥‥それでお前の少尉は何て言ったんだ?」

 

【川内】

「いきなりアタシの事を抱きしめたの、そして‥‥何度も何度も謝るのよ」

 

【木曾】

「謝った!?」

 

【川内】

「『助けてやれなくて済まなかった』『側に居てやれなくて済まなかった』『お前は汚れてなんかいない』『これから先俺がお前を絶対に守る』って何度も何度も‥‥終いには泣き出しちゃってね♪」

 

【木曾】

「ちょっと待てよ!お前の少尉は何の関係も無いだろ?何で謝るんだ?」

 

【川内】

「‥‥それが少尉なのよ、初めて出会った時から今日まで、少尉はずっとアタシの事を守ってくれたわ、どんなに傷だらけになっても、どんなに踏み付けにされても、どんなに馬鹿にされても‥‥自分の出世栄達なんかそっちのけ、いつもアタシの盾になって‥‥‥」

 

【木曾】

「‥‥そうか、妙な男だな」

 

【川内】

「そうだよね‥‥おかしいよね?‥‥少尉は何も悪くないのに‥‥」

 

【木曾】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【川内】

「泣きながら謝り続ける少尉の胸の中でアタシは『ああ、やっぱりこの人はアタシの信じた人だった、この人にならアタシの全てを捧げても悔いはない、この人がアタシを女として求めてくれるなら‥‥こんな汚れたアタシでも求めてくれるなら、アタシは‥‥アタシの女を全てこの人に捧げたい!』って、心の底からそう思う事が出来た‥‥‥あれからその話は一度もしてない」

 

【木曾】

「そうか‥‥‥」

 

【川内】

「夜戦もマトモに出来なくなったこんなアタシに、女の魅力が有るかどうかなんて分からないけどね♪」

 

【木曾】

「川内、お前のその『自分を卑下する』癖、悪い癖だ、早く直せよ」

 

【川内】

「‥‥うん、そうだね‥‥」

 

 

しばしの沈黙の後‥‥

 

 

【木曾】

「川内、お前、今幸せか?」

 

【川内】

「うん、とっても」

 

【木曾】

「そうか♪」

 

 

木曾の問いに川内はハッキリと答える

 

 

【川内】

「アタシね、正直あの時(研究所の一件)の事はよく覚えてないの、覚えている事と言えば横にあきつ丸がいた事くらい、多分マグロ状態だったんだろうね、だからアタシはもう気にしてないよ、ただその事でアタシ以外の誰かが嫌な想いをしたり傷付いたりするのだけは嫌なの」

 

【木曾】

「全く‥‥お人よしというか呑気な奴だ」

 

【川内】

「かもね♪‥‥木曾、アタシはもう自分の身体を安売りなんかしないよ?ある人に言われたの、それにアタシには少尉がいる、少尉が居れば苦しい事も乗り越えられる、だからアタシの事で苦しむのはもう止めて?アタシはもう大丈夫♪タフが取り柄なのは伊達じゃないよ♪」

 

【木曾】

「‥‥分かったよ、もうこの話はしない、俺も先に進む事にするよ」

 

【川内】

「良かった♪‥‥ともかく周りからどう見えるかは知らないけど、アタシは自分が世界一幸せな艦娘だって思ってる、正直苦労は沢山あるけど、その一つ一つが少尉の為だと思えば何とも思わないよ♪」

 

【木曾】

「こらからも海軍でやって行けそうか?」

 

【川内】

「海軍に居続ける事が少尉の幸福に繋がるのかは正直分からないけど、アタシ達二人で選んだ道だもの、少尉が立派な提督になって海軍で誰にも見下されない立場になれるまで、アタシが提督を支えなくちゃね」

 

【木曾】

「その先の事はどうなんだ?」

 

【川内】

「その先?」

 

 

見習い少尉を海軍で押しも押されもせぬ『提督』にする事が自分の中で一つの到達点だと思っていた川内は、そこから先のことは正直あまり考えていなかった

 

自分が少尉の側に居続けるかどうかも含めて

 

 

【川内】

「少尉が『提督』になったその先‥‥ていう事?」

 

【木曾】

「晴れて『提督』になったからと言っても、そこから先が本当の始まりだろう?提督になったからと言って全てが薔薇色になる訳じゃない、むしろ責任も重圧も増える、周辺からの妬みや妨害だってあるだろうさ、当然、深海の奴らだって新しい提督を付け狙って来るだろう、提督が提督を続けるって事は並大抵の事じゃない」

 

【川内】

「それは‥‥」

 

【木曾】

「そんなプレッシャーに負けて自暴自棄になった挙げ句、ブラック提督に成り下がった奴も俺は何人か見てきた」

 

【川内】

「少尉はブラック提督になんかならないよ!!」(ガッ!)

 

【木曾】

「落ち着けよ」

 

 

少尉がブラック提督になる訳がない!自分がそんな事はさせない!

ムキになる川内に木曾は落ち着けとさとす

 

 

【木曾】

「分かってるさ、お前が信じてる男だからそこは大丈夫だろう、しかしな、真面目に生きてる提督はそれだけで周りから嫉妬や妬みの対象になってしまうんだ、優秀な提督なら尚更だ、海軍にとっても艦娘にとっても1番必要な提督が1番バカを見るんだ、理不尽な話だが海軍で提督を続けるならそれは半分宿命みたいなものさ、そこは理解出来るだろう?」

 

【川内】

「それは‥‥分かるけど‥‥」

 

【木曾】

「外も身内も敵だらけ、それが提督だ、そんな提督に一番必要なのは何か?‥‥心から信じる事が出来る相棒、背中を預けられる存在、常に側で支えてくれる秘書艦だろう、お前の少尉にとってそれが務まるのは後にも先にもただ一人‥‥お前だよ川内」

 

【川内】

「木曾‥‥‥」

 

【木曾】

「少なくとも俺はそう思うがね」

 

【川内】

「‥‥‥‥‥‥」

 

【木曾】

「俺達はもっと自分達を大切にしなきゃいけないんだ、秘書艦になるまで好き勝手に生きてきたこの俺も、いざ一人の秘書艦・嫁艦になって初めて気付いた事さ、だから俺もお前に偉そうに説教出来るような立場じゃないんだけどな♪」

 

 

木曾も足柄と同じく、本能的に、今の川内の危うさを感じ取っていたのかもしれない‥‥‥

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

足柄さんも言ってた、三木之一人がどうなろうと何も変わりはしない

 

少尉が提督になってもアタシが居なかったら少尉は一人ぼっちになってしまう

 

それは決して少尉が望む事ではないのだろう

 

アタシたって少尉の側から離れるなんて絶対に嫌だ

 

『提督』になって鎮守府を持ってからが本当の勝負の始まり

 

そんな時、少尉を側で支えてあげられるのは‥‥‥

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

 

【川内】

「‥‥ねえ、木曾?」

 

【木曾】

「何だ?」

 

【川内】

「アタシは‥‥アタシは少尉の側に‥‥ずっと居ても‥良いのかな?」

 

【木曾】

「お前自身が何を望むか、それが全てだな、一つ言えるのは‥‥」

 

【川内】

「言えるのは?」

 

【木曾】

「お前がそう決断したなら、お前の少尉殿はきっと喜ぶと思うぜ?」

 

【川内】

「木曾‥‥‥」

 

 

‥‥側に居たい、居て欲しい

 

正直、お互いが相手にそう願っていたのは分かっていた

それが本当に許されるのか?それだけが不安だった

 

しかし、それは間違いだったと気付かされた

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

許されるとか許されないとか、もうそんな問題じゃなかったんだ!

 

そうだよ!本当は分かってた筈なんだ!

 

アタシが少尉の側から居なくなったら

 

誰が少尉を支えるって言うんだ!

 

 

三木之が来ようが嫌味な将校達が来ようが関係ない!

 

何が起ころうと関係ない!

 

アタシが少尉を守るんだ!アタシしか居ないんだ!

 

アタシのせいで少尉の立場が危うくなるならなおのこと!

 

アタシが責任を持って少尉の盾になるんだ!

 

 

もっと早く思い出すべきだったんだ!

 

アタシの居場所は少尉の側!

 

絶対に離れるもんか!

 

誰にも渡すもんか!

 

 

これはアタシが望んでいた事だったんだ!

 

少尉と一緒に海軍に戻ると決めた時から!

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

 

川内の中で何かが吹っ切れた瞬間だった

 

 

【川内】

「‥‥ありがとう木曾‥‥アタシ、もう迷わない!」

 

【木曾】

「そうか♪お前、最高に良い顔してるぜ?」

 

【川内】

「//エヘヘ♪そうなか~?✨//」

 

【木曾】

「後は‥‥女として生まれた『快感』を知る事だな?」

 

【川内】

「‥‥へっ?」

 

 

足柄と木曾の薫陶によって見事に迷いを振り切った川内であったが、木曾の薫陶はまたしても妙な方向に‥‥

 

 

【木曾】

「決まってるだろ?あっちの夜戦の話だよ、あっ、お茶貰うな」(ズズ……)

 

【川内】

「//えっ‥‥え~と‥どっ‥どうなのかなぁ~~?//」

 

 

【木曾】

「川内!」

 

【川内】

「なっ‥‥何?」(ズズ……)

 

 

【木曾】

「『セックス』はいいぞ~~♪」

 

【川内】

「ブフウゥゥゥゥゥゥーーー!!!」

 

 

木曾の突然の『奇襲』!川内はおもわずお茶を吐き出した

 

 

【川内】

「//ゲホッ!!ゲホッ!!ゲホッ!!‥‥いっ!?‥いきなり何言うの!?突然!!//」

 

【木曾】

「‥‥大丈夫か?鼻からお茶出てるぞ?」

 

【川内】

「///ううっ!!///」(バッ!)

 

 

突然の事にビックリし過ぎて鼻からお茶を噴き出してしまった、川内は思わず鼻を押さえる

 

 

【木曾】

「川内、『セックス』は良いぞ~~♪」(ニヤニヤ♪)

 

【川内】

「///それはさっきも聴いたから!!///」(アタフタ)

 

【木曾】

「心底惚れた男のぶっとい巨砲が膣の中にぶち込まれるんだ!それが身体の内側から急所をえぐるあの感覚‥‥何度経験しても何とも言えないんだよな~♪」

 

【川内】

「///はわっ‥‥はわわわ!///」(ヒクヒク‥‥)

 

【木曾】

「壊れそうなくらいに何度も何度も全身を突き上げられるとな、そのうち自分の身体のあらゆる部分が男の色と匂いと形に染まって行くんだ♪」

 

【川内】

「///ははははは‥‥そっ‥‥そうなんだぁ~~///」

 

【木曾】

「そうするとな?奴の息遣いと反応から射精のタイミングが分かって来るんだ、アイツは吠えるだけでそういう事は言わないからな、そのうち身体の相性が抜群にシンクロしてだな、奴の射精と俺がイク、そのタイミングがピッタリ合うんだよ♪その時の達成感といったら‥‥」

 

【川内】

「///もう‥‥勘弁して‥‥///」

 

【木曾】

「アイツの白濁した熱い精液が、俺の子宮の壁に勢いよくぶつかって、そのまま子宮の奥に注ぎ込まれるんだ♪その時の快感と言ったらよ~~♪」

 

【川内】

「///木曾!!もう分かったから!!///」

 

【木曾】

「とうだ?想像しただけで濡れてきちまっただろ~~♪」(ニヤニヤ♪)

 

【川内】

「///イヤ~~ン!もうやめて~~///」(半泣き)

 

 

あけすけに楽しそうに猥談を展開する木曾

川内の(心の)ライフはもうゼロよ

 

 

雨は降り続いていた‥‥‥

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

同時刻、横須賀

アジア・オセアニアブロック海軍基地の艦政本部‥‥‥

 

 

 

【見習い少尉】

「‥‥何であんたがここに居るんだ?」

 

【三木之 苗夫】

「イヒヒヒ~~、驚いたか?ゴミ野郎!」

 

【見習い少尉】

「ここは補給部じゃないだろ?」

 

【三木之 苗夫】

「うるせえぇぇぇ!!!クソ擲弾兵の分際でこの三木之様を散々待たせやがって!!!」

 

【見習い少尉】

「約束の時間より15分前だ、それに俺はあんたに会いに来た訳じゃないぞ?」

 

 

 

逆ギレする三木之の前であえて冷静に対応する見習い少尉、そんな見習い少尉もこの状況は理解していた

 

艦政本部次長からの新規艦娘の配属に関しての話し合い‥‥とはやはりデマだったのだ、そんな事は初めから予想はしていたが、それでも出頭を拒めないのが今の見習い少尉達の置かれた立場でもある

 

肝心の次長の姿は何処にも居ない、代わりに待っていたのはしてやったり顔の『三木之 苗夫』と、先日因縁を付けてきたあの三人の中尉

 

いずれにしてもこれから起こる事はきっとろくなことではないだろう

三人はスパイクやらメイスやらゴルフクラブやらを手に取っていた‥‥まるで誰かを殴り付けるような格好で‥‥‥

 

 

【見習い少尉】

「艦政本部次長は何処だ?」

 

【大東 裕之】

「そんなの居る訳ないだろうが!」

 

【見習い少尉】

「おたくら随分と物騒なもの握ってるな、何処かにカチコミにでも行くのか?」

 

【大東 裕之】

「貴様をぶん殴る為に決まってるだろうが!!エリート将校のこの俺が!貴様みたいな擲弾兵のせいでこんな雑用なんか!!‥‥」

 

 

【三木之 苗夫】

「何だあ!!てめえ!!文句あんのかぁぁぁ!!?」

 

【大東 裕之】

「いっ!?‥‥いえ!‥別に‥‥」

 

 

【見習い少尉】

「痴話喧嘩は余所でやってくれ、念のために聞くが新規艦娘の配属の話は‥‥無い訳だな?」

 

【三木之 苗夫】

「この状況を見てまだ分からねえのかぁ!!クソ擲弾兵がぁ!!やっぱりクソはどこまで行ってもクソだなぁ!!!」

 

【五階 務】

「そういう事、お前は俺達に騙されてノコノコ一匹で横須賀まで誘い出されたって訳さ~♪」

 

【見習い少尉】

「何の為にこんな事をするんだ?」

 

【三木之 苗夫】

「てめえをいたぶる為に決まってるだろうがぁぁ!!!今更分かり切った事聞いてんじゃねえ!!!」

 

【五階 務】

「あの艦娘が居たら邪魔されるのは分かってたからな、だから艦政本部次長の名刺を利用してお前一匹だけ呼び出したのよ~♪まさかこれ程上手く行くとはな~」

 

【見習い少尉】

「あんた達暇なのか?俺一人をいたぶる為にこんな面倒な事して、俺達は軍属なんだから市民を守るのが仕事だろ?これじゃただの税金泥棒じゃないか?」

 

【大東 裕之】

「うるさい!!誰のお陰でこんな事してると思ってるんだ!!貴様らさえ居なかったら!!‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「おいてめえ!!!うるせえぞ!!!」

 

【大東 裕之】

「ううっ!!‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「おいクソ擲弾兵!!てめえは無知で身の程知らずだから今から俺達人間様が再教育してやる!!ありがたく思えや!!」

 

【見習い少尉】

「再教育?何の話だ?」

 

【三木之 苗夫】

「『身の程を弁えろ』って事だぁ!!!てめえはあのクソ艦娘とグルになって俺の出世と人生設計をぶち壊しやがったんだ!!それなのに!!何でてめえが海軍なんかに入って人間様みてえな面してやがんだぁぁぁ!!!」

 

【見習い少尉】

「そのセリフはもう聞き飽きたよ」

 

【三木之 苗夫】

「うーーうせえぇぇぇ!!!てめえは本来なら生きてるのも許されないクソ野郎なんだよ!!!今すぐ処理機にぶち込まれて当然なのにこの三木之様の温情で生きていらるんだぞ!!?それなのに!!いつも偉そうな態度ばかり取りやがってぇぇぇ!!!」

 

【見習い少尉】

「俺が生きていられるのは川内のお陰だ、あんたのお陰じゃないぞ?それに俺を海軍に入れたのは土方長官だ、問題があるなら土方長官か連邦統合海軍省に話をつけて‥‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「その態度が気に入らねえって言ってんだぁぁぁぁぁ!!!」

(ガシャーーーン!!!)

 

【大東 裕之】

「連邦統合海軍省と土方長官の名前を出せば俺達が手を出せないとでも思ってるのか!?その横柄な態度が気に入らないんだよ!!人間の道具でしかない擲弾兵風情が俺達エリートに盾突きやがって!!」

 

【五階 務】

「ここは横須賀、ブロック海軍の中なんだよ~、ここには三木之様という治外法権があるのさ~♪お前一匹くらいどうにでも出来るんだぜ~♪」(ニヤニヤ)

 

【玉林 宏】

「はっ‥‥ははは‥‥」

 

 

【玉林 宏】

「(コイツら‥‥‥狂ってる!)」

 

 

【見習い少尉】

「‥‥全く面倒臭いことになったもんだなぁ、川内、お前を連れて来なかったのは正解だったようだ」(ポリポロ‥‥)

 

 

心底面倒臭そうな表情で呟く見習い少尉、ここに居る四人が束になって襲ってきたところで少尉にはどうという事はない、とはいえ相手は生身の人間である、擲弾兵が手を出せばシャレにならない

 

深海棲艦と殴り会う為に生まれた擲弾兵が下手に反撃なんかしたらこの四人を壊してしまうかもしれない……

 

 

【大東 裕之】

「覚悟しろよ!!擲弾兵!!お前は俺達には反撃出来ない!そんな権利も資格も無い!お前はただの道具なんだからな!!この『精神注入棒』でその腐った性根を叩き直してやる!!」

 

【見習い少尉】

「何の覚悟だよ?何が『精神注入棒』だよ?ただの『スパイク』じゃねーか?」

 

【大東 裕之】

「だっ!!‥‥黙れ!!」

 

(カアァァァーーーン‥‥‥)

 

 

エリート気質の中尉はスパイクを振り上げて殴りかかる、見習い少尉はそれを最小の動作でかわした、スパイクが床に叩き付けられた乾いた音が響く

 

 

【大東 裕之】

「貴様ぁ!!避けるな!!」

 

【見習い少尉】

「バカバカしい!俺は帰るぜ!天気も崩れるそうだからな」

 

 

こうなる事は予想はしていたがいざ本当になると心底胸糞悪くなる

こんな所に長居は無用だ、勝浦に戻ろう、川内が待ってる

 

見習い少尉はきびすを返すと艦政本部から立ち去ろうとする

 

 

【三木之 苗夫】

「てめえ!!!人間様を無視して何処に行きやがる!!!」

 

【見習い少尉】

「帰るに決まってるだろ?ラーメン屋に行くとでも思ったか?」

 

【五階 務】

「そんな事言っちゃっていいのかな~?お前の可愛い艦娘がどうなっても知らねえぜ~~♪」

 

【見習い少尉】

「(ピクッ)‥‥‥どういう事だ?」

 

 

 

艦娘(川内)のキーワードを出されて見習い少尉は動きを止めた

 

三段腹の陸戦隊中尉が懐から小型の通信機のような物を取り出す

 

 

【五階 務】

「見なりは小さいが、コイツは陸戦隊も使う中長距離無線機だ、いくつかの中継アンテナを介してここから勝浦まで専用回線で無線通信が出来る、こいつの意味が分かるかな~?」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【五階 務】

「俺は海軍陸戦隊だから海の上よりも陸の上で結構顔が利くんだぜ~?俺の知ってる奴の中には荒くれ者の不良もいてな~♪人間様に抵抗出来ない艦娘のガキをブチ犯すのが好きでたまらない奴らも居るんだな~これが~♪」

 

【見習い少尉】

「そのゴミクズ共がどうした?」

 

【五階 務】

「お前一匹を横須賀に呼び出したのはあの艦娘を単独にさせる目的もあったんだぜ~~♪お前が俺達に逆らった時には、俺がこの無線機で奴らに連絡してあの艦娘のガキをぶち犯す事になってるんだな~♪」

 

 

見習い少尉は汚い物を見るように三段腹を睨む

 

 

【見習い少尉】

「そんな事して‥‥お前ら生きていられると思ってるのか?」

 

【五階 務】

「おやおや~そんな事言っていいのかな~?今頃奴らはあのオンボロ監視所を見張ってる、お前と入れ違いにあの山に入っているのさ♪俺が定時連絡をしなくなっても奴らは艦娘を犯す、奴らは俺にもコントロール出来ない性欲に飢えたエロ畜生だからな、ちょっと背中を押してやれば後はケモノみたいに弾けまくるぜ~」

 

【見習い少尉】

「俺が言ってるのはそのゴミクズ共の事だ、川内には既に接近戦闘術を仕込んである、お前のお友達が何人束になって襲ってきても半殺しになるだけだ、あいつには自分を守る事を最優先にするように言ってあるからな」

 

【五階 務】

「分かってねえのはお前の方よ♪何の為にお前を横須賀に呼び出したと思う?」

 

【大東 裕之】

「この横須賀にはな!貴様の味方なんか一人も居ないんだよ!!」

 

【五階 務】

「そういう事、それはあの艦娘も分かってるだろうぜ~、『お前の上官の擲弾兵を人質に取った、逆らったらどうなるか‥‥』と脅せば奴は何も抵抗出来ないだろうよ?そもそも艦娘が人間様に逆らう事なんて許されないのは常識なんだからな~~」

 

【見習い少尉】

「俺を人質に?何の冗談だ?俺がみすみす人質になると思ってるのか?そんな事は起こらないのは川内が一番よく分かってる、川内を舐めるなよ!俺達の信頼関係を舐めるなよ!」

 

【五階 務】

「そう思いたけりゃ好きにすれば良いさ♪俺はお前が逆らったという事で奴らに指示するだけよ~♪さあどうする?」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【大東 裕之】

「ケッ!強がり言っても結局は何も出来ないだろうが!所詮お前らは人間様には逆らえないんだよ!!調子に乗りやがって!!」

 

【玉林 宏】

「ははは‥‥‥そっ‥‥そうだよな」

 

【三木之 苗夫】

「分かったかあ!!クソ擲弾兵!!この俺様の緻密な作戦を!!お前ら脳なしの備品野郎共には到底考えつく事は出来ねえだろうが!!」

 

【五階 務】

「(殆ど俺の計画なんだけどなあ~~)」

 

【三木之 苗夫】

「この三木之様にはこれだけの作戦立案能力があるんだ!!それなのに!!てめえらのせいで掃き溜めの補給部なんぞに!!!‥‥畜生めぇぇぇ!!!」

 

【見習い少尉】

「‥‥確かに、こんなチンカスみたいなゴミ計画、俺にはとても思いつかないよ」

 

【三木之 苗夫】

「なにぃぃぃーーー!!!」(ギリギリ‥‥)

 

 

【玉林 宏】

「(コイツら‥‥やっぱり狂ってる!‥‥今すぐ手を切らないと!‥‥でもとうすれば‥‥‥)」

 

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

見習い少尉は石のように動きが取れなくなってしまった

ある程度汚い手段を使われる事は分かっていた、分かっていても自分の意思でそれを避ける事も今の自分達には難しい‥‥その事をあらためて思い知らされた

 

見習い少尉は三木之達の脅迫に屈した

 

川内を信用しない訳では決してない、しかし川内の身の安全を考えれば、本当に万一の事を考えると三木之達に抵抗する選択肢は見習い少尉には取れなかった

三段腹から無線機を取り上げるという手段も考えられなくもない、しかしこの三段腹、陰険なまでに悪知恵が働く、別の悪質な手段を隠している可能性も否定出来ない

今から勝浦に走っても到底間に合わない、こんな状況で頼れる者の心当たりは今の見習い少尉には思いつかなかった、奴らの言う通り、今この横須賀基地には見習い少尉の味方は一人も居ない、彼は一人で何とかするしか無いのだ

 

 

 

【五階 務】

「ヒヒヒ~~♪どうした擲弾兵よ?さっきまでの威勢は何処行った~?別に抵抗しても良いんだぜ~~?あの艦娘がどうなっても良けりゃな~~♪」

 

【大東 裕之】

「擲弾兵と艦娘の分際で!俺達エリートに逆らいやがって!!お前らのせいでこの数日間は散々だったんだ!!鼻の骨を折られた挙げ句、ケツに鉄パイプまで突っ込まれてよ!!みんなお前らのせいだ!!」

 

【玉林 宏】

「そっ‥‥そうだそうだ!‥‥」

 

 

『書類屋』中尉を除く三人は見習い少尉に引きつった陰湿な顔でニヤニヤしながら‥‥‥

 

 

