怒涛の1日が過ぎる中、月明かりが差し込む部屋で喰種と艦娘が口づけを交わし思いを伝え合う。
誰も知らない2人だけの秘密。
再び眠りにつき、幸せな夢を見る。
そして、また騒々しい怒涛の1日が始まる。
ーーー医務室ーーー
〜0700〜
カーテンの隙間から差し込む暖かい光。
それに気づいて起きる、1人の艦娘。小さく伸びをして起き上がり窓を開ける。
吹き込んでくる風が心地よく感じる。
小鳥のさえずりが聞こえ、風に吹かれ木々が揺れる音、雲一つない綺麗な青空。こんな1日の迎え方は初めてだ。
長門「いい朝だ。今日から新たな1日、生活が始まるのだな…」
どんな生活になるのか楽しみでしょうがない、落ち着かない。海域開放や哨戒任務、遠征などこれまでと変わらないこともあるだろう、もしかするとこれまでとは違う困難や壁にぶつかることもあるかもしれん…だが、それも乗り越えることが出来る気がする。心強い味方が、これから手をやきそうな“弟”がいるのだからな。
人外の化物が艦娘を大事に思い、我々の思いと願いを守る為に、叶える為に戦う。そして、我々を1人の人間として認め接してくれる。家族と呼んでくれる。こんな優しい化物がいるとはな…
長門「全く…なんて顔して寝ているんだお前わ。」
隼斗「……zzz…いなずまぁ…zzz…」
ベッドに近寄り様子を見に行くと、電を抱きしめてニヤけた寝顔をしている隼斗が真っ先に目に入る。次に映るのは幸せそうな寝顔をした電、同じような寝顔をした暁・響・雷達。昨日の不安に満ちた表情が嘘のようだ。それは私も同じなんだろうがな。
微笑みながら彼等を見ていると医務室の扉が開くので視線を移す。
鳳翔「あら、おはようございます長門さん。」
長門「おはよう、鳳翔。いつも早起きだな。こんな時ぐらいゆっくり寝ててもバチは当たらないぞ」
鳳翔「確かに…二度寝でもしようかしら?」クスクス
長門「いいかもしれんな。もう、あの頃のように怒鳴りつける者はいない。私達の思うように、生きたいようにできる
ところになったのだからな。」
再びベッドで寝ている隼斗に視線を戻す。
相変わらずニヤけた寝顔のままだ。とても化物には見えないな、全く…だらしない弟だ。
鳳翔「ふふふ、こう見ると化物には見えないですね。」クスクス
長門「あぁ、私も同じ事を思っていた。こんなニヤけた寝顔をした化物は初めて見たぞ。」クスクス
鳳翔「本当ですね。あ、そうそう。今日は間宮さんと一緒に早起きしてみんなに栄養満点でお腹一杯になる朝御飯を
用意しているんです。もう、あんな食事はしなくてもいいですからね。」
長門「本当か⁉︎それはいいな、楽しみだ!」
鳳翔「ええ、本当ですよ♪なので、皆さんが起きたら食堂へ来るように伝えてくださいね♪」
そう言うと鳳翔は医務室を出て行く。
少しして陸奥と大淀が起きたので先程の事を伝えると2人とも喜んで部屋を出て行く。陸奥、今日は珍しく寝起きがいいな…
いつもは無愛想で機嫌が悪いのだが、余程嬉しかったんだろうな。
む…次は金剛か。おい……お前もなんて顔をしているんだ…
金剛「あー……もう朝デスカ〜…」
長門「……あぁ、そうだ。(半目でだらしなく涎を垂らしている…金剛、その顔はマズイ。あぁ…鼻提灯が…!)」
普段の彼女からは想像出来ない姿だ。金剛…なかなか面白いものを朝からありがとう。
笑いを堪えていると皆起き出したので食堂へ行くように伝える。隼斗達も起きたようで既にベッドから降りていた。
暁「おはよう電!もう大丈夫なの?」
雷「おはよう!何かあったらすぐに私に言うのよ?」
響「私達がいるんだ。電、安心して私達に甘えるんだよ?」
電「みんな…ありがとうなのです!」
