フレイヤと重なった後、俺達は宿のチェックアウトを終えて門に並んでいた。
国に入るには門番のチェックが必要で、それは爆発物などを持ち込ませ無いためらしい。
職業がそういうタイプの人は職業を見せれば納得して通してくれるらしい。
別に俺達は何もやましい事は無いので堂々とチェックを受けるが。
「そろそろですよ、主様」
「グギャっ!」
「あー長かった。メチャクチャ長かった」
チェックを済ませ、ラプターごと国に入る。
因みにラプターは国の中では基本乗れないので、今は荷物を背中に乗せている。
「ここが、ローレルだ。夢と血でできた国」
「未来的なのか、廃れているのか、わかりません」
「グギャ…」
まっすぐな道の横に魔力で灯る街灯が並び立ち、ホテルやカジノ、古ぼけた商店などが並んでいる。
俺は来るのは二回目なので慣れたものだが、フレイヤやラプターはそのアンバランスな街並みに驚いていた。
「まずは宿屋…ここではホテルだったか。ホテルをとるぞ」
「わかりました。ラプター、行きますよ」
「グギャっ」
ラプターの竜舎付きのホテルでチェックインを済ませ、早々にローレルに繰り出す。
早いとこ資金を集めなければ、俺が今まで積んできた貯金が泡となる。
「まずは、闘技場だな」
「闘技場などもあるのですか」
ドワーフが作ったとも言われている程周りの国よりも文化が発達しているローレルは、金を多く回せるように、数々の稼げるシステムが揃っている。
「闘技場って言っても、奴隷の闘技場だな。ここは貴族や金持ち、力を持った者が集まるところだ。奴隷を闘技場で闘わせ、持ち主は上の客席から命令を出す。そんな仕組みだ」
「なるほど。では、私が闘えば良いのですね?よろこんで」
「頭が良くて助かる。手っ取り早く、勝ち取ってこい」
闘技場───コロシアムで奴隷としてフレイヤを登録し、俺を持ち主として登録する。
ナンバーが書かれた札が渡され、席で待つように言われた。
通された場所で周りを見れば、大半が貴族、もしくは平民から成り上がった金持ちだ。
奇妙な物を見るように俺を見てきたので、とりあえず影魔法で拘束して遊んでいると、俺の番号が呼ばれた。
『登場!その美貌であらゆる貴族や奴隷を落としてきた古参!美しいだけでなく、そのスキルの効果も絶大!サキュバスの奴隷!セルカァァァァァ!』
セルカと呼ばれた男好きのするスタイルをもった奴隷が歓声と共に闘技場に出てくる。
闘技場の上に展開された金網の上に、小太りの貴族がのしのしと登場した。
なるほど、あそこから試合を観戦、命令するのか。
『登場!新星の美しき
そして、セルカと対する場所から、フレイヤが登場した。
初めてなので歓声こそ無いものの、セルカとは違った凛とした美しさに、誰もが唾を飲み込んだ。
俺も立ち上がり、貴族に対するように金網のステージ上に乗る。
貴族がバカにするような目を向けてくるが、無視だ、無視。
『両者、準備!…始めェェェェェ!』
セルカとフレイヤが視線の打ち合いを始める。
セルカは手に炎の魔法を纏わせ、フレイヤから距離をとる。
フレイヤが隙を見せた瞬間に撃つ作戦のようだ。
貴族は近づけ、殴れ、などと叫んでいるが、この貴族は戦いを分かっていない。
セルカは近づかないんじゃない、近づけないのだ。
フレイヤの強みは、洗練された剣と光魔法。
光魔法は見られると厄介なので使わせないようにしたが、フレイヤは剣だけでも十分に強い。
納刀し、塚に手を添えて自然体で佇む姿は、俺から見ても隙が無い。
「セルカァァァァァ!相手はビビってる!近づいて燃やせ!殴れぇぇ!」
「フレイヤ、格下だからと思って油断するな。一撃でいい、叩き込め」
セルカとフレイヤが一瞬、こちらに意識を向ける。
セルカは冷や汗を垂らし、フレイヤは目を閉じた。
フレイヤの極限まで集中力を高める仕草を隙と見たのか、セルカが炎魔法を放つ。
ゴゴウと燃えながらフレイヤに迫る炎は────
─────空中で真っ二つに別れた。
セルカには見えていただろう。
炎が別れ、その向こう側から剣を振り上げた姿勢のフレイヤがいることに。
そして、それを認識した瞬間に自らの首に刃がそっと当てられた事に。
貴族が口をあんぐりと開け、俺は笑みを浮かべる。
フレイヤは切ったのだ。
セルカの炎を。
そして、前動作の無い動きでセルカに接近し、刃を首に当てた。
剣を鞘に納め、セルカに一礼するフレイヤ。
それを見た俺は踵を翻し、下のフレイヤと重なるように退場していくのだった。