【三木之 苗夫】

「死体野郎の分際で海軍将校の真似事なんかしやがってぇぇぇ!!!目障りなんだよ!!!ぶっ殺せぇぇぇーーー!!!」

 

【大東 裕之】

「おらあああーーー!!!」((ブウーーーン!!!‥‥‥))

 

 

自称エリート中尉が再びスパイクを振り上げてそのまま殴りつけてくる‥‥

今度は避ける間もなかった‥‥いや、避ける訳にはいかなかった‥‥

 

 

 

【見習い少尉】

「(‥‥やっぱりこうなっちまったか‥‥すまん川内‥‥今回も収穫は無しだった、少し帰りが遅くなるかもしれんが今日中には帰るから待っててくれ、帰ったら謝るから‥‥)」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

【川内】

「‥‥あれ?‥‥少尉?‥‥」

 

【木曾】

「どうした?」

 

【川内】

「今‥‥少尉の声が‥‥そんな訳ないか‥‥」

 

 

勝浦の監視所では二人が昼食の準備を進めていた

 

 

【木曾】

「悪いな、いきなり尋ねて来たのに昼飯までご馳走になっちまって」

 

【川内】

「良いんだよ♪一人で食べるよりよっぽど楽しいもの♪それより片付け手伝って貰っちゃってごめんね」

 

【木曾】

「気にするなって♪これでも一応は人妻だからな、花嫁修業の一つでも多くこなしておきたいと思ってたしな」

 

 

花嫁修業と言いつつも、木曾と川内の手際はとてもスムーズで手慣れたものだった、今の二人はとても女性らしさがにじみ出ていた

 

 

【木曾】

「‥‥‥そろそろかな?」

 

【川内】

「‥‥うん?どうしたの木曾?」

 

【木曾】

「いや何でもない、なあ川内、後で俺の携帯で記念撮影しないか?」

 

【川内】

「アタシと木曾の二人で?」

 

【木曾】

「そうだ」

 

【川内】

「別に構わないけど‥‥何かの記念日だっけ?」

 

【木曾】

「永遠の友情を誇る俺達の久しぶりの再会を祝して‥‥まあそんなところだ♪」

 

【川内】

「大袈裟だなあ~、でも良いよ♪一緒に撮ろう♪」

 

 

二人は木曾の携帯を使って準備の間も、昼食を食べてるところも、昼食後の休憩中も、何枚も揃って写真を撮影した、写真の中で二人は笑顔で写る

あの時‥‥命懸けの苦難を共に生き抜いてきた同志ならではの並んだ笑顔‥‥

 

 

 

【木曾】

「(‥‥川内、実はお前に言ってない事があるんだ、今日ここに来たのはお前の顔が見たかったから、俺の長年抱えていた懺悔を聞いて欲しかったから、お前の事が心配だったから‥‥それは事実だ、しかしそれが全ての理由じゃないんだ

俺が今お前の前に居るのも、こうしてお揃いで写真を撮っているのも、ある理由があるんだ、それは‥‥‥)」

 

 

【川内】

「木曾♪今日は来てくれてありがとね♪少尉が横須賀に行って一人になってたから、正直少し心細かったけど、木曾が来てくれて本当に楽しかった~♪」

 

【木曾】

「そう言って貰えると俺も訪ねてきた甲斐があったてもんだよ♪」

 

 

 

【木曾】

「(もう一つの目的‥‥それは‥‥『アリバイ作り』さ‥‥)」

 

 

 

横須賀も勝浦周辺も正午前から雨が降りはじめていた、午後から夕方にかけて雨足は強くなる予報であった

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

勝浦の山の中‥‥‥

 

降り出した雨は地面をぬかるみに変えて、男たちの行軍を困難にしていた

 

 

【ゴロツキB】

「畜生!!忌々しい雨だ!!目的地の監視所はまだなのかよ!?」

 

【ゴロツキA】

「黙って歩け!!金は貰ってるんだからその分の仕事はしろよな!!」

 

【ゴロツキC】

【ゴロツキD】

「「フウッ‥‥フウッ‥‥」」

 

 

四人の男たちの正体は、三段腹の陸戦隊中尉が送り込んだ『ゴロツキ』連中である

川内が一人で居る(筈の)監視所に乗り込んで襲う手筈になっていたのだが‥‥

 

予定ではとっくに監視所に到着している筈なのに、未だに道もない山の中をさまよっていた

監視所に続く道は一本のあぜ道だけだが、男たちはあえてそのあぜ道を使わず別の方角から山に入り監視所に向かっていた、あぜ道にブーツの跡を残さない為である

ブーツの跡を残して文字通り『足がつく』のを男たちは嫌った

 

結果、土地勘のない山の中でルート選択に迷い、折からの雨でぬかるみに足を取られて前に進み辛くなっていたのである、悪い事は出来ないものだ

 

 

【ゴロツキC】

「こんな大雨なら靴跡の心配なんか要らなかったんじゃないか?」

 

【ゴロツキA】

「そんなのは結果論だろうが!俺達のやってる事は憲兵に見つかったら逮捕される事だから出来る限り証拠は残す訳にはいかないんだよ!雨が降る事までは俺のせいじゃねえよ!」

 

【ゴロツキB】

「くそう!!俺達にこんな手間かけさせやがって!!艦娘の癖に!!付いたら必ずぶち犯してやるからな!!」

 

【ゴロツキA】

「その意気だ、俺は金さえ貰えはどうでもいいがな」

 

【ゴロツキD】

「イヒヒ~♪‥‥楽しみだなぁ~♪久しぶりに小娘ガキのマ〇コを堪能出来るぜぇ~~♪戦艦も重巡も生意気な奴らばかりでいけねえ、その分軽巡や駆逐の奴らは弱いか素直だからな~~♪おまけに小さいから締まり具合が最っ高なんだよな~♪」

 

【ゴロツキC】

「うるせえよ変態野郎!!艦娘なんか犯して何が楽しいんだ!?奴らは裏を返せば深海と同じ、ただの化け物じゃねえか!!金が欲しく無かったら誰がこんな気色悪い事なんかするかよ!!」

 

【ゴロツキD】

「なんだビビったのか?嫌ならさっさと帰れよ!チキン野郎!俺がてめえの分まで楽しんできてやるよ♪」

 

【ゴロツキC】

「何だと!?てめえ!‥‥」

 

【ゴロツキD】

「どうした~♪ションベンでも漏らしたか~?」

 

【ゴロツキC】

「‥‥荷物を置け!!どっちが本当のチキン野郎か思い知らせてやる!!」

(ガシッ!!)

 

 

 

ゴロツキがゴロツキに掴みかかる、醜い内輪もめの争いだ

雨は既に大雨と呼んでいい雨足になっていた、雨合羽を着込んで土地勘のない山の中をぬかるみに足を取られながら歩き回り、疲労とストレスから男たちの苛立ちは頂点に達していたのだ

 

 

【ゴロツキA】

「止めろ!!馬鹿野郎!!」

 

 

先頭を歩いていたリーダー各のゴロツキが仲裁に入る、仲間の為ではない、わざわざ危ない橋を渡っているのに自分の稼ぎをフイにされたくないからだ、そもそもこの男たちに仲間意識があるのかも疑わしい

 

 

【ゴロツキA】

「‥‥おい!貴様!!」

 

【ゴロツキD】

「なっ!?‥‥何だよ!?」

 

【ゴロツキA】

「貴様の悪趣味には興味はない、好きにすればいい、だが仕事が片付く前に揉め事は起こすな!あまり調子に乗ってデカい口も叩くな!さっきも言ったがばれたら俺達は憲兵に逮捕される!俺達は一蓮托生なんだよ!それを忘れるな!」

 

【ゴロツキD】

「憲兵にばれたって別に構わねえだろ?あの三段腹を通して三木之様に助けて貰えばよ~~‥‥」

 

【ゴロツキA】

「アイツが俺達の事なんか助けると思うか?奴の興味は自分の立身出世と自分がムカつく奴を苦しめる事だけだ!三木之にとって俺達はただの棄てゴマだ!俺達は自分で自分を守るしか無いんだ!」

 

【ゴロツキB】

「このウサ晴らしは艦娘をブチ犯す事に向ければ良いんだよ、最高の締まり具合を堪能するんだろ?」

 

【ゴロツキD】

「‥‥ちっ!‥‥分かったよ!」

 

 

続いてリーダー各のゴロツキはもう一人のゴロツキを睨む‥‥

 

 

【ゴロツキC】

「‥‥‥俺にも文句あるのか?」

 

【ゴロツキA】

「そんなに艦娘を犯す仕事が嫌か?」

 

【ゴロツキC】

「気持ち悪いんだよ!艦娘なんて化け物も!それをゴ〇カンして楽しんでいる奴らも!どっちも気色悪い怪物じゃねえかよ!」

 

【ゴロツキD】

「やっぱりビビリか?チキン野郎!」

 

【ゴロツキB】

「てめえだけ今更いい子ぶってんじゃねえよ!借金野郎が!」

 

【ゴロツキC】

「何だと!!てめえら!!」

 

 

【ゴロツキA】

「この仕事がそんなに嫌なら今すぐ降りろ!!報酬は俺達三人で山分けする!貴様との関係もこれまでだ!やる気の無い奴を連れて行っても邪魔なだけだ!」

 

【ゴロツキD】

「いいぞいいぞ~~♪辞めちまえ~~♪」

 

【ゴロツキC】

「辞めるとは言ってないだろ!?気色悪いってだけさ、金になるなら何だってやってやるさ」

 

【ゴロツキA】

「だったら二度とつべこべ言うな!!艦娘を化け物と思ってるのは俺も同じだ!艦娘がどうなろうと知った事じゃない、全ては金の為だ!俺はまとまった金を手に入れたら軍隊からさっさとオサラバしてやる!汚れの兵隊仕事なんざもうウンザリだ!!金が欲しいなら黙って歩け!!」

 

【ゴロツキC】

「‥‥分かったよ!」

 

 

こうして大雨の中を強行軍は再会された‥‥‥

 

 

山の中で定期的に磁気コンパスを確認しながら歩き続ける、地図もある程度参考にする、しかし一向に目的地の監視所には到着しない

 

 

【ゴロツキA】

「くそっ!!一体どうなってるんだ!?」

 

【ゴロツキC】

「‥‥なあ、ひとつ良いか?」

 

 

ここである事に‥‥気付いてしまった

 

 

【ゴロツキA】

「何だ!まだ文句があるのか!?」

 

【ゴロツキC】

「俺達さっきから‥‥同じ所を何度も歩いてないか?」

 

【ゴロツキA】

「‥‥‥何だと!?」

 

 

意外な答えであった、いくら土地勘のない山の中とは言え有り得ない事であった

男たちはゴロツキとはいえ、まがりなりにも陸戦隊の兵士である、自分達の進行方向を見失うという素人のような事態は‥‥‥

 

男たちは気付いていなかった

 

道に迷ったのではない、迷わされたのである

 

 

【ゴロツキA】

「何故そんな事が分かる!?」

 

【ゴロツキC】

「足元を見ろよ!進行方向に向かって靴跡が続いてるだろうが!これ全部俺達の足跡だぜ!」

 

【ゴロツキB】

「おいおいマジかよ!完全に道に迷ってんだろ!?」

 

 

確かに歩く方向に向かって複数の足跡が続いていた、男たちは騒然となる

こんな大雨の土地勘も無い山の中で迷ったのでは洒落にならない、目的地にたどり着く事はおろか、下手をすれば遭難である

 

 

【ゴロツキA】

「止まれ!位置と方角を確認する!」

 

【ゴロツキD】

「これ遭難じゃねえか!?やってられねえぜ!」(ガサガサ‥‥)

 

【ゴロツキC】

「おい!何処に行く気だ?」

 

【ゴロツキD】

「ションベンだよ!連れションするか?」

 

【ゴロツキC】

「さっさと行ってこい!」

 

 

変態趣味のゴロツキは薮の中に入っていく、三人はその場で現在位置の確認を始めた

 

 

【ゴロツキB】

「なあ、俺からも質問があるんだが?」

 

【ゴロツキA】

「何だ?こんな時に」

 

【ゴロツキB】

「監視所にたどり着いたとしてだ、あの三段腹から無線で指示が出るまで俺達本当に待機してなきゃならないのか?こんな大雨の中を?」

 

【ゴロツキA】

「そんな面倒な事するわけ無いだろ?俺達の仕事は目的の艦娘をブチ犯してそれをカメラで撮影する事だ、三段腹からの連絡なんか無視すればいい、どの道奴に現場の状況なんか分からん、理由は後からどうとでも付けられる、監視所に到着したら直ぐ仕事にかかるさ、俺は仕事を済ませたらサッサとずらかるつもりだ」

 

【ゴロツキB】

「それを聞いて安心したぜ、ああ~!早くブチ犯してぇ~~!」

 

【ゴロツキC】

「確かに‥‥こんな気色悪い仕事なんかさっさと終わらせるに限るな」

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥

 

‥‥お前達‥‥ギルティ(有罪)‥‥

 

‥‥‥‥‥‥‥‥

 

 

【ゴロツキA】

「‥‥お前ら、何か言ったか?」

 

【ゴロツキB】

「おっ!俺は知らねえよ!?」

 

【ゴロツキC】

「‥‥‥‥誰だ!?」

 

 

確かに何かの声が聞こえた、言葉の内容まで聞き取れたのだから間違いない

男たちは周りを見渡す、雨に濡れた一面の山の中、人の気配は無い、そう人の気配は‥‥‥

 

 

【ゴロツキA】

「‥‥あの野郎(ゴロツキD)の悪戯だな!何処までも悪趣味な奴だ!」

 

【ゴロツキB】

「こんな時に悪い冗談やりやがって!!」

 

【ゴロツキC】

「俺が連れ戻してくる」

 

 

今の不気味な声の主を、先に薮に入った変態趣味のゴロツキの仕業だと判断したゴロツキCは、変態趣味のゴロツキが薮に入った所から分け入って探しに入る‥‥

(ガサガサ‥‥‥)

 

 

【ゴロツキC】

「おーーい!!何処だ!!ふざけた真似しやがって!!さっさと出て来い!!」

 

 

薮の中を見回した、変態趣味のゴロツキは比較的直ぐに見つかった

 

 

【ゴロツキD】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【ゴロツキC】

「何やってるんだ!?居るなら返事くらい!‥‥‥」

 

 

【ゴロツキD】

「‥‥たっ‥‥たすけ‥‥て‥‥‥   」

 

【ゴロツキC】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

変態趣味のゴロツキは今にも掠れて消えそうな声で、泣きながら助けを求めてきた、ゴロツキの両腕は無くなっていた

 

 

【ゴロツキC】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

目の前の状況に思考の処理が追いつかないゴロツキCは言葉が出ない

両腕だけではない、身体のあちこちが噛み砕かれ、喰いちぎられていた

 

 

【ゴロツキD】

「」(ズルッ‥‥‥ボトッ‥‥ボトッ‥‥)

 

 

変態趣味のゴロツキを形成していた肉体は、首がずれ落ち、上半身と下半身が分離して地面に崩れ落ちた、ただの肉塊と化した変態ゴロツキを見たゴロツキCは目の前の状況をやっと理解すると‥‥‥

 

 

【ゴロツキC】

「‥‥うっ!‥‥うあああああーーー!!!!!」

 

 

大声で叫ぶと他のゴロツキの所によろけながら走って戻る

 

 

【ゴロツキA】

「何だ!?そんな血相を変えて!?」

 

【ゴロツキB】

「変態野郎はどうしたんだよ?」

 

【ゴロツキC】

「ハアッ!!‥‥ハアッ!!‥‥うぶっ!‥‥げええええーーー!!!」

 

【ゴロツキB】

「うわっ!!コイツ吐きやがった!!」

 

 

先程のおぞましい光景を思い出したゴロツキCは地面に吐瀉物(としゃぶつ)を撒き散らす

 

 

【ゴロツキA】

「おいっ!!どうした!?何があった!?言え!!」

 

【ゴロツキC】

「ゲホッ‥ゲホッ‥‥奴が‥‥奴が‥‥喰われた‥‥」

 

【ゴロツキB】

「はあっ?てめえ何言ってんだ?」

 

【ゴロツキC】

「あの変態野郎はぁ!!両腕と内蔵を喰われて死んじまったんだよぉぉぉ!!!」

 

【ゴロツキA】

「何言ってる!?どういう事だ!?奴は殺されたのか!?」

 

 

このゴロツキCがこんな嘘をつく理由が無い、一同は愕然とした

 

 

【ゴロツキB】

「‥‥なっ‥なあ、さっきの声ってもしかして‥‥」(顔面蒼白)

 

 

((‥‥‥ガサガカ‥‥))

 

【ゴロツキA】

「‥‥!!?誰だ!?」(ジャキッ!)

 

((‥‥‥ガサガカ‥‥))

 

【ゴロツキC】

「‥‥!!ひっ!!」(ビクッ!)

 

 

ゴロツキ達の周辺を、薮の中を、何かが高速で動き回っている‥‥

ゴロツキ達は携行していたハンドガンを抜いて周囲に構える、獣か何か知らないが変態趣味のゴロツキを喰い殺した何物かがそこにいる、そして今度は自分達の事を‥‥‥

 

もはや艦娘を犯すどころではない、自分達が殺されるかも知れない状況に追い込まれた

 

 

【ゴロツキA】

「何かの獣か!?くそ!!こんな時に!!」

 

【ゴロツキB】

「‥‥冗談じゃねえよ!!こんな話聞いてねえよ!!」

 

【ゴロツキC】

「‥‥俺達‥‥殺される‥‥」

 

【ゴロツキB】

「うるせえ!!!黙れよチキン野郎!!!」

 

 

ゴロツキBが恐怖と怒りの表情をゴロツキCに向けた、その次の瞬間‥‥

 

((ドボォ!!!))

 

【ゴロツキB】

「げぶふっ!!!?」

 

【ゴロツキC】

「!!!!!!」

 

 

 

ゴロツキBは背後から腹部を刺し貫かれた、血煙が雨を朱色に染める

 

 

【ゴロツキA】

「‥‥んなっ!!?」

 

【ゴロツキC】

「うっ!!!‥‥うぎゃあああーーー!!!」

 

【ゴロツキB】

「ごぶっ‥‥なっ‥‥なにこで?‥‥」

 

 

余りにも突然の事で当の本人にも状況が掴めない、ゴロツキBの腹部を刺し貫いたのは、何かの『素手』であったのだ、爪の尖った人間のような指も見える

 

その『素手』の持ち主の姿を確かめる余裕は他の二人には無かった、ただ目の前の異常過ぎる状況に圧倒されていた

 

 

((‥‥ズザザザザザーーー))

 

【ゴロツキB】

「ひっ!!!‥ひぎいいい!!!‥だじげでーーー!!!‥‥‥」

 

 

ゴロツキBは泣きわめきながら、そのまま薮の中に引きずり込まれていった、その速さは人間の仕業とは到底思えない

 

 

【ゴロツキA】

「!!やっ!!野郎!!」((PAM!PAM!PAM!))

 

 

リーダー各のゴロツキAは恐怖に駆られて発砲した、その先に居るゴロツキBがどうなろうと関係ない、それに奴はどうせ助からないだろう

 

ゴロツキBが消えた薮の中に何発も発砲するゴロツキA、ゴロツキCもそれに加わって発砲した、しかしおそらく効果はあるまい

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

勝浦の監視所‥‥‥‥‥

 

 

【川内】

「‥‥あれっ?」

 

【木曾】

「どうした?」

 

【川内】

「今何か聴こえなかった?‥‥何かの発砲音みたいな‥‥」

 

【木曾】

「この大雨だ、気のせいだろ?」

 

【川内】

「そう‥‥かなあ?」

 

 

【木曾】

「(‥‥‥始まったな)」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

イヤダァ~~~!!!シニタクナイ!!シニタクナイ!!!

タスケ‥‥‥((バキッ!‥ベキッ!‥ボキッ‥))ゲボゴッ!!‥‥‥

 

((‥‥ムシャ‥ムシャ‥))

 

 

凄まじい悲鳴と何かが引き裂けるような音‥‥‥

 

そして悲鳴が聴こえなくなると今度はライオンが生肉に食らい付くような音が‥‥

 

 

 

【ゴロツキA】

「‥‥何だよ!?‥‥何なんだよこれ!!?」(顔面蒼白)

 

【ゴロツキC】

「‥‥喰われてる‥‥俺達みんな喰い殺されるんだ!!!」

 

【ゴロツキA】

「貴様黙れ!!!」

 

 

二人になってしまったゴロツキ、依頼の仕事は破綻した、もう先には進めない、生きて帰れるかどうかもあやしくなってきた、手にしたハンドガンは何の役にも立たない事だけははっきりしている

 

 

 

汝の犯し罪‥‥その血肉で償え!

 

 

【ゴロツキC】

「ひいいいいい!!!」(ビクッ)

 

 

地獄の底から響き渡るような不気味な声‥‥‥

明らかに高度な知能をもった恐ろしい存在が自分達を補食しようとしている

野獣ではない、悪魔のような恐ろしい存在が‥‥‥

 

 

【ゴロツキA】

「‥‥冗談じゃない!‥‥俺は金が欲しかっただけなんだ!‥こんな所で殺されてたまるか!!野獣なんかに喰われて!!‥‥‥まてよ‥‥」

 

【ゴロツキC】

「‥‥何だよ!?俺の顔を見て!?何か良い手があるのか!?」

 

 

ゴロツキCは猛烈に嫌な予感がした、そしてその予感は的中する

ゴロツキAは瞬間本物の悪魔になった、悪魔以上と言うべきか

 

 

【ゴロツキA】

「おい、お前‥‥肉食獣から身を守る為に1番いい方法は何だと思う?」

 

【ゴロツキC】

「何だよ!?いきなり‥‥‥」

 

((PAM!PAM!))

 

【ゴロツキC】

「ぐわあああーーー!!!?」(ドシャッ!!)

 

 

ゴロツキAはゴロツキCの両足太股を撃ち抜いた、地面に倒れるゴロツキC

 

 

【ゴロツキC】

「いっ!!‥‥いきなり何しやがるーー!!!」

 

【ゴロツキA】

「肉食獣の前に囮の餌をぶら下げておくのさ!その間に俺は逃げられる、どうだ?良い手だろう?」

 

【ゴロツキC】

「ふっ!!!‥‥ふざけるなぁぁぁ!!!!!」

 

【ゴロツキA】

「俺はこんな山の中で化け物に喰われるなんて真っ平御免だ!!あばよ!!」

 

【ゴロツキC】

「ちくしょおおお!!!!!」

 

 

ゴロツキCはハンドガンの銃口をゴロツキAに向けてトリガーを引く、しかし生憎、弾倉(マガジン)はカラになっていた

 

 

【ゴロツキA】

「バカが!!残弾は把握しておくもんだ!!シロウトめ!!」

 

 

そう吐き捨てるとゴロツキAはその場から走り出した、ゴロツキCを本気で囮にする為に置き去りにするつもりだ

しかし走り出して数歩も行かないうちに‥‥‥

 

 

【ゴロツキA】

「‥‥!!?うぎゃああああああああ!!!痛てえええええええ!!!!」

((ビキビキビキ‥‥‥))

 

 

ゴロツキAは全身が痙攣して悲鳴をあげた

 

 

【ゴロツキA】

「いっ!!痛てええええ!!!たっ!!!ざじげ!!!‥‥」

 

 

全身の苦痛に表情が歪みながら手を伸ばして叫ぶ!

