ある日、出撃から帰投中の艦隊から緊急無線が入る。
艦娘を1名保護、轟沈寸前で意識不明の為、鎮守府へ連れて帰ると。
そこからの鎮守府は慌ただしく動き出した。
非番でくつろいでいた者達も含め総出で受け入れ準備を開始。入渠ドッグに高速修復剤を運び、医務室から非番で昼寝をしていた隼斗を追い払ってシーツと掛布団の交換、灰皿撤去に部屋の換気、出撃ドッグに担架の用意。
全ての作業を終えた頃、ゲートが開き艦隊が帰投してきた。
明石「みんなおかえり!保護した娘を担架に乗せて!」
金剛「んしょ…ふう、後は任せたネ!早く入渠させてくだサイ!」
明石「任せて!行くよ、夕張!」
夕張「よいしょ、と…うん、行こう!」
比叡「なんとか間に合いましたね、お姉様。あの娘大丈夫でしょうか…」
榛名「榛名も心配です。でも、どうしてあそこにいたのか…作戦海域に向かう時は誰にも遭遇していませんでしたし…」
霧島「大淀さんにも確認したけど、戦闘は確認されてないそうよ。出撃組の私達はともかく、近海の哨戒してた扶桑さん達からもそのような
報告は一切上がってないんですって。」
金剛「じゃあ、他の海域からここまで来たのか、もしくは流されてきたのかのどちらかデスネ。とにかく、今は意識が戻ることを祈るだけで
デス。私は長門に報告してくるからあなた達も入渠してきなサイ。あと吹雪、大破ながらもしっかり護衛していましたネ。よく頑張り
ました、ゆっくり休みナサイ。」
吹雪「は、はい…そうしますぅ〜…ううぅ、疲れ、た…」
比叡「おっと!あはは…よく頑張ったね、お疲れ様。ではお姉様、私達は吹雪ちゃんを連れて先に行ってますね。」
緊張が解れたのか崩れるように倒れかけた吹雪だが隣にいた比叡がすぐに受け止めるとそのままお姫様抱っこして入渠ドッグへと向かう。
比叡達をその場で見送った金剛は詳細を報告する為に執務室へと歩き出す。艦娘だけでなく妖精までも慌ただしく動き回り廊下を飛び回っていたので危うくぶつかりそうになりながらも執務室へと到着、ノックして中へ入ると長門と大淀が金剛を待っていた。
大淀「お疲れ様です、金剛さん。…って、金剛さんも中破してるじゃないですか!早く入渠を…!」
金剛「大丈夫ヨ、これぐらい平気ネ。それよりも報告が先ネ。」
長門「分かった。では、手短に報告してくれ。」
金剛「じゃあお言葉に甘えるネ。まず、保護した艦娘は朝潮型3番艦“満潮”。発見時の状態は轟沈寸前で意識不明の状態、私達の担当海域内で
の戦闘によるものではないことから担当海域外から来た、もしくは流されたかのどちらかということ。詳しいことは意識が戻らないと
分からない…て感じデスネ。」
長門「そうか…だが、大淀の調べでは担当海域外でも戦闘はないそうだ。大本営に確認もとったが同じ返答だった…つまり、戦闘による負傷
ではない、ということだ。あまり考えたくはないが…」
金剛「以前のここと同じブラック鎮守府に所属していて脱走した艦娘ってことデスカ?」
金剛の言葉に無言で頷く長門を見ていた金剛と大淀は執務室の空気がずっしりと重くなるのを感じる。
まだ確定したわけではないがその可能性が高いこと、そしてそれが本当なら轟沈してでも逃げ出したい程そこの鎮守府は酷い所であり所属する艦娘は過酷な環境下に置かれていることになる。自分達もそうだったが、いざ他の鎮守府にいる艦娘が同じように人間達により傷つけられているのを見ると心が苦しくなる思いだった。
今はただ満潮の意識が回復するのを待つしかなく、不安なままその日を終えるのであった。
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〜翌日 1450〜
満潮「……うっ…ううぅ、あれ?」
ここは一体…あぁ、もしかして私…死んじゃったのかな…?
満潮「……っ!痛い…」
試しにほっぺたつねってみたけど痛みを感じるからまだ生きてるってことかしら?
