※この作品はR-18です。

喰種の住む鎮守府   作:ニーとくさん

22 / 28
第21章

「ちょっと待ちなさい隼斗!まだ始めたばかりでしょ⁉︎」

「やだよ!絶対やだ!そんなに喰えるわけねえだろうが!」

 

時雨「元気だねえ朝からあんなに走り回ってさ、ふわあぁ…うーん…」

夕立「時雨眠そう。昨日はちゃんと眠れてないっぽい?」

 

吹雪「時雨ちゃん大丈夫?今日遠征任務あるけど…」

時雨「あぁ、大丈夫だよ。苦手なブラックコーヒー飲んで目を覚ましてくるよ。」

 

眠たげに目を擦りながらカウンターへ行き間宮にお願いして珈琲を受け取る。その場で一口飲んで「うぅ…苦い。」と呟きながら席へと戻る時雨の前を加賀に引き摺られていく隼斗が横切っていく。先程の大声の正体は加賀と隼斗で、今は“普通”の食事が出来る練習を赤城と加賀、そして鳳翔の3人が担当している最中なのだ。

 

隼斗「時雨!珈琲飲んでないで助けてくれ!もうまじで無理なんだって!」

時雨「あはは…頑張ってね隼斗。」

 

加賀「喋る暇があるなら食べなさい。鳳翔さんの料理を食べないという選択肢はあなたにありません。」

隼斗「いやだー!い、電!電ぁーー!!!」

 

大声で助けを呼ぶも虚しく響くだけで結局椅子に座らされ赤城に料理を口の中へと押し込まれていく姿を見て

あれは隼斗にとって拷問だなと思いながら席へ座る。目の前ではそれを苦笑いで、でも少し不安な表情で見守る電がいた。

今すぐにでも側に行きたそうな感じ。練習が始まってからずっとソワソワして隼斗が心配で心配で仕方ないのだろう。

 

時雨「電、大丈夫かい?」

電「いや…その、凄く心配で落ち着かないのです…でも、これも隼斗の為だから電は我慢するのです。練習が終わったら電がいっぱい癒してあげようと思うのです。」

 

時雨「じゃあ電に任せて僕は遠征に行ってくるよ。待たせてごめんね。行こう夕立。」

夕立「ぽい!じゃあね電ちゃん、吹雪ちゃん、叢雲ちゃん!行ってきまーす!」

 

叢雲「いってらっしゃい。」

吹雪「気をつけてね!行ってらっしゃーい!」

 

隼斗「んっ⁉︎んんんん〜⁉︎」バンバンバン

鳳翔「ちょっと赤城ちゃんやり過ぎよ!隼斗、出しなさい!」

 

慌てて加賀がバケツを差し出すとその中に勢いよく吐き出していく。嗚咽混じりに何度も吐き出しては咳き込んで、また吐いての繰り返し。

それを見た電は流石に我慢出来ずに席を離れ隼斗の側へ行き背中をさすっていた。水を飲んでも落ち着かない様子で顔色も悪く全部出し尽くしたのか胃液を吐き続ける始末。

 

赤城「ご、ごめんなさい隼斗。半分まで食べれたから大丈夫と思ってペースを上げたんだけど…ごめんなさい、流石にやり過ぎたわ。」

隼斗「はあはあ…赤城姉、流石に…無理……あのペース、死ぬ…」

 

妖精「どいたどいたー。はやととくせいドリンクのおとおりだーい。」

妖精「てやんでい!これのんでしゃきーんとしろい!ばーろー!」

 

2人の妖精さんが艦娘達の隙間を縫うように飛んで赤い液体が入ったグラスを運んでくる。綺麗な赤色ではなくて赤黒い色をした液体。

隼斗特製とついてる時点でそういうことかとすぐに分かったその液体を隼斗は鷲掴みして一気に飲み干していく。

 

鳳翔「落ち着いた?」

隼斗「まあ…少しは……電、膝枕して。」

 

電「なのです。いーっぱい甘えていいのです。」

隼斗「はあ…落ち着く…」

 