それは正に断末魔の叫びそのものだった

 

 

【ゴロツキA】

「ひぎいいいいいいーーー!!!!!!」

 

【ゴロツキC】

「‥‥なっ!?‥‥なんなんだよ!!」

 

 

その断末魔の叫びも長くは続かない

 

 

【ゴロツキA】

((バキバキブシャアァァァァァァ‥‥))

 

【ゴロツキC】

「ぎゃあああああああーーー!!!」

 

 

頭のてっぺんから足の爪先まで、ゴロツキAの肉体は一瞬にして砕け散った、まるで見えない鋭利な刃物でみじん切りに切り刻まれたみたいに‥‥‥

 

 

【ゴロツキC】

「ひっ!‥‥ひいいい~~‥‥‥」

 

 

頭の処理能力の限界を超える出来事が立て続けにおこって、ゴロツキCの精神は崩壊しかかっていた、もう何もまともに考えられない、分かる事は『次は自分の番だ』ということ、そして『誰も助けには来ない』ということ‥‥

 

 

((ズッ‥‥ズッ‥‥ズッ‥‥))

 

 

【ゴロツキC】

「‥‥‥ひっ!!!」

 

 

大雨の中だというのに低く重厚な足音がすぐ側まで近付いてきた

ゴロツキCは背後を振り向いた、そして

 

 

【ゴロツキC】

「!!!!!!うぎゃああああああああーーー!!!」

 

 

悲鳴をあげて後ずさりした、全身黒い影に覆われて目だけが赤く光っている、長身の何者かが立っている、人間の姿にも見えるがとても人間とは思えない、なぜならその何者かは『人間の腕』を掴みそれを食っていたからだ、その腕の持ち主がゴロツキBなのか変態趣味ゴロツキなのかは分からない

ゴロツキCが悲鳴を上げたのもそれら全てが理解を超える恐怖だったからに他ならない

 

その肉の味にも飽きたのか、その何者かは食いかけの腕を捨てた

 

 

(‥‥ポイッ‥‥バサッ‥‥)

 

 

 

【二等憲兵吸血鬼】

「チッチッ‥‥最近の深海も味が落ちたな、まあ食えない程じゃないが」

 

【ゴロツキC】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

一言も言葉を発する事が出来ないゴロツキCを無視して、姿を表した怪物、二等憲兵吸血鬼は続けた

 

 

【二等憲兵吸血鬼】

「他の二匹と同じように奴(ゴロツキA)も食っちまうつもりだったが、臭くてまずそうだったから普通に殺した、お前はどうかな?」

 

【ゴロツキC】

「いっ!!!いやあああーーー!!!」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「何だお前?ションベン漏らしやがって、きったねーな」

 

【ゴロツキC】

「‥‥ばっ!‥‥ばけもの‥‥」

 

 

ゴロツキCは失禁していた、しかしもうすぐ殺されるという状況に比べれば失禁なんて大した事ではない

完全に腰が抜け、太股を撃たれたゴロツキCに逃走する手段はなかった、唯一助かる方法があるとすれば命ごいをする事ぐらいだ、しかし目の前の怪物にそれが通用するかは絶望的だった

 

 

【二等憲兵吸血鬼】

「初対面に向かって化け物とは失礼だな、どういう教育を受けてきやがったんだお前?俺は『憲兵』だ」

 

【ゴロツキC】

「けっ‥‥‥憲兵?‥‥」

 

 

ゴロツキCは素っ頓狂な声をあげる、それはそうだろう、目の前の怪物を『憲兵』と誰が信じられるだろうか?そもそも憲兵が人を喰らうなんて聞いた事がない

 

 

【二等憲兵吸血鬼】

「信じる信じないはお前の勝手だ、この山の中に汚い面の深海棲艦が4匹出現したという情報があってな、憲兵の俺が討伐(捕食)に来た」

 

【ゴロツキC】

「深海棲艦って‥‥‥‥」

 

 

ゴロツキCは直ぐに気付く、『4匹の深海棲艦』とは自分達の事だ、この状況ではそれしか考えられないからだ

 

 

【ゴロツキC】

「おっ!!‥俺達は深海棲艦じゃないぞ!!?」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「お前は深海棲艦を化け物と言ったな?本当に化け物なら今すぐ掃討するべきだろう?その為に俺がここに来た」

 

【ゴロツキC】

「俺達は!‥俺達は人間だぞ!?」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「貴様らが人間だと?笑わせるな!」

 

【ゴロツキC】

「‥‥‥へっ?」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「貴様らは金の為、下半身の欲求の為だけに艦娘を傷付けようとしただろ?」

 

【ゴロツキC】

「そっ!?‥‥それが何だって言うんだよ!?」

 

 

両者の間では『艦娘』に対する価値観が全く違うのであるから話は噛み合う筈がない、しかし二等憲兵吸血鬼にとってそれはどうでもいい事だ、どの道コイツは食っちまうだけだ

 

 

【二等憲兵吸血鬼】

「生まれも育ちも関係ない、艦娘を傷付ける奴は全て深海棲艦(強行派)だ、深海棲艦は化け物、化け物なら即討滅する、簡単な理屈だろ?」

 

【ゴロツキC】

「そっ!?‥‥そんな無茶苦茶だあ!!!」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「馬鹿な奴らだ、真面目に生きていれば人間として死ねたかもしれねえのに、ふざけた真似して深海棲艦なんぞに成り下がりやがって」

 

【ゴロツキC】

「おおおっ!!!俺達は人間だぁぁぁ!!!」(ジタバタ)

 

【二等憲兵吸血鬼】

「食事の続きだ、俺は忙しい、あまり手間をかけさせるな!」

 

【ゴロツキC】

「まっ!!待ってくれよぉぉぉ!!!相手はたった一匹の艦娘じゃないか!!艦娘のせいで何で俺達四人がこんな目にあわなくちゃならないんだーー!?」

 

ドホッ!!!

 

【ゴロツキC】

「!!!!!!ぬぎゃああああああああーーー!!!」

 

 

ゴロツキCの片腕が見えない鋭利な刃物に斬られた様に吹き飛んだ、ゴロツキCは確実になった死と猛烈な苦痛によって悲鳴を上げる、心臓発作を起こさなかったのは精神が半分崩壊していたからかもしれない

 

 

【二等憲兵吸血鬼】

「たった一匹の艦娘か‥‥お前ムカつくなあ~、せめてひとおもいに息の根止めてやるつもりだったが気が変わった、苦しみながら死んでいけ!」

 

【ゴロツキC】

「‥‥い‥‥いやだ‥‥」(ボロボロ‥‥)

 

 

【二等憲兵吸血鬼】

「貴様に来世があるなんて思うなよ!貴様の来世も魂も、粉々に噛み砕いてやる!」

 

 

【ゴロツキC】

「‥‥えっ‥‥えへへへ‥‥」

 

 

ゴロツキCは恐怖と絶望の余り、ついに気がふれてしまった、だが怪物の様な憲兵の牙は容赦なく振り下ろされる

 

 

ハアァァァァァァ‥‥‥

 

 

 

 

ギャアアアアァァァ‥‥‥

 

 

 

 

山の中に断末魔の悲鳴が響き渡る、しかしそれは勢いを増した雨音に直ぐかき消されてしまった

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

横須賀、ブロック海軍の施設(練兵場)をのぞむ一角

 

 

【帝国海軍、監察局員】

「こちら『勢子2』、奴等が動き出した」ザザッ‥‥

 

【正義 公人】

(こちら『金床』了解、そのまま状況を確認・録画しつつ待機せよ、こちらの合図があるまで絶対に動くな)

 

【監察局員】

「『勢子2』了解、このまま監視を継続する」ザザ‥‥

 

 

大雨の中、練兵場を監視する、バラクーダを被った監察局員が通信を切る

 

 

【監察局員】

「正義大尉も人が悪いな、三木之のチンピラとその手下にお灸をすえる為にあの擲弾兵を人柱にしようってんだからな」

 

【正義 公人】

(貴様、聴こえたぞ?)

 

 

軽く呟いただけのつもりが、無線の向こう側の正義大尉には聴こえてしまったみたいだ

 

 

【監察局員】

「いえ、失礼しました!」

 

【正義 公人】

(別に構わん、事実だからな、だが貴様達にこれだけは言っておくぞ)

 

【監察局員】

「……はっ!」

 

【正義 公人】

(優れた軍人とは、与えられた装備を有効に使いこなしてこそ、初めて名乗る事が出来るのだ、我々は任務遂行の為に『擲弾兵という装備品』を有効に活用しているのだ、忘れるな)

 

【監察局員】

「肝に命じます(恐ろしい人だ、自分の正義に微塵も疑問を感じてないんだからな)」

 

 

ーーーーーー

 

 

遠くの景色が霞んでしまう程の大雨の中の練兵場

 

ぬかるんだ地面を裸足で踏みつけながら全裸の男が走っている、軽装甲車が背後からそれを追い立てる

 

異様な光景だ

 

 

【見習い少尉】

「………………」((バシャバシャバシャ!))

 

 

【三木之 苗夫】

「このぉウスノロがぁぁぁ!!!もっとシャキシャキ走れぇ!!!この三木之様がてめえの腐った根性を叩き直してやらあ!!!有りがたく思えやあぁぁぁ!!!」

 

【玉林 宏】

「はっ……ははは……(やっぱりコイツ、狂ってる!)」

 

【三木之 苗夫】

「何だてめえ!!その面ぁ!!文句あんのか!?」

 

【玉林 宏】

「いっ!…いえ別に!」

 

【三木之 苗夫】

「てめえは黙って運転してりゃいいんだ!!クソがあぁ!!!」(ガスッ!!←シートを足蹴り)

 

【玉林 宏】

「いてぇ!……くっ…(ちくしょう!俺達が居なければ1人じゃ何も出来ない癖に!)」

 

 

雨合羽を着込んだ三木之が装甲車の上段から走る見習い少尉を罵倒しながら叫ぶ、運転を強制された書類管理中尉は狭い装甲車の中で三木之と二人きりの状況に我が身の運命を呪った

 

 

 

【見習い少尉】

「……参ったな……こんな格好……川内には……とても見せられん……」

 

 

雨と泥の中を淡々と走る見習い少尉、先程まで将校達にスパイクや鉄パイプで殴られていた為に、顔全体が腫れ上がり、身体中にアザや擦過傷が残っていた

 

勿論この程度の傷そのものは擲弾兵にとってはどうと言う事は無い、しかしそれでも一応苦痛はあるし何よりこんな姿を川内に見られでもしたら……

 

 

【見習い少尉】

「全く……今の俺……格好悪すぎるよなぁ……何の成果も残せないで……」

 

 

【五階 務】

「おらおら~、擲弾兵、これでもくらいな~」

((ブボボボボ……))

 

【見習い少尉】

「……ぶっ!……」

 

 

民間業者から半ば無理矢理徴用した衛生車(バキュームカー)から伸びるホースをニヤニヤしながら向ける三段腹中尉、そこから大量の『何か』が勢いよく飛び出し、見習い少尉の頭から全身にかけてぶち撒かれる

 

その『何か』が何なのかは言うまでもないだろう

 

 

【見習い少尉】

「…………………」

 

 

【五階 務】

「ギャハハハ!擲弾兵の全身野グソあえ、完成~♪」

 

【大東 裕之】

「うわっ!!くっ!くせえ!!…ばっ!!バカヤロー!!気をつけろ!!こっちにかかったらどうするんだ!!」(怒)

 

【五階 務】

「いいからお前はカメラ構えてしっかり撮影してろよ、映像が悪いと今度はお前が三木之様に糞まみれにされるぜ~♪」

 

【大東 裕之】

「……ちくしょう!…何で…何でエリート将校のこの俺がこんな事をしなくちゃならないんだ!?」

 

【五階 務】

「イヒヒヒ~♪分かってねえなぁお前は、お前も俺達も初めからエリートなんかじゃ無かったのよ、それに俺達はもう何処にも逃げ場なんか無いのさ~♪だったらよ~、トコトン三木之様の甘い汁吸ってよ~、一秒でも長く楽しく馬鹿騒ぎしようじゃねえか~なあ♪」

 

【大東 裕之】

「うるさい!!お前なんかと一緒にするな!!」

 

 

三木之の吐き出す毒に馴染んでしまった三段腹中尉に対して、自称エリート中尉は自分の置かれた状況を甚だ理不尽だと感じていた、俺は優れたエリートだ!こんな使い走りで終わる男じゃない!……と

 

 

【五階 務】

「往生際の悪い野郎だな~、まだ出世なんかに興味あるのかよ?」

 

【大東 裕之】

「俺があの三木之中佐とその一派に着いてるのはそもそもその為だ!俺だってガキじゃない!如何に俺がエリートても海軍で本来あるべき出世コースに乗る為にはそれなりのバックが必要なのは分かってる!

だから我慢してこんな下らない事もやってるんだ!畜生!!あんな擲弾兵と魚雷も射てない艦娘なんかと関わらなければ!!……」

 

 

大雨の中で雨合羽を着込んでカメラを構えながら己の不平不満を吐き出す自称エリート中尉、しかし、こんな状況を招いているのはこの男本人の浅はかさにも原因があるのだ

 

 

【五階 務】

「ああそうかい、好きにしろよ、どうでもいいが画像データのバックアップは本部のデータベースに転送しとけよ、最悪メモリカードを押収されても画像は残るからな」

 

【大東 裕之】

「ああ!分かってるよ!」

 

 

 

【見習い少尉】

「くせっ!……全く……惨めなもんだな……今の俺は……」

 

((バシャ…バシャ…バシャ…))

 

【見習い少尉】

「川内……すまん川内……こんな情けない俺で……」

 

((バシャ…バシャ…バシャ…))

 

 

見習い少尉は走り続ける、大雨の中を全裸で、全身に糞尿をぶちまけられても…それでもひたすら走る

 

擲弾兵だからこの程度の運動では全く息もあがらない

しかし、惨めであった、屈辱的であった、ある程度トラブルの予測がついても今の自分達はそれを避ける事も出来ない、その状況が情けなくて…何より川内に申し訳ない気持ちで一杯だった

 

そんな見習い少尉の気持ちを知ってか知らずか、三木之は装甲車で更に追い立てる

 

 

【三木之 苗夫】

「ギャハハハーーー!!!きったねぇなぁーーー!!!どうだ糞まみれになった気分は!!?誰の物かも分からねえ糞の味は!!?うめえだろ!?♪人間でもないクセにこの俺に逆らうからこうなるんだ!!」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「これがてめえと俺の決定的な差だ!!!てめえは俺には逆らえねえ!!あの糞艦娘もだ!!!それが分からないてめえを本当の糞野郎にしてやったぜ!!!」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「身の程を知ったか!!擲弾兵!!俺様の直々の教育を受けられてありがたいだろ!?ええ!!?」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【三木之苗夫】

「てめえ!!何とか言いやがれぇぇぇーーー!!!このクソがぁぁぁぁーーー!!!」

 

(((papapapapapapa!!!)))カランカラン……

 

【玉林 宏】

「ひっ!?…ひええ!!」

 

zip! zip! zip! zip! zip!

 

【見習い少尉】

「……!!……」

 

 

何の反応もしないで黙々走り続ける見習い少尉に、一人で勝手に怒り心頭に発した三木之は、装甲車に備え付けられた軽機関銃を乱射した、それにビビる書類管理中尉

 

三木之は射撃が下手である、普段ろくに訓練もしない、外れたら外れたで標的のせいにするような男だから射撃が上達する訳もない、おまけに機関銃はただでさえ反動が大きい

 

弾倉に150発の弾丸があったがその殆どは空しく地面に泥水を撥ね飛ばす結果となったがそれでも機関銃の連射である、3発だけ見習い少尉の背中に命中した

 

 

【見習い少尉】

「いてっ……下手くそめ!」

 

 

皮膚を突き破ったフルメタルジャケット弾は擲弾兵の硬い筋肉に弾き返された、しかし苦痛が無い訳ではない

 

 

【三木之 苗夫】

「ギャハハハーー!!!痛てえかぁぁぁ糞擲弾兵!!!痛てえのが嫌ならさっさと死ねぇぇぇ!!!くたばりやがれぇぇぇーーー!!!」

 

【玉林 宏】

「ちっ!!…中佐ぁぁぁ!!!練兵場で!!基地内で無許可で発砲はまずいですよーーー!!!」

 

【三木之 苗夫】

「うるせえぇぇぇ!!!黙ってろ!!!てめえも撃つぞ!!?どいつもコイツも俺の邪魔ばかりしやがってぇぇぇーーー!!!」

 

【玉林 宏】

「(冗談じゃないよ!!擲弾兵をいたぶる為だけって聞いたから書類を遣り繰りして装甲車を手配したんだ!!こんな事が憲兵や監察局あたりに知られたらただじゃ済まない!!)」

 

 

キチ○イに刃物、命令されたとは言え三木之に悪いオモチャを与えてしまった事に今更ながら後悔する書類管理中尉

 

((……ガチャン!))

 

【三木之 苗夫】

「……んん!!?」

 

 

弾切れである

トリガーを引き続けていたのだから当然だ

しかしその理屈は三木之には通じない

 

 

【三木之 苗夫】

「おい!!弾が出ねえぞ!?どうなってやがる!!」

 

【玉林 宏】

「いや!どうなってるも何も‥‥(あんたが引き鉄握り続けてたんだから当然じゃないか!?)」

 

 

自分で撃っておきながら弾切れの事実に怒る三木之、この男、普段普通に怒らない時間は無いのだろうか?

 

 

【三木之 苗夫】

「馬鹿野郎!!!俺の許可無く勝手に弾切れにするんじゃねえぇぇぇ!!!」

 

【玉林 宏】

「ええ!?‥‥(あんた!本当に軍人かよ!?)‥予備弾倉が後部にありますから、それで交換して頂ければ‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「何で俺がそんな事しなくちゃいけねえんだよ!?てめえがやれよ!!」

 

【玉林 宏】

「(撃ってるのはあんただろ!?)‥‥自分は今、運転中であり‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「てめえの都合なんか知るか!!!走りながらやれ!!!」

 

【玉林 宏】

「そんな無茶な!?」

 

【三木之 苗夫】

「俺の命令が聞けねえのかぁぁぁ!!!」

 

 

上官の無茶振りは軍隊の日常なれど、それでも最低限の出来る出来ないはある

この男は金持ちのボンボンが我が儘のまま大きくなったようなものだ

暴君に仕えるのも楽ではない

 

 

その時近くに‥‥‥

 

(((ズドドォーー‥‥‥ン!!!)))

 

轟音と共に落雷が発生した

周囲の光景が一瞬だけ明るく照らし出される

 

 

【三木之 苗夫】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【玉林 宏】

「‥‥うん?‥中佐?‥‥」

 

 

雷が光った瞬間、雨の中をひた走る見習い少尉の姿が三木之の視界に眩しく映った

この落雷の瞬間何を思ったか‥‥三木之の思考の中で何かのスイッチが入った

 

奴らさえ居なかったら! 奴らさえ居なかったら!

 

 

【三木之 苗夫】

「‥‥‥‥‥‥‥殺せ!」

 

【玉林 宏】

「‥‥はあっ!?」

 

【三木之 苗夫】

「あの糞まみれ野郎をひき殺せぇぇぇーーー!!!本当の死体野郎に変えてやれぇぇぇーーー!!!」

 

【玉林 宏】

「やっ!!‥止めて下さい三木之中佐!!この装甲車は軍の装備品なんですよ!?私闘で装備品を持ち出しただけでも重罪なのに!基地内で刃傷沙汰まで起こしたら!それこそ中佐の経歴に傷が!!‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「てめえが運転してんだ!!てめえが罪を被ればいいじゃねえか!!」

 

【玉林 宏】

「はあああーーー!!?」

 

【三木之 苗夫】

「いいからさっさとひき殺せぇぇぇーーー!!!この世界で生きる事が許されるのは俺の役に立つ奴らだけだぁぁぁ!!!」

 

【玉林 宏】

「もっ!!‥もう嫌だあぁぁぁーーー!!!」

 

【三木之 苗夫】

「どけぇぇぇぇぇぇーーー!!!」(((ドスッ!!!)))

 

 

普段の狂気に拍車がかかった三木之は、精神的に限界に達していた書類管理中尉をドライバー席から突き飛ばした、そして自分が座ると、即座にアクセルをベタ踏みして装甲車を見習い少尉めがけて突進させた

 

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥!?」

 

 

背後から追って来る装甲車が、いきないタイヤが泥水を派手に跳ね上げて急加速を始めた事に、見習い少尉は即座に異変を感じ取る

 

 

【見習い少尉】

「野郎!!とうとうとち狂ったか!?」

 

 

【三木之 苗夫】

「この俺の『正義の怒り』を思い知りやがれぇぇぇーーー!!!」

 

 

【見習い少尉】

「酔っ払ってるのか!?あんたの何処が正義だよ!?」

 

 

運転席の小さな窓ガラス越しに三木之の怒り狂った顔が見える、絶叫する口の動きも、それを見て見習い少尉は三木之の発言を理解した

 

装甲車が向かってくる、見習い少尉はそれをかわそうとするが三木之もしつこくその方向にステアリングを切る

 

(((バアーーン!!‥‥バシャッ!!‥‥)))

 

【見習い少尉】

「‥‥‥ぶわっ!!‥‥畜生め!!」

 

 

直撃は免れたが見習い少尉は装甲車の側面に跳ね飛ばされて、地面に顔からダイブした

 

装甲車は急制動をかけて停車、操縦席のハッチから三木之が顔を出す

 

((ガチャ‥‥))

 

【三木之 苗夫】

「てめえ!!!避けてんじゃねえぇぇぇーーー!!!」

 

【見習い少尉】

「あんた馬鹿か!?普通避けるだろ!!」

 

【三木之 苗夫】

「俺の命令が聞けねえのかぁぁぁ!!!」

 

【見習い少尉】

「黙って殺されろってか!?冗談じゃねえよ!!」

 

【三木之 苗夫】

「こっ!!!この野郎!!!糞まみれのボロ雑巾のゴミがこの俺に!!!……」

 

【見習い少尉】

「なあ中佐!!あんたに言っておきたい事がある!!」

 

【三木之 苗夫】

「勝手に喋るなぁぁぁーーー!!!」

 

【見習い少尉】

「中佐!!あんたが今の俺を見てどう思ってるかは知った事じゃないが……」

 

【三木之 苗夫】

「こっ!!!この……」

 

 

お互いが相手の話をまともに聞こうとしないのだから会話が成立する筈もない、それでも見習い少尉は構わず続ける

 

 

【見習い少尉】

「実は俺はな、あんたに感謝してるんだよ」

 

【三木之 苗夫】

「……なんだとぉぉぉ!!?」(ギリギリ……)

 

 

相手が泣いて許しを乞うか、命乞いするかを期待していた三木之、それを踏みつけにする事を楽しみにしていた三木之、しかしその願望は崩れ去った

 

己の欲望成就を又しても擲弾兵に邪魔された形になって、三木之のこめかみの血管が浮き上がる

構わず見習い少尉は続ける

 

 

【見習い少尉】

「俺は一度、こんな大雨の中を素っ裸で走り回ってみたかったのよ!どんな解放感が味わえるのかってな!キッカケは妙な形になったがお陰で俺の願望の一つが叶ったよ!ああ、返礼はいらんからな?」

 

【三木之 苗夫】

「こっ!!!…この野郎!!!俺を!!!この三木之様をコケにしやがってぇぇぇーーー!!!」

 

【見習い少尉】

「もう終わりか?俺はもっと走るつもりだ、着いて来たければ勝手にしな、着いて来られるもんならな、どうする?おぼっちゃん?」

 

【三木之 苗夫】

「があああああああああーーーーーー!!!」(狂)

 

【玉林 宏】

「いやああああーーー!!!」(半泣き)

 

 

見習い少尉はまた走り出した、今度はマラソンではなく短距離走を走る位のスピードで

 

三木之も装甲車のアクセルを蹴飛ばすように踏んで急発進させ後を追う、しかし泥のぬかるみが4WDである筈の装甲車を振り回す

 

 

【見習い少尉】

「どうしたノロマ!車に乗ってるのに走ってる奴にも追い付けんのか?」

 

【三木之 苗夫】

「うるせえぇぇぇーーー!!!」

 

【見習い少尉】

「車体がぶれまくってるぞ?四輪駆動で何でそんな運転になるんだ?あんた!射撃だけじゃなくて運転も下手くそだったんだな?」

 

【三木之 苗夫】

「ぎいいいいいいーーー!!!」

 

【玉林 宏】

「やっ!!止めてくれぇー!!これ以上この人を挑発しないでくれぇーーー!!!」

 

 

走る全裸の男とそれを追う暴れる装甲車、泣き叫ぶ同乗者

大雨の練兵場でカオスな光景が展開する

 

 

【三木之 苗夫】

「くそうっ!!!ちくしょう!!!お前らさえ!!!お前らさえいなかったら!!!‥‥引き○してやる!!!」

 

【見習い少尉】

「人のせいにするんじゃねえよ!!いつまで拗ねた(すねた)ガキでいるつもりだ!?」

 

【三木之 苗夫】

「があああああああああーーーーーー!!!」

 

【玉林 宏】

「ぎゃあああああーーー!!!」(号泣)

 

 

【大東 裕之】

「……何か様子が……ておい!!こっちに来るぞ!?」

 

【五階 務】

「…あれ?何かヤバいなこれ…ぶつかるぞ!?」

 

【大東 裕之】

「にっ!!にげろーーー!!!」

 

 

【三木之 苗夫】

「邪魔だぁ!!!どけぇぇぇーーー!!!」

 

 

(((ゴッシャアァァァーーー!!!)))

