だが、逃した憲兵達が増援を引き連れてくるのは時間の問題であり、完全に救出したとは言えない状況であった。
そんな中、再び医務室で目覚める隼斗。
そこでこの状況とは全く関係のない、自分の新たな一面に気づくことになる。
……本当に、全く関係ないことに…
ーーー医務室ーーー
隼斗「……ん…んぁ。」
電「あ、おはようなのです。大丈夫ですか、隼斗?」
隼斗「うーーん…なんか、心臓を貫かれたような気が…」
自分の胸に手を当ててみるも当然そんな傷はない。いやあったら俺死んでるやん。
長門「起きたようだな。隼斗?と呼んでいいのか?」
隼斗「いいよ。つか、あんた食堂で目が合った艦娘か。美人だなーと思って
ちょっと見惚れてたから覚えてる。」
長門「なっ⁉︎いきなり何を言っているんだお前わ!」
陸奥「あらあら、でも満更でもなさそうだけど?」
長門「こ、これはだな…い、いきなりあんなことを言われて、その…」
陸奥「長門ったら、素直に喜べば良いのに♪」
すげえ…艦娘ってモデルさんもいんだな。美人美少女の集まりか…どうなってんの……
……ギュッ
隼斗「……?電、どした?」
電「い、電もおっきくなったら長門さんや陸奥さんみたいな大人の女性になれるのです!///」
隼斗「…あはは!そうだな、お前ならなれるだろうな。んで、いきなりだけど…
電ちょい背中向けて立ってみ?」
電「……?こう、ですか?」
隼斗「うん、そんな感じ…よいしょっと!ふうぅ…あぁ〜癒される〜」
電「はわわわ////は、恥ずかしいのです////」
俺は上体を起こし、背中を向けた電の両脇を掴み抱きかかえてそのまま 膝に座らせ電の頭に顎を乗せる。
そして腕は電の体の前に出して自分側に抱き寄せる。
いやー……素晴らしいほど癒される…しかも電から良い匂いが…
はっ⁉︎まさか、俺は…
隼斗「俺は…“ロリコン”か?」
これが後に、艦娘達の間で語り継がれる“ロリコン喰種”の誕生である。
山城「ロリコンよ。お姉様、ロリコンがいるわ。」
扶桑「ええ、ほんと…ロリコンだわ。」
隼斗「やめろ‼︎そんな哀れみの目で見るな‼︎」
電「隼斗は…電のこと、嫌いですか?」ウルウル
顔は見えないけど、なんか…今にも泣きそうな感じが…
隼人「…はうっ⁉︎…ば、馬鹿。好きだよ!電のこと大好き‼︎」
あ、言っちゃった。いや、嘘じゃないけど…確かに最初目覚めて電を見た時になんか、こう…
うん…一目惚れというかなんというか…あぁ、好きになっちゃった///
叢雲「ロリコン、ロリコンうるさいわね。あら隼斗、やっぱりロリコンだったのね。
あんた、電が酷いことされたの知ってるでしょ?変なことしたらぶっ殺すわよ?」
隼斗「………はい。(…恐いぃぃぃぃ‼︎叢雲の目が恐い。あれマジなやつだ…‼︎)」
電「〜〜〜♪」
扶桑「電ちゃん、とても幸せそうね。」
山城「そうですね、お姉様。安心しました。」
長門「…ゴホン、あー…隼斗、お前に言わなければならない事がある。」
隼斗「……?ロリコンは死罪とか言うなよ?」
長門「違うわ‼︎…全く、ゴホンゴホン…隼斗、お前には感謝している。ありがとう。」
そう言うと長門は深々と頭を下げる。
隣に立っている陸奥は微笑みながら小さく手を振ってくる。
いやーとっても美人なお姉様だ。とりあえず、手を振り返しておこう。つか、人間に「ありがとう」と言われると変な感じだな。
喰種と人間は敵対しているのに…以前なら考えられないよな。
でも、こいつらを救えて嬉しいと思ってるのも事実なんだよ。
隼斗「んや、いいよ。それにまだ完全に救えてないしさ。逃した奴等が増援連れてくるかもしれないから…
そんなことより、名前聞いてなかった。なんて呼んだらいい?」
長門「あぁ、自己紹介がまだだったな。私は長門。そして隣にいるのが…」
陸奥「私は陸奥よ。よろしくね♪」
ウインクされた。惚れました………でも電には勝てないな。
既に俺は、電に心を奪われているからな!
大淀『長門さん、大変です‼︎憲兵が…憲兵隊が鎮守府正面に展開しています‼︎』
突然、警報と共に鎮守府内に声が響く。
どうやら餌を連れてきたらしい。当分食料には困らないなー
今度は確実に1人残らず殺さないと、ね?
叢雲「来たわね。隼斗、やるんでしょ?」
隼斗「さて、と…行くかね。」
再び電を抱きかかえ横に座らせ、自分はベッドから起き上がる。
長門「……行くのか?」
隼斗「人間は敵だ。お前ら艦娘が体張って守る価値も無いんだよ。死んで当然、殺されて当然だろ。
それともなにか?虐げられ、願いも希望も踏みにじった人間の為にまだ戦うか?