良かった。電にいつもの笑顔が再び戻ったようだ。それにしても、第六駆逐隊は皆仲が良くていい事だ。
隼斗「……ふあぁ…姉ちゃん、おはよー。喉乾いたぁ…水〜…。」
暁響雷電「……⁉︎」
長門「あぁ、おはよう。水ならそこに……ん?姉ちゃん?」
隼斗「あ〜…あったねー姉ちゃんありが、と………姉ちゃん?」
長門「ん?」
隼斗「ん?」
……………あ、違った。長門だったわ。
隼斗「ごめん間違えた。長門だったわ…寝ぼけてんなあ…。」
長門「ふふ、そうだな。まあ…別に私はそう呼ばれても構わんぞ?姉であることには間違いないのだからな。」クスクス
隼斗「んーー…へいへい…」
その後みんなで食堂に向かう。長門さんは隼斗の隣で歩きながら「もう一度姉ちゃんって言ってもいいんだぞ?」と嬉しそうにずっと言っていた。隼斗は「へいへい」と「気ぃ向いたら…」の2つしか言ってなかったけど…でも、どこか隼斗も嬉しそうだった。
雷「長門さん、隼斗に姉ちゃんって言われてからずっとあの調子ね。」
響「きっと嬉しいんだろうね。陸奥さんがいるけど、私達含めて艦娘には兄や弟はいないからね。」
暁「確かに。どんな感じなのかしら?」
電「きっと楽しいのです!それに、隼斗は優しいからとても安心できると思うのです♪」
暁響雷「電にとっては兄じゃなくて、彼氏だもんね。」
電「はわわ///み、みんなしていじめてくるのですー!」
顔を赤くして暁達を追いかける電。昨日の夜のことを思い出す…悪夢から覚めた時のことを、隼斗に抱かれて寝ていたこと、それだけでも幸せなのに…隼斗からキスをされた。とても嬉しくて、幸せで…もっと求めてしまった。
愛してると伝えると、「俺も」と答えてくれた。嬉しくて、恥ずかしくて…と、とても熱くなってきたのです////
長門「む…こら、廊下を走るな!危ないぞ!」
隼斗「姉ちゃん声でけえ…頭痛い。」
長門「むむっ⁉︎隼斗、もっと聞こえるように言ってくれ‼︎さあ、もう一度だ‼︎」
隼斗「……めんどくせえ。あ、ちびっこ供ー食堂こっちだろ。置いてくぞー」
暁響雷電「わー!待ってー!」
長門「待て隼斗!まだ姉ちゃんと呼んでないぞ!」
再び「へいへい」としか言わない隼斗の隣で何度も呼びかける長門。
その後ろを仲良く手を繋いで歩く第六駆逐隊。賑やかな声が、やりとりが廊下に響く。
こんな1日の始まり方は本当に、初めてだ。
ーーー食堂ーーー
吹雪「あ、来た来た。長門さーん!みんな待ってますよー!」
夕立「吹雪ちゃん、朝から元気っぽい!夕立も負けてられないっぽい!」
時雨「夕立、別に声の大きさで競わなくても大丈夫だよ?」
食堂の入口で待っていた3人と合流、挨拶をしてから食堂に入る。
既に席に着いており美味しそうな定食が皆の前に並べられており、食堂のカウンターには肉じゃがや唐揚げ、コロッケに野菜炒めが並べられている。俺は…喰種だから食べれないけど。とりあえず、水と水と水。あと珈琲かな。
間宮「皆さん席に着きましたね?では、いただきます!」
全員「いただきまーす!」
隼斗「………(え、これ全部食べるの?かなり量あるよ?いけんのこれ?)」
赤城・加賀「美味い!美味すぎます!」ガツガツガツガツ
隼斗「………(嘘やん…むっちゃ食うやん。つかあの2人だけ特盛…あ、名前聞いとかなきゃ…)」
赤城と加賀の食べっぷりに圧倒される隼斗。
水を飲み干し席を立とうとすると声をかけられる。
鳳翔「隼斗、ごめんなさい。」
隼斗「……?あ、もしかして飯のこと?もしそうなら気にしなくていい。喰種は人間の食べ物が無理だからな。
用意できなくて当然だよ。」
鳳翔「隼斗……私、隼斗でも食べられる人間の食べ物考えてみます。」
隼斗「……無理はしなくていいから。その時は必ず人間が必要になる。材料としてな…