 

 

見習い少尉は三木之の装甲車を衛生車に誘導する

 

高みの見物で安心しきっていた将校達は、自分達に向かって突っ込んでくる全裸男と装甲車に仰天した

 

将校達は逃げ散り、装甲車は衛生車に追突した、タンクが破裂して汚物が装甲車の中にまで降ってきた、三木之は迂闊にも天蓋を閉じるのを忘れていたのだ

 

 

【三木之 苗夫】

「ぶわあっ!!!」

 

【玉林 宏】

「ひいっ!!!くっ!くせえっ!!!」

 

 

【見習い少尉】

「よう中佐!あんたも糞まみれか?どうだ?あんたも俺も、こうなっちまえば人間も擲弾兵もないだろ?

これで俺達はみんな糞まみれだ、糞まみれ同士仲良くしようや!」

 

【三木之 苗夫】

「てっ!!!てめえ!!!よっ!よくも……」

 

【見習い少尉】

「三木之 苗夫中佐!」

 

【三木之 苗夫】

「こっ!!!この!!!馴れ馴れしく呼ぶんじゃねぇぇぇーーー!!!」

 

【見習い少尉】

「三木之 苗夫!!」

 

【三木之 苗夫】

「うぐっ!……」

 

 

装甲車から身を乗り出した三木之と雨の中で立ち続ける見習い少尉……

 

見習い少尉に鋭い声で名前を呼ばれた三木之は一瞬怯む、自分の周りでこのように名前を呼ぶ者は三木之の周辺には居ないのだ

 

三木之を見る見習い少尉の目は、何処か三木之を哀れんでいる様に見えた

 

 

【三木之 苗夫】

「てっ!!てめえ!!何だその目は!?」

 

【見習い少尉】

「三木之の旦那、今のあんたに必要なのは、今そこにいる腰巾着共じゃない」

 

【三木之 苗夫】

「……てめえ!……」

 

【大東 裕之】

「こっ!腰巾着とはなんだー!!」

 

【見習い少尉】

「あんたは孤独だ、あんたの周りにいる奴等はあんたの父親が持つ金と権力、そしてあんたの狂気を恐れている連中だけだ、誰もあんたに尊敬も忠誠心も感じてなんかいない、奴等はあんたを恐れ、あんたの権力に便乗して甘い汁を吸おうとしてるだけだ、それはあんた自身が望んで招いた事だがな」

 

【三木之 苗夫】

「こっ!……この……」

 

【見習い少尉】

「あんたに必要なのは何でも言うことをきく下僕じゃない、何でも腹を割って話せる対等の者だ、例え1人でもそういう存在を作れたら孤独なあんたの人生も変わるかもしれない、俺がなってやってもいいんだがそれはあんた次第だからな…」

 

【三木之 苗夫】

「ぐがああああーーー!!!」(激怒)

 

 

見習い少尉の忠告を受けて三木之は……怒り狂った

 

 

【三木之 苗夫】

「この糞ゴミの死体野郎!!!俺の許可無しに勝手に喋るな!!!勝手に息を吸うな!!!よくもこの三木之様に説教垂れやがったなぁぁぁ!!!

この世界の奴等は全員俺の下僕だ!!!三木之財閥の御曹子であるこの三木之苗夫様の幸福と命令がこの世界の全てなんだーーー!!!

お前ら下僕は黙ってこの三木之様の為に!働いて戦って死んでいけばいいんだ!!!俺の役にたたない野郎はこの世界に存在する資格なんざねえぇぇぇーーー!!!

対等の存在だぁ!?そんなもん要るかぁぁぁ!!!」

 

 

【玉林 宏】

「……(こいつ!正真正銘に狂ってる!…いつか何とかして手を切らないと!)」

 

 

【見習い少尉】

「そうか、それがあんたの生き方か?あんた自分だけが人間のつもりかよ?」

 

【三木之 苗夫】

「それがどうしたぁ!!擲弾兵!!」

 

【見習い少尉】

「そうか……分かった、もう何も言わないよ、ただな……」

 

 

もうこの男を救う事が出来る者は居ないのか?

少なくとも自分には無理だ、見習い少尉は三木之と会話をする事を止めた

 

 

『へたれ提督』と『三木之 ジャギ』、二人の男が完全に袂を別った瞬間と言えた

 

 

【見習い少尉】

「中佐、俺の事はいくら憎んでもらっても構わない、ただ川内の事だけは……もう水に流してやってくれないか?」

 

【三木之 苗夫】

「この死体野郎!!!また俺に命令しやがるかぁぁぁ!!!」

 

【見習い少尉】

「『人間』のあんたに頼んでるんだ!あんたは川内を苦しめて色々奪ってきた、妹も、三水戦の艦娘たちも、海軍への希望や帰属心までもあいつは失いかけてる、もう充分じゃないか、助けてやれとは言わん、もう構わないでやって欲しいんだ、たのむ」

 

 

女性として大切なものまでお前は奪った!その言葉は飲み込む見習い少尉であった

 

見習い少尉はここで頭を下げた、この時の映像は後に『擲弾兵が人間様に屈服して詫びを入れた』と称されて編集され流される事になる

 

おそらく最後になるであろう見習い少尉の嘆願に対して、三木之は……笑い出した

 

 

【三木之 苗夫】

「いひひっ……いひひひ~~!」(嘲笑)

 

【見習い少尉】

「可笑しいか?」

 

【三木之 苗夫】

「たった一匹の艦娘の為に頭を下げるとか……可笑しくて惨めで笑えるねぇ~~!」

 

【見習い少尉】

「あんたに理解してくれとは言わないさ」

 

【三木之 苗夫】

「おい死体野郎、いいこと教えてやる!俺は近いうちに『作戦部』に復帰する、『大佐』として返り咲いてな!この意味が分かるか?」

 

 

【大東 裕之】

「ええっ!?本当ですか!?中佐!いえ次期大佐殿!」

 

【五階 務】

「おいおい、マジかよ~、まっ、どうせ親父様の金の力だろうけどな~、でもこれでもっと甘い汁吸い放題だなぁ~♪」

 

【玉林 宏】

「(……あんなキチ○イが作戦部に復帰!?冗談じゃない!このブロック海軍はもうおしまいだ!……)」

 

 

【見習い少尉】

「そうか…そいつはおめでとう、それでそれを期に全て水に流してくれると?……」

 

【三木之 苗夫】

「俺が作戦部に復帰したら真っ先にやる事は!!てめえとあのクソ艦娘を血祭りにあげてやる事よ!!!」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「反逆罪の罪をでっち上げててめえらを始末するのもいいが、立場上は俺も作戦部の大佐だからな、消耗品は消耗品でそれなりの使い方を考えないといけねえ、だからてめえらに汚名返上のチャンスを与えてやる」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「身一つで最前線に突っ込んで!深海の一匹とでも刺し違えてくたばってこい!!!どうだ?この三木之様の暖かい温情は?、消耗品に相応しい最高の使い方だろう?

少しでも不満な顔をしやがったら即!反逆罪で始末してやるからな!!」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「もっとも、ここから生きて帰れたらの話だがな!!」

 

【見習い少尉】

「‥‥まだ走る気か?」

 

【三木之 苗夫】

「俺はてめえを引き○す事をまだ止めちゃいねえんだ!!いま殺してやるからそこ動くなぁぁぁ!!!」

 

【玉林 宏】

「やだぁ!!もう嫌だぁぁぁ!!!」

 

 

糞尿の香り漂う狭い装甲車の中で発狂直前の書類管理中尉を無視して、三木之は再び装甲車のアクセルを全開にした、しかし……

 

(((ガスン…ガスン…ガスン…)))

 

【三木之 苗夫】

「うんっ!!?」

 

 

数メートルも走らないうちにエンジンがノッキングを起こして装甲車は止まってしまった、後はウンともスンとも動かない

 

 

【玉林 宏】

「……とっ…止まった…って!ひいっ!?」

 

【三木之 苗夫】

「おい!!てめえ!!動かねえじゃねえか!!どうなってやがる!!」(ガバッ!)

 

【玉林 宏】

「あのっ……ガス欠かと……」

 

 

燃料計はEを指していた、当然だ

装甲車に限らず軍用車両は総じて燃費が悪い、おまけにぬかるんだ泥の上をローギアで延々と走り続けていたのだから

 

しかし、それを素直に受け入れる三木之ではない

 

 

【三木之 苗夫】

「俺の許可も無しに!!何勝手にガス欠になってやがるんだぁぁぁ!!!」

 

【玉林 宏】

「そっ!!…そんなぁ!!…ってぐえっ!!」(((ドシャア!!)))

 

 

理不尽な怒りを書類管理中尉にぶつけた三木之は装甲車の上に躍り出だ、すると……

 

 

【大東 裕之】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【五階 務】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

残りの二人の将校達が両手を挙げて黙って立っていた

雨の中で二人は微動だにしない

 

 

【三木之 苗夫】

「やい!!てめえら!!ボサッと突っ立ってないで、あの死体野郎をぶっ殺せ!!!」

 

【大東 裕之】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【五階 務】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【三木之 苗夫】

「てめえら!!何シカトしてやがる!?さっさと野郎を本当の死体にかえちまえーーー!!!」

 

【大東 裕之】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【五階 務】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

己の逆恨みの復讐なのに、あくまで他人任せにしようとする三木之、将校達が返事をしない事に更に腹を立ててわめき散らすが将校達は両手を挙げたまま返事も返さない

 

 

【三木之 苗夫】

「黙ってんじゃねぇぇぇーーー!!!てめえら死にてえのかぁぁぁーーー!!!俺の命令に逆らったらどうなるかまだ分からねぇのかぁぁぁーーー!!!」

 

 

【正義 公人】

「黙れ!チンピラ!」

 

【三木之 苗夫】

「!!!!!!!?」

 

 

いきなり背後からチンピラ呼ばわりされた三木之は驚いて振り替える、そこにはいつの間に装甲車の上に上がったのか、見たことのない男が立っていた

 

 

【三木之 苗夫】

「…って!?…てめえは!?……」

 

(((パアーーーー……ン!!)))

 

【三木之 苗夫】

「……!?ぐわっ!!!」(((ドシャア!!!)))

 

 

言葉を返す間もなく三木之は、その男、正義 公人に張り飛ばされた、見事に地面に転げ落ちるチンピラ

 

 

【正義 公人】

「降りろ!チンピラ!この装甲車は軍の装備品だ!貴様の私物ではない!」

 

【三木之 苗夫】

「…ぐっ!!…ぐはっ!!……」

 

 

背中をしこたま打って少しの間マトモに息が出来なくなった三木之、やがて何とか息を整えると……

 

 

【三木之 苗夫】

「…ぐっ……てめえ!!!…俺を!…この俺を殴りやがったなぁぁぁーーー!!!」

 

【正義 公人】

「それがどうした?チンピラ!」

 

 

【見習い少尉】

「おいおい、何か凄い人が現れたな」

 

【監察局員】

「動くな!手は頭の後ろに!」(ジャキッ!)

 

【見習い少尉】

「……お宅ら、誰だ?」

 

 

アサルトライフルを構えた完全装備の兵士か背後に現れた、見習い少尉はゆっくり両手を挙げる

 

よく見ると、同じような兵士達が周りを取り囲んでいた

二人の将校も同じようにアサルトライフルの銃口を向けられて動けずにいる

 

 

【監察局員】

「我々は『帝国海軍監察局』の者だ、何が起こるかは見てれば分かるよ、擲弾兵」

 

【見習い少尉】

「あんた達、俺の事も知ってるんだな?」

 

【監察局員】

「まあな」

 

 

何処かフレンドリーな口調で話す監察局員だったが、銃口の向きは見習い少尉をとらえて離さない

兵士には緊張感が漂っている、一般の兵士から擲弾兵に向けられる視線、これが現実なのだろう

 

 

【三木之 苗夫】

「てめえは何処のどいつだぁぁぁ!!!この俺にこんな事して!!ただで済むと思ってんのかぁぁぁーーー!!!」

 

【正義 公人】

「喚くな!チンピラ!我が身の心配でもしてろ!いつでも貴様の父親が貴様を守ってくれると思うなよ?」

 

【三木之 苗夫】

「‥‥んだとぉ!!‥‥」

 

 

装甲車の上から見下す正義大尉を睨み返す三木之、周りの監察局員から銃口を向けられてもその狂気は微塵も揺るがない

構わず正義大尉は続ける

 

 

【正義 公人】

「『三木之 苗夫、アジア・オセアニアブロック海軍補給部中佐!、貴様は只今より我々『帝国海軍監察局』の管理下に置かれる、その間は全ての階級、役職、権限は無効になるからそう思え!」

 

【三木之 苗夫】

「何だとぉぉ!!?勝手に決めてんじゃねぇよ!!!大尉の分際でこの俺に命令する気か‥‥」

 

【正義 公人】

「貴様らブロック海軍は我々帝国海軍の下部組織だと言う事を忘れるなよ!更に罪人である貴様には本職の階級をどうこう言う権限などない!」

 

【三木之 苗夫】

「こっ!!?‥‥この俺が罪人だと!!?」

 

【正義 公人】

「我々は貴様らを逮捕しに来た、指揮権限外の者に偽造書類をもって軍の装備品である軽装甲車を勝手に持ち出し、強権をちらつかせて民間の衛生車を強引に徴用し、それを個人的な私闘に乱用した挙げ句、基地内で無許可で発砲したな!」

 

【三木之 苗夫】

「この俺を!!この三木之様を逮捕だぁ!?ふざけんな!!!それがどうした!!てめえには関係の無い事だろうがぁぁぁ!!!」

 

【正義 公人】

「己の立場をまだ分かっとらん様だな、貴様はその上に軍の装備品である軽装甲車を破損させた(糞尿まみれにした)!つまりこれは軍への攻撃!軍への反逆だ!」

 

【三木之 苗夫】

「反逆だとぉぉ!!?」

 

【正義 公人】

「その疑いをかけられても仕方ないと言う事だ!貴様ら四名は軍の将校でありながら軍の『秩序』を著しく乱している!貴様らは軍の恥だ!全員検挙の上で監察局が貴様らを取り調べる!連れていけ!」

 

【監察局員】

「はっ!(ビシッ!)、全員両手をそのままで歩け!無駄な抵抗はするなよ!」

 

【玉林 宏】

「‥‥たっ‥‥助かった‥‥」

 

 

【大東 裕之】

「俺達が逮捕!?‥‥そんな!エリートのこの俺が!?‥‥」

 

【五階 務】

「‥‥おい、映像のバックアップは転送しといただろうな?」

 

【大東 裕之】

「一応はやったよ!でもそれどころじゃないだろ!?」

 

【五階 務】

「映像データを丸ごと押収されたらそれこそ三木之様に酷い目に逢わされるぜ?なあに心配いらねえよ♪監察局の言い分なんざハッタリよ、こっちには三木之様の‥‥三木之財閥のマネーパワーがあるんだ、せいぜい二、三日で出られるさ♪」

 

 

悪どい事には場数慣れしてると見えて三段腹中尉は平然と言ってのけると、懐からあの携帯無線機を取りだした‥‥‥

 

 

【見習い少尉】

「‥‥‥!!!」

 

 

それを見た見習い少尉がすかさず反応した

 

 

【五階 務】

「(‥‥ザッ)俺だ!お前ら今すぐ例の艦娘を‥‥」

((ガシッ!))

 

【見習い少尉】

「止めろこのデブ!!約束が違うだろうが!!」

 

【五階 務】

「はっ!!‥放せよ!!」

 

【監察局員】

「お前ら動くな!!」

 

 

三段腹中尉は勝浦に送り込んだゴロツキに指令を飛ばそうと無線機を取り出したがそれを見習い少尉が押さえ込んだ、ここまでして勝手な事をされては冗談ではない!

監察局員のアサルトライフルの銃口もお構いなしに見習い少尉は三段腹中尉に飛び掛かった

 

 

その時‥‥‥

無線機の向こうから‥‥‥

 

 

(ザザ‥‥お前‥‥ギルティ(有罪)!‥‥ブチッ!)

 

 

ごく短い言葉が発せられたと思ったら無線は切れた

 

 

【五階 務】

「あっ‥‥あれ?」

 

【見習い少尉】

「よこせ!!」((バッ))

 

 

見習い少尉は三段腹中尉から無線機を引ったくる、そして命令を完全無効にしようとしたが‥‥無線の向こうは完全に沈黙したまま、二度と応答は無かった

 

 

【五階 務】

「おかしいなぁ‥‥奴ら返事だけは必ず返すはずなんだが、それに誰か知らない声が‥‥ぐおっ!?」((ガバッ!!))

 

【見習い少尉】

「このブタ野郎!!!川内にもしもの事があったら貴様を生きたまま八つ裂きにしてやる!!!」

 

【五階 務】

「うわあ!!くっ!来るなよ!!ウ〇コくせえんだよ~!!」

 

【監察局員】

「おおい!動くなって!!」

 

 

三段腹中尉の胸ぐらを掴んで激高する見習い少尉

周りの監察局員もどうしたものか反応に困ってしまった

 

 

【正義 公人】

「そこ!茶番はそこまでだ!四人を連行しろ!」

 

【監察局員】

「はっ‥‥はっ!」

 

 

三段腹中尉は見習い少尉から引き離され連行された

他の将校達も続いて連行されていく

 

 

【大東 裕之】

「おおい!!俺は!俺は海軍のエリート将校だぞ!?将来だって有るんだ!!こんな事になったのはそこに居る擲弾兵と奴の艦娘のせいで!!‥‥」

 

【監察局員】

「黙って歩け!撃たれたいか!」

 

【玉林 宏】

「‥‥助かった‥‥」

 

 

【三木之 苗夫】

「この野郎!!こんな事して只で済むと思うなよ!!てめえの面は忘れねえからなぁぁ!!!」

 

【正義 公人】

「帝国海軍監察局『正義 公人』大尉だ、忘れるなよ!ブタのケツ!」

 

 

正義大尉の部下は暴君三木之が相手でも容赦ない

それでも暴れる三木之の両手を抱えて強制連行していく

 

 

【三木之 苗夫】

「やい!!糞擲弾兵!!これで終わったと思うなよ!!てめえとあの糞艦娘はこの俺の手で!!!……離せこの野郎!!……」

 

 

連行されながら喚き散らす三木之の罵詈雑言、しかし見習い少尉はそれどころではなかった

 

 

【見習い少尉】

「誰か!!今すぐ勝浦に人をやってくれ!!俺の秘書艦が危ないんだ!!頼むよ!!」

 

【監察局員】

「だから!!動くな!!」((ジャキッ!))

 

【見習い少尉】

「緊急事態なんだぞ!?」

 

 

見習い少尉は監察局員達に銃口を向けられてもお構い無しに訴え続ける

 

 

【正義 公人】

「静かにしろ!擲弾兵!逆らうなら貴様も処分するぞ!」

 

【見習い少尉】

「あんた達!!俺と三木之のやり取りは分かってるんだろ!?だったら俺の川内が危ないのも知ってるだろう!?お願いだ!!監察局なら助けてくれよ!!」

 

【正義 公人】

「擲弾兵である貴様に何かを願う権利は無い!艦娘は海軍のものだ!貴様の所有物ではない!艦娘が犯罪に巻き込まれるなら犯罪者は我々が厳罰を与える!貴様は黙っているがいい!」

 

【見習い少尉】

「あんたの主義主張はこの際どうでもいい!!川内を助けてくれと言ってるんだ!!」

 

【正義 公人】

「あくまで海軍に、人間に逆らう気か?それなら‥‥」

 

【香取】

「皆さん!お静かに!」

 

 

全裸の擲弾兵と完全武装の監察局、両者が一触即発になりかけた時、正義大尉の秘書艦『香取』が両者を静止した

 

 

【正義 公人】

「香取……何の真似だ?」

 

【香取】

「大尉、我々の当初の目的は達成しました、今はこれ以上事を荒立てる事は無いかと、それに彼は見習いとはいえ連邦統合海軍に任命された海軍少尉ですから、自分の秘書艦を心配するのは彼の責務としては当然です」

 

【正義 公人】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

【香取】

「擲弾兵少尉……とお呼びしたら良いのかしら?貴方の秘書艦は無事です、そこは心配しないでください」

 

【見習い少尉】

「何故そんな事が分かる!?」

 

【香取】

「これです」

 

 

香取は携帯を取り出し画面を見習い少尉に向ける

そこには二人の艦娘が映っていた

 

 

【香取】

「丁度「1分前」にインスタに投稿されたばかりの自撮り画像です、右に映っているのは貴方の秘書艦娘ですね?」

 

【見習い少尉】

「‥‥川内!確かに間違いない、これは?」

 

【香取】

「左に並んで映ってるもう一人の艦娘が投稿したものです」

 

 

確かに川内が笑顔で映っている、並んで映っているのは見覚えのない艦娘だった

 

 

【香取】

「軽巡洋艦娘『木曾』、貴方の秘書艦と共に『ビンソン計画』を生き残った者です、そして今は『国防軍・天憲隊(当時)』の一員として活動しています」

 

【見習い少尉】

「彼女が木曾……話は川内から聞いた事がある……」

 

【香取】

「撮影時間も載っています、投稿の1分前に撮られた事になっています、つまりこれは彼女達の現状で間違いないでしょう、そしてこの木曾は天憲隊の一員、天憲隊は我々帝国海軍とはある意味因縁がありますが、その実力は本物です」

 

【見習い少尉】

「‥‥つまりこの木曾と一緒にいる事実が川内の安全を証明していると?」

 

【香取】

「その通りです、三木之の手下が何人来ようと物の数ではありません」

 

【見習い少尉】

「この木曾はあんた達が送り込んだのか?」

 

【香取】

「いいえ全くの偶然です、木曾の行動については我々は関知していません、しかし貴方の秘書艦の安全確保の保証には充分なのも確かです」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥そうか‥‥」

 

【香取】

「僭越ながら貴方と三木之達の会話は傍受させて貰いました、その時点で勝浦には別働隊を派遣しています、確実な安全確認の報はもうすぐ届くでしょう」

 

【正義 公人】

「これで満足か?擲弾兵?」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

腑に落ちない突っ込み処は沢山あるが、川内の安全は確保されているらしい、今はそれだけでも良しとするしかないだろうと見習い少尉は思った

 

それにしてもこの大尉……

 

三木之にあそこまで堂々と言い放った度胸は大した御仁だが、一方で擲弾兵をまるで目の敵にしてるような……

 

 

【正義 公人】

「艦娘の身の安全を守るのは『人間』であり『正規軍人』である我々だ、貴様が心配する事ではない、総員撤収するぞ!」

 

【見習い少尉】

「……ちょっと待ってくれ」

 

 

正義大尉と監察局は、三木之達を捕縛する口実を作る為に見習い少尉を『人柱』として利用したのだ

見習い少尉にもそれだけは理解出来た

 

そんな事など一切気に止めない正義大尉が撤収の号令を発したところで、見習い少尉は呼び止めた

 

 

【正義 公人】

「何だ?何か用か?私は忙しいのだ」

 

【見習い少尉】

「あんたにはあんたの目的があったんだろう、だがあんた達に救われたのは事実だ、それだけは礼を言っておくよ」

 

【正義 公人】

「そんなものは不要だ、我々の目的は軍の『秩序』を乱した三木之というチンピラに灸をすえる事だ、貴様を助ける為ではない、この『正義 公人』が監察局の一群を率いる立場となったからには奴に今までの様なデカい顔はさせん!」

 

【見習い少尉】

「三木之の坊やに宣戦布告する為か?何とも酔狂だな」

 

【正義 公人】

「父親の権威を剥ぎ取ってしまえば奴は何も出来ないでくの坊だ、この私がいずれ息の根を止めてやる、言いたい事はそれだけか?」

 

【見習い少尉】

「‥‥もう一つ、あんた達監察局は三木之がこうする事を前々から知ってたんだな?それを知った上で俺を糞まみれにさせたと?」

 

 

【正義 公人】

「それがどうした?擲弾兵!」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

正義大尉の『擲弾兵』という単語にはお世辞にも友好的な空気は微塵も感じられなかった

 

 

【正義 公人】

「貴様は自分の事を人間だとでも思っているのか?」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

【香取】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

正義大尉は腰のホルスターから愛用の自動拳銃を抜いた、そしてそれを見習い少尉に見せる

 

 

【正義 公人】

「貴様はこの拳銃と同じ、軍の装備品に過ぎん、我々は目的を達成する為に装備品を使って任務を遂行しただけだ、それ以上でもそれ以外でもない」

 

 

『擲弾兵はただの装備品、人間ではない』

 

正義大尉は何の迷いもなく言い放った

この男は少なくとも自分の味方ではない、見習い少尉は理解した

 

 

【正義 公人】

「この際だから言っておく、艦娘は神聖なる海軍の誉れ!海軍の栄光と伝統の記憶を内苞した尊き存在だ!それを貴様のような『道具』に人間と士官の真似ごとをさせた上で、たった一人とはいえ艦娘の指揮を任せるとは、悪い冗談か悪夢としか思えん!」

 

【見習い少尉】

「俺が海軍に居て、艦娘を指揮する事は悪夢だと言うのか?」

 

【正義 公人】

「貴様だけではない!土方長官が作ってしまった『非軍人提督制度』という愚行のお陰で、軍人でもなければ人間ですらない、そんな輩達がのうのうと提督を名乗ってしまっている!おまけに三木之のような愚か者の存在だ!お陰で海軍の『秩序』は大いに乱れてしまった!」

 

【見習い少尉】

「秩序‥‥ね‥‥」

 

【正義 公人】

「本来ならば、艦娘の指揮は我々のような正規の海軍軍人のみが行うべきなのだ!そんな海軍の秩序を乱しているという点では三木之も貴様も同類だ!そんな秩序の敵である貴様を助ける理由が何処にある?