人間から解放され自由を手に入れたのに、また逆戻りしたいのか?」
俺は思ったことをストレートに伝えた。
別に脅したり、洗脳したりしてこちらに引き込もうてわけじゃない。
ただ、長門の表情を見ると悩んでるように見えた。「艦娘としての使命」に従うべきか、「己の意思」に従うべきかで…
まあこいつらは人類の味方だからね、色々思うところはあるんだろうけど…俺からすると馬鹿馬鹿しくてたまんない。
だってそうじゃん。使命を全うした結果、送られるのは罵声と暴力だけ。挙句、人間扱いすると言い出したかと思えば
性欲の捌け口にする。結局道具扱いじゃん?人間として見る気が、接する気がないんだよ。
だったら使命なんて捨てて、己の意思に従い自由に生きればいい。
ここに艦娘を虐げるやつはいない。お前達は艦娘として、1人の“人間”として生きることが出来る。
誰にも邪魔されず、踏み躙られることもなく。
長門「…私は、艦娘だ。深海棲艦と戦い、人類を守ることが使命であると今でも思っているし今後も人類の為に戦うつもりだ。
だがもう、私達の仲間を大事にしない者や艦娘を只の兵器、道具としか見ない者の元で戦う気はない。そこに私達が求めて
いるものがないからな。隼斗と電の仲睦まじい姿を見て確信した。お前の元で、私は戦いたい。たとえ人外の者だとしても
私を、私達を初めて“人間”として認めてくれたのだからな。これは、皆の総意だ。」
隼斗「じゃあ、これから仲間であり家族だな。俺がお前ら守ってやるよ。
喰種が人間を家族と呼ぶのも可笑しな話だけど、お前等なら…いいかな。」
俺の杞憂だったみたい。使命と己の意思どちらを取るかではなく、誰の元でどちらも果たせるかを考えてただけなんだな。
こいつらから使命を奪えば、ある意味俺もこいつらを踏み躙っていることにもなる…忌々しい人間と同じになるとこだったわ。
危ない危ない。
長門「…家族、か。そう言われるのも初めてだな。」
陸奥「うふふ、なら私は隼斗のお姉さんってことになるわね♪
隼斗、甘えたくなったらお姉さんに甘えてもいいのよ?」
陸奥は隼斗の前に行き、前かがみで言う。
その、あぁ…綺麗で、セクシーで……あぁ、目が一点集中してしまう。ガン見してしまう。
くっ⁉︎俺には電が…ええい!静まれ我が煩悩よ!
電「あ、だめなのです!隼斗は電のものなのですー!」
隼斗「うおっ⁉︎いきなり飛びつくな危ねえだろ!」
陸奥「あらあら、可愛い妹にお姉さん嫉妬されちゃった♪」
微笑みながら電の頭を撫でる。さっきまで頬を膨らませていた電も陸奥に撫でられて嬉しそうにしている。
可愛い。あぁ…守りたい、この笑顔。
叢雲「電に抱きつかれて喜んでる場合じゃないでしょ。さっさと表にいる憲兵達をどうにかしなさいよ、この馬鹿兄貴!」ドンッ
隼斗「痛ってぇ!叢雲お前、いきなり蹴んじゃなねえよ!」
電の笑顔に見惚れていたら叢雲に思いっきり蹴られた。なんなの?
なんでこいつはいつも「いきなり」殴ったり蹴ったりすんの?地味に痛いんだよ、勘弁してよぉ…
もう、イライラしてきた!
叢雲「なによ、なんか文句あんの馬鹿兄貴?」
隼斗「あああああ!こんの…糞生意気な妹があああ!憲兵なんか瞬殺してやるよ!」
叢雲「なら正門まで案内してあげるわ。どうせ分かんないでしょ?私についてきなさい、馬鹿兄貴。」
隼斗「」ワナワナワナワナ ( 赫眼化)
電「はわわ、隼斗が“あの時”の眼になったのです!お、落ち着くのですー!」
隼斗と叢雲は言い合いながら、電は隼斗に抱っこされたまま医務室を出て行く。
長門「はあぁ…全く、とんだ弟ができたものだな。かなり手を焼きそうだ。」フフッ
陸奥「そうね、私達がしっかりしないとね♪」
扶桑「これから毎日楽しくなるわね。」
山城「そうですね、お姉様。でも…お姉様を泣かせたり傷つけたら主砲で吹き飛ばしてやりますわ!」
医務室に再び笑い声が響く。
長門「(こんなに笑ったのは初めてだ。今まで生きてきた中で一番嬉しく思う。
こんな日がずっと続けばいいな……いや、続けるんだ。以前の様に願うだけではなく、行動に起こすんだ。
電のように一生癒えない傷を負うこともあるかもしれない…だが、それでも私達の思いや願いを伝え続けよう…
いつか、艦娘が人間として受け入れてもらえた時、必ずこの戦況も世界も変わるはずだ!)」
隼斗「(あいつ等は大事な家族だ。同胞の中にもあいつ等のように「人間として生きたい、接して欲しい」という願いを
持っていたやつもいた。………艦娘の願いは同胞の願いでもある。あの世界では叶うこともなく、叶えてやれることもなく
死んだ。だから、今度こそ叶えてやる。艦娘が人間として受け入れてもらえるように、生きていけるように。
その為に必要なもの、それは“力”だ。人間共が抗えない圧倒的な暴力と恐怖、絶望をもってねじ伏せ、従わせ、支配する。
やつらは何言っても聞く耳を持たない、御都合主義だ。だからこその“力”だ、“暴力”だ。
受け入れない人間は殺していこう…従う人間は条件付きで生かしてやろう…
いつか、それが果たされた時、必ずこの世界は変わる!)」