奴隷を眠らせるため、近くの空き家を使わせてもらった。
この辺りは破産したり警備隊に追われたりで持ち主がいなくなったままの空き家が多い。
奴隷が眠っている間、着々と準備を始める。
交渉するために俺が座るソファーを置いたり(フレイヤが)
暴れないために鎖や首輪を着けたり(フレイヤが)
魔法で空き家に音漏れ防止や認識阻害をかけたり(これは俺)した。
全てが終わってフレイヤとティータイムを楽しんでいると、少女が目を覚ました。
「う、ううん…?」
「気がついたか」
「ここは…?あ、ボクを買ってくれた人」
少女は俺を目にするとぺこりと頭を下げた。
「何をしている?」
「だって、ボクを買ってくれたもん。その上、ボクの目的まで果たしてくれるって」
「果たす?そんな事言ったか?」
コイツ、やけに肝が座っていると思ったら、自分の事しか考えてねぇな。
「そっ、そんな!?果たしてくれるって言ったじゃん!」
「記憶にない。もっとも、働き次第ではやってやらんことも無いが」
「そんな…クズ!」
狐が吠えた。
「奴隷として買われた時点でそんな考えは捨てるんだな」
「主様は寛大にも、高額なあなたを買った上、充分な栄養と寝る時間を与え、さらには体まで拭いたのです。あなたに選択肢などあるとお思いですか?」
ソファーの隣で騎士のように立つフレイヤが、少女に言い放つ。
確かに、堕落した金貨2枚とは言えど、充分な高額を払った。
喋れるように牛乳で作ったおかゆを飲ませ、今の今まで起きるまで待っていた。
体を拭いたのは…尻尾をよく確認したかっただけなのだが、まぁ良いだろう。そういう事にしとこう、うん。
「えっ…。ん、確かに体調は良いけど…」
「とりあえず、お前は俺の奴隷。おけ?」
「~~~…。うん…」
「そしたら、名前を教えて貰おうか」
基本的に奴隷は飼い主には逆らえない。
嘘を吐いたりすると心拍数や魔法で感知し、自動で絞まる首輪が付けられている。
「…チヨ。狐獣人のチヨ」
「チヨ。良い名前だ」
「心にも思って無いことを」
「まさか。これは本心さ」
余談だが、既に俺はチヨの名前を知っていた。
フレイヤと戦う前に先代の影法術士からもらった影魔法スキル、【影羅万象】は使われた者の魂を把握する魔法であり、チヨの名前はもちろん、過去の出来事や性感帯まで、全て覗かせて貰った。
…消費するマナと魔力が多く、さらには覗いている間硬直してしまうのが珠に傷だが。
「さて、チヨ。君は何か復讐をしたい相手がいると思うのだけれど」
「…うん」
「一人で復讐をしに向かい、返り討ちにあって奴隷として売られた。違うかな?」
「…すごいね、全部合ってるよ」
そりゃもちろん、全部知ってますから。
「力が欲しいんだろ?」
「うん。だから最初は大人しくしといて後で殺して逃げるつもりだった。それでレベルを上げて、強くなって…」
「復讐を成し遂げる、と」
チヨがこくりとうなずく。
俺はニヤリと笑みを浮かべると、チヨに商談を持ちかける。
「チヨ。正直に言って、俺もレベルを上げたい。パーティーを組め。そうすればお前が復讐を成し遂げたとき、俺もレベルが上がる」
「えっ…?ボクの望みは聞き入れないんじゃ?」
「望みを叶えてやるとは言ってないが、手助けしないとは言ってないぞ」
最初に否定したときも、俺は『手助けしてやる』としか言ってないので否定しただけに過ぎず、元からチヨの望みには付き合うつもりだった。
「…!ありがとう。ふふっ、君、ひねくれてるね」
「よく言われる。シェイだ」
「フレイヤ。主様の剣です」
「改めてチヨ。よろしくね!」
まぁ奴隷としての扱いは普通にするが。