最も貴様は土方長官に命令されて仕方なくここに居るに過ぎん、元より貴様には何かを選択する権力など無いのだから貴様に罪がある訳では無いがな、しかしこのふざけた状況はいつか必ず、この私の手で修正してみせる!」

 

【見習い少尉】

「俺の存在は『ふざけた状況』ってか?そりゃ恐縮なことで」

 

 

【香取】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

どうやらこの男とも話が通じそうにもない、見習い少尉は話を続ける気力が失せた

香取は何を思うか、黙って正義大尉を見つめる

 

 

【正義 公人】

「軍の施設内をそんな薄汚い格好でうろつきおって、本来なら貴様も検挙した上で然るべき部署に送り込んでやるべきだが、一応は三木之捕縛に貢献したのも事実だ、それに免じて今回だけは見逃してやる、服を着てさっさと勝浦に帰れ!」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

これ以上の問答は不要!とばかりに正義大尉は話を打ち切ると、部隊を連れて撤収して行く‥‥‥

 

 

【監察局員】

「‥‥と言う事だ擲弾兵さんよ、あの大尉に睨まれると厄介だぜ?海軍に居場所が無くなる前に身の振り方を考えた方がいいんじゃないの?」

 

 

帰り際に一人の監察局員がこっそり耳打ちをしていく

 

 

【見習い少尉】

「‥‥身の振り方ね‥‥今更俺達に何処に行けって言うんだ!‥‥」

 

 

人間扱いすらされない海軍未経験のただの兵隊が、己の意志とは無関係に運命の歯車によって、見習いとは言え海軍少尉としてこの横須賀にやってきた、一人の艦娘を連れて

今更『吉坂博士』の研究所には戻れない、迷惑をかけるだけだ

 

現状が維持出来なくなる日がもし来るなら、見習い少尉も川内ももう一度野に下る以外に選択肢がない、その時は誰の助けも得られないかもしれない

 

そんな自分達の状況で何処に行けと?

『擲弾兵大隊』に戻って処理機に飛び込めとでも言うのか?

 

自分一人ならともかく、川内を巻き込む事になるのだ

軽率な行動も選択もとる訳にはいかない

 

 

【見習い少尉】

「……とどのつまり、俺の無力が原因か……無様なもんだな」

 

【香取】

「私はそうは思いませんよ?」

 

 

振り向くとそこにはあの『香取』が立っていた

見習い少尉を見下した正義大尉、その腹心の彼女が何故?

 

 

【見習い少尉】

「大尉の部下である君が、俺を擁護していいのか?」

 

【香取】

「事実を申し上げているだけで擁護とは違います、私は大尉の秘書艦として大尉に忠誠を誓っていますが、それは大尉の全てを肯定するという浅はかなものではありません、大尉は崇高な理念の持ち主ですがまだ若くて未熟です、それを補佐するのが私の任務であり、私の大尉への忠誠は大尉に忠実であるのとは必ずしも同義語ではないのです」

 

【見習い少尉】

「エリートはまわりくどい言い回しをするな、つまり君はあの大尉殿のイエスマン‥‥いやイエスウーマンと言うべきか?‥‥になる事が大尉への忠誠心だとは考えていないんだな、君は大尉殿の教育係なのかな?」

 

【香取】

「御想像にお任せします」

 

【見習い少尉】

「君は俺を無様とは思わんのか?」

 

【香取】

「いいえ、少なくとも私は貴方を勇敢な戦士だと考えています」

 

【見習い少尉】

「勇敢な戦士?この俺が?‥‥降りかかる火の粉も払えない、人間としても認められない、秘書艦に苦労ばかりかけてるこの俺が?」

 

【香取】

「闘志のままに拳を振り上げるばかりが勇敢さとは限りません、時には忍従に堪え、屈辱に塗れても大切な者を守ろうとする強い意志、それも立派な戦士の証です」

 

【見習い少尉】

「それは買いかぶりだよ、俺はただ川内を守りたかった、川内に恥ずかしくない男になりたかっただけさ、現実は見ての通りだがな‥‥‥」

 

 

大雨の中を、全裸で糞尿塗れで立っている自分の姿を思うと勇敢な戦士なんて冗談でも口に出せない、第一こんな姿、無様過ぎてとても川内には見せられない‥‥

 

 

【香取】

「‥‥擲弾兵の少尉さん、私は貴方に御礼が言いたかったのです」

 

【見習い少尉】

「お礼?俺が何かしたか?」

 

【香取】

「貴方は御自身の事はそっちのけで、真っ先に秘書艦である艦娘の身の安全を心配されました、監察局員に銃口を向けられているにもかかわらずです」

 

【見習い少尉】

「俺には何より大事な事だ、それがどうかしたのか?」

 

【香取】

「いいえ、ただ艦娘の一人として貴方に感謝の気持ちを伝えたかったのです、そこまで艦娘の事を考えてくださる事に対して」

 

【見習い少尉】

「そこまで感謝される理由が俺にはよく分からんな、俺は当然の事をしてるだけで特別な事なんかしてない、俺がやりたくてやってる事だ、しかしそれで君の気が済むなら素直に受け取っておくよ」

 

 

自分の事よりも何より川内を優先する

 

見習い少尉にとっては息を吸う、ご飯を食べると同じくらい当然の事なのだが、あらためて礼を言われると変な気分になってしまう

 

 

【香取】

「感謝ついでに御忠告申し上げます、かなり言い難い事なのですが」

 

【見習い少尉】

「忠告?言ってくれ、今更悪い知らせなんて驚かないよ」

 

【香取】

「これは軍機密に触れますのでご内密に、土方長官に航宙軍への再任官の内示が出ています、まだ決定事項ではありませんが」

 

【見習い少尉】

「土方長官が航宙軍に?それは凄い栄転だな、つまりそれは‥‥‥」

 

【香取】

「この意味、お分かりですよね?もしこれが正式な命令として発布されれば土方長官本人でも拒む事は出来ません、土方長官は連邦統合海軍省の人事局から去る事になり、そして貴方達はこのブロック海軍内で唯一の後ろ盾を失う事になります」

 

 

これまでも語ってきたが

 

現連邦統合海軍省人事局長『土方 龍』元帥

閉鎖的な海軍組織の現状を打開し変革を促す為に『非軍人提督制度』を創設し、見習い少尉と川内の二人を横須賀に送り込んだ張本人である

 

この制度によって多くの非軍人提督・非人間提督が誕生した訳だが、海軍内で自分達の既得権を維持しようとする旧態勢力からは当然目の敵にされた

 

見習い少尉達もその『内紛』に己の意思とは関係なく巻き込まれてしまっている訳だが、それでも土方長官の存在は二人にとっては唯一の後ろ楯であった

 

それを失うとなれば……

 

彼は『ただの擲弾兵』でしかなくなり、海軍で理想を実現するどころの話では無くなってしまう

 

 

【見習い少尉】

「……他には?」

 

 

見習い少尉は機を取り直して質問する

どんな悪い知らせでも情報を得る事は生き残る為に必要だ

 

 

【香取】

「もう1つ、我々は確かに三木之を捕縛しました、大尉は三木之にたっぷり思い知らせる積もりの様ですが、おそらく我々が三木之を拘束出来るのはせいぜい10日から2週間、どれ程長くても1ヶ月が限界でしょう」

 

【見習い少尉】

「奴には父親の金と思い通りに動く下僕がいるからな」

 

【香取】

「それだけではありませんよ?」

 

【見習い少尉】

「‥‥と、言うと?」

 

【香取】

「確かに三木之の父『三木之 カシアス』は連邦政府の高官、その権威と財力は大きいでしょう、三木之に弱みを握られた者達も三木之の走狗として働く事を拒否出来ない、しかしそれだけではあの狂人が海軍に居座れる理由にはなりません」

 

【見習い少尉】

「他にも奴を守ろうって物好きがいるのか?」

 

【香取】

「その物好きは、この『海軍』そのものですよ」

 

 

なにげに爆弾発言をあっさりと言い放った香取であった

 

 

【見習い少尉】

「海軍そのものが?奴は海軍にとってとんでもないお荷物じゃないのか?」

 

【香取】

「一面ではそうです、しかし一方で海軍の重鎮や主勢力を構成する旧態勢力派閥にとっては三木之 苗夫は『利用価値のある狂人』でもあるのですよ、旧態勢力派閥とは各々がこれまで所持していた既得権益を手放したくない者達です」

 

【見習い少尉】

「‥‥そいつらはいわゆる『艦娘軽視派』と呼ばれる連中か?」

 

【香取】

「そう思って頂いても間違いないでしょう、彼等は『艦娘の所有』を『自分達が持つ既得権』だと何の疑問も持たず本気で考えていますから」

 

【見習い少尉】

「艦娘をどこまでも物として考えているのか!そういう思考が『ブラック鎮守府問題』の要因になってるってのに!想像はしてたがそんな奴らばかりに牛耳られたら海軍もおしまいだな」

 

【香取】

「海軍のみならず、大本営にも、陸軍にも、連邦軍にだって大勢居ますよ、既得権にすがる者達はいつの時代にも居るものです

話を戻しますが、彼等は三木之を擁護・野放しにする事で改革派や『艦娘擁護派』を牽制しようとしているのです、三木之が艦娘をあそこまで憎むようになったキッカケは分かりませんが、艦娘への憎悪を持つ三木之は『艦娘軽視派』に代表される旧態勢力にとっては『艦娘擁護派』を牽制するための格好のコマなのです」

 

【見習い少尉】

「奴らは自分達の利権を手放したくないから、三木之を鉄砲玉にする為に飼い馴らしているってのか?」

 

【香取】

「そう御理解していいかと、三木之とその下僕達、そしてブラック提督達が騒げば自ずとそちらに注目が集まる、我々もそれなりに対処せざるを得なくなります

旧態勢力側がその気になれば三木之という鉄砲玉をいつでも飛ばせる事を『艦娘擁護派』に認識させる事も狙いなのでしょう」

 

【見習い少尉】

「そういう目的があるから、親父の金が無くても三木之の立場は守られると言う事か?」

 

【香取】

「先程『最長でも1か月が限度』と言ったのはそういう事です、海軍はどんな事をしても三木之を保釈させて本人の望み通り作戦部に移動させるでしょう

旧態勢力にとっては自分達がお膳立てをしなくても三木之は勝手に暴れてくれる、海軍にとって三木之が本当に都合が悪い存在になったらその時は三木之一人を切り捨ててしまえばいい、その時は流石の父親も庇いきれないだろう‥‥と

彼等にとってこんな都合のいい存在はありません、頼んでもいないのに憎まれ役まで勝手に引き受けてくれるのですから、そんな事にも気付かない三木之は老獪な重鎮達に躍らされているだけの哀れなピエロ、マリオネットです」

 

【見習い少尉】

「なんてこった!!」

 

 

三木之は海軍を私物化してるつもりらしいが、実は三木之の方こそ捨て駒だった

狂人三木之に同情する気持ちなんか微塵もない

しかし、ただただ哀れであった、もしかすると今の自分よりも‥‥‥

だが、あの狂人が素直に捨て駒に甘んじるかどうか‥‥‥

 

『ブラック鎮守府問題』がいつまで経っても終わらない訳だ

これは海軍に蔓延る病魔であり三木之一人がどうなろうと簡単に解決する問題ではないのだ

 

それはさておき、当面の問題は‥‥‥

 

 

【香取】

「ここまでの話でお分かりと思いますが、土方長官が人事局を去り三木之が作戦部に返り咲く、海軍の主勢力は三木之を野放しにしたままで何もしない‥‥‥そうなれば‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「俺達は海軍での居場所を失う‥‥‥と言うことか?」

 

【香取】

「大変言い難いのですが‥‥その可能性も有りかと、貴方と貴方の秘書艦がどれ程今のブロック海軍に貢献しても、この現状を打破する事はおそらく‥‥」

 

 

香取の指摘が全て現実となれば『理想の鎮守府の実現』なんて夢のまた夢に終わってしまうだろう、三木之はどんな手を使ってでも自分達を始末しようとするだろうから、そこから先はただ自分達が生き残る為だけの戦いになる‥‥‥

 

 

【見習い少尉】

「身の振り方を考えろ‥‥とはそういう事か、そんな事態になる前に俺達に海軍から去れと?」

 

【香取】

「私の口からは何とも‥‥あらゆる可能性を考えられた方が良いかもとしか‥‥」

 

【見習い少尉】

「香取さん‥‥だったね?」

 

【香取】

「『香取』で結構ですよ」

 

【見習い少尉】

「それでは香取、正義大尉の部下である君が何故そこまで俺に教えてくれるんだ?」

 

【香取】

「先程も言いましたが私は艦娘の一人として、自分より艦娘を心配してくれた貴方に感謝の御礼がしたかったからです、それ以外の意図はありません」

 

【見習い少尉】

「そうか‥‥その気持ち素直に受け取らせて貰うよ、もう一つ聞いていいか?」

 

【香取】

「とうぞ」

 

【見習い少尉】

「もしそんな事態に本当に陥った時、正義大尉は俺達を助けてくれるのか?少なくともその気は有るのだろうか?」

 

【香取】

「その場合は大尉も行動は起こすでしょう、ですがおそらく‥‥貴方の望む形にはならないかと、貴方の秘書艦は大尉によって引き取られ、貴方は一塊の擲弾兵として‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「‥‥そうか、分かった」

 

 

香取は言い難そうに語る、見習い少尉も正義大尉ならそうするだろうと予想はしていた、ここははっきり言ってくれた香取に感謝するべきだろう

 

 

【見習い少尉】

「ありがとう香取、君には素直に心から感謝する」

 

【香取】

「礼には及びません」

 

【見習い少尉】

「感謝ついでに正義大尉に伝言を頼みたい、実際に伝えるかどうかは君の判断に任せる」

 

【香取】

「承りましょう」

 

【見習い少尉】

「『たとえ志半ばで海軍を去る事になっても、『川内』だけは誰にも渡さん!『川内』は俺のものだ!海軍にも三木之にも、あんたにも絶対に渡さない!』とな」

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

しばしの沈黙のあと

 

 

【香取】

「貴方の秘書艦は幸せな人ですね、どうかお気をつけて、失礼します」

((ビシッ))

 

 

香取は海軍式敬礼を返すと、他の監察局員達の後を追って去って行った

 

雨の練兵場の中、一人取り残される見習い少尉‥‥‥

 

 

【見習い少尉】

「‥‥可能性は考えていたが、本気で身の振り方についてあらゆる選択肢を考える必要があるのか、行き先が無いなら自分で作るしかないって事か‥‥もし本当にそんな事になったら‥‥その時はごめんな川内‥‥だが!お前だけは!‥‥」

 

 

見習い少尉は雨の彼方を見つめた、その先に勝浦がある

 

 

【見習い少尉】

「川内‥‥少し遅くなるかもしれないが、今日中に絶対に帰るから待っててくれ」

 

 

見習い少尉は歩き出した、川内の元に帰る以外の思考は頭のなかに無かった

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

【木曾】

「いきなり押し掛けてきて、一体何を説明しろっていうんだ?」

 

【多聞 風都】

「そんなに身構えなくていい、少し話を聞きたいだけだ」

 

【川内】

「あ‥‥あの~‥‥」

 

 

勝浦の監視所では少し騒がしくなっていた

 

『特別高等警察(特高警察)』の関係者を名乗る人物がいきなり訪ねてきたのだ

 

一見無愛想なこの男は、監視所にいた二人、特に川内に対して今朝から今までの行動を詳細に聞いてきた

一応は質問の形だが特高からの質問と言うことで何処か威圧感のような感覚は否めない、それでも多聞という男の対応は比較的丁寧であった、本当に愛想が無い事を除けば

 

 

【木曾】

「特高が俺達の行動を確認してどうする気だ?俺達に何か因縁でも付けようってんじゃねえだろうな?」

 

【多聞 風都】

「君達が特高をいぶかる気持ちは分からなくもないが、我々は純粋に君達、特にそちらの君の今日1日が知りたいだけだ」

 

【川内】

「アタシの?‥‥‥今日ですか?」

 

【木曾】

「あんたら特高の悪い噂は聞いてる、何の目的か知らんが川内に何かするつもりなら!‥‥」

 

【川内】

「木曾!落ち着いてよ!」

 

【多聞 風都】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

特高警察は所謂秘密警察の側面を持つ、通常の治安組織には出来ない超法的捜査も行われる事もある

しかも最近はあの三木之の金と脅迫により特高の上層部と多くの隊員が走狗に成り下がっているという

 

このままでは特高警察は本当に三木之のお抱え武装組織と化してしまうかもしれない

 

多聞とそのチームはそんな特高の中で三木之に抗う、今では数少ない存在であった、しかし特高は特高、外から見ればそんな区別がつく筈もない

 

木曾が多聞をいぶかるのもやむなし、と多聞は考えていた

 

 

【川内】

「今日の行動ですよね、いいですよ、アタシは今朝から今までこの監視所に居ました、上官である少尉が横須賀に行ってるので留守をしていたんです、その後で木曾が訪ねてきて……」

 

【木曾】

「それから俺達ここにずっと居たぜ、何なら証拠のインスタ写真も見せようか?撮影時間も載ってる」

 

【多聞 風都】

「それは後程、彼女の他に誰か訪ねてきた者は?」

 

【川内】

「いいえ、誰も居ません」

 

 

【多聞チーム特高隊員】

「班長、例のものが見つかりました」

 

 

多聞は川内の証言と木曾からの写真(データコピー)の提供をうけた、そこに多聞のチームの1人がやって来て多聞に報告した

 

 

【多聞 風都】

「見つかったか?」

 

【多聞チーム特高隊員】

「ええ、あぜ道とは反対側の山中だったから探すのに骨が折れましたよ、それともう1つ」

 

【多聞 風都】

「何だ?」

 

【多聞チーム特高隊員】

「帝国海軍監察局の連中が到着しました、奴らこちらの手際の速さに驚いてましたよ」

 

【多聞 風都】

「やっと来たか、随分と重役出勤な事だな」

 

【川内】

「あっ……あの……」

 

 

特高に監察局?そう聞いて川内は急に不安になった

もしや見習い少尉と何か関係があるのか?

 

 

【川内】

「何か……あったんですか?もしかして少尉の身に何か!?」

 

【多聞 風都】

「そういう訳ではないんだ、君の上官とは何の関係もない話さ、タチの悪い悪党がこの付近に潜伏してる情報があってね、それが見付かったと今報告があったんだよ、監察局が出てきたのはその悪党の中に陸戦隊員が含まれていたからなんだ」

 

【川内】

「……そうですか……」

 

【木曾】

「それで何で俺達のアリバイなんか聞き出したんだよ?アリバイだよなぁ?知りたかったのは?」

 

【川内】

「ちょっと、木曾……」

 

【多聞 風都】

「嫌なおもいをさせてしまったらすまない、職業柄こういう事は全員に聞く事になってるんだ」

 

【川内】

「いいんです、気にしてませんから」

 

【多聞 風都】

「お邪魔したね、我々はこれで失礼する、君達の上官に宜しく、良い1日を」

 

 

多聞は軽く頭を下げると、報告に来た部下と共に去って行った、あぜ道とは反対側の山中に……

 

 

【木曾】

「こんな大雨の日にご苦労なこった、それにしても不躾な奴だ、何の事か知らんが俺達に疑いの目を向けてたぜ、ありゃあ」

 

【川内】

「そっ…そうかなー?」

 

 

【川内】

「(……何だろう…嫌な予感がする……少尉!何も要らないから……はやく帰ってきて!)

 

 

こんな事なら少尉を一人で横須賀に行かせるんじゃなかった‥‥

川内は雨の彼方を見つめた、その先に横須賀がある

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

【多聞 風都】

「良い娘だな、それに良い目をしてる、ヒィッツが注目するだけの事はあるな」

 

 

見習い少尉と川内の『勝浦の前方監視所』の話は旧知の友、ヒィッツカラルド大佐から予め聞かされていた多聞

 

彼と彼の父が多くを捧げた特高警察を私物化しようとする三木之の存在を苦々しく思っていた多聞、そこに三木之に理不尽に苦しめられている『ある士官と秘書艦』の存在を知る事になった多聞はこの数日内に何かあると直感した

 

三木之とその下僕達の行動が慌ただしい事、帝国海軍の監察局が三木之の行動をマークしていたという裏情報をつかんだ多聞は彼のチーム単独で内偵を進めた(局長や他の幹部達には秘密にした、邪魔されるだけ)

その結果今日になって、三木之の息のかかった陸戦隊員の中でも素行の悪い四名が勝浦に向かったという報告をうけ、こうして出動してきた次第であった

 

三木之の行動と命令は感情に左右される場当たり的で拙速なケースが多いから対応する方も拙速を要求されて対応が後手に回る事がある、それは『三木之 ジャギ』となった現在も変わらない

 

 

とにかく探し物は見付かった、後は逮捕して尋問するだけだ

 

 

【多聞 風都】

「それで?奴らは何か白状したか?」

 

【多聞チーム特高隊員】

「誰も口を利きません」

 

【多聞 風都】

「少々痛め付けても構わんぞ?」

 

【多聞チーム特高隊員】

「それは無駄かと」

 

【多聞 風都】

「何故だ?」

 

 

【多聞チーム特高隊員】

「全員、喰い殺されてましたから」

 

 

【多聞 風都】

「何だと!?‥‥またか‥‥」

 

 

近年、ブラック提督や軍の高級将校に限らず、官僚や役人、その他の資産家を含めて、艦娘を私物化したり迫害したりした(疑いのある者も含めて)者達が次々と、とても人間業とは思えない方法で殺害される事件が散発的に発生している

 

犯人はまだ見つかっていない

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

【カルド・アルレッド】

「‥‥おっかしいなぁ~、こんなに遠い筈がないんだけど‥‥」

 

【タクシーの運転手】

「ちょっとお客さん!本当にこっちで間違いないんでしょうな!?」

 

【カルド・アルレッド】

「いいから!前向いて走ってくれよ!」

 

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【足柄】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

偶然にも奇妙な縁で知り合った三人の客を乗せた一台のタクシーは、山の中の道をひたすら走り続けていた‥‥‥

 

 

【カルド・アルレッド】

「クロードの実家って‥‥こんな山の中だったかな?確か赤城さんに貰った地図によれば‥‥えっと‥‥どっ‥どっちだ?」

 

 

【足柄】

「ちょっと!どうすんのよこれ!?」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「しゃあないやろ!折角好意で案内してくれるって言われたし、こちらもこちらで頼んでもうたし!」

 

【足柄】

「そんな事言ったって!ここ絶対に大阪じゃないでしょ!?」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「しっ!声がでかい!」

 

ーーーーー

 

リンガ鎮守府の司令官『クロード・スラスト』に会う為に新大阪駅までやって来たヒィッツカラルド大佐と足柄

 

そこで偶然にもそのクロード提督の部下、それも側近という人物と遭遇した

『カルド・アルレッド』、リンガの副司令官である

この男の存在はクロード提督の事前情報を集合していた時点でヒィッツカラルド大佐も把握していた、しかしまさかこんな所で遭遇するとは予想外だった

 

カルド本人は広島駅で赤城と別行動となり、そのまま新大阪駅まで鉄道で到着した、ついでにクロードの後を追って大阪の彼の実家に立ち寄ろうとしていたのである、と、ここまでは良かった

 

駅の売店で買い物をしていた処偶然にも隣合った両者はお互い軍人と艦娘である事に意気投合し、しかも行き先が同じである偶然に驚いた

そこでカルドは目的地に向かいがてら、ヒィッツカラルド達の道案内も買って出たのである、ヒィッツカラルド達としても知り合いの道案内ならば間違いない、渡りに舟とばかりにそれを依頼した

 

完全な誤算であった

 

ヒィッツカラルド大佐はカルドが歴戦の軍人でクロードの信任厚い部下である事などは資料の中で把握していたが、彼が『陸上では壊滅的な方向音痴』という性癖の持ち主である事はすっかり抜け落ちていたのである

 

 

カルドは当然の事ながら‥‥‥道に迷った

 

 

三人はタクシーで移動する事にしたのだが、運転手への道案内を直接カルドが行ったものだからたまらない!

