※この作品はR-18です。

無垢なる神に黒淫を   作:砂利道

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イヴさん活躍回です。

日刊3位にまで一度上がりました!
今までの作品の中でも最高順位です、本当にありがとうございます!


絡め嬲る復讐の狐〔イズモ〕 9

 日が天頂に昇っている正午の時間、不死身の軍団を作り続ける儀式は幼い少女の気まぐれで中断される。

 

「ダキニ、お腹が減ったわ。ご飯……そうね、七極鳥(しちごくちょう)が良いわね」

 

 七極鳥は非常に個体数が少なくヒュマンハイブのみならず世界各国で確保が禁止されている。

 

 無論食すなどしたら極刑は免れないほどの大罪だ。

 

 しかし少女、ヤクモはそんなこと意にも返さずまた同様に側近である叔父のダキニも咎めなかった。

 

「御意、用意させます」

 

 ダキニはヤクモの側を離れると中央で一組の夫婦をそれぞれ別の意味で串刺しにしている観衆の中から何人かを呼び寄せた。

 

 呼び寄せた中にはアダム達が侵入したときに目撃した衰弱している女性も含まれていた。

 

「天狐様が七極鳥をお望みだ、30分以内に捕まえてこい」

 

 天狐様とはヤクモの別名だ。

 

「そんな……! 七極鳥なんて希少種、それも30分以内になんて……不可能です!」

 

「ならば次は貴様が"孕女(はらめ)"となるか? 天狐様もそろそろ今の孕女に飽きてくる頃だろう」

 

「ひっ……!」

 

 ダキニの虫ケラを見る目に気圧され衰弱した女性は後退った。

 

「ウズメ、私は貴様の事を買っている。貴様の探知や誘引は他の追随を許さない優れたものだ、その力を失うのは惜しい。だからこそ私は貴様には生きていて欲しいと思う」

 

「だ、だったら……」

 

「しかし貴様が天狐様のお役に立てないというのであればその力に価値は無い。今すぐにでもあの孕女と役割を交換するといい」

 

「う、うぅ……わかり、ました……探してきます……」

 

「急げ、天狐様の機嫌を損ねたくなければな」

 

 それだけ告げるとダキニは離れていった。

 

「行くぞ、天狐様を待たせてはいけない」

 

 今の二人のやり取りを無感動に見ていた残りがさっさと儀式場を後にする。

 

 明らかに異常、誰もこの儀式に疑問など持たず言われるがまま夫婦を串刺しにし、ヤクモが飽きたなら楽しませるために裸踊りでも殺し合いでも何でもする。

 

 その中でウズメと呼ばれた女性だけが正気を保っていた。

 

 それはひとえに彼女が非常に優秀な狩猟能力を持っているからだ。

 

 その狩猟能力は洗脳を受け曖昧な思考のままでは最大限の効果を発揮できない為ただ一人洗脳を免れていたのだ。

 

 考えようによっては幸運だが誰もが狂っているなか一人正気を保ち続けるのは辛く苦しかった。

 

(もういや……誰か助けて……)

 

 願いは虚しく、周囲の山の中で最も高い山に建てられた社を沈痛な面持ちで出た。

 

 その時、ウズメの優秀な耳が聞き慣れない声を拾った。

 

「風属性より派生、"雷"……展開、【天は割り地に罰を】」

 

 声と共に頭上に巨大な魔方陣が描かれた。

 

「【天蓋落衝(てんがいらくしょう)】」

 

 声を辿りウズメが見た方向には黒い修道服らしきドレスを着た天女が社に向けて右手を振り下ろした姿だった。

 

「あ───」

 

 瞬間、全ての音が消え失せた。

 

 

 

 

 

 

「ぐ……おぉ……な、何事だぁ!!」

 

 脳を揺さぶるような衝撃が儀式場を貫き、その衝撃で引っくり返っていたダキニは頭を振りながら起き上がった。

 

「な……! これは!?」

 

 山の中に作られた筈の儀式場から青空が覗いていた。

 

 遮るものは無く澄み渡るような眩しい空が一面に広がっている。

 

「いったぁい…… なによ、今の……」

 

 空を見上げ驚愕しているダキニの側でヤクモが体を起こす。

 

「ねぇダキニ、これは何? あなたの考えた余興? だとしたらあまりにもつまらないし物凄く不愉快なんだけど?」

 

「チッ…… お、お待ちください天狐様! 私は何も……」

 

 ゆらりと立ち上がるヤクモの魔力に苛立ちながらも繕う言葉を紡ごうとダキニが口を開こうとしたその時、軽薄な声が瓦礫の積まれた儀式場に響いた。

 

「おーいおい、つまらないって事は無いだろ? まさしく"驚天動地"、引っくり返る程に驚いてくれたのにさ」

 

 その男、アダムは崩れた天井の縁に座り嘲笑う様に語った。

 

「貴様…… 確か昨日覗きをしていた下賤な鼠だな? 下等種如きが我らを上から見下ろすな!」

 

