「おぉぉ―――!」
「はぁぁぁ―――!!」
ヴァリアントザッパーとグラムレイドが衝突する。ミッド・ベルカ型アームドデバイスの機構を取り入れたヴァリアント・アームズのダブルセイバーはその名称をグラムレイドと改められた。純正のエルトリア式ヴァリアント・アームズよりも更に出力、破壊力、重量を増している武装はエネルギーを吸い上げながら稼働するモンスターマシンと化している。その制御にフォーミュラを回し、両手で握りながら振り回す。両手持ちにして漸く自由に動くというレベルの重量になってしまった。軽量化、簡易化、技術の進歩に真っ向から喧嘩を売る様な重さへと進化したが、
それでも、凄まじい破壊力はエレミアの武技によって完全にコントロールされ、アミタの握る片手剣ヴァリアントザッパーと正面から遅れる事無く打ち合っていた。
「らぁああ!」
「これで……どうですか!!」
アミタが動きを加速させる。それに合わせてグラムレイドを回転させながら両側の刃を振るう事で対応させる。小回りが利く片手剣に対して、リーチと重量と武器を使って破壊する勢いで回転させ、体全体を捻りながら動かす事で武器の動きに体を乗せて行く。踏み込み、踏み外し、
アミタの動きに合わせるように、ダンスを踊るように進み、引く。
「こ、れは……中々!」
「ふぅ……!」
相手の呼吸を読みながら常に同じ距離を維持する。相手が全力で切り込めば届く距離。だが此方の攻撃が当たり前のように届く距離。それを踊るように回転、切り下してから繋げるように動き、踏み込む事を誘う。それにあえて合わせるようにアミタが飛び込んでくる。明らかに手加減しているが、今は助かる。自分の全力を確かめるように、
全力で斬撃を振るう。
片手で握るように中央の持ち手を握り、回転させながらアミタへと向かって振るう。それを引き寄せてからのバックステップで回避し、距離を開けたアミタがヴァリアントザッパーを、シューターへ―――銃へと切り替えて銃口を此方へと向けた。
「ではこれをどうしますか?」
合図を切るように引き金が引かれ―――破壊のエネルギー弾が放たれた。
それを剣を投げて防御する事も、フォートレス・システムで防御する事も出来るだろう。回避したければ回避するという選択肢もある。だがそうはせず、グラムレイドを両手で握った状態、踏み込む様に前へと体を押し出しながら、繋がりを感じ取る。
「
その言葉と共に、
「はい、これで終了です」
「……あぁ、また負けたー」
コアへと戻しながら武装解除し、頭の裏を掻く。今までアミタと勝負してきた中で、一番調子の良い一戦だったが、あっさりと対処されてしまった事実に少なくないダメージを喰らう。今回は割と、自信があったのだが割と簡単に攻略されてしまった。ちょっと残念。
普段通り、グランツ研究所の実験室で一戦交えた。そうやって戦闘が終わった所で扉を開けて、観戦していたメンツが入ってくる。今回はある確認もする為に、全員が集まっていた。
「いえいえ、今回のノアさんはかなり良い線を行ってましたよ。フォートレス込みで戦闘すれば多分私から一本取れると思いますよ。えぇ、それぐらいにはちゃんと整えられた戦闘力でした」
アミタに褒められ、視線を外しながら軽く首裏を掻いているとで、という声がイリスから来た。
「どうだった?」
イリスの声はシュテルとレヴィへと向けられていた。レヴィはシュテルを見張っており、シュテルもその手にはルシフェリオンを持っていない。レヴィが一時的に預かっている。そのシュテルの姿を見て、うん、と返答しながら頷いた。
「
レヴィの言動がシュテルが戦闘中、先ほどの炎を
「シュテル君はどうかな?」
「……そう、ですね。感覚的には不思議なものです」
フィルの言葉を打受けて、シュテルが腕を組みながら首を傾げる。
「名前を呼ばれた時に、声とは別に求められている、という感覚はありました。で、脊髄反射で了承しています」
「脊髄反射」
「えぇ、まぁ……なんというか……」
シュテルが腕を組みながら天井を見上げ、首を傾げ、
