FATE/Walküre suko suko suki- 作:鹿島鹿
「マスター!?」
「いや、ホントマジ大丈……ムリ」
心配そうなオルトリンデが駆け寄り俺の背中を撫でてくれているが全く感触を楽しむ余裕がない。最早取り繕うことも出来ない。
念話でも二人の心配そうな声が響いたが、最早この後の脅威以外に気が回らない。
知覚を全開にして、スルーズと対峙している人物を探る。
見た目が以前とちがう?いや、所々似ている部分もある。
肉体を変形させたのかもしれない。あの蒼崎橙子なら有り得る。
そして、強者然とした雰囲気は変わらないような気もする!
当時と姿が変わったせいか多少は落ち着いたので、心配そうにしている3人に過去に蒼崎橙子なる人物に理不尽な暴力を振るわれ、ボコボコされたのだと話した。
どうやって逃げようかなぁ……
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オルトリンデはかつてない程の憤りの感情で頭がいっぱいだった。
普段はこんな一方向的な思考はスルーズの役目だが今回ばかりは違った。
あの小さな勇気を持った好青年と言っていいマスターがこんな狭い世界を生きるきっかけになった相手が、アーチャーのマスターだったのだ。
マスター程の人物であれば、普通に生きていたら今頃、人並み以上の心身共に豊かな生活を送れていた筈なのだ。必ず許す訳には行かない。
ヒルドとスルーズも同じ気持ちだった様でひたすら逃走を提案するマスターに此方は3騎もサーヴァントがいる。話を受ける振りをして奇襲を仕掛ければ勝算は高い。マスターの過去の精算を行うべきだと私達は主張した。
戦力はどう考えても此方が上なのにマスターは全く敵わないと思っているのか怯えながら既に逃走ルートについて語っている。
何という痛ましい姿だろう。完全に心を破壊される程の暴力を受けたに違いない。
動揺するマスターはまるで幼子の様に怯えていて、私は無意識にマスターを抱き締めていた。
動機は良く分からないので、この行動は自身のエラーかとも思ったが、マスターの精神安定の一環だと結論付け、この行動を辞めたり、躊躇うことは無くマスターが落ち着くまで実行し続けることが出来た。
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オルトリンデによるえらくバブみ力がある行動により、何とか落ち着きを取り戻した。あんなに優しく柔らかくまロい人間は存在しないのでやはり彼女は女神だったのだ。ディ・モールトベネ。
取り敢えず、交戦の意思は無いと言っていたらしいし話をしてみようと思う。
奴が本当に蒼崎橙子なら実力が下の俺たちに対して騙し討ちをする理由が無いはず。
いや、蒼崎橙子は真正のサディストである可能性はかなり在る。(当社比)
もしくは人々の苦しむ姿が何よりも喜びと言う昔のRPGゲームの魔王の様な精神性を持っている可能性も無くはない。寧ろかなり高いだろう(断言)
取り敢えず戦闘になったら市外に全力で跳んだ後、令呪で3人を呼ぶ方針で行こう。そうしよう。
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「話の内容から察するにつまり、君は青子に嵌められたんだろう。あの性悪な愚妹は良く私の名前を無断使用するんだ。困った事だが、私も常々ふとした拍子に青子が消える事を願っている……いや、違うな。ふとした切っ掛けで私が青子を殺せる機会を願っている。と言った所か」
勘違いだったらしい。赤髪ポニテのデキる女って雰囲気の彼女が実は蒼崎橙子で俺をボコした方が妹の蒼崎青子だったそうな。
確かに近場で見た雰囲気とやたら長い喋りはあの時の暴力お姉さんとは程遠い。蒼崎青子が手投げ斧のような取り敢えず破砕して見る系だとしたらこの蒼崎橙子さんは取り回しの良い抜き身のナイフの様な感じである。つまりはどっちもヤベえヤツである。
「誤解も解けた所で此処からは聖杯戦争のマスター同士のお話し合いといきましょうか。私達……つまり私とアーチャーは実は聖杯にかける願いなんて特に無いの。私はちょいとした依頼と自身の後始末で来てて、アーチャーはそのお手伝い。その依頼で聖杯戦争を見届けなくちゃならないのだけどサーヴァントがいる中ウロウロして戦闘になったら面倒だし、一応ある程度は勝ち残っておきたい……と言う訳なのよ」
蒼崎橙子さん眼鏡をかけ、穏やかに事情を話す。この二面性が抜き身のナイフを出したり隠したりする様に感じる一因である。あとこの人だけ喋る量多くない? 話術サイドの人間かな?
