※この作品はR-18です。

喰種の住む鎮守府   作:ニーとくさん

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第12話

鎮守府へ向かう元帥一行。

途中、小規模な森を抜けてそのまま進むと、兵士達が土塁を築き、銃座・迫撃砲を設置するなど物々しい雰囲気だった。だがそれ以上なものが鎮守府との間に存在しており、それがこの場で一番抑止力になっているものがある。人間を使ったあの大量の案山子達だ。それに群がる烏と野犬、風に乗って流れてくる血の臭い、先程まで穏やかで時の流れを忘れさせてくれた空間をぶち壊すには申し分無いほどの光景だ。

 

そこに立つ3つの人影。2人は艦娘、残る1人は……ようやく直に顔を合わせる時が来たのだ。

元帥一行は車から降りて3人の元へ歩き出す。そして…

 

長門「横須賀第3鎮守府所属の長門だ。元帥、わざわざお越し頂き感謝する。」

陸奥「同じく横須賀第3鎮守府所属、陸奥です。」

元帥「うむ、出迎えご苦労。それとこちらの急な申し出を受けてくれたこと、感謝する。そして、あの時以来か…喰種よ。」

 

長門と陸奥に敬礼した後、隼斗に視線を移し声をかけるも隼斗は何も言わず黙ったままだった。

 

長門「…隼斗。ちゃんと挨拶しないと駄目だろ。失礼だ。」

陸奥「そうよ。もう…さっきまでの威勢はどうしたのよ。」

隼斗「……いや、すげえ美人さんだなあと思って。」あらー

大和「わ、私?」オドオド

陸奥「もう…ここにも美人なお姉さんがいるじゃない。自慢の姉でしょ?」グイッ

元帥達「……⁉︎」

 

陸奥は後ろから隼斗を抱き寄せて頭に顎を乗せる。長門からしてみれば、いつも隼斗が電にしてるようなことを陸奥が隼斗にしているだけのことなので特に気になることではないが、元帥達からしてみればその光景は余りにも考えられないことだった。それもそのはず、いくら艦娘に害を与えないとは言え、非常に凶暴かつ残忍で殺しを楽しむ化物という印象が強くここに来るまでも何をしてくるか不安だったからだ。

 

なのに、その化物は初めて見た大和に見惚れてボーっとしてる。その化物に陸奥が少し拗ねた感じで抱きついて、それを長門がため息をついて呆れた表情で見てる。これが、あの恐れていた喰種なのか?凶暴で残忍な化物?元帥達が困惑している中、3人は全く気にすることなくいつもの感じで話していた。

 

隼斗「んや、陸奥姉もかなり美人だけど…この艦娘も凄い美人じゃん。あ、長門姉も。」

長門「なんだその言い方。私はおまけか⁉︎」ガシッ グググ

隼斗「いだだだだだだ!千切れる!耳千切れるからやめろ!離せーー!」

陸奥「あーあ、お姉ちゃん悲しいなあ…美人なお姉ちゃん達に美少女な妹達がいるのに、すぐ目移りするなんて。」

長門「そうだな。あーあ、お姉ちゃんは悲しいぞ。こんな尻軽弟だったなんてな。」

隼斗「なんで⁉︎なんで怒ってんのさ!目移りしてないじゃん!長門姉も陸奥姉も美人よ⁉︎」

長門・陸奥「世界一だなんて、そんな////」

隼斗「いや世界一とは…」

長門・陸奥「……あぁ?」ギロッ

隼斗「世界一美人です……」

長門・陸奥「分かればよろしい。」ニコニコ

 

満足気な長門と陸奥に対して完全に項垂れて参った表情をした隼斗。化物は艦娘には弱いのだろうか?いや、弱いというより化物が2人に対して頭が上がらないようだし……あ、やっとこちらに気づいてくれたか。

 

元帥「もう…話しても大丈夫か?」

長門「ゴホンゴホン!……あぁ、すまない。では、鎮守府へご案内する。」

 

再び真剣な表情に戻った長門は陸奥と隼斗を連れて鎮守府へ歩き出す。元帥一行も後ろをついていき遂に横須賀第3鎮守府へ足を踏み込んでいく。そのまま大講堂に向かい中へ入ると鎮守府所属の艦娘全員が勢揃いしており、敬礼して出迎える。

