「ううう……」
男は涙を流しながら愚息をしごいていた。悲しみは皮肉にもよいスパイスとなり、いつものオナニーよりも数段気持ちが良い。スマートフォンの画面には、輝かしい笑顔の彼女が映っている。
「メイヴちゃん……ううう……」
この男、狭間田隆は今日童貞を捨てる予定だった。24歳の夏、いい加減大学に出会いが無いことに気づいたこの男は、ついに恋愛を諦め、風俗店にて童貞を捨てようと決心したのだ。
だが結果は、大失敗であった。
遠路はるばるこの「吉原」に来て、良い店を選んだまでは良かったものの、本番の極度の緊張か、はたまた普段から二次元でしか抜いていない為か、勃たなかった。
「やっぱり俺にはメイヴちゃんしかいないんだ……うっ、出るぞっ! スーパーケルトビッチサイコー!」
虚無の精液が路地裏のビルの壁にぶつけられる。狭間田は常人よりも性欲は強い為、一日に七回ほど抜かなければならなかった。今も風俗店を出て直ぐのビルの路地裏で処理を終えたところである。
「ふぅ……」
狭間田はチャックを上げ、路地から出た。
そして、何気なく空を見上げた。
車が空を飛んでいた。
「えっ?」
狭間田はよくよく目を凝らす。確かに車は空を飛んでいた。ホバーボードのような物だろうか。とても軽そうな素材で、人は囲われた檻のような運転席に立って乗っていた。
焦ってスマートフォンを確認したが、圏外である。
「どうなってんだ……何処だよここ……痛っ」
混乱極まる狭間田の目を覚ますように、右手に鋭い痛みが走った。自然と、狭間田はそこへ目を向ける。
「……おい」
ドッドッドッと心臓が早鐘を打つ。焦点が合わず、何度もその、右手の甲を見つめてしまう。
「おいおいおいおい!?」
そこには、既視感のある紅い紋様が浮かんでいた。
「はぁっ、はあっ、はあっ、はあっ」
「ん、んっ」
YOSIWARAの中でも最も天に近い超高層建築物、弁天ビルの最上階では今日も男女がまぐわっていた。片方は、脂の乗った小太りの男。情けない顔でへこへこと腰を振っている。
そしてもう一方は、まさに絶世の美女だ。すらりと伸びた手足は絶妙な比率で肉づいており、胸はむしゃぶりつきたくなるほど大きい。
黒髪は長く流麗で振り乱されており、その切れ長の目をした整った凛とした顔も、赤らんで歪む度に蠱惑的な感情を誘う。
「出すぞっ、出すぞ、エリーゼ!」
「はいっ、たっぷり出してください、私の、中に、たくさんっ」
男は電気ショックを加えられたように、天に昇ったような表情で絶頂した。一方の女性は、いかにも感じているような完璧な演技をしながら、その内心は湖面のように澄み切っていた。
(はあ……早く終わらないかしら)
この女、木上エリーゼはYOSIWARAの中でも最上位の風俗嬢である。花魁の称号を持ち、あらゆる男をその美貌と抜群のプロポーション『だけ』で虜にしてきた。
彼女がその職業に従事してきた理由は、ひとえに最高の男を見つける為だったが、やってくる男は軒並み、情けない身体をした金持ちだけだった。
「やはりお前は極上の女だ。ワシとの身体の相性も抜群だろうし、どうだ、ワシの女にならんか?」
「あはは、ダメですよ。私はこの街の男全てのモノなんですから」
こんな男の物になるなど死んでも嫌だ。エリーゼは心の中で毒づいた。男は満足した様子で部屋を出ていき、後にはエリーゼだけが残された。
エリーゼは窓からYOSIWARAを見下ろす。この世界一の歓楽街であっても、自分を満足させられる男はいないのか、と。
「はぁ……」
大きなため息をついた後、微妙に火照った身体を自分で慰めようとベッドに入った。そこで改めて自分の手を見つめて、違和感に気づく。ハートマークを崩したような、奇妙な赤い紋様が浮かんでいた。