「え? こんなに大きな鼠がいるの? すげぇな辺境」

 

 わざとずれた答えを返すアダムにダキニは青筋を立てる。

 

「ふーん、これあなたがやったんだ。ねぇ、私に仕えるなら許して上げても良いけど?」

 

「な!? 天狐様!?」

 

「うるさいわよダキニ。だって同じ顔飽きたんだもん、逆光でハッキリ見えないけど顔は良さそうだし玩具にはちょうど良いわ。ねぇ、どうする?」

 

 可愛らしくこてんと傾げるヤクモの顔に断られるという考えは微塵もない。

 

 だって自分は選ばれた存在で何よりも美しく、可愛く、誰もが傅く存在なのだから。

 

「え? 嫌だけど?」

 

 だからアダムの返答にポカンとするのは仕方が無いのだ。

 

「なーんで俺がお前みたいな無知で蒙昧で色気も何もなく頭の沸いてるイカれ女の下につかなきゃならんのよ。そういうのはもっと男を誘うような仕草と口調を色街で学んで不っ細工な男共をぶひぶひ言わせられるようになってから来い。あ、これじゃあ夜の女王様か! まぁとにかくあと十年は熟れてから来な魅力ゼロ狐」

 

 空気が凍った。

 

 あまりの言い分にダキニですら呆然としていた。

 

 途端空間が軋むほどの怒りを伴った魔力が放たれる。

 

「……少し優しくしたからって付け上がって。素直に頷いていれば気持ち良くして上げたのに!」

 

「優しくって言葉の意味分かってる? もっかい勉強しなおしな。あ、湯だった頭じゃ覚えられないか! ごめんなちゃい」

 

「───ダキニ! あの男を殺しなさい!!」

 

「者共、出合え!!」

 

 ダキニの声に瓦礫の下から半アンデッドと化した女と殺生石を手にしている男が起き上がり攻撃しようと動き出す。

 

「【動くな】」

 

 しかしそれはたったの一言で封じられる。

 

 縫い止められた様に動けなくなったダキニ達は目を丸くする。

 

 気付けばアダムの隣には山の頂上を消し飛ばした張本人であるイヴが立っていた。

 

「んじゃ俺はあっちの木偶の坊男に用があるから他の奴は任せるわ。イヴ、好きに扱え」

 

「かしこまりました」

 

「そんで最初の一発だ、景気良くいけよ───イズモ」

 

 アダムの発した名前をヤクモが正しく認識する前に、その左頬に右拳が突き刺さった。

 

 声を発する間も無くヤクモは大きく空いた穴からすっ飛んでいく。

 

「───行ってきます」

 

 ヤクモの後を追うようにイズモも穴から跳んで行く。

 

「おう、行ってこい。んじゃお前はこっちなー。【渡影】」

 

 ダキニは真後ろで行われた事を把握出来ずいつの間にか正面から肩を組む様に立っていたアダムにとぷんと影の中に連れていかれた。

 

 その場に残されたイヴはふわりと中央に降り立つと廃人となっている二人に治癒魔法を掛け無惨な傷を治していく。

 

「……あなた方を生き返らせることは出来ませんがせめてこれくらいの事はしておきましょう…… さて、」

 

 イヴが周囲を見渡すと【源母の言霊】の効力が切れ始め少しずつ動けるようになってきた半アンデッドの獣人族狐種(ビスト・フォックス)達200人あまりがイヴに向かって来ていた。

 

「主様は私にあなた方を好きにして良いと仰られました。此度を契機に本格的に主様も動くことになるようですし、あなた方にはこれからの発展の礎になっていただきましょう」

 

 ぽたっ、ぽたっ、と水滴が落ちる音が耳朶を打つ。

 

 【源母の言霊】の拘束が切れたのか杭を、剣を、槍を、鎌を、弓を、棍を、魔法を、半アンデッドと殺生石の不死性を有利に使い巻き込むことも厭わずイヴに襲い掛かる。

 

「【解除】」

 

 攻撃が届く直前、【解除】の魔法を込めた魔力の壁が獣人族狐種(ビスト・フォックス)達を押し返し、同時に洗脳を解いていく。

 

「ぐあっ!」

 

「痛ぇ!?」

 

「あ、あれ? 私、何を……?」

 

 洗脳されていたときの記憶は曖昧になっているのか自分達がここにいて武器を構えている理由が分からないらしい。

 

「……哀れなものですね。何も知らず利用され魂も穢され後戻りも出来なくなるとは」

 

 朗々と語るイヴの言葉を呆然とした面持ちで彼らは聞いている。

 

「ですが何も覚えてなくとも操られていたとしてもあなた方は主様の"所有物"に手を出しました。過去の所業であってもそれは変わりません。故に……」

 

 ぽたっ、ぽたっ

 

 音は続く。

 

 音が鳴る度にイヴの足下が黒く染まっていく。

 

