ヴァリアントアームズ、銃形態。最も基本的な姿であり、同時に一切の拡張や変更を行われていない状態。これが基本の状態であり、何のカスタマイズも出来ていない現状、これが唯一の武装になる。だがフォーミュラは稼働すると同時にエネルギー運動やそのベクトルを操作することが出来るようになる。それによってフォーミュラは魔法、魔力に頼らない専用の術式を稼働することが出来る。
それが一瞬で脳内に刻み込まれた。使い方が、どうすればいいのか。フォーミュラに刻み込まれた使用方法が一瞬で自分の中で出来上がる。無理やり覚えさせられる気持ち悪さはあるものの、それは我慢できる。左手はフリーに、召喚魔法を使えるように中指と人差し指を合わせた状態にし、右手でヴァリアントアームを握る。
また一歩、一歩と近づいてくる鋼の騎士を前に、
銃口を持ち上げた。
それをまっすぐ正面の騎士へと向けて、迷う事無く引き金を引いた。反動はほぼないと表現できるレベルだった。やろうと思えば連射さえ出来る程に。発射されるのは魔力弾ではなく、実弾だ。エネルギーは周辺から勝手に吸い上げたものを変換して運用されている。その上で発射された弾丸は一瞬で加速してから更に加速を繰り返し、
一直線に突き進んでから正面、盾を構える騎士の
「Wow! Fucking cool!」
笑いながらヴァリアントアームを目前まで浮かべ、そしてそれを見る。小口径のハンドガン、好みよりも小さく、そしてかなり軽く感じるが、それでも鋼程度であれば容易く貫通出来るだけの破壊力を保有していた。だがああいうロボット相手には少々、小さすぎる。一撃で破壊できるだけの破壊力がこの銃にはない。そうなるともっと出力を上げるか、別のヴァリアントユニットへと変形させる必要がある。
だが流石に、別の姿を登録するだけの余裕がここにはない。
「となるとフォーミュラのもう一つの特性をどうにか使いこなすしかないな」
フォーミュラ・ナノマシンが活性化する。リンカーコアから供給される魔力をフォーミュラで増幅、強化する事で使用される魔力を再利用する。その魔力をフォーミュラで処理し、それを肉体の強化へと充てる。今までは術式を使用出来なかった強化魔法を、フォーミュラによる再利用で肉体の強化へと充てる事で、肉体そのものを強化する事に成功する。今までを超える遥かに高い力が体に漲って行くのを感じながら、自分の体の中身がぐちゃぐちゃにされる感触を覚える。フォーミュラがそれだけではなく、体そのものを弄っているのが解る。
魔力とフォーミュラの同時使用作用に、髪が淡く光を纏う。
そして、射撃された鋼騎士が飛び込んで剣を振り下ろした。
そのまま軽く転がって騎士の股下を抜けて反対側の瓦礫に逆さまに衝突した。
「ぴよっ! ぴよっ!」
「Oops……悪いってば。初めてだから加減が解らなかったんだってば。だから頭を突くのはやめてくれよ……」
予想を超えたパワーにまるで感覚が動きに追いつけなかった。瓦礫から体を引き抜きながら、今の衝突で出血した所に指をやる。軽く傷口から血を指に乗せ、それを頭へと持っていき、血をワックス代わりに髪を後ろへと流す。
「次は失敗しない」
立ち上がりながら直ぐ近くの途切れたパイプを掴む。フォーミュラの干渉により、パイプが変形しながら鞭のようにしなる。それを引っ張りながら振るう事で振り向いてくる鋼騎士の足にパイプが衝突し、
そのままワイヤーの様に足に絡みついて動きを止める。
「One down」
倒れて来る姿へとめがけて銃口を向けて射撃する。頭に一撃。胸に三発撃ちこむ。合計四発、その最後の射撃が騎士の何かを破壊したのか、その中から命の気配が途切れる。成程、動力かコアの様な物が中に存在するから、それを破壊すればいいのだろう。
「Come on, or I’ll come for you」
挑発する様に嘲りの言葉を吐き捨てながら一気に前へと飛び出す。力を失って倒れ込む騎士の肩を足場に跳躍する。残された鋼の騎士が盾前に殺到する。跳躍している間にその姿を全て、目視する。空中で逆さまになる様に回転してから空中を蹴る。フォーミュラの慣性コントロールで空中を蹴って急降下し、追いかけるように僅かに飛び上がった騎士たちの下を取る様に素早く落下して着地する。そのまま前へと飛び込みながら射撃する。必殺を狙わず連射する。軽い反動の銃に少しだけ違和感を覚える。
だがフォーミュラによる超高速演算は体内にコンピューターを搭載しているような行いに近い。
それによって精確に補正された射撃が鋼騎士の関節を射撃し、貫いて破壊する。
飛び上がった姿が突進する様に接近して来る。向き合う様に此方からも飛び込み、飛び込んでくる盾の上へと跳躍し、そのまま盾の頂上を足場にする。下へと視線を向けずに銃口を頭の上からコアのある場所へと向けて射撃し、
貫通する。
光が消える。
「Two down」
そのまま盾の上から次の鋼騎士へと向けて射撃しようとするが、
斬撃が二つ同時に叩き込まれてくる。それをバク転し後ろへと向かって回避すれば、十字に切り裂く様に破壊した騎士と、盾が粉砕されて行くのが見えた。まぁ、確かに命のない機械だと考えれば容赦なく破壊する事も出来るだろうが、少し乱暴すぎやしないだろうか? そうでもない?