食堂の一角に作られた座敷で電に膝枕をしてもらい横になる。

気持ち悪い。とにかく気持ち悪い。胃が、腸が、むしろお腹の中全てが疼くというか痙攣しているというか…

もう本当に気持ち悪くて堪らない。毎回こうだ。昔から人間社会に紛れる為の練習としてやっていたがいつもこうなる。

綾奈はすぐに食べれるようになったのに対して自分は全て吐き出していた。

 

ーー少し噛んですぐ飲み込めば食べれるよ。頑張ろうね、お兄ちゃん♪ーー

 

隼斗「……(それが出来りゃ苦労しねえ…綾奈、お前すげえよ…)」

鳳翔「まだ始めて30分だけど今日の練習はこれで終わりにしましょう。電ちゃん、隼斗のことお願いしてもいいかしら?」

 

電「任せてください。電が側についてるのです。」

鳳翔「ありがとう。ではお願いしますね。2人は片付けを手伝ってくれる?」

 

赤城「お任せください!」

加賀「鳳翔さんのお手伝いなら喜んでします。」

 

隼斗「……はあ、しんどい。」

叢雲「大丈夫なの?結構吐いてたけど…て、きゃっ!」

 

隼斗の頭を撫でていると突然両肩を掴まれそのまま引き寄せられがっちりと抱き締められる。それはいいが首元に顔を埋めているのが問題であった。なんせ今日も真夏日で気温30℃の猛暑。室内でクーラー効かせているとはいえ多少なりとも汗はかく、そして今自分も汗をかいているのだ。そんな時に嗅がれるのは恥ずかしいし何より臭うに決まってる。今すぐにでも離して欲しいがこれは離す気がない…

 

叢雲「ちょ、ちょっと!私今汗かいてるから嗅がないでよね⁉︎」

隼斗「何で?いつもと同じいい匂いしかしねえよ…叢雲の匂い、大好き。」

 

叢雲「なっ⁉︎もう…馬鹿//じゃあ、気が済むまで私の匂い嗅いでいなさい///」

隼斗「……ん、そうする。電はあとで嗅ぐから待っててね。」

 

電「むー、電が一番最初にして欲しかったのです。」

吹雪「相変わらずの変態っぷりだねお兄ちゃん。大丈夫そうで良かった♪」

 

川内「うーん、お楽しみ中だから邪魔しないほうがいいかな?」

電「あ、川内さん。それに神通さんと那珂ちゃんさん、どうしたのですか?」

 

隼斗・叢雲「……?」

 

声のする方に顔を向けると苦笑いした川内三姉妹が立ってこちらを見ていた。まあだからといって叢雲の匂いを嗅ぐ事をやめる気など更々無い隼斗は3人を見ながらずっと叢雲の匂いを嗅ぎ続ける。叢雲は満更でもなさそうだ。

 

川内「いやほら、ちゃんと挨拶出来てなかったから今日しようと思ってね。それで来たんだけど、お楽しみ中だから今はやめておくよ。」

隼斗「そうだった。俺がちょいと暴走しちゃったから出来てねえ。叢雲、ごめん横に座って。よっと…んしょ、ごめんお待たせ。」

 

川内「なんかごめんね。じゃあえっと、早速だけどちゃんと自己紹介するね。私は川内。夜戦大好きなんだ!もし一緒にすることあったらその時は私の強さ見せてあげるよ!」

神通「私は神通と申します。以後、お見知り置きを。そして隣にいるのが妹の那珂です。」

 

那珂「」ペコリ

隼斗「んーー…」

 

那珂「……////」

川内「どしたの?那珂の顔に何かついてる?」

 

隼斗「いや…傷は治ってるし声帯にも異常はなかったって聞いててさ。でも、まだ声出ないんだな。俺もまだ人間の飯が喰えないからさ、一緒に頑張ろう。俺は飯が喰えるように、那珂ちゃんは声が出るように、少しずつやってこうね。」

那珂「ヽ(´▽`)/」

 

そう言うと立ち上がり腕を伸ばして那珂の頭を撫でる。突然手を伸ばしたことに以前の記憶がフラッシュバックして身構える那珂だったが優しく撫でられたことに驚いて固まってしまう。だがそれもすぐに満遍の笑み変わり、そして涙を流していた。

今まで男性に頭を撫でられたことはあるがそれらは全て思い出したくない行為、記憶しかなかった。とても汚らわしく、自分達を“道具”として扱う時しかしない行為であり、那珂を含む元江ノ島メンバーにとって忌むべき行為だった。

