「Woo―――Oh……痛い……ちょっとこれ痛い……」
凄まじい勢いで大地に衝突するも、望んでいたスーパーヒーロー着地を決めた瞬間、着地した片足から凄まじい衝撃と痛みを感じた。良く見れば自分の居る場所に軽いクレーターが生み出されていた。つまり、それだけの速度と衝撃で落下したという事実でもある。肉体を多少魔力を通して補助しているとはいえ、スペック的にはまだまだ人間の範囲だ。これだけの速度で落下着地を決めれば、痛いのも当然だろう。
「……大丈夫ですか……?」
上からゆっくりと降りてきたフェイトが確認する様に声をかけて来る。どうでもいいがバリアジャケットのセンスだけは絶対にどうにかした方が良い。この戦いが終わったら誰か、ファッション雑誌を片手に相談してあげて欲しい。切実に。内心でそんな事を考えつつ片手でちょっと待って、と突き出す様に待たせる。それを見て合流してきたクロノが腕を組みながら頷く。
「アレは痛い」
「あの着地の仕方はね、膝にクるんだよ……」
なのはの肩の上のユーノも同意する様に言葉をつづけた。ジークリンデとなのはも上から降りてきた。ジークリンデは近づきながら覗き込んで大丈夫か確認してくる。あぁ、うん。今度からはちゃんと減速するよ。絶対にする。格好良いからと無駄にダメージを受ける登場はよしておく。
「手貸すで」
「Ok, ok……1,2……3!」
「よいしょ」
「ん……!」
ジークリンデに手を貸してもらいながら立ち上がりつつ、背筋を伸ばして両手で拳を握って、体に力を籠める。うん、膝が痛い。割れてない? 大丈夫? たぶん大丈夫。割れていれば物理的に足が動かせない筈だし。そういう状況でなければ余裕だ。だから問題ない。
「ふふ……Foo、Foo……よし、落ち着いたぞ」
「始まる前から一人自滅しそうだったけど、これで何とか全員揃ったね」
そう言いながらクロノが此方へと視線を向けてから、背後へと振り返る。その先に広がっているのが【時の庭園】と呼ばれる、プレシア・テスタロッサとフェイトが使っていた拠点であり―――今ではジュエルシードを使って海鳴の上書きを果たそうとするプレシアが待ち構える居城だ。
だが【時の庭園】というネーミングの割には、
「ちょっと禍々しすぎない? もっと、こう、鬼眼城とかそういうネーミングがしっくりくる感じの姿しているんだけど」
「まぁ、庭園要素は欠片も見えないよね」
「今ではこんな姿ですが昔は……緑で溢れる場所だったんです。少なくとも昔はそうだったんです……」
フェイトがデバイスを強く握りしめながら噛み締める様に言葉を口にし、少しだけ俯いた。だがそうやって浸っている余裕さえもない。正面、庭園の奥の方から此方へと向かって接近して来る反応をフォーミュラが感知する。ここら辺の技能や魔法が完全に使えない自分の代わりに一瞬で仕事をしてくれるフォーミュラに感謝しつつ両手に6発装填されているリボルバーを握った。コアユニットからヴァリアントアームズへの変形がだいぶスムーズになってきた。自分の中で姿を変形させるプロセス、その処理に慣れてきた感じがある。
それを肩に乗せてこんこん、と叩く。
「よし、そのババアの面に一発拳叩き込んで家族会議させる為に頑張るか」
「大体間違っていないけど言い方ってものを覚えた方がいいんじゃないかな?」
「せやで。今から絶縁届を渡しに行くんやから」
「絶縁しませんよ!」
「フェイトちゃん、その二人は真面目に話を聞かない方が良いよ……と」
ユーノがなのはの肩から降りて、魔法陣を出現させる。それによって庭園とアースラを繋ぐ、アンカーポイントの形成が完了された。とはいえ、ユーノは引き続きここに残る必要があり、アンカーポイントを通して犬耳の女―――どうやらフェイトの使い魔らしい、アルフと呼ばれる奴がやってきた。こちらもアンカーポイントの護衛の為にここに残る。