当然の事ながらクロードの実家には一向に到着しない、カルドは赤城からかな~~り正確な地図を渡されていたのだが、それをカルドだけが確認した事で傷口が益々広がった

 

遂には現在位置まで把握出来なくなった

 

ここで観念して運転手に住所教えてお任せすれば良かったものを、男カルド!意固地になって自分で案内してみせる!と言い張った

 

その鬼気迫る顔に運転手も何も言えず、ヒィッツカラルドもこちらが頼んだ手前、横から口を挟むのははばかられた

 

 

【カルド・アルレッド】

「なっ‥‥なんかすみません、ご迷惑かけて、でもご安心を、必ずたどり着いてみせますから~♪」((ヒクヒク))

 

 

ヒィッツカラルドと足柄に笑顔でそう答えるカルド、その笑顔はひきつっていた‥‥

 

その苦しそうな笑顔を見てヒィッツカラルド大佐も足柄も悟った

 

『駄目だこりゃ』

 

事実この時、クロード提督と秘書艦の金剛は既に機上の人となっていた

 

ーーーーー

 

既に手遅れになっていたが、それでもタクシーは走り続ける、そして何処かの山道を走行中、それが今の現状

 

 

【カルド・アルレッド】

「(くそ!何処かにランドマークか看板の類いでもあれば!せめてここが何処か分かるのに!)」

 

 

ここまで来る間に何らかのランドマークや看板はきっとあった筈なのだ、しかし引っ込みがつかなくなり気持ちの余裕が皆無のカルドにはそれも目に入らなかったらしい‥‥

 

 

【カルド・アルレッド】

「何かないかないか?‥‥うん!?あれは!」

 

 

知らない山道を走り続ける事数時間、前方に大きな看板らしき物が見えて来た、何かの施設の看板らしい

 

 

【カルド・アルレッド】

「助かった!あそこが何か判れば何とかなるかも!」

 

 

藁をもすがる気持ちでその看板を凝視するカルド

 

 

【カルド・アルレッド】

「えーっと‥‥あれは何と書いて‥‥‥」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【足柄】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

そこに書かれていたのは‥‥‥

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

【赤城】

「『岡山国際サーキット』ぉぉぉーー!?」

 

 

 

カルド・アルレッドからのSOSの連絡が柱島に任務で来ていた『赤城』の携帯にかかって来たのはそれから間もなくの事だった、電話の向こうのカルドは泣いていた

 

 

【赤城】

「カルドさん!どうしてそんな所に居るんですか!?大阪の提督の御実家に行ったんじゃなかったんですか!?」

 

【カルド・アルレッド】

『‥‥しくしくしく‥‥』

 

【赤城】

「‥‥あっ‥‥なるほど、そういう事ですか」

 

 

正規空母艦娘『赤城』

 

後にカルドの妻になる彼女だがこの時はまだお互い付き合っている段階である

しかし既にこの頃から、赤城にはカルドの事なら分からない事など無かったのであった、正に一航戦の貫禄!

 

 

【赤城】

「いいですかカルドさん、落ち着いてよく聞いて下さい、決して慌てないで、大丈夫ですからね?」

 

【カルド・アルレッド】

『ふわいいい~~~』(泣)

 

【赤城】

「お連れさんがいらっしゃるんですよね?その人達にこれ以上迷惑はかけられません、先ずは運転手さんに頼んで最寄りの駅まで行って下さい、カルドさんはそこでタクシーを降りて下さい」

 

【カルド・アルレッド】

『りょっ、了解です~~』(泣)

 

【赤城】

「お連れの方達にはタクシーを使って頂くなり鉄道を御理解されるなりして頂いて、提督の御実家の住所に領収書を送って頂くように丁寧にお願いして下さい!

カルドさんはそこから鉄道で岡山駅まで向かって、私がそこまで迎えに行きますからそこで待っていて下さい、何処にも行かないで!駅員さんにホームの場所と乗る電車をしっかり聞いて!決して自分で判断してはいけませんよ?」

 

【カルド・アルレッド】

『あっ‥‥赤城さ~ん‥‥せっかく地図まで書いて貰ったのに面目ない~』(泣)

 

【赤城】

「提督の御実家には私から領収書が届く旨の連絡はしておきます、カルドさん、余り気にしないで、誰にも得意不得意はありますから、岡山で合流したら一緒に美味しい『きびだんご』でも食べましょう?ねっ♪」(ニコッ♪)

 

 

カルドを何とか元気づけて送り出した赤城は残りの業務を素早く処理すると岡山に向かうべく出達の準備を始めた

 

 

【赤城】

「それにしてもカルドさん‥‥普段戦いで発揮する強さや副指令として鎮守府を切り盛りする手際は凄いのに、時々こういう姿を見せるところが‥‥‥」

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

【赤城】

「カワイイ♪❤」

 

 

 

という訳で‥‥ヒィッツカラルド達海特警とクロードの初接触はお預けとなった

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

日もすっかり落ちた、雨はまだ降り続いている‥‥

 

僅かな平地に水田が周囲に広がる勝浦の農道を、ボロボロの格好で家路を急ぐ一人の男がいた

 

 

【見習い少尉】

「‥‥やれやれ、やっと麓(ふもと)までたどり着いたか‥‥」

 

 

横須賀で酷い目に合わされた見習い少尉、今朝まで着ていた制服までボロボロにされていたが換えは他にない、新しい制服も代わりの服装等も支給が許されず、それを着るしか無かった

 

シャワーすら借りる事も許されず(雨でずぶ濡れだからもう関係ないだろうと言われ)、身体に糞尿の臭いが残った状態では公共交通機関に乗る事も出来ず

 

仕方ないので貨物列車の貨車や軍のトラックの荷台に潜り込んで(当然無許可)それらを乗り継ぎながら何とかここまで帰ってきた

 

山に向かってあぜ道が延びている、この先に川内が待つ監視所があった、しかし見習い少尉はなかなか先に進めなかった

 

 

【見習い少尉】

「参ったな‥‥こんな情けない姿で川内に言い訳出来るって言うんだ」

 

 

こんな自分の姿を見れば何があったか、誰にだって容易に想像が出来るだろう、何の成果も持ち帰れなかった上に川内に余計な心配をかけてしまうのは明らかだ

 

どうせばれるにしても‥‥余りにも無様で惨め過ぎる、もう少し何とかならないものか?

 

 

【見習い少尉】

「‥‥ええい!ままよ!こうなりゃヤケだ!!」

 

((ドッボォォォーーン‥‥‥))

 

 

季節は初夏、田植え直前の水田には水が張られている、見習い少尉はその水田の一つに頭からダイブした

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

勝浦の監視所には夕食の香りが立ち込めている

木曾は既に帰っていった、監視所には今は川内しか居ない

 

夕食の準備は出来ていた、あとは見習い少尉が帰ってくるのを待つばかり

 

 

【川内】

「少尉‥‥早く帰って来ないかな‥‥」

 

 

食卓に並べた夕食を眺めながら川内は呟く

 

昼間に特高の関係者が尋ねてきて以来、川内の内心は気が気では無かった

嫌な予感は今でも心にこびり付いている

今はただ見習い少尉が無事に帰ってくる事だけを考えていた

 

おそらく横須賀行きの成果は無いだろう、新規艦娘の配属なんて何も無いかもしれない、でもそんな事はどうでも良かった、少尉さえ無事に帰って来てくれれば

 

帰って来たら、その時は心から労いの言葉をかけてあげよう、そして一緒に夕食を‥‥‥

 

((‥‥ガタン‥‥))

 

【川内】

「‥‥!少尉!?」

 

 

玄関で音が聴こえた、気配で分かる、見習い少尉が帰って来たのだ

 

 

【川内】

「‥‥少尉!‥‥よかった‥‥」

 

 

川内は安心で旨を撫で下ろした、そして玄関まで少尉を出迎えに‥‥

 

 

【川内】

「少尉!お帰りなさ‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

川内はここで言葉を失う、見習い少尉は雨の中で傘もささず、しかも頭から全身泥まみれになって立っていたのだ、泥で顔もよく見えない、まるで泥人形のようだ

 

 

【川内】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「川内‥‥ただいま‥‥」

 

【川内】

「‥‥少尉‥‥」

 

【見習い少尉】

「‥‥まあ驚くのも無理ないな、実は‥‥ぼーっとして歩いてたら頭から田んぼに落ちてしまってな‥‥傘も無くしちまった‥‥済まん」

 

【川内】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

見習い少尉の姿を見た川内は言葉も無かった

 

昨日、少尉を一人で横須賀に送り出そうと決めた瞬間から今に至るまでの様々な事が頭の中でフル回転していた、そして横須賀で少尉がどんな目にあったのかある程度の予想と合点がいって‥‥

 

 

【見習い少尉】

「ははは‥‥全く俺もドジだよなぁ?あともう少しで家に辿り着けたってのに、田んぼに落ちてこんな泥人形になるとは♪」

 

 

【川内】

「嘘つき!!」

 

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

 

川内は大声で叫んだ、そして雨の中を見習い少尉の目の前まで飛び出していた

見習い少尉は何も言い返す事が出来なかった

 

 

【川内】

「‥‥少尉‥‥この顔‥‥‥」

 

 

見習い少尉の身体からは糞尿の臭いがまだ強く残っていたが川内はそんな事全く意にかえさない、そして少尉の顔にこびりついた泥を自らの手で拭い取った、川内の声は震えていた‥‥

 

 

【川内】

「‥‥誰かに‥‥殴られたんでしょ?‥‥それも大勢から‥‥それくらいアタシにだって分かるよ?‥‥」

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

見習い少尉の顔は傷だらけで大きく腫れ上がっていた、もはや水田に落ちたなんて誤魔化しが通用する筈もない

 

 

【見習い少尉】

「すまん川内‥‥新規艦娘の話は‥‥上手く行かなかったよ」

 

【川内】

「もういい!!‥‥そんな事!!‥‥もういいんだよ!!」

 

 

川内は見習い少尉に抱き着いていた、雨の中で二人はずぶ濡れになっていた

 

 

【川内】

「少尉!‥‥少尉‥‥アタシは‥‥‥アタシ‥‥‥」(ボロボロ‥‥)

 

【見習い少尉】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

川内もこれ以上、何も言う事が出来なかった

 

 

『少尉を独り立ちさせる為に敢えて一人で横須賀に‥‥‥』

 

自分のこんな浅知恵のせいで少尉をこんな目に会わせてしまった‥‥‥

 

横須賀にどんな悪質な奴が居るか、今にして思えばそんな事は分かっていた筈だったのに‥‥‥

 

自分があんな無責任な事を言わなければ‥‥‥

 

少尉は何も抵抗出来なかったに違いない‥‥‥

 

それだってきっと‥‥‥アタシのせい‥‥‥

 

 

この人の側にいて、この人を守るのは、アタシの使命なのに‥‥‥

 

アタシが望んだ事なのに‥‥‥

 

少尉を一人ぼっちにしてしまった‥‥‥

 

アタシは‥‥アタシは何て事を!!‥‥‥

 

 

 

【川内】

「‥‥少尉‥‥ごめんなさい‥‥ごめんなさい‥‥」

 

【見習い少尉】

「川内‥‥何でお前が謝るんだ?‥‥謝らないでくれよ‥‥」

 

【川内】

「‥‥ごめんなさい‥‥」

 

 

雨は降り続く、それでも二人は抱き合ったまま‥‥‥

 

 

【見習い少尉】

「‥‥川内‥‥聞いてほしい‥‥」

 

【川内】

「‥‥‥うん‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「俺‥‥頑張るからさ‥‥出来る限りやってみるからさ‥‥」

 

【川内】

「‥‥‥うん‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「だけど‥‥もしかしたら‥‥何も果たす事も出来ないまま‥‥海軍を去る事になるかもしれない‥‥その時は‥‥‥ごめんな‥‥」

 

【川内】

「‥‥‥うん‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「だけど‥‥これだけは忘れないで欲しい!‥‥」

 

【川内】

「‥‥‥うん‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「たとえ何があっても‥‥俺はお前を離さないから!‥‥何処までも一緒だ!」

 

【川内】

「‥‥‥うん‥‥うん!‥‥‥」(ボロボロ‥‥)

 

 

【見習い少尉】

「川内‥‥‥ただいま‥‥」

 

【川内】

「少尉‥‥‥お帰りなさい‥‥」

 

 

 

少尉‥‥‥もう大丈夫だよ‥‥‥

 

アタシはここにいるから‥‥‥

 

アタシも少尉から絶対に離れないから‥‥‥

 

もう二度と‥‥‥独りになんかしないから‥‥‥

 

二人で‥‥頑張ろう?‥‥‥

 

 

 

【川内】

「少尉♪‥‥お腹すいたでしょ?」

 

【見習い少尉】

「腹ぺこだ」

 

【川内】

「風邪ひいちゃうよ‥‥中に入ろう?‥‥」

 

 

ーーーーー

 

 

【木曾】

「‥‥見せつけてくれるねえ川内よ、それがお前が愛した男か?‥‥」

 

 

雨にずぶ濡れになった見習い少尉と川内は、寄り添いながら監視所の中に入って行く

 

それを木々の切れ間から見守る木曾

 

 

1人の大男が背後から近付いて来たのは、二人の姿が監視所の中に見えなくなった時だった

 

 

【木曾】

「‥‥よう♪お疲れさん」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「木曾ちゃんも、俺は半分は肉を喰らってただけ、みたいなもんだがな」

 

【木曾】

「下の騒ぎはどうだ?」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「まだゴチャゴチャ現場検証してるよ、特高も監察局もご苦労な事だ、あんな事したって誰も俺を逮捕なんか出来ないものを」

 

【木曾】

「まあそう言うなよ、あれがアイツらの仕事さ、あの二人を見たか?」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「あんなイチャイチャ見せ付けられて、こっちまで当てられて恥ずかしくて見てられなかったよ、あれが木曾ちゃんの親友の川内、そして例の提督候補の擲弾兵か、奴もいずれは本当の提督になるのかねー」

 

【木曾】

「間違っても食うなよ?」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「おいおい!木曾ちゃん!提督と名が付いたら俺が何でも食っちまうなんて思わないで欲しいなぁ~、俺はこれでも喰っていい奴といけない奴の区別はちゃんとつくんだからな?」

 

【木曾】

「分かってる、言ってみただけさ♪」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「木曾ちゃん、まだここに居るんだろ?」

 

【木曾】

「ああ、暫くは関わるつもりだ、アイツには幸せになって欲しいんだ、どんな形でも構わないから」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「今回はトコトン付き合うよ、それに俺もやり残している事がある」

 

【木曾】

「何だ?それは」

 

【二等憲兵吸血鬼】

「『喰い残し』があるのさ♪」(ニヤリッ)

 

 

薄暗い闇の中に、鋭利な牙が怪しく光る

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

早朝‥‥‥

 

昨日の大雨が嘘のように、朝明けの空は晴れ上がっていた

 

そんな勝浦上空を一機の宅配用ドローンが飛んでいた

搬送中の荷物の送り先は‥‥‥

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

【見習い少尉】

「‥‥そうか、無理を言って済まなかったな、ドルフ」

 

【ドルフ・ヴァレンシュタイン】

『良いんだよ、マサ、君達二人には例の件で世話になってるから‥‥僕からのせめてもの恩返しだと思ってほしい』

 

 

勝浦の監視所、川内はまだ眠っている

 

見習い少尉は、今は友でもある『Lメタル・ヒュッケバイン社』の営業担当(当時)、『ドルフ・ヴァレンシュタイン』と無線電話で会話していた

 

宅配用ドローンが運んでいるのは、ドルフが言う『せめてもの恩返し』であった

 

 

【見習い少尉】

「そう言って貰えると助かる、(実働データは)約束通り必ずそちらに送るから安心してくれ」

 

【ドルフ・ヴァレンシュタイン】

『それは信用してるよ、君達がこれまで送ってくれた(データの)お陰でかなり有意義に(艤装の開発が)促進出来た、今送っているのはその成果の第一号だ』

 

【見習い少尉】

「おまえさん達もとうとうここまで来たな、こんな事が(海軍に)公になったら俺はただじゃすまないかもな?」

 

【ドルフ・ヴァレンシュタイン】

『君達をろくに支援もしない奴ら(海軍)が悪いのさ、あと例の物も一緒に送っておいた、なあマサ?』

 

【見習い少尉】

「どうした?ドルフ」

 

【ドルフ・ヴァレンシュタイン】

『君も川内も‥‥僕達の所に来ないか?正直これからの君達の事を考えたら、このまま海軍に居続けるのは‥‥君達が来てくれたら、僕らは大歓迎なんだけどな?』

 

【見習い少尉】

「ありがとうドルフ、だが今はまだそういう訳にはいかないんだよ、川内にこれまで散々苦労も心配もかけて来たってのに、俺は海軍で何一つ結果を残していない、正直この海軍には何の未練も無い、だが、今ここで何もかも頬り出すのは違う気がするんだ」

 

【ドルフ・ヴァレンシュタイン】

『‥‥そうか‥‥』

 

【見習い少尉】

「青臭い理想論だとは思うけど、俺にも理想がある、理想の鎮守府を作る事が、一人でも多くの艦娘達が笑って今日を明日を未来を生きる事が出来る、その為の鎮守府を作る理想が‥‥‥だから本当に海軍に俺達の居場所が無くなるまでは頑張ってみるつもりだ」

 

【ドルフ・ヴァレンシュタイン】

『分かっているよ、それは実現したら素晴らしい事だと思う、僕も応援してるよ、でも先ずは君達自身の身の安全を最優先して欲しい、命があって初めて夢は叶えるチャンスがあるからね』

 

【見習い少尉】

「‥‥そうだな‥‥」

 

【ドルフ・ヴァレンシュタイン】

『君達がもしその気になったら、僕はいつでも君達を歓迎するよ、それは覚えておいてくれ』

 

【見習い少尉】

「分かった、感謝するよ、俺達はどんな事をしても生き残ってみせるよ、それだけは約束する」

 

 

 

ドルフとの会話は終わった、彼から送られてくる荷物、それを積んだドローンは間もなく到着する予定だ

 

 

【川内】

「少尉‥‥おはよう、誰かと電話してたの?」

 

 

電話の会話に川内が目を覚まして起きてきた

 

 

【見習い少尉】

「‥‥おはよう、川内、ドルフと話をしてた、荷物が届くそうだ」

 

【川内】 

「ドルフから‥‥そう‥‥」

 

 

『艦娘』とそれが運用する『艤装』は、海軍工廠で主に工作艦娘と妖精、それに知識豊富な工廠兵(軍属のメカニック)によって運用・整備・開発が行われる

 

そのノウハウを持たない民間企業に艦娘と艤装の情報を流すのはある意味、軍の機密を漏洩させる行為であった

 

それに艦娘の艤装は民間に扱える代物でも無かった、人間大の少女達が扱う、そんな程度の大きさの火器で、実際の大型艦砲並の破壊力を得るなど、魔法でもない限りそんな事は物理的に不可能な筈だった

 

 

見習い少尉はそんな艦娘と艤装の情報をドルフを通じて『Lメタル・ヒュッケバイン社』に流した、『Lメタル・ヒュッケバイン社』はその情報を元に研究に研究を重ね、民間企業として初めて『艦娘用の艤装』のプロトタイプを完成させた

 

それは軽巡が運用する為の中口径の速射砲で、『Lメタル・ヒュッケバイン社』が得意分野としてきた『高初速・高々度用高射砲』の経験が取り入れられていた

 

 

これは本来はまずい事なのかもしれない、しかし三木之に邪魔されてまともな支援が海軍から受けられない以上背に腹はかえられない、全ては生き残る為だ

 

 

そのプロトタイプがもうすぐ到着する、その事は川内も知っていた

見習い少尉が自分の為に危ない橋を渡ってくれた事も

 

 

【川内】

「少尉?‥‥背中の傷(弾痕)は大丈夫?」

 

【見習い少尉】

「傷?‥‥あああれか、半分忘れてた、大丈夫だよ、お前が手当てしてくれたじゃないか?」

 

【川内】

「‥‥そうだけど‥‥」

 

 

夕べは見習い少尉の身体を洗い流して、その時に背中の弾痕に気が付いた、少尉は銃撃までされたのだ

川内にとってはそれもショックだった

 

昨日は色々ありすぎて精神的に疲れ直ぐ眠ってしまったが、今朝起きてあらためて昨日の事が現実だと思うと、川内は心が苦しくなる

 

 

【川内】

「新しい艤装か‥‥少尉はアタシの事、いつも考えてくれているのに‥‥それなのにアタシは‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「川内!話がある、少し海を見に散歩に行かないか?」

 

【川内】

「散歩?‥‥うん、いいよ?」

 

 

見習い少尉は何処からか、しまっていた桐の木箱を取り出してきた、一抱えはありそうな木箱だ

見習い少尉はそれを脇に抱えると、川内を連れて海の見える丘まで散歩に出かけたのであった

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

海が見える小高い丘、林が切れているので海が一望出来る

 

二人が普段海や夜空を眺める時に立ち寄ったり、体力作りの為のランニングコースにもなっている

 

 

【見習い少尉】

「川内、寒くないか?」

 

【川内】

「ううん、とっても暖かいよ、少尉‥‥」

 

 

早朝の海を横に並んでそれを眺める二人、お互い寒くないように二人寄り添いながら

 

 

【見習い少尉】

「‥‥良い景色だ、もし俺達がここから去ってもこの景色は変わらないんだろうな」

 

【川内】

「‥‥うん、そうだね」

 

【見習い少尉】

「もしそんな事になっても川内‥‥俺はお前を離さないからな、何処にでも連れていくから‥‥そうしたら、また二人でここに戻って一緒に同じ景色を眺めようじゃないか」

 

【川内】

「///‥‥‥うんっ♪///」

 

 

うっすらと朝日が昇り始める、そんな時意を決したように見習い少尉が

 

 

【見習い少尉】

「‥‥でだ!その為には俺達はどんな事があっても生き延びなければならない!だからこれを使おうと思う!」

 

【川内】

「‥‥‥えっ?」(キョトン)

 

 

そう言うと見習い少尉は抱えてきた木箱を持ち上げた

そういえば、川内はその木箱の中身を見たことが無かった

 

 

【川内】

「少尉?‥‥その桐箱って‥‥ずっとあったけど何が入ってるの?」

 

【見習い少尉】

「川内に見せるのは初めてだったかな、俺がまだ擲弾兵だった頃に使ってた物だ、『日本号』と一緒にここまで持って来た唯一の代物だ」

 

 

見習い少尉は箱の蓋を開けた、そこには‥‥‥

 

 

【川内】

「‥‥‥拳銃?‥‥」

 

 

二丁の自動拳銃が互い違いにケースに納められていた

年季は入っているが手入れはされているようだ

 

 

【見習い少尉】

「『ディストピアM92-FSフルオート』、ある『技能』を習得した物だけが持つ事を許された暴動鎮圧用自動拳銃だ、暴動鎮圧用だから二丁一組で使う事を前提にしてる、9mmパラを基本使うが、装甲貫徹弾のアーミーキラーを使う事も出来る、まあ細かい能書きは今はどうでもいい‥‥見ててくれ」(ズチャ!)

 

【川内】

「‥‥えっ?えっ?」

 

 

川内はこんな自動拳銃の存在も、それを見習い少尉が使っている姿も見た事が無かった、川内の困惑を余所に見習い少尉は件の二丁拳銃を両手に握ると、そのまま棒立ちになった、そして

 

 

【見習い少尉】

「先ずは『1の構え』」(ザシャ!)

 

【川内】

「ええっ?」

 

【見習い少尉】

「続いて『2の構え』」(ズチャ!)

 

【見習い少尉】

「さらに『3の構え』」(ジャキ!ジャキ!)