「何、これ」
その時、扉がノックされた。
もう今日は客の予約は入っていない。店の人間も、わざわざ部屋に尋ねてくるようなことはしないはずだ。では、何者か。自分を狙う人間というのも十分に有り得る。
つくづく、人生の選択を間違えたな、と思いながらエリーゼは扉から離れた。
しばらく経ったあとに、めきっ、という音と共に扉が開いた気配がする。
「うわ……マジのやつ……終わったかしら」
半ば諦めのこもった呟きとともに扉の方を覗き見る。
そこには、エリーゼの予想だにしない人物が立っていた。
「失礼するぞ! はっはっは!」
部屋の入口を通るのがやっとなほどに筋骨隆々な男。この時代であっても浮くような民族的な衣装に身を包み、片手には嘘みたいな巨大な棍棒を持っている。
隠れるということも思考に浮かばないまま、エリーゼは男と向き合った。
「俺の真名はフェルグス・マック・ロイ。お前が俺のマスターだな?」
「え? え、は?」
フェルグスはその逞しい両の手でエリーゼの肩を掴んだ。
「歴史に名を残すほどに極上の女が我が主となったこと、至上の喜びだ。本来なら忠節を誓うところなのだが、もはや辛抱たまらん! 早速、お相手つかまつるぞ!」
「え、あ、ちょっ」
そして、一時間後。
「ん"おぉおぉぉ♡ む"りぃいいい♡ もうイッでるぅううぅっ♡」
エリーゼは、天国にいた。
生まれて22年、男とのセックスでも、オナニーでも辿り着けなかった快楽の境地。フェルグスの逞しい男根は、激しい前戯によってびちゃびちゃにされたエリーゼの蜜穴に滑らかに出入りしている。
カリがGスポットを何度も何度も往復し、子宮口にはコンコンと亀頭がぶつかる。その度に、じんじんと頭が痺れて多幸感が溢れる。今までの男の肉棒ではこんなことは無かった。
「いやいや、それはまだ絶頂ではないぞ」
「はえっ♡?」
「ここまでの女を初心にさせておくなど、この時代の男共は何をしているのか……よし、では俺が刻み込んでやろう。真の絶頂を!」
ぐるんっとフェルグスはエリーゼを回転させ、後背位の体勢になる。そして、力強く腰を打ち付けた。エリーゼの身体に電流が走り、ばしゃあっと潮が吹き出す。
「いぎぃいいぃいいつ♡ お"ほぉおっ♡」
1ストロークごとの快感が倍増している。エリーゼは自分でも何が何だか分からなくなり、目の前のシーツを掴んで雌の獣のような声を上げる。身体からは変な汗が噴き出し、熱い。心臓も信じられないほどに脈打っている。
(死んじゃうっ♡ でもっ♡ こんなに、気持ちいいなんてぇっ♡)
凛とした顔は快楽に歪み、その美しい唇からは犬のように舌を垂らしている。男達の欲望の的だったその豊満な胸は、だぷんっだぷんっと淫らに揺れていた。
「はは、一度落ち着けておくか。いくぞ!」
フェルグスがそう宣言すると同時に、彼の陰茎はさらに肥大化する。この流れは、幾度となくエリーゼも味わってきたものだったが、これまでとは全く意味合いと期待が違った。
終わってしまうという切なさ、そして絶頂に至る悦び。
全ての感情を込めて、YOSIWARAの最高の風俗嬢、エリーゼはたった今生まれてきたかのように絶頂の嬌声をあげた。
「イッグゥウゥウウッ♡」
ホースで流し込まれたような勢いでフェルグスの子種が注ぎ込まれる。人生で最高の受精のチャンスに、エリーゼの子宮は快活に収縮し、痙攣し、歓喜に震える。
かつてない虚脱感と幸福感に包まれたエリーゼは、気を失いかけていた。
「ふむ……」
フェルグスはエリーゼの後ろ姿を見る。本当にいい女だ。腰のくびれも、後ろから見えるほどの大きさの胸も、少女のような声も、長く美しい髪も、全て好みだ。