 黒い水滴、それはイヴの子宮から膣を通り膣口から伸びる鎖を伝って地面に落ちていた。

 

 ずっ…… と黒が広がる。

 

 広大な儀式場を覆い尽くした黒は光も反射せず底の見えない闇のようだ。

 

 距離感を失うような光景に獣人族狐種(ビスト・フォックス)達は理解できない恐怖に慄く。

 

「償いなさい。私の、ひいては主様の役に立つことで。【穢れ爛れし不浄の仔、黒の仔よ、産まれ落ちて惨劇を】」

 

 ぼこりぼこり、と黒から泡が浮かび上がり波打つ。

 

 腐臭が漂い何処からともなく呻き声が響き渡る。

 

 これから始まるのは地獄の晩餐会、獣人族狐種達(エサ)を貪る赤子の饗宴。

 

「【産落千黒仔(さんらくせんごくし)】」

 

 黒い異形が産まれ落ちた。

 

 それは黒いヘドロを垂れ流し人を丸呑みする無数の口と無数の濁った黄色い目、体毛のように生えている無数の手を持った何かだった。

 

 全部で四体、人型、樹木型、蛇型、山羊型、いずれも人よりもずっと大きく嫌悪を超えて恐怖に満ちた姿だった。

 

 魔性"シュブ=ニグラス"

 

 性隷堕人(スレイブ・フォールン)の中でも特別中の特別であるイヴの持つ二(・)つ(・)目(・)の魔性。

 

 その能力である【産落千黒仔】は仔を産み落とすことが出来る。

 

 全てを呑み込む異形の仔を。

 

 人型が恐怖で動けない一人を掴むとそのままそこら辺の果実を食べる様に口の一つに放り込んだ。

 

 ガジグジュブチィッッ!!

 

「うわああぁぁぁあああああっ!!!」

 

 一人の悲鳴が呼水となり伝播していく。

 

 誰も彼もが逃げ惑い、それを異形が怪音で啼きながら追いたてる。

 

 不死がなんだ、生死の反転がなんだ、そんなもの食べてしまえば一緒だ。

 

 きっと誰もがなぜこんなことになったのか理解できていなかっただろう。

 

「うふふ…… あはは…… あははははははははははははははははっっ!!」

 

 数々の悲鳴の中にただ一人愉悦と悦楽の嘲笑が響き渡る。

 

 顔を紅潮させ残虐と嗜虐の混じった笑顔を浮かべるイヴの表情は悪辣な魔女にも清純な聖女にも見えた。

 

 僅か数分の地獄はこの世界の何よりもおぞましく語ることすら憚られる。

 

 やがて全ての悲鳴が止むと異形は黒に沈み、黒そのものはイヴの胎内に戻っていく。

 

「あふぅ…… あぁん!!」

 

 膣を撫でる感触に堪らずイヴは艶やかな声を漏らし体を震わせる。

 

「あはぁ…… 227の命、頂戴しました。ようこそ、新たな仔らよ……」

 

 愛おしそうに胎を撫でるイヴはまるで聖母の様に美しかったと言う。




冒険者

ヒュマンハイブ国内にある職業の一つ。
大陸の1/3の大きさを持つヒュマンハイブは多種多様な生態系と広大な国土を持つため通常の騎士団では対処できない問題が多い。
その一つとして上げられるのが魔物の被害だ。
大都市や中規模都市であれば駐在する騎士が巡回し人を襲う魔物の討伐を請け負うが辺境に点々と位置する町村まで騎士の数が行き渡らずろくに戦うことの出来ない平民達はされるがままの事が多い。
そのため設立されたのがギルドと冒険者だ。
ヒュマンハイブ建国以前から有志で仕事を請け負う人達は一定数居たがそれらを統括し管理するようになったのはそう昔の事ではない。
建前では国が運営する組織ではあるが初期の頃から民間に委託されており国の手からはほぼ離れている。

ギルドの仕事は民間や国から依頼を募集し冒険者に斡旋する事。
依頼には魔物の討伐から捕獲、薬や武具の素材となる薬草、鉱石の採集と多岐に渡る。
また、新種の魔物や異常繁殖の調査も請け負っておりそれらの情報は点在する他の支部と国へ報告もしている。
また、国外からの依頼も請け負うことがありその時は国から正式に発行される証明書の製作も行う。

冒険者には等級があり下から鉄、銅、銀、金、魔銀(ミスリル)、神鉄(オリハルコン)、緋金(ヒガネ)の七つに分かれる。
金まで到達すれば冒険者として成功していると言えるがそこまで辿り着けるのは全体の10%程、更に上になると僅か2~3%にしか満たない。
冒険者は死亡率の高い職業のため昇級には非常に厳格な審査が求められる。
強さは勿論のこと礼儀等も求められそれ専用の講義まで存在する。

現在緋金まで到達している冒険者は三人のみ、いずれも単騎で小国の全軍に匹敵する戦力を有している。
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