 

だが隼斗に撫でられている今はそういう感情が起きない。手から伝わる温もりが自分の身体に、心に流れてくるのを感じる。

本当はこんなにも温かく、優しいものなんだと初めて思えた瞬間だった。

 

以前に満潮が照れながら、だがとても嬉しそうに言ってたことはこういうことだったんだ。

毎日して欲しい。挨拶の時も、頑張った時も、泣いた時も、寝る時も、起きた時も…ずっとして欲しい。

そう考えていたら無意識に隼斗に抱きついてしまった。

 

隼斗「いきなりどうしたんだよ。まあ、いいけど…別に泣く程のことでもねえだろうに。」

叢雲「……泣く程のことよ。私達にとってはね。」

 

電「なのです。隼斗の温もりや優しいに電達はとても救われてるのです。」

隼斗「そっか、そう言ってもらえて嬉しいよ。ありがとな。」

 

そう言って電の頭も撫でた後、隼斗は煙草を吸いに中庭へ。それを見送った電達はその場に残り再び話に花を咲かすのだった。

 

 

場所は変わり隼斗は1人中庭のベンチに座り煙草を吸いながらあるものを見ていた。

それは中庭の真ん中にある1本の木。青々と葉を生やした姿だったがそれが桜の木だと分かった。

分かったというか似たような景色を知っているから勝手にそう思っているだけなのだが。

以前は何も気にならなかったがここ最近は訳もなくその木を見ることが多い気がする。

 

「おーい、はーやーとー!何してんの?」

 

誰だと思いながら振り返るとこちらへ大きく手を振りながら明石が走ってきてそのままの勢いで抱きついてきた。危うく吹き飛ばされそうになったところ何とか持ち堪えるものの、相変わらず艦娘の力は強いなと改めて思い知らされる。

 

隼斗「痛いなあ…もう何でタックルかましてくんのさ。」

明石「いやいや〜、なんか珍しく哀愁漂っていたからお姉さんが元気出させてやろうと思ってね♪何考えてたのさ。」

 

隼斗「いや、なんか最近よくこの木を見ることが多くて。これって桜の木だよね?」

明石「そうだよ。凄いね、何で分かったの?」

 

隼斗「似たような場所を知ってるからひょっとしてと思って。そっかあ…桜の木か。尚更懐かしくなってきたなあ…」

明石「何か良い思い出でも思いだしたの?」

 

隼斗「んー、まあそんな感じかな。花見もしたし、姉さんと喧嘩してボコボコにされて家出した時もそこで野宿したりさ。いつ死ぬか分からない世界だったけど、そんな楽しい日もあったなあ…ってね。」

明石「そっか…でもさ、ここでの暮らしも楽しいでしょ?」

 

隼斗「ん?そりゃ楽しいに決まってんじゃん。こうしてみんなと会えたんだ。出会い方が違ってれば敵同士だったけどね。」

明石「うわあ、笑えないわそれ。味方で良かった良かった♪てかお姉さんが居たんだね。さっきボコボコにされたって言ってたけど、もしかして隼斗より強いの?それとも抵抗しなかっただけとか?」

 

そう聞いた時の隼斗は青ざめた顔で「はあ⁉︎」と言っては顔を何度も横に振って否定していた。

 

隼斗「強いに決まってんだろ!何度半殺しにされたことか…いやまじで死ぬと思ったこともあるけど。お前らは俺のことを強いと思うかもしんねえけどあくまでこの世界での話だからな?元居た世界じゃ俺みたいな奴は腐る程居るから大したことないのよ。俺より強い奴も当然腐る程居るからね?」

明石「いやいや、いやいやいや!隼斗より強い喰種とか想像つかないって!一体どうなってんのよあなたが居た世界わ!」

 

隼斗「いや、それを俺に言われても…そういう世界ですとしか…」

明石「そ、それもそうね。でも本当に想像つかないわ。隼斗より強い喰種か…物凄く興味あるなぁ…」

 

「う〜ん…」と口元に手を当てて考える明石を見つつ再び煙草に火をつけてその場に座り込む。

正直自分も興味がある。自分より強い喰種がどれだけ存在しているのか、そして本当に強いのかどうか知りたい。

一部知ってる奴もいる、でもやっぱり世界は広くてその分だけ喰種もいる訳だ。

 