 

吹雪「あれが大本営所属の艦娘方かあ…かっこいいなあ。」

夕立「吹雪ちゃんは大本営に行きたいっぽい?」

吹雪「いつかは行きたいかな。だって、精鋭中の精鋭だよ?憧れだよ〜。」

夕立「んー、確かにそうだけど。でも夕立はずっとここに居たいかな。大好きなみんなとこの鎮守府で海を守るの!」

時雨「シー…2人とも静かに。元帥が登壇したよ。」

 

2人は慌てて口を閉じ登壇した元帥に視線を移す。登壇した元帥の隣には大和と武蔵が立ち、少し離れた所に銃を持った海兵隊が並ぶ。周りを見渡せば自分達と元帥について来た艦娘達の周りにも配置され共に元帥を見ている。

 

元帥「まずは、これまで東野提督に苦しめられ不快な思いをさせてしまったこと、元帥の身でありながらその行動を把握し罰することが

出来なかったことに関して、横須賀第3鎮守府所属の君達に謝罪したい。本当に申し訳ない。」

 

深々と頭を下げる元帥の姿を見て鎮守府所属の艦娘達はざわつきだす。何か話があるとは聞いてはいたがまさか謝罪し頭も下げるとは思ってもいなかったからだ。元帥が頭を上げると同時にざわつきもなくなり再び静寂に戻る。

 

元帥「必ず、この現状を変えてみせる。君達艦娘が1人の人間としてこの世界で生きていけるように、まずは海軍から変えていく。

そう簡単にはいかないことは分かっている、だがどれだけ時間がかかろうと必ず実現する。だから、もう少しだけ…もう少しだけ

人間を見捨てず、信じて欲しい。そして喰種よ、これは貴様にもお願いしたい。どうか、人間を信じてくれないだろうか?」

 

目の前の艦娘達から壇上の反対側、大講堂入口側にいる隼斗へ視線を移す。他の者もつられて視線を移し皆が隼斗を見ていた。

 

隼斗「あ?あぁ…まあ、少しぐらいなら。」

元帥「……驚いたな。貴様が1番拒否してくると思うておったが…いや、これは大変嬉しいことだ。喰種よ、礼を言う。」

隼斗「大淀姉さんと約束したからな。人間派から少しずつ信じてみるって。けど…こいつらに危害を加える人間は殺すし、信ずるに値しない

人間も殺す。あとは、腹減った時ぐらいか…そうだ、忘れてた。おい爺、殺していい人間いんだろ?それ寄越せ。」

 

その言葉を聞いて講堂内が一気にざわつく。それは、信じる代わりに生贄を差し出せということかと。元帥も暫し考えた後、答える。

 

元帥「悪いが、それは出来ない。」

隼斗「……は?なんでだよ。犯罪者や死刑囚、何なら兵器派の人間でもいいから俺に寄越せ。」

元帥「貴様、どうするつもりだ?」

隼斗「喰べる。そろそろ新鮮な“肉”が喰べたいんだよ。外のやつは喰い飽きた、肉は固くなってるしなんか変な臭いするし…まあ、腐って

きてるから当然なんだけど。そういうことだから、生きた人間寄越せ。死刑囚なら問題ないだろ?どうせ殺すんだからさ。」

 

もたれていた壁から離れて壇上に向かって歩き出す。途中、兵士達が前を塞ぎ銃を構えるがひと睨みされると無意識に道を開けてしまう。そのまま艦娘達の間を歩き、壇上より少し手前にいる長門の隣に立つ。

 

長門「人間寄越せ、か。これまた随分と物騒な要求だな。」

隼斗「この際、俺の食糧事情も言った方がいいかな〜と思って。どの道そうするしかねえじゃんか。人間の食い物無理だもん。」

大淀「だからってそんな要求は無理よ。確かに隼斗は人間しか食べれないけど…他に方法がないか調べてからじゃないと。」

鳳翔「私も一緒に考えます。だから、今はその要求はやめましょう。ね?隼斗。」

間宮「大丈夫。きっとあるわ、だから私達を信じて今は我慢して?」

隼斗「んー……うーーん………んあ〜……」

 