艦娘がすることじゃない。だから、俺のことは気にせずみんなが喜ぶご飯を作ってよ。」
鳳翔「……分かりました。でも、いつか必ず隼斗に私や間宮さんが作ったご飯や甘味を食べさせますからね!」
間宮「ええ、そうです!自慢の甘味、絶対食べさせてやりますからね!」
隼斗「わかった、気長に待ってるわ。」
カウンター横に設置された冷水機で水を入れてその場で再び一気飲みしてテーブルの方へ視線を移す。みんなと楽しく、そして笑顔が絶えない艦娘達の食事する姿を見て自然と笑みが浮かぶ。とても幸せそうだ。みんないい笑顔してる…でも、なんだろうな。
この、嬉しさと悲しさ……
あいつらが笑って、幸せに暮らせることは嬉しい。これは本当だ。
ただ…あの幸せな食事の輪に俺は……喰種は入れない。人間のように振舞えても、一緒に食事を楽しむことは出来ない。
それ以外は出来るからそれで満足すりゃいいんだが、何故か悲しくて、寂しくて…そして、改めて思い知らされる。
喰種は、人間にはなれない。人間として生きることはできない…ってね。
艦娘に嫉妬している訳じゃない。妬んでもいない。
ただただ羨ましい。かつて抱いた儚く愚かな願い…“あの時”を境に永遠に捨てた願い……
隼斗「俺は……」
やっぱ嫉妬してんのかな?はあ…俺らしくもない。こんなこと考えてないで煙草吸おう。
カウンターに置いてある灰皿を取り、気付かれないよう食堂を出て行く。
ーーー鎮守府 屋上ーーー
食堂を出て鎮守府内を歩いていると小人達にあった。いや、妖精だっけ?可愛いよね、電の次にだが。
そいつらが気分転換になる場所を教えてやると言って屋上に連れて来てくれた。
海、か……いいな。俺あんまり知らないから…
隼斗「おー!良い眺めじゃん!てか、海デッカ⁉︎」
妖精1「ホントニウミヲミタコトガナイノ?」
隼斗「全くって訳じゃないけどな。俺は地下で暮らしてたから海を見ることが殆どないんだよ。
……今度からずっと見れるんだな…あいつらにも見せたかったな…」
妖精2「アイツラ…ソレハ、ハヤトガイタセカイノナカマノコト?」
隼斗「……あぁ、同胞達のことだよ。一緒に暮らして、笑ったり泣いたり、暴れたりした大事な仲間…家族だよ。」
床に腰を下ろして煙草に火をつける。こんな良い景色を眺めながらの煙草はとても美味しく感じる。
まだ俺が小さい頃、何回か海水浴に行ったことはあったけどここまで綺麗な海ではなかったな…
妖精3「ソッチノセカイデドンナクラシヲシテタノ?」
妖精達「オシエテオシエテー!」
隼斗「……聞かない方がいい。人間を守るお前らには胸糞悪い話でしかないしさ。」
妖精達「オシエテー!トリャー!」
隼斗「おわっ⁉︎ば、馬鹿野朗なに、ちょ…待て、くく…あははは!やめろくすぐったい!あははは!」
妖精達「オシエテクレナイトイタズラシチャウゾー!」
隼斗「もうしてんだろうが!あははは、やめ…あははは!」
妖精達が一斉に飛びついて来ては全力でくすぐってくる。服の上から、一部の妖精は服の中に入り直でしてくるから余計にくすぐったいんだよね。やめろと言っても全然やめないの。もう、笑いが止まらない。
これは素直に話すしかないか。
隼斗「わ、分かった。分かったから!ちゃんと話すからー!」
妖精達「ワーイ!オシエテオシエテー!」
隼斗「はあはあ…とんでもない目にあった。」
呼吸を整えて体を起こして前を見ると妖精達も同じように地面に座ってる。ちょこん、って座ってるんだよ。もう可愛くて…
あとは、艦娘達にも聴かせなきゃと言って何人かが飛んで行く。飯中に聞く話ではないんだが…
隼斗「まあ……戦ってたよ。仲間の喰種達と一緒に、人間と戦ってた。最初は隠れてばかりだったけどね…」
妖精4「ドーシテカクレテタノ?」