……だったら思いっきりつねるんじゃなかったわ。でも…ここは一体、どこなの?
病室、かしら?こんな綺麗な布団、初めて見たかも。それに空気が綺麗というか澄んでるというか…とても気持ちいい気がする。
なんだろう…全然知らないところなのに、なんでこんなにも落ち着くんだろう……
満潮「あの、誰かいませんか?」
……返事がない。誰もいない。どうしよう…
ガララ 〜〜〜♪
満潮「…誰?」
榛名「〜〜〜♪あ…良かった!目を覚ましたんですね!身体の調子はどうですか?気分悪くないですか?」
誰だろう。凄く綺麗な人…あぁ、とても甘くていい匂いがする。
…って、違う違う。そんなこと考えてる場合じゃなかった!
満潮「あ、あの!ここは一体どこですか?私は、海にいた筈では…」
榛名「はい、確かにいました。轟沈寸前の状態だったところを見つけて私達の鎮守府に連れてきたんです。」
満潮「そうだったんだ…そういえば私、補給も碌にしてない状態で飛び出したから途中で意識が…!そう、だった…私、行かなきゃ!」
榛名「え?ちょっと待って!無理をしてはだめですよ!」
そうだ…こうしてはいられない。してちゃいけない!早く行かなきゃ…でないと、みんなが…!
満潮「……っ!くっ…か、身体が…何で?どうしてよ…こんなのいつも通りじゃない!動いてよ…!」
榛名「動けるわけないでしょ!高速修復剤を使ったとはいえ、轟沈寸前の状態だったって言いましたよね?無理出来ない状態なんですから
今は安静にしてください!」
満潮「止めないで!行かなきゃだめなの!行かなきゃ…行かなきゃ、みんなが…う、うぅ…」
榛名「……⁉︎どうしたんですか⁉︎待ってて!すぐに他の方を呼んで来ます!」
泣いちゃだめ…!ここで泣いても、誰も救えない。みんなを助ける為に私は飛び出した。数少ない燃料と弾薬をみんなが私に託して送り出してくれた。1秒でも早く辿り着いて伝えなきゃいけない。あそこの現状を伝えて助けて欲しい…!私達の、“守護鬼”様に…!
バタバタ ガララ!
明石「ハアハア、ごめんね!お待たせ!身体のどこが痛むの⁉︎すぐに手当てするからね!」
榛名「榛名も手伝います!」
満潮「大丈夫…これぐらい、平気だから…!だから、早く行かなきゃいけないの!お願い、私の艤装を用意してもらえると…」
明石「何言ってるの⁉︎今は安静にしてなきゃだめ!」
満潮「それでも行かないといけないのよ!」
明石「だめなものはだめ!」
満潮「お願いよ!お願いだから、行かせてよ…!」
榛名「どうしてそこまで…一体、どこに行こうとしてるんですか?」
満潮「横須賀…横須賀第3鎮守府……」
明石・榛名「……え?ここ?」
満潮「そう、ここに…て、え?今なんて…え?ここ、もしかして…横須賀第3鎮守府、ですか?」
明石「そうだよ。ここが世間を騒がせてる横須賀第3鎮守府だよ。」
コンコン 長門だ、入るぞ
長門「急に苦しみだしたと聞いたが大丈夫なのか?」
榛名「あ、長門さん。まだ診察出来てないので分かりませんが…それより、ここに用事があって向かわれてたそうなんです。」
長門「ん?ここにか?そうか、では…その状態になってまでここに来る程の要件を聞かせてくれないか?…の前に挨拶が遅れてすまない。
提督代理の長門だ。ようこそ、横須賀第3鎮守府へ。」
嘘、言ってる目じゃない。だったら…!
満潮「お願いします!あの方に会わせてください!」
長門「あの方?一体誰の…」
満潮「私達艦娘の…“守護鬼”様です!あの方にお願いしたいことが!お願いです、会わせて!」
長門「守護鬼…あぁ、隼斗のことか。(隼斗に会いに来た、そしてこの様子…やはり…)」
明石「隼斗なら中庭じゃないかな?今日確か水やり当番だって聞いてるけど。」
榛名「水やりなら早朝してたから、今の時間だと…うーん、あ!吹雪ちゃん叢雲ちゃん達と一緒に農作業中だと思いますよ。」
満潮「(え…?水やり?農作業?)」
長門「榛名、すまないが隼斗を呼んで来てくれないか?」
榛名「了解しました!すぐに連れて来ます!」
あ、行っちゃった…てか、えっと、水やりとか農作業とか言ってたけど守護鬼様がしてるのかしら?全然想像と聞いてた話と違うような気がするんだけど…本当、なのかしら?