しかし、随分感じやすい。今まででもここまでイキ狂う女性はなかなかいなかったのだが、と、少し疑問に思ったフェルグスだが、肩で息をするエリーゼを見てそんな些事は気にならなくなった。
「あっ……♡」
フェルグスの肉棒の反り返りによった浮かせられたエリーゼは、彼に後ろから抱かれる。そして顎をくいとされて、濃厚な口付けをされた。
子宮のときめきが止まらない。その舌使いも、数々の男を魅了してきたエリーゼでもかなわない。
「ん、む……♡」
「すまん、名前をまだ聞いていなかったな」
「……エリーゼ。木上エリーゼ、よ」
フェルグスはその快活で豪快な笑顔で頷くと、再び口付けをした。さらに、エリーゼの興奮でびんびんに勃起した乳首もこりこりと弄る。
エリーゼは鼻から甘い息を漏らす。
「ん"♡ ふっ、ん"ふ♡」
「……本来なら、果てたお前を抱き続けるのは性に合わんのだが、今は魔力供給をしなくてはならん。……朝まで、付き合ってもらうぞ」
「は、はひぃ……♡」
こうして、エリーゼは初めて女の悦びを知ったのであった。
一方で童貞は、挙動不審な様子でこのYOSIWARAを彷徨いていた。周囲の人間を見るに、明らかにファッションが彼のいたところとは異なっている。
狭間田はこういうシチュエーションが何か転移だとか、そういうものなのだろうとは検討がついていたが、いざ自分が巻き込まれてみると恐怖感の方が強かった。
「と、とりあえず、落ち着けるところ……落ち着きたい」
ふらふらと辿り着いたのは、古びたカプセルホテルである。店に入ると老婆が、訝しげな目で狭間田を見る。
「あのぉ、一泊可能でしょうか……」
「先払い」
促されるまま、狭間田はポケットから財布を取り出し料金表を見ながら現金を提示した。老婆はその野口英世を驚いたような表情で見る。
「は、このご時世に現金とはね……なかなか酔狂じゃないか。入り口はあっちだよ。そっちの趣味が無いんなら、ホモには気をつけな」
「ええ……」
恐ろしい文言が頭の中で渦巻きつつも、狭間田は立ち並ぶカプセルの個室の一つに入る。あの安さにして、店の内装は随分近代的だった。
「やっぱ場所が移動したっつーか、時代的なアレか……? というかコレ……」
改めて手の甲の文様を見る。明らかに令呪だ。この時代は令呪が当たり前に存在するのだろうか。いや、それはさすがに有り得なさそうだ。だからこそ、自分の置かれた状況が理解できない。
「もうダメだ。頭痛い……寝よ……」
そのまま気を失うように、狭間田は眠りについた。
そして、翌日。妙な香りが鼻をつき、狭間田は目を覚ます。
「……ん?」
外を見渡すと、大量の男達がうめき声をあげて床に転がっていた。見れば全員が半裸で、股間の一物は縮み上がっている。妙な匂いとは、精液の匂いだったのだ。
まさか、ホモの乱交現場に巻き込まれてしまったのか!? と狭間田は焦りながら、入り口の方を向いた。
すると彼の目の前に、彼女が立っていた。
「あら、よーーやくお目覚めみたいね」
一瞬そこに満開の花畑を見たような、不思議な感覚に襲われる。目の前に立っていたのは、腰が抜けそうなほどに絶世の美女。桃色の髪と玉のような白い肌。それは狭間田が何度も夢に描きつつズリネタにしてきた彼女だった。
「私はメイヴ。女王メイヴよ。あなたが、私のマスターね」
それは画面で見る1000倍、サイコーだった。
筆が遅いのでのんびりな更新になってしまうかと思いますが、エロいのが好きな貴方はどうぞお楽しみに! また、こんなにエロい偉人、英霊が居るよという場合は感想等でお教えください〜参考にさせていただきます!