隼斗「弱かったから。俺も仲間も、家族も力の弱い喰種だったんだ。中には生きる為とはいえ、人間を殺すことに罪悪感や抵抗が
ある奴もいた。そんな奴らの集まりだった俺らは隠れるように地下に篭った。でないと、人間だけでなく同じ喰種にも殺される
ことになるからな。」
妖精1「エッ!ドウシテオナジグールニコロサレルノ?ナカマジャナイノ?」
隼斗「………全ての喰種が仲良しって訳じゃない。弱肉強食、力ある者に弱者は従うか喰われるかのどちらかだ。結局、どちらを
選んでも弱者である俺らは餌になる。だから隠れたんだ。人間からも喰種からも…」
妖精達は黙って聞いていた。皆同じように暗い表情をしていたが構わず話を続ける。
隼斗「でも、ある時1人の喰種が言った。「人間社会に紛れて生きる。人間のように自由に、日の当たる場所で暮らしたい」てね。
そいつは人間に憧れてたんだよ、ずっと…人間のように暮らしたいって言うのが口癖でさ、本当に困った妹だよ。」
妖精達「エッ!イモウトガイタノ⁉︎」
隼斗「血は繋がってないけどな。お互い孤児で、小さい頃から気づいたらよく一緒に居たんだ。そしたら急に俺をお兄ちゃんって
呼ぶようになって…違うって言うと、泣くんだよ。ずっと…ずっと泣いてさ、もういいやって思ってお兄ちゃんになってあげる
って言ったんだ。今度は大喜びでさ、それから兄妹として生きてきた。でも…もう会えない。」
妖精2「イルセカイガチガウカラアエナイヨネ…ハヤト、サビシイノ?」
隼斗「……まあ、寂しい…かな。ずっと一緒だったし、それに気づいたら好きになっててさ。しかも、まさかの両想いときたもんだ。
だからあいつはいつも俺を困らせることを言ったり、やったりしてて俺は手を焼かされたよ。本当、困った奴で…」
……顔は、笑ってた。でも、とても哀しそうだった…声も同じく哀しみに満ちていて、明らかに何かあったなと思うぐらいに…
気にはなるけど聞けない。聞いてはいけない気がしてならない。隼斗自身が言うまで何も言わないでおこう、と思ってた…
隼斗「でも、あいつは…“綾奈”はもういない。あの手を焼かす困った妹で、俺が心の底から好きに…いや、愛した大事なヒト…
俺は救えなかった。もう少し早く着いていれば、いや…もっと前の段階で連れて帰っていれば無理矢理にでもそうしていれば…」
……やっぱり、そうだ。死んだんだ。だからあんなに哀しみを感じたんだ。
そして今度は“怒り”を感じる。
妖精3「……イッタイ、ナニガアッタノ?」
隼斗「……綾奈は、見せしめとして公開処刑されたんだ。俺達喰種に対しての警告と宣戦布告…喰種が人間に紛れて同じように
生きることなどあり得ない、と。化物は死んで当然、駆除されて当然…ってね。綾奈は首を斬り落とされ、心臓を貫かれて
死んだ……俺は見た、遠くでも鮮明に映った。最期の時、俺を見て微笑んで…綾奈は…綾奈は……っ!」
妖精達「……ハヤト…」
吸っていた煙草を右手で力強く握り締める。肉が焦げた臭いがするもすぐに風で流される。
隼斗の眼が紅黒くなってる。まるで闇と狂気を現すような黒と血を現す紅、といったところか。尋常じゃない程の殺気と憎悪を纏っている。
深海棲艦の姫や鬼も禍々しいが、隼斗も負けていない。いや、こと人間に対しては遥かに上かもしれない。
隼斗「…その時から俺は変わった。いや、歪んだ、と言った方がいいか。大事なヒトを目の前で殺されて、その体に人間共は罵声を浴びせ
ゴミまで投げやがった。写真や動画を笑いながら撮る奴もいた……許せなかった。綾奈は喰種だ、だが心の優しい喰種だ。
人間に憧れ、人間のように暮らしたいと願い、人間と仲良くなる方法を見つけるんだって…あいつは人間が好きだったのに…!
