※この作品はR-18です。

Lost Materials   作:てんぞー

17 / 42
Bleeding

「―――敵はプレシア・テスタロッサ。保護された彼女の使い魔からの情報によると、彼女の目的は次元断層に飲まれたとされる次元世界【アルハザード】へと到達する事です。当初は次元震を起こす事で目的を達成しようとしていたようですが、プレシアはその計画を全てのジュエルシードを取得した事で変更。こ(・)の(・)海(・)鳴(・)市(・)そ(・)の(・)物(・)を(・)ア(・)ル(・)ハ(・)ザ(・)ー(・)ド(・)と(・)し(・)て(・)上(・)書(・)き(・)す(・)る(・)計(・)画(・)に(・)変(・)更(・)されました」

 

「……」

 

 腕を組みながら話を聞く。

 

『ちなみにアルハザードってのは次元世界の伝説の都市みたいなもんやで。一番栄えて、一夜にして滅んだって都市やな』

 

 ジークリンデが念話で補足してくる。便利なこの魔法技術は頭の中で相手と会話する方法らしく、魔力さえ使えるのであれば誰でも使用することが出来るらしい。ただ、少なくとも俺は使い方が解らないので、一方的に受け取る事しかできないのだが。

 

 ―――争っている場合でもないので、ジークリンデとは休戦中。

 

 休戦と言っても此方が一方的にジークリンデを怪しがっているだけであり、ジークリンデ自体は態度が一切変わる事はなかった。その態度のまま、こちらに引っ付いては誘惑してくる。流石にジークリンデの目的が解らなくなった今、というよりはジークリンデのわけわからなさが増した今、ジークリンデのボディタッチは前同様有難がるようなことはできなく、真面目に腕を組んでリンディの話を聞いていた。

 

 時は数時間進み、作戦会議の時だった。

 

「プレシアはジュエルシードを海鳴に設置して……」

 

 リンディが片手で作戦室のホログラムを動かし、ジュエルシードの反応がある場所を示す。海鳴の地図にジュエルシードの存在を示す6個の光点が出現する。それにそれぞれ、ナンバリングが施された赤い宝石が表示される。

 

「この六つ、これが海鳴を外界と遮断している原因にもなります。調査によるとこれの排除を行えばほぼ海鳴の隔離が終わり、此方から時空管理局への支援要請、また同時に残りの15を保有するプレシアの居城である【時の庭園】へと乗り込むことが出来ます」

 

「つまりこの6か所を制圧して、その上でボスへと挑めばいいってことだな」

 

「解りやすい話やな。全部ぶっ飛ばせばええねん」

 

「せやな」

 

「ぴよっ」

 

 ジークリンデの口調が映ってるぞ、とひよこが頬を叩いてアピールしてくる。特徴的だからついつい移ってしまうのだから許せ。そう思いながらリンディが映像を変えていく。海鳴に設置された6か所のシードポイント、それぞれに砂嵐の発生によって映像が急に悪くなる為、シルエット程度でしか捉えられない何らかの生物が存在している。こんな連中が海鳴にいたのか。

 

 無力だった時に出会わなかったのは純粋に運が良かっただけだったのだろう。

 

 或いは―――近くにいたからこそ傀儡兵が現れ続けていた?

 

 まぁ、どちらにしろ今度はこいつらが相手か、という話だった。

 

「ジュエルシードはそれぞれ傀儡兵、もしくは魔法生物に取り込ませる事によってそれ自体を触媒とガーディアンとして運用しているようです。なのでこれをまず撃破します。クロノが2体、そして貴方達にはそれぞれ2体ずつ、対応して貰います」

 

「食いでがあるとええんやけどなぁ」

 

「流石頼りになる言葉ですね」

 

 戦闘という行為に対するジークリンデの戦意は異様だった。戦える、という事に対して物凄い楽しみを見出している。これがいわゆる、バトルジャンキーと呼べる存在なのかもしれない。ただその性質に関しては、力をある程度握る様になった今であれば、気持ちが解らなくもない。人を超えた力を振るうのは―――どうしようもなく楽しい。

 

「んじゃ、サクッと終わらせるか」

 

「お、やる気で溢れとるな、にーちゃん」

 

 なんとなくだが自分がやるべき事は見えている。だから自分がやらなきゃならない事はやり遂げる。考えるのはそのあとだ。何もかもが唐突で、そして考えるだけの時間を許してくれない。冷静になって考えるのは後回しにして、

 

 今は終わらせるべき事を終わらせにいく。

 

「ま、にーちゃんがやる気ならウチもさっさと終わらせてゆっくり―――」

 