「私はここに立っていますが、なんというか……ノアを通して行使している? 発動している? 一緒に発動している? 憑依しているというか、共有しているというか……そんな感じでしたね」
「ほう、面白い」
フィルが面白そうにそれに反応する。
「件のジークリンデ・エレミアは本人が居ないから確認できないが、そうか。スキル、技能の共有……或いはレギオン化とでも呼ぶべき現象が発生するのか。自分自身の力ではなく他人の能力を使いこなす、力か。実に興味深い。何故シュテルと君がそうなったのかが更に気になる所だけど……?」
フィルの視線に無言の中指を向けて答える。なんか気持ちの悪い声を返された。声が良いから余計に気持ち悪い。
「別段、昨晩はセックスしてたって訳でもないのよねぇー……なにしてたの?」
「イリス、ちょっと言葉選ばない……?」
キリエが顔を赤くしながらイリスの言葉を非難するが、イリスが構う事無くシュテルに聞いてくる。そこでこっちへと言葉を向けない辺り、誰が答えるのかよく解っていると言える。だがシュテルはそうですね、と言葉を置き、
「何をしたか、と言っても別段特別な事はしていませんよ? ただちょっと、本音で向き合っただけですよ。……ね?」
シュテルのその最後の言葉に、視線を反らしながらポケットを手に突っ込む。その反応を見ておっおっ、と面白そうなものを見るように、イリスが眺めて来る。
「まぁ、私のメインヒロイン適正? が滲み出てしまったかなぁ、という感じの話ですよ!」
シュテルが真面目な空気に耐え切れず、茶化し始める。まぁ、そっちの方が似合っているよ、とは思う。だから、まぁ、と声を置き、軽く頬を描く。
「真っ直ぐ見て欲しい、って言われたら応えるしかないよな……って話だよ。なぁ、シュテル」
「……」
「あ、顔めっちゃ赤くしてる。うわっ、可愛い―――!」
「あ、こら、キリエ! 放してくださいキリエ!」
背中の方から取っ組み合うシュテルとキリエの気配を感じるが、それを無視する。なんとなく、顔を合わせるのは恥ずかしい気がする。大体、シュテルの胸の中で眠ってしまった事を思い出すし。だからちょっと、顔を合わせ辛い。まぁ、自分も疲れていたんだろうとは思うんだが。それでも男としての面目という物も存在するのだから、ちょっと今だけは許してほしい。とはいえ、調子はいいのだ。調子は。
「ふむ……肉体的接触ではなく精神的な要素か? どちらかと言うと信頼関係に近いのか……いや、或いは心を許す事が条件なのかな? だとしたらそのジークリンデ・エレミアには相当心のガードを開けている事になるんだけど。あり得るのか? ふむ……」
フィルの方から興味深い言葉が聞こえてきた。
心を許す、か。
確かにこのレギオンとでも呼ぶべき能力はそれに近い感じがあると思う。ジークリンデに関しては……何故か、最後までは疑えない。どことなく、彼女を信じている自分がある。彼女が味方だと、信頼している自分が感じられるのだ。そこが不思議でしょうがないが、そのせいか、心を許している部分はある。少なくともそうじゃなきゃセックスなんてしなかっただろうし。そして結果として、彼女の行動の全てが俺を助けている。
まぁ、確かにそれは気を許している、という事なのかもしれない。
「は?」
そう思っていると、そんな声が一方からした。
その底冷えする声に、全員が動きを止め、視線を向けた。
実験室の一角では、前髪で目元を隠したレヴィが、どことなく寒気を感じるオーラを纏った状態で動きを停止させていた。それをあのフィルでさえ、無言で眺めていた。そして数秒後、
「……は?」
もう一度、レヴィの声が炸裂した。誰もが動きを停止する中で、イリスがゆっくりと此方へと視線を向けて来る。その視線は明らかに何とかしろよ! という類の視線だが、それに対して頭を全力で振り、視線をシュテルへと向ける。だがシュテルは全力で視線を反らした。そう、誰も今の状態のレヴィに触れたくはないのだ。地味に怒る、という様子を見せた事のないレヴィに触れるのが恐ろしいのだ。
「え、なに? もしかしてボクの恋っておふざけや間違いだと思われた上でその不審者以下だって言いたい訳? ねぇ? マクスウェル所長さぁ……」