 

【川内】

「少尉?それは‥‥何?‥‥何かの‥‥格闘術?」

 

 

わざわざ飛び道具の拳銃を持ちながら、まるで何かの武術の様な構えを披露する見習い少尉、川内は突然の事で少尉の目的が分からない、しかし同時に‥‥

 

 

【川内】

「(ああやって何かの構えを見せる少尉も何か‥‥///カッコイイ❤///)」

 

 

【見習い少尉】

「見てたかい?川内?」

 

【川内】

「///ふえっ!?‥‥ふえええ~~!?///」

 

【見習い少尉】

「それでこれが『10の構え』、細かい構え方は他にも色々あるけど覚え切れないから今はここまでにしておこう、重要なのはこれを複数臨機応変に組み合わせる事によって効果を最大限に引き出す事だ」

 

【川内】

「///そっ!‥‥そうなんですか~///」(ドキドキ)

 

【見習い少尉】

「川内、お前にもこの戦闘術を習得して貰おうと思う」

 

【川内】

「えっ?それをアタシに?」

 

【見習い少尉】

「実はこれと同じ物を一組、ドルフに頼んで用意して貰った、中古品じゃない、1から新しく部品を削り出して作った新造品だ、今日の荷物と一緒に届く事になってる、それはお前の銃だ、それを川内、お前が使いこなすんだ!」

 

【川内】

「アタシが専用の銃を!?あの奇妙な構えってやっぱり何かの戦闘術だったの!?」

 

【見習い少尉】

「川内、俺がお前に近接格闘戦術を教えていたのは、何も素手やキックや刃物だけで戦う為だけじゃ無いんだぞ?この戦闘術を会得する為の下地作りでもあったんだ」

 

【川内】

「そっ‥‥そうだったんだ‥‥少尉?これは一体どんな戦闘術なの?」

 

【見習い少尉】

「見て分かるかもしれんが、武術・格闘術と射撃術を組み合わせた『対集団用戦闘術』だ、複数の相手を同時に制圧する為の、敵に囲まれてもこちらは一発も被弾せず、尚且つ敵を確実に仕留める為の、その為に科学的に編み出されたものだ」

 

【川内】

「ええ?まさか!そんな都合のいい(厨二病満載の)戦闘術なんて‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「言っておくが、これは魔法でもなければチートな超能力でも無いぞ?あくまで科学的な、過去の膨大な射撃データ、最新の弾道計算学と物理学、それに心理学に基づいて構築された、訓練で習得する事を前提にした戦闘術だ、だから本人がその気になれば誰でも習得する事が出来る、一応はな」

 

【川内】

「いや、一応って‥‥‥」

 

 

訓練で習得する事自体が難行苦行ではないかと川内は思うのだが‥‥‥

 

 

【見習い少尉】

「本来なら‥‥無理なく新しい艤装に慣れてから教えようと思ってたんだが、もうそんな悠長な事は言ってられなくなるらしい‥‥」

 

【川内】

「そっかあ‥‥少尉はその戦闘術を使えるんだよね?でも少尉はアタシの前では使って来なかったよね?どうして?そんな凄い業を持ってるなら、あんな将校達に大きな顔なんかさせないで済むのに‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「そういう訳にはいかないさ、擲弾兵の手は簡単に人を殺せる、俺がそんな事をしたら奴らを破壊してしまうだろう、擲弾兵は益々人間として認められなくなってしまう、何より俺はお前の側に要られなくなる、お前に顔向け出来ない男になってしまう」

 

【川内】

「少尉‥‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「それに俺達擲弾兵は艦娘と違って斬撃や打撃でしか深海棲艦にダメージを与えられない、この戦闘術も俺達が使っても深海に大きな効果は無い、しかし艦娘である川内がこれを使えば深海にもそれ以外の脅威にも、全ての敵に有効な筈だ!この戦闘術はきっと川内の大きな力になる、俺はそう信じている!」

 

【川内】

「少尉はそこまで考えて‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「言ったろ?魚雷なんか撃てなくたって、お前にはそれを補って余りある能力と可能性があるって」

 

【川内】

「少尉は本当に‥‥アタシの事ばかり考えてくれるんだね」

 

【見習い少尉】

「俺が望んでやってる事だ、俺は自分の事もかわいいから川内を守りたいんだ、お前が気にする事じゃないさ、なあ川内‥‥‥」

 

【川内】

「‥‥なあに?」

 

【見習い少尉】

「二人で俺達の理想を実現しよう!それが無理だったとしても必ず二人で生き延びよう!その為には川内の力が俺には必要だ、俺に力をかしてくれ!」

 

 

ああ‥‥‥

 

この人にこんなに必要とされてるなんて‥‥‥

 

アタシは何て幸せな艦娘なんだろう‥‥‥

 

そうだよ!もう落ち込んでる場合じゃないんだ!

 

 

 

【川内】

「少尉!その戦闘術、アタシに伝授してください!必ずものにして見せるから!アタシも‥‥助けられてばかりじゃなく‥‥もっと少尉の力になりたい!」

 

【見習い少尉】

「そう言って貰えると思ってたよ♪」

 

 

【川内】

「それで、その戦闘術は何ていうの?」

 

 

【見習い少尉】

「『ガン=カタ』だ!」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

三木之とその下僕達が一時的に逮捕されて収監された事と、陸戦隊員にシビトが出ている事、そして犯人が一向に見つからない事などで少なからず混乱が生まれた

 

見習い少尉達にとっては10日程、横須賀詣でしないで済む余裕日が生まれた訳で、この機会はドルフから送られてきた新しい艤装の調整と運用試験、そして2丁拳銃による射撃訓練と『ガン=カタ』の習得に徹底的に費やされた

 

そしてそれらが何とか形になってきた頃、ブロック海軍から嫌がらせに近い輸送船護衛任務が下令された

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

【足柄】

「あーーー腹が立つ!目的の相手には会えず、関西で変に足止めをくらって、そのくせ大した観光も出来なかったんだから!とにかく今は暴れないと気が済まないわ!」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「落ち着け落ち着け!世の中思い通りに行かん事もあるんや」

 

 

大阪と岡山で散々な目にあったヒィッツカラルド大佐と足柄は、陸路ではまどろっこしいという足柄の進言(我が儘?)を取り入れて遠州灘を東に向かって爆走航行していた

 

途中で偶然にも遭遇した深海の小部隊は、足柄の八つ当たりの餌食となって次々と葬り去されていった‥‥‥

 

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「八つ当たりで沈められるとは‥‥敵とはいえ悲惨過ぎる‥‥」

 

【足柄】

「何か言ったかしら?」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「何でもないどえす~」

 

 

そんな時、救援を求める信号が二人の通信機に届く

 

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「足柄!2隻の輸送船が深海に襲われとる!護衛は艦娘一人とその指揮官だけだそうだ!他に護衛戦力も救援も皆無らしい!」

 

【足柄】

「ふ~~ん♪じゃあ大義名分もある事だし、今度は正々堂々と暴れられるわね~♪」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「今までだってずっと正々堂々だったくせに」

 

【足柄】

「何か言ったかしら?」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「何でもないどえす~」

 

 

【足柄】

「(まさかあいつが?‥‥いくら何でも流石にね)」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

【川内】

「こいつ!!しつこいのよ!!」

((Barararam!!!))

 

【ロ級】

「ギイイイーーー!!!」

((ズガガガーーー!!!))

 

 

【見習い少尉】

「野郎!!コイツら何処から沸いて来やがった!!」

((ZuBashuu!!!))

 

【ヌ級エリート】

「グオアアアァァァーーー!!!」

((ブシャアァァァ!!!))

 

 

戦闘はのっけから混乱だ

人型の大物が少ないだけが救いかもしれないが、それでも相手の方が圧倒的に多勢なのは変わらない

 

 

 

小笠原・南西諸島の有人島に一次避難命令が出され、2隻の輸送船(フェリー)がブロック政府にチャーターされたのは三日前、その2隻を使って2島の住民を本土に疎開させる緊急輸送が行われる事になった

 

深海棲艦の一部が拠点確保の為に何処かの有人島に上陸する‥‥という、真実なのかガセネタなのか分からない情報が何処からともなく入ってきた‥‥らしい

らしいと言うのは、その真偽については見習い少尉達には一切説明が無かったからだ

これに対してブロック政府及びブロック海軍は緊急の避難疎開輸送を決定、深海に作戦を悟られない様にする為に隠密作戦とする事を決定、投入船舶と護衛戦力は最低の最低限とされた

 

 

結果、2隻の1000㌧クラス外洋フェリーを見習い少尉と川内の二人だけで護衛するという現在の状況がつくられたと言う訳である

 

 

【見習い少尉】

「船長!!もっと速度は上がらないのか!?」

 

【フェリー船長】

『無茶言うな!!これで目一杯だ!!これ以上上げたら機関が壊れちまう!!』

 

 

見習い少尉はフェリーの船長と無線でやり取りを交わす、フェリーは無論全速力を出しているのは見習い少尉にも分かる、しかし所詮は民間の旅客船、このままでは包囲殲滅されてしまう、早くここを突破しなければ!

 

 

【見習い少尉】

「くそ!!何が隠密作戦だから敵襲の心配は無いだ!!蓋を開ければこのザマだ!!」

 

【川内】

「少尉!!奴らこうなる事分かってたんじゃない!?だから護衛がアタシ達だけしか居ないんだよ!!奴らアタシ達を嵌めたんだよ!!」

((Barararam!!!))

 

【見習い少尉】

「そういう要素は有り得るな!民間人を本気で避難させるなら隠密行動なんて博打なんか打つ筈がない!‥‥この!!邪魔だ!!」

((ZuBashuu!!!))

 

【イ級】

「ピギイィィィーーー!!!」

 

 

船は出航し本土を目指したが、程なくして深海の部隊が攻撃を仕掛けてきた

まるでここに輸送部隊が通る事を初めから分かっていたみたいに‥‥

深海側は相手が民間フェリーとたった二人の護衛と分かっているらしく、人型の大物は少数で、殆どは軽巡クラスと駆逐艦クラス、PT鬼も含んだ編成の高速襲撃部隊であった

 

 

【見習い少尉】

「奴ら、やけに手際が良すぎるな!情報が深海側に事前に漏れてたとしか思えん!」

 

 

何もかもが急な命令だった、深海に悟られない為に隠密行動とする、その為に護衛任務は見習い少尉の勝浦監視所にのみ下令された

三木之ではなくブロック海軍からの直属命令だったから二人には拒む事なんか当然出来ない

 

 

【見習い少尉】

「俺達が深海にやられたら儲けもの、フェリーが沈んだら俺達に責任転嫁ってか!?そんなに俺達を海軍から排除したいか!?いい加減に俺達も怒るぞ!!」

((BAKIiiiーーー!!!))

 

【軽巡ツ級】

「グオオオァァァーーー!!!」

 

 

見習い少尉は擲弾兵時代から愛用していた『日本号』を振り回して戦っていた、一撃必殺の武器ではあるが相手の数が多過ぎて非効率過ぎた、しかしこれ以外に深海棲艦を確実に撃破出来る武器が擲弾兵には無いのだから仕方ない

 

飛び道具で確実に深海を倒せるのは今でも艦娘だけだ、一部の例外を除けば

 

 

【川内】

「このお!!あたれぇぇぇ!!!」

((BAZU!!BAZU!!))

 

【PT小鬼】

「ヒギイィィィーーー!!!」

 

【PT小鬼】

「キャハハ」

 

【川内】

「一つ外した!‥‥くっ!‥‥弾道が!‥‥」

 

 

川内は川内で、新しい艤装(ドルフから送られた速射砲)の扱いに苦戦していた、使えない訳ではない、これまでの単装砲とこの速射砲は余りにも違うのだ

 

通常の艦砲である単装砲は弾道が山なりになる、それを元に頭の中の測距艤で狙いをつける訳だが、この速射砲は元は対空高射砲、初速が遥かに高いので弾道はフラットになる、つまりほぼ真っ直ぐ飛ぶのである

 

砲弾が真っ直ぐ飛ぶなら返って狙いやすいのでは?理屈ではそうだが実戦となるとそうはいかない、これまで使ってきた装備とこうも特製が変われば慣れはどうしても必要だ、今までの感覚を修正する必要がある、そうしなければ敵の未来位置も予想し辛い

 

何よりこの速射砲、発射レートが早過ぎる、うっかり今までの単装砲の感覚で撃発をすれば砲弾が連続で撃ち出されてしまうのだ、予期せぬ連続射撃の連続でゼロポイントも狂い始めた、砲弾が少し右に逸れる

 

このあたり、まだまだ開発の余地がありそうである

 

 

【川内】

「もっと近付かないと当たらない!しかもこんな時に限ってPTが相手だなんて!‥‥」

 

 

ただでさえ命中させ難いPTが群がってくるので川内はなお苦戦した

 

 

【見習い少尉】

「川内!!ガン=カタを使え!!」

 

【川内】

「ええっ!?でもまだ特訓中で!‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「今使わなくていつ使うんだ!?ガン=カタはこういう時の為のものだ!!」

 

【川内】

「でも‥‥‥」

 

【見習い少尉】

「今はまだ完璧でなくてもいい!PTが相手なら今のお前でも充分通用する筈だ!川内!自分を信じろ!俺がフォローする!」

 

【川内】

「少尉‥‥分かった!やってみる!!」

 

 

 

そうよ!少尉!アタシ頑張るね!

 

少尉に授けて貰ったこの力をアタシは信じる!

 

他の誰でもない!貴方だけの為に!

 

 

 

川内は2丁拳銃を構えるとPTの群れの中心に突っ込んだ

 

 

【PT小鬼】

「ピギイーー!?」

 

 

自ら至近距離に突っ込んで来た川内にPT達はその意図が分からず驚いた

この距離では魚雷も返って使えない、PTは対空機銃を向けてくる

 

 

【川内】

「こうなりゃヤケだ!!こんのおおおーーー!!!」

((ジャキッ!!))

 

BArarararara!!!フォッ

 

BArararararara!!!フォッ

 

【PT小鬼】

「「「ヒギャアアアアア!!!?」」」

 

【川内】

「てえええええーーー!!!」

 

BArararararara!!!フォッ

 

 

【PT小鬼】

「キャハハ」(ジャキッ!)

 

【見習い少尉】

「お前はお呼びじゃねえよ!!」

((GUSA!!!))

 

【PT小鬼】

「ギャアアアア!!!」

 

【見習い少尉】

「いいぞ!!川内!!その調子だ!!」

 

 

 

川内はPTの群れの中で『ガン=カタ』を発動させた!

 

2丁拳銃の中には貫徹弾『アーミーキラー』が装填されている

普通の人間や擲弾兵が使ってもそれは深海には通用しない、しかし艦娘である川内がこれを撃つ事で絶大な効果を発揮した、PT達は手が届きそうな距離から連続して撃ち込まれる貫徹弾を回避する事も防御する事も出来ず『破壊』されていく

 

それは確かにガン=カタとしてはまだ未完成であった、演舞としても硬さが残る

事実、川内はPTに命中させる事に精一杯で、全てのPTからの反撃にまで気が及ばない、そこは見習い少尉がフォローした、射線の外から反撃しようとするPTを『日本号』で串刺しにしていった

 

 

【川内】

「すっ‥‥凄い‥‥こんな事が出来るなんて‥‥」

 

 

わずか19秒の間にPTの群れは全滅した、川内は自分で成し遂げた事が信じられなかった、自分が習得したガン=カタとはこんな凄いものだったのか

 

 

【川内】

「‥‥違う!‥‥まだ完璧じゃない!少尉に助けて貰ったから何とかなったんだ!まだまだ修練を積まなくちゃ!」

 

【見習い少尉】

「川内、お見事、その慢心しない気持ちも含めてな♪」(ポンッ)

 

【川内】

「少尉‥‥ありがとう!‥‥アタシ、必ずものにして見せるから!」

 

 

魚雷が撃てなくたって自分は戦える!自分は少尉の力になれる!

川内の心にあつい何かが流れる

 

 

【見習い少尉】

「とは言えまだ安心は出来ないか、救援要請は発信したがそれまでフェリーは護りきらんとな」

 

【川内】

「そうだね、まだ勝負はこれからだよね!アタシは絶対に諦めない!」

 

 

少尉と一緒にフェリーと住民を必ず本土に届けるんだ!そう決心する川内ではあるが、それでも救援が来てくれるならそれはそれでありがたいと思う

 

 

【川内】

「足柄さん‥‥木曾‥‥あの二人が来てくれたら、こんな心強い事はないんだけどな‥‥本当は神通も居てくれたらいいんだけど‥‥そんな事ここで言っても仕方ないよね!」

 

【見習い少尉】

「俺もそう思うが、その前に新手のお客さんだ!」

 

 

人型と思われる深海棲艦が単縦陣で突撃してくるのが見える、目的はフェリー‥‥ではなく、見習い少尉達らしい

 

 

【見習い少尉】

「フェリーじゃなくわざわざ俺達を狙ってくれるとは、何とも親切な奴らだ」

 

【川内】

「少尉、感心してる場合じゃなくない?」

 

【見習い少尉】

「違いない、先頭はネ級か、重巡戦隊だな、これが敵の本命か?」

 

 

ネ級を先頭にリ級で構成される巡巡戦隊が発砲しながら突っ込んでくる

 

 

【フェリーの船長】

『おおい!ヤバいのが来たんじゃないのか!?どうするんだ!?』

 

【見習い少尉】

「船長!そのまま全速力で本土に向かえ!救援は必ず来る!俺達に何かあっても止まるんじゃないぞ!」

 

 

船長に一応の指示を出した見習い少尉は

 

 

【見習い少尉】

「あいつら、こちらが小勢だと思ってナメてやがるな!その慢心のツケを払わせてやる!川内!!ネ級は俺がやる!!援護射撃でリ級を牽制してくれ!!」

 

【川内】

「はい!!」

 

 

【足柄】

『残念だけど、そういう訳にはいかないのよね~♪』

 

【川内】

「‥‥‥えっ?」

 

【木曾】

『大丈夫だ、俺に任せろ!』

 

【川内】

「‥‥‥えっ?‥‥ええっ!?」

 

【加賀】

『鎧袖一触よ、心配要らないわ』

 

 

今にして思えばとびっきりの心強い援軍が来てくれた

いささか心強過ぎた

 

 

これまで誰も注目しなかった空に、艦載機の編隊が現れだ

見たことのない艦載機だ、機体の下(ハードポイント)から何かが射出されるとそれが過たず、追撃してくる深海達に次々と命中した

 

海上に炎の帯が拡がっていく

 

 

【ヌ級】

「ゴアアアーーー!!!」

((ZUGAGAGAGAGAGAGA!!!))

 

 

【加賀】

「対艦焼夷弾(ナパーム弾)、光線(レーザー)誘導爆弾‥‥悪くはないけれど、使い方は誤れないわね」

 

【プリンツ・オイゲン】

「はや~~、やりますね~」

 

【多摩(天憲隊)】

「あの下には居たくないニャ」

 

【フェリーの船長】

『助かった~~!恩に着るよ!』

 

【加賀】

「安心して、我々天憲隊が護衛します、そのまま進んで」

 

【フェリーの船長】

『先程まで我々を護衛してくれた連中が大変なんだ!助けてやってくれ!』

 

【加賀】

「そちらは大丈夫、危なくて頼もしい援軍が向かってるわ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

【木曾】

「お前ら!そんな腕で俺のダチを襲おうってのか?弱すぎる!!」

((ガッコン!…Shubababababa!!!))

 

 

独特の機構を持つ魚雷発射管から大量の誘導単魚雷が解き放たれ、見えない破滅の航跡を無数に刻みながら各々目標に向かって突貫する

 

((Zugagagaーーー!!!))

 

ナパーム弾の炎の中を執念で追い縋って来た深海の水雷戦隊は木曾の魚雷攻撃で瞬殺された、巨大な水柱は深海達の墓標がわりとなる

 

 

【川内】

「木曾!来てくれたの!?ありがとう!」

 

【木曾】

「よう川内、こんな所で会うとは奇遇だな、誰かの救援要請を受け取った時はまさかとは思ったが、まあ無事で何よりだ♪」

 

【川内】

「そう?……ウフフ♪そういう事にしといてあげる♪」

 

 

本当は知っていて、心配で来てくれたんじゃない?

そう思った川内だが、それを指摘するのも無粋な気がした

 

 

【見習い少尉】

「やあ!君が木曾君か?川内から話は聞いてる、川内を色々と助けてくれた様で、感謝するよ!」

 

【木曾】

「あんたが川内の少尉さんか?初めましてだな、俺は木曾、君付けなんかしなくても『木曾』って呼んでくれて良いぜ、川内は俺のマブダチなんだ、守ってやってくれ」

 

【川内】

「木曾……」

 

【見習い少尉】

「ありがとう、勿論だ!頭を擦り付けて礼を言いたいところだがネ級と重巡が接近してる!それを片付けてからでいいか?」

 

【木曾】

「男が滅多にそんな事するもんじゃないぜ、まあ気持ちだけは受け取っておくよ、それより心配は無いみたいだぜ?ほら」

 

【川内】

「‥‥あっ‥‥あれ?」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

((ボキ!!ボキ!!))

【リ級エリート】

「グエエアアアーーー!!!」(バッシャーーン!!)

 

【足柄】

「手応えないわねぇ!それでエリートが聞いて呆れるわ!」

 

 

【別のリ級エリート】

「ナッ!?ナンダコイツハ!?素手デ倒シタダト!?」

 

【足柄】

「どうしたのよ?これでお終い?折角人型と殴り合えると思って楽しみにして来たのよ?もっと私を楽しませなさいな!!」

 

【更に別のリ級エリート】

「コノ艦娘!!戦闘狂カ!?」

 

【重巡ネ級】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

先程単縦陣で突っ込んで来た筈の重巡戦隊は、突如現れだ目付きの危ない一人の艦娘にパニック状態に陥っていた

 

この艦娘何故か艤装を装備しておらず、深海側の弾幕をかい潜って接近すると、いきなり一体のリ級に殴りかかり、膝蹴りも一発、そのまま閉め技で何処かの骨(竜骨か?)をへし折って撃破してしまったのである、その間僅か5秒!

 

深海側にとってはこの艦娘『足柄』の行動も戦術も理解の範囲外であり、その後の足柄の殺気にも押されて反撃も忘れて棒立ちになってしまった

 

この時点で勝負は決してしまったと言っていい

 

 

【足柄】

「そこのネ級!あんたは少しばかり骨がありそうね、私の相手をしなさいな!」

 

【重巡ネ級】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

それでも数では深海側の方が多い、相手は足柄一人、それでも足柄は自分の相手にリ級を指名してきた、とにかく凄い自信だ!

 

 

【別のリ級エリート】

「キッ!?キサマ!!我々ヲ無視スルノカ!?」

 

【更に別のリ級エリート】

「コチラノ方ガ多インダゾ!?」

 

【足柄】

「弱いものいじめは性分じゃないわ、私は狼だけど獲物は自分で選ぶ主義よ」

 

【別のリ級エリート】

「ンナッ!!?」

 

【足柄】

「あんた達の相手は提督に任せるわ、あんた達も会いたいんでしょ?提督に♪」

 

【更に別のリ級エリート】

「何ィ!?提督ダト!?」

 

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「おいおい!足柄!散々煽っておいてから俺に丸投げする気か?」

 

 

『提督』という単語を聞いて、深海棲艦達の目の色が変わった

艦娘を指揮する存在にして艦娘の精神的支柱『提督』は、今も昔も深海棲艦達にとって最優先攻撃目標なのである

 

 

【足柄】

「あんたなら相手が10倍でも平気でしょ?頑張れ~♪でもあのネ級は私が貰うわよ?」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「しょうがないなあ~~」(ポリポリ)

 

 

そう言って足柄は、リ級達の相手をヒィッツに押し付けて行ってしまう

 

 

【別のリ級エリート】

「コイツガ!‥‥提督カ!!」

 

【更に別のリ級エリート】

「丁度イイ!一緒ニヤッテシマエ!!」

((ジャキッ!! ジャキッ!!))

 

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「田舎者めが!相手をしてやる!ただし、真っ二つだぞ?」

 

((パチーン! パチーン!))

 

【別のリ級エリート】

「グベッ!!?   」

 

【更に別のリ級エリート】

「ゴバッ!!?   」

 

 

艤装を提督に向けたと思った直後、謎の指鳴り音と共にリ級達は真っ二つに裂けた

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

【見習い少尉】

「‥‥おおい!マジかよ!?」

 

【川内】

「あれってヒィッツカラルド大佐?‥‥一体何が起こったの!?」

 

【木曾】

「おいおい、また化け物みたいな提督がここにも出て来たなぁ」

 

 

後年、何度も見る事になるヒィッツ提督の指鳴らし、三人はこの時始めて見たのだからそりゃあ驚くでしょ?

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

【足柄】

「これで邪魔者は居なくなったわ、さあ楽しみましょ♪」

 

【重巡ネ級】

「‥‥オ前ガ‥‥ワタシヲ沈メル‥‥死神カ?」

 

【足柄】

「そいつは少し違うわね、私はアンタを噛み砕く『狼』よ♪」

 

((ズガガガーーー!!!))