〜3分後〜
ダダダダダッ ガララ!
榛名「お待たせしました!」
隼斗「俺に用があるって聞いたけど、何?」
満潮「あ…///」上半身裸で包帯交換中
明石「………」満潮の包帯交換中
長門「……榛名、出来ればノックしてもらえると助かるな。」あはは…
榛名「あ、わああ!す、すみません!隼斗、見ちゃだめ!」バシンッ!
隼斗「ぎゃああああ!目がああああ!」
明石「榛名、両目にビンタはやめたげてよぉ…ほんのちょっとだけ可哀想だからさ。」
み、見られちゃった///あの守護鬼様に私の身体…///なんでこんなにも恥ずかしいと思ってるんだろ…あそこではとても気持ち悪くて虫唾が走るような、吐き気がするような、とても不愉快な気分になるのに…なんで守護鬼様だとこんなにも恥ずかしいんだろう///
いや、いやいやいや。そんなんじゃなくて!早く伝えなきゃ!
長門「まあ、大丈夫だろ。隼斗、お前に話があるそうだから聞いてあげて欲しい。」
隼斗「いってぇ〜なあ、榛名お姉様本気で叩くのはビックリするからやめてよぉ。まあ大丈夫だけど。んで、話って何?」
明石「いやまだ服着てないんだけど⁉︎そこ普通に聞いちゃうかな⁉︎満潮ちゃんごめんね!すぐ着せるね!」
満潮「あ、だ、大丈夫です///えっと、その…お願いというのは、みんなを助けて欲しいの!もうこれ以上耐えれない…!沈むか、売られるか
なんて…もう、嫌なの…!」
長門「なっ…沈むか“売られる”だと⁉︎」
明石・榛名「そんな…!」
隼斗「………どっから来たの?」
満潮「…グスッ……江ノ島鎮守府から来たの。お願いです、みんなを助けて…!」
隼斗「分かった。長門姉、俺こいつ連れてその江ノ島鎮守府潰して来るわ。艦娘は全員連れてきていいだろ?」
長門「全く…勝手に決めるな。そこの提督は生かしておけ、直接元帥に引き渡して余罪を調べる必要がある。いいか、喰うなよ?」
隼斗「向こうが変なことしなけりゃ生かしておくさ。だが…もしやったら、殺すからな?」
満潮「……⁉︎」ゾクッ
今一瞬、とんでもない殺気が…これが守護鬼様。私達を救い、守ってくれる守護鬼様なのね。これでみんなを救える!早く、早く帰らないといけない!待っててね、みんな!