“井の中の蛙、大海を知らず”

 

俺はその“蛙“でしかない。だからもっと世界を知り、自分の立ち位置を知り、その上でもっと強い喰種を喰らい続けていれば俺は…

 

明石「そっか…覗けばいいんだ。そう、その手があるじゃん!」

隼斗「……?」

 

何か閃いた表情でこちらをジッと見つめてくる。ブツブツと独り言を呟きながらメモを取り出して何か書いてるようだ。

覗くと言っていたが何のことやら。

 

ただ、明石の目がやけに怖く感じるのは否めないのだが…なんか嫌な予感がする。

 

明石「隼斗、頭の中見せてくれる?」

隼斗「頭の中?いいよ、って…頭の中⁉︎」

 

明石「そうそう、少しむず痒いかもしれないけど大丈夫だから。私を信じて。」

隼斗「断るに決まってんだろ!頭かち割って何する気だよ⁉︎はっ…!まさか覗くって、つまりそういう…」

 

明石「あ、違う違う。そういうことじゃなくて隼斗の“記憶”を見せて欲しいの。記憶をデータ化して仮想空間に具現化する装置を思いついたのよ。それがあれば隼斗より強い喰種をこの目で見れるじゃない?」

隼斗「ええぇ…何それ怖くない?てか俺のプライバシーガン無視じゃん。」

 

明石「大丈夫。ピンポイントで探し当てるから。私と妖精さんの技術舐めてもらっちゃ困るわ。早速作業に取り掛かるから、完成したら協力してよね?すぐに呼び出すから!じゃあねー!」

隼斗「……(だめだ、不安しかねえ…記憶をデータ化って、何でもありなのかこの世界わ。やだなあ…怖い…)」

 

再び1人になった隼斗は暫く木にもたれかかり空を眺めていた。

明石が作ろうとしている“記憶を具現化する装置”に対して半分怖く、半分楽しみといった心境だった。

もしそれが実現して仮想世界の中だとしても再びみんなの姿が見れるなら俺は何て言おうか。

やっぱり最初は謝るところからだろうか。言ったところで何の返事もないだろうけど…

暫く考えていると再び声をかけられたので顔を上げる。

 

朝潮「難しい顔してどうしたんですか?何か悩み事でしょうか?」

隼斗「んあ?朝潮ちゃんか…んー、悩みじゃなくて考え事かな。」

 

朝潮「そうなんですね!では、この朝潮が一緒に考えます!隣座ってもいいですか?」

隼斗「う、うん。いいけど、そんな大したことでもないよ?」

 

朝潮は「任せてください!」と元気な声と笑顔で応えて隣に座るとひょこっと隼斗の顔を覗く。

首を若干傾げた感じで見てくるところが可愛い。可愛いよ、朝潮ちゃん。

 

朝潮「何について考えていたんですか?やはり、食事のことですか?」

隼斗「いやあ、実は…」

 

先程の明石との会話を説明すると朝潮も興味津々の様子で聞いていた。

以前から聞いていた深海棲艦と同じく人類に敵対する存在、と同時に艦娘を保護する存在でもある“喰種”。

残虐非道で暴虐の限りを尽くすとまで言われていたが、いざ会ってみると一概にそうとは言えないという思いだった。

誰よりも強く、優しく、家族想いな方だと今はそう思っている。

自分の目で見て、耳で聞いて、そう判断した。特に満潮が隼斗の話をする時はとても嬉しそうにしていることから間違いない。

だからもっと隼斗のことが知りたいと興味が湧いてくる。

 

隼斗「でも、俺達喰種のことを知ってもらう良い機会だとは思う。俺達がどんな生活をしていたのか、どんな扱いをされていたのか、どうやって死んでいったのか…失いながら、奪われながら生きるしかない糞ったれた腐った世界を知ってもらえたら少しは人間も考えてくれるんじゃないかなって。奪われたのは俺達も一緒だと、被害者面して“正義”を掲げる人間共に分からせるにはもってこいの話だもんな。そうすりゃあ喰種と人間は分かり合える。」

 

