「ほら、魔力は俺が一瞬で集めるから」
「せやせや、セオリー的にここでかますのは悪くないで」
「でも……いいんですか?」
「その、この先は……」
「罠の可能性もあるし、突破するときは一気に制圧しながら突破するのは残念ながら正しいんだよ。本当に残念ながら……」
「だからほら、遠慮なく」
「えーと、では……」
「じゃあ……行きます!」
「Count 3……,2,……1……」
フォーミュラによって素早く集められた魔力がフェイトとなのはによって一瞬で作成された。バルディッシュと呼ばれるフェイトのデバイスの杖モード、そしてなのはのレイジングハートと呼ばれるデバイスの杖モード。その二つを交差する様に合わせ、正面、集められて圧縮された魔力球へと向けられる。一瞬の静寂が空間を貫き―――混合収束砲が雷を纏いながら放たれた。
フォーミュラで集めた魔力をなのはの収束技能で掌握し、フェイトで纏めながら電撃を編み込んだ即席の合体魔法が放たれた。回転しながらうねる魔法の渦が砲撃としてはなたれ、直線状の物質を全て消し飛ばしながらその奥―――プレシアが待ち受ける部屋、その入り口を一瞬で蒸発させた。
その破壊が生み出した結果を見たクロノが少しだけ判断を間違えたかな、と呟くのを無視し、破壊によって舞い上がった埃と煙によって正面が見づらくなっているものの、何らかの結果を生み出したのは解っている。
それまで咥えていた煙草を捨てて、踏みつぶす。そして前へと進む。軽く首を回しながら腕を回し、体の調子が最悪であるのを確認しながら二挺のリボルバーを両手に、煙の向こう側へと向かって進んで行く。既に、強力な魔力反応が感じられる。フォーミュラが感知する範囲では相手の気配の存続を確認している。つまり、今の戦略級とでも表現できそうな合体魔法をあっさりと防いだという事実だった。
肺に残された僅かな煙を吐き出しながらその向こう側へと抜け、合体砲撃によって完全に跡形もなく消えた先に進んだ。
その向こう側に広がっているのは、開いている空間だった。
庭園内の他の空間よりも綺麗に整えられていたであろう場所は、様々な機器が設置されており、それが舞い上がった埃煙によって今は汚されていた。だがその奥、そこには片手の上に複数の宝石を浮かべた女の姿があった。
明らかにどことなく生気が足りていない。肌は艶の色を失い、体がやせ細っている。だが眼の中には覇気が見える。自分の意思を、覚悟を貫きとおすだけの覚悟を持っているのが見えてしまった。言葉では絶対に止まらないというのがそれだけで理解してしまう。こういうタイプの奴は物理的に達成不可能にするか、
或いは完全に心をへし折って再起不能にする以外の手段がない。
だが部屋の様子を見る限り、大きな破壊が発生した様子はなかった。むしろエネルギーに関しては完全に手出し出来る領域を超越していた。直感的に倒す事が不可能だと悟り、部屋に入室した時点で足を止める。やせた女―――、
「お母さん……」
「プレシア・テスタロッサ。お前を数々の次元法違反の罪で逮捕する」
「フェイトちゃんのお母さん……」
同時に部屋に入り込んだ連中が思い思いに言葉を口にし、同じくプレシアから感じる力の差に足を止めていた。一人だけ、ジークリンデがあんまり深くは入り込まずに、すぐに出る事の出来る場所を確保していた。その姿をリボルバーに反射する姿に確認しながら、視線の先を追った。
その先に見えるのはシリンダーの中に浮かぶ、フェイトにうり二つの少女の姿だった。裸の姿のまま、水槽の中で浮かぶ姿はSF映画で良くあるような、改造人間とかが調整される為に入れられる水槽だ。だがそれを見れば解る。凡その事情はフェイト、そしてその使い魔のアルフから通達されている。つまり、
アレが、アリシアという少女なのだろう。
「フェイト―――忌々しい子」
「っ」
プレシアが憎しみを込めた視線をフェイトへと向ける。それをかばうようになのはが横に立ち、守るようにクロノが前に出た。だがほかの者たちを認識していながら、プレシアは視界には入れていなかった。此方がアクションを取ればそれに対応するが、聞く価値すらないという様子で無視している。ただ、その憎悪はフェイトへと向けられるだけだった。それが余りにも醜く、そして哀れだった。
この女に一瞬で言いたい言葉が積み重なって行く。だが言葉で通じる次元にはもう立っていないのが解る。
そもそもここまでやらかしている時点で言葉もクソもないだろう。
となるとこの女の計画を止めるのが一番早い。