なんとも気の抜ける声を漏らしながら腕組みして悩み、そして悩んだ末に結局折れていた。

その後は鎮守府運営に関する話となり、引き続き長門を提督代理として鎮守府を任せ再々稼働が決定。食糧・弾薬・燃料を運ぶ定期便も再開されることになった。だが、喰種の危険性を考えて陸海軍による鎮守府包囲・監視は鎮守府運営に支障をきたさない程度に継続、喰種の食糧事情も大本営に持ち帰り検討されることになる。

 

そして、今回の会談が無事に終わったことを祝うため急遽鎮守府で食事会を開くことになった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〜食堂〜

 

 

場所は大講堂から食堂へと移り、厨房では鳳翔と間宮、手伝いとして叢雲・雷・比叡、そして隼斗が用意していた。飯マズ代表と言われる比叡だが、どうやらこの鎮守府では鳳翔・間宮に次ぐ料理の腕前らしい。だから、とても手際良く2人を上手くサポートしていた。叢雲と雷も日頃から料理をするので3人程ではないが慣れた手つきで盛り付けや次の料理の仕込みをしていく。隼斗はひたすら調理器具の洗浄と盛り付けに使う食器を用意していく。

 

大和「あの…その、“あれ”は大丈夫なの?」

長門「ん?あぁ、比叡のことか?うちの比叡の腕は安心していいぞ。」

大和「なら良かった……じゃなくて!あれよ!あの、触手のこと!あれってその…た、食べる時に使うんじゃ…」

 

大和が指差す方を向くと、シンクで洗物しながら赫子を器用に使い食器を並べ、鳳翔達に調理器具を渡す隼斗の姿があった。

 

金剛「相変わらず心配性デスネ〜、大和わ。気にしなくても大丈夫ヨ。」

榛名「確かに鳳翔さん達には背を向けてますが、これまで一度も怪我したことないから大丈夫です。料理を作るのが捗る♪ってみんな喜んで

ますからね。」

武蔵「意外な一面だな。てっきり殺し喰らうこと以外興味無いように思えたが…ああも大人しく協力的な姿を見るとイメージが変わるな。」

 

大和「そ、それもそうね。でも、本当に私達艦娘には何もしないのね。」

赤城「そうですね、何もされないですよ。ああやって手伝ってくれたり、駆逐艦の娘達をちゃんと面倒見てくれたり、私達が遠征や攻略、

哨戒任務に出て帰投するまでずっと桟橋の先に座ってたりドッグを彷徨ったりして待ってるんです。可愛いですよね。」クスクス

加賀「まるで、ご主人の帰りを待つ犬、と言えばいいかしら?姿を見るとすぐに喜んでこっちに来るのよ。」

 

赤城につられて微笑む加賀。そんな2人を見ていた大和の頭の中には加賀が言っていた“ご主人の帰りを待つ犬”を想像していた。正直、どれだけ考えても全く分からなかったが、唯一分かることは犬ではなくて獰猛な獣だということだけで終わった。

 

そんなこんなで料理も出来たようで席に運ばれてくる。兵士たちにも振舞われ喜んでいた。そして全員に行き渡るのを確認し、皆でいただきますと言い食べ始める。美味しいという声があちこちで上がり、皆笑顔で会話と食事を楽しんでいた。元帥も楽しみながら全体を見回していた。ここにいる全員が、人間も艦娘も皆が同じご飯を食べて、笑顔で楽しく会話するこの光景を嬉しく思っていた。その中には世間を騒がせている新たな脅威“喰種”の姿もある。その喰種は駆逐艦の娘達に料理を食べさせていた。

 

夕立「ねえねえ隼斗。あーん♪」

隼斗「自分で喰えよ。ほら、あーん。」

夕立「あむ…モグモグ……美味しいっぽい〜♪」

時雨「もう、夕立だけずるいよ。隼斗、僕にも、あーーん♪…「へいへい」…パク…おいひい♪」

吹雪「お兄ちゃん!あーーーーーん…「デカイ口だなおい」…あむ…ん〜、美味しいぃ♪」

叢雲「何やってんのよ…「ほら叢雲、あーん」…ッ!あ、あーん////パク……あ、ありがとう/////」

吹雪夕立時雨「おやぁ?デレてるぅ?」ニヤニヤ

叢雲「う、うるさいわね///あんた達と同じ反応しただけじゃない///」

 