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〜江ノ島鎮守府 更に翌日 0850〜
いつもと変わらぬ朝。いつもと同じように執務室へと向かい、いつもと同じ光景を見る。
艦娘を無理矢理抑えつけ犯す者。複数で手足を抑え代わる代わる犯す者達。床で簡易ベッドでソファで、椅子で、さほど広くもない執務室で行われる行為。それを両側に艦娘を侍らせて優越感に浸りながら深々と高級な椅子に座り煙草をふかす鎮守府の主。
それを虚ろな目で見る1人の艦娘。朝潮型1番艦“朝潮”、主の秘書艦であり、助けを求めて来た満潮の姉。
希望を託した妹は処分されてしまった。信じることが出来ず、妹を追撃した仲間に問いただしたが口を揃えて皆が“満潮は死んだ”と答えた。
そう答える仲間達も虚ろな目をしていた。希望を託したのは朝潮だけでなく、ここに所属する艦娘全員だ。だが、満潮を送り出したことがバレてしまい追撃させられ、挙句自分達の手で殺すことになってしまった。もう、この地獄から逃れることはできない。逃れる唯一の方法は海へ出て戦って散ることのみ。
そう思いながら新たな1日が始まる、はずだったーーーーーーーーー
ドガーーーン
提督「……!な、なんだ⁉︎敵襲か⁉︎」
朝潮「……はっ⁉︎一体、何が…!」
突然鳴り響く爆発音。それに遅れて鳴るサイレン。鳴り止まぬ爆発と衝撃。
それはいつもと違う、“新たな1日”の幕開けだった。
〜鎮守府から1Km地点 海上〜
山城「……あんた、派手にやり過ぎよ。」
時雨「あれ本当に大丈夫なのかい?どんどん壊してるけど…」
隼斗「“やられる前に殺る”、先手必勝だよ。最初の一撃で徹底的に完膚無きまでに叩き潰す。そうすりゃ後が楽だろ。」
夕立「でも、色んなところから悲鳴が聞こえるっぽい。あ、ほら!今爆撃した建物から何人か出てきたっぽい!」
電「隼斗、本当に“誰もいないところ”だけ狙ってますか?なんだか不安になってきたのです。」
隼斗「………の、筈なんだが…テヘッ☆」
榛名「気持ち悪いことしてないでちゃんと集中しなさい。」
隼斗「辛辣ぅ〜。」
満潮「あ、あの!なんで鎮守府を爆撃してるんですか⁉︎そんなことしたらみんなが…!」
“鎮守府を潰す”。確かにそう言っていたが本当に潰すとは思っておらず慌てて会話に割り込むも、その間も爆撃は続き建物や気休め程度の迎撃用の迫撃砲や対空砲、砲台を破壊していく。壊れゆく鎮守府と沖にまで聞こえる悲鳴、それを喰種におんぶされたまま眺めることしか出来ない。満潮は電が言ったように不安になってきた。“俺には分かるから大丈夫”と言っていたがどういう意味なのか理解出来ないまま爆撃が始まったから止めようがなかった。
爆撃開始から3分後、爆撃を終えた艦爆隊が帰投。次々と飛行甲板へ着陸しそのまま矢筒へ収納されていく中、隼斗は鎮守府を見てはニヤリと笑う。
隼斗「……集まってきたな。満潮ちゃ〜ん、しっかり掴まっときなよ。死にたくねえならな!」
満潮「ふえっ⁉︎ちょと待っ…きゃああああああああああ…!」
回収を終えて急に姿勢を低くしたと思ったら突然走り出す。他の者達が慌てて全速力で追いかけるもどんどん引き離されてしまうほどの速さで海を走るその姿はとても空母には見えない。
満潮「ちょ…こ、怖いったら!馬鹿馬鹿馬鹿〜!もう信じらんない…!」
隼斗「満潮!飛ぶからマジでしっかり掴まってろ!……じゃあ、行くぞオラァ!」
満潮「はあ⁉︎ほんと信じあああああああああ!!!!!!」
満潮は感じた。これが空を飛ぶ感覚かと。
満潮は見た。迫りくる窓ガラスを。
満潮は漏らした。生まれて初めて漏らした。
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時間は少し遡り空爆直後の執務室。
突然のことで室内は大混乱。慌てて服を着るもその場で転ぶ男達と提督、朝潮もぐったりと横たわる艦娘達に声をかけまわるも皆が皆虚ろな目で涙を流したまま動こうとはしなかった。だが、そんな彼女達にかけられる言葉はーーー
「そんなとこで寝てないでさっさと戦え!」
自分達を散々モノのように扱い、犯していた者達のあまりにも自分勝手な言葉だった。
朝潮「……っ、ここは私が出ます。提督やみんなは避難を…」
あああああああああああ!!!!!!
提督「……⁉︎な、なんだ声…」
朝潮「この声、まさか…!」
ガシャーーン!!!! お、やっぱここか。流石俺!今日も五感が冴えてるわ!