朝潮「隼斗さんって本当は“人間”と仲良くなりたいと思っているんですね。」

 

その言葉でハッとなり、自分が何を口にしたのか気づいてしまった。

 

それはある日を境に完全に否定し、捨てたもの。でも思い出すということは完全に捨てきれていなかったということか。

今の生活を考えるとそういうことなのかもしれない。

 

隼斗「……昔はそう思ってた。綾奈と約束したんだ。いつか人間の友達も作って、喰種も人間もみんな仲良く暮らす世界を作ろうって。自分達が世界を変えるんだって。そんな夢を持ってた…でも、そうはならなかった。夢は砕かれた。俺達は所詮化物で、この世から消え去るべき存在でしかなかった、この世で最も憎まれる“悪”でしかなかった。生きてちゃいけない存在だったんだよ…俺達は……」

 

話せば話す程、色んな感情が込み上げてくる。怒りと憎しみ、悔しさも悲しみも、次々と溢れてきて胸が苦しかった。

何度か人間に対して友好的に接触したことはあったが失敗だらけだった。1人を除いて。

その度に辛くなって、悲しくなって、何度も泣いていたのを覚えてる。

もう…かなり昔の出来事だが…

今の俺には憎悪しか残ってない。

 

朝潮「そんなことありません!生きてちゃいけないなんて…そんなこと言わないでください!」

隼斗「あ、朝潮ちゃん?なんで怒ってんの?」

 

朝潮「怒るに決まってるじゃないですか!隼斗さんは私達に言ってくれましたよね?お前達は兵器でも道具でもないって。お前達は人間だって言ってくれましたよね⁉︎その言葉でどれだけ救われたか…どれだけ嬉しかったことか…!私達を救ってくれた方がそんな悲しいこと言わないでください!私達に生きる希望を与えてくれた方がそんなこと言わないでください!」

 

いきなり立ち上がったかと思えば突然怒り出した朝潮にビクッとしてしまうも、何故怒っているのかいまいち理解していない。

艦娘に対してのことではないのに何で?という感じ。しかもほっぺ膨らませて怒るとかじゃなくて割とガチで怒ってる。

これまたどうしたもんかと首を傾げていると朝潮は再び口を開く。

 

朝潮「あなたは私達の希望なんです!そんな方が自分の存在を否定するようなことを言って欲しくないんです!あなたのことを誰も否定しません、生きてちゃいけないなんて思っていません!もし人間があなたの存在を否定するなら、私がそれを否定します。あなたが私達を救い、守ってくれるように、私達があなたを守ります!」

 

隼斗「……朝潮ちゃん…」

 

あー…だから怒ってたんだ。

 

ーー隼斗、生きな。どんなに辛くても生きてりゃいつかは良いことぐらいあるからさーー

 

ーー生きろと言われたでしょ⁉︎託された思いと命を簡単に捨てないで!私達の分まで生きて、前に進みなさい!ーー

 

ーーやぁねえ〜ほんと。最期はイイ男の胸で死にたかったのにねえ…でも、あんたの為に死ぬのも悪くないわ。生き伸びるのよーー

 

ーーお兄ちゃん。私が死んでもお兄ちゃんは死なないでね。私の分まで生きて、幸せになってねーー

 

…そうだ。そうだな…生きてちゃいけないとか言ったら姉さんや妹、仲間達の想いを無駄にしてしまう。

皆の想いも命も全部背負って前に進むと誓ったじゃねえか。ちょっと思い出話しただけで弱音吐くとか馬鹿か俺わ。

こんなの聞かれたらまた姉さんに半ごろ、いや確実に殺されるな。

 

ーー…ったく、何ですぐそうやって弱音吐くかね?あたしを超えたきゃまず精神面鍛えな、この虫けらが!ーー

 

ですよね〜…絶対そう言ってからボコボコにしてくるよねぇ…

ごめんね。もう弱音も泣き言も言わないよ。

 

隼斗「…ごめん。ちょっと昔のこと思い出したら弱音吐いちゃって…でも、もう大丈夫。ありがとう、朝潮ちゃん。これお礼ね。」

朝潮「ヘ?え、えええええ⁉︎////」

 