「Well, it’s your fault that you came near by」
左手でくるり、と契約してから召喚射出する。フォーミュラにはエネルギーを操作、変換する力がある。それをまだフォーミュラ・エルトリア式にされていないミッド式の召喚魔法に加える。そうする事によって保有者の無くなった鋼騎士の巨大剣を即座に契約奪取、
射出して串刺しにする。
「Three down」
地面へと向かって騎士を正面に捉えながら落下して行く。引き金を引けば騎士が射撃に対して盾で弾こうと防御する。弾丸は盾を貫通するも、接触する事により僅かにブレが出て、必殺には至らない。それを理解し、
着地と同時に左手に魔力を集める。魔法ではなく、フォーミュラによって自分の魔力を体外に集め直したものだ。それを球体の様に固め、全速力で前へと飛び出す。
そしてそれを正面の騎士に叩きつける。光が貫通する様に放たれ、炸裂する。盾が弾け壊れながらその向こう側の胴体を貫通して穴を開ける。攻撃の反動でやや後ろへと押し戻されるのをバク転で距離を取りながら軽く勢いを殺して大地に着地する。
「―――Easy operation」
「ぴよっ」
肩の上に降りてきたひよこが翼を持ち上げてくるので、肩の上のひよこと軽いハイタッチを決めてから頭の上へと戻した。銃を一回転させてからコアユニットへと戻し、それをポケットの中へと押し戻した。轟音を響かせながら全ての鋼騎士が倒れた所で汗をかいているのを自覚し、額の汗を拭う。フォーミュラの稼働を解除すると、フォーミュラが体内で巡行モードにまで落ちる。だが完全な稼働停止は行わず、体内での活動を継続する。
「予想以上に疲れるな」
「ぴよ?」
「大丈夫、まだ余裕だ」
片手で軽く目元を抑えてからフォーミュラによる消費エネルギーを確認する。魔力によって大半のエネルギーを賄っているが、それでもそれだけでは足りない。フォーミュラに刻まれたデータによれば、もっと身体的に優秀で、体力精神力で地球人を遥かに超越する、過酷な環境で生きていけるエルトリア人を相手に使用する為のデバイスらしい。地球人でこれを十全に運用できるのはそれこそ、凄まじい魔力リソースでフォーミュラの消費を賄える存在だろう。
それが足りていない。なので魔力の他に生命力をエネルギーへと変換しているようだった。
「使いすぎると死ぬな、これ」
使い方を絞って、それでいて外部からエネルギーを供給する方法をなんとか用意すれば話は別だろうが、そうじゃなければ使い過ぎで死ぬ可能性すらある。だがそれを抜きにすれば、強力な力だ。今はまだフォーミュラと魔法を別々にしか使えないが、合わせれば更に力を発揮する事も出来るだろう。
ともあれ、最初はヴァリアントユニットの追加とカスタマイズだろう。なんであれ、こんな物騒な力が必要な事態なのだから。
「ふぅ、とりあえずあの墜落現場へと向かうか……」
「ぴよぉ?」
「ん? 大丈夫大丈夫、心配するなって」
肩に降りてきたひよこの頭を軽く撫でながら歩き出す。今の所鋼騎士の気配はないが、それでも何時追加がやって来てもまるでおかしくはない状況なのだから。そもそもなんで、こうなっているのかさえ分からないのだ。そこが問題なのだ。どうにかしなければならない。
そう考えて瓦礫の住宅街を都心へと向かって歩き出す。
元々は綺麗に整えられていた道や住宅街が今では完全に崩壊している。それによって電柱や車がなぎ倒され、炎上し、炎が残留する様に燃え続けている。知っている筈の街の姿がここまで変貌していると、まるで異世界に迷い込んだような気分だった。歩きながらフォーミュラ内部のデータを再確認して、何が出来るのを確かめる。
まだまだ慣れていない上に体がフォーミュラを運用する為に適していない為、出来る事が少ないが、その気になれば環境修復したりする事も可能らしい。一応、戦闘でボロボロになった衣服はフォーミュラのナノマシンで修復できる為、そういう便利な事にも活用できる。