ハアハア…い、生きてる…
爆撃の次は砲撃。しかも執務室をピンポイントで狙ってくるなんて…と思ったが爆風は一切なく、誰も怪我をしていない。
執務室に飛んできたのは黒の海パン一丁、腕組みして声を上げ笑ってる男の人。よくよく見ると何故か艤装をつけてる。艦娘でもないのに何故艤装を…いや、確か艤装をつけて戦う提督もいると聞いたことがあるけど…
誰もが何者かと思っていたが、数秒後に目の前にいる者の正体に気づく。“喰種”“鬼”“守護鬼”、世間を騒がせているあの化物であると。
だが、朝潮はそれ以上に驚かされる。喰種がおんぶしている者がひょこっと頭を出した時に見せた顔。死んだと思っていた大事な妹“満潮”がそこにいたからだ。
満潮「もう!ばっっかじゃないの⁉︎本当に死ぬかと思ったじゃない!馬鹿馬鹿馬鹿!ほんと信じらんないってば!」キーーン
隼斗「お、おおぉ…ごめん、悪かったから耳元でそんな大きな声出さないで…」
朝潮「満潮…みちし…「大きな声出すに決まってるでしょ⁉︎本当に怖かったんだから!」…あ、あの…満潮?」
提督「なんで…なんであいつがあの化物と一緒にいるんだよ…!」
整備士「あぁ…あぁぁあああ!!喰われる…!逃げろー!」
整備士「おい待てよ!置いてくなって!」
朝潮「きゃっ!うっ、ううぅ…!」ドサッ
隼斗「虫けら共が…満潮、降ろすからあの娘助けてこい。」
満潮「分かったわ!朝潮姉さん、大丈夫⁉︎」
我先にと逃げ出した整備士達に邪魔だと言わんばかりに突き飛ばされた朝潮に駆け寄っていく満潮。数日顔を合わせてなかったが以前よりも目の下の隈が酷くなってる気がする。それに更に痩せてしまった。たった数日なのにここまで…見ていて心が辛く、苦しくなった。
だがそれも今日で終わりだ。朝潮姉さんも、そして他のみんなも救われる。艦娘を虐げる人間に裁きの鉄槌を下すーー
“艦娘の守護鬼”様がいるんだから!
その守護鬼こと隼斗は入口に殺到して未だに外に出ていない整備士達の背中を無慈悲に赫子で刺突していく。笑いながら、何度も何度も刺突を繰り返す姿は刺激が強過ぎて直視出来ない。再び視線を向けた時には血の海とそこに転がる肉片しかなかった。提督も気づけば床に仰向けになり胸を踏みつけられ苦しみもがいている。それに腕と足が有り得ない曲がり方をしてる。たった数分間の間に起きた出来事に満潮をはじめその場にいた艦娘達と提督は思考も反応も全くついていけなかった。
そこへようやく榛名達が追いつき執務室に入ってくる。惨状を見て「あ〜ぁ…やっちゃったよ…」と呆れた表情で呟くだけで、すぐに横たわったみんなの下へ行き声をかけている。榛名さんもあの人の隣で何か話してる。あ、「めっ!」って怒られた。凄い、榛名さんはあの人が怖くないのだろうか?それとも一緒にいるから慣れてるのかしら?“慣れ”とは恐ろしいわね…
提督「ど、どうして貴様がここに…!確か、鎮守府に隔離されている筈じゃ…」
隼斗「満潮が死にかけの状態で助けを求めた。みんなを救って欲しいって…だからここに来た。本当ならおまえもそこの虫けらと同じように
したいんだが、生け捕りにしろと言われてる。だから四肢を圧し折るだけにした。これなら逃げることも出来ねえからな。」
提督「満潮ぉ…おまえ、俺を売りやがったな!クソガキが調子に乗りやがって…普段碌な成果を上げれない不良品がこんな時だけイキってん
じゃねえぞ!あぁ⁉︎それに、男も満足に出来ねえおまえなんか、兵器としても、女としても、粗悪な不良品なんだよ!」
満潮「……ッ⁉︎」ズキッ
朝潮「提督…!あなたって人は…もう許せない!謝って!私の大事な妹に謝って!!あなたのような人に、そんなことを言われる筋合いは
ありません!!!!早く謝ってよ!謝りなさい!!!!!」
「不良品じゃない。満潮は、決して不良品なんかじゃない。」
満潮「……隼斗、さん…」
提督「き、貴様に何が…!ぎゃああああ!」
満潮・朝潮「ひっ⁉︎」