電「あーん♪」

隼斗「ああもう可愛いなあ////」

電「パクッ……んふふ〜、おいひいのでふぅ♪」

隼斗「はうぅ…可愛い!」ズキューーン

 

 

電がモグモグする姿を見て完全に緩みきったデレ顔になる隼斗。それを離れた席で見ていた元帥や大和と武蔵は呆気にとられていた。

 

大和「な、なんか凄い表情してない?物凄くデレデレじゃない⁉︎」

武蔵「もう化物には見えんな…」

元帥「全くじゃ……ああも変わるのか…」

 

扶桑「電ちゃんにだけはあんな感じなのよ。大好き過ぎていつもデレデレしてるんです。」

山城「大好きなのも、大事なのも分かるけど…デレデレし過ぎ!見てる身にもなって欲しいですよ。」

扶桑「もう、拗ねないの。構って欲しいなら素直になれば良いのよ?そうすれば隼斗も構ってくれるわよ。」クスクス

山城「え、いや…そんなつもりで言ったんじゃ……って、なんか私が好きみたいな言い方やめてください!私が好きなのは扶桑お姉様なん

ですからーー!」ガバッ

扶桑「うふふ、そうね。ありがとう、山城。」ナデナデ

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

元帥「ふう…ごちそうさま。」

大和「ごちそうさまです!美味しいかったあ〜。」

金剛「相変わらずよく食べるネ…赤城と加賀もよく食べるけど…」あら〜

 

赤城「今日は控えた方ですよ?ねえ、加賀さん?」

加賀「ええ、そうね。」

隼斗「うわ、またたくさん食べて…太るんじゃね?」

 

カウンターに水を入れに来た隼斗が丼タワーに気付き近づいてくる。そして笑いながら赤城と加賀の横腹を交互につまむ。

長門と陸奥、扶桑と山城は「またこの子(馬鹿)は……」と呆れてため息をついていた。

 

加賀「頭にきました。」ガシッ グリグリ

隼斗「痛い痛い痛い!割れる!頭割れ、あーーーー!」

赤城「誰が太ってるのかな〜?んー?もう一度言ってみて?」

隼斗「ご、ごひぇんなひゃい!ごひぇんなひゃいー!」

 

頭を加賀の脇に挟まれて拳でグリグリされ、赤城には頬を思いっきり掴まれ頬が千切れるんじゃないかと思うぐらい引っ張られる。間抜けな声を聞きつけた駆逐艦勢が集まり、それを見た夕立と叢雲、吹雪はお腹を抱えて大笑い。時雨と響は机をバンバン叩き笑い過ぎて涙を流す程で、暁雷電の3人は床に笑い転げていた。

 

山城「ほんと馬鹿ねえあんたは…にしても、ふふ…何その顔wあ、赤城さんもっと引っ張ってくださいw」

扶桑「ふふ…ふふふw私も、してみたくなったわw」ガシッ

隼斗「に゛ゃあああああああ⁉︎」

 

長門「ふふふ、なんて声出してるんだお前は…全く相変わらず馬鹿だな。」クスクス

大和「ちょ、ちょっと止めなくて大丈夫なの?怒ったりしない?」

陸奥「大丈夫よ。それに、面白いじゃない♪」

大和「ええぇ……」

 

大和のように外から来た者達にとって赤城や加賀の行動が喰種を怒らせるのではないかとヒヤヒヤしながら眺めるしかできない。それに対して赤城達は何の躊躇も無く喰種を懲らしめているのだから余計に気が気でない。当の本人達からすればいつものことで終わるが…

それからしばらくしてようやく解放された隼斗は、真っ先に赤城と扶桑につままれ赤くなった頬を両手で摩っていた。

 

元帥「ハハハハハ!本当に家族のようで、微笑ましい光景だな。」

 

隼斗「…何笑ってんだよ爺。」

 

元帥「楽しいから笑っているんじゃよ。儂はな、こうして人間と艦娘が食卓を囲み、同じ料理を食べ、語り、笑い合う…この光景が大好きで

この場にいることが幸せなんじゃ。彼女達をただの道具だの兵器だの言う輩がおるが儂には理解できん。彼女達には意志がある、心が

ある。だから笑い、泣き、怒り、哀しむ。人間そのものではないか、なあ喰種よ?」

 