軽く、銃で狙おうかと一瞬だけ考えるが、プレシアと此方を隔てるように、力場をフォーミュラが感知する。クロノも同じように打開策を探す様に、言葉を続けながらも突破口を探る気配を見せていた。
「そうじゃなかった。そうなる筈じゃなかった。何時だって世の中はそんな理不尽で溢れている。そんな事、誰だって経験している。誰だって同じことを思っている。お前が経験した不幸は別に何でもない、どこかで誰かが経験したどこにでもある悲劇だよ。同情はする。だけどそれが誰かを傷つける免罪符になる訳じゃない。お前はただの次元犯罪者だ、プレシア・テスタロッサ」
「そんな事はどうでもいいわ。アリシアが。あの子さえ戻ってくれば」
「私じゃ、駄目なんですか……?」
フェイトの言葉に憎悪の視線を向ける。その視線を受けたフェイトが一歩下がりそうになり―――アリシア、というプレシアの言葉にヒントを得た。あぁ、そうだ。別に近づく必要ねぇじゃん、と即座に理解する。視線をアリシアの方へと向けて、それが可能かどうかを一瞬で計算する。フォーミュラが追加されたおかげで演算領域が増えたのは嬉しい要素だった。
「お前は失敗作よ。忌々しい魔力の色。それにあの子はもっと明るかったわ。笑っていて、楽しそうにしていて……アリシア……」
視線をシリンダーのアリシアへと向けて、指をスナップさせる。
「Summon」
シリンダーの中にあったアリシアの体が消え、それが手元に召喚された。それを両手でキャッチして受け止める。
「あ、出来た」
「そう、アリシアじゃない。お前はアリシア―――アリシア!?」
話の途中だったプレシアが一瞬で動きを停止させ、視線を此方へと向けて来る。だがその姿に一番早く反応したのはクロノだった。
「良くやった―――《ストラグルバインド》ッッ!」
その一瞬、最愛の存在を奪われた瞬間プレシアに生まれた隙間をクロノが逃さなかった。その一瞬で拘束魔法をクロノが叩き込み、プレシアの動きを一瞬だけ拘束した。それに合わせ抱いていたアリシアを後方へと全力で放り投げ、フェイトとなのはからドン引きの視線を受ける。ついでにプレシアからも発狂しそうな声が響く。
だがそれをジークリンデが確保する。
「エレミアデリバリーサービスやでー。アースラにお届けものや!」
「待っ―――」
アリシアを受け取ったジークリンデが全速力で戦場を離脱する様に走り出した。それを追おうとプレシアがバインドを一瞬で破壊し、求めるように伸ばす手にリボルバーの弾丸を打ち込む。素早く叩き込む五連射がプレシアの障壁に阻まれ、弾かれながら衝撃を生み出す。即座にその障壁魔法がフォーミュラによって登録され、解析が開始する。合わせるようにクロノが連続で光弾を炸裂させてプレシアの視界を制限する。
「アリシアを―――」
「Bulls Eye」
言葉を遮るように連続で射撃する。弾丸はまっすぐと飛翔し、プレシアを守る障壁を―――貫通した。一瞬、驚愕の表情を浮かべてプレシアの姿が揺らいだ。それと同時に三発、弾丸がプレシアが片手の上に浮かべていたジュエルシードに衝突し、その制御を離れた。
「Summon, and it’s time for snack chick」
「ぴよっ!」
弾かれた三つを召喚魔法で即座に奪い、それを指で弾いてマフラーの内側へ、ひよこへとパスする。それを受け取ったひよこが俺よりもうまくエネルギーを引き出してくれる。ジュエルシード三個分のエネルギーがひよこによって引き出され、フォーミュラの稼働へと回される。髪が淡く光を纏い、そして燃料を得たフォーミュラが全身に力を送り込む。
漸く、まともに魔導士と戦えるだけのスペックが体に備わって来たのを感じられる。不足していたエネルギーをこれで満たした。
「お、のれ……!」
「悪いな、昔から手癖は悪いんだ」
「終わったら管理しなきゃいけないから返せよ?」
リロードする様に破壊された扉を弾丸へと変換し、装填しながら12発の弾丸をプレシアへと向かって叩き込む。だがプレシアもアリシアを奪われたショックから既に戻っている。素早く回避する様に体を滑らせながら、腕を振るって紫電を放ってきた。雷速はとてもだが人体が回避できる速度を超越している攻撃である為、
放たれた時点で射線に乗っている状態では、回避する術はない。
細かい動きは出来ない為、魔力と身体能力任せに横にブーストする様に跳んで転がる様な動きに近く、直後紫電が空気を焼き焦がしながら薙ぎ払われて来る。それをクロノが妨害する様に《スティンガースナイプ》が発射され、プレシアに連続で衝突しながらその姿を妨害する。