提督の圧し折れた四肢を無慈悲な赫子が襲う。瞬く間に切断され血飛沫が飛び散り床と壁を更に赤く染め上げる。
隼斗「鎮守府のみんなを助ける為、死にかけの身体に鞭打って1人飛び出したんだ。途中で深海棲艦に見つかれば死ぬかもしれない危険が
あるのに、それでもこいつは諦めず強い意志を持って、そして成し遂げた。そんな奴が“不良品”とは思えねえな。それに、盛りのつい
た発情期の猿であるおまえこそ女の子を満足にさせることが出来てねえんじゃね?無理矢理犯すのがそんなに楽しいか?気持ちいいと
思うか?んな訳ねえだろ、おまえみたいな猿は1人部屋の隅でシコって自己満に浸ってろよ、粗悪な粗チン野郎。」
だが提督から反論の声が上がることはなかった。四肢切断による大量出血で既に生き絶えていた。
時雨「粗悪な粗チン野郎って…女の子の前で言う言葉じゃないよね。」
夕立「女の子の時雨が言う言葉でもないっぽい。」
山城「……で、これどうすんの?“殺すな”って約束でしょ?」
隼斗「やべえ…満潮ちゃんのこと馬鹿にされたからついやっちまった。まあいいや、長門姉に帰ったら謝ろ〜っと。」
榛名「はあ…榛名も一緒に謝ります。止めれなかった榛名にも責任がありますから。」
山城「別に榛名まで謝ることないわよ。この馬鹿1人で怒られたらいいんだから。甘やかしちゃだめ。」
榛名「そう、でしょうか?」
山城「そうよ。榛名は優し過ぎなの。たまには厳しく躾ないとね。」
隼斗「あ、おい!余計な真似すんなよ山城!」
山城「…だぁから〜……何で私だけ呼び捨てなのよ!他の戦艦・空母のみんなと同じように山城“姉様”と…呼びなさいな!!」ガシッ
隼斗「へ?ちょ、わあああああ!」
山城「オラアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
隼斗「ぎゃあああああああああああ!!!!!!!!」
ドゴッ!!!!!!
怒鳴りながら隼斗に近づくと後ろへ回り込みガッシリ掴む。そしてそのまま、とても綺麗なフォームで、それでいてとても強烈なバッグドロップを決める。艦娘が自らの守護鬼をバッグドロップするなんて考えられないことが起きたことに江ノ島鎮守府の艦娘達は唖然とし開いた口が塞がらなかった。
時雨「山城、パンツ丸見え…(あれ?黒の下着って山城持ってたっけ?)」
電「……むうぅ…紐パンとか電よりセクシーなのです。(黒は隼斗の好きな色…山城さん、意識してるに違いないのです。)」
山城「…え?あ、ちょっと何見てんのよ!!////」
時雨「山城がその服装でバッグドロップなんかするからだよ。それに黒の紐パンなんて持ってたんだね。」
山城「えっ⁉︎ええぇ、まあ…扶桑姉様とお揃いしたのよ。」
時雨「ふ〜ん、そうなんだね。(隼斗が言ってたこと、ちゃっかり聞いてるんだね。でも、渡さないよ…)」フフフ
夕立「そんなことよりここの艦娘さん達の手当てが先っぽい!」
榛名「そうですね。隼斗はじきに起きるからいいとして先に皆さんの手当てをしましょう!」
その後、大本営から駆けつけた憲兵や艦娘達が到着して榛名達と一緒に手当てや瓦礫の片付け、死亡した提督の私室や執務室の捜索が始められた。艦娘達からの聴取により日常的に暴行が行われていたことが確認され、また満潮が長門の前で涙ながらに漏らした“売られる”という発言と提督の私室から艦娘売買に関するリストとその販売先及び顧客リストが発見されたことが決定的な証拠となり容疑者死亡のまま書類送検され、後日大本営で対策室が設置されることになった。
“人身売買”ならぬ“艦娘売買”という闇の取引が判明したことは大きな衝撃を与えることになり、軍部の艦娘人間派だけでなく民間の中から有志が集い“艦娘擁護派”“艦娘の人権を守る会”等、以前とは違う流れが小さく動き出し始めた。
その背景には勿論“喰種”という凶悪な暴力装置があるということは言うまでもない。
人間が“暴力”で艦娘を抑えつけ、喰種が“暴力”で艦娘を守る。
良くも悪くも隼斗の存在、行動、発言が少しずつこの世界を変えていた。