「待って、ください!」

 

 ジークリンデの言葉を遮るように、言葉が差し込まれた。作戦室の扉を開いて出現するのは二人の少女と、それに付き従う動物たちだった。フェレットと大型犬が病室にいたはずの少女たち二人の後ろに、申し訳なさそうな表情と共に並んでおり、まだ所々包帯を巻いた状態の少女たちが両足で立った状態でそこにいた。

 

 明らかに、動くことが出来ないレベルのダメージを受けていた筈だった。

 

 なのに、それを押し殺して少女たちは立ち上がっていた。両足で立ち、片手に宝石を握り、その瞳は闘志に満ちていた。ありえない話だが、この二人の少女はまだまだ、戦うつもりだった。シュテル似の少女なんて未だに眼帯を装着したままだった。或いは一生そのままなのかもしれない。だがそれでも、戦うという選択肢を選んでここに来たのは、見れば解る。

 

「私達も作戦に参加します」

 

「お願いしますリンディさん」

 

「貴方達は……」

 

 リンディも少女たちが立ち上がっている事実に驚きを隠せないのか、絶句している。その中で唯一、ジークリンデが解っていたかのように状況を眺めている。いや、或いは本当に知っていたのかもしれない。

 

『それは許可できない』

 

 ホロウィンドウが出現し、そこにクロノの顔が映された。

 

『君たちは既に大きなダメージを受けている。再び同じような攻撃を受けた場合、そのまま再起不能になる可能性だって存在する。特になのは、僕達は君を無事に家族へと返す義務があるんだ。既に君に傷つけさせてしまっている以上、猶更僕らの責任は重い。それにフェイト・テスタロッサ、君もだ。プレシア・テスタロッサから離反したとはいえ、君の身分は潔白じゃない』

 

「ド正論やな」

 

 クロノの言葉にジークリンデが両手を頭の裏に組みながら、状況を見守る様に呟いた。実際、クロノの言葉は真っ当だ。こんな少女たちを戦わせるという発想が出てくる方が頭がおかしい。プロフェッショナルが居るのであれば、そいつらに任せるのが一番だろう。

 

「だけど、私が……私がお母さんを止めなきゃいけないんです! 誰でもない、一番近くに居た筈の私が止めなきゃいけなかったんです。だからここでそれを諦められません」

 

「お願いします。私もフェイトちゃんももう魔力を回復して、戦えます。だからお願いします! 私達も作戦に入れてください!」

 

 そう言ってフェイトという少女と、シュテル似の少女が頭を下げた。それに対してクロノとリンディが非常に困ったような表情を浮かべる―――まぁ、考えている事は解らなくもない。

 

 この作戦で動かせるのが元々、自分とクロノとジークリンデだけだったのだ。

 

 つまりそのレベルまでアースラと時空管理局の面々は戦力不足なのだろう。その中、自分でも解るレベルの魔力を保有している少女たちが戦いたいと申し込んでくるのだ。状況的に考えると嬉しい話だが、人間としては正直、どうかと思う部分が大きい。いや、そこで迷う事無く最初に断ったクロノが凄いのだろう。仕事、そして立場としてのプライドを持っている。

 

 将来、絶対に良い男に育つと思う。

 

「お願いします!」

 

「お願いします……!」

 

 頭を下げて来る少女たちに対して、リンディは言葉に困っていた。その様子をジークリンデは眺めながら、意味ありげな視線を送ってくる。そこで、念話を使って言葉を送ってこない辺りが実に悪辣だと思う。あの黒い娘の考える事はとことん解らない。だけど同時に、自分がやる事を助けてくれるという事だけは解る。そこだけは信頼出来た。あの女は、一切の悪意を抱いていない。それだけは自分でも解る。

 

 だから腕を組み、軽く息を零し、

 

「いいんじゃないか、別に」

 

「お」

 

『何を言っているんだ君は』

 

 ジークリンデが楽しそうに声を零し、クロノが呆れる様な驚くような声を零す。リンディは此方へと真意を測る様な視線を向けてきている。だから一切表情を変える事無く言葉を続ける。

 

「外にいる雑魚共ならぶっちゃけ一撃でどうにか出来るんだろう?」

 

『戦闘力の話をしているんじゃない! 彼女たちに万が一があった場合の話をしているんだ!』

 

 タバコが欲しい。久しぶりに吸いたい気分だった。後で街に出たら調達するか、何て事を考えつつ、

 

「なんだ―――」

 

 声を続ける。クロノを見下す様に、馬鹿にするように息を吐きながら、

 