それを全否定した挙句、見世物として殺し、その光景を楽しんでた!だから…」
妖精3「…ダカラ?」
隼斗「…皆殺しにした。“見せしめ”として、その場に居た人間全員を喰い殺した!捜査官も警備員も男も女も何もかも
殺してやった!そして街頭に吊るしたり、鉄パイプで串刺しにして地面に案山子みたいにしたり、バラバラにして
道路や建物内にばら撒いたりもした。そうそう、確かクリスマスが近かったから街頭にクリスマスツリーがあったんだよ。
屑共の死体で新たに飾り付けたりもしたな…何より、逃げ惑う屑共が悲鳴を上げ命乞いをしてくるあの顔が、絶望に満ちたあの顔が、
俺はとても愉快でたまらなかったんだよ、ククク…アハハハハハ‼︎」
隼斗は壊れてる。いや、壊れてしまったんだ…大切なヒトを目の前で殺されたこと、守ることが出来なかった後悔と自責の念。
人間への憎悪。全てが一気に爆発して隼斗をここまで歪ませたんだと思う。隼斗は被害者だ…化物に変えられたんだ。
隼斗「アハハハ……はあぁ…それからも殺し続けたよ。人間も喰種も。邪魔する奴、従わない奴、立ち塞がる全てを殺した。
そして組織もデカくなったから人間共に挑んだんだよ。でも、ダメでさ…みんな死んだ。
気付けば俺1人だけになってて…最後まで戦ったけど死んじゃったんだよね。…ま、こんなとこかな。」
再び煙草を取り出して火をつける。妖精達を見るとみんな泣いていて、中には俺に飛びついてくる奴もいて…あ、こいつ今鼻水を俺で拭きやがったな。ったく、もう……
妖精2「コノセカイデハボクタチガイルヨ!」
妖精3「カンムスノミンナモイッショ!ハヤト、サビシクナイヨ?」
妖精達「ズットイッショ!ダイジナカゾクダヨ!」
隼斗「……ありがとう、妖精さん達。」
俺の体は泣きじゃくる妖精達で埋め尽くされる。嬉しいけど…煙草吸えない。てか火傷しちゃうから妖精さん気をつけてよ?
でも…こんな俺の事を受け入れてくれることには感謝している。
艦娘達にも。本当に、ありがとう。
ーーー食堂ーーー
金剛「……隼斗も私達のように虐げられていたんですネ。」
陸奥「…みたいね。それに同じ喰種からもとなると…」
霧島「隼斗が抱える狂気の原因が分かりましたね…妹がいたことにも驚きましたが。」
榛名「だから駆逐艦の子達との接し方やあやし方に慣れているんですね。」
長門「隼斗は私達を救ってくれた。今度は私達が隼斗を救うんだ。」
艦娘達「はい!」
「ネエネエ、ソシキッテイッテタケド。ハヤトモテイトクミタイナコトシテタノ?」
ん?まだ話が続いていたのか?