そう言って立ち上がった後、朝潮の前髪をかき揚げて額に軽くキスをする。

隼斗にとってはスキンシップのつもりでも朝潮にとってはそういう訳ではない。突然のことで口をぱくぱくさせながら頬が紅潮していく。

顔が熱い。それに身体も熱くなってきた。恥ずかしくて今にも爆発しそうなぐらい心臓の鼓動が早くなっている。

 

朝潮「い、いいいい今、き、きき、キスをしました⁉︎」

隼斗「うん、だね。お礼って言ったじゃん。」

 

朝潮「……///電さんがいるのに、いいんですか?///」

隼斗「キスぐらい好きな人にはするでしょ。」

 

朝潮「す、すすす好き⁉︎////」ズキューーン

隼斗「え、いやだからそうじゃないとしないって。好きだよ朝潮のこと。」

 

朝潮「あわあわ//////(まさか隼斗さんが私に…これは一目惚れというものでしょうか⁉︎この朝潮、今まさに愛の告白をされたんですね////)」

隼斗「……?(あ、そういや今日吹雪の畑仕事手伝う日じゃん。そろそろ戻んなきゃ。)」

 

朝潮「隼斗さん、不束者ですがよろし…っていない⁉︎え、あ、ちょ!隼斗さんどこ行くんですか⁉︎」

隼斗「ん?吹雪の手伝いしなきゃいけないの思い出したから行ってくる。朝潮ちゃん、ほんとありがとね!」

 

そう言って食堂ヘ戻る隼斗の背中を朝潮は見送ることしか出来なかった。

ちゃんと返事をしていないことにもやもやするが今は仕方ない。それに一緒住んでいるのだからすぐ伝えることが出来るじゃないか。

そうだ、その時こそは私からも愛の告白を…///

 

霞「朝潮姉さん、こんなとこで何してるの?」

満潮「先に食堂行って席取っておくって言ってたじゃない。てか顔赤くない?」

 

朝潮「愛の…愛の告白を、隼斗さんからされました///」

霞・満潮「………は?」

 

朝潮「隼斗さん、しゅき♡大しゅき♡」

霞「……(あ、だめだ。これ絶対勘違いしてるやつだ。)」

 

満潮「な、何で朝潮姉さんが告白されるのよ!私の方が隼斗さんへの想いが大きくて強いのにぃぃぃ!!」

霞「……(あ、こっちもだめだ。勘違いに勘違いしてる。)」

 

朝潮「ごめんね満潮。あなたが隼斗さんのこと好きなの知ってるけど…私が選ばれちゃった///」

満潮「ぜっっったい認めないから!見てなさい!ここから私が覆すんだからね!!」

 

ギャー ギャー

 

霞「……今日も平和ね。先に行ってオムライス食べようかしら。」

 

ここに朝潮と満潮の隼斗を巡る争奪戦が勃発したのだが、後に朝潮の盛大な勘違いだと判明し終息することになる。

尚、朝潮は恥ずかしさで顔を真っ赤にさせて何故か空のゴミ箱へ入ろうとして霞と満潮に全力で止められ、隼斗は紛らわしいことをしたとして電から説教された模様。

 

朝潮「離して!今日から私の部屋はここに決めたんです!ここが新居なんです!」

満潮「大丈夫だから!私も勘違いに勘違いしてたからお互い様だってば!だから落ち着いてよ朝潮姉さん!」

霞「勘違いなんて誰にでもあるからそこまで気にしなくてもいいのよ!いいから落ち着きなさいな!」

 

電「隼斗は誰にでも好きって言い過ぎなのです。言うなとは言いませんけど、勘違いさせるようなことはしちゃだめなのです!」

隼斗「ごめんなさい。許してください、何でもしますから。」

電「……ん?今何でもしますって言いました?言いましたよね?じゃあ…今日は電と一緒に寝てください。それで許します。」

隼斗「え、あ…はい。(それで許してくれる電まじ天使。大事にしなきゃ…)」

電「いっぱいお仕置きするので覚悟しておくのです♡」

隼斗「……あ、ふ〜ん。(…違った、サキュバスだった…)」

 

食糧問題から食事問題。その次は“勘違いさせ”問題と次から次へと起きる問題に暫く鎮守府と艦娘達は振り回されることになる。

当の本人は特に気にすることもなく今日も脳天気に過ごすのであった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。