とはいえ、何の準備もなし、物資もなし。そんな状況で此方に飛び込んできたため、絶賛ピンチの状態で街中を歩いていた。だいぶ都心に近づいてきたものの、そろそろ空腹で意識がかすんでいたのも事実だった。ずっと稼働し続けているフォーミュラが常に生命力とカロリーを消費し続けているのが問題であるのは解っていたが、フォーミュラの方もフォーミュラの方で、元はエルトリア人用のデバイスであり、適応しない地球人に対して適応しようと稼働しているのだからしょうがない事でもあった。
「……仕方がねぇ、適当に盗むか」
「ぴよ?」
「仕方がないだろ、人の気配なんざねぇしな」
都心近くに来ればコンビニエンスストアの姿も目撃出来る。比較的に破壊の多い都心部は瓦礫や鉄骨がまるで壁の様にそびえており、ほとんどの建造物が粉砕されていたりするが、それでも中には無事な建物もある。今しがた目撃しながら略奪を決定したコンビニは、半壊程度で済んでいるものだった。
流石に、探している間に倒れるのはシャレにならないので、軽く食えるだけ食う必要がある。
そういう事を考え、コンビニへと向かって足を進め、破壊された自動ドアを抜けて中に入る。
そこら中、瓦礫や鉄骨で溢れかえっているほか、電力供給が停止しているようで、一部の商品が暖かくなってきているのが解る。だが同時に、腐った匂いはしてこない。
「ぴよ!」
「そうだな、電気が止まってからそう時間がたってないのか?」
となると今の状況に突入してから、それほど時間が経過していないという事になるのかもしれない。これならまだ無事なものも回収できそうだ。そう考えてコンビニ内の食料を漁ろうと思った所で、
「……」
呼吸音が聞こえた。コンビニの奥の方から。それはつまり、息をする生物が存在しているという証でもある。一瞬、この地獄に人が居ることを喜んだのとは別に、あの鋼の騎士の存在を思い出す。アレが徘徊し、襲撃して来るこの海鳴でまともな人間が残されているとは思えない。あの戦艦もなんだかんだで破損している部分が大きかった。
となると、敵がいるのかもしれない。
音もなくフォーミュラを再起動させる。コアユニットをハンドガンに変形させて握りながらコンビニの奥、まだ天井があり、棚によって入り口からは見えなくなっている部分へと進む。
警戒する様にゆっくり奥へと進んだ所で、一つの姿を目撃した。
その姿を一言で表すなら黒い。
黒いツインテールをしており、その上で少々、露出が多めの格好をしている。腹を丸出しにしているという恰好は少々蠱惑的とも表現できるかもしれない。そんな姿が床に枕を置いて、横に倒れて気持ちよさそうに眠っていた。
「……すぅ……すぅ……」
「……」
「ぴよぉ……」
また、鋼の騎士とは違う意味でこの世とは思えない光景に少々、困惑し、どうしたものか、とヴァリアントアームを握ったまま動きを停止する。見た目は美少女がコンビニの床で眠っているのだから当然だとも言える。反応に困っている所。
「んが……人の気配」
「うぉ?」
「んぐ?」
いきなり上半身を凄い勢いで持ち上げて眼を覚ました。そのいきなりのリアクションに驚いていると、黒髪の少女が半分寝ぼけたような状態で此方へと視線を向けて来る。
「……」
「……」
見つめ合い、無言を保つ。十数秒そのまま無言を保ってから、左手を持ち上げて掌を軽く折り曲げる様に小さな挨拶をする。
「Hello? Good morning?」
「……」
その言葉に少女が停止し、その目が大きく見開かれる。
「Danke dass es dich gibt und danke……」
全くと言っていいほど聞き覚えのない言語を少女は呟く様に口に浮かべてから、
―――此方へと向かって飛び込んできた。
第一村人……村人? 村人なのかお前?
変形武器に移動アクションを加えた戦闘シーンをもっとぐりぐり回していきたいなぁ、とは思っている。こう、動きの疾走感みたいなのを文章に求めているんだけど難しいなぁ。
俺が英語を書いて! お前らが調べる!
英語が覚えられるよ、やったね!