「事情は解りました。で、橙子さんは俺に何を求めているので?」
「話の早い子は好きよ。もう一つの後始末が今回の参加者のとあるマスターの殺害でね。相手も二組で動いてて面倒なの。だから手を組まないかどうかのお誘い。昨日のでサーヴァントの能力は解ったし、多対多なら数が多い方が基本的に有利でしょう? それに……」
「それに?」
一息ついた燈子さんは再度眼鏡を外すと茶色のコートの胸ポケットから中華的な陰陽マークがついたタバコを取り出し、火を付け、煙を吐いた。一瞬の間が空く。ケムい。
いちいち動作が様になっていてカッコいい人である。組んだ足は永久保存したい。むしろ組んだ足に挟まれたい。写真家の気持ちはこういう所から始まるんだろうなぁ。(風評被害)
だがリビングが煙草臭くなるので勘弁して欲しい。
「昨日様子を見ていた限り君はどちらかと言えば私と同じ様な立ち位置なのかと思ってね。ああ、無論魔術師だとかマスターだからじゃあない。少年。君はこの争いを自身には致命的な影響を与える事は無いと感じているだろう? 少なくとも命の影響を微塵も心配していない。スタンス的には『成るように成れ』と言った所か。立ち位置で言うと傍観者か超越者……まあ私はどちらとも違うが似たような視点にはなるからな」
頭の良い人の会話は長くなり過ぎる場合が多い。頭空っぽの方が夢とか沢山詰め込めるのでは無いだろうか。
「うーん……組んでもメリットがあまり……面倒そうですし」
ツボに入ったのか橙子さんは「ハッ」と心底愉快そうに嘲りとも驚愕とも取れる笑いを洩らす。
「サーヴァント一騎に事情通な魔術師と言うだけでメリットになると思うが君にはメリット足り得ないのか。ますます面白いじゃないか」
「ぐ……」
クツクツと愉快そうに笑う橙子さん。そして墓穴を重機を使用するレベルで掘り進む俺。困ったな。この人も妹同様に苦手かもしれん。
「そうだな……後は私から提示できるものと言えば青子を適度に苦しめる方法と、就業先位か」
「ぬぬ?」
それは結構惹かれる条件である。憎き蒼崎青子へ復讐したい気持ちが無いと言えば嘘になるし、就業先なんて最終学歴中卒にはかなり眩しい。
「いや何、簡単に調べさせて貰ったから君の現状は把握している。君は無職らしいし、私も優秀な助手が寿退社してからは何年かは一人での仕事ばかりで手が足りていなかったしな。まあ最悪使い道が無くとも若い少年を囲うんだ。気まぐれに愛してやってもいい」
色気あるお姉さんが足を組んでそんな事言われて抗える男性はどれ程いるだろうか?
というかなんか今凄い食い付かなければならん部分無かった!?
「マスター。敵の言です。誘惑に乗ってはいけません」
霊体化して背後に待機してたワルキューレ達からオルトリンデが実体化して口を挟んで来た。最近の自己主張の多さにお父さん感動です。
燈子さんを仇の様な目で睨む様は威嚇する発情期の猫の様で逆に可愛らしい。
「まあ待つんだランサークソカワユス」
無理に争う必要はない。思わず真名を口にしない出来たマスターだよな俺。
なんかオルトリンデが「えっ?その名前まだ有効期限続いてたんです?」みたいな驚愕の表情で此方を見ている気がするが気のせいだろう。
「手を組もう。確かに俺は素人だし事情通な燈子さんがいると有り難いしな。就職も魅力的だ」
「マスター!? 後半は考え直して下さい。死後はヴァルハラが受け入れますから!」
「クソカワユスちゃん!? さっきから知能指数落ちてるから! 固有名詞禁止ー!」
「愛玩動物にしたいのではなく、なりたい方だったのですか!? 私、頑張ってマスターのご主人様になりますから!」
「何言っちゃってんの!?」
マスターの定義が乱れる。一体どうしたと言うんだランサークソカワユス……横の燈子さんも爆笑してるよ。
「強力な神秘を内包する北欧の英雄が味方になってくれて心強いよ。ま、始めは同盟の仮締結で構わん。暫くは近場のホテルなりに宿泊するさ。夜には一緒に行動するのと、何かあれば此方の連絡先を参照にしてくれ」
なんか真名バレてるっぽいしーちょっと女子ー。いや、ヴァルハラだけならセーフ? いやセウトかな? 電話番号とアドレスが記載されているメモの切れ端にこれまたかっこよく人差し指と中指で挟んでスタイリッシュに置いて玄関に去っていく燈子さん。カッコいいけど赤外線かL○NEにして欲しい。アドレスの手入力とか久しくしてなくて面倒なんだが。
「そうそう。君がご主人様を探しているならなるのも吝かじゃ無い」
「えっ? それまだ続くんです? もういっぱいいっぱいなんで勘弁してください……」
燈子さんの去り際の追撃のマスター宣言でダメージは更に加速した。もう精神を休ませて起こさないでやってくれ。死ぬ程疲れてる。
オルトリンデは機嫌悪そうにルーン魔術の結界を強固にしますねとか言ってるし、プンスカ怒っている姿も可愛いなぁちくしょー。それより我が家に魔術的オカルト結界が張られて要るとか家主の俺には初耳なんですが……
あっ、待って。結界の違法増設とかお父さん認めてないぞ。
作者「アグリッパ・メンテナー」
もうひとりのボク「こいつっ!? 気晴らしで∀全話視聴する気か!? やめろミザエル!」
作者「オリ主でなくてはなあ! ワルキューレとイチャイチャなぞ、出来るわきゃねぇだろぉぉぉ!」
もうひとりのボク「いや、ぐだ男がいるだろ。せめて劇場版に!」
作者「TV版のが演技が好きなんだい!アステカの王w」