隼斗「だから最初から言ってんだろ。どう見ても人間じゃねえか。初めて見た時から今もずっと変わらない…こいつらは人間だ。確かに、

入渠で傷が再生したり艤装を扱ったり、建造して生まれる部分は人間離れしてるけど…でも、それでも俺は、艦娘は人間だと思う。」

 

いつものように嘲笑ったり、敵意を剥き出しにするわけでもない。いつになく真面目な表情で話す。

 

元帥「そうか…貴様のように思う人間が増えると嬉しいんじゃが…」

 

隼斗「それを増やすのがお前の役目、つか責任だろ。必ず変えると、信じて欲しいと言ったのはお前だ。だったら嘆いてないで行動しろ。

どんな手使ってでも必ずやり通せ。大事な仲間を守り導くのが頭の務めなんだからな。」

 

大淀「“カシラ”じゃなくて“元帥”よ。「どっちも同じじゃん」…だとしても呼び方はちゃんとしなさい。元帥閣下、申し訳ございません。

言葉使いには気をつけるように言っていたのですが……本当に申し訳ございません。」

 

元帥「気にするでない、儂はこのままで構わん。変に畏れてもお互い話しにくいじゃろ?喰種よ、貴様も気にせず自然体で、普段通りに

話してくれて構わん。さあ、もっと語ろうではないか。今日が無理なら、明日。明日が無理なら明後日。時間はあるのだからな。」

 

その言葉を聞いた隼斗は呆気にとられた表情のまま固まっていた。人間が喰種と語ろうなど、時間はある、自然体で話していい…そんなことを言う人間がこれまでいたかのか?いや、いない。誰一人としてそんなことを言う人間はいなかったし、そもそもそんな考えを持つことは絶対にない。それは一部を除いて自分の様な人間を憎んでいる喰種も同様だと思う。なのに目の前にいる人間はどうだ?喰種を前にしても全く怖気づいてない、かといって偉そうにしたり以前の様に“悪”だと決めつけてこない。この世界の人間は頭おかしいのか?と思っていた。

 

元帥「どうした?やはり…人間と話すのは、あまり好きではないか?」

 

隼斗「……いや、喰種と話したいとか言い出す人間は初めてだから…その…なんだ、いきなりそう来られても…」

 

元帥「ふむ、ではゆっくり時間をかけていこう。互いのことが分かれば少しずつ距離も縮まり信頼も生まれるからの。」

 

隼斗「………。」

 

元帥「互いに理解し合い、歩み寄ることが大事じゃ。それに、貴様とここの艦娘達は互いを理解し信頼しておるではないか。ならば、儂も

貴様と信頼関係が築けるはずじゃ。儂はな、貴様のことが知りたい。人間を憎む貴様が、何故艦娘を人間と認識しておりながら殺さず

守るのか。彼女達が人間として生きていける世界を作るとしたのか。何故彼女達を家族と呼ぶのか。知りたいことが多いのじゃ。

良かったら聞かせてはくれないか?」

 

“互いに理解し合い、歩み寄ること”、これは元帥が良く言う言葉であり、この姿勢を貫いてきた。艦娘が現れて以来、艦娘は兵器だと周りが言う中で元帥だけが“艦娘は兵器ではなく、同じ人間だ”と言い続け接してきた。故に元帥の元には多くの艦娘が集い、また元帥の言葉と姿勢が徐々に浸透していき、かつて兵器呼ばわりしていた提督を含む人間は考えを改めて生まれ変わり元帥の元へ更に集い“艦娘人間派”が生まれることになった。だから隼斗に対しても同じようにしている。相手が誰であれ自分の信念や姿勢は貫いてきたから。

 

そんなことを隼斗は知らない。転生して日も浅く、知らないことが多い。人間が艦娘にしていることを知り、世界が違っても人間は醜く傲慢で自分勝手な生き物だと改めて思っていた。だから、この世界でも人間を憎み、人間殲滅の考えを持っている。そんな時に元帥からの言葉を聞いてしまった。喰種のことを知りたい、理解し合い歩み寄ると。こんな人間は本当に見たことも聞いたこともないから正直戸惑ってしまっていた。