その為、突入するのは若い少女二人、ギリギリ女と呼べるジークリンデ、そしてプロフェッショナルな気配を漂わせた青年と、イケメン一人。
「凸凹にも程があるチームだな?」
「君がそれを言う?」
「年長者として俺が言わなきゃダメだろこれは」
「いや、だから君が言えた事じゃないよね?」
クロノへと向き合いながら良いか、と声を置く。その間にも入り口から走ってくるように傀儡兵が迎撃に出て来るのが見える。庭園の奥の方からは纏まった力の気配が―――恐らくは一か所に集められているジュエルシードの気配がしている。それを全て一か所に集めて、プレシアは海鳴を上書きする準備を整えているのだろう。それをいったん無視し、
「いいか、クロノ。俺を見ろ」
「うん、見たよ」
「俺は格好良い」
「自分で言う事じゃないね?」
「つまり俺は正しい」
「この事件が終わったら一緒にミッドチルダへ来ない? 一緒に腕の良い頭の医者を探すからさ」
「魅力的な提案だが―――」
言葉を放ちながら横へと向かって引き金を引いて射撃し、同じタイミングでクロノが光弾を無数に浮かべて射出した。それが迫っていた傀儡兵に衝突し、上半身を破壊する。横に銃を向けたまま、言葉を続ける。
「これが終わったらカウチでピザ食ってコーラ飲んで腹だしながら寝る予定だ」
「クッソぉ、魅力的に聞こえるなぁ……!」
「なんか楽しそう」
「でもお行儀悪くないかな……?」
「アンタ達若い子に教育の悪そうな発言するのやめてくれない?」
アルフの言葉に考えておく、と答えながら横から飛び込んでくる傀儡兵に対してクロノと同時にケリを叩き込んで吹き飛ばす。そしてそれが落下した先にジークリンデが飛び込んで踏みつけ、そのまま貫通して粉砕した。そしてそのまま、踏み砕いた傀儡兵の残骸を片手に、
鈍器としてそれをそのまま正面の集団にたたきつけて、上から殴り飛ばした。
残骸を射出しながら拳の衝撃でスクラップにし、破片をショットガンの様に散らばせて後続の傀儡兵を一気に殲滅して行く。廃材から魔力をほとんど使用せずに殲滅する手腕は本当の意味で戦いなれている、という言葉を実感させる動きだった。
負けていられない。
「Let’s rock then?」
一歩目、二歩目、三歩目を踏み出し、背後へと向かって引き金を引いた。その反動を加速に利用し、慣性を一気に乗せて前へと姿を射出し、ジークリンデの上を飛び越えて前へと飛んで行く。
そのまま、新しく出てきた傀儡兵の顔面に両足でドロップキックを叩き込みながら、その姿を入り口の中へと押し込んだ。
反動に足がしびれながらも後ろへと体を蹴り飛ばし、跳躍しながら下がって行く中でジークリンデが手を伸ばしてくる。伸ばしてくる手をヴァリアントアームズを切り替えながら伸ばし、
掴んだ。
「行ってらっしゃい!」
そしてそのまま、飛び上がりながら、掴んだ此方の手を引っ張り、上から下へと半円を描きながら方向転換し、逆さになりながら再び敵の方へと投げ込まれる。
それに合わせてヴァリアントアームズは次の姿へと変形を完了していた。
直径、2メートルほどの鋼の塊で、バレルを三つ備えたシリンダーの怪物。
そう―――ガトリングガンである。
投げ飛ばされた状態で床に向かって落下しつつ、ガトリングガンを作動させる。回転しながら砲身から無数の弾丸が凄まじい勢いで吐き出され続け、それが周りの物質を喰らいながら弾丸へと変換して傀儡兵を一瞬で鉄くずへと変化させて行く。その間に鋼鉄の床を滑るように着地しながら、正面を弾丸の嵐で薙ぎ払った。
正面の第一波を薙ぎ払い終わった所で、ガトリングガンを片手で掴み、空いた片手で煙草を摘まむ。そのまま煙を軽く吐き出してから咥え直し、武器をリボルバーへと切り替える。
「早く来ないと、二人で食べつくしちゃうーぞー?」
「つまりは実質的にデートやな!」
ジークリンデが飛び越える様に前に出て来る。飛び抜けた姿の背後へとめがけて射撃を叩き込み、ジークリンデの攻撃が入る前に前方の集団に弾丸を叩き込み、炸裂するところにジークリンデが連続で拳を叩き込んでゆく。容赦のない破壊が拳から繰り出され、当然の様に傀儡兵が粉砕されて吹っ飛ぶ。まるで戦いと表現の出来ないジークリンデの蹂躙に、一瞬で10を超える傀儡兵がスクラップとなって庭園内部を舞う。
そしてそれを前へと吹き飛ばす様に爆発する光弾が連続で射出された。
勢いを乗せる様に加速したスクラップが隕石の様に降り注ぎ、バウンドしてからチェーン型のバインドがそれを掴み、爆発による推進力を得てフレイルの様に振り回される。寄ってくる傀儡兵がトラップの様にそれに引っかかって吹き飛ばされ、解放と同時に連鎖的に爆発する。
その結果を生み出しながら後ろからクロノが飛んできた。
「僕も給料泥棒とか言われたくないから頑張らせて貰おうか」
クロノの言葉に続く様に桜色と黄色の閃光が太い砲撃となって横を駆け抜けた。そのまま薙ぎ払う様に放たれた閃光が正面の傀儡兵群をその根元から消し飛ばしながら正面の空間をクリアリングする。
「あ、余りにも滅茶苦茶な戦い方だったから出遅れたけど……私も、行きます」
「うん。ほかの皆には負けてられないよ」
「こりゃレースになりそうだ」
言葉を放ちながら前へと向かって飛び出す。一気に加速する様に床を蹴り出しながらフォーミュラが捉えたジュエルシードの気配へと向かって走り出す。飛行しても良いのだが、飛ぶ事よりもやはり、走って地面を足元に残した方が感覚的には、動きやすい。なので飛ぶ事をいったん捨てて、
跳躍した。
先頭へと飛び出しながらリボルバーの引き金を引いて足場にする傀儡兵を破壊しながら今度は一回転を加え、壁に着地する。そのまま武器を剛斧へと切り替えながら壁を走って行き、斧を振り上げる傀儡兵へと向かって壁から跳躍する。
振り抜かれる大斧へと向かって同じように剛斧を振る、中空で衝突させ、一瞬で鍔迫り合いへと持ち込む。肉体と機械の差を考えれば誰が勝負に勝利するかなんて一瞬で理解できるものだが、
あいにくと、フォーミュラというイカサマをかませば一切の問題はない。
「Ha!」
エネルギーを操作、方向性のベクトルを変換。押し出す力を押し返す力に切り替える。相手の力を利用して自分の勢いに乗せ、鍔迫り合いに勝利する。ごっそりとエネルギーを消費する感覚を得ながらも、大斧をはじき返し、そのまま剛斧を上半身に叩き込んで半分に割る。
そして手放される大斧を奪って、片手で握る。空中で落下しながら体を一回転半程捻りながら投擲し、
回転しながら大斧がジークリンデへと向かって飛んだ。
跳んできたそれを蹴り上げながらジークリンデが掴み直し、片手のまま大斧を振るう。
空間をぶおん、と風を切り裂く音が後からやってくる風と共に吹いた。空間を薙ぎ払う様に放たれた大斧は空間を刈り取りながっら、勢いを止める事無くそのまま投擲される。
轟音と共に庭園の壁が吹き飛び、傀儡兵を縫い付ける様に壁を貫通した。
「破壊活動は控えてくれないかな!」
「ちょっと撫でただけやからそうカッカせーへんでよー」
「ちょっと……?」
「最終的にぶっ壊すんだからちょっとぐらい壊れても良くね?」
「証拠品として終わった後で調査するからダメに決まってるだろ!!」
クロノに怒られてしまったと、ジークリンデと顔を見合わせて肩を振る。それを見てジークリンデがにやり、と笑った。その指先はジュエルシードへのルートをまっすぐ―――それこそ壁とかを無視して示していた。
腕を組みながら軽く唸り、悩む様なフリをしてから武器を槍へと変形させる。軽く槍を回転させてから握りなおし、腕の感覚を確かめてから魔法を発動させる。
ミッドチルダ式の召喚術をフォーミュラ・エルトリア式にリファインし、演算をフォーミュラに代演させる、ミッドチルダ・フォーミュラ式の召喚術。その性能はミッドチルダ単体だった頃よりも上昇しており、運用可能な状態へと成長している。
魔力の消費を開始する。
魔力の消費に伴い、フォーミュラが本格稼働する。放出される魔力を再集積する事で半永久的な無限運用を目指すとするシステムが稼働するが―――無論、ロスのが大きく、魔力のみで完全運用するには
それでエルトリア式の魔法陣、フォーミュラプレートを発生させて一瞬で取り込む。体を入れ墨の様に魔法陣が這い、刻まれる。オーラの様に僅かに淡く発光しながら、
マフラーから再び蓄電された雷撃を槍に纏わせる。
「らぁっ!」
そしてそれを全力で前方へと投擲するのと同時にジークリンデと指を絡める様に手を繋ぎ、魔法が発動する。
何をやったかと言えば簡単だ。
フォーミュラシステムでリンクしているコアユニット、ヴァリアントアームズであれば目をつむっていても存在を追える。その為、座標アンカーとしては一番優秀であり、
そして自分を召喚しただけだった。
なんとなく出来るかと思ったが、やはりできた。
やっぱり俺は天才だ。
そう思いながら握った手のジークリンデを全力で振るう。
その姿が床を蹴り抜きながら持ち上がり、そして正面にある、貫通して僅かに勢いの衰えた貫通槍の柄に近づき―――蹴りが叩き込まれる。
更に破壊力と威力を増し、更にジークリンデの魔力を纏って食い散らかす範囲が増える。食い破る範囲と速度を増しながら貫通槍が更に凶悪になって突き進むのを、召喚術で自分を槍の背後へと召喚し直し、今度はジークリンデに振り回されるのを自分が槍の柄に蹴りを入れて加速させ、
更に、敵の壁を突き破り、
―――その背後の庭園の壁も一気に粉砕する。
クレーターの様な破界痕を刻まれた壁は構造的にしばらくの分厚さの壁を挟んだら、別の通路へと繋がる様になっているのだろう。だが通れるわけではない。槍が分厚い鋼鉄の壁に食い込み、
「Come on!」
「行くよ!」
出現と同時に食い込んでいる槍の柄に二人で蹴りを叩き込み、壁を粉砕し、プレシアへのショートカットをルートを無視して開通する。
「人の! 話を!! 聞けよ!! 問題児!!」
貫通した壁の向こう側、流石に壁を破壊して突き抜けて来るとは予想されていなかったのか、その向こう側には傀儡兵の姿は見えず、背後の方から急いで追って来ようとするのを、フェイトの斬撃となのはの砲撃が片っ端から消し飛ばし、クロノが悪態を吐きながらその合間を縫うように光弾で的確にサポートする。
追いかけて来る傀儡兵を蹴散らしながら更に前へ、
―――プレシアとの邂逅は目前だった。
やりたい放題やらかすコンビ。
やっぱり3次元的なアクションというのは表現が難しくなるなぁ、と思う。この作品の戦闘シーンはそれを練習する意味でも書いてるんだけど。跳躍、疾走感、爽快感。破壊というムーブメントをどれだけ面白く描けるか、というのは今までやってきた細かい動きとは別種の書き方を要求して来るからまだまだ、試行錯誤の段階だなぁ、と。
特に空戦は全く触れてないジャンルだからなおさら難しく感じている。とはいえ、練習してスタイル確立していくのがまた楽しい。