艦娘達は食後のお茶や紅茶を飲みながら通信に耳を傾ける。確かに組織が大きくなったと言っていた。
喰種にも軍隊のようなものがあるのか?気になるな…
「提督が何かは知らんけど、まあ…喰種組織の首領だったよ。組織の名は“夜叉”。
俺がいた地区では最大最狂勢力。人間も喰種も恐れる程のね…」
艦娘達「なっ…⁉︎首領⁉︎」
隼斗が首領⁉︎確かにあの強さであれば納得がいくが…正直、隼斗が率いる喰種がどんな感じかは想像がつく。
……かなり危険な喰種達なんだろうな。
皆、固唾を飲んで次の言葉を待つ。同じ喰種でも恐れる組織が気になるからだ。
「ドウシテオナジグールニオソレラレタノ?」
「グールイッパイイタノ?」
「んー、「15区に住むなら傘下に入るか、餌になるか選べ」ってやってたからじゃない?んで…
従わない喰種は殺し、餌を選んだ喰種も殺し、俺を殺そうとした喰種も殺し…兎に角、殺しまくったから
あの喰種やべえ、狂ってる。って言われてたよ…あと、仲間はいっぱいいたよ。多い時で500名、だっかな?」
艦娘達「ご、500名⁉︎」
「俺みたいに狂った奴ばっかでさ、もう…大変大変。でも、根はいい奴等だよ。狂ってるけど、ははは!」
比叡「ヒエーーー!は、隼斗が500人⁉︎そんなたくさんの隼斗は手に負えないですよ!」
扶桑「人間も喰種も恐れる訳だわ。あちらの世界の人間は、不幸ね。」
山城「確かに、不幸だわ。」
赤城「あはは…私達、本当にとんでもない弟を持ちましたね。ねえ、加賀さん?」
加賀「そうね、赤城さん。でも、あの子1人なので大丈夫ですけど…組織が丸々この世界に来ていたら…」
加賀がそう言うとその場に居た全員が固まった。隼斗1人でもあの戦闘力と狂気だというのに、それが組織丸々だと…
この鎮守府に喰種が500名…皆、隼斗と同じような喰種………想像したくないな。地獄でしかない。
だが、隼斗同様に艦娘を大事に思ってくれるとしたら?家族と言ったら?これほどまでに心強い味方はいない。
……食事は大変そうだが。
夕立「うーん、隼斗が500人。いっぱい遊べるっぽい!」
時雨「そうだね、退屈しなくて済むね。」クスクス
吹雪「私、妹だけでもたくさんいるのに…あー!500人もお兄ちゃんはいらないよー!」
叢雲「はあ…馬鹿兄貴は1人で十分よ。……もう1人ぐらいならいいけど。そしたら私も…」
電「…?叢雲ちゃん、どうしたのですか?」
叢雲「い、電⁉︎え、な、何もないから!大丈夫だから、その…大丈夫!///」
響「私も隼斗と一緒に居られるのに。」ボソッ
叢雲「……ッ‼︎」
耳元で囁かれ慌てて振り向くと、隼斗の歪んだ笑顔を真似した…いや、真似できてない響が居た。
その意地悪そうな笑顔、可愛いじゃない!
叢雲「こんの…響!あんたねえ…!」
響「ウラー」
暁「もう、また叢雲怒らせてる。響ったら懲りないわね。」
雷「まあ、楽しそうだからいいんじゃない?それにしても隼斗お兄ちゃんが500人かあ…腕がなるわね!」
鳳翔「食事の用意が大変!まだ献立や材料も何も思いついてないのに!」
間宮「鳳翔さん、あくまでもしも、の話ですよ。だから、大丈夫です!」
皆が皆、思い思い想像している中で食堂内を走り回る響と叢雲、それを見て笑う艦娘達。でも、1人だけ席を離れて窓から屋上を見つめる者がいた。
電「……(綾奈さん…隼斗が元の世界で愛していたヒト。隼斗が歪んで狂気に走る原因となったヒト……
あの夜、キスをしてくれたのは電に対してなのでしょうか?それとも…綾奈さん、でしょうか?