「う、うむ―――状況的にそうなるんじゃないかなぁ!」
「塵芥……!」
物凄い楽しそうにレヴィの言葉をフィルが肯定した。だけど、言われてみるとシュテルに関しては解ったけど、レヴィに関してはまだまともに話していないし、確かに信じられる要素はないよなぁ……と、フィルの言葉に腕を組みながら軽く頷いてしまった。
「いや、まぁ、確かにボクもさぁ……恥ずかしいからちょっとふざけたりしたのは悪いけどさ……それでも気の迷いとか間違いだと思われて、そこまで信用されてない訳? 心の開き方が不審者以下だって話になる訳? ボク、こう見えて割と本気なのに?」
「レヴィがキレてる……」
「わ、私しーらない……」
キリエがゆっくりとに逃げ出そうとする。お前、マジでここで逃げる!? とは言いたいが、キリエは全く関係なかった。完全に俺が悪いじゃんこれ、そう思った所で、レヴィが顔を上げた。
ちょっとドキっとするが、
「解った。ボクも本気だすね」
「えっ」
その言葉にいや、だって、とレヴィが言う。
「これって究極的に
「うん……うん?」
レヴィが物凄い謎理論を展開し始めた。それを聞いたイリスが腕を組み、首を傾げ、天井を見上げてから視線を戻した。
「一理あるわね……」
「待って、今のどこに理があったの? なぁ、おい」
「でも確かにノアさんの精神的な問題なんですから。それを気にさせないレベルでレヴィさんが惚れさせてしまえばそれで問題解決ですよね」
「寧ろそれでノアが精神的に突き抜けちゃえば更に問題解決ってならない?」
「キリエ、コイバナの気配に帰ってきましたか……」
いつの間にか戻ってきたキリエが好物の話題に食いついてくるような元気さを見せていた。先ほどまで逃げ出していた姿はどこへ消えたんだお前。だが実際、言っている事に何も間違いはないのだ。真実はどうあれ、そこに
彼女が、俺をそう信じさせたのだから。だからレヴィも同じように俺を信じさせることが出来れば、そうすればシュテルと同じように、レギオン化出来るのかもしれない。いや、そっちじゃなくて純粋にレヴィの怒りをどうにかする方が主題だと思うけどここは。
じゃあ、とレヴィが言葉を口にする。
「ボクがノアを落として、ボクに夢中にさせれば問題解決だね?」
「ん? んン!?」
「シュテるんー。もし本気で独り占めにする事になったらごめんね。それでもボクたち友達だよね?」
「それ……もしかして宣戦布告ですか、レヴィ?」
シュテルに対する挑発ともとれる言葉に、レヴィが笑う。
「共有とか、一緒に愛して貰うとか甘いとか温いって思わないのシュテるん? 皆一緒よりもナンバーワンでオンリーワンが一番良いよ、ボクは」
「……へぇ」
「へへへ、わくわくしてきたわね……!」
助けて……!
仲が良かったはずのマテリアル娘が、いきなり火花を散らしながら本気でにらみ合い始めていた。助けを求めてフィルへと視線を向けるが、そのフィルはビデオカメラを回して必死に録画の最中だった。そうだ、このクズこういう奴だったわ。そして多分最終的に二人ともコマして黙らせろとか言うタイプだ。こいつ死なねぇかな。
「じゃ、ノア」
「あ、はい」
レヴィが此方に近づいてくると、手を伸ばし、襟元を掴みながら顔を引き寄せ、そのまま耳元に唇を寄せて、
「明後日、二人だけでデートしようね」
「え、あ、うん」
そう言うとレヴィは此方を解放し、実験室から去って行く。その姿を見て、呆然と見送っていると、フィルが笑いながら横に並んで、肩を組んでくる。
「どうやらレヴィ君の女が目覚めてしまったようだねぇ! いやぁ、ハーレムって現実で見るとこんな衝突ばかりなんだろうなぁ! は、っは、っは、っは!」
ほんとこいつ、殴り殺したい。その気持ちを抑え込みながら、未だに耳に残るちょっとだけぞくぞくと感じた女の気配に、どうしようかと思った。
たぶんこれから、レヴィとシュテルの動きから茶化しが消える。
その気配に、狼の群れの中に投げ込まれた子羊の気持ちを味わっていた。
新能力よりも!!
女たちの! 仁義なき戦いが始まる事の方が重要……!
ちなみに、割と成熟ボディなので体だけならもうえっちえっちだよ。