ありがたい事ですよ本当に……
着替えを渡した直後はどこか敵愾心みたいなのがあったイズモだが俺が次元魔法擬きを見せ付けると途端に大人しくなった、あれただ黒い本から出し入れしてるだけなんだけどね。
考えようによっては次元魔法だけど。
まぁ迫力を見せたイヴに比べたら大したこと無いように見えるよな、俺。
「主様、出来ました」
「ん、ありがとう」
イヴが作り上げたシチューを皿に盛って渡してくれる。
「どうぞ」
イズモにもシチューを渡す。
「あ、ありがとうございます……」
うーん、すっかり萎縮しちゃって。
「それじゃ、"いただきます"」
「なにそれ?」
ああ、馴染み無いか。
「食前の挨拶かな?これを言うのが何故か習慣になっててな。気付いたら口を吐くんだよ。ちなみに食後は"ごちそうさま"」
「そう……変わってるんだね」
この世界の食前の挨拶なんて聖教会の長ったらしい神への感謝だけだもんな。
「……あれ、イヴさんは?食べないんですか?」
イヴは皿を持たず竈のすぐそばに立ったままだ。
「私は必要ありません」
「でも私がいただくのに作ったイヴさんが食べないなんて……」
「ああ、良いんだ良いんだ。イヴに食事は要らないから」
「……奴隷に食事は要らないと?」
イズモが怒りに満ちた目で俺を見る。
「あれ?説明してなかったか?」
「何をよ」
「
「……話には出てたけど説明されてない」
しまった、失念してたか。
「それじゃ食いながらでいいから説明するかね」
俺は一口掬って口に運ぶ、相変わらず旨いな。
「
「……どういうこと?」
「人っていうのは知性を持ち文明を築き上げ得た経験を次代に残していく存在。魔物は魔力が動植物に何らかの影響を与えて変化した本能的な存在。ここまでは分かるな?」
「……うん」
「そして
俺はパチンと指を鳴らすと俺とイヴに掛けていた変装魔法を解いた。
「っ!今まであやふやにしか見えなかったけどそんな顔をしてたんだ……。というかイヴさんのその格好……」
イヴの姿がハッキリと見えるようになったからか服装の異常さに目がいったようだ。
「続けるぞー。この
そして
「……性奴隷なのに貴族よりも上なの?」
「誰の性奴隷なのかって話だ。誰だと思う?」
「……貴族の逆らえない存在、"王様"」
「大正解!」
俺はパチパチと手を鳴らす。
「……イヴさんが従ってるって事は、もしかしてあなたが……」
俺はニィと笑う。
薄々分かっていたけどこの子は聡い。
この世界でまともな教育は上流貴族と王族、聖教会支配下の地域でなければ受けられない。
農民や一般市民なんかは又聞きで学ぶのが限界であり、まして差別を受けている亜人は文字も読めないことが多い。
だがイズモは物事を順に考える力、損得を計算する能力、話の理解力、その他諸々が全てこの世界において高い水準で持っている。
地頭がかなり良いのだろう。
魔法、知識、色事、ありとあらゆる事を仕込めばあっという間に覚えてしまうに違いない。
(是が非でもこの子は欲しいな)
俺の使命の為にも、そして聖教会への報復の為にもこの子の力は絶対に必要だ。
「改めて自己紹介をしよう。俺はアダム、世界に淫蕩と堕落をもたらし無垢なる神を地に堕とす……"堕王"だ」
不思議な圧力だった。
食事の席、胡座の上にシチューを乗せた彼の言葉は嘘を騙っている訳でも、誇大妄想に浸っている訳でも無いように思えた。
「堕王には人と魔物を
「自然には産まれないの?」
「
確かに、聞く限り個の力がとても強い種族みたいだし自然発生してたらあっという間にこの世界の覇者になっていそうだ。
とても長命な
「
「……ボクをゆくゆくは性奴隷にするって言ってたよね?相性が良くないなら無駄足じゃないかな?」
出来れば無駄足であって欲しい。
男のアレを受け入れるのは正直言ってもうごめんだ。
「いや?相性は良いぞ。堕王は本能に優れた
「っ……」
一瞬体が逃げ出しそうになった。
それを全力で押さえ付ける。
逃げるのが不可能と理解した以上心証を悪くするのはボクの願いを叶える上で悪いことにしかならない。
だからもし体を求められるような事になったとしても断ってはいけない。
ボク一人じゃ願いは叶えられないから力を貸して貰わないと……
「ああ、でも君が願いを叶えるまで手は出さないよ」
「……え?」
「小屋の中で言っただろう?"先に願いを叶える"って。欲望と本能に忠実な俺だが約束は守るぞ」
逃がす気は無いけどね、と彼はシチューを頬張りながら言った。
「……どうして?ボクが欲しいんじゃないの?」
「欲しいよ?でも
「出来なくなること?」
そういえばイヴさんの食事が要らないって所から話が始まってた……
「まず、
「それは聞いた」
「それに加えて
「なっ……そんなの……」
普通の奴隷よりも遥かに酷い。
「つまり眠ることは出来ず食事はあなたの精液だけ、体の全てがあなたに使われる為のものになるってこと……?」
「そういうこと。文字通り堕王の所有物である性奴隷になるんだ。代わりに
思い返すのはイヴさんが使った謎の力。
「あれをボクも使えるようになると?」
「【源母の言霊】はイヴの獲得した
また知らない単語。
その不満が顔に出てたのか説明をしてくれた。
「
彼の言葉に目を見張った。