 

お互い前口上は済んだ、ネ級は近距離から主砲をぶっ放して来た!

 

 

【足柄】

「ふんっ!!舐めるな!!」

 

((カアァァァーーーン!!‥‥‥))

 

足柄はそれを裏拳で弾き飛ばす!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

【川内】

「足柄さんも‥‥‥凄い!きっと強いとは思ってたけど、あんなに強い人だったなんて‥‥‥」

 

 

足柄のパフォーマンスのごく一部しか見ていない‥‥のだろうが、それでも川内には、足柄の底知れない強さを感じない訳にはいかなかった

 

 

【木曾】

「‥‥という訳だ、こっちは方が着きそうだ、加賀さんの方は?」

 

【加賀】

『こちらは大丈夫よ、フェリーの護衛は任せて、水上艦組は出番が無かったと言ってごねてるけれど』

 

【木曾】

「分かった、掃討が済んだら追いかける、なあ?旦那の奴を見なかったか?」

 

【加賀】

『吸血鬼なら貴女と一緒にいたのでは?』

 

【木曾】

「途中で何処かにいっちまったんだよ、食べ残しを見つけたとかで」

 

【加賀】

『なら直ぐに戻るでしょう、貴女もまだ新婚ね、もう少し大きく構える事を覚えなさい?』

 

【木曾】

「///新婚って‥‥勘弁してくれよ~///」

 

 

【川内】

「木曾?誰かと通信してたの?」

 

【木曾】

「天憲隊に知り合いがいるんだ、フェリーは無事だ、俺達が追い付いたら護衛は引き継ぐそうだ」

 

【川内】

「そう‥‥よかった、木曾!何から何まで、本当にありがとう!」

 

【木曾】

「よせやい、俺だけのお陰じゃないよ、あっちも終わったらしいな」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

【足柄】

「アンタ、悪くは無かったわよ、私と出会ったのはアンタにとって不運だったのかしら?それとも‥‥‥」

 

【重巡ネ級】

「‥‥ヤット‥‥ヤット眠レル‥‥」(ゴボゴボ‥‥‥)

 

 

【足柄】

「‥‥そう、アンタは休みたかっただけだったのね、ふん、命を捨ててる時点でアンタに勝ち目は無かったのよ」

 

 

至近距離での撃ち合いどつき会いを演じた足柄とネ級、ノーダメージの足柄に対してネ級はボロボロにされて沈んでいく、その顔には安堵の表情があった

 

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「足柄、お疲れさん、お前の戦い方は相変わらず壮絶過ぎてそそるなあ~」

 

【足柄】

「大した事してないわよ、それより他に敵は居ないの?」(キョロキョロ)

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「お前は本当ぶれないなぁ~、とにかく合流だ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

【潜水ソ級】

「‥‥ソウダ、全員ヤラレタ、輸送船ニ大勢ノ提督ガ乗ッテイル情報ハ、ガセダッタ様ダ‥‥」

 

 

戦闘海域から少し離れた所で監視していた深海が一体‥‥

 

 

【潜水ソ級】

「‥‥ワカッタ、コレヨリ撤収ヲ‥‥」

 

【?】

「おい!」

 

【潜水ソ級】

「!!!!!?」

 

 

BAGOM!!!

シャキイイーーン!!‥‥‥

 

 

【二等憲兵吸血鬼】

「御苦労さん、艦娘を危機にさらした奴は必ず始末するのが俺の流儀でね」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

【足柄】

「ブロック海軍の奴らもまた無茶な命令出すわね、完全な嫌がらせじゃない!深海が島に拠点作りの話だってどこまで本当か分かったもんじゃないわ」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「これは、いつか何処かで一度締めてやらんといかんな~」

 

【足柄】

「それはそうと‥‥あんたは?」

 

【木曾】

「俺は『木曾』、川内とは昔からの縁があるんだ、宜しく、あんた強いんだな?」

 

【足柄】

「あんたも中々やりそうね、雰囲気で分かるわ、何処か川内と同じ匂いがしないでもないけど‥‥あんた、一度私とやってみない?♪」

 

【木曾】

「おーこわ、狼の牙は敵味方関係無しかい?」

 

【足柄】

「私は強い奴と戦いたいだけよ♪あんたのそのホルスターに収まってる馬鹿デカい拳銃、お飾りじゃないんでしょ?」

 

【木曾】

「フフフ♪分かるかい?」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「おいおい、強そうだからって誰彼構わず戦いを吹っ掛けるのはやめれ!」

 

 

木曾の腰のホルスターにはこの時既に『エボニー&アイボリー、シリアルNO:02』が収まっている

 

足柄と木曾、この時既にとびきりの戦闘力を持つ二人がこうして遭遇してしまった

足柄の威圧感にも木曾は平然としている、それがまた足柄の闘争本能を刺激し‥‥

 

やや危ない雰囲気に成りかけた時‥‥‥

 

 

【川内】

「足柄さん!足柄さんも助けに来てくれたんだね!ありがとう!」(ギュッ)

 

【足柄】

「わっ!ちょっと!‥‥もう調子狂うわね~」

 

【木曾】

「フッ♪‥‥やれやれ助かったぜ」

 

 

足柄の腕に縋り付いて礼を言う川内の姿に、一同は一瞬で和んだ

 

 

【川内】

「ヒィッツカラルド大佐!少尉とアタシ達の救援要請にお応え頂きありがとうございます!」(ビシッ!)

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「ああ、良いんだよ川内ちゃん、君らが無事なら」

 

【足柄】

「ふ~ん‥‥あんたも普通に敬礼される事もあんのね?」

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「いや、あのさ~、ワテクシ一応『大佐』なんですけど~?」

 

【川内】

「‥‥‥クスッ♪(足柄さんて、やっぱり面白いひと♪)」

 

 

【木曾】

「ところで川内、お前がまさか『ガン=カタ』を使う様になったとはな」

 

【川内】

「木曾も知ってたんだね?ガン=カタの事、少尉に特訓して貰ったんだ、アタシ拳銃なんて全然使って無かったからまだまだ未熟で‥‥」

 

【木曾】

「焦る事は無いさ、今度、型を見せてくれよ?」

 

【川内】

「ええ~、何か恥ずかしいなぁ~」

 

 

【足柄】

「‥‥ところで話は変わるけど、川内?」

 

【川内】

「‥‥えっ?何?足柄さん?」

 

【足柄】

「私と提督が横須賀に居ない間に‥‥何かあったの?」

 

【川内】

「‥‥‥‥えっ?」

 

【足柄】

「あんたは悩みが直ぐ顔に出るのよ、何か‥‥あったのね?」

 

 

【川内】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

【木曾】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

足柄にズバリ指摘されて、川内は少しだけ奥歯を噛み締めた

 

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「(足柄の野生の勘は相変わらずとんでもないな、それにしても、俺らの居ない所で艦娘を苦しめる事態が起こっていたとは聞き捨てならんな‥‥)」

 

 

一同に沈黙が流れる中

 

 

【足柄】

「まあいいわ、詳しい話は後で聞くとして‥‥あんたの男は何処に行ったのよ?」

 

【川内】

「///おっ!?‥‥男って!///」

 

【木曾】

「そう言えばあの少尉さん、いつの間にか居なくなったなぁ」

 

【川内】

「はっ!!‥そう言えば!‥‥少尉!!」

 

 

【見習い少尉】

「お~い!川内こっちだ~!」

 

【川内】

「少尉!、良かった(ホッ)‥‥どうしたの?」

 

 

少し離れた所に見習い少尉が居た、何かを見付けたらしい

 

 

【見習い少尉】

「これを見てくれ!」

 

【川内】

「‥‥あっ、この娘は‥‥」

 

【木曾】

「ほお~~」

 

 

 

【磯波】

「‥‥‥‥‥‥」(プカプカ‥‥)

 

 

 

【ヒィッツカラルド大佐】

「どうやら先程からの戦闘の結果、救助(ドロップ)する事になった艦娘やな」

 

 

海面に1人の艦娘が仰向けに浮き上がっていた、それに見習い少尉が気付いて介抱しようとしている

 

 

【見習い少尉】

「‥‥君、大丈夫か?」

 

【磯波】

「‥‥うっ‥‥う~~‥ん‥‥」

 

【足柄】

「良かったわね川内、念願の新規艦娘(新人)よ」

 

【川内】

「‥‥えっ!?‥この娘がうちの新人に!?」

 

【足柄】

「当然でしょ?、今回の出撃の当事者はあんた達なんだから」

 

【木曾】

「良かったな川内、久し振りの後輩だ、おめでとう」

 

【川内】

「うっ‥‥うん‥‥」

 

 

 

数奇な運命と縁に導かれて、ここに多くの出会いが生まれた

 

 

 

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  [名称・その他解説]

 

 

①ゴロツキABCD

 

三段腹中尉こと陸戦隊将校『五階 務』に雇われた同じ陸戦隊のはみ出し者四人組

五階ら将校達同様、三木之に弱みを握られた三木之の走狗で金次第で大抵の事は引き受ける、艦娘を化け物か性処理の道具としか思っていない

勝浦の監視所に一人で留守番をしていた(筈の)川内を性的に襲う為に送り込まれたが山の中で道に迷わされ、艦娘の敵の匂いを嗅ぎ付けた二等憲兵吸血鬼によって皆殺しにされた

 

 

②木曾のアリバイ作り

 

勝浦の監視所に川内を尋ねてきた木曾、並んで自撮り写真を撮りそれをインスタに投稿した事も含めて、統べては川内の為のアリバイ作りであった

ゴロツキ四人組を二等憲兵吸血鬼が始末するのは規定事項であり、その件で川内に疑いがかかるのを未然に防ぐ為の予防処置、木曾の存在とインスタの写真、その撮影日時が川内のアリバイを証明する事になる

 

 

③ドルフから贈られた川内用艤装の速射砲

 

後に六本脚鎮守府の『軽巡用メイン艤装』として運用される事になる『60口径155ミリ速射砲』のプロトタイプ(単装式)

プロトタイプとはいえ民間企業が開発に成功した最初の艦娘用艤装で、運用試験とデータ収集を見習い少尉と川内が行う事でLメタル・ヒュッケバイン社と取り引きを成立させている

この開発にあたって見習い少尉から同社に艦娘の艤装に関する情報が流されており、これは後々少し問題になるが、当時まともな支援が受けられなかった二人の状況から『やむなし』と判断される事になる

 

 

④ディストピアM92-FSフルオート

 

M92-FSをベースにフルオート射撃のセレクトを可能にした9mmの自動拳銃

暴動鎮圧と対テロ制圧用に作られたもので基本『二丁拳銃』として運用する

マズル(銃口)の形状から独特のマズルフラッシュ(発砲炎)を発生させる

見習い少尉が現役擲弾兵の時に使っていたがこれは人間の兵士と戦う為のもので深海棲艦には効果が無かった

川内専用として、新規に部品を削り出して製造した新品が新たに用意される

装甲貫徹弾『アーミーキラー』を装填して、かつ艦娘である川内が使う事で深海棲艦にもダメージを与えられるようになった

『エボニー&アイボリー、シリアルNO:06』が二等憲兵吸血鬼から譲渡されるまで、川内はこれを運用する事になる

 

 

⑤ガン=カタ

 

旧世紀に存在した、独裁国家リベリアで生み出された、射撃術と格闘武術を掛け合わせた戦闘術

当時最新の弾道物理学と過去の膨大な射撃データ、心理学を取り入れる事で、複数の敵を同時に相手にしつつ一発も被弾せず敵を確実に殲滅する事を可能にした

特殊な超能力の類いではなく、一応は訓練次第で誰でも習得する事ができる(人によって能力の差は発生するが)

ガン=カタは射撃だけでなく近接格闘戦にも応用できるので剣や刀、刃物や打撃武器での戦いでも役に立つ

見習い少尉が『魚雷攻撃』に代わる、川内の新たな戦い方として習得させ、川内がそれを特訓と実戦の中で練り上げていった

 

 

⑥北條 透

 

警視庁捜査一課の刑事、優秀な刑事で『G3』『V1』の装着員に選ばれた事もある

陰険で計略を使う事もあるが警察官としては強い正義感を持つ熱血漢、『小沢 澄子』や『氷川 誠』に対抗心を燃やすが基本はいい人である

アンノウンとの戦闘で1度倒した敵に苦戦しパニックになった事で『G3』を捨てて離脱した経験があり、それをテレビで見たホーネットがショックを受けたりもした

射撃が得意で手巻き寿司が苦手

 

 

⑦小沢 澄子

 

警視庁の対アンノウン対策班『G3ユニット』の指揮官、G3の開発も手掛けた超天才

強烈な個性で自身の意見や信念は曲げない、あまり人の話を聞かない

『氷川 誠』や『津上 翔一』の事を認めており『北條 透』を毛嫌いしている、気持ちは分かるが‥‥‥

氷川の『ちび加賀』欲求を既に知っているが特に何とも思っていない

 

 

⑧津上 翔一

 

本名『沢木 哲也』

『仮面ライダー・アギト』その人

『みんなの居場所を守る』をモットーにアンノウンとの戦いに身を投じる

家事と料理と家庭菜園が得意でダジャレが大好き、フライパンを持たせれば大抵の事は無双する

ちび加賀愛の氷川を『変態だけどいい人』、北條を『実は結構愉快でいい人』と評価する

 

 

⑨岡山国際サーキット

 

岡山の山中にある、その名の通り国際レースも開催されるサーキット場

カルドが大阪のクロード実家に自力で行こうとしてたどり着いた場所

因みに、カルドは岡山駅で赤城と一緒にきびだんごを泣きながら食べた模様

 

 

 

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

《エピローグ》

  《いきなり!北條小劇場》

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

【ホーネット】

「そんな‥‥‥どうして?‥‥」

 

 

日本の伝統文化に異常な興味をもつホーネットが『仮面ライダー・アギト』の第10話に強烈なショックを受けた

 

 

【ホーネット】

「ねえ!!マム!!どういう事なの!?北條さんが逃げたわ!!」(ガシッ!)

 

【川内】

「う~~ん、多分氷川さんが凄すぎるんだと思う‥‥」

 

【飛龍】

「やれやれ、妙な事に感心持っちゃったわね~この娘」

 

【清霜】

(三方原ポテト→ポリポリ)

 

【古明地 こいし】

(三方原ポテト→ポリポリ)

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

【北條 透】

「氷川さん、落とし物ですよ」

 

【氷川 誠】

「北條さん、これはどうも‥‥うっ!それは!?」

 

 

『半脱ぎ兼パンチラ姿の『ちび加賀』レアカード』

 

 

【北條 透】

「あなたの‥‥ですよね?」

 

【氷川 誠】

「むむむ!‥‥‥」

 

【北條 透】

「私は貴方の個人的趣味をとやかく言うつもりはありません、しかし警察官ともあろう人がこの様な物を持ち歩いていながら簡単に落として、尚且つそれを他人に見られてしまうとは、無用心過ぎとは思いませんか?」

 

【氷川 誠】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【北條 透】

「このカード、御丁寧に氷川さんの名前も書いてありますね?所有者としては余程大切な物なんでしょうけど、私以外の者に拾われていたら貴方どうする気だったんです?」

 

【氷川 誠】

「くっ!‥‥‥‥」

 

【北條 透】

「所持するな‥‥とは言いません、ですが貴方にこのような趣向がある事を小沢主任が‥‥あの唯我独尊でプライドの塊の『小沢 澄子』が知ったら何と思うでしょうね?」

 

【氷川 誠】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【北條 透】

「誰にも個人のプライベートはある、しかしそれを容易にさらけ出してしまう人に危機管理能力が備わっているとは‥‥私にはとても思えない、しかも貴方が関わっているのは警察機構にとって極めて秘匿性が要求される『G3』システムとそのデータなんだ!御自分がどのような立場に居るのか理解しているのですか?」

 

【氷川 誠】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【北條 透】

「私は貴方の立場を悪くしようなんて気はさらさらありませんよ、しかし、そのような危機管理能力の低い御仁に『G3』の装着者として任務を続ける資格は無い!‥‥と私は思う訳ですよ」

 

【氷川 誠】

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【北條 透】

「氷川さん、単刀直入に言います!貴方にG3装着者は務まらない!私を新たな装着者として推薦して下さい、このカードの件は私の胸の内にしまっておきま‥‥‥」

 

【氷川 誠】

「‥‥返して下さい!」

 

【北條 透】

「‥‥‥はい?」

 

【氷川 誠】

「僕の『ちび加賀』を返して下さい!!」(ガシッ!)

 

【北條 透】

「ちょっ!?ちょっと待って下さいよ!このカードの事が公になったら貴方のG3ユニットの立場が!‥‥」

 

【氷川 誠】

「小沢さんに知られたって何も恥じてなんかいませんよ!!僕は『ちび加賀』を捜し求めて居るんです!!だから何だって言うんですか!?『G3』に成りたいなら勝手に好きにすれば良いじゃないですか!!」

 

【北條 透】

「氷川さん!!貴方本当に『G3』としての自覚はあるんですか!?」

 

【氷川 誠】

「『G3』よりも『ちび加賀』だあぁぁぁ!!!」

 

【北條 透】

「あっ!!あんた『G3』を何だと思ってるんだ!?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

都内、某焼肉店‥‥‥

 

 

【小沢 澄子】

「氷川君が『ちび加賀』を愛でてる?知ってるわよ?そんな事」

 

【津上 翔一】

「ですよね~~」

 

【小沢 澄子】

「真面目で堅物で不器用だけど、ああいう一面があるところが可愛いのよね~」

 

【津上 翔一】

「氷川さん、変態だけどいい人ですもんね♪」

 

【小沢 澄子】

「まあ北條あたりにゆすりのネタにされない様にそこら辺は私が押さえとかないとね、北條の奴馬鹿だから」

 

【津上 翔一】

「そうかな~?北條さんもあれで結構愉快でいい人ですよ~?」

 

【小沢 澄子】

「君は本当人が良いわね~、お肉焦げるわよ?」

 

【津上 翔一】

「おっと!‥‥あの二人、あれで結構良いコンビなんじゃないですか?」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

【氷川 誠】

「僕の『ちび加賀』を返せぇぇぇーーー!!!」

 

【北條 透】

「氷川さん!!あんたって人はぁ!!!」

 

 

【氷川 誠】

「北條さんだっていちど『G3』捨てて逃げたじゃないですか!!」

 

【北條 透】

「あっ!‥‥あの時は大変で‥‥」

 

【ホーネット】

「そうよ!!ミスター北條!!ライダーがどうして逃げたのよ!?」

 

【北條 透】

「だからあの時はマジでヤバくて!‥‥‥って君は誰だ!?」

 

 

【川内】

「すみませ~ん、お邪魔しま~す、娘を連れ戻しに来ました~♪」

 

【アンドロメダ】

「もう!いくら日本文化と北條さんが気になるからって!何でこんな所まで来るの~!?」

 

【UX-01】

「あなた達、そんな険しい顔して、もしかして疲れてるの?だったら私がお世話してあげるわ♪」✨

 

【北條 透】

「きっ!?君達は一体どこの誰だぁぁ!?」

 

【氷川 誠】

「『ちび加賀』返せぇぇぇーーー!!!」

 

 

ホーネットは家族に連れ帰られ、『ちび加賀レアカード』は普通に氷川の元に戻った

北條の策略は不発に終わり、焼肉コンビは焼肉を堪能した

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

《エピローグ2》

    《夫婦、東京日和》

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

都内、某三越‥‥‥

 

 

【クロード戦艦提督】

「金剛、今回の作戦はよく頑張ってくれた、好きなもの何でも買っていいんだぞ?」

 

【金剛】✨

「エヘヘ~♪❤️ワータシはテートクとこうやって、二人で腕を組んでデートするのが1番のご褒美デース♪❤️」

 

【クロード戦艦提督】

「お前ほどのいい女にそこまで言って貰えたら、それこそ男(提督)冥利に尽きるってもんだ♪」

 

【金剛】

「///テートク~!はっ‥‥恥ずかしいネー❤️///」

 

 

久し振りの非番、買い物デートに来たラブラブな二人

 

そこに館内放送が流れる

 

 

ピンポン パンポーン~♪

 

【館内アナウンス】

「お客様に、迷子のお知らせです」

 

 

特に何の変哲もない、よくある迷子のお知らせアナウンス、問題は誰が迷子になったかということで‥‥‥

 

 

【館内アナウンス】

「『カルド・アルレッド君』の保護者の方、『カルド・アルレッド君』の保護者の方、1階インフォメーションコーナーまでおいでください、繰り返しお知らせします、迷子のお知らせ‥‥‥」

 

 

【クロード戦艦提督】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

【金剛】

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

何処かで聞き覚えがあり過ぎる!その迷子の名前にクロードと金剛はかたまる

 

 

【金剛】

「‥‥カルドさん‥‥赤城とまたはぐれたんですネー‥‥」

 

【クロード戦艦提督】

「‥‥何やってんだ!アイツは‥‥」(トホホ‥‥)

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

【赤城】

「大変!お惣菜売り場のの試食コーナーを満喫(全部食べ尽くした)し過ぎて、カルドさんとはぐれてしまった!」

 

 

大急ぎで1階インフォメーションコーナーに向かう赤城

 

 

【赤城】

「それにしてもカルドさん‥‥昔からこれだけは変わらないところが‥‥‥」

 

 

インフォメーションコーナーで半ベソかいてるカルド君を見付けて赤城は一言‥‥‥

 

 

【赤城】

「カワイイ♪❤」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

       [出 演]

 

 

へたれ提督(見習い少尉)(六本脚鎮守府)

川内(六本脚鎮守府)

 

謎の提督ヒィッツカラルド(ヒィッツカラルド大佐)

(謎の鎮守府)

足柄(謎の鎮守府)

 

クロード戦艦提督(リンガ特設連邦鎮守府)

金剛(リンガ特設連邦鎮守府)

 

ジョニーnrsenc一等憲兵(KLG)

加賀(KLG)

 

二等憲兵吸血鬼(赤土鎮守府)

木曾(赤土鎮守府)

 

花田 刀治郎(NPF)

飛龍(NPF)

 

カルド・アルレッド(リンガ特設連邦鎮守府)

赤城(リンガ特設連邦鎮守府)

 

 

清霜(六本脚鎮守府)

アンドロメダ(六本脚鎮守府)

ホーネット(六本脚鎮守府)

江風(NPF)

海風(NPF)

 

神通(紅輪鎮守府)

 

天龍(六本脚鎮守府)

ガンビア・ベイ(六本脚鎮守府)

妙高(謎の鎮守府)

那智(謎の鎮守府)

秋雲(謎の鎮守府)

漣(謎の鎮守府)

吹雪(謎の鎮守府)

デウスーラ(謎の鎮守府)

不知火(リンガ特設連邦鎮守府)

隼鷹(リンガ特設連邦鎮守府)

夕立(KLG)

多摩(KLG)

プリンツ・オイゲン(KLG)

蒼龍(NPF)

長門(石ノ森鎮守府)

大井(石ノ森鎮守府)

 

妙高(石ノ森)

那智(石ノ森)

足柄(石ノ森)

羽黒(石ノ森) 

 

潮

磯波

 

ナナ

雄一少年

天龍児童園の子供達

 

一条 薫(石ノ森鎮守府)

 

三木之 ジャギ(苗夫)

 

玉林 宏

大東 裕之

五階 務

 

ゴロツキABC

タクシーの運転手

 

多聞 風都(特別高等警察)

 

多聞チーム特高隊員

 

正義 公人(帝国海軍監察局)

 

帝国海軍監察局員

 

香取(帝国海軍監察局)

 

フェリーの船長

重巡ネ級

 

ドルフ・ヴァレンシュタイン

(Lメタル・ヒュッケバイン社)

 

 

氷川 誠(警視庁捜査一課)

 

北條 透(警視庁捜査一課)

 

小沢 澄子(警視庁G3ユニットリーダー)

 

 

津上 翔一(沢木 哲也)

 

五代 雄介

 

 

古明地 こいし

 

 

あきつ丸(六本脚鎮守府)

 

翔鶴(リンガ特設連邦鎮守府)

 

UX-01(六本脚鎮守府)

 

羽黒(謎の鎮守府)

 

 




【北條 透】
「何で私がこんな事を?‥‥まあ良いでしょう、この作品は二次創作でフィクションです、従って作品の内容と固有名詞は全て架空の設定になります
まあそんな人は居ないでしょうが、決して本気にしないで下さいね‥‥とまあざっとこんなものです」(ドヤッ)

【津上 翔一】
「北條さん、手巻き寿司食べます~?」(モグモグ)

【北條 透】
「げえええーーー!!?」
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