愛してるって言ってくれたのも、その…電に対してじゃなくて……)」
胸が痛い。なんでこんな事を考えてしまうのか、なんでこんな苦しいのか…いやでも考えてしまう。
隼斗は電を見ているんじゃなくて、電に綾奈さんを被せて見てるんじゃないのか、って……そんなの、絶対に嫌。
電は、隼斗のことが好き!愛しているのです!だから、だから…電の事を……
ワーーーーーーーー お、あれ電じゃん。おーーい、愛しの電ーーー
電「……?え、どこか……きゃあ!」
ドカーーン ワーークラクラスルー あはは!でも楽しかったろ?
は、隼斗が空から降ってきたのです!お、親方さん、空から喰種が…て、違うのです!
それに、妖精達と話してる。隼斗には妖精達が見えるのですか⁉︎
長門「何の音だ⁉︎……って、隼斗か。いきなり大きな音を立てたらびっくりするだろう。」
隼斗「あ、そりゃごめんよ。喉乾いたから水飲みに来た。うんしょ…ん?どした電。浮かない顔して。」
電「へ?あ、いや…その……」
どうしてだろう。さっきまで思っていた事を聞きたいのに、言いたいのに全然言えない。顔をまともに見ることができない。
でも、聞かないと分からない。でも、もしそうだとしたら…綾奈さんを被らせていたとしたら、電は…
どうしたらいいのか分からない。
元気ねえなあ…… チュッ
電「……!///」
艦娘達「んなっ⁉︎き、キス⁉︎」
隼斗「……?あら?電、ほんとどしたん?具合悪いの?てか、お前らもどしたんだよ…キスぐらいすんだろ、好きな人なんだから。」
陸奥「あらあら、大胆な弟ね♪」
金剛「なかなか積極的デース!いいと思うネ!」
長門「はあ…全く、そういうのは2人っきりの時にだな…」
隼斗「おん?長門姉ちゃん、もしかして…照れてらっしゃる?あはは!…あだっ⁉︎」バチンッ
長門「ほう…姉ちゃんに対して、いい度胸じゃないか隼斗。」ゴゴゴゴゴゴゴ
隼斗「あわわわわ…ご、ごめんなさい。」ビクビク
とても化物とは、化物の首領とは思えない光景だ。頬に綺麗な手形を作り、綺麗な土下座で謝る隼斗。
その隼斗を今にも殴りそうな雰囲気を放ち、微笑んでる長門。一体どちらが化物なのか…
大淀「ま、まあ…そのぐらいで許してあげたら?」
長門「む…大淀、こういう時は姉としてしっかり怒ってやらねばならんのだ。」
隼斗「ね、姉ちゃん。そ、そちらの眼鏡の綺麗なお姉さんの言う通りにですね…」
長門「五月蝿い!」バキッ
隼斗「いやああああ!あ、頭…頭カチ割る気かよおおおお!」ガタガタガタ
大淀「そ、そんな…綺麗なお姉さんだなんて///もう、可愛い弟なんだから〜////」
土下座した隼斗の頭すれすれの位置に拳を放つ長門。流石はビッグセブン、一撃で床を凹ましヒビまでいれるとは…
隼斗は驚いて顔面蒼白でガタガタ震えてる。
もう化物には見えない…普段はこんな感じなのね、ほんと。
電「…は、隼斗。その、聞きたいことが…」
隼斗「…?何?」
キタコレ!電からの助け舟!……て、感じの雰囲気じゃないね。ほんとどうしたんだ?