 

隼斗「(なんだこいつ…今まで出会ってきた人間と全然違う。なんで敵意を向けてこない?なんで歩み寄ろうとする?艦娘にするなら分かる

けど、なんで俺?なんで?歩み寄る相手間違えてんじゃねえか?俺にされても…いやまあ、嬉しい…のか?よく分かんねえな…」

 

吹雪「あれー?おーい、お兄ちゃん!ねえってば!おーーーい!」

 

隼斗「………吹雪。ちょ、顔近い…やだ吹雪ったらよくよく見たら可愛いじゃん。美少女じゃん。」

 

戸惑い暫く黙っていたのを心配してか吹雪が顔を覗き声をかけてくる。ただ、顔が近い、地味に声大きいから耳痛い。それだけ元気だから良いことなんだけど。それに…可愛いとは思ってたけど、いややっぱ可愛い。

 

隼斗「ねえ、たべていい?」クイッ

 

吹雪「へっ………⁉︎///////」トゥクン

時雨夕立「あぁぁん⁉︎」

暁響雷「えええ⁉︎」

電叢雲「……あ?」

 

突然の告白?に驚き赤面してしまう吹雪。先程の隼斗のように戸惑いもじもじしながら、でも視線は真っ直ぐ隼斗を見つめ返す。

 

吹雪「その、あの…たべても、良いけど………や、優しくして、ね?お兄ちゃん///ちゅ、ちゅ〜〜〜〜〜〜❤️…「ガシッ」…ゔぅ⁉︎」

 

隼斗「そういう意味じゃない。恋愛的というか性的というか、そうじゃなくて食欲的に喰べていい?てことよ。」

 

吹雪「ゔぅーーん⁉︎(ガーーン⁉︎)」

 

時雨夕立「ホッ……良かった。でも…」

 

暁響雷「これは…」

 

電叢雲「シメなきゃね。」

 

吹雪「ふん!!」

 

隼斗「ゴフッ⁉︎」

 

強烈なボディブロー。溝おちにcritical hit、大破。そしてトドメに…

 

電「オラァ!跪け!!」

 

スパァンと綺麗な音が響き渡る。そこには先程まで立っていた隼斗が左足の脛を抑え声無き悲鳴を上げて悶絶していた。その近くで笑顔のまま佇む電。その笑顔はどこぞの喰種と同じであの不気味な笑顔をしており、それは残る駆逐艦も同じであった。

 

叢雲「……電、語尾。語尾つけて。」

 

電「…なのです!」

 

叢雲「ふふ、可愛い♪じゃあ、行きましょうか。」

 

時雨と夕立にアイコンタクトした後、電と一緒に中庭へと歩いていく。時雨と夕立は隼斗の腕を掴みズルズルと引き摺って残る駆逐艦達と一緒に後に続いていく。その後、中庭の真ん中で駆逐艦達に取り囲まれ正座させられて何やら詰められてる隼斗の姿があり、それは元帥一行が食堂を出るまで続いていたという。

 

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食事会から2時間後、元帥一行を見送る為に全員で例の案山子がある所まで来ていた。

 

元帥「では長門、既に伝えた通りだ。明日以降、これまで通り鎮守府運営を再開しても良い。ただし、包囲・監視は継続させてもらうぞ。」

長門「構わない。ただし、万が一にこちらへの直接的又は間接的に危害を加える真似だけは絶対しないで欲しい。私達は人間と争いがしたい

わけではない。私達のことを理解して欲しいんだ。ただの兵器・道具ではないと……それだけだ。」

元帥「分かっている。必ず君達艦娘への認識を正す。どうか信じて待っていてくれ。」

長門「あぁ…そうさせてもらうが、もし我々にできることがあれば言ってくれ。微力ながら力になろう。」

元帥「ではその時は、頼りにさせてもらおう。」

 

互いに一歩前に歩み出て握手を交わす。長門の後ろに控える艦娘達が敬礼する中、隼斗は2人の所へ行き元帥の顔をじっと見る。

 

元帥「脛の具合はどうじゃ?」

隼斗「もう大丈夫かな。これでも一応、化物だし。」

元帥「確かにな。あの後は話せなかったからの…また、時間を作ってここに来るから、その時はゆっくり語ろうかの。」

 