勇者や聖女は突出した力を持たない人間が聖教会の信奉する唯一神より力を与えられた"選ばれた存在"、それぞれ常に五人選抜されていて一人一人が一国の軍隊に匹敵する戦力を有していると言われている。
その人外が真っ青になるほどの力?にわかに信じがたい。
だけどそれが本当なら……
(ボクの願いを……あいつらへの復讐を出来るかもしれない)
ぐらりと気持ちが傾く。
今ここでその
(だけど代償が一生性奴隷……)
あいつらはとても憎いけど躊躇ってしまう。
「……良いものですよ、主様に尽くすというのは」
聞こえてきた声に顔を上げる。
「一人の女として身も心も捧げれる幸福は何にも代えることは出来ません」
さっきまでの無表情とはかけ離れた顔。
「快楽に浸り絶頂を感じ続け主様に悦んでもらう……それは至上の悦楽です」
蕩けきった女の……いや、雌の顔だ。
ビクッとイヴさんの体が跳ねた。
「……あなたも堕ちれば分かります」
イヴさんはスッと表情を戻したけどイヴさんから漂う香りがこの人が思い返すだけで絶頂したのだと分かってしまった。
いや、常に絶頂しているのだろう。
それが更に深くイっただけだ。
「嬉しいことを言ってくれるね、イヴ。今夜は期待しておけ」
(あ……)
イヴさんの服のスリットから粘性の高い液体が垂れているのが見えてしまった。
(う、なんだかボクまで……)
丈の短いワンピースの中がしっとりと濡れてしまっているのが分かる。
「……そうそう、君がシて欲しいというのであればいつでも相手はするぞ。堕転もな」
ニヤニヤと彼が笑っていた、ボクが股を濡らしてしまっている事に絶対気づいてる。
「ッ!結構!」
ボクは冷めてしまったシチューを掻き込んでさっさとテントに駆け込んだ。
「疑問があったらいつでも聞いていいからな~」
その声を背にボクはテントの隅で丸まるように目を瞑った。
「あ~らら、逃げちゃった」
残ってるシチューを頬張りながらイズモが駆けていった方を見た。
「よろしいのですか?」
「目の届く範囲だし逃げたところですぐ捕まえられるから良いよ。それよりもイヴ」
「なんでしょうか?」
「お前がイズモを誘うなんてどうしたんだ?消極的な反対だっただろ?」
「……私は主様の御意思に従うだけで───」
「何年の付き合いだと思ってんだ。お前の考えていることくらい分かる」
そう言うとイヴは黙ってしまった。
「……私と主様の付き合いは三年です」
「違う、二十年だ。離れていた期間を除いても十五年一緒にいた」
俺は強く訂正する。
「お前はイヴだ。ほかの誰でもない」
ジッとイヴの目を見つめ続ける。
イヴは俺の視線に耐え切れなくなったのか俯いてしまう。
俺はフッと笑うと言ってやる。
「変わらないさ。お前が俺を忘れているとしても俺がお前を絶対に忘れないから」
イヴが強く服を握る。
「それで、なんでイズモを誘うようになった?」
「……私は聖女の加護を残すため主様が最も気持ちよくなれる陰部をお使い頂けません。ですから気兼ねなく主様が気持ち良くなれる”穴”の存在が必要と考えたからです」
イヴの膣は子宮から延びる鎖によって埋まり挿入することは出来ない。
聖教会から戦力を削ぐのとこっちの戦力増強のために仕方が無いとはいえ確かに辛いところはあった。
それをイヴは気に病んで自分を使ってくれる回数が減るというのに勧誘してくれていた。
使われる回数が減るというのは死活問題なのだ。
「……どこまでも俺の為だな、その献身はまさしく“聖女”だ」
俺はイヴを手招きし傍に来させる。
イヴは座り込んでいる俺の傍で跪いた。
「ありがとう。お前はやっぱり優しいよ」
イヴを抱き寄せ頭を撫でる。
「ぁ……か、過分なお言葉です……」
体をぴくぴくと震わせながらイヴはお礼を言った。
「これからイズモが堕転するまでの間、お前を毎日抱く。イズモの前でな」
「あ、ああ……それは……」
「お前が折角身を粉にして誘ってくれたからな、イズモに気持ち良いということを教えてやるぞ」
俺は服の内側に手を伸ばしクリトリスを撫で上げる。
「ひぁんっ!!はぃぃ……」
既にイヴの顔は蕩けきり期待に満ちていた。
食事の片付けもしないまま俺はイヴを抱き上げてテントの中に戻っていった。
堕王
時代や歴史の節目に現れる超常存在。
過去に12人存在しておりアダムは13人目の堕王である。
過去には人間以外にもエルフやドワーフ、魔物からも堕王は生まれたことがある。
生まれたときは普通の人族達や魔物と変わらないが大きな感情の揺れや自分が他とは違うのだと自覚したとき堕王として覚醒する。
堕王は魔性を所持しておらず単純戦力なら性隷堕人に劣る。
代わりに権能"堕落転生"で絶対に逆らえない配下を増やして戦力の拡充をすることができる。
なお戦えないという訳ではなくあくまで強力な性隷堕人には劣るというだけ普通にトップクラスには強い。
性魔法や支援、妨害系魔法に特化するため通常の属性魔法は使えない。
体は他の堕人よりも強靭だが寿命は変わらず、食事と睡眠も必要。
初代堕王は異世界人らしく堕王の証である黒い本にはその異世界の知識がびっしりと書き込まれている。
他にも魔法の基礎を作り上げたのも初代堕王なのだがあまりに長い歴史の中で名前は失われており今や知る者は極々僅かとなっている。
使命である神の堕落は初代の悲願らしい。