もー、隼斗気になっちゃう。
電「その…隼斗は電のことを、電として見てくれてますか?」
隼斗「………ん?どゆこと?」
電「だから、電のことをちゃんと見てくれてますか?電は…電は綾奈さんじゃないのです!」
長門「……電。」
……い、言ってやったのです。もう、こんなに悩むぐらいなら傷ついてもいいので聞くのです!はっきりしたいのです…
隼斗「………あぁ、そゆことか。綾奈を被らせてんじゃないかってことね…」
電「…なのです……」
恐い。次に何を言われるのか…恐くて逃げたい。でも、ちゃんと向き合わなきゃ…
隼斗「ないな。」
電「……え?」
隼斗「ないない。強いて言うなら笑顔と性格、あと願望。それ以外全然似てないし、被せてもいない。」
そ、即答だったのです…それに嘘をついてるようにも見えないのです。本当に、電のことをちゃんとみてくれてるのかな…?
電「それは…本当ですか?本当に綾奈さんと電を…」
隼斗「ない。つか嘘ついてどうすんのよ…それにあの夜言ったことも嘘じゃないし。」
電「本当に、本当ですか?」
隼斗「でないとあん時も今もキスしねえだろ。俺こう見えて純粋よ?恋愛では素直で、純粋で、嘘なんかつかねえよ?
俺は電のことをちゃんと見てるし、これからも見続ける。ずっと電のこと愛し続けるから安心して。」
電「…グスッ……うん…ずっと、電の側に…いで欲しいのでず…」
隼斗「うわ鼻水やばいな。とりあえず、俺の服で拭いてやるよ。」
チーーーーーーン グスッ
隼斗「……あぁ…鼻をかめとは言ってないんだが…まあ、いいや。スッキリしたか?」
電「…なのです!隼斗の気持ちがはっきりと分かって安心したのです!」
隼斗「そっか。じゃあ、これで解決だなー、俺も安心した。」
まあ、あの話を聞いてたら気にもなるか。確かに綾奈と被るところはあるけど、なんて言うんだろ…全くの別人じゃん。
綾奈は綾奈、電は電だろ。そう思うんだけど…乙女心は漢心と違って分からないよね。難しい!
長門「……せっかくの雰囲気を壊して悪いが…隼斗、電とはさっきのが初めてのキスではないのか?」
隼斗「………。あ、やべ。つい…」
電「はわわわ///」
ひ、秘密がばれちゃうのです!大変なのですー!
2人して顔を見合わせた後、無言で電は隼斗に抱きつき、隼斗はそのまま抱き抱え窓から逃げようと走り出す。
だが、回り込まれて逃げ場がない!おのれー!
赤城「うふふ、とても気になるから教えて欲しいな、隼斗?」
加賀「……そうね、可愛い妹である電をどう口説いたのか教えなさい。」
隼斗「あ、あ〜…これまた美人なお姉様なことで……」
電「は、早く逃げるのです〜!」
ガシッ
隼斗・電「……ひっ⁉︎」
叢雲「……あん時って、どの時よ⁉︎赤城さんと加賀さんも馬鹿兄貴を取り押さえて‼︎」
赤城「任せて、絶対逃がさないわ♪」
加賀「ええ、鎧袖一触よ。観念しなさい。」
隼斗・電「あ、あぁ…ああああああああああああ‼︎」
このあとずっと質問攻めにされました。
電の周りには駆逐艦達が集まり女子会のような賑わいなのに対して、俺の周りには……その、戦艦と空母?のお姉様達が…
長門「無理矢理ではないんだな?本当に無理矢理ではないんだな⁉︎」
隼斗「は、はい!違います!こう、優しく…」
山城「別にどんな仕方かなんて聞いてないわよ‼︎いい?あんた、あんな可愛くて優しい電を泣かせたら命ないわよ?」
加賀「…そうね。別れるようなこともしたら命はないわ。」
隼斗「あわわ…山城姉ちゃんに加賀姉ちゃん…目が、本気じゃん……」ガクブル
……なんで俺だけ尋問と説教なのよ…
もう、この姉ちゃん達恐いよお…