隼斗「“食い物”持ってきたら考えてやるよ。それと、お前は殺さないことにした。まずはお前から信じてみようと思う…だから、途中で飽き

らめたり、心変わりするようなことがあれば……容赦無く喰い殺すからな。裏切ったりもするな…分かったな?」

元帥「はっはっはっ!分かった、善処しよう。“食事”の件は人道的に厳しいと思うが…どうにかしよう。では皆、明日から宜しく頼む。」

 

そう言いこちらへ敬礼した後、元帥一行は去って行った。少ししてようやく長門達は鎮守府へと戻り明日からの運営再開に向けて準備を始め出す。隼斗は特にやることがないから自室兼医務室へと戻りベッドに寝転ぶ。なんか長くもあり短くもあり色々あったなと思いながら天井を見つめていた。特にやることがない、こんな生活も悪くない。ひたすら戦い、殺し、日々殺伐とした生活とは違うから怠けてしまいそうではあるが、相手はただの非力な人間であり喰種捜査官、“白鳩”ではない。多少怠けても問題ない問題ない全然大丈夫〜、あとは深海棲艦か。どんな敵なのか、どんな強さなのか、姿も気になるし…戦い方はどうだろう?

 

あー…戦ってみたい。ついさっきこういうの悪くないって言ったばかりだが、やっぱり戦いたい。戦って殺したい、敵の肉を切り刻み、喰いちぎり、引き千切り、抉りとる。あの感触と感覚、理性が吹き飛びそうになる程の快感、快楽?に近いのかな。理性なんかどうでも良くなるほどで本能に従いただただ血肉を貪りたい、喰いたい、喰いたい…喰わせろ、喰わせろ喰わせろ喰わせろ喰わせろ喰わせろ…

 

隼斗「……喰わせろ…」二イィ

電「…電ならいつでもたべていいのです。いや、今すぐにでも食べて欲しいのです!」ガバッ

隼斗「うわぁ⁉︎い、電…なんで跨ってんの?なんで服脱いでんの⁉︎ちょ、脱が…!」

 

考え事に夢中で電の気配に気づいてなかったどころか既にマウントポジションを取られてることすら気づいてなかった。しかも流れるように服を脱ぎ、そのまま自分の上着まで手際良く脱がされる。

 

電「隼斗はこういう時だけビビりなのです!ビビり!ヘタレ!」

隼斗「ビビり⁉︎ヘタレ⁉︎そ、そこまで言わなくても……つかこういうのは手順もムードも大事だろ!」グググ

電「関係ないのです!気持ちと勢いなのです!電は…隼斗への思いが抑えきれないのですー!」グググ

隼斗・電「むむむ……!」

 

ガララ… 相変わらず騒がしいね 何してるっぽい?

 

時雨夕立「……………。」

隼斗電「……………。」

 

時雨「電、その格好は?パンツまで脱いでるってことは…今身につけてるのは制服のスカートだけかい?」

夕立「電ちゃんは大胆っぽい。それとも隼斗の趣味?制服プレイがいいの?」

隼斗「いや決して俺の趣味では…(まずい、2人の眼が恐い。恐い恐い恐い!)」

 

夕立「夕立も…混ぜて混ぜてー!もう我慢できないっぽいー!」ハアハア

時雨「ふふふ…僕も我慢できないよ……ねえ、いいでしょ?」ハアハア

電「本当は電だけがいいのです…でも、2人も我慢できないなら許すのです。でもでも、電が隼斗の一番のお嫁さんなのです❤️」

 

隼斗「(やばい、やばいやばいやばい…あの2人もとなると、俺は明日を迎えられん!)」

電時雨夕立「ふふふ…に げ ちゃ だ め ❤️」ガシッ

隼斗「あ、あぁ……誰か助けてーーー!!!」

 

 

バァン! そこまでよ!

 

 

入口で腕組みしこちらを睨みつける者。あの目、あの姿、そして頭の電探…あいつは…!