「お前、年下の女の子一人守れないのか? ダッせぇな」

 

『そういう! 話じゃ! ないだろ!』

 

「いいや、そういう話だろう。俺はあるぜ? 俺と一緒に居るうちは無敵タイムだ。傷一つ付ける事無く最後まで踊り抜けるぞ。お前はどうだよ、真っ黒いの。レディのエスコート一つも出来ないのか?」

 

『お前よりはずっと出来るさ! 艦長! ……艦長?』

 

 ホロウィンドウがリンディの方へと向けられ、クロノの視界に、小さく笑っているリンディの姿が映った。その姿を見てクロノが軽く困惑するが、

 

「いえ、不謹慎だけどこんな所でクロノの友達ができるなんて」

 

『艦長、訂正してください。あそこでハグを求めてる狂人は通りすがりの狂人で、友人でも何でもありませんから』

 

「ふふ、そうね」

 

 クロノの若々しい反応を嬉しそうにリンディは確認すると、軽く咳ばらいをしてから視線を少女たちに合わせた。

 

「高町なのはさん」

 

「はい」

 

「Nanoha, Takamachi……」

 

 聞き覚えのある名前、自分が海鳴という土地へとやってくる理由となった家名を持った少女へと視線を向けた。成程、やはり縁があるらしい。そしてここに来たことにも意味があるのだと思える。

 

「フェイト・テスタロッサさん」

 

「はい」

 

 リンディの呼びかけに二人の少女が応える。

 

「真面目な話をすると……貴方達の様な若い子を前線に出したくはありません。時空管理局では全体的に力さえあればどれだけ若くても通すという風潮があります。ですが私はこれに関しては反対しています。子供は、もっと子供らしくするべきだと思っています」

 

『母さん……』

 

「ですが綺麗な言葉だけで済ませられる程世の中は甘くはありません。こ(・)う(・)な(・)る(・)筈(・)じ(・)ゃ(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。そう言った所で起きた事、変わってしまった事、過ぎ去った事実は変えられません。場合によってはどれだけ頑張った所でそれが報われずに失敗する場合もあります」

 

 リンディが脅す様に言葉を続ける。それをなのはとフェイトが正面から受け止めるも、一切引くような様子を見せない。あの年齢で既に覚悟が決まっているとさえ思えるその表情や力強さは、

 

 大人からすれば、悲壮としか表現のしようがなかった。

 

 子供がそういう表情するのは間違いなく大人の力不足が原因なのだから。

 

「それでも―――戦えるかしら?」

 

「戦えます」

 

「戦います」

 

 いっそ、悲劇的とも表現できるほど早く、そして強く言葉が返ってきた。心強くも最悪と表現できる力強さだった。頭ではどんなに頼るべきではないと解っていても、戦力になるとリンディは理解しているのだろう。その具体的な強さを自分が知っている訳ではないが、それでも悩むほどの強さがあるのだろう。

 

 ならば、受け入れるしかないのだろう。

 

「そう……なら、もう何も言いません。クロノ、ノアさん。彼女たちを宜しくお願いします」

 

 片手を持ち上げてひらひらと振る。クロノもホロウィンドウを通して了承する。

 

「ま、俺が戦う以上勝利以外の概念がないから安心すると良いよ」

 

『君の自信はどこから来てるんだ……』

 

「俺は格好良い」

 

『……?』

 

「Do I need any other reason?」

 

 腕を持ち上げて肩を揺らす様におどけて言葉を口にすると、クロノが数秒ほど此方を見つめ、

 

『……? えっ?』

 

 クロノが本気で困惑したような表情を浮かべる。それを眺めているジークリンデは小さな声で笑っている。なのはとフェイトも二人とも首を傾げ、此方へと視線を向けるが、ペットたちの方はどことなく疑う様な視線を向けている。全く信用がないと言われてしまえばそらそうだ、としか言えない。

 

『ほ、本当に大丈夫かな……』

 

「なぁに、信じろ。俺は強く、格好良く、そして天才だからな。やれる事であるなら確実にやらかすぞ」

 

『やらかしてどうするんだよ……!』

 

 半ギレで即座にリアクションを見せてくれるクロノの姿を軽く弄りながら笑い声を零し、

 

 ―――軋む心と体を引きずりながら、再び戦場へ。




 眼帯なのは、火傷フェイト参戦継続。眼帯とか火傷属性の幼女とか間違いなくダークなR18ですよこれは。海外ゲーなら規制される奴だ。

 それはそれとして、プレシアの顔面殴りに行こう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。