だがジュエルシード13個というエネルギー源を得ている魔女の姿はその程度では揺るがず、放った紫電を半ばから散らす程度の効果しか発揮できていない。だがそれでも紫電が吹き飛んだ。
即ち、攻撃が一瞬途切れる。転がる動きをそれで中断しながら飛び込む様に自分をプレシアの背後へと召喚する。
「Behind you」
恐らく正しい使い方じゃないし、他人が出来るとは欠片も思わないが、それでもミッドチルダ式とエルトリア式が融合した結果、通常の運用とは思えない魔法の結果を生み出していた。
射程が次元を超えられず、100メートル程度である事実には変わらないが、
「―――Detonation」
淡く髪も、服装も、マフラーも発光する。体内のナノマシンが最大活性モードへと入る証であり、同時に本来想定された出力へと達した証でもある。それにより凄まじい勢いでエネルギーが吸い上げられ、消費されて行く。だがそれは素早く動く為の能力を体に与えてくれる。
言葉を放って銃を構えるまで余裕で割りこめた。庭園内での転移行動は不可能らしいが、召喚魔法はまた別ジャンルなのかもしれない。そんな事を考えながら迷う事無くプレシアへと背後を向けたまま、銃を肩越しに連続で射撃する。はじけるような音と共にプレシアの纏う障壁が破壊される。カウンターで放たれる放電を擦り抜けるように自分の再召喚で回避しながらカウンターに対するカウンターで蹴りを叩き込む。一瞬で纏われ直された障壁をそれで砕きながら、
紫電を突破したフェイトがバルディッシュを振り上げて接近した。
「お母さん! なんで、なんで……!」
「貴女が、アリシアじゃないからよ。なんで、アリシアにならなかったの……?」
「話すだけ無駄だ。彼女には現実が見えていない」
バルディッシュとプレシアの握るセプターが衝突し、二人の間に雷光が舞う。素早く巻き込まれないように距離を開けて、片腕で閃光から目を守るように掲げる。閃光が収まった瞬間にフェイトの悲鳴と共に、その姿が弾き飛ばされ、入れ替わるようにクロノが腕を振るう。足元が凍り付きながら氷がプレシアを縫い留めるように襲い掛かってくる。
だがそれを粉砕する様に足元を紫電が這う。逆に侵食する様にフロアの床全体を紫電が侵食し、強制的に回避するために浮かせてくる。
それを薙ぎ払う桜色の砲撃が地面を引きはがす。そうやってできた、雷の剥がれた空間に武器をリボルバーから直接叩き込める武器へ、
「This is……」
鞘に収まった武器を腰に構え、隙間に潜り込む様に前傾姿勢になりながら倒れるように体を前へと飛ばし、プレシアの懐へと一瞬で潜り込む。そして鞘に納められた武器を、
刀を抜き放った。
「IAI……!」
「邪魔よ」
居合を放つのと同時に空間を完全に雷が満たし、感電しながら自分の姿を飛ばし、回避に入る。だが受けたダメージと衝撃自体は消しきれず、位置を変えた直後に衝撃に体が転がり、刀を納刀しながら、
「Got you」
「くっ!?」
「リリカルマジカル! ジュエルシード、封印!」
なのはが即座に封印魔法を放ってプレシアが支配していたジュエルシードを剥がす。また三つ、プレシアの支配する手の中から弾かれたジュエルシードがレイジングハートの中へと吸い込まれて封印された。揺らめくプレシアの姿にクロノとフェイトがバインドを放ち、その姿を拘束する。
だが雷が再びプレシアを拘束するバインドを破壊し、その体が一瞬で解放される。
握る杖から放たれる雷が部屋を破壊しながら増大し、一切の躊躇がその目の中から消える。
「アリシアと過ごした庭園……壊すのには躊躇してたけど。こうなってしまっては仕方がないわね―――ここ諸共貴方達を滅ぼしたらアリシアをゆっくりと返して貰うわ」
そう言葉を吐き捨てながらプレシアは口の端から吐血していた。その言葉は強がりの様に聞こえるも、
更に高まるジュエルシードから解放される力、それによって開始する時の庭園の鳴動。それらを感じた後では、プレシアの言葉が強がりに聞こえる事はなかった。
「女をボコす事は趣味じゃねぇんだけどなぁ」
だが殴らなきゃ止まらない奴だって世の中には居る。ならば物理的に止めたうえで心を折らなきゃいけない。
その為にも武器を刀から変形させ―――チェーンソーへと変える。それを担ぎながら痛む体を無視し、
再び、踏み込む。
今度は本気のプレシアを叩きのめす為に。
フォーミュラ、魔法を解析したら簡単破壊出来て、エネルギー干渉であり得ないほどパワー出せる上に壊れたら周りの材料取り込んで再生する。その上で体内注入なので場所は取らないし、既存の魔法と相性悪くても根本的なスペックは上昇させる。
化け物みたいな性能してるよね。