 

隼斗「む、叢雲さーーーーーん!!!」

叢雲「隼斗…まだ無事?あなた達、何をやっているのかしら?こんなことするなんて…どうして私も誘わないのよ!!!」

隼斗「どうしてそうなんだよ!カッコイイの台無しだよ!期待して損したわ!」

叢雲「うるさいわね!私もあんたのことが大好きなの!何?好きになっちゃダメなの⁉︎」

 

時雨「おー、ようやく素直になったね。早くこっちにおいでよ。」

夕立「ぽいぽい。もう我慢の限界っぽい〜…」

電「叢雲ちゃんの気持ち、電は気づいてたのです。叢雲ちゃんも許すのです、でも1番の座は譲らないのです!」

叢雲「私だって…負けないわ!」

 

ベッドに近づきゆっくりと服を脱ぎ始める。普段がっつり見ていた訳ではないけど、叢雲って思いの外胸あるんだあ…なんて、呑気に思ってしまった。叢雲と目が合う。頬を少し赤くさせながらベッドに上がり更に近づいてくる。こんな狭いベッドに美少女4人と獣が1匹。とんでもない事態である。

 

電叢雲時雨夕立「い〜っぱい、気持ち良くなろ❤️」

 

……プツン…

 

隼斗「うがあああああああああああ!!!」

全員「……⁉︎」ビクッ

隼斗「はあはあ…こうなりゃ、まとめて相手してやる!来いよ!喰種の…俺の力を思い知らせてやる!」

電叢雲時雨夕立「じゃあ、い〜っぱい あ い し て ね ❤️」

隼斗「来いやーーー!」

 

 

その後、夕飯時に現れた5人の内4人はキラ付け、1人は轟沈手間の状態で現れたという。

 

長門「む、お前達キラ付け状態じゃないか。流石だな、明日に備えてそこまで準備しているとは…素晴らしいぞ!」

陸奥「そうねえ、やる気に満ちてて頼もしいわ♪それに比べて…」チラッ

隼斗「……ううぅ、疲れた…」

山城「あんたここじゃただのニートでしょ?なんでそんなあんたがボロボロなのよ。てか、なんかやつれてない?何?体調悪いの?」

扶桑「ちょっと心配ね…大丈夫なの?」

 

隼斗「うう…だい、「心配だから今日は隼斗と一緒に寝るのです!」…はい?大丈夫よ電。暁達と寝なよ…」

電「何か問題でもあんの?…なのです。」

暁「もう、隼斗お兄ちゃんの影響ね。だめよ電、言葉使いはちゃんとしなきゃ。」

電「はわわ!暁ちゃんごめんなさいなのです!」

 

時雨「だらしないね。この後、運動しようか。食後の“運動”を、ね?」

夕立「夕立も一緒にするっぽーい!早くしよー!」

隼斗「え、いや…寝る…」

叢雲「何よ、ほんとだらしないわね。決まりよ、徹底的に“しごいて”あげるわ。徹底的に、ね?」

電「じゃあ、みんなで隼斗をキラ付けするのです!」

隼斗「う、ううぅ…うわああああああ!もう勘弁してくれーーー!」ダダダッ

 

 

血相を変えて食堂から走り去る隼斗を4人が猛追して出て行く。その様子を笑顔で見送り、明るく元気でみんな楽しそうだなと食堂に残るメンバー達は思い微笑んでいた。

 

夕立時雨「つ か ま え た❤️」

隼斗「な⁉︎先回りされた⁉︎この俺が⁉︎」

叢雲「あんた馬鹿だから行動パターン丸わかりよ。どのルートを使うのか、どこに隠れるかもね。」

電「もう逃げちゃだめなのです。さあ、早く食後の“運動”するのです…とても気持ち良い、“運動”なのです。」

隼斗「あーーーー!もうマジで勘弁してぇーーー!」

電叢雲時雨夕立「だ〜〜め❤️」

隼斗「あぁーーーーー!…………」

 

 

引き摺られる隼斗の姿を何人か見かけたが誰も声をかけることはなくそっとしていた。きっと逃げたことに対してお灸をそえられるのだろうと思い、そのまま医務室に引きずり込まれる隼斗を敬礼で見送りそれぞれの部屋に戻って行ったとさ。

 

電叢雲時雨夕立「次は〜…何連戦かなあ〜❤️」

隼斗「もう寝かせてぇーー!」

 